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まいかさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 213
性別 女性
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/
自己紹介 正直、生まれは平成じゃないです。かなり、昭和なムード。昔みた映画を思い出しながらレビューしますので、記憶がずいぶんあやふやかも。なにか変なところがあったら、http://plaza.rakuten.co.jp/maika888/のほうにツッコんでおいてください。

好きな女優
 「或る夜の殿様」の山田五十鈴、「近松物語」の香川京子
好きな男優
 「お茶漬けの味」の佐分利信
好きなキャラクター
 グレムリンちゃんとマシュマロマン

☆評価基準
10点:超絶。ほとんど奇跡。
9点:傑作。かつ大好きなんだもーんッ!
8点:傑作だし、好きデス。
7点:素晴らしいです。好みの映画です。
6点:まあ、悪くないと思います。
5点:なにか気になるものはあります(~~;

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41.  座頭市喧嘩旅 《ネタバレ》 
GYAO の無料動画で視聴。「大魔神」「眠狂四郎魔性剣」に続いて安田公義は3本目。すっかりファンになってしまった。ちなみに勝新の座頭市はこれが2本目です。だいぶ前に三隈研次による第一作を見て、そのシャープな画面とファンタジックな演出に興奮した記憶があるけど、レビューは書いてなかったみたい。 今作は「座頭市を抱き込んだヤクザ」と「お姫様を人質に取ったヤクザ」の大喧嘩という設定。黒澤明の「用心棒」の2年後に作られていて、砂埃の道を縦にローアングルで撮るなどのパロディっぽい要素も見受けられる。「大魔神」よりも3年前ですが、障害物をなぎ倒すように敵を追い詰めていく姿や、四方八方からの荷車攻撃にもビクともしない姿などは、ほとんど大魔神さながらに見えてしまいました。 脚本にはちょっと嫌なところもあって、目当ての娘を手籠めに出来なかった腹いせに家来に追っかさせて殺そうとするバカ殿を叩き切れなかったのも不満だし、バカ殿から離反した家来がその後どうなったか描かれないのも不満だし、疑うことを知らないウブなお姫様と色欲に目が眩んだっぽい市がちょっとイイ感じになったりするのも気持ち悪い。また、CGを凌ぐほどの神懸った勝新の殺陣には若干の恐怖さえ覚えます。 しかし、それでもやはり安田公義の様式美の魅力がすべてを包み込んでいるし、上記の欠点を補ってなおお釣りが来ます。竹林の中を歩くシーンや水辺でお握りを食べるシーンには「羅生門」や「雨月物語」のような神秘性を感じるし、夜の駕籠屋の入口を撮った画面の絵画的な美しさにもウットリします。もはや安田公義に7点以下はつけられない感じがしてきました。 追記:(考えてみたら当時の勝新は結婚したばかりの32才ですごく若いのですが、劇中の設定は「でっぷりした中年男」となってるのですね。藤村志保は当時24歳ですが、映画を見ると十代の生娘のようにも見えます)
[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-16 18:39:10)
42.  鯨神 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 捕鯨に取り憑かれた奇怪な村落共同体を描いたインモラルなプロレタリア映画。宇能鴻一郎と新藤兼人は、近世捕鯨を経済行為や食文化としてではなく、あくまでエロスとバイオレンスに突き動かされた人々の狂気の営みとして、男尊女卑もはなはだしいプロレタリアートの視点から捉えています。したがって、これは本来なら日活や近代映画協会あたりで制作すべきだった題材ですが、なぜか芥川賞受賞の直後に大映が権利を買い取ってしまったのですね。そして、あろうことか東宝の特撮映画を模範にしてしまった。 しかし、同じ特撮映画とはいっても、文明批判をテーマにした「ゴジラ」と、反理性的な習俗をテーマにした「クジラ」とでは、まるで方向性が逆だというほかありません。