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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
 「レーダーで捕捉出来ない敵との艦戦」という、元ネタのボードゲームを再現した作りに感心。  特に、戦闘のテンポがちゃんと「ターン制」である事なんかは「映画でそれをやるか!」という感じがして、凄く嬉しかったですね。  「味方のターンなので味方が砲撃する」「敵のターンなので敵が反撃してくる」って感じの戦闘描写である為、ワンパターンで飽きてくるという欠点もあるんですけど、ターン制のゲームが好きな身としては、どうにも憎めなかったです。   説明を極力排し「とにかく謎の異星人が敵なんだよ」というシンプルさで押し切ったのも、良かったと思います。  「敵の目的は何?」「なんか侵略してきたわりに戦意が乏しくない?」など、ツッコミ所もあるんだけど、作中でも「人類にとって理解不能の異星人達」として扱われている為、それほど気にならない。  敵艦のデザインやギミックが「トランスフォーマー」を連想させるというだけでなく「ファンタズム」や「ランゴリアーズ」的な球型兵器まで登場して、大いに暴れてくれるもんだから、それらを眺めているだけでも楽しかったです。   地球外生命体をコロンブス、地球人を先住民に喩えるブラックユーモアや、チキンブリトーを盗む場面で「ピンク・パンサーのテーマ」をBGMに流すというベタベタなセンスも、好きですね。  全体的に「王道」「お約束」を大事にした作りとなっており  ・「義足の軍人は元ボクサーだと語られる」→「その後に異星人と殴り合う」 ・「臆病な博士がアタッシュケースを持って逃げる」→「土壇場で戻って来てくれて、アタッシュケースで異星人を殴りヒロイン達の窮地を救う」   といった感じに、分かりやすく場面の前後が繋がっている事にも、ニヤリとさせられました。  ラストには、残り一発の砲弾が決定打となって勝つというのも「そう来なくっちゃ!」という感じ。   退役軍人達が集結し、記念艦となっている旧式のミズーリを動かして再戦を挑む流れも熱かったし「皆いつか死ぬ」「だが今日じゃない」という主人公の台詞も恰好良かったですね。  浅野忠信演じるナガタが副主人公格なのも嬉しかったのですが、作中での「サマーキャンプで射撃を習った」という台詞は「夏祭りの射的」の事で良いのかな? と、そこは少し気になったので、答え合わせが欲しかったかも。   他にも「主人公の兄が死亡するシーンが、あんまり劇的じゃない」とか「エンドロール後の続編を意識したかのようなシーンは微妙」とか、細かい不満点も多いんですけど、作品全体の印象としては、決して悪くないですね。  中弛みしているのは否めないけど、終盤のミズーリ復活からの流れは文句無しに面白い為、欠点も忘れさせてくれるようなところがあります。   米国以上に日本での人気が高く「バトルシッパー」なる言葉も生み出したほどの本作品。  カルト映画になるのも納得な、独特の魅力を備えた品でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-11-22 15:23:31)(良:3票)
42.  子連れじゃダメかしら? 《ネタバレ》 
 「最低男と思われた彼が、実は良い奴だった」という意外性ありきのストーリーなのですが、本作に関しては主演がアダム・サンドラーという事もあり「実は良い奴だって事はバレバレ」なのが残念でしたね。   他にも、ヒロインが仕事中に雇い主の服を盗み着したり、文字通り服を持ち出して盗んでみせたりと、ちょっと「嫌な女」に思えてしまう事。  そしてパラセーリングの場面にて、地面にいる動物達が合成映像だと丸分かりで興醒めしてしまった事などは、欠点と言えそう。  「ママの幽霊」「浮気性の元亭主」などの要素についても、完璧な決着が付いておらず、宙ぶらりんな印象です。   でも、それらを考慮しても面白い映画であり、面白さ以上に(好きな映画だな)と感じさせてくれるものがありました。   そもそも、この主演二人の組み合わせの時点で「50回目のファースト・キス」が好きな自分としては、嬉しくなってしまうのですよね。  フランク・コラチ監督に関しても、作品履歴を眺めれば「好きな映画」ばかりなのだから、本作は自分との相性が、凄く良かったのだと思います。    好みじゃない相手とのデート中に、友人から電話を掛けてもらい「緊急事態」と言って逃げ出す作戦を立てていたら、相手側に全く同じ手をやられ、逃げるより先に逃げられてしまったという導入部から、もう面白い。  他にも、全く同じ車に乗っているとか、動きが逐一シンクロしているとか、そういった伏線を丁寧に張っていき「行動パターンの同じ男女二人が、同じように考えて、同じアフリカ旅行に参加する」ストーリーとして繋げてみせるのが、とても気持ち良かったです。   本作はラブコメであると同時に「家族モノ」「旅行モノ」でもあり、三つの意味で楽しめる、贅沢な品に仕上がっているのも良かったですね。  主人公とヒロインの家族は、男親と娘達、女親と息子達という組み合わせであり、お互いに「男同士」「女同士」で仲良くなっていく流れなのも微笑ましい。   アフリカ旅行する楽しさが、しっかり描かれている点も嬉しかったです。  初めてホテルを訪れたシーンでは(うわぁ、良いなぁ……)と感嘆させられるし、朝の訪れと同時に、大欠伸する豹の姿を映すのも(舞台がアフリカだからこそ)と思えて、雰囲気を盛り上げてくれる。   基本的には王道展開であり、主人公とヒロインは無事に結ばれる訳ですが、脇役関連のストーリーについては、結構こちらの予想が外れたりする辺りも、面白かったですね。  ヒロインの雇い主である金持ち家族も再登場するだろうと思っていたけど、そうじゃない。  喧嘩している息子と娘同士が結ばれるんじゃないかと思っていたけど、そうじゃない。  その一方で(これは結ばれないオチだろう。失恋した彼女をヒロインが慰めてあげて、主人公との距離を縮めるイベントにするはず……)と思っていた、主人公の娘と「吸血鬼系男子」との恋が実ったりするもんだから、もう吃驚です。  そういったサプライズがあるからこそ(流石に主人公とヒロインが結ばれないって事は無いだろう)と思いつつも、最後まで程好い緊張感を味わいながら、楽しく観賞出来た気がします。   それと、上述の娘に関してですが、作中に出てくる男共が悉く彼女を「男の子」に間違えるというのは、ちょっと無理がある気もしましたね。  「少女と見紛うほどの美少年」に思えない事もありませんが、それにしても髪型や口紅の色などは、もっと中性的に寄せた方が良かったんじゃないかと。  その方が、髪型を変えて女の子らしくなった時のギャップも際立ったように思えます。   そんな娘と結ばれた彼氏くんの両親も、旅先のホテルの従業員達も、これまた良い味を出しており、お気に入り。  勿論、娘達と、息子達も魅力的であり、特に娘達の方なんてもう、可愛くて仕方なかったです。  父親から「彼女を愛している」という言葉を引き出して、ガッツポーズを取る姿には、思わず(天使か!)とツッコんだくらい。   クライマックスには「少年野球の試合」という山場を用意し、盛り上げてくれるのも良かったですね。  ヒロインの息子が、主人公の応援を受けて、見事にヒット(=ランニングホームラン)を放ってみせる。  そして、勝利の興奮の勢いそのまま、主人公がヒロインに告白して、無事に二人が結ばれる。   その後はもう、アフリカから駆け付けた(?)面々も気球の上から祝福して、エンディング曲は子供達が唄ってくれてと、好き放題やっている感じで、最後まで笑えて、楽しくて、面白い。  色々と滅茶苦茶だし、整合性は取れていないかも知れないけど、そんなの吹き飛ばしてみせるだけのパワーが感じられました。  こういう映画、好きです。
[DVD(字幕)] 7点(2017-10-07 06:51:40)(良:1票)
