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Nujabestさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 112
性別 男性
自己紹介 10点---- 個人的ツボ。欠点なんて知ったこっちゃない映画。
9点---- 完成度高し。人にすすめたくなるような映画。
8点---- 良作。ちょっと気になる点も。

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41.  Kids Return キッズ・リターン 《ネタバレ》 
北野武映画に出てくる登場人物の発する澱みが自分とは妙に相性が良い。そして彼は、男の孤独というものを描くのがうまい。しかも孤独の色を、黒じゃなくてブルーに染める。それが心地よい。この映画の主人公二人の少年は、多くの時間を供に行動し、心から打ち解けているようにも見えるが、どこかしら緊張がみなぎりお互いに踏み越えない一線がある。それは陳腐な言葉でいえば「男は黙して語らず」というものなんだけど、決して心を許さない訳ではなく、ただ寡黙なだけだ。青春映画でありがちな、家庭環境や生い立ちは全く描かれないし、昨今のTVドラマで語られる「俺達仲間じゃねーのかよ。仲間だろ」的な、過度のベタツキも全くない。全編にかけてこんなにも胸がヒリヒリするのは、青春時代に誰もが経験する成長と堕落、そして慢心と羞恥心を、これでもかというくらいに丹念に見せ付けられるからだ。しかしそれだけじゃなく、孤独を癒す手段を、悩みを打ち明けたり語ったりしないからだと思う。それどころか、いつも強がって誤魔化してみせる。それがたまらなく切ない。この映画は、少年の中にも潜む、男は心のすみっこでいつも孤独であるということを突きつけてくる。そういう意味で、まさに男の映画なんだと思う。というよりも、北野武自身の映画なのかもしれない。ところで、印象に残ったシーンは、冒頭に出てくる校庭での自転車の二人乗り。二人は互いに向き合っていて、ふらふらとハンドルが揺れる。青春を謳歌する二人の少年に相応しく、危うく、そして心許ない円の軌道を描く。一転してラストシーンでは、校庭に帰ってきて、しっかりと前を見据え自転車に跨っている。しっかりとした円を描く。青春映画のシャレードとして素晴らしい表現だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2009-12-30 06:33:18)(良:2票)
42.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
現在の視点から冷めた目で見てしまうと、ツッコミ所がないわけではない本作ですが、脚本の細かいテクニックが巧いのであまり気にせずに見れます。ネフが、恋に落ちる説得力に欠けたのはいただけませんが(笑)全編に渡り、サスペンスのエキスが凝縮されているので、100分ほどの作品ですが、正直あっという間。そういう娯楽的視点で見ると、このサイトで評価の高い『サンセット大通り』や『情婦』よりも面白いと思います。ネス、フィリス、主役2人のキャラもそれなりに良いですが、何よりもローラとキーズの存在がスパイスとして効いています。初めてローラとフィリスが並ぶシーンがあるのですが、まるでバービー人形のような瞳ウルウルのローラの横で、ダミ声で煙草をふかすフィリス。こちらは、まるで場末のバーのママのよう。フィリスは、それこそ後続のファムファタールの中ではインパクトでは劣るものの、この対比によってものすごく悪女に見えます。一方でキーズは、粋な台詞とキャラクターの良さで欠かせない存在になってます。主役のネフは、マッチのつけ方がカッコ良すぎます。これは、真似したくてもできません。ラストには、キーズに美味しい所を持っていかれますが・・・。ところで、ウディ・アレンが本作を「史上最高の映画」と評しているそうですが、そういえば『マッチポイント』あたりで、その影響が見え隠れするなあと思ったり・・・。ワイルダー初期の中では好きな作品なので8点献上です。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-22 23:51:52)
43.  おくりびと 《ネタバレ》 