しかも終盤の特撮映像の嘘くささは、かえってリアリズムに逆行し、本来あるべき神秘性を損ね、たんなる安っぽい怪物映画にまで貶めています。 田中徳三の演出で勝新太郎が出演していますが、どこにも大映時代劇のような様式美は見られないし、伊福部昭が音楽をつけて志村喬が出演していますが、どこにも東宝特撮映画のような科学的理念は見当たりません。結果としては、やはり日活や近代映画協会のような野蛮かつ土俗的なテイストに帰着している。 特撮の安っぽさを大目に見れば、これはこれで成立してる気もしますが、だからといって、この映画や原作小説を引き合いに商業捕鯨を正当化できると思い込む人間がいるなら、途方もない馬鹿だと言うほかないでしょう。そんなことをしたら、かえって捕鯨文化の狂気と前近代性を世界中に触れまわることになります。
[インターネット(邦画)] 6点(2023-01-11 14:42:55)
43.  眠狂四郎 魔性剣 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。以前から興味はあったけど、眠狂四郎シリーズの作品をちゃんと見たのは初めて。 とても面白かったです。ひたすら様式美だけを楽しむ映画かと思っていましたが、けっこう敵味方の入り乱れる複雑なお話で、予想以上に渋い内容。結局、悪女のおりんさんは狂四郎に惚れてしまうのですね。 不思議なエキゾチズムにエロとグロが混じり合って奇天烈かつエグい世界観を作っていますが、けっして湿っぽいのではなく、むしろドライな印象を受けました。ひとつひとつのカットも構図が美しく、説明的な描写を排除して、75分という手頃な長さに内容が充実している。 キリシタンが弾圧されていたはずの時代に、江戸の大奥と転びバテレンの黒ミサが癒着していて、それを金儲けに利用している家老が幕府に黙認されている…、という巨悪の構造はよく分かりませんでした。もうすこしシリーズの他の作品も見てみないと、物語の構造や背景が分からないのかもしれません。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-10 00:39:57)
44.  コンフィデンスマンJP 英雄編 《ネタバレ》 
3人の騙し合いかと思いきや、その外側をいくドンデン返し。脚本もよく練られているし、マルタ島の映像も綺麗に撮れている。日本のタレントだけで漫画っぽい世界観を作る手法も功を奏していて、意外と海外の風景に違和感なく収まっている。とくに欠点らしい欠点も見当たらないのだけど、さすがに「コンテンツとして飽きが来てる」感は否めない。長い序盤部分を「どうせドンデン返しなんでしょ…」という冷めた気持ちで見なきゃいけないのが辛いところ。 キャラクターはそのままに、このパターン化した構成だけを塗り替えることができれば、まだコンテンツとして延命できる余地があるかも。
[地上波(邦画)] 7点(2023-01-09 21:33:40)
45.  ゴーストバスターズ(2016) 《ネタバレ》 
GYAO の無料動画で視聴。第1作以外は見てないし、その第1作も38年前に見たっきりです。  期待値が低かったわりには、かなり面白かった。シガニー・ウィーバーの役どころを頭の弱いイケメンに代えたのを含めて、まるごと男女を逆転させた配役ですね。セリフはいちいちシャレが効いていて、けっこうエッジのある下ネタが入るのも笑えました。特撮も良く出来ていたと思う。第1作のメインキャストがこぞってゲスト出演して、ちゃんとマシュマロマンも登場して、「シャイニング」や「サタデーナイトフィーバー」などのパロディが入ってたのも楽しい。 ただ、物語にいまひとつ「回収感」が乏しかったのは残念。(もしかしたら9・11を想起させないための配慮かもしれないけど)オバケを退治した後は、破壊の痕跡をふくめて何も無かったかのように原状回復されていて、バスターズたちはさほど称賛されることもなく、主人公がコロンビア大学に復員するでもなければ、出版した本が飛ぶように売れるわけでもない。オバケに勝利した達成感や納得感がないので、見終わったあとのカタルシスが薄い。 それから「オルドリッジ邸の悲劇」「刑場跡地に作られた地下鉄」「大虐殺の場所に建つホテルでレイラインが結ぶ」「霊界とのバリアを除く第4の大変動」などなどの話が散りばめられるわけですが、それらのエピソードも最終的に回収されることはなく(かといって実際の歴史に取材してるわけでもなさそうです)、ただそれっぽいネタを散らかしただけで終わってる感じ。悪役であるローワンの人物像の掘り下げも不十分で、全体的に物語の背景的な厚みが感じられません。 せっかく中華料理店の階上でオフィスを構えたのに、店員が中国人ではなく、中国的な描写が皆無なのもちょっと不満が残ります。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-01-03 00:49:31)