43.  プレミアム・ラッシュ 《ネタバレ》 
 これは面白い。   自転車によるメッセンジャーを題材とした作品としては、邦画にもタイトルそのまま「メッセンジャー」なる傑作がありましたが、洋画代表として本作の名前も挙げたくなるほどの出来栄えでしたね。  とにかくもう、車や歩行者をスイスイ避けて、道路を駆け抜ける主人公の姿を捉えるだけで面白い。迷惑なんだけど面白い。   普通、こういった作りだと「主人公側を善玉として描いているけど、こいつらの方が周りに迷惑掛けているよなぁ」なんて疑念が湧いてしまい、距離を感じがちなのですが、本作はその辺りの観客の反発も、上手く躱しているんですよね。  序盤にて、主人公も「道路の嫌われ者」と自嘲しているし、悪役となる警官にも「クズども」とハッキリ言わせている。  些細な演出かも知れませんが、それによって主人公達は「勘違い野郎」ではないという印象を与えてくれるし、悪役の言葉に対しては(そこまで言わなくても……)と思えるしで、むしろ応援したくなってくるんです。  この辺りのバランス感覚は、非常に巧みだったかと。   特に素晴らしいのが、主人公が事故を起こしそうになった瞬間、時間が止まり、その止まった時間の中で、様々なルートを模索するという演出。  「この道を行ったら、車に轢かれる」「あっちの道を行ったら、乳母車と衝突する」「唯一、この道だけが無事に通過出来る」といった具合に、事故に遭う様も交えてのシミュレーション映像となっており、非常にユニークなんです。  あえて喩えるなら、TVゲームにてセーブ&ロードを繰り返して、正解を確かめる作業に似ているようにも思え、とにかく観ていて楽しかったですね。   また、ストーリー面においても複雑になり過ぎない程度に時間軸を弄っており、主人公と観客とが同時に「依頼者の真の目的」を知る構成になっているのも、凄く上手い。  麻薬の密輸かと思い、一度は依頼を放棄した主人公が「今回の依頼主は悪人ではない。幼い息子と共に暮らしたいと願う善良な母親だ」と悟り、メッセンジャーの誇りに掛けて仕事をやり遂げるべく決意する流れには、熱くなるものがありました。   そんな具合に長所が幾つもあって、かなり好きな映画なんですけど……唯一の難点は「クライマックスが微妙」という事ですね。  主人公は最高のメッセンジャーであり、その腕前を駆使して悪徳警官の追跡を躱し続け、無事に荷物を送り届けようとするという、基本のストーリーラインが良かっただけに、最後の決め手が「人海戦術」というのは、どうも受け入れ難い。  一応、序盤にて「結束力も強い」という一言があったので、それが伏線といえば伏線なんですけど、ちょっと弱いかなと。  主人公単独の技量によって勝利出来たのだ、と思えるような決着の付け方だったら、もっと好きになれていたかも知れません。   そんな具合に、肩透かし感もあったのですが、無事に依頼は達成され、母子が共に過ごせるようになってと、ハッピーエンドを迎えてくれたのは、嬉しい限り。  「このままメッセンジャーを続けていれば、いずれ主人公は事故死してしまう」事を連想させ、刹那的な快楽を求め続けるがゆえの「止まらない」「止まりたくない」という、明るさの中に悲劇の匂いを帯びた終わり方だったのも、良かったです。  何時か事故に見舞われ、死んでしまうとしても、彼であれば、そんな瞬間も満足気な笑顔で迎えられるんじゃないかな……と思えました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-27 08:28:30)(良:1票)
44.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
 私生活が上手くいっていない主人公達が、事件を解決してヒーローになるという、非常に単純明快で気持ちの良い映画。   こういったストーリーの場合、現実逃避的な色合いが濃くなり、興醒めしてしまう事も多いのですが、本作に関しては「実話が元ネタなんだ。文句あるか」とばかりに、開き直った作りになっているのが良かったですね。  その為、素直に主人公達の活躍を祝福出来たように思えます。   若手とベテランの対立を軸に据え、両者の衝突と和解を、スピーディーさを損なう事無く描いている辺りも、素晴らしい。  「今はそんな会話している場合じゃないだろう。事態の解決に集中しろよ」とツッコませる作品も少なくない中で、本作はその辺りを非常にスムーズに、自然に描いているんだから、これは凄い事だと思います。   人為的なミスによって列車の暴走が始まり、周りのスタッフも当初は笑っていたのに、それがどんどん取り返しのつかない事態に発展していく流れも、上手く描かれていましたね。  お偉いさんが「命令に逆らったらクビにする」と脅してきた際に「とっくにクビになっていますよ」とベテラン機関士役のデンゼル・ワシントンが返す場面も、実に恰好良い。  自分としては相棒役のクリス・パインの方が贔屓だったりもするのですが、本作は完全にデンゼル側が「オイシイ」役でしたね。  緊迫した場面でも冗談を飛ばす剽軽さと、命を投げ打つ覚悟で暴走列車を止めようとする生真面目さ、両方を持ち合わせた男。  正に、彼の為にあるような役柄だったと思います。   難所のカーブを曲がり切る場面や、並走する車に列車から飛び移る場面なども、トニー・スコット監督らしい迫力があって、良かったですね。  無事に暴走を止めた後、エンディングのテロップにて「出世後、円満退社」「第二子が誕生」と、主人公達の幸福な顛末が語られる演出も、ハッピーエンド色を強めてくれている。   ただ、会社のお偉いさんや、事故を起こした機関士のテロップが、それぞれ「解雇」「ファストフード業界へ」となっているのは、喜ぶべきかどうか、迷っちゃいました。  そりゃあ作中で主人公達を「クビにするぞ!」と脅していた傲慢な上司がクビになるというのは、皮肉が効いていて面白いし、後者に関しても転職出来たなら、一応めでたしめでたしと思えますが、そのテロップで映画が終わってしまうというのは、如何にも寂しい。  順番を入れ替え、まずは上司達の末路について説明し、最後に主人公二人の幸福な顛末を示す形にしてくれていたら、もっと好きな映画になっていたかも知れませんね。  そこだけ、ちょっと残念。   とはいえ総合的には充分楽しめたし、娯楽作品としてレベルの高い一品だったと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2017-08-08 22:08:20)(良:2票)
45.  ブルークラッシュ2<OV> 《ネタバレ》 
 あまり期待せずに観賞したのですが、意外や意外。  良質な青春ロードムービーでしたね。   流石にサーフィン場面の美しさでは前作に及ばないかも知れませんが、その他の部分が魅力たっぷり。  金持ちのブロンドお嬢様で、サーフィンなんて出来る訳無いと嘲笑われていた主人公が、見事な波乗り姿を披露して周りを黙らせるシーンなんて、実に痛快です。  ここでハートを掴まれ、以降は最後まで、明るい気分で楽しめたように思えます。   それと、前作と共通している「家族の問題を乗り越えての自己再生」と「プロサーファーになる夢を叶える」という二つの要素を、二人の人物に分担させたのも上手かったですね。  主人公のデイナが一人で思い悩み、精神的に成長したりするのをカメラが捉えている間にも、親友のプッシーはプロになる為に必死に練習しているんだろうな……と、自然と脳内補完出来る形。  二人の出会いと友情、共に特訓するシーンについても描かれているので、主人公と同じようにプッシーを応援したくなるし、彼女が合格した際には、一緒に祝福したい気持ちになれました。   ヒッチハイクしたトラックの荷台に乗せてもらって移動するシーンなど「旅行」「家出」ならではの風情が感じられるのも良かったし、浜辺のコミュニティで皆が住んでいる住居の数々も、思わず泊まってみたくなるような魅力があります。  