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Nujabestさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 112
性別 男性
自己紹介 10点---- 個人的ツボ。欠点なんて知ったこっちゃない映画。
9点---- 完成度高し。人にすすめたくなるような映画。
8点---- 良作。ちょっと気になる点も。

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41.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
現在の視点から冷めた目で見てしまうと、ツッコミ所がないわけではない本作ですが、脚本の細かいテクニックが巧いのであまり気にせずに見れます。ネフが、恋に落ちる説得力に欠けたのはいただけませんが(笑)全編に渡り、サスペンスのエキスが凝縮されているので、100分ほどの作品ですが、正直あっという間。そういう娯楽的視点で見ると、このサイトで評価の高い『サンセット大通り』や『情婦』よりも面白いと思います。ネス、フィリス、主役2人のキャラもそれなりに良いですが、何よりもローラとキーズの存在がスパイスとして効いています。初めてローラとフィリスが並ぶシーンがあるのですが、まるでバービー人形のような瞳ウルウルのローラの横で、ダミ声で煙草をふかすフィリス。こちらは、まるで場末のバーのママのよう。フィリスは、それこそ後続のファムファタールの中ではインパクトでは劣るものの、この対比によってものすごく悪女に見えます。一方でキーズは、粋な台詞とキャラクターの良さで欠かせない存在になってます。主役のネフは、マッチのつけ方がカッコ良すぎます。これは、真似したくてもできません。ラストには、キーズに美味しい所を持っていかれますが・・・。ところで、ウディ・アレンが本作を「史上最高の映画」と評しているそうですが、そういえば『マッチポイント』あたりで、その影響が見え隠れするなあと思ったり・・・。ワイルダー初期の中では好きな作品なので8点献上です。
[DVD(字幕)] 8点(2009-10-24 09:31:32)
42.  カイロの紫のバラ 《ネタバレ》 
好きな映画。映画館で見たかった作品とも言える。ユーモアとペーソスを巧みに織り交ぜながら展開する語り口も巧みですが、観客が思い描くラストを裏切って、あのラストに着地する。それでいて不満足には陥らない。その匙加減の上手さが、アレンが天才といわれる所以だと思います。個人的には、ラストのミアの表情は、現実逃避するしか能がない女から、映画を愛してはいるけれど現実は知っている、強くしなやかな女性に成長したハッピーエンドだろうと思っています。きっと彼女は、もう暴力亭主の元に戻ることはないでしょう。だからこそ、切ないながらも爽やかな希望が残る映画だともいえます。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-23 22:48:51)(良:1票)
43.  恋はデジャ・ブ 《ネタバレ》 
ラブコメ映画のオススメを聞かれたら、いつもこれを薦めます。見る人をあまり選ばない娯楽作だと思います。途中、「君が毎日同じような人生だったらどうする?」「俺はそんな人生だよ」という掛け合いがあります。この登場人物のように、毎日をデジャブして暮らしてるような人は多いのではないでしょうか。たいして変わりばえのない日々。刺激の無い暮らし。そういう不満を持ってる人には、ほのぼのとしてて、元気の出る作品だと思います。自分にとっては、見る度に「人生において、同じ日は一日だってないんだよなあ」と再認識させてくれる素晴らしい映画。半分のビールを、まだ半分"も"あると思える、そんな風に日々を積み重ねたいものです。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-19 01:35:12)