46.  グレムリン 《ネタバレ》 
これまた38年ぶりの鑑賞。『E.T.』を38年ぶりに観たときほどの落胆はありませんが、やっぱり今観なおすと特撮技術がショボすぎるし、物語もだいぶくだらない。というか、かなりのカットで特撮を誤魔化してるのがミエミエ(笑)。コリー・フェルドマンの役どころが中途半端なだけでなく、序盤で登場した人物たちがまるごと放置されたまま物語が終わるのもどうかと思います。 まあ、特撮のショボさを補って余りあるほど、ワンちゃんの演技は奇跡的に素晴らしかったし、フィービーケイツも可愛かったです。クリスマスのチャイナタウンでグレムリンを買ってくるというコンセプトは悪くないと思うので、現代の技術でリメイクすれば、もうちょっとマシな映画になるかもしれません。 なお、ウィキペディアで調べてみたら、もともとグレムリンというのは英国の伝説上の妖精なのですね。今回、そのことを初めて知りました。 【以下は18年前に書いたレビュー】 可愛い!好き!わたしもクリスマスのチャイナタウンでグレムリンが欲しい。でもって、それがバケてほしい!!
[地上波(字幕)] 7点(2022-12-18 13:40:28)
47.  道(1954) 《ネタバレ》 
GYAO の無料動画で視聴。たぶん2度目の鑑賞です。 何かとてつもなく深遠な名作のように錯覚してましたが、あらためて観てみたら思いのほか凡庸だった(笑)。ネオリアリズモっぽい面もあるけど、なによりニーノロータの音楽がやたらと叙情的に鳴ってるし、終盤はほとんどお涙頂戴的な展開で、まるでチャップリンのような通俗的なセンチメンタリズムに終わっていた。まあ、これこそがフェリーニの個性でありジュリエッタ・マシーナの個性なのかもしれませんね。「女を支配することへの自戒」がテーマなのだとすれば、その点では『8 1/2』に共通してる気もします。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-12-18 13:20:11)
48.  天使にラブ・ソングを2 《ネタバレ》 
一作目も糞みたいなポップコーン映画でしたが、二作目もやはり大差のないポップコーン映画でした。これをもってコメディと言われても、どこが笑いどころなのかさっぱり分かりません。 とはいえ、商業的には大成功したらしいし、監督が代わっても作風が変わらなかったのだから、おそらく制作側は意図的にバカな映画を作っているのでしょう。むしろ大多数の観客がこの内容で満足していることのほうに驚くべきかもしれません。米国人がポップコーン映画に大喜びするのは仕方ないとしても、日本のレビューサイトでさえ軒並み平均点が高いのはかなりの驚異(脅威)です。 まあ、黒人が主体になったことで、音楽的には格段に素晴らしくなってるし(監督も黒人に変わっているらしい)、これなら「ゴスペル映画」として認知されるのも納得はできます。18才のローリン・ヒルが出演してることもあり、文化史的には重要な作品なのでしょうね。物語のくだらなさは、かえすがえすも世界最低レベルだと思いますが。
[地上波(字幕)] 6点(2022-12-15 15:32:36)
