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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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641.  レベッカ(1940) 《ネタバレ》 
ダフネ・デュ・モーリアの原作を映画化した本作。 ヒッチコックがイギリスにいた時代から原作の映画化を熱望していたヒッチコックだが、本作はヒッチコックにとって大いに不本意な作品となった。  「キングコング」をプロデュースして名乗りをあげていたセルズニックがアメリカに来たばかりのヒッチコックを援助。 ところが単なる援助に留まらず、脚本や演出にまで乗り出してきてしまう。 「そこまで頼んでないよ」と流石のヒッチコックも涙目。  ヒッチコックも負けずに「わたし」役のジョーン・フォンテインをしごきにかかる。 相手役のローレンス・オリヴィエはヴィヴィアン・リーにゾッコン。 フォンテインなんかどうでもいいと言っても良かった。 そこにヒッチコックが目を付けてフォンテインに冷たくあたり、本編でのヒロインの冷遇が迫真を増す事となった。 フォンテインも負けてなるものかと、ドジを重ねつつも次第に一人の女として成長していくヒロインを熱演。 貴族のボンボンながら誰にも打ち明けられない過去を引きずるマキシム役のオリヴィエに引けを取らない演技を魅せつける。  本作のヒッチコック色といえばやはりダンヴァース夫人。 ヒッチコック映画は「怖い」んじゃない。 一瞬背筋が「ゾクッ」とするような寒気がすればそれでいいのだ。 その一瞬の寒気を何層にも重ねて恐怖を作り上げる。 それがヒッチコック映画であろう。 原作でも突然ふっと現れる亡霊のような不気味さがある彼女。 誰の夫人なのか? どうしてそこまで執拗にヒロインを追い詰めるのか? もしかして百合なのか? 好きだけどついつい虐めてしまうタイプなのか? 何て生易しい考えが及ばない、得体の知れない女性だ。 自由に出入りする放し飼いの犬のような可愛気、そこに潜む獰猛な執着。 じわりじわりとヒロインを追い詰めていく姿はおっかないね。 まるでセルズニックがふんぞり返る「レベッカ」を、じわりじわりと自分の色をほうぼうに塗りたくるヒッチコックのような執念だ。  ジョージ・サンダース演じる小悪党ジャック・ファヴェルも面白いキャラだ。 お目当ては「ダンヴァース夫人」か「ヒロイン」か。 ベンじいさんも良い顔してますな。  二重、三重のどんでん返しを楽しめる傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-03 00:48:53)(良:1票)
642.  レオン/完全版 《ネタバレ》 
この系統は「シベールの日曜日」や「グロリア」とあるが、この作品もまた傑作! 物語は殺し屋であるレオンが一人の少女と交流していくという筋だが、殺し屋に相応しい血生臭い日々から幕が上がる。殺しの依頼、幽霊のように一人一人確実に殺していくレオンの得体の知れない恐怖。まるで殺戮マシーンさながらの活躍だが、そんな恐怖はどんどん無くなっていく(良い意味で) 日常では植木鉢を日光に当て、腕が鈍るので酒はやらず牛乳オンリー、後は銃の手入れと肉体強化という単調な日々を過ごした。一人孤独に。 そこにもう一人孤独な少女が“家族”として同居する事になる。 マチルダは腹違いの両親や姉から疎ましく思われ、唯一泣きついて来る弟だけが彼女に優しかった。 家に居る場所が無い彼女は学校にも行かず、孤独な生活を送っていた。 二人はある事件をキッカケに“家族”となった。 利発な少女と、野暮ったいおじさん。 まるで本当の親子のように学び、食べ、心を通わせていく。 少女は大人になりたいと背伸びし、男もまた一人前の人間になりたいと強く願う。 殺し屋に憧れる少女の夢、殺し屋になってしまった男の苦悩・・・この娘を自分のようにはしたくない。 二人はコンビとして数々の“仕事”を手掛けていく。 この映画の殺しは何処までも上品。飛び散る血痕、冷え切った後ろ姿のみで語るのみ。 銃声も無駄に大きくないのが良い。フランス人気質が超プラスで出た良い例だね。 しかし運命は二人を引き裂きにかかる。 復讐の“標的”はレオンの“依頼主”という皮肉。 囚われる少女、どんな状況でも助けに来る男。もうレオンはただの殺し屋では無くない。家族を守る一人の人間になっていたのだから。二人は互いを刺激する事で成長を遂げていく。 標的の最大のミスは“公職”に着いてしまった事。自分のテリトリーで人質を殺す事も、盾にする事もできないというのもまた皮肉なものだ。 ラストの戦いは完全に別の映画。冒頭との温度差が酷すぎる(大絶賛) ただこのレオンの熱さ。もうレオンは殺戮マシンじゃない。熱い一人の父親だ。 彼は運命からは逃げられなかったが、キッチリ掃除屋としての“仕事”をやり遂げて旅立ったのだろう。 ボロボロになりながらも諦めずに。レオンの魂は、少女の心の中で生き続けるだろう・・・良い映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-02 02:02:48)(良:1票)
643.  ハタリ! 《ネタバレ》 