そんな住居の中の一つが、改造を施したバスであり「その気になれば、何時か動かしてみせる」という台詞が伏線だった事には、本当に吃驚。  立ち退き命令によって、皆の住居が強制的に取り壊されていく中、バスが動き出すシーンの爽快感は、特筆物でしたね。  その後のバス旅行に関しても、短い時間ながら「コミュニティの皆が家族」という絆の強さが伝わってきたし、全員で一斉に橋から河に飛び込むシーンなんかも、凄く好き。   物語のクライマックスとして「プッシーのプロテスト合格」を用意し、そこで最高潮に盛り上げておいて、その後に「父との和解」「母の思い出の場所でサーフィンする主人公」を静かに、情感たっぷりに描いて終わるのも、良い流れだったと思います。   難点を挙げるなら、ティムとグラントとの三角関係が微妙というか、好みでは無かったという事でしょうか。  ティムの方は自然保護活動をしている気の良い青年、グラントの方は少々嫌味っぽい気障なイケメン、という両者のキャラ付けが分かり易過ぎたのですよね。  前者と結ばれるのが見え見えなのに「主人公はグラントの方に惹かれている」「でもグラントは嫌な奴だったと分かる」「結局ティムの方と良い感じに」と、お約束の流れを辿るのが、ちょっと退屈でした。  その後、グラントにも「悪事に手を染めていたのは、経済的に困窮して止むを得ずだった」などと、色々とフォローが入るし、後味は決して悪くないんですけどね。  後は、ゾウやサイと遭遇するシーンが(如何にも合成映像って感じだなぁ……)と思えてしまうクオリティなのも残念。  この辺りは、低予算ゆえの悲しさを感じます。   でも、そんな難点についても「女の子が主人公なんだから、恋愛要素が濃い目になるのは仕方ない」「低予算なんだから特撮が拙いのは仕方ない」と、妥協出来る範囲内でしたね。  魅力的な部分の方が、ずっと多いので「そんなの、別に良いじゃん」と軽く流し、受け入れてあげたくなります。   中々レアな「初代よりも続編の方が面白かった」例の一つとして、オススメしたい映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-06 22:18:34)
46.  パニック・マーケット3D 《ネタバレ》 
 万引き娘と、その父親である警官、武装強盗犯の存在など、舞台がスーパーマーケットである事に意味を持たせているのが好印象。   津波によって浸水し、水没していく店内からの脱出という「ポセイドン・アドベンチャー」のようなテイストがあるのも良いですね。  「覆面していた強盗犯の正体」についても、適度な伏線込みのサプライズになっていたかと。  皆が避難する中で、一人だけ津波に向かって嬉しそうに走り出すサーファーや、ちゃっかり生き残っていた仔犬の存在など、緊迫した画作りの中で、どこか愛嬌が漂っている辺りも有難い。   その一方で、サメ映画としては「サメが単なる障害の一つでしかない」「サメ自身にも何の個性も無く、普通の人喰いザメ」という点が、ネックになってしまいそうな感じ。  とはいえ「しっかりと掴んでいたはずの相手が、サメに海中へと引きずり込まれ、手の中にはペンダントしか残らなかった」場面や「天井にぶら下がった人間の下半身を、サメが食い千切る」場面などは、中々ショッキングで良かったと思いますし、自分としては満足。  最近は色々と変わり種のサメが登場する映画が多いせいか、真っ当なタイプのサメが登場する本作には、妙な安心感を覚えたりもしました。   作りとしては群像劇となっており、基本的に生存者は全員善人である為、観ていて理不尽さを感じない点も良かったですね。  ……ただ、車内に閉じ込められたカップルに関しては、男女共に好感が持てなかったりしたもので、そこは観ていて少し辛かったです。  あそこの尺を縮めて、もっと主人公のジョッシュ達を中心とした作りになっていたら、より好みだったかも知れません。   そして何といっても、本作の白眉。  水中でショットガンを放ち、サメを倒すシーンが痛快でしたね。  この手の映画でサメを倒す手段といえば、海上からどうにかするパターンが多い為「水中で倒す」というだけでも斬新に思えましたし、武器がショットガンというのも、実に自分好み。  その後に、もう一匹のサメを感電死させるシーンも、スタイリッシュに描かれていて良かったです。  それまでアクション要素は控えめだっただけに、このラストの件は意外性があるし「過去のトラウマを乗り越えた主人公が、超人的な活躍を見せる」というカタルシスも相まって、実に気持ち良い。   最後は少しハッピーエンド感が足りないようにも思えましたが、あれだけの災害が発生している以上は仕方ないでしょうし、主人公とヒロイン、父と娘とが、それぞれ蟠りを越えて「やり直そう」と前向きな姿勢を示して終わるのだから、嬉しかったですね。  冷静に振り返ってみると、不満点もあったり、退屈に感じた場面もあったりしたのですが、ラスト二十分程の展開で、全部チャラにしてくれた感じ。  満足度高めの、良い映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-08-01 16:55:04)(良:2票)
47.  シャーク・ナイト 《ネタバレ》 
 傑作映画「セルラー」(2004年)の監督が撮ったサメ映画という事で、非常に楽しみにしていた一本。   序盤の段階から「Aと思わせておいて、実はB」(鮫に襲われたかと思いきや、実は人間による悪戯だったと判明する、など)という展開が何度もあって、ゲンナリさせられたりと、欠点も目立ってしまうのですが、総合的には面白い映画でしたね。  「何故こんな湖にサメがいる?」「それは人喰いシーンを撮影して金儲けする為、意図的に放流した悪人がいるから」って形で、スナッフ要素をサメ映画に取り入れたのも斬新であり、そう来たかという感じ。  この手の映画では嫌な奴として描かれがちなアメフト部員が、凄く良い奴として描かれているんだけど、結局死んじゃったりとか、愛嬌のある保安官が実は悪人だったとか、適度に意外性を盛り込んでいるのも良かったです。   それと、個人的に本作の白眉は、サメが出て来てからの展開ではなく、その前の段階にあるようにも思えましたね。  「若者達が湖畔の別荘に出掛ける」→「そこでサメに襲われる」というお約束な流れなんですが、前半のパートの方が面白かったんです。  狭っ苦しい車に皆で乗り込み、夜を徹して走り続けるシーンなんかも、早回しや音楽によってスタイリッシュに決めているし、湖をボートで移動しながら皆で乾杯するシーンも、本当に楽しそうで良い。  91分の内、実に20分以上も尺を取って「皆でバカンスを満喫する」様を描いているので、この手の「モンスターが出てくる前の、皆で楽しく騒いでいる場面」が好きな自分としては、もう大満足。  サメ映画って「肝心のサメが出てくるまでが退屈」な作りの品が多い印象があるのですが、本作に関しては「このままサメに襲われないで、普通の青春映画として終わって欲しい」と思わされたくらいです。   勿論、サメ映画としても一定以上のクオリティはあるので安心。  怪我人をボートで運ぶ際に、水面に落ちる血液を映し出すカットなんかは、特に印象深いですね。  (あぁ、サメ来ちゃう! サメ来ちゃうよ!)とドキドキ出来るのが楽しい。  正直、ちょっと中盤はダレ気味だったりもするのですが、要所要所でそういった見せ場が用意されている為、退屈さにまでは至らなかったです。   主人公のニックが、医者志望でガリ勉と揶揄われる割には鍛えられた身体をしており、ミスキャストじゃないかと思っていたら、終盤で筋肉に見合った大活躍をしてくれるのも良いですね。  特に、椅子に縛られた状態からの逆転劇は痛快であり「死に際に聴きたい曲はあるか?」「ガンズ・アンド・ローゼズ」というやり取りなんて、もう痺れちゃいました。  そこで、ヘヴィメタ好きの敵が機嫌を良くし、曲を変える為に背を向けた一瞬の隙を突いて反撃というのが、凄く恰好良い。   終わってみれば、主人公とヒロインだけが生き残る王道エンドであった本作。  でも観賞中は、重苦しく陰鬱な「殺されエンド」も有り得るんじゃないかと身構えていた為、あの終わり方には、ホッとさせられましたね。  最後にサメのアップで終わる為「まだ惨劇は終わっていない」とも解釈出来そうなんですが、主人公達の乗っている船とは距離があったし、まぁ大丈夫だろうなと思えます。   正統派なサメ映画ではなく「人喰いザメを利用する悪人達との対決を描いた映画」という側面が強い為「サメ映画を観たい!」という欲求を叶えるには不適切かも知れませんが……  自分としては満足度の高い一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-07-28 09:34:08)(良:2票)