49.  8 1/2 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。たぶん2度目の鑑賞だとは思うのですが、ほとんど理解できなかったせいで1度目の記憶がほとんどありません。ようやくちゃんと観た…という感じです。 映画についての自己言及的な映画。全編が映画の魅力に満ちあふれていますが、けっして「映画賛歌」だとは思えない。むしろ映画作家の独裁的なエゴイズムを暴露し、幻想をフィルムに定着させることの欺瞞性をみずから告発した「映画批判」のように見えます。本来ならば取捨選択によって排除されるべき被写体をも画面のなかに招き入れ、それら(=とくに女たち)によって映画作家が逆襲される様を描いている。人生は祭りだ…とのセリフもありますが、それをもって「人生賛歌」と解釈できるわけでもなく、むしろ痛烈なアイロニーのように映ります。 これが映画作家としての誠実さの行き着く先であり、これによって映画そのものを終わらせたとも思える。この作品がつくられた1963年の時点で、すでに映画は行き着くところまで行ったのだなと感じました。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-12-10 01:00:58)
50.  バスルーム 裸の2日間 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。予想以上に面白かったです。ほとんどのシーンを狭い浴室の中の全裸の男女の会話だけで撮るという非凡かつ実験的な試み。 フランコの死去から約10年後、軍事クーデターの失敗から約5年後の1987年。ようやく民主化を果たして当時のECに加盟したばかりのスペイン。かつてのファシストの娘である女子大生が、尊敬する反ファシストの老文筆家のもとへ取材に訪れるも、老人は彼女の美しい肉体にしか興味を示さない。二人はアクシデントによって全裸のまま浴室に閉じ込められるけれど、女性が体を許すまで老人はひたすら口説き続けるだけ。おそらくは、これこそが「民主的な方法」ということなのでしょう。 ファシストだった女子大生の父には8人の子供がいるとのことですが、それが若さと肉体の魅力によって女性を勝ち得た結果なのか、それともファシズム時代の暴力によって女性を支配した結果なのかは分からない。老人は男根のことを「ゴリラ」と表現しますが、たとえばブラジルにおいて軍事独裁期の支配者のことを「ゴリラ」と揶揄したように、それは暴力性の象徴でもあります。 しかし、反ファシストの老人は、若さや肉体の魅力でも暴力によってでもなく、言葉の力だけで最終的にファシストの娘の美しい肉体を得ます。これはいわば「民主主義の勝利」ということかもしれないし、あるいは民主的な手続きの「面倒臭さ」や民主主義における「権力の弱さ」でもあるかもしれない。 情事の後は、自殺した女ともだちの話。そして、フランスで鬱病から回復して両親から旅立つ息子についての架空の映画。ラストは、閉ざされた密室を出て、過去の重荷を捨てて「明日」を生きよというエンディング曲のメッセージ。女子大生が老人から学んだことがあるとすれば、それは「過去を捨てろ」ということだったのでしょうか? 会話の中身の半分は下半身の話ですが、この作品自体はほぼ「上半身の映画」であり、画面に下半身が映りこむことはほとんどありません。作品の原題は『MADRID,1987』であり、『バスルーム裸の2日間』という邦題は、この映画の位置づけをまったく別のものにしています。もし、この監督が別の作品で高い評価を得れば、本作の邦題も変わってしまうかもしれません。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-11-03 19:00:48)
51.  エディット・ピアフ~愛の讃歌~ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 わたしはとくにピアフの歌が好きなわけでもなく、映画に対する期待値も低かったのですが、予想をはるかに上回る素晴らしい出来だったので驚きました。あとで調べてみたら、思った以上に若い監督だったのも驚きです。 すくなくとも中盤までは文句のない内容だったし、余計な解釈を加えず断片的な事実だけを切り取っていく手法も説得力がありました。前半部のフランスの描写と後半部のアメリカの描写の切り替えも映像表現として素晴らしかった。 ただ、残念なのは、肝心の恋人の死の場面で幻影が現れる演出がさほど効果的ではなかったこと(その前のボクシングの試合もやや冗長でした)。そして、その後の複雑な時系列の入れ替えが分かりにくかったことです。たぶんラストシーンで「Non, je ne regrette rien」を聴かせるために、そこから逆算して時系列を操作したのだろうけど、かえって感情移入の妨げになったのは否めない。