再見。やっぱりメチャクチャ面白いぞこの映画は! ホークス入門にも打ってつけ、アフリカを舞台に西部劇さながらの“追跡”アクションが詰め込まれた面白い映画だ。  ジョン・ウェインとホークスのコンビは「エル・ドラド」や「リオ・ブラボー」、「リオ・ロボ」「赤い河」とあるが、俺が一番好きなのはコレ。ウェインが一番優しい映画かも知れない。  冒頭から広大なサバンナで何かを探すように双眼鏡であたりを見回す男たち、遠くに点在するもの、何かを見つけ、無線で合図を送り、一斉にジープを飛ばし獲物めがけて突っ走る!  水牛の群を切り裂くように、ハンターたちの視点で猛然と走るサイに並走し追い続けるスピード(尊敬する存在でありライバルでもあったジョン・フォードさながらの映像)、サイも捕まるものかと角を突き立て体当たりを繰り返すド迫力。キリンも凄いスピードで走ること。  男も、女も、動物もみんな活き活きしていてひたすら楽しい。そこに国も人種も動物もない、追われたら追いかけ返し、一つの仕事によって対等に渡り合い結ばれていく。だからホークスの映画は大好きだ。  下着姿で飛び出し乗り込み車の中でボトムス(ズボンは死後ですかそうですか)を履いてしまう写真家エルザ・マルティネッリの元気さと可憐さ、運転から治療までこなすブランディの色っぽさ、ロケットブッ飛ばして家を貫く動物嫌いのムードメーカーであるポケッツ、挨拶代わりに拳を浴びせる射撃の名手チップス、それを受け入れ良き相棒になってくれる古参の頼もしさハーディ・クリューガー、寡黙だがダンディな髭が印象的なヴァレンティン・デ・ヴァルガス、風呂場や寝室にもちょっかい出すキュートなネコ(科のチーター)ちゃん、拾われ水浴びしてくれた恩人のために市街地を駆け抜け缶詰の山を粉砕する可愛い子象たち(ヘンリー・マンシーニの「小象の行進」に合わせてピクニック気分で水浴びに出かける場面といったら!)、地元でウェインたちをサポートし続けてくれるマサイ族といったアフリカの人々。  そして父親のようにみんなをまとめるウェインの存在。 頼まれた仕事も大事だが怪我人最優先で引き返したり、寝室を不法占拠されても黙って譲り、わざと憎まれ役を買って新参たちがチームに溶け込むのに一役買ったり、子供の様に邪気な恋に挑む仲間にアドバイスしたり、飛び出していく仲間を見守るためにたった一人で後を追ったり。 みんなが楽しくピアノを弾いたりハーモニカを吹いて楽しくやっている時も、静かに見守り続ける。でも惚れちまったら粘り強く引き下がらないけどな。恋愛に年齢は関係ない。その精神は「リオ・ブラボー」の頃から変わらない。  ベッドの上の来訪者をめぐり酔っぱらった男たちが次々に訪れ同じセリフを繰り返したり、仕事のプロたちが動物や女性陣に振り回されたり、とっさのこととはいえ不慣れな荷台の上で倒れまくり受け止めた人がおっぱいを触ってしまったりギャグのキレも抜群。  動物たちとのやり取りも面白い。 小象に乳をやるのにヤギを大量に捕まえ、そこに小象が突っ込んできてパニックになりアチコチ走り回り(羊のミルクを被り黙って苦い顔をするウェインに爆笑)、猿の大群を木に登らせロケットでまるごとひっ捕まえ木を薙ぎ倒してしまう!鳥籠までヘルメットにして。   動物狩りも世話をしたり依頼人たちに送り届けるために絶対殺せない・生きて捕まえることを徹底する暗黙のルール。 撃つのは威嚇射撃で無駄な殺生を避けるため、新人試し&歓迎の射撃訓練のため、仲間の危機を救うために。ライフル握ってたその手で動物を生け捕るために奔走するのだから。仕事は違えど、住民を守るために殺ってしまった男にも気を遣うプロフェッショナル同士の思いやり。   段差だろうが河だろうが走り抜け、土煙をあげながらサイやキリンやシマウマを追いかけ、投げ縄で捕縛してもまた逃げられるかもしれない、檻に誘い鍵を閉めるまで気が抜けないスリル。河を渡る時でさえちょっとでも止まればワニが迫り来る。  ドアを開ければ象が雪崩れ込みベッドを潰してしまうのだ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-02 01:34:58)(良:1票)
644.  ウィンチェスター銃'73(1950)
西部劇においてリアリズムを追求した監督は誰か?   もちろん「真昼の決闘」なんてつまんねえ西部劇を撮ったフレッド・ジンネマン何ぞではない。 オールラウンダーな職人アンソニー・マンだ。 リアルタッチの演出はもちろん、独特な人間ドラマや風景の美しさ。失敗作も少なくないマンだが、反面全盛期の傑作群は今の時代にこそ再評価されるべき作品ばかりだ。  ヒューマンドラマ「グレン・ミラー物語」はもちろん、突出した戦争映画「最前線」や「雷鳴の湾」等優れた傑作が多い。 あの「スパルタカス」だって最初はマンが撮ってた。アレを全部マンが撮っていたらどうなっていたのだろうか。キューブリックに及ばないのか、それともそれに並ぶかそれ以上の作品になっていたのか。気になるぜ。 そんなマンが最も多く手掛けたのが西部劇。 本作「ウィンチェスター銃'73」はそんなマンの傑作の1つだし、保安官もの「胸に輝く星」やインディアンを友好的に描いた「流血の谷」といった諸作と共にもっと知られるべき代表作でもある。 この作品を見て“古臭い”なんて思う奴はこの映画の何を見たんだろうか。いや何も見てないね。  ストーリーは千丁に一丁と言われる名銃「ウィンチェスターM1873」を巡って様々な人間ドラマが交錯する。まるで山中貞雄の「丹下左膳 百萬両の壺」だ。 だがストーリーはシリアス一色、名銃探しはやがて奪い合い、殺し合い、そして壮絶な事件へと膨張していく。 たった一つの優れた“道具”が万の人間の命を奪える“人殺しの道具”になる過程。西部を征服した銃が今度は人の心を狂わせていく。怖い話だぜ。 どうでもいいけど、マンの映画って大抵主人公が“伏せる”よな。ステュアートどんだけ伏せんだよ。 馬上で睨みを効かせるステュアートも印象的。面白い作品でした。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-02 00:33:44)