死というものを生業の一部としている人間の成長ドラマを描くと同時に、死というものを遠ざけている現代日本人の姿を浮き彫りにしていたと思う。スーパーで大量陳列されているような(死を感じさせない)肉は平気で触るし食べるのに、生きているタコには触ることができない。そんな妻の姿は、どこか自分とかぶるところがあった。今の日本人の象徴があのヒロスエなのだと思う。子供の頃は平気で昆虫とかゴカイとか触っていたが、今は触れることさえ勇気がいる。日常的に触れていないと、段々と想像力が台頭してきて、恐怖が勝っちゃうんですよね。現代社会も、「死」は現実より切り離され、病院や屠殺場に押し込められている。医学や流通の発展は生活に多大な恩恵をもたらしたけれど、精神面では何かを少しずつ欠落させていってるような気がする。だからこそ、この作品の発した「死とは普通なもの、自然なものなんだよ」というメッセージには、大いに共感する。死が身近に存在した昔の伝統的な日本の姿を思い出させてくれる、生きる活力を与えてくれる良い作品だと思う。そして、そういう活力の根源は「笑いと愛と食」だよなと再認識。中身については、ファーストシーンでぐっと掴まれた。その後の導入部はナレーションが饒舌すぎて気になったが、総じて脚本は巧い。「生と死」を根底の軸としている映画だと思うので、ご都合主義に見える死によっての問題解決も気にはならなかった。ところで、ルーズソックスに込められた愛らしさの表現や、川原で佇んでいる所に霊柩車のクラクション(あの独特の音)が鳴るという笑いは、日本に住んでいる人にしか伝わらないだろうなー。土手でのチェロなど、多少しつこい部分もあったのでこの点で。
[地上波(邦画)] 8点(2009-09-23 18:13:56)
44.  シックス・センス
高校時代、映画の日の午前中に学校サボって一人で見に行った思い出の映画。(良い子はマネしてはいけません) その後学校に行って、その面白さを友人Aに熱く語っていたら、「俺も見に行きたい!」ということで、もう一回その日の放課後に、今度は2人で鑑賞。後日、2人でこの映画について熱く語っていたら、C君が参加してきて、「俺も行きたい!」と。そんなこんなで、自分としてはその当時前代未聞の、劇場での計3回の鑑賞。B君、C君ともに劇場から出てくる瞬間の興奮っぷりがたまりませんでした。映画の最中もネタばらしのシーンの二人の表情を盗み見して、自分だけ、ほくそ笑んで鑑賞しておりました。何とも思い出深い映画です。 で、何が言いたいかといいますと、当時の高校生が3500円も払って見た価値はあったということです。
[映画館(邦画)] 8点(2009-08-31 12:25:16)(笑:2票) (良:1票)
45.  マグノリア 《ネタバレ》 
たまに街中の雑踏のベンチに座って通り過ぎる人達を見ていると、ふと、この映画のことを思い出します。当たり前のことだけど、通り過ぎていく一人一人がそれぞれの人生を生きていて、そして何の因果か、偶然この時間帯に、この場所を通り過ぎる。そんな日常のささやかな一場面が、とんでもない奇跡に思え、たったそれだけで感動するんです。それぞれに人生のシナリオがあって、幸福や不幸を抱えていて、その結末は誰も書ききっていない。中には死を考えながら歩いている人もいるかもしれないし、これから恋人に会いに行く人もいるかもしれない。陳腐な空想で誰もが思ったことがあるかもしれませんが、すごいことだと思います。数学的に確率で計算すると、とんでもないことになりそうです。高校時代に、この映画で初めて群像劇というものを知って、それ以来群像劇が大好きになりました。この物語の主要人物達は、それぞれが人生に於けるターニングポイントにもなりかねない事件を経験します。それは、その後の人生に大きく影響を及ぼすようなトラウマにもなりかねない事件です。昔、降り止まない雨などない~と歌った歌手がいました。どんなに土砂降りが続こうが、カエルが降って来ようが、この映画は降り止まない雨などないということを教えてくれます。最近、おたまじゃくしが降ってくるような珍現象が日本でも、相次いで報告されています。そのうちカエルも降ってくるかもしれません。ところで、この映画はAimee Mannがかなり評価をあげてますな。ほんと、ハマってます。サントラええです。出来としてはクラッシュ(2004)の方が上だと思いますが、好きな映画なので8点献上です。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-31 12:10:29)