恋人の「マルセル」と娘の「マルセル」を重ね合わせるような演出もかえって混乱を助長しています。これらの終盤部分さえ上手く編集しなおせば大傑作にもなりうる内容と思えるだけに惜しい。伝記映画をミラクルな物語に仕立てるのは難しいことなのだろうけど、かなりいい線までは行ってた気がします…。 物語の始まりは第一次大戦中(冒頭のテロップは「1918」となってますが、実際は「1916」ぐらいのはず)。ベルエポック期の表社会の華やかさとは裏腹に、とんでもなく汚くて貧しいフランスの裏社会が描かれています。ユゴーが描いた100年前の「レミゼ」の悲惨さと大差ないほど劣悪な境遇。実際、母に捨てられる少女の描写は「レミゼ」を意識して作ってる感じもある。大道芸人の世界など当時のフランスの社会風俗が見れるのも興味深い。 ビリー・ホリデイとの共通性は以前から感じていたことだけど、両者が同い年で、ピアフ自身がホリデイのことを強く意識していたとは初めて知りました。ピアフの歌もある種のブルースなのですよね。ジャン・コクトーやマレーネ・ディートリヒとの交流について知ることが出来たのも収穫。 ピアフの母親はイタリア系で父親はアルジェリア系だそうですが、これほどピアフが愛されたのは、フランス社会が抱えるそのような「実存」の部分を余すことなく体現していたからなのだろうと思います。ちなみにこの映画を観ると「Non, je ne regrette rien」の邦題は《悔いはない》とすべきであって、《水に流して》という従来の邦題があまり適切ではないように思えてきます。また「愛の讃歌」について、日本では岩谷時子の訳詞に対する賛否両論がありますが、恋人の生前にピアフが書いたものだと考えると、岩谷時子による曲の解釈もけっして間違っていないと感じます。
[インターネット(字幕)] 8点(2022-10-26 05:54:18)
52.  クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 クリムトとシーレだけではなく、世紀末から大戦までのウィーンの芸術文化を横断的に描いています。たとえばフロイトの「エディプスコンプレックス理論」とウィーン分離派による「父殺し」を関連づけたり、リヒャルト・シュトラウスの「サロメ」とクリムトの「接吻」を関連づけたりしている。映画というよりはテレビドキュメンタリーの体裁ですが、写真や映像資料はなかなか興味深い。 帝都ウィーンは、フランスにはじまる革命期の後も100年以上にわたって君主制を維持しつづけ、たとえば音楽では古典主義からロマン主義を経て近代主義へと変遷をつづけ、芸術上の黄金時代を築きました。ヨーロッパの辺境であるはずのウィーンが芸術革命の前線だったともいえる。「人間性の解放」から最後は「爛熟」「腐敗」「退廃」「狂気」へと至りますが、こうした近代化を推し進めたのはフロイトやウィトゲンシュタインのようなユダヤ人です。マーラーを米国へ見送ったシェーンベルクやベルクやツェムリンスキーやクリムトも全員ユダヤ人だろうと思います。とくにフロイトはスキャンダラスな無意識(性と暴力)の暴露に至った。カトリシズムの支配するウィーンは、それゆえに近代主義の矛盾がもっとも極限的な形で現れる都市でもあった。現在のウィーンはすっかり「伝統文化の町」みたいになってますが、そこはかつて天才たちがひしめきあう過激な文化都市だったのです。 1907年に(ユダヤ人迫害を避けて)マーラーが渡米し、1914年に皇太子暗殺を発端として戦争がはじまり、1918年に分離派のオットー・ワーグナーとコロマン・モーザーとクリムトが、さらにはエーゴン・シーレまでもがスペイン風邪で死去し、その直後に戦争が終わってハプスブルク帝国が崩壊します。これにてウィーン黄金時代が終わる。ヨーロッパの東側で君主制を終わらせた第一次世界大戦とロシア革命は、いわば「遅れてきた革命」だったかもしれません。
[インターネット(吹替)] 7点(2022-10-24 17:42:18)