645.  男の子の名前はみんなパトリックっていうの
「はなればなれに」に並ぶ愛らしさに溢れた逸品。「おまえ本当にゴダールか?」ってくらい毒が無い。 ゴダールが「勝手にしやがれ」を撮る前にエリック・ロメールらと組んで制作した短編。 ゴダールらしいシャレた音楽と若者たちの他愛の無い会話で構成されているが、後の作品における難解さといった観客を突き放すような演出はまだ完成されていない。 や、かえってその取っ付きづらさが無くて良かったと言うべきか。実に初々しい若さを堪能できるだろう。たった21分の中ににシンプルなストーリーとシャレたセリフの応酬を詰め込む密度。 時間が無いのでスピーディーな展開だ。 ゴダール初心者・苦手という方には「はなればなれに」や「女は女である」を今まで勧めてきたが、その前に「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」から見てみてはどうだろうか。 それにしてもパトリックは酷え野郎だなあ~。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-28 18:51:01)
646.  少女ムシェット 《ネタバレ》 
再見。 何度見てもハートフルボッコの筈なんだがなあ…ヒロインの健気な姿を見るだけで元気になれるのは何故なんだろう。  「バルタザールどこへ行く」に並ぶ、少女の不幸を冷徹な眼差しで…いや見守ってやることしか出来ない無力さに打ちのめされるシネマトグラフ。 この映画を見て落ち込んだという方には同じブレッソン「スリ」「ブローニュの森の貴婦人たち」、ドタバタコメディ「公共の問題(公共問題)」、良い意味の“ハラハラ”を味わいたいんだよという人には「抵抗」を見て心を癒すことをオススメします。   薄暗い部屋で心配事を語る疲れ切った女性、森の中で茂みをかき分ける者、帽子から輪になった紐を取り出し、木の枝に括りつけて草木の上に置く者、“仕掛けた”者が待っていたもの、引っ掛かり悶える鳥、それを掴み取る手、一部始終を見届ける視線。 抜け穴、収獲、すれ違う帰還者と登校途中の少女。  授業でみんなが歌う中で口をつむぐ理由、だからって突き飛ばしピアノの前で首根っこ掴んでまで曝しものにするこたぁねえだろ。何度も歌わされ、嘲笑され、耐えきれなくなり顔を覆い泣き出してしまう。誰も助けちゃくれない。 男の子もわざわざ呼び止めてズボンを脱いで見せつける嫌がらせ。  家に帰れば父親たちは夜遅くまで酒に溺れ(警察にバレないように酒瓶を布で隠して)、冒頭で語っていた母親は病で寝込み、夜泣きする赤子の世話と忙しい。  だが彼女もただ黙って耐えるだけの少女じゃなかった。 ちょっと大人の男に視線を送っただけで平手打ちを浴びせるようなロクでなしの父親だ。教会にもわざと泥まみれの靴で入るのは、突き飛ばされるのが分かっていても暴力を振るう父親へのせめてもの抵抗。 それは散々な目に遭っているのにどうして宗教にまで縛られなきゃならないの。何もしちゃくれねえ宗教なんぞを信仰する馬鹿馬鹿しさ、冗談じゃないと彼女が…ブレッソンが叫びたかったことなのかもしれない。  下校時には道脇の茂みに伏せるように隠れ、女生徒たちに泥をブン投げまくる。例え振り返ったとしても隙あらば投げることを繰り返す。 幼い少女たちは下着が露になるのもお構いなしに鉄棒を回り、香水をかけ合い、男の子が乗るバイクにまたがり、早く大人になりたそうに振る舞う。 遊園地に行くのは憂さを晴らすため。ゴーカートのぶつけまくりぶつけられまくることが許された運転、回転飛行機で飛ぶように二人きりの男女を見つめる視線。  密猟の男たちが河原で拳を浴びせ揉みくちゃになるのは、仲直りし飲み合うため。  スカートからのぞく女の肢体、ストッキングを止めるバンド、泥に埋まり残される靴、雨に濡れた少女を“捕まえる”ための誘い、手の出血を焼けた枝で止める荒療治、蝋燭立てになった酒瓶、机の上に逆さまで並べられた椅子、カバンの中にしまわれる小銭?、ふら付き発作が起きようが泡を吹くまで飲んだくれブッ倒れる。虚空を見つめて目を開っきぱなし、そんな姿に思わず歌うのを嫌がっていたはずの少女が男を介抱するため、子守唄を聞かせるように歌声を響かせる。 豹変、酒瓶の山を落とし割り、机を薙ぎ倒し、燃え盛る火の前まで追い詰め襲い掛かる。どうして男ってこんな奴しかいないの?という絶望。  木の枝に紛れる逃亡、辛いことがあったら母親の手を掴み慰めてもらう。わずかに残った希望…。  森番に部屋の中まで連れられ夫婦揃って説教を喰らい、ミルクを買いに行った先で親切にスープとパンを振る舞いポケットに“ほどこし”を入れる女主人。ポケットに手を入れる「スリ」とは真逆の行動で彼女に幸せが訪れるのか…それを粉砕する様に割られてしまうカップ。机の上に投げ捨てられる“ほどこし”。  文句言いながら渡されるほどこしなんて御免だよと、絨毯を泥だらけの靴で踏みにじる。  ウサギ狩りで猟銃が刈り取る命、命、命。「バルタザールどこへ行く」の動物たちがそうだったように、この映画も容赦なく犠牲になっていくのだ。  もらった服も木の枝で引き裂き、寝転がり草まみれにし、それを纏いながら転がって、転がって、転がり続けた先…。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-28 18:41:11)(良:2票)