48.  憧れのウェディング・ベル 《ネタバレ》 
 「そうそう、こういうのが観たかったんだよなぁ……」と、ニンマリさせられる一品。   期待通りのラブコメといった感じで、安心して楽しむ事が出来ましたね。  音楽の使い方も良いし、出てくる料理も美味しそうだし、観ていて気持ち良い。   指を斬る、膝を射られるなどの「痛い場面」もありましたが、それも残酷になり過ぎない程度の撮り方をしている為、気にならない範疇。  「大丈夫。死にやしない」「誰か死んだ訳じゃあるまいし」という台詞の後に、葬式のシーンに移るというネタを天丼でやっちゃうのも、不謹慎ながら笑っちゃいました。   ラブコメお約束の「互いに浮気してしまう」というネタにしたって、女性側は酔ってキスした程度、それを知って自暴自棄になった男性側も本番直前までしか行ってないという形にしており、非常に配慮して作られているんですよね。  観客目線での「何も考えずに楽しめる映画」って、作り手側からすると、凄く気を使わなきゃいけないから大変だなって、改めて感じました。   「ドーナツ実験」の件も中々興味深く、面白い。  目先の利益に飛びつくタイプは、駄目人間が多いという実験結果に対し、それなりの説得力を感じていただけに、主人公がそれを否定し「出来たてのドーナツが貰えるという保証が無い」と指摘してみせる流れには、ハッとさせられるものがありました。   恋の当て馬となる男女についても、教授は最低男だったけど、オードリーの方は「口が悪いだけで、根は良い子」ってバランスだったのも好みですね。  両方とも「嫌な男」と「嫌な女」として描かれていたら、流石にゲンナリさせられたでしょうし、上手い着地だなと思います。   終盤にて、プロポーズのプランを再び台無しにするという、冒頭に繋がる脚本も鮮やかだったし、その後のスピーディーな結婚式も最高。   物凄い傑作という訳じゃないし、映画史に残る一品でもないでしょうけど……  こういうタイプの、観賞後に幸せな気持ちに浸れる映画って、好きです。
[DVD(吹替)] 7点(2017-04-26 23:46:27)(良:1票)
49.  ドライヴ(2011) 《ネタバレ》 
 「男が抱いているヒーロー願望を、そのまま映画にしましたよ」という感じですね。  理由なんて全く語られないけど、とにかく主人公は強い。  幼い少年には無邪気に懐かれて、人妻と許されぬ恋に落ちたりする。  観ていて恥ずかしさも覚えるのだけど、それでも作り手のセンスの良さや、主演俳優の恰好良さに痺れる思いの方が強かったです。   派手なカーチェイスを繰り広げる訳ではなく、警察の目から巧みに車体を隠しながら逃げおおせるという冒頭のシーンが、特に素晴らしい。  「追いかけっこ」の興奮とは違う「かくれんぼ」の緊張感を味わえたように思えます。  それだけに、中盤にて車同士で火花を散らすような「普通のカーチェイス」の場面もあった事は(あっ、結局そっちもやっちゃうの?)という落胆もあったりしたのですが……まぁ、そちらはそちらで、やはり魅力的だったし「タイプの異なるカーチェイスを両方味わえる、お得な映画」と考えたいところ。   ちょっと気になるのは「恰好良い主人公」を意識し過ぎたあまりか、敵側の恐ろしさが欠けているように思えた事ですね。  丁寧に敵側の目線での物語も描いている為「底知れない不気味さ」なんてものとは無縁だし、単純に人数も少ないものだから、作中で「強敵と立ち向かう主人公の悲壮感」を醸し出す演出がなされていても、今一つ説得力が感じられなかったのです。  ここの部分は、少々バランスの取り方を間違えたのではないかな、と。   逆に「上手いなぁ」と感じたのは、エロティックな要素の挟み方。  バイオレンスな内容である以上、性的な場面が全く存在しないというのは不自然になってしまいそうだし、ある程度は必要になってくると思うのですが、この映画では、それを「敵地に乗り込んだ際に、そこに裸の女が沢山いる」って形でクリアしているのです。  こういった場合、ついつい安易に「人妻であるヒロインと許されぬ関係を結んでしまうベッドシーン」なんて形で性的な要素を満たそうとするものですが、そこを踏み止まって、あくまでもプラトニックな恋愛描写に留めてくれた事が、本当に嬉しかったですね。  夜の車内で二人きりになって、そっと手を握るだけでも充分に「背徳感」「許されぬ逢瀬」という雰囲気が伝わってきたのだから、これはもう大成功だったかと。  ヒロインの息子との交流シーンにて、普段は滅多に笑顔を見せぬ主人公が笑ってみせる描写を挟む辺りも、ベタだけど効果的で良かったと思います。   ベタといえば、そもそも「裏稼業のプロフェッショナルな主人公が、美女や子供と交流する事によって癒され、彼らを守ろうと戦う」というストーリーライン自体、ベタで陳腐で王道な代物なんですよね。  である以上「何度も使われてきた魅力的な骨組みである」という長所と「もう観客は見飽きているマンネリな内容」という短所が混在している訳ですが、この映画に関しては、前者の方を色濃く感じる事が出来ました。   ラストシーンも、これまたお約束の「主人公の生死は曖昧にしておきます」「お好みの後日談を想像して下さい」という、観客に委ねる形の結末だったのですが、音楽の使い方やカメラワークが上手いせいか、あんまり「ズルい」って感じはしませんでした。  自分としては「お腹を刺されたけど、病院に行けば治るんじゃない?」「とりあえず一番の脅威は排除したし、残党が襲ってきても主人公なら大丈夫でしょう」「あの奥さんと子供とも、きっと再会して三人で幸せになれるよ」なんていう、楽天的な未来を想像する訳だけど、それも有り得そうな気がするんです。  バッドエンドとは程遠い、不思議な爽やかさと明るさが感じられる終わり方だったからこそ、そう思う事が出来た訳で、非常に後味が良い。   ダメ男の現実逃避用とも言われてしまいそうな、そんな感じの代物なのですが……  やっぱり好きですね、こういう映画。
[DVD(字幕)] 7点(2017-02-20 21:44:39)(良:4票)
50.  ソルト 《ネタバレ》 
 「主人公の身辺に、もう一人ロシア側のスパイがいる」という事は、途中で察しが付くように作られていますね。  自分は彼女の夫を疑っていた為、あっさりと死亡したのに驚き「何かと主人公を庇ってくれていた同僚がスパイ」というオチには、素直に騙される事が出来ました。  予想が外れて悔しい思いもありますが、映画を楽しめたという意味では、こちらの方が正解だったと自分を慰めたいところです。   それと、この手の「続編を意識したような終わり」って、どうも印象は良くないのですが、本作は何となく毛色が違うようにも思えました。  続編を作るつもりなら「主人公の夫」「スパイとして育てた師」「同僚」と、続編に活かせそうな重要人物を三人も殺しているのが不自然というか、如何にも勿体無いのですよね。  インタビュー動画などによると、どうやら監督さんも続編には気が乗らないみたいで、これはあくまでも「主人公にとっての始まりの物語」として完結させたようです。  自分としては、上記の「重要人物でも必要なら殺す」という思い切りの良さが、続編の可能性を薄めた代わりに、本作の完成度を高めていると感じられましたね。   しかしまぁ、アンジェリーナ・ジョリーという女優さんは本当に身体を張る人なんだなぁ……と、今更ながらに驚嘆です。  映画本編を観た限りでも「これってスタントマンじゃないよね?」と思えるアクションでしたが、特典映像をチェックしたら、やっぱり本人だったみたいで、大いに納得。  高層マンションの窓を伝い歩くシーンの迫力も凄かったですが「手錠をはめられたままで相手を絞殺してみせる姿」が、アクロバティックで恰好良くて、特にお気に入り。  どちらかといえば、男性がアクションをこなす映画の方が好みだったりもするのですが、彼女くらいの根性を見せられると、もう「参りました」と脱帽する他ありませんね。   脚本の細部が気になったりもしたけれど、素直に面白いと思えた映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-08 04:01:06)(良:1票)