44.  うなぎ 《ネタバレ》 
まさに「うなぎ」のようにヌルヌルとつかみ所の無い作品。素晴らしい演出、シーン、脚本と感じさせる箇所もあれば、所々に現実に引き戻されるほど興ざめする箇所もあって、良い映画なのか悪い映画なのか自分でも点数に迷います。総じて演出と編集などが…微妙でした。テンポの良いコメディというよりは、ブツブツ切れてて違和感があった。2時間以内に収めたかったのかな・・・。冒頭の殺しのシーンで血しぶきがレンズに付着するシーンとかも、第四の壁を意図的に破る必要性があったのか疑問。中身の方は、一種の桃源郷を表現したらこんな映画になるのだろうし、ファンタジー的な映画だと思うので、シナリオの整合性はツッコムだけ野暮なのかもしれません。しかし、この監督の作品が持つ、土臭さ、人間のにおいがする所はとても好きです。そして、随所に描写される水面の美しさが際立ってました。個人的には、役所さんの演技はこの役にはあってないと思ったので感情移入しにくかった。頭に包帯巻いてパイナップルぽくなった箇所は笑えました。清水美砂が柄本明にジャイアントスイングされて、あられもない姿をさらしているところも大笑いしてしまいました。
[DVD(邦画)] 6点(2009-10-14 12:26:58)(笑:1票)
45.  激突!<TVM> 《ネタバレ》 
久し振りに見ました。昔は、ただ不条理な怖さを演出した映画という印象でしかなかったが、今回は運転できるようになって見たので、その恐怖がより実感を持って体験できました。短編的内容をちょっと引き伸ばしすぎている印象もあり、じれったい映画ですが、脚本や演出は中々の出来だと思います。主人公の気持ちが分かるようになったその一方で、ほんの少しではあるが、トラックの運ちゃんの気持ちも分からないでもない。確かにあの赤い車は異様に心を逆撫でする何かがある。言うなれば、闘牛の気持ちを昂らせる"赤"というか。あれが青い車だったらあそこまで執拗に追わなかったに違いない。
[地上波(字幕)] 7点(2009-10-06 05:42:32)
46.  風の丘を越えて~西便制 《ネタバレ》 
この映画の魅力は、生き別れた二人が再会するシーンに凝縮されていると言っても過言ではない。意味のある会話をするでもなく、パンソリを二人で演奏するだけという、一見地味でありながら、二人の積年の感情の迸りを見事に描出しきったシーン。動きは静かでありつつも、画面から溢れんばかりの激情が伝わってくる。パンソリというものはこの作品を見る以前から知っていて、観賞したことがあった。先日、オ・ジョンヘのパンソリも生で聞かせてもらったが、どちらも、この作品のラストシーンほど心には届かなかった。この作品では、それほどまでに映画の総合的な力をまざまざと見せ付けられた。役者の力、歌詞の力、演出の力、監督の力、音楽の力、そして物語の力、そのどれもが見事なまでの相乗効果を持って最後の再会シーンで迫ってくるから凄い。舞台芸術の"生"の迫力も嫌いではないが、物語の力や歌詞の意味、演じ手の思いが理解できるというのは、感動に至らしめるのにはすごく重要な要素だと思った。序盤は物語の軌道に乗るまでが随分とスローペースで退屈だったが、ラストに逆転満塁ホームランを打たれたという感じ。マウンドでぐったりなって立ち上がれなくなったピッチャーの気分。最後、ナレーションで説明して終わったと思うが、正直あれは蛇足だったと思う。静かな別れで〆ても良かったんじゃなかろうか。娯楽映画ではないが、今までに見た韓国映画の中では一番心に残った作品である。
[映画館(字幕)] 9点(2009-10-06 01:08:13)(良:1票)
47.  おくりびと 《ネタバレ》 