647.  はなればなれに 《ネタバレ》 
ゴダール嫌いにオススメする楽しい映画。 「女は女である」ほど強烈じゃないけど、反面毒気がないというか、とにかく楽しいことだけやりましょうという無邪気なコメディ。  ゴダールは典型的な「付いて来れる奴だけ付いて来な」ってタイプだから、時折の突拍子な行動を好きになれるかなれないかだな。  この映画もその系統の筈なんだが、ゴダールの映画で一番気楽に楽しめる「思いつきの寄せ集め」だ。 そもそも英語の授業なのにずっとフランス語というのが。 いきなり踊りだすわ、 ルーヴル美術館爆走するわ、 強盗するわで変てこりん。 ああ、コイツ何も考えてねえ(笑)  でも何でだろうねえ・・・嫌いじゃないというか、愛らしいと言うか、無垢というか、不思議と頭を撫でたくなる映画だ。 まるで何をしたいか解らず周りをうろうろする仔犬のように・・・いやアンナ・カリーナがひたすら可愛ゆ・・・ゴホン 愛らしいというのもあるんですがね。 楽しいひと時を味わえた。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-24 02:16:56)(良:1票)
648.  昼下りの決斗
「ワイルドバンチ」より断然コッチでしょう。   確かに暗い西部劇だけど、西部開拓時代の終わりをひしひしと感じられる。   「地獄への道」や「七人の無頼漢」を始めとする西部劇に多く出演したランドルフ・スコット、  「死の谷」などで活躍したジョエル・マクリー。   年老いた彼らの、日陰者になっていた自分たちの境遇が重なったかのようなシンクロ。   自転車と共にやってくる「一つの時代」の終わり・・・二人の男たちは何を成し、何を成せなかったのか・・・そんな映画だと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:26:32)
649.  戦争のはらわた 《ネタバレ》 
「完全版」の出来が満足(10)点だったので、コッチはほぼ満足(9)点を付けておく。 「ワイルドバンチ」は執拗なスローモーション&クローズアップ演出で反吐が出る映画だったが、本作はそれを極力抑えたことで見事な傑作となった。  「昼下がりの決斗」と共にペキンパーを見直した映画。   リアルな戦場と言えばルイス・マイルストンの「西部戦線異状なし」もあるが、どちらかと言えば俺は「戦争のはらわた」を選ぶ。   第二次世界大戦の東部戦線を舞台としたこの映画は、ウィリー・ハインリッヒの原作「Willing Flesh」を元に映画化。  オープニングの子供の童謡をバッグにした戦争資料のような映像、  そして冒頭のシュタイナー小隊の華々しい活躍。  死と破壊に満ちた戦場、その下に拡がる塹壕の中に溢れる人間の温もり・・・やがてそれも消えていく。  シュタイナーが助けたロシア人捕虜の少年が良い例だ。  アンドレイ・タルコフスキー監督の「僕の村は戦場だった」を思い出すその子供。  死が待つだけの戦場で生まれる言語を超えた友情・・・それすらも打ち砕かれていく。  兵士は国の道具なのか?  一人の人間なのか?  そんな様を死が飛び交う戦場、ドイツ軍の一部隊の視点で描いていく。  勲章一つのために多くの人間が死んでいく。  「こんな物」のために・・・主人公はそれに気付いてしまったのだ。  そして戦うことの意味を求めて苦悩と葛藤を繰り返す。  上司であるシュトランスキーとの闘争。  内も外も疑心暗鬼で敵だらけ。  取り返しのつかない死があるとも知らずに彼らは争う。  そんな男たちも、いざ死ぬとなると人間としての尊厳を取り戻す。  シュタイナーも、ブランド大佐も、シュトランスキーも輝きに満ちた顔で戦場に飛び出していった。  彼らの最期は解らないが、そこには命懸けで戦った人々の物語が強く刻まれている。  シュタイナーが笑ったのはシュトランスキーの滑稽さか、戦争そのものの滑稽さか。  その答えはシュタイナーだけが知っている。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:23:42)
650.  オーソン・ウェルズのオセロ 《ネタバレ》 