46.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
群像劇を2時間以内に纏めて人間の本質を描ききっているのがまず見事。それでいて、差別、銃、宗教、メタファーを絡めながら各々のドラマを配置している。実に巧い。群像劇の弱点のひとつである、それぞれのエピソードの深みにはかけるものの、映画そのものがテーマをじんわりと浮かび上がらせているので納得の出来。自分が一番に思ったのは人間とは表面的には全くあてにならないということ。例え口や行動で正義、差別反対を唱えても、そんなものは見せ掛けだけにしかすぎない。人の行動、言動には必ず動機があり、それが「他人を思う気持ち」から発せられたものかどうかは行動や言動では分からない。正義とは他の理由を動機にすることも多いと思う。例えば若い白人警官。かれは、黒人を殺してしまったけれど心の底には「黒人は何をしでかすか分からない」という気持ちがあったのだろう。それまで彼は、"自分の価値を支えるための正義"で自己満足に浸っていた節がどこかにあったのかもしれない。白人ヒッチハイカーだったら同じことが起こっただろうか。差別というものは実に巧妙に人の心の隙間に忍び込んできて、ふとした瞬間、なにかがクラッシュした瞬間に突然堰を切ったように溢れ出す。それが、普段は抑圧して顔を出さないその人の心の奥に潜む真実だ。心の中まで、差別をしない人ってほとんどいないんじゃなかろうか。この点は、非常に考えさせられた。この物語の人物達は常に不安を抱えていて、見えない何かを恐れている。不安ばかりが蓄積し、想像が暴走し、予断と偏見つまり差別を生み出す。本当に心があたたかい人とは誰なのか、その見極めは本当に難しいことだと思う。話しあう、喧嘩、抱き合うなど身体と言語による衝突を経て人間は理解しあっていくしかない。その他感心したのは、被差別者が差別反対を訴えながらも差別をしたり、黒人が「白人と仲良くしている黒人」を疎む箇所。そして、この作品は、人間の冷たさだけを描くだけではなく、人間の持つあたたかさを同時に描いている。これも人間の持つ本質的な真実であると思う。空砲を買った女性、病気の父親の為に口を滑らせ差別した男、ずっと黒人に奉仕してきて裏切られたのに泣き言一つ言わない男、昔は正義を志し黒人犯罪を目の当たりにして暗黒面に陥っていった警官が救出した行動、どれも考えさせるエピソードばかりだった。
[映画館(字幕)] 8点(2009-08-29 10:16:45)(良:1票)
47.  運命じゃない人 《ネタバレ》 
これは面白い。邪道だが、先日図書館で借りた05年のシナリオ年鑑に載っていて、脚本を読んでからの鑑賞。読む分においてはその脚本の上手さに脱帽。9~10点に近かった。ということで、借りて見てみました。何かいろんな意味で裏切られた。スタイリッシュで小粋な映像を予想していたので、ここまでコメディに味付けしているとはちょっと予想外。まぁこのダササも、これはこれで成功していたと思う。味があるといいますか。中村靖日さんを主役に据えた時点でこう撮るしかないな。それほど強烈キャラ。特に足首の演技には魅せられた。ラストがシナリオとは異なっていたので、最初あのおっさんが誰かわからなかった。なるほど。細かい。ところで、神田役の山中聡もどっかで見たことあるなーとずっと考えていたら、「ハッシュ」の濃いキャラの人じゃないですか(笑)この人も演技上手いなw 内田さんの他の作品も観てみようと思います。表層的なユーモアだけに頼るだけじゃなく、脚本の構成や仕掛けで、人を楽しませようとしているのが伝わってくる映画というのは、やはり嬉しくなってしまいます。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-24 01:43:45)(良:1票)
48.  ルディ/涙のウイニング・ラン 《ネタバレ》 