51.  恋とニュースのつくり方 《ネタバレ》 
 冒頭のシーンにて(シニアプロデューサーには昇格出来ず、当てが外れて落ち込むんだろうな)と思っていたら、まさかのクビ宣告。  失意のスタートとなった主人公なのですが、とにかく明るさと元気に満ちており、観ている側としても「彼女なら、きっとハッピーエンドを迎えてくれるはず」と、安心して見守る事が出来ましたね。   今は亡き父は彼女の夢を応援してくれており、それとは対照的に、存命の母は現実主義者という家族構成も良かったと思います。 「八つの時なら可愛い夢。十八の時には胸も躍った夢。でも二十八の今は、正直言って困った夢よ」  と諭す母の言葉には説得力がありましたし、いつもの出社時刻に目覚まし時計が鳴るも、それを止めてから何もする事が無く途方に暮れる主人公の描写なんかも、味わい深くて良い。  そういった「ドン底」をキチンと描いてくれたからこそ、その後のサクセスストーリーにも共感し、応援出来た気がします。   新しい職場に採用された後、早回しで引っ越しをするシーンや、初めての会議で矢継ぎ早に質問を浴びるも、ちゃんと一つずつ回答するシーンなんかも、スタイリッシュな魅力がありましたね。  こういった具合に、働く楽しさが感じられる映画って好きです。  陳腐な表現となってしまいますが、明日への活力を貰える気がします。  この辺りは監督が同じである「ノッティングヒルの恋人」よりも、脚本が同じである「プラダを着た悪魔」に近い魅力かも。   今や大統領となっているドナルド・トランプの名前が飛び出すのもニヤリとさせられたし、男性キャスターと女性キャスターの子供っぽい対立、そしてラストにて二人が和解し、恋仲となった事を匂わせる演出なんかも、オシャレな感じ。  唯一の難点はクライマックスに関してで、事前に料理の伏線を張っておいたのは分かるのですが、オチに使うには弱いネタだな……と思えましたね。  演出に関しても、あんな大袈裟に感動的な場面に仕上げる必要があったのか疑問。  「主人公を引き止める為に、傲慢なキャスターがささやかな、彼にとっては精一杯の誠意を見せてくれた」というストーリーな訳だから、もっとさりげなく、小さな感動を与えるような形にした方が良かったんじゃないかな、と。   一応ラブコメ要素もあるのですが「別に無くても良かったなぁ……」と思えるくらいに、彼氏役の存在が希薄な辺りも、不満と言えば不満。  あくまでも「仕事に生きる女」に特化させた方が、主人公のキャラクターも際立ったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。  そんなのは男性的な価値観であり、やはり女性からすると恋と仕事を両立させてもらわないと、観ていて嬉しくないのかも……とも考えられるし、難しいところですね。   とはいえ、その後の「これでもか!」とばかりに、次々と笑顔が咲き乱れるハッピーエンドっぷりは、本当に好きです。  母親が新聞記事を切り抜いたりして、実は娘の活躍をずっと見守っていた事を示す描写にもグッと来ましたし、冒頭の職場にて仲良しだった女性と再会し、また一緒に働ける事を喜んで、ハグしてみせる姿なんかも良い。  主人公達が頑張って幸せになる姿を見届けられる、気持ちの良い映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-01 11:59:10)(良:1票)
52.  矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~ 《ネタバレ》 
 新年一発目の映画という事で、楽しい気分に浸れそうな作品をチョイス。   元々とんねるずが大好きという事も相まってか、充分に満足のいく内容でしたね。  これまでレビューしてきたタイトルの中には「クオリティが高いのは分かるけど、どうも好きになれない」というタイプの品もありましたが、これはその逆をいく一品。  どう見ても安っぽい「アニメ的な世界観を実写で大真面目に演じてしまう作品」のはずなのに、それが妙に面白かったりしたんです。   理由は色々あると思うのですが、その一つとして「内輪ネタ」が挙げられて「細かすぎて伝わらないモノマネ」でお馴染みの方が端役が出演していたり、ノリダーとチビノリダーとのやり取りが描かれていたりするのが、元ネタを知っている身としては、もう嬉しくって仕方なかったのですよね。  こういう「分かる人には分かるネタ」って、興醒めになったり、疎外感を抱かされたりする事も多いのでしょうが、自分としては正にドストライク。  「間違いなく、この映画の世界観を共有している」「観ている自分も、この映画の仲間なんだ」という感覚に浸らせてくれました。   全体的にはコント調の作風の為、ちょっと中弛みするというか、九十八分は長過ぎたようにも思えましたが、終盤にて「ソフトボールの試合」という山場をキチンと用意してくれている為、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えます。  「友情より恋愛が大事」「だって、恋愛はすぐに壊れちゃう。大切にしなきゃ」「友情は永遠。滅多な事じゃ壊れない」という台詞の数々も、非常に好みでしたね。  燃えるボールを燃えるバットで打ち返すというベタな演出も良かったし、最後は元気良く皆で唄って、笑顔で終わるのも気持ち良い。   父親との再会は描かれなかった事や「この借りはパート2で必ず返す」という台詞など、続編が存在しないのが寂しくなってしまう部分もありましたが……まぁ、それらも「ネタ、ギャグの一種」と受け止められるような大らかさ、笑い飛ばせるような馬鹿々々しさが備わっていたのではないかな、と。   期待通りの、楽しい映画でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-05 16:15:30)(良:1票)
53.  ロボコップ(2014) 《ネタバレ》 