「マクベス」「黒い罠」「審判」に並ぶウェルズの傑作。  「オセロ」はオーソン・ウェルズのシェイクスピアに対する尊敬と愛情を感じられる無骨な造り込み。   1952年に造られカンヌ・グランプリを飾った作品であったが、不幸が重なりフィルムは消息を断つ。  1993年に眠っていたフィルムが見つかるまで、数十年もその存在と価値が知られなかった。  「市民ケーン」以上の不幸、それを乗り越えて現在に復活した本作。   アメリカを追われたウェルズが、モロッコで4年かけて造った魂の結晶であり、ウェルズの「エンターテイナー」としてではなく、元来の「舞台俳優」としての自身と誇りを堪能できる。   ファーストシーンに満ちた「死」の空気。  イングマール・ベルイマンの死の雰囲気にも似ているが、細部へのこだわりの違い。  シェイクスピアの、ウェルズの重厚な「死」の空気が漂う印象的な幕開けである。   そしてその「死」は如何にして訪れたか。  それを90分間まざまざと魅せ、語っていく。   主人公オセロの「黒」、  妻デズデモーナの「白」、この対比の鮮烈さはモノクロだからこそより印象強い。   イアーゴ演じるマイケル・マクラマーも素晴らしい。  イアーゴの言葉で疑心暗鬼になっていくオセロ。  コンプレックスに悩んできたオセロの心の脆さ。  オセロにかかる黒き影は、オセロ自身の疑念に満ちた心を表現している。  自分の心の黒き闇に喰われていくオセロの哀しみ、デズデモーナの哀しみ。   ウェルズはシェイクスピアになりたかった。  誰からも愛され、誰からも妬まれ、誰からも意識される・・・そんな偉大な作家になりたかった。  「嘘」を「本物」にする男になりたかったのだ。  野心と情熱をたぎらせながら。  「市民ケーン」はそういう男の野心と破滅を描いた。  実在の人物を笑いものにする喜劇性、  そんな男が辿る末路を予想した悲劇性、  正にシェイクスピアの喜びと悲しみを帯びた物語だった。   今回のオセロはもっと凄みがあって面白い。  この作品は「よくあるシェイクスピアものの映画」などという一言で片付けてはならない。  ウェルズがいかに役者として演技に魂を賭けているか、こだわっているか。それをひたすら感じてもらいたい。  人種差別にも踏み込んだ骨太の作品。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:12:22)(良:1票)
651.  人情紙風船 《ネタバレ》 
山中貞雄は何を成し、何をやり残し戦場に散って行ったのか。  この「人情紙風船」にはそんな山中貞雄の死を感じさせる描写が散らばっている。  生きるか死ぬかの博打の日々を送る新三、  士官先を求めて何度も頭を下げては断られ続ける浪人の又十郎。  それを取り巻く女たち。  何度袋叩きにされようとめげない新三、何度断られようと通い続ける又十郎。  そんな二人の物語が交錯していくドラマの厚み。  二人は「共謀」を図った。  一時でも良い、死んだって良い。どうせ明日は無いんだ。一瞬でもいいから何かを成してから死んでいきたい。  金でも地位や名誉でもない。  意地が彼らに行動を取らせた。  酒屋での宴会は最後の晩餐か。  死んだことにも気づかず逝った男、死んだか生き残ったかも解らない男。  皮肉にも山中貞雄は己の死と向き合ってこの世を去っていった。  だが彼の代わりに、この作品に出演した俳優たちは息の長い活躍を続けた。  まるで亡き監督の魂を受け継いだように・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:09:17)(良:1票)
652.  大脱走 《ネタバレ》 
第二次大戦末期。  「史上最大の作戦」と言われたノルマンディー上陸作戦。その裏で行われた「史上最大の大脱走劇」!  前半2時間の“大脱走”をするまでの工程を積み重ねていく楽しさ・個性豊かな面々が脱走の一瞬に命を賭ける熱さ・ノルマンディーで戦う何万という仲間のため・一人のために体を張って叫んで、走って、戦い抜く魂!  それをもう1時間も追走劇の緊張と興奮を味あわせてくれるんだもんなー。お腹一杯ですよ。 人物の描写や脱走までの工程がとにかく丁寧。捕虜収容所の複雑な関係も面白い。みんな個性があってよく描けてる。  実際に戦争に言った強者どもがひしめく。みんな良い顔してるぜ。脱走のシーンも、少しずつ慎重にいって、そして一気に弾け飛ぶ。   特にヒルツの生き様はカッコイイ。 仲間のために何度でも逃げ、何度でも戻ってくる。かならず生きて。盗んだバイクでのチェイスも凄い。いつも浮かべる不敵な笑みが良いね。  ラストはとても悲しいけど、最後にヒルツが戻ってくるシーンを見るだけでも「また見たいな」と何回も思ってしまうのです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:06:46)(良:1票)
653.  激突!<TVM> 《ネタバレ》 
これは現代の「西部劇」とも言える。  西部劇が馬なら現代は鉄の馬同士の一騎打ち!  物語はどこまでも単純、どこまでもシンプル。   アメリカのだだっ広いハイウェイに車が一台。   そこに突然現れた巨大なトラック。   ノロノロで追い越させ、追い越させたと思ったら猛スピードで突進して来る。   借金の取立てが命の取立てになってしまった。   ブザーを鳴らす愉快犯かと思いきや、故障したバスを押してやったりと実は優しいのか?   いや、やっぱり主人公の車を付け狙う愉快犯か。  カフェの外で不気味にたたずむあのトラック。   主人公の心も恐怖と怒りでピークだ。    ともかくトラックの運転手は正体不明のまま。声も顔も出ない、不気味な二の腕だけが主人公を挑発する。   フロントバンパーに貼られた無数のナンバーは何を語ろうとしているのか。   トラック野郎にあるのは狂気だけなのか。   正体が解らないという恐怖。   スピードが出すぎ車が止まらないとう恐怖。   日常に溢れた恐怖を最高潮に引き立てるスピルバーグの妙技。   後の「ジョーズ」はかなりヒロイックな展開がされたが、この「激突!」はひたすら追いかけっこ。   だがそんな主人公も我慢の限界。 上等だテメエ!