数年前バスケでアメリカを沸かせたJ Macという自閉症の少年の話とすごく似てますね。野球などでは思い出代打というような言葉もあるし、学生の最後の試合では結構この手の記念出場は良くあることで、そこまで気にならなかった。チームメイトがその機会を作り、ルディが全力で走り出したことに意味があると思うので。途中までは主人公のルディは、ウザキャラだなと辟易していた。が、段々とその思いの強さに心打たれた。それほどルディの感情が突進してくる。夢を持ち、自分の無能を知ったとき、人間が起こす行動には二種類あると思う。自ら限界を作って何もしないで諦めてしまうか、逆に、少しの可能性でもあるのならば、それに賭けてあらゆる努力をするか。スポーツをやっていた人なら分かると思うが、自分の限界をどこまでも乗り越えようとするルディのような努力を見せられると、選手はその人に対し、反感を持つか、それに触発されるかに分かれると思う。反感を持つ者は己の限界を自分で築き上げている人間。そういう人間は愚痴を言うことに終始する。自分が最初ルディをウザいと思った理由はこれだったんだと思う。要するに嫉妬と自己嫌悪ですね。触発される者は切磋琢磨し合い、そしてその努力に敵わないと気づけば「オレにはあいつ程の努力はできない」と負けを認める。そこで尊敬の念が生れる。このラストシーンは同情よりも尊敬に溢れていたと思う。彼のアメフトとノートルダムへの愛情に、自分達は絶対に勝てないと心を動かされたからだろう。それほどチームメートを鼓舞してきた功績は評価に値するのだろう。そして他人の目線など気にも留めずに、全力で駆け出すルディ。たった27秒間の為に…。この世界、いくら努力しても無理なことはいくらでもある。しかし、ルディは自分の限界を作らないで、自分ができる最大限の努力をしている。凡人にはできませんよ。ここまでの努力…。全く自分を客観視できないルディだが、自分は素直に心打たれたし、拍手を送りたい。何もしないで諦めるか、全力で頑張って諦めるか。両者には途轍もなくも無く大きな差があることを教えてくれた。ただ、脚本の荒さ、死んだ友人忘れてるとか、チームを思う気持ちも描いた方が良いとか、動機面に関してとか色々とマイナスもあったので8点(実話物なので忠実に作ったのだろう)青春時代を思い出させてくれるスポ根映画の佳作でした。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-16 18:11:29)(良:1票)
49.  ファイト・クラブ 《ネタバレ》 
"生"の実感がわかないというのは、現代日本人にとっては結構深刻なもので、至るところで噴出している問題だと思う。情報化社会によって人間関係が希薄になり、平和ボケした日本だと尚更。とかく日本は死を隠しすぎ、性を隠しすぎ、痛みを隠しすぎ、快楽を隠しすぎだと思う。そういうことを隠すことが先進国であるという社会になってしまっているから仕方ないが。それらを隠す傾向が続くと"生"の実感がわかない人間が増えるのは至極当然のことなのかもしれない。自分が存在しているという実感がわかないと魂と肉体が分離をはじめて上辷りし、あらゆることに鈍感になる。頭ばかりで考え悩みばかりが増える。そして精神を病む。リスカ症候群、セックス依存、ブランド依存、自殺、いじめ、猟奇的殺人事件、先進国で起こるこれらの問題って、突き詰めていけばこの辺りに辿りつくんじゃないかと思ってしまう。ところで、この映画は、どうにもラストが消化不良。あのシーンの後まで見たかった。自分がいるビルの爆破くらいまでやってくれれば、個人的評価が上がったに違いない。もちろんその為には、マーラをどうするかという問題が残るが。いっそのことマーラを幻覚としてはっきり描いてたのなら、傑作と思ったのかもしれない。自分の心を自分で攻撃する暴力性が、段々と外に向かっていき破壊衝動に繋がる。しかし破壊衝動は外に向かいだすと忽ち自己を破壊してしまう。タイラーと"ノートン"とマーラというキャラは、自己の理想、死への欲動、生への欲動を、それぞれ象徴的に分配したのだと思う。その絡み具合が巧みで、自分の肉体と精神を繋ぎとめていく過程を、斬新な形で纏め上げた手腕は見事。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-07-22 21:35:43)(良:2票)
50.  天使にラブ・ソングを2
自分の友人は高校時代にこの映画と出会い、心を揺さぶられるような感銘を受け、長い努力の結果、R&Bシンガーになるという夢を叶えた。自分は音楽よりも映画が好きだったからか、それほどまでは感動はしなかったが、音楽の持つ素晴らしさ、歌うことの素晴らしさは充分に伝わってくる。映画には人の人生を根底から覆すような力があるということを教えてくれた貴重な作品。幼い頃のローリンの歌が聞けるということだけでも充分に見る価値がある。