死というものを生業の一部としている人間の成長ドラマを描くと同時に、死というものを遠ざけている現代日本人の姿を浮き彫りにしていたと思う。スーパーで大量陳列されているような(死を感じさせない)肉は平気で触るし食べるのに、生きているタコには触ることができない。そんな妻の姿は、どこか自分とかぶるところがあった。今の日本人の象徴があのヒロスエなのだと思う。子供の頃は平気で昆虫とかゴカイとか触っていたが、今は触れることさえ勇気がいる。日常的に触れていないと、段々と想像力が台頭してきて、恐怖が勝っちゃうんですよね。現代社会も、「死」は現実より切り離され、病院や屠殺場に押し込められている。医学や流通の発展は生活に多大な恩恵をもたらしたけれど、精神面では何かを少しずつ欠落させていってるような気がする。だからこそ、この作品の発した「死とは普通なもの、自然なものなんだよ」というメッセージには、大いに共感する。死が身近に存在した昔の伝統的な日本の姿を思い出させてくれる、生きる活力を与えてくれる良い作品だと思う。そして、そういう活力の根源は「笑いと愛と食」だよなと再認識。中身については、ファーストシーンでぐっと掴まれた。その後の導入部はナレーションが饒舌すぎて気になったが、総じて脚本は巧い。「生と死」を根底の軸としている映画だと思うので、ご都合主義に見える死によっての問題解決も気にはならなかった。ところで、ルーズソックスに込められた愛らしさの表現や、川原で佇んでいる所に霊柩車のクラクション(あの独特の音)が鳴るという笑いは、日本に住んでいる人にしか伝わらないだろうなー。土手でのチェロなど、多少しつこい部分もあったのでこの点で。
[地上波(邦画)] 8点(2009-09-24 22:50:44)
48.  酔画仙 《ネタバレ》 
この監督は画作りが本当に巧いと思う。ひとつひとつのシーンが実に美しい。ただ、自分は物語が映像にのっていかないと退屈するタイプなので、観るのに非常に体力を要した。瞬間的な感動はあっても、それ以上の持続的な感動には達しなかった。そういう意味では、同監督の、風の丘~の方が遥かに良い出来だと思う。(あちらも物語は希薄ではあるが)この監督、既に100本以上撮ってるそうだが、近年の作品は観る人を選ぶ映画だろう。(自分は最近の4本しかみてない) 特に印象に残ったのは、チェミンシクの熱演。そして、床に精液が墨絵のように散らばるショットのやるせなさ。思わず「せつねぇ」と心の中で呟いてしまった。
[映画館(字幕)] 5点(2009-09-24 15:17:45)
49.  バック・トゥ・ザ・フューチャー 《ネタバレ》 
子供の頃飽きるほど見て、十数年ぶりに再鑑賞しましたが、やはり傑作。まさに娯楽映画のお手本。と、月並みなことしか言えません。しかし、今回観て一番心に残ったのは、マーティーが過去から帰って来たら、家族の性格まで変わっていた部分。子供の性格というのは、幼少時の家庭環境によって形成される部分が大きいと思います。このことで、偶然ジェフを殴ってしまった父親が、「その後の人生をどう歩んだか」「どう生き抜いてきたか」が良く分かります。この映画は、ちょっとした勇気と行動が、人生や生き方さへも変えてしまうことがあるということを雄弁に物語っています。それは、その人の人生だけでなく、その妻や、家族、子供にまでどこまでも広がっていくのです。なぜなら人間は社会的生き物であり、対人関係において、人に影響を与え、与えられて生きているからです。このことは、やりたいことや欲しいものがありながらも、文句ばかりたれて何も行動せずに燻ってる人達への最大の応援歌ではないでしょうか。人生の長いスパンやその時々の自分にとってはささいなことでさえも、自分の子供の性格にまで影響するかもしれないと考え出したら居ても立ってもいられなくなります。現在を一生懸命生きなきゃと思ってしまいます。そんなパワーがこの作品にはあります。世のパパさん、男性達に是非観賞して欲しい作品です。不満点は、過去の母親の心変わりの早さ(笑) 昔は気付きませんでしたが、これはいくらなんでも早すぎます。「身内(だったっけ?)とキスしてるみたい」という言い訳は文句無しに上手い。
[地上波(吹替)] 9点(2009-09-04 20:27:34)(良:2票)