53.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 愛すべき日活の怪獣ネタ映画です。 エチオピアあたりでも大ヒットしそうな美樹克彦の演歌ロック調の主題歌(=米山正夫)!バラエティ番組のコントみたいな島の原住民&噴火のスタジオセット!プラモデルにしか見えないミニチュアの潜水艦&戦車!ガッパの口からビームでことごとくやられる戦闘機群!ツッコミどころというより、あきらかなネタでしょ…。 不知火の海から現れた2体のガッパはどう見てもアマビエなのだけど、岩穴から出るときは頭がデカすぎて引っかかりそうだし、建造物を壊すときは手が短すぎて空振りしそうだし、何か踏みつぶすときも崖っぷちを歩くときもバランスを崩して転びそうだし、いちど転んでしまったら自力では立てなそうなので心配になります。この時代にして「ゆるキャラ」の資質をすでに先取りしています。ガッパ親子の感動の再会シーンは、斬新すぎて何を見せられてるのかよく分かりませんでした。エンディングは性懲りもなくエチオピアあたりでヒットしそうな美樹克彦の演歌ロック!二度も聴いたので、もう耳から離れない。 唯一にして最大の難点は、ガッパが登場するまでの踊りやら探検やらのくだりが退屈なこと。8点つけちゃおうかと思ったけど、冷静に考え直して7点。
[インターネット(邦画)] 7点(2022-09-27 13:07:03)
54.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。これが2度目の鑑賞です。前回は画質や音質が悪くてよく分からなかったけど、今回はデジタルリマスター版とあって内容は理解できました。 たしかにとても良く出来た映画で、これなら国際的な評価にも値するだろうと思ったけど、残念ながら、のめり込むほどの魅力は感じられなかった…。あまりにも緻密に作り込まれた結果、かえって明快さに欠ける気もするし、結末のカタルシスにも乏しく、墓場から去っていくラストシーンもちょっと寂しいですね。スタジオセットから飛び出して現代を走り抜けるラストなら、だいぶ印象は違ったかもしれません。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-09-27 02:55:44)
55.  竜とそばかすの姫 《ネタバレ》 
困りましたねえ(笑)。つい、スピルバーグの「レディ・プレイヤー」を思い出してしまいました。設定は面白いし、映像表現も素晴らしいのだけど、物語が致命的につまらない! 何故つまらないかといえば、思想が浅いからですね。この設定から起こりうる物語の可能性を、突き詰めて極限的に構想することができていない。だから、どんなに設定だけをバージョンアップしても、結局のところ幼稚で陳腐な物語にしかならない。そういうところが、悪い意味でスピルバーグと同じなのです。映画を作りたい気持ちが先走ってるだけで、これといって描くべき内容をもっていない。それが毎度毎度露呈してしまう。 映像はほんとうに素晴らしいし、音楽もほんとうに素晴らしいし、(設定上の疑問は数多くあるものの、そんな疑問点も含めて)展開には変な面白さもある。これまでの細田作品のなかでは、これが最良だという気持ちもあります。ただただ、核となる物語だけがつまらなくて底が浅いのが悲しい。 きっと同じ題材を使ってもっと突き詰めた世界を構想できるクリエイターはいると思いますので、とりあえずこの題材を提示したことと映像表現を極めたことだけを評価して8点を献上します。
[地上波(邦画)] 8点(2022-09-24 01:22:29)(良:1票)
56.  反撥 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 序盤は神経症の描写がリアルすぎて観てるほうまで疲弊しそうになりますが、かなり現代的なテーマに触れているようにも思えて看過しがたい。しかし、主人公が幻覚を見るようになって以降の展開は、サイコホラー的な演出に引き込まれる反面で、リアリティからはどんどん遠ざかってしまうので、たんなる娯楽目的の恐怖映画にしか見えなくなってしまう。神経症の病理を客観的に描写したシリアスな作品なのかと思いきや、じつのところは監督自身の病的な欲求を表現した悪趣味な作品でしかないような気がする。その点が期待外れです。 映像描写はたしかに秀逸ですが、国際的な評価を得るほどの芸術的な価値があるとは思えない。ちなみに邦題は「反撥」ですが、原題の本意はむしろ「嫌悪」じゃないでしょうか?