[地上波(吹替)] 8点(2009-07-12 20:46:38)
51.  Mr.インクレディブル 《ネタバレ》 
良く出来た脚本の隙間を縫うように、デフォルメされたアニメーションの動きで魅せる。娯楽を通り越して、おもてなしの精神さえ感じた。つまらないと感じる暇がないほどに。宮崎駿が初期~中期アニメで得意としていたものが、ピクサーの中で確実に消化され息づいています。マイナスをつけるとすれば、都市戦に移行してからの失速か。しかし、面白いです。夫婦喧嘩、兄弟喧嘩が面白いので是非吹き替えで。水を疾走するシーンはポニョに軍配。
[ビデオ(吹替)] 8点(2009-07-07 18:30:21)
52.  シティ・オブ・ゴッド 《ネタバレ》 
何ともおぞましい一つのスラム街の子供たちを、徹底してエンターテイメントとして描く。スタイリッシュな映像で且つ脚本的に面白く、娯楽映画として味付けしているのはわざとでしょう。吉行淳之介の名言「汚れるのが厭ならば、生きることをやめなくてはならない。生きているのに汚れていないつもりならば、それは鈍感である。」という言葉を思い出す。私たちは遠い世界の関係のない話と思ってこの映画を楽しむ。エンドロールまでは。しかし、最後の最後で実話と知る。そこで気づく。この話の遠因には常に私達がいて、搾取する側と搾取される側の深い深い溝が横たわっている。先進国が豊かでいる一番下で、こういう子供達が懸命に支えている。そのことを重い現実として受け止めなければならない。先進国の人々は、汚れていないつもりで生きている。そのことに対する強烈な皮肉だ。ナイロビの蜂でも思ったが、この監督は余韻の棘を観客に打ち込むのがとても上手い。
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-07 17:52:12)
53.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 
単純に面白かった。つっこむ所、ありえないだろって所が山ほどあるのですが(警察なんて鼻から存在してないに等しいとか、科学捜査なんてものが出てこない所とか)そんなことを忘れさせるだけの何ともパワフルで情熱的な脚本でした。伏線を大量に仕掛けており(まさに物量作戦)、どんどん繋がっていくので終始飽きさせない。スリル、嘘の配置で、他の余計なことをあまり考えさせないように、展開していく。休憩にペネロペの熟した美しさや、極彩色豊かな芸術的な映像を配置。脚本の巧みさを充分に感じさせられました。 大味で激情的な事件ばかりなので下手をすると火サスや韓ドラみたいになる筈なのに、そんなことありません。不思議と上品な仕上がりになってます。最後の母の独白シーンだけはかなり不満でしたが、佳作でしょう。終わってしばらくして考えてみると、この家族って揃いも揃って、犯罪者なんだよねえ。しかも重罪。テーマが錯乱している印象もありますが、女性の弱さや困難をしたたかさで乗り切ってゆく姿を、サスペンスフルな娯楽として描いた監督の手腕は素直に評価できると思います。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-24 15:06:35)
54.  藍色夏恋 《ネタバレ》 
予想外に素晴らしかった。耳すま、時をかける少女(アニメ)みたいなノリですね。素直なキラキラとした描写が随所に溢れていた。特に素晴らしいシーンは、砂浜でペットボトルを飲み干す彼を見つめる所だ。彼女にとって初めて、自分とは違う異性を肌で感じたような瞬間だったのだと思う。熱い砂浜の海岸で、ペットボトルの水を一気に飲み干す彼。冷たそうな水が、どんどん喉仏を通って吸い込まれていく。そして、ゴミ拾いをするおばさんの元へ走っていき、気さくに声をかける。思わず笑みがこぼれる。人間に好意を抱く瞬間って、こういう一瞬だよなぁ(異性としてかどうかは分からないが)主人公の性格描写で、対抗して自転車をジリジリ前にやる所なども好き。個人的には、この映画は一過性の同性愛というよりも、クィア映画だと思いますが、着地点をあそこにしたことによって、どちらにも解釈できる、より深みのある作品になっていると思います。渚のシンドバットの方が完成度が高いと思うが、こちらは鑑賞後の後味のよさが堪らない。カルピスみたいな爽やかさがある。もっかい夏頃、見てみようと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-17 20:54:14)(良:1票)