50.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
群像劇を2時間以内に纏めて人間の本質を描ききっているのがまず見事。それでいて、差別、銃、宗教、メタファーを絡めながら各々のドラマを配置している。実に巧い。群像劇の弱点のひとつである、それぞれのエピソードの深みにはかけるものの、映画そのものがテーマをじんわりと浮かび上がらせているので納得の出来。自分が一番に思ったのは人間とは表面的には全くあてにならないということ。例え口や行動で正義、差別反対を唱えても、そんなものは見せ掛けだけにしかすぎない。人の行動、言動には必ず動機があり、それが「他人を思う気持ち」から発せられたものかどうかは行動や言動では分からない。正義とは他の理由を動機にすることも多いと思う。例えば若い白人警官。かれは、黒人を殺してしまったけれど心の底には「黒人は何をしでかすか分からない」という気持ちがあったのだろう。それまで彼は、"自分の価値を支えるための正義"で自己満足に浸っていた節がどこかにあったのかもしれない。白人ヒッチハイカーだったら同じことが起こっただろうか。差別というものは実に巧妙に人の心の隙間に忍び込んできて、ふとした瞬間、なにかがクラッシュした瞬間に突然堰を切ったように溢れ出す。それが、普段は抑圧して顔を出さないその人の心の奥に潜む真実だ。心の中まで、差別をしない人ってほとんどいないんじゃなかろうか。この点は、非常に考えさせられた。この物語の人物達は常に不安を抱えていて、見えない何かを恐れている。不安ばかりが蓄積し、想像が暴走し、予断と偏見つまり差別を生み出す。本当に心があたたかい人とは誰なのか、その見極めは本当に難しいことだと思う。話しあう、喧嘩、抱き合うなど身体と言語による衝突を経て人間は理解しあっていくしかない。その他感心したのは、被差別者が差別反対を訴えながらも差別をしたり、黒人が「白人と仲良くしている黒人」を疎む箇所。そして、この作品は、人間の冷たさだけを描くだけではなく、人間の持つあたたかさを同時に描いている。これも人間の持つ本質的な真実であると思う。空砲を買った女性、病気の父親の為に口を滑らせ差別した男、ずっと黒人に奉仕してきて裏切られたのに泣き言一つ言わない男、昔は正義を志し黒人犯罪を目の当たりにして暗黒面に陥っていった警官が救出した行動、どれも考えさせるエピソードばかりだった。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-02 23:38:32)(良:1票)
51.  マグノリア 《ネタバレ》 
たまに街中の雑踏のベンチに座って通り過ぎる人達を見ていると、ふと、この映画のことを思い出します。当たり前のことだけど、通り過ぎていく一人一人がそれぞれの人生を生きていて、そして何の因果か、偶然この時間帯に、この場所を通り過ぎる。そんな日常のささやかな一場面が、とんでもない奇跡に思え、たったそれだけで感動するんです。それぞれに人生のシナリオがあって、幸福や不幸を抱えていて、その結末は誰も書ききっていない。中には死を考えながら歩いている人もいるかもしれないし、これから恋人に会いに行く人もいるかもしれない。陳腐な空想で誰もが思ったことがあるかもしれませんが、すごいことだと思います。数学的に確率で計算すると、とんでもないことになりそうです。高校時代に、この映画で初めて群像劇というものを知って、それ以来群像劇が大好きになりました。この物語の主要人物達は、それぞれが人生に於けるターニングポイントにもなりかねない事件を経験します。それは、その後の人生に大きく影響を及ぼすようなトラウマにもなりかねない事件です。昔、降り止まない雨などない~と歌った歌手がいました。どんなに土砂降りが続こうが、カエルが降って来ようが、この映画は降り止まない雨などないということを教えてくれます。最近、おたまじゃくしが降ってくるような珍現象が日本でも、相次いで報告されています。そのうちカエルも降ってくるかもしれません。ところで、この映画はAimee Mannがかなり評価をあげてますな。ほんと、ハマってます。サントラええです。出来としてはクラッシュ(2004)の方が上だと思いますが、好きな映画なので8点献上です。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-02 12:22:37)