 黒いロボコップが恰好良いという、それだけで満足してしまいそうになる一品。   フェイスオープンの状態から、バイザーが下りると同時に赤い目が光り、戦闘開始となるシーンなんてもう、痺れちゃいましたね。  正面玄関からバイクでビルの中に突っ込み、着地するより先に飛び降りて、その勢いのまま膝蹴りを敵のED209に見舞うアクションなんかも、これまた最高!  その後、左腕がED209の亡骸に挟まって身動き取れなくなったら、自ら左腕を切断して窮地を脱する展開なんかも、実に良かったです。  ここは、痛みを感じない「ロボコップ」だからこそ成立するシーンであり、キャラクター性を活かしたアクション演出として、大いに評価したいところ。   黒人の相棒警官が、黒いスーツを纏った主人公に対し「これで色も相棒だ」と笑顔で軽口を叩いてみせるも、別れた後に、その「黒い背中」を悲しげに見つめる表情なんかも、味わい深いものがありました。  「最高のヒーローは?」「死んだヒーロー」という会話も、独特の皮肉が利いていましたし、ゲイリー・オールドマン演じる博士が、一旦は敵に買収された振りをして、その後にロボコップを助けようと奔走する姿も良かったですね。  特に後者に関しては、中盤にて「命令には逆らえない小心者」だと示すシークエンスがあっただけに、越えてはならぬ一線だけは越えずに踏み止まってくれた事が、本当に嬉しい。   主人公がロボコップとなった後、機械ではない「生身」の部分が、どれだけ残っているのかを見せ付けられるシーンも、非常に衝撃的。  もう決して元の「人間」には戻れない。  「ロボコップ」として生きるしかない……と思い知らせる効果があり、そういった布石があるからこそ、ラストの「機械ではなく人間である事を証明する」シーンの感動が、一際大きくなっているのだと思います。   勿論、過去作における銀色のボディもレトロで、メカメカしくて味があったのですが、自分としては如何にも「戦闘用」という趣きがある今作の黒ボディの方が好み。  それだけに、黒ボディが破損した後のエンディングでは、銀色のボディに変わってしまっているのが、実に残念。  「人間としての感情を取り戻した明るい笑顔」には銀色の方が相応しいし、元々「没デザインとなった銀色ボディも存在する」という伏線が張られていた以上、壊れたボディの代理として使われるのは自然な事なのでしょうが、出来るなら最後まで黒で通して欲しかったところです。  また、ニュース番組にて激昂するサミュエル・L・ジャクソンを映し出し、ブラックユーモアを叩き付けるように終わる手法も、決して嫌いではなかったのですが……どちらかといえば、家族の再会で綺麗に終わらせてくれた方が、より好みだったかも知れません。   いずれにせよ、旧三部作においても2の妻との対面シーンが一番好きだったりした自分としては、家族愛を中心に据えて作られている事が、非常に嬉しかったですね。  結局は命令に逆らえず機械のまま生き続ける1987年版とは全く違った、人間としての自分を取り戻し、家族とも再び一緒になるという、掛け値なしのハッピーエンド。  こういう「ロボコップ」が観たかったんだと、胸を張って言える作品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2016-10-08 11:26:21)
54.  ドラフト・デイ 《ネタバレ》 
 アメフトには詳しくない自分ですが、それでもジョー・モンタナやジョン・エルウェイの名前が出てきたり「ザ・ドライブ」の映像が流れたりすると、興奮するものがありましたね。   本作は、そんなスター選手の再来になれそうなくらいに将来有望なクォーターバックの指名権を獲得する為、GMである主人公が悪戦苦闘するというストーリー。  ドラフト全体の一位指名権を手に入れる為「三年分のドラフト一巡指名権」を手放してみせる冒頭の決断にも驚かされましたが、終盤にはそれを凌駕する程の「魔法の如き交渉術」を見せてもらう形となり、気持ちの良いドンデン返しを味わえました。   基本的に劇中では情報収集と交渉を重ねるだけで、派手なアクションは殆ど出て来ないのですが、それでも飽きずに最後まで観られるのだから、これは凄い事です。   恋愛模様やら、家族との感動エピソードやらも絡めている点に関しては、個人的には然程楽しめず (ドラフトの駆け引きオンリーに絞って欲しかったなぁ……)  と思わされたりもしたのですが、それらに長尺を割いている訳でもない為、何とか許容出来る範囲内。  今になって振り返れば、そういった諸々の要素も、ハッピーエンド色を強める効果があって、良かったんじゃないかと思えてきます。   上述の一位指名候補に対し、疑問符を抱く最大のキッカケが「誕生日会にチームメイトが誰も来ていない事」だった辺りも面白い。  こういった些細な情報から「こいつはプロで通用するか否か」を見極めていく流れが、良質なミステリーのように知的昂奮を誘う形となっているのですよね。   最終的に、主人公は元々自チームに所属しているクォーターバックの能力、人格を再評価して、ドラフト指名は他のポジションに移す事となる訳ですが、そうなるに至るまでの描写も、実に丁寧。  「作戦書の最終ページに張り付けておいた百ドル札」のエピソードなんかは、特に良かったですね。  それまでの積み重ねも併せ (未知の新人よりも、このクォーターバックに投げさせて欲しい!)  と思わされるからこそ、ドラフト指名の瞬間に痛快さがある訳で、本当に上手いなぁ……と感心させられます。   不満点というか、ちょっと気になった点としては、作中における主人公のドラフト戦略が「いくらなんでも絶賛され過ぎな事」が挙げられるでしょうか。  全体の流れを把握している観客ならともかく、断片的な情報しか知らないはずの地元のファンまで完全に掌を返して騒いでいるのは、少しやり過ぎな気がしましたね。  特に、成功の代償として「三年間の二巡目指名権」を失っている事が、終盤では意図的に無視されているような辺りが、どうも引っ掛かります。  また、上述の一位指名候補は、人格に問題ありとして指名を回避したはずなのに、暴行事件を起こした過去があるランニングバックを指名する辺りも、ちょっと一貫性を感じられなくて、残念。  クォーターバックの対比において「真に優れたプレイヤーは、人格的にも優れている」というメッセージ性があり、一位指名したラインバッカーも家族想いの良い奴だという描写があったのだから、暴行事件に関しても「あの時はイカれてた」で済まさず「実は冤罪だった」とか、もっと明確なフォローが欲しかったところ。   そして何といっても物足りないのは、このドラフトの結果が成功だったのか失敗だったのか、答え合わせが行われるシーズン開幕と同時に、映画が終わってしまう点ですね。  これはもう、実に残酷。  あそこで終わるからこそ「ドラフト」の映画として完成されるのだという事は分かりますが、だからといって納得出来るものでもありません。  無粋かも知れませんが、エンドロールにて「それぞれの選手達が、どんな活躍を果たしたのか」を、テロップで表示して欲しかったなぁ……と思わされました。   そして願わくば、チームがスーパーボウルを制し、勝利の喜びに包まれる瞬間まで、是非ともお付き合いさせてもらいたかったところです。
[DVD(字幕)] 7点(2016-08-31 15:04:11)
55.  永遠の0 《ネタバレ》 
 「上手い」と感じる部分と「ズルい」と感じる部分とが混在しており、評価が難しい一品ですね。   まず、本作はフィクションであるはずです。  にも拘らず、さながら事実をそのまま映像化したような印象を与えてしまう。  これは創作物として非常に優れた点であると同時に「現実と虚構の区別をつかなくさせる」作用も大きく、純粋に「映画」として楽しむ事を妨げているようにも思えました。   実質的な主人公である宮部久蔵というキャラクターは、非常に魅力的ですね。  軍人でありながら命を惜しみ、誰にでも敬語で礼儀正しく接して、端正な顔立ちの二枚目。  大人しくて卑屈な性格かと思いきや、仲間の尊厳が踏み躙られた時には上官に反抗だってしてみせるという、正にフィクションだからこそ許される存在。  この映画のタイトルに「実録」なんて付いていようものなら(これ、絶対美化しているよね?)と疑ってしまうのは避けられなかったはずです。  積極的に戦争に参加していないくせに、実は凄腕のパイロットであるという矛盾した一面も良い。  同僚と「模擬空戦」を行い、瞬時に相手の背後を取って、鋭い眼光で睨み付けている時の姿なんて、とても格好良かったです。   上述の「ズルい」部分に該当する話でもあるのですが、この映画って「戦争は良くない」という基本スタンスでありながら、空戦シーンは非常に面白く撮っていたりするのですよね。  主人公が零戦を宙返りさせる姿にも、思わず見惚れてしまうような魅力があり、そういった意味においては「軍人に憧れる子供」を生み出してしまう可能性はあるかも。   その一方で「上手い」と感じたのは、作中において大きな謎である「何故、命を惜しんでいたはずの宮部が特攻したのか」に対して、明確な答えを出さなかったという事。  