[インターネット(字幕)] 7点(2022-09-22 05:40:59)
57.  大魔神怒る
GYAOの無料動画で視聴。すでに18年前にレビューしていたことはおろか、二度目の鑑賞だったことにすら気づかず、最後まで初めてのつもりで観てしまった(笑)。われながら凄い記憶力の無さ…。 二作目は三隅研次です。キレッキレのシャープな構図がいちいちカッコいい。お姫様の祈りと涙が大魔神を突き動かす設定は前作と同じで、やはりこの神様は「信心の有無」で善悪を見分けているのだということが明確になる。十字架ごと持ち上げられたときの藤村志保の恍惚とした表情にも説得力があります。とりわけ今回は、最後にお姫様の涙が湖に溶け込んだことで、湖の神様との精神的な一体性がより強まっている。 チャンバラの見せ場もあります。大魔神への縄攻めが裏目に出るのは前作同様のお約束だけど、火薬による爆破攻撃もなかなかの見どころだし、船の帆によじ登った敵の親分に縄が巻きついて火あぶりになる最後の演出は、いかにも三隈研次らしくてケレン味たっぷり。 細部にツッコミどころがないとは言えないけど、全体的な設定に矛盾は感じない。たんなる二番煎じではない面白さがあるし、二作目としては十分に成功しています。湖が十戒みたいに割れるのも悪くないし、前作のUFOみたいな火の玉が出てこなかったのはむしろ前進。 18年前には7点つけていたのだけど、8点に格上げ。  【以下は18年前(ビデオ鑑賞)のレビュー】 もしアメリカ人に「GodzillaとDaimajinはどっちがスゴイか」と聞かれたら、絶対、「佐々木のほうです」と答える。東宝と大映の差でもあるけど、大魔神には、時代劇的な情緒感があります。『ゴジラ』も悪くないけど、あれはどっちかっていうと「科学映画」ですよね。それに、ゴジラはデカすぎて、かえってリアリティが無い。大魔神は、目の合うくらいの高さで迫ってくるから、ほんとうにむこうから歩いてくるようなリアリティを感じる。鎌倉の大仏さまを初めて見たときのような、微妙に大きさの感覚が幻惑される感じ。これは、怪獣映画にとってとても重要なことなんだけど、ゴジラにはそれが感じられないです。日本映画は大魔神のようでなくちゃいけないです。 これはシリーズ2作目。豪快で明快な怪物映画の中に、三隅研次一流のありえない演出の妙や奇特な映像のエロティシズムが加わってて魅力的。同時に、三隅作品として見るならば、大魔神の豪快さと明快さによって、彼の奇特な映像エロスに偏りすぎていないところがちょうどいい。そんなわけで、いっぱい楽しめます。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-09-19 12:37:54)(良:1票)
58.  プラダを着た悪魔 《ネタバレ》 
原作は読んでいませんが、映画を見るかぎり『ファウスト』の女性版ではないかと思います。ゲーテが、魂を悪魔に売りわたして全能になろうとする男を描いて文明社会に警鐘を鳴らしたように、この映画は、人間としての魂をファッションに売りわたして全能になろうとする女性たちを描いています。そのことによって大切なものを失うとしても。ちなみに、ここでのスタンリー・トゥッチは、メフィストフェレスの役回りです。 ゲーテが『ファウスト』を書いた後も、科学技術などに自分の魂を売りわたそうとする人々は後を絶たなかったように、この映画を見てもなお、プラダに魂を売り渡そうとする女性は、おそらく後を絶たないはずです。むしろ、この映画自体がそのような「誘惑」に満ち満ちていますし、「お洒落こそが最大のコミュニケーションツールであり、お洒落になりさえすれば女性は全能になれるのだ」というメッセージで観客を啓蒙しているようにさえ見える。 プラダを身に纏って全能な女性になれるなら、魂のひとつやふたつ売り渡したって構わないと思う人のほうがきっと多いでしょう。そのためなら多少のパワハラだって受け入れるという女性さえいるかもしれません。それどころか、すっかりフィクションを真に受けて、メリル・ストリープばりに部下へのパワハラを行使する人や、上司のバカげた無理難題に応えることが仕事の成功なのだと信じる人もいるかもしれません。ゲーテの時代には男性しか全能になれなかったけれど、現代ならば女性でも全能になれるのだから、それはかえって喜ぶべきことじゃないかと考える人もいるでしょう。 