52.  シックス・センス
高校時代、映画の日の午前中に学校サボって一人で見に行った思い出の映画。(良い子はマネしてはいけません) その後学校に行って、その面白さを友人Aに熱く語っていたら、「俺も見に行きたい!」ということで、もう一回その日の放課後に、今度は2人で鑑賞。後日、2人でこの映画について熱く語っていたら、C君が参加してきて、「俺も行きたい!」と。そんなこんなで、自分としてはその当時前代未聞の、劇場での計3回の鑑賞。B君、C君ともに劇場から出てくる瞬間の興奮っぷりがたまりませんでした。映画の最中もネタばらしのシーンの二人の表情を盗み見して、自分だけ、ほくそ笑んで鑑賞しておりました。何とも思い出深い映画です。 で、何が言いたいかといいますと、当時の高校生が3500円も払って見た価値はあったということです。
[映画館(邦画)] 8点(2009-08-31 12:59:08)(笑:2票) (良:1票)
53.  運命じゃない人 《ネタバレ》 
これは面白い。邪道だが、先日図書館で借りた05年のシナリオ年鑑に載っていて、脚本を読んでからの鑑賞。読む分においてはその脚本の上手さに脱帽。9~10点に近かった。ということで、借りて見てみました。何かいろんな意味で裏切られた。スタイリッシュで小粋な映像を予想していたので、ここまでコメディに味付けしているとはちょっと予想外。まぁこのダササも、これはこれで成功していたと思う。味があるといいますか。中村靖日さんを主役に据えた時点でこう撮るしかないな。それほど強烈キャラ。特に足首の演技には魅せられた。ラストがシナリオとは異なっていたので、最初あのおっさんが誰かわからなかった。なるほど。細かい。ところで、神田役の山中聡もどっかで見たことあるなーとずっと考えていたら、「ハッシュ」の濃いキャラの人じゃないですか(笑)この人も演技上手いなw 内田さんの他の作品も観てみようと思います。表層的なユーモアだけに頼るだけじゃなく、脚本の構成や仕掛けで、人を楽しませようとしているのが伝わってくる映画というのは、やはり嬉しくなってしまいます。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-25 16:04:16)(良:1票)
54.  サマーウォーズ 《ネタバレ》 
予告見た印象では、一時期流行したセカイ系を踏襲しただけの作品かと思っていたが、曾祖母や親戚を巻き込んでの縦の繋がりや、一族の連帯感を投入してきたことは斬新だった。しかし、前半あれだけ人間同志の連帯感を意識的に描いた割には、クライマックスの戦闘シーンで、格ゲーや花札で「個VS個」の戦いに変貌するところなど不可解な点も。だが、所々で甲子園の実況中継を印象的に挿入してきたことで、「あーなるほど」と納得。この監督さん野球が本当に好きなんでしょうね。自分も大好きなスポーツなんだが、後半の戦闘シーンの描き方なんて野球の攻撃とまるっきり一緒。野球は一見、個VS個のスポーツに見えるのだけれど、チームの連携無しには成り立たない競技であり、そこに人間と人間の繋がり、つまり小さな運命共同体である社会が存在する。失敗する人がいたり、それを挽回する為に頑張る人がいたり、それらをお互いにカバー、連携しあってゲームを作り上げていく。そして勝敗が決まる。やはり、意図的にセカイ系とは一線を画す作品にしようと努力したのだろう。ところで肝心の内容なんですが、主人公が野球で言えばサード辺りをやっているようでイマイチ没頭できず。やはり映画の主人公は一番活躍して欲しいというのが正直な所。ピッチャーであり4番である必要もないが、せめてドでかいホームランくらいは打って欲しい。