作中の情報から推測する限りでは、教え子達が次々に特攻して死んでいくのに、自分だけが生き延びるという罪悪感に耐えられなかったからだと思えます。  ただ、自分としては、この「理由を知りたいのに決して知る事が出来ない」という現象が「何故なら、その人は死んでしまったから、訊きたくても教えてもらえないのだ」という答えに繋がっているようにも感じられたのですよね。  恐らくは戦争行為における最大の喪失であろう「人の死」が「決して明かされる事のない謎」を生み出してしまったという、何とも悲しい結末。  だからこそ、特攻していく宮部の姿を最後までは描かず、不思議な笑みを浮かべさせたまま、戦死の直前で終わらせたのだと思われます。  一度死んで0になってしまったものは、永遠に0のまま、1には戻らない訳です。   面白いというか、少々意地悪なユーモアを感じられたのは、現代パートにおいて宮部の孫が「特攻と自爆テロの違い」について語る場面。  ここは作中の流れを踏まえて考えれば「特攻は無差別に民間人を狙ったりしない。空母だけを狙うのだから、自爆テロとは違う」という結論で終わらせても良かったはずなのです。  けれど、本作においては議論の相手から「昔の日本軍を美化して考えるのは、今現在の自分に不満があるがゆえの逃避行動だ」という指摘が行われており、結局それに対して宮部の孫は反論出来ず、大声で怒ってから逃げ帰るというストーリーにしている。  この「特攻を美化して話す人間の格好悪さ」を、意図的に描いているような辺りは、良いバランスだなと思えました。   山崎貴監督は、基本的には好きな監督さんですし、本作においても家族愛を軸に据えて、万人が感動出来るような形に仕上げてみせたのは、実に見事だと思います。  ただ、どうも演出過剰な面もあり、ラストに零戦の幻影を見るシーンなんかは、それが悪い方向に作用してしまった気もしますね。  あそこは、もう少し静かに余韻を残して、平和になった現代の姿を映し出すだけでも良かったかも。   その一方で、過剰だからこそ良いと思えたのは、宮部の戦友である景浦が感情を発露させる場面。 「特攻がどんなものか、見ていますよね?」 「殆ど敵艦に辿り着けていないって!」 「殆ど無駄死にだって!」  と訴える姿には、大いに心を揺さ振られるものがありました。  もし、この映画に何らかのメッセージが込められているとしたら、それはこの叫びに尽きるのではないかな、と思う次第です。
[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 19:58:46)(良:1票)
56.  くちびるに歌を 《ネタバレ》 
 合唱のシーンは、素晴らしいの一言。  ただ唄うだけではなくて、スポーツと同じように身体を鍛える必要もあると示す練習シーンを、事前に積み重ねておいた辺りも上手かったですね。  皆の努力の成果である歌声に、純粋に感動する事が出来ました。   その他にも、色々と「泣かせる」要素の多い映画であり、それに対して感心すると同時に「ちょっと、詰め込み過ぎたんじゃないか?」と思えたりもして、そこは残念。  特に気になったのが「柏木先生がピアノを弾けなくなった理由」で、どうも納得出来ない。  「私のピアノは誰も幸せにしない」って、誰かを幸せにする為じゃないとピアノを弾きたくないの? と思えてしまったのですよね。  終盤、その台詞が伏線となり「出産が無事に済む」=「音楽は誰かを幸せにする力がある」という形で昇華される訳ですが、ちょっとその辺りの流れも唐突。  世間話の中で「実は先生は心臓が弱い」という情報が明らかになってから、僅か三分程度で容態が急変する展開ですからね。  これには流石に「無理矢理過ぎるよ……」と気持ちが醒めてしまいました。  「マイバラード」を他の学校の合唱部まで唄い出すというのも、場所やら何やらを考えると、少し不自然かと。   個人的には、音楽というものは存在自体が美しくて素晴らしいのだから「音楽は素晴らしい」だけで完結させずに「……何故なら、人の命を救うから」という実利的な面を付け足すような真似は、必要無かったんじゃないかな、と思う次第です。  終盤の合唱シーンは、ただそれだけでも感動させる力があったと思うので、もっと歌本来の力を信じて、シンプルな演出にしてもらいたかったところ。   主人公を複数用意し、群像劇として描いているのは、とても良かったですね。  合唱というテーマとの相性の良さを感じさせてくれました。  特に印象深いのが、自閉症の兄を持つ少年の存在。  彼が「天使の歌声」の持ち主である事が判明する場面では「才能を発見する喜び」を味わえましたし、内気な彼が少しずつクラスメイトと仲良くなっていく姿も、実に微笑ましかったです。  「兄が自閉症だったお蔭で、僕は生まれてくる事が出来た」という独白も、強烈なインパクトを備えており、色々と考えさせられるものがありました。  欲を言えば「アンタもおって良かった」という優しい言葉を、彼にも聞かせてあげて欲しかったですね。   ストーリーを彩る長崎弁は、耳に心地良く、のどかな島の風景と併せて、何だか懐かしい気分に浸らせてくれます。  細かな部分が気になったりもしたけれど、それを差し引いても「良い映画だった」と、しみじみ思える一品でした。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-21 06:40:21)(良:2票)
57.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
 白鯨の襲撃を受けて、船が瞬く間に破壊されるシーンは、迫力満点。  想像していた以上に「漂流」のパートが長く (あんまり白鯨とは闘わないんだなぁ……)  と下がり気味だったテンションを、一気に高めてくれるだけの衝撃がありました。   序盤は「分かり易い悪役」であったポラード船長が、徐々に成長した姿を見せてくれる展開なんかも好み。  当初は対立していたオーウェン航海士と、少しずつ認め合い、再会時には喜びを見せる辺りも良かったですね。   鯨油を採る為に命懸けで船旅をしていたトーマスの口から「地面を掘ったら油が出てきた話」が語られる際の、何とも言えない笑みなんかも、非常に味わい深い。  もう危険な航海で油を集める必要もない、石油の時代への移り変わりを象徴する台詞。  とても雄大な気分に浸らせてくれると同時に、一抹の切なさも感じられました。   作中で最大の禁忌として扱われているカニバリズムに関しては、それを扱った品を既に何作も観賞済みなせいか、あまり大事には思えなかったりして、残念。  如何にも勿体ぶって描かれていた分だけ、こちらとしては少々白ける気持ちを抱いたりもしましたね。  結末では「全部を書く必要は無い」と、その禁忌をあえて秘した上で小説「白鯨」が書かれたという形になっており、作者であるハーマン・メルヴィルの優しさが示されています。  その一方で、本作品は「せっかくメルヴィルが気遣って隠しておいた秘密を暴く」ストーリーとなっている訳であり、そのチグハグさも気になるところ。  良い話として纏めているけれど、この映画の存在自体が「あえて全てを書かなかった」配慮と真っ向から反しているのではないかと、最後の最後で疑問符が残りました。   告白者であるトーマスの妻が、毅然として言い放った 「初めて会った時に、その話を聞いたとしても、私はずっと貴方の妻でいたでしょう」  という台詞が印象深いだけに、真実の秘匿を肯定的に描く形にはして欲しくなかったなぁ……というのが、正直な気持ちです。   そんな本作のクライマックス。  白鯨と目が合ってしまい、銛を突く手を止めてしまうシーンは、実に素晴らしかったですね。  とにかくもう「視覚的なメッセージ」の力が圧倒的で「何故、殺さなかった?」という作中の台詞に対しても、こんなに美しいものを殺せる訳が無いじゃないか……という気持ちにさせられます。  傷口を映し出す演出、そして白鯨が攻撃を加えずに去っていった事からするに 「白鯨と航海士との間には、闘いを通じて奇妙な友情が芽生えていたのだ」  と解釈する事も出来そうな感じ。  でも自分としては、白鯨があまりにも美しかったから見惚れてしまい、それを壊す事など出来なかったのだと思いたいところです。