“決闘”だよバカヤロウ!  壮絶な二台の追走劇。   「車のエンジンが中々かからない」の始祖だが、これは衝突でエンジン部分がひしゃげたからこそ起こるだろうという現象であり、普通の車がそんな欠陥品なら会社なんか潰れてる。後の奴らは何か勘違いしてんだよな。   ラストのトラックと向き合い、車で迎え撃とうという様子はバスター・キートンの「セブン・チャンス」を思い出す。   迫る岩の大群、逃げるのをやめて「あえて」正面から避ける事にしたキートンの勇気と発想。   もしスピルバーグがこのキートンの傑作を見ていたとしたら、俺はもっと尊敬するぜ。   少くともカフェでのやり取りは黒澤明の「野良犬」が元らしい。  つうか主人公は何回車上で振り返るんだよ。   主人公がいつ余所見で事故るかそっちの方がよっぽどハラハラするわ。   バックミラー涙目。   教習所涙目。   ラストの夕陽のシーンがキレイだった・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:05:00)(良:2票)
654.  ワイルドバンチ 《ネタバレ》 
セルジオ・レオーネやセルジオ・コルブッチのマカロニウエスタンが可愛く見えるほどの生々しさを誇るヴァイオレンス西部劇。  俺個人はペキンパーといえば「戦争のはらわた」や「昼下りの決斗」だが、この作品はペキンパーの最高傑作に相応しい“破壊力”に満ちている。  6台のカメラを使って極限まで磨かれた銃撃戦の迫力! 冒頭の襲撃への緊張を高める場面と凄惨な銃撃戦は今までの西部劇に無い、 中盤は西部劇の伝統に沿った追跡劇と橋を爆破するまでのスリル、 そしてクライマックスを飾る4人対軍隊によるガン・ファイト!!!  ファーストシーン、ガンファイト、人間ドラマ、ラストシーンと揃った作品だ。  しかしこの映画が「俺たちに明日はない」といった作品同様の批判を受ける理由が解らない。 そりゃあ執拗なクローズ・アップや過剰なスローモーション演出には反吐が出るが、そんな事は問題じゃあない。 西部劇を血の海にした事が許せないのか? それとも単に残酷な描写が許せないのか。 お門違いも甚だしい。 残酷描写というだけなら「戦艦ポチョムキン」や「椿三十郎」だって血の海だ。 血の海になって終わる映画ならエイゼン・シュテインの「ストライキ」だってそうである。 「アンダルシアの犬」なんか眼球チョンパだぜ?  そんなこっちゃあ無いんだよ。 大体、西部劇を神格化しすぎなんだよ。  この作品の西部劇は「爽やかな風と巨悪を撃つ正義のアウトロー」を描いわけでも、 「過酷な西部に生きる力強い民衆」でも無い。 エドウィン・S・ポーターの「大列車強盗」のような「暴力によって滅ぶ暴力者」の映画なんだ。 蠍がなぶり殺しにされる弱肉強食の“暴力”に始まり、メキシコ革命を影で支えた人間たちを皆殺す“暴力”に終わる。 暴力によってしか生きられなくなった男たちの哀しき物語。 そこには正義も悪も無い。 ただ彼らがいかに笑い、いかに哀しみ、いかに戦い死んでいったか。それだけなのさ。 パイクたち、 パイクを裏切ったソーントン、 マパッチの軍隊、 そして押し寄せる時代の波・・・四つ巴の死闘。西部を駆けるアウトローたちが生きた最後の時代。 俺たちに明日はない。だが、今日がある。 そう願ってがむしゃらに引き金を引いて死んでいく・・・それは、最後の最後に血ではなく、満面の笑みで観客に別れの“挨拶”をする男たちの姿からもそう思えてしょうがないんだ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:00:50)(良:1票)
655.  JAWS/ジョーズ 《ネタバレ》 
ハワード・ホークスの傑作「リオ・ブラボー」の換骨奪胎、そして「虎鮫(Tiger Shark)」やクリスティアン・ナイビイと組んだ「遊星よりの物体X」といった作品へのオマージュも散見されるパニック・サスペンスの傑作。  日本で言う虎鮫(Cloudy catshark)は小さい鮫だが、アメリカの虎鮫・・・いやイタチザメ(Tiger Shark)は巨大な顎で人間を食いちぎるモンスター。  日が落ちた海岸の闇、恋人と戯れる水着の女性は海原に飛び込む。何も知らない彼女は、水中で優雅に脚を動かしている。海の底から獲物めがけて徐々に浮上する“捕食者”の視線。ジョン・ウィリアムズの不気味な音楽が恐怖を最大限に盛り上げる・・・イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」は、“捕食者”が奏でる夏の悪夢へと変わる。  前半は恐怖から逃げる事しか出来なかった人々。それを、鮫に因縁を持つクイントの一撃がこの映画の流れを変えてしまう。   「ジョーズ」は、身近な海に潜むサメの恐怖を描いたパニック映画だが、ただ人がギャーギャー叫ぶだけの映画ではない。 その恐怖に屈するか、サメに勝つか。そんな人間の愚かさや葛藤のある人間ドラマが一番の見所だね。  後半のガラッと変わる展開も面白い。  サメとの因縁が深いクイント。討伐組を引っ張る頼もしい男だが、次第にサメとの因縁や過去の哀しみを語る姿・・・最後の最期まで誇りを持って戦ったカッコいいオッチャンだ。 本編ではカットされてしまったが、店で子供と戯れるシーンとか、見れば見るほど好きになる人だ。 ジョーズは、魅力的な登場人物が多くて何度見ても飽きません。 それにサメが近づく度に緊張を極限まで高めるジョン・ウィリアムズの音楽!あの音楽を聞くためだけでもまた見たくなってしまう。  終盤はいよいよその恐怖の的との真っ向勝負! これ以上、誰も死なせたくない。人間の意地、サメにもサメの生き方を通さなきゃならない意地、こっちにも生きるための理由がある。だから戦う!  壮絶な決着の後に訪れる、静かなラスト・・・怖いけど、良い映画。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:58:35)(良:2票)