なんか活躍が、地味といいますか…。多分成長する前の段階を丁寧に描いてないからだと思う。それ故に、ナツキが侘助へ抱いていた憧れなのか初恋なのか分からない感情が、ラブマシーン(その感情のメタファー?)をぶっ倒すことで、主人公への恋に発展したという展開も、やや唐突で説得力が足りなかったように思う。他の選手の活躍は、各々泣き所があって良かったのだが。みんなが主役の物語ってのも悪くないが、自分は物足りませんでした。一番印象に残ったシーンは大屋敷の長い縁側で、各々が死の悲しみに浸っている箇所。人間と自然が一体となってる感じ、生と死が身近にある日本の田舎の原風景を描いているようで素晴らしかった。
[映画館(邦画)] 6点(2009-08-22 14:34:27)(良:2票)
55.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
家庭というものが形骸化、空洞化し、ギリギリのとこでなんとか成立している家族というのは、まぁ陳腐だがリアルなのかもしれない。しかしやや不満もあった。ここでは、主役の父親について。彼には、自分なりの理想とすべき威厳のある父親ってのがあるらしく、それを家族の前で虚勢を張って示している。しかし実際はプライドが邪魔をして本来の自分を家族の前で晒せないでいる可愛そうな男。ちょっと切ない。後半、車に轢き逃げされて覚醒するのだが、これも副次的なものにすぎず、自分から変わってやろうという意志が最後までほとんど感じられない。どこまでも受け身な感じが気になった。そしてラストに向かうわけだが、あの終わりだと、子供の才能に希望を託して終わったようにしか見えない。息子が弾く『月の光』は、親が太陽になってあげないといけないってメッセージなのだろうか?(月光は太陽無しには成立しませんからね)何れにせよ、ぶっ壊れた家庭の中に存在する、うっすーーい希望しか描かれていない。それ故に、あの父親のままだと、挫折ゆえに満たされなかった不満を子供に押し付けるような教育パパになってしまいそうな危機感が募る。親自身が発光して見えないんですよね。自分の満たされないモノを子供の価値で満たそうとする親っているじゃないですか。ああいう人達とダブって見えて、「これでいいのか…?」と何とも煮え切らない結末だった。父親の精神的成長をみたかったです。家族全員、落すなら落して欲しいし、希望なら希望を見たい。末っ子だけじゃなくて。父親が朝ピアノを買って自宅に戻ってきて、朝食後、「月の光」を息子がリビングで弾くという展開ならまだ納得できたかも。何れにせよ、どうにも中途半端で、映像と音楽の良さに脚本が追いついていない印象。役所の登場シーンは言うに及ばず、構成、台詞などもいまひとつ。しかし、ホラーとコメディを交互に行き来する不思議な世界観は充分に堪能。一番笑ったシーンは、キッチンで大威張りしてる父親のシーンの次に、ハロワの階段に並んでる父親を上から目線で撮ったシーンをつないでいるとこ。ニクイ。サントラ欲しくなった。
[DVD(邦画)] 6点(2009-08-17 14:38:48)
56.  マッチスティック・メン 《ネタバレ》 
この映画の何が上手いって、クライン医師の登場のさせ方につきる。ロイは導入部で段々と潔癖症だと分かっていく。カーペットの上のゴミ一つ許せない、脅迫的に掃除するシーンを先に見せる。そこに、ガサツな相棒が、自然な流れでやってくるのだが、ジャンクフードらしきものを食らいながら突入してくるし、土足で踏み込んでくるわで、見てるこっちもロイと同様にイライラ。ロイが一生懸命に掃除してた、塵ひとつ落ちてないカーペットを汚しまくる。そんな折に、タイミングよくクライン医師をロイに紹介。普通に紹介してたのなら、あんな怪しい男が紹介するセラピストなんて信用できるわけが無い。しかし主人公は電話してる際も、指紋の方が気になっていて疑う余裕すら無い。相棒もちゃんと拭くと言いながらケツに挟んで受話器を拭く(笑) これは後半、空港で使った詐欺の手口と同様で、他の事に気を取られている隙に騙すテクニックそのものである。