55.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
脚本の構成が良く練られていて、ラストに向かって突っ走る感じが良い。繰りかえしの回想のSFは何個か見てきたが、どれも段々と退屈になっていくものが多かったと思う。しかし、この作品は飽きることなく段々と速さを持って、切なさをましていく。そしてラストシーンがすごく良い。実生活において、恋人や好きな人と別れる時にも、後ろ髪を引かれるように振り返ることはある。しかし、その体験よりも切なさが重く圧し掛かってくるのは、主人公の必死な思いを丹念に描いているからだろう。不満を述べるならば、名台詞と良いエピソードが少なかったのが、個人的には物足りなかった。複雑な話なので余計な部分を削ぎ落とし、わざとスッキリさせたのかもしれないが、幼少時代のエピソードとして良いものが欲しかった。キスシーンの所を、もっと捻っても良かったと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-02-03 11:51:14)
56.  セブン 《ネタバレ》 
面白くて良い映画であるのは言うまでもありません。俳優も音楽も映像も◎。好きなシーンは、主役二人で胸毛剃るシーン。あれは、渋い。そして特筆すべきは、カイルクーパーのモーションタイポグラフィのオープニングが、今まで見た映画の中でも忘れられないくらいカッコイイ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-02-02 16:23:00)(良:1票)
57.  処刑人 《ネタバレ》 
ネコ好き、バイオレンスが嫌いな人は見ない方が賢明でしょう。アニメっぽいが、名シーンがいっぱいある好きな映画の一つです。炎のような銃撃戦でのウィレムデフォーの絶叫、便器ダイブ、法廷での台詞、アイロンで止血のとことか…。ウィレムデフォーが最高なのは言うまでもありません。話としては、細かい荒さはあるけれど、脚本はなかなか良いと思います。キャラクターの個性、台詞、構成などが特に。個人的には、凡才で間抜けな警官が、最後の最後で見事な推理をやってのけた(一人で6丁の銃を持ってたら?)という所がマニアックに好き。ウィレムデフォーが推理する時に、過去の映像に彼が推理をしながら現れるといった演出も良い。クラシック音楽に身を任せて推理していくのとかも。個人的には、ロッコのアホで人間味溢れるキャラは大好きだが(乳揉んでるとこと、泥棒マスクのとこが特に)、善良なバーテンやネコまで殺してしまう箇所は、無いほうが楽しめたかなあ。証拠残さずに操作のかく乱するのは、もっと他の方法があるかもしれないし、死ぬ理由はマフィアの運び屋と下っ端殺しで十分でしょう。(ファニーファニーの名シーンはなくなるが)観客にラストの法廷まで、”殺し”に対する罪悪感を忘れさせ没頭させて、静かにあの賛否両論のインタビューが流れるとなってたら、評価は格段に上がったかもしれない。あの親子の繋がりも、もっと描いて欲しかった。それにしても、処刑人2は、あと何年かかるのだろうか…。
[ビデオ(字幕)] 8点(2009-02-01 05:02:04)
58.  きょうのできごと a day on the planet 《ネタバレ》 
大学生の生温い日常を描いた、36度5分くらいの映画。「今日ね、こんなことがあっってさー。そんでなー、こう思ったんだよー」「ふーん。で、オチは?」なんて言っちゃう人には、つまんないかもしれない。人に言いたくなることや、人に言っても仕方の無いこと。この境界はその人物によって変化する、とても曖昧なものだ。その辺りに漂う葛藤をうまく描いている。個人的には、自転車で買出しに出かけた柏原収次が、深夜に人気の無い街で轢き逃げされるシーンが好きだ。結局事故のことは誰にも話さないのだけど、「この怪我どうしたん」って気遣ってくれる友達が側にちゃんといる。何気ないことだけど、そういうのいいなあ。あとカワチ君のシロクマの絵の具の話も好き。 何度も見てるが、見終わった後友だちに、「きょうのできごとって映画見たんやけどなー」って話したくなる好きな映画。「ふーん、だから?」と言われたとしても。