一般に、この作品は、ひとりの女性がどんどんお洒落になっていく「シンデレラストーリー」だと理解されていますし、制作側も、そのように受け止められることを織り込み済みのはずです。この物語のなかに、ゲーテのような「批評性」を見出すことは可能なのだけれど、ほとんどの観客にはそんなことは伝わるはずもなく、たんなるエンタテインメントとして消費され、場合によっては「サクセスストーリー」だと誤解されるのです。制作側は、それすらも計算ずくで作っている。その意味では、とてもしたたかな映画だと思います。  「今までのアシスタントで最も失望させられた。そしてアンドレアを雇わなかったら大馬鹿者」 最後にアンドレアが面接へ訪れた出版社に、ミランダが送っていた矛盾に満ちたメッセージです。ミランダは、これを「悪魔」と「人間」の2つの視点で書いています。彼女は、「悪魔」としては大いに失望させられたけれど、「人間」としてはそれが正しいのだと知っている。自分は「悪魔」の道から抜け出せなかったけれど、アンドレアは「人間」の心を取り戻した。そして、アンドレアのような人こそがジャーナリストにふさわしいと言うのです。このメッセージを読み上げた面接官は「最高の言葉だ」と言います。 このシーンを描くことによって、映画自体が、そのようなジャーナリスティックな観点で作られていることを告げています。
[地上波(字幕)] 6点(2022-09-19 12:35:13)(良:2票)
59.  死刑執行人もまた死す 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 反ナチの地下レジスタンス組織が、全市民的な連帯と謀略を駆使しながら、祖国の裏切り者を陥れて報復するまでの勧善懲悪的なサスペンス劇。当時の国際的な反ナチ=レジスタンスに連帯を呼びかけ、あらゆる犠牲も厭わずに戦いつづける姿勢を称賛した戦時下のプロパガンダ映画。その意味では、一億玉砕を覚悟して戦えと呼びかけた日本の国策映画にも似てなくはないし、たとえ自由主義の立場で作られた反ナチ映画とはいえ、戦後の反戦映画と同じような共感をもって観ることは難しい。 この映画が「名作」と呼ばれるのは、その技術的な水準の高さだけでなく、やはりドイツ人であるフリッツ・ラングとベルトルト・ブレヒトが、虐げられたチェコの側に立ってまでして、彼らの祖国を批判したからなのだろうけど、作品そのものは良かれ悪しかれ戦時下のプロパガンダであって、戦後の価値観からも手放しに称賛できるような普遍的な内容とは言いがたい。 ちなみに、この映画で予言されたレジスタンス側の勝利は、ナチスドイツの敗北によって2年後に実現するけれど、この脚本を書いたブレヒトは、戦後のアメリカでは赤狩りの弾圧を受けるわけで、けっして自由主義陣営の勝利が彼の勝利ではなかったということ。ブレヒトにとっては、祖国のドイツも、亡命先のアメリカも、まったく安住の地ではなかったということです。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-09-17 01:41:40)
60.  水の中のナイフ 《ネタバレ》 
GYAOの無料動画で視聴。 何ですか、この傑作は!水の上のロードムービー?めちゃくちゃスリリングで面白い!ポランスキーってこんな映画を撮る人だったの?当時の彼は弱冠29歳。これが長編デビュー作って非凡すぎる。しかも社会主義下のポーランドでこの自由で清新な作風!ポーランド映画というよりも仏ヌーベルバーグの文脈と言ったほうが正しいかも。 轢き殺す寸前まで意地を張り合った金持ちの男とヒッチハイカーの若者。その後もヨットの上で意地の張り合いが続き、手に火傷を負ったり、マストによじ登ったり、湖に飛び込んだり…。やがて妻の略奪と殺人もどきにまで発展する。 男が若者に語った「バカな意地っぱり船員」の逸話が、最後はブーメランのように男自身にも返ってくる。男どうしの些細な意地の張り合いと見栄の張り合いが無用な破滅をもたらしかねないという寓話。まあ、当時の東西冷戦だって似たようなものだったかもしれませんよね。
[インターネット(字幕)] 9点(2022-09-16 19:07:38)
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