[DVD(吹替)] 7点(2016-07-13 21:32:00)
58.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》 
 あらすじを知って(やれば出来る、の見本のような話だな……)と思っていただけに、劇中にて塾の講師が「やれば出来る、という言葉は良くない」と言い出した時には、驚かされました。  その後に「やっても出来なかった時に、挫折感を味わってしまうから」と説明してもらう形となっており「なるほど」と大いに得心。    実話が元ネタで無ければ「有り得ない」「大学受験を馬鹿にしている」と批判も受けてしまいそうな非現実的ストーリーゆえか、登場人物もステレオタイプな描き方。  塾の講師と、学校の先生の描き分けなんて、正に善と悪。  理想の教師と最低の教師という対比となっており(ここまでやっても良いの?)と最初こそ戸惑いましたが、結果的には思いっ切り極端化させた事が、成功に繋がっていたように思えますね。  主人公同様に、観客も余計な懸念は捨て去って、講師を全面的に信頼し、純粋に受験を応援する気持ちになれたかと。  また、上述の「最低の教師」を後半あまり登場させず「嫌な奴を見返してみせた」という陰湿な復讐の快感をズルズル引っ張らなかった事によって、終盤の爽やかな成長物語に繋げた辺りも、お見事でした。   母親が苦労して塾の費用を工面した件では(これは何としても頑張ってあげないと!)と思わされたし、父親の「野球馬鹿親父」っぷりなんかも、説得力があって良かったです。  私的な事ではあるのですが、身近にあの親父さんに良く似たタイプの人がいるもので、確信を持って「こういう人、いるよ」と言えたりするのですよね。  その父親も完璧な悪役にする事は無く、ちゃんと良い部分(困った人は見捨てられずに人助けする場面)も見せる辺りなんかは、不器用なやり方でしたが、何だか凄く嬉しかったです。   この作品に関しては、全体的に「実話ネタである」事が上手く作用していたみたいで、恋愛要素が極めて薄い辺りなんかも好印象でしたね。  これが完全な創作であれば、先生なり同じ塾の生徒なりと恋に落ちていたかも知れませんが、そういった要素は取っ払い、受験のみに専念してくれたので、安心して楽しむ事が出来ました。    野球映画を観た後に、キャッチボールをやりたくなる。  音楽映画を観た後に、歌い出したくなる。  それと同じように「ビリギャル」を観た後は、勉強してみたくなったのだから、間違いなく良い映画なのだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-04 10:09:11)
59.  シャークネード<TVM> 《ネタバレ》 
 「サメ映画」というジャンルは、非常に当たり外れが大きいです。  もしかしたら当たりよりも外れの方が多いのでは……と考えてしまう事も屡々。   それだけに、本作のような掘り出し物に出会えた時は、その喜びも一入ですね。  無数のサメが竜巻によって空に舞い上げられ、それが浸水状態の市街地に降り注いでくる。  そのアイディアだけでも拍手喝采なのですが、本作が面白い要因としては、きちんとパニック映画としての基本を押さえた筋運びになっている事が大きいのだと思います。   「アイディアと勢いさえあれば、面白い映画は撮れる!」という考えも間違いではないでしょうけれど、やはり基本は大事。  まず、この作品においては「誰が死ぬのか分からない」というドキドキ感の煽り方が、とても巧みなのですよね。  冒頭にて、主要人物っぽく登場した船上の二人が、すぐに殺されてしまう辺りは少々やり過ぎ感もありましたが、それが結果的に上手く作用しており、後に登場する人物達の生存予測を、適度に困難にしてくれています。   そして、もう一つ大事なのが「観客が納得するような人物を生き残らせる」という点。  上述の「誰が死ぬのか分からない」展開と相反してしまう、この条件。  生き残りそうな人物でも死ぬからこそ油断ならない面白さに繋がる一方で、やはり観賞後の爽快感を考えると、生き残って欲しいと思わされた人物が死んでしまうのは、納得出来ないものがありますからね。  大抵のサメ映画は、この矛盾を解消する為に四苦八苦している印象がありますが、本作においては、そのバランス感覚が絶妙。  ラストには反則的な「実は生きていた」展開も駆使して、観客の後味を良くしてくれるのだから、嬉しい限りです。   サメが泳いでいる「道路」の上を、車で走って避難するという絵面だけでも面白いし、血生臭いシーンは控えめになっている辺りも好み。  主人公のフィンは「困っている人を放っておけない」という、典型的なタイプではあるのですが、決してテンプレをなぞるだけで終わっていない点も、良かったと思います。  その性格ゆえに 「私達家族よりも、他人の方が大事なの?」  と妻に責められて、家族関係が不和となっている設定など、きちんと個性が確立されているのですよね。  他人よりも家族を優先して守ろうとする事だって、決して間違いではない。  それでも主人公は、孤立したスクールバスを見かければ、避難する足を止めて、子供達を助け出そうとする。  あまりの「良い奴」っぷりに、惚れ惚れさせられます。   中盤から終盤にかけて、やや間延びしてしまった印象があるのは残念でしたが、その代わりのように「チェーンソーを携えてサメの口の中に飛び込む主人公」なんていう、トンデモないクライマックスを用意してくれているのだから、もう大満足。  愛すべき映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2016-06-22 11:16:24)(良:3票)
60.  ラン・オールナイト 《ネタバレ》 
 リーアム・ニーソンとエド・ハリス。  二人が画面に映っているだけでも映画として成立しそうな名優の共演作、たっぷり楽しませて頂きました。   一緒に煙草を吸うシーンでの思い出話により、二人が長年の親友である事を自然と理解させてくれる作りなど、上手かったですね。  そして作中で主人公が息子に語り掛ける「お前は撃つな」という台詞。  汚れ仕事を引き受け続けてきた彼の過去とも合致しているし、何より息子を想う父としての願いが伝わってくるものがあって、非常に良かったと思います。   脇役である「誰よりも主人公を憎んでいるはずの警官」も、オイシイ役どころ。  そんな彼が、憎んでいるはずの相手の息子を救う事になる結末なんかも、渋くて好みでした。   一方で、最後の敵という形になる殺し屋に関しては、特にコレといった背景が描かれていなかった事も含めて、どうにも印象が薄くなってしまい、残念。  監督としても、この映画のクライマックスは主人公が親友を殺すシーンであると考えており、その後は簡略的に済ませて「後始末」のように主人公を死なせてみせた、という事なのかも知れませんね。  ただ、自分としては今一つ物足りないものがあって、これなら普通に自首させて終わりでも良かったんじゃないかな、と思えた次第。   それと、この映画のストーリーラインを考えてみるに「飲んだくれのダメ親父と化した主人公だが、実は今でも殺し屋として凄腕である」というサプライズが存在していた事も窺えました。  自分が「96時間」などを未見であったなら (えっ? この親父さん、こんなに強かったの!?)  という衝撃を受けて、もっと楽しめた可能性も高そうです。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-27 14:39:37)(良:1票)
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