656.  となりのトトロ 《ネタバレ》 
田舎の原風景がアニメの中に生きる「トトロ」。 宮崎駿の数ある傑作の中で、「トトロ」はもっとものびのびと、もっとも自然豊かな映画ではないだろうか。 説教臭い部分もほとんど無いし、とにかく広い大地を走り、飛び回るような解放感がある。 そこに日本家屋の居心地の良さ、夏のほどよい暑さ、水の冷たさ・・・そういう無機質なCGでは味わえないぬくもりが映像の中に溢れているんだよなあ。劇中に流れるノスタルジックな音楽と共に。 「さんぽ」の音楽と共にメイたちの行進が始まるオープニング。 劇中のメイたちはオープニングから歩いて走って叫んで飛びまくる。 メイと小さなトトロたちの追いかけっこ、惚れた女に傘を黙って渡し去っていく男気、夜空に傘で舞う巨躯、母のために泣き叫びそれに応えるトトロと猫バスの爆走振り。 のどかな田舎に引っ越してきたサツキたち、サツキたちを案内する清太との出会い。清太はこの時、既にサツキに恋に似た感情を抱いていたのだろうか。 普通ボロ家だと苦い顔をする人もいるだろうけど、サツキたちは「これから自分達の家にするんだー」とワクワクした表情で家の探検にでる。大声は威嚇、恐怖を薄れさせるための自分への鼓舞。 ボロボロの柱も、二人にとっては自分達を迎えてくれる遊び相手になってしまう。 まっくろくろすけは群れをなしてサツキたちに住処を“譲って”行く。 だって「出ないと目玉をほじくるぞー♪」なんて言われたら逃げたくもなるわww 手足の“すすわたり”は子供にも大人にも「夢だけど、夢じゃない」。 雨の中バスを待つシーンはちょっとホラー。 眠りそうになるメイをおぶり、サツキは独りきりで父を待つ。そんな時にいきなり巨大な爪を持った怪物が横に現れるのだ。その怪物が数分の傘のお礼に雨を「どしんっ」と止めてくれたりサツキを助けてくれるのだから素敵じゃないですか。傘を開く瞬間にビクッとなるトトロが可愛い。 “めい”目掛けて電線や田園を風のように駆け抜ける猫バスの疾走感!愛情のこもった「ばか」の一言、直接母親に会う“楽しみ”を待つ事にするサツキとメイの成長もちょっぴり描かれる・・・夏にもう一度“不思議な出会い”をしたくなる映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:56:31)(良:1票)
657.  ジョニーは戦場へ行った 《ネタバレ》 
ダルトン・トランボ自らの小説「ジョニーは銃を取った」の映画化。  オープニングのドラムの連打。  まるで機銃を掃射するように一つ一つ叩かれる音は、機銃に斃れていく兵士の叫びでもあるのかも知れない。  トランボの戦争に対するあらゆる怒りがこの映画には詰まっている。  戦争が起こる度に原作小説を発禁にしてきたアメリカ政府の傲慢。  「人間」として殺され、消耗品の「弾丸」という兵士にされていく人々。  戦争そのものに殺されていった人々の叫びをトランボは聞いたのかも知れない。  原作は第二次大戦が勃発した1939年。  まだ第一次大戦の暗い影を引きづっているような時代に続けざまの戦争。  第一次の頃に子供だった人間が、大人になった途端に戦場に出され殺されに行く。  何処にいたって戦場だ。子供も大人もみんな無差別に焼かれる。  戦争したけりゃてめえらだけでやれ。どうしてこんな争いのために我々が殺し殺されねばならんのだ。  顔を焼かれ四肢をもがれた「ジョニー」からはそんな激しい怒りが伝わって来る。  美しき過去の「幻想」、光の届かない闇の「現実」。  戦場に行けば二度と戻れないかもしれない。だったら死ぬ前に好きな人を思いっきり抱きしめてやりたい・・・。  叫びたくても叫べない、  触りたくても触れない、  泣きたくても泣けない、  眼をつぶりたくてもつぶる眼も無い。  こんな人間を誰が作った!  「ジョニーよ、銃を取れ」と無責任に叫んだ全ての人々だ。  自分の利益のために他人の死体を踏みつけにしてきた多くの人間だ。  トランボはそんな人間への怒りを命懸けで叫んだ。  何が赤狩りだ。  何がプロパガンダだ。  ジョニーの気持ちを否定できる奴なんざこの世にいない。  何故ならジョニーの苦しみはジョニーにしか解らないのだから。  我々はジョニーのありのままを受け止め考える事しかできないのだから。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:54:28)(良:1票)
658.  最前線物語 《ネタバレ》 