[DVD(邦画)] 8点(2009-01-30 04:09:34)
59.  海がきこえる<TVM> 《ネタバレ》 
拓と里伽子の意識の外で、恋愛が行われているところが良い。二人とも、高校時代の最後までお互いの気持ちに無自覚なんですね。  この映画のように、好意というものは、青春の真っ只中や諍いの中では、無意識の中に閉じ込められていて、自分では気づきもしないものなのかもしれない。しかし、一旦井の外にでたり、違う角度から眺めたりすると、抑えられていた感情が意識となって心の中に立ち現れてくる。失って初めて分かるという感覚や、視点を変えることで分かる感覚ですね。それを、ハワイや東京などというように場所を行き来することで表現しているのだと思います。  井の中の蛙という言葉があるが、大人になるということは、井の外に一歩踏み出すということであり、そしてその出てった先の周りには、それより大きな井が存在している。小さな世界からの脱出を、子供の頃から延々と繰り返すことで、人は大人になっていくということを、この映画は雄弁に物語っている。当たり前のことだけど、これに気づけたのは、けっこう大きな収穫でした。  ジブリの中では、キャラクターの動きが少ないから、キャラクターの生命力が感じられないはずなんだけど、不思議とひとつの世界が成立しているのは、土佐弁という強力な武器を携えることと、写実的なアニメーション、キャラの心情を丁寧に描出しているからこそだと思う。ここで書くのもあれですが、コクリコではこの部分を感じれなかったですね。作品にとって生命力というのは欠かせないものなんじゃないかな。  この作品で残念だったのは、ラストにかけて説明的になっていったこと。ラストの拓の心情吐露でずっこけました。電車に乗らずに、逆のホームに駆けていく描写だけで良かったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2011-09-15 05:13:24)
60.  ヒア アフター 《ネタバレ》 
3つのストーリーが同時進行で語られ、物語の最後で交錯するという作り。満足度はまあまあでした。ストーリーが、収束に向けて角度を変えていく過程が遅く、娯楽作を期待して観ると、終盤まで退屈するかもしれません。また、ひとつの物語としてのパワーも、最近のイーストウッドの作品を期待して鑑賞に臨んでしまうと、多少見劣りしてしまうかも。[以下ネタバレ]  後ろばかりみつづけていたジョージは、物語の最後の最後で、初めて未来のヴィジョンを見る。同じものを信じている相手とは、心を共有でき、希望を見出せるということ。 だが、それは逆に言えば、同じ人間でも信念の価値が違えば、世界は隔てられてしまうと言ってるようでもあり、それが真実だとしても、一抹の寂しさを感じさせる部分ではある。少年は母の胸に飛び込んでいくが、分かり合ったとはいえないし、青年と女性もお互いを慰めあうしか、この現実世界を生きる術はないというようにも見えてしまう。社会とのつながりのなかで、どう葛藤や対立を乗り越えていくのかを期待して見てたので、観賞後のカタルシスはあまりなかったというのが本音。三つのストーリーとも、内部では問題を解決できずに、外部でお互いを補完し合うような感じですね。  外の世界が広がっていることを感じるということは、問題解決の際にすごく現実的だと思うのです。例えば、いじめや差別という問題でも、同じような境遇の外にいる人たちで、「団結しあう、共感しあう」といったことが、勇気や力を与えるのは事実でしょう。しかし映画ですから、もう少し魔法を見せてくれても良かったという気がしないでもないです。 ただ、こういう非科学的なものを信じる人達の物語を見せられることで、より身近に感じることができたのは事実でした。また、近頃の群像劇で描かれがちのテーマである、宗教という概念とは少し距離を置いているのも良かったです。結局のところ、神様よりも、「人間」を一番信仰しているということが、この映画からは伝わってきます。それが神への陶酔と同じ様な包容力を帯びていて、温かい気持ちにさせられました。
[映画館(字幕)] 7点(2011-02-19 21:18:26)
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