この辺りの一連のシーンの流れの上手さには唸った。自分は最初からこのセラピスト怪しいなと思っていた。なぜなら、靴を家具の上に投げ出す不遜な態度でセラピーにあたるからだ。しかし、このことは後半で職業を見破る際の伏線として回収しており、そういう疑い深い人たちの疑念を薄くする仕掛けまでほどこしてある。そもそも、"罪悪感で、葛藤し精神病に陥る詐欺師"という設定がとても良いし、脚本にまで詐欺師のテクニックを上手に応用して使っているのは素晴らしいの一言。ただし、あのコンゲームの歴史的名作のような爽快感がないのは、あの映画とは逆に完膚なきまでに騙されてしまったからだろう。ロイの精神的成長につなげているのは素晴らしいが、ドラマの爽快感としてはやっぱり敵わないな。余談だが、詐欺にかかりやすい人というのは、弱点を持っている人、確固たる自分を持ってない人、他人の評価に左右されやすい人etc…だそうだ。"弱点を持っている人”というのも、この脚本では上手いこと使用してある。
[DVD(字幕)] 9点(2009-08-16 20:05:12)
57.  ルディ/涙のウイニング・ラン 《ネタバレ》 
数年前バスケでアメリカを沸かせたJ Macという自閉症の少年の話とすごく似てますね。野球などでは思い出代打というような言葉もあるし、学生の最後の試合では結構この手の記念出場は良くあることで、そこまで気にならなかった。チームメイトがその機会を作り、ルディが全力で走り出したことに意味があると思うので。途中までは主人公のルディは、ウザキャラだなと辟易していた。が、段々とその思いの強さに心打たれた。それほどルディの感情が突進してくる。夢を持ち、自分の無能を知ったとき、人間が起こす行動には二種類あると思う。自ら限界を作って何もしないで諦めてしまうか、逆に、少しの可能性でもあるのならば、それに賭けてあらゆる努力をするか。スポーツをやっていた人なら分かると思うが、自分の限界をどこまでも乗り越えようとするルディのような努力を見せられると、選手はその人に対し、反感を持つか、それに触発されるかに分かれると思う。反感を持つ者は己の限界を自分で築き上げている人間。そういう人間は愚痴を言うことに終始する。自分が最初ルディをウザいと思った理由はこれだったんだと思う。要するに嫉妬と自己嫌悪ですね。触発される者は切磋琢磨し合い、そしてその努力に敵わないと気づけば「オレにはあいつ程の努力はできない」と負けを認める。そこで尊敬の念が生れる。このラストシーンは同情よりも尊敬に溢れていたと思う。彼のアメフトとノートルダムへの愛情に、自分達は絶対に勝てないと心を動かされたからだろう。それほどチームメートを鼓舞してきた功績は評価に値するのだろう。そして他人の目線など気にも留めずに、全力で駆け出すルディ。たった27秒間の為に…。この世界、いくら努力しても無理なことはいくらでもある。しかし、ルディは自分の限界を作らないで、自分ができる最大限の努力をしている。凡人にはできませんよ。ここまでの努力…。全く自分を客観視できないルディだが、自分は素直に心打たれたし、拍手を送りたい。何もしないで諦めるか、全力で頑張って諦めるか。両者には途轍もなくも無く大きな差があることを教えてくれた。ただ、脚本の荒さ、死んだ友人忘れてるとか、チームを思う気持ちも描いた方が良いとか、動機面に関してとか色々とマイナスもあったので8点(実話物なので忠実に作ったのだろう)青春時代を思い出させてくれるスポ根映画の佳作でした。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-16 19:39:57)(良:1票)
58.  ラヂオの時間 《ネタバレ》 