アンソニー・マンの傑作「最前線」のパワーアップ版とも言える作品。  「最前線」も素晴らしい映画だが、サミュエル・フラーのリアルタッチの戦場空間はより凄味がある。  地雷に「去勢用」なんてあるのか・・・初めて知ったわ。  特に海岸での銃撃戦から一転して“抱き合う”場面・・・コイツらさっきまで殺し合いしてたんだぜ?スゲエよ。  ギラ付く太陽、泥と砂にまみれた肌、黒い“勲章”の中からギラギラ輝く眼光・・・。  「ノルマンディー」における内蔵が丸見えになった遺体のリアルさは強烈だ。  第一次大戦の戦場から始まるストーリー、二つの大戦を股にかけた男の生き様。  リー・マーヴィンの激戦をくぐり抜けて来たという面構えがカッコイイ。  こんなにカッコイイリー・マーヴィンを見たのは初めてかも。  マシンガンでも必ず生きて帰って来る不屈の精神。  その下で戦う四人の部下たちも個性のある良い面構えだ。  どんな戦場でも必ず生き残る5人の戦士たち。生き残ると予言されていても、いつ死ぬか解らないというスリルを感じられる。  鬼軍曹が率いる「第1師団」は様々な戦場を駆け抜ける。  海、砂漠、市街、平原、森・・・幾多の戦場と散っていく仲間たち・・・それでも奴らは生き残る。  戦闘の中で垣間見える人間の狂気、潜伏者と犠牲者・・・取り敢えず熟女とババアに目覚めそうになるシーンもあった。  ババア結婚してくれ。   「停戦」に始まり「停戦」で終わるストーリー・・・狂気として片付けるには引っかかるシーンも幾つかあったけど、それでもこの映画の面白さは揺るがない。  傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:52:29)
659.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 
個人的には「ザ・パシフィック」や「バンド・オブ・ブラザーズ」「シンドラーのリスト」の方が好きだが、この作品も戦闘シーンが圧巻。 ただちょっと待って欲しい。腸が飛び出ただって? 「炎628」とか「夜と霧」とか「最前線物語」とか、この映画より強烈な戦争映画はいくらでもある。 だがこの映画の戦闘描写も凄い。水中でも容赦なく飛び交う銃弾、水没する戦車、腸をぶちまけ積み上げられる死体、銃弾が飛び交う中で自分の腕を探す兵士、治療しても別の流れ弾で死ぬ兵士、戦車や揚陸舟艇の上陸を阻むべく置かれた障害物が皮肉にも盾となって銃弾から守ってくれる、火炎放射器、降伏しても撃ち殺してしまう狂気、甲子園の砂ならぬフランスの砂、銃剣とガムで作る鏡、魚まで打ち上げられる浜辺。 カメラの揺れ具合や音が消える演出も、戦場で直接戦う兵士の視点で撮られているためであろうか。だからってカメラに血潮を付ける馬鹿がいるか。 映像の生々しさは凄い部類には入るが、ストーリーのムチャクチャさはどうだろうか。 いくら愛する我が子が3人も死んでしまい、せめて末の息子だけでも助けて欲しい。母親の切なる願いは解る。  解るが1人の軍人を救うために1部隊の兵士をむざむざ死にに行かせるような作戦を認証した軍部は異常としか思えない。 今まで10人、100人、1000人以上の味方ために死ぬのがせめてもの救いだったのに、それが今度はたった1人のために1部隊みんな死んで来いときたもんだ。 観客にとっても冒頭から墓参り→20分以上も地獄を見せられた上にそれ。 罰を受けた兵士なら解るが、何もミスをしていないバリバリに動ける兵士にそのような任務を課す。こっちの方がよっぽど残酷極まりない。 まして探す対象は士官や重罪人ならともかく名も無いに等しいたった1人の雑兵。 自分の吹っ飛んだ腕や飛び出た腸を探している兵士はまだ幸せだ。 ミラー大尉たちは、ジェームズ・フランシス・ライアンを見つけるまで四肢が吹き飛ぼうが肉体が木端微塵になろうが任務を続けなければならないのだから。 ライアンは悪くない。こんな作戦を指示できる上層部がクソなんだ。それに逆らえず選ばれた以上、戦うしかない兵士たちのやり場のない怒り。 その鬱憤をライアンにぶちまけるまでは死ねるかよと、死力を尽くしてノルマンディーの戦場を突き進む。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:50:24)(良:1票)
660.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 《ネタバレ》 
当時の冷戦に右往左往する人間を皮肉ったブラック・コメディの傑作。 原爆や水爆を狂信的に作る「博士の異常な愛情」が時代を後押しする。  物語はミサイル攻撃を巡ってそれを阻止する者、実行する者の対立をシリアスかつコミカルに描く。 生きるか死ぬかの瀬戸際にコカコーラからのクレームを気にするような人間ばっかりだ。  いざ戦争になれば秩序も道徳も崩壊する。 会議場に集まる高官どもに、外で戦う人間の苦しみなんざ解るわけがない。 気にかけるだけで労いの言葉一つ送れない。 隅々まで届かない命令に何の意味も無い。  そんな人間が人々の上に立てばどうなるか? 無意味な実験や虐殺だけが繰り返されていくだけなのさ。  ラストシーンもまた印象深い。 敵の本拠を目の前にして投下装置が故障。 それを命懸けで外しに行き、爆弾もろとも基地にダイブしていくパイロット。 その時のソイツの顔は、黒い笑みで歪んでいた。 戦争の狂気がとり憑いた結果だ。  それを人々はどう思うのか? 英雄として見るか? 戦争を引き起こした愚か者と見るか?  答えは戦争を勝ち抜いた勝者か、後世に生き残った民衆のみぞ知る所だ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:34:30)(良:2票)
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