三谷作品はあまり肌に合わないのだが、これは良作。群像劇でありながら、キャラの一人一人を大切に描いています。コンパクトなまとまり具合も◎。無理やりな展開も多々ありますが、各キャラがその時々で、自分の状況と性格を踏まえ、必死に考えて行動しているので展開が読めない。近藤芳正がラヂオに参戦してくるところが特にツボ。どなたかが書かれておりましたが、生ラジオドラマの土壇場での大幅手直しというありえない(だろう)設定なので、ファンタジーとして楽しむのが良いかと。ラストの運ちゃんの登場のさせ方を工夫して欲しかった。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-16 15:37:37)
59.  モーターサイクル・ダイアリーズ
モラトリアムに浸かって青春を謳歌し、足掻いているような男性にオススメ。旅というものの良さを改めて感じさせてくれます。養老孟司が言ってた、"自分の世界観が「変わる」ことに勇気を持ち、それを楽しめ"って、まさにこういうことなんだろうなあ。"男らしさ"って言葉は不適切かもしれないが、変わることに勇気を持ち自己を磨きあげていける人間こそがイイ男になっていくんだろう。前知識として、チェ・ゲバラという人物を頭に入れて見るとよりいいかもしれません。やっぱロードムービーはいいですなぁ。映画として観たというよりも、一緒に旅に行ったような気分になった。映画として見ると微妙なところですが、観て損はないと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2009-08-16 15:11:32)
60.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
現代日本の問題と希望を法定画家という視点を通して描いた作品。橋口監督が得意とする感情の細やかな描写が冴え渡る。これまでの橋口作品の印象は、短歌のように感情の機微を描写したシーンの集合体であり、悪く言えば寄せ集めの歌集のようなイメージが拭いきれなかった。しかしこの作品は、それぞれの歌が総合的に共鳴し、一体となって感情のうねりのようなものを生み出している。鑑賞後、あたたかい涙が流れる素晴らしい作品だった。この監督の眼差しが心に沁み込むのは、自身が患った鬱病や同性愛者として社会から受けた偏見、それらによる実体験に基づいて、真摯に人間と向き合ってきた結果なのだろう。本当に沢山の人間の美しさや汚さを見てきたのだと思う。そしてこれ程までに、日本人の美点と欠点、その両方を鋭く描写できる監督は、僕にはあの小津監督以外に浮かばない。小津は省略が上手い監督であるが、橋口はその逆の長回しでその場の空気感を伝えるのが上手い。両者に共通するのは日本を愛する心と繊細さとユーモア。そして、この映画では、監督が今の日本を憂いていて、どうしてそうなったのかを、失われた10年を振り返ることで問題提起しているのだなと思った。どこまでも日本というものに拘って撮った作品であるのは間違いない。個人的に印象に残ったのは、日本人の愛情表現を描写したシーンの美しさ。欧米の方が見たら、こんな感想を持つだろう。なぜ彼女を強くハグしないんだ、なぜキスをしないんだ、なんで愛してると言ってあげないんだ、等々…。こういった疑問には、こう答えるしかない。「これが日本人である」と。最後の方のシーン。二人で完成した天井画を見つめ寝転がる。そっと手をつなぐ。そして、足でお互いを蹴りあう。素晴らしい日本的な愛の表現方法だと思う。しかし、悲しい哉、時には直球で表現することも必要なんですね。それは日本人の欠点。白黒つけず曖昧なままだったから、カナオを女好きなだけな男だと勘違いして、ショウコは勝手に妄想爆発して病んでしまったのでしょう。段々分かってくるが、彼は"ヒト"が好きなのである。その眼差しは、どこまでも多角的であたたかい。ところで、この夫婦は、死んだ老婆のようにスケッチされた女性の心も救ったのでしょうね。大事に持っていたカルキ臭い壺が割れたのは爽快だった。はからずも、小津の傑作『晩春』の壺を思い出した。
[DVD(字幕)] 10点(2009-07-23 19:56:38)(良:2票)
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