Menu
 > レビュワー
 > すかあふえいす さんの口コミ一覧。38ページ目
すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
>> カレンダー表示
>> 通常表示
741.  ターミネーター2 《ネタバレ》 
前作の「ターミーネーター」は殺戮マシーンという恐怖に徹した恐ろしさがあったけど、本作はその殺戮マシーンが「心強い仲間」になってくれる。  オマケに襲い来る敵は前作より最強凶悪の敵だとさ。  最高の常軌の逸し方じゃないか。  スピルバーグの「ジョーズ」を2部作にしてより濃くしたような面白さ。  「ジョーズ」は鮫に怯えるパニック映画から鮫の恐怖に打ち勝つヒーローものになるが、 「ターミネーター」シリーズは襲い来る恐怖と殺し合うだけじゃなく、恐怖を味方に付けお互いの立場を理解し、絆を結んでいくという力強い内容が醍醐味でもある。昨日の敵は今日の味方。   昨日の敵は今日の味方。  襲い来る暗殺者、 頼りになるスーパーマン、 そんなスーパーマンがピンチだ! 今度は守られる側がスーパーマンを助ける番だ! それに応えてスーパーマンは必ず戻ってくる! 何度でも。 このシンプルを極めた面白さ。  きめ細かなメカニカル描写、 質感のある映像美、 そして人間とロボットの立場を超えた絆・・・最高じゃないか。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:44:23)(良:1票)
742.  散り行く花 《ネタバレ》 
「東への道」と真逆の空気が漂う映画。後年の「東への道」の主演陣が「散り行く花」と共通している。 スタートダッシュが素晴らしかった「「東への道」」と比べると、この作品は少し退屈だ。退屈だが、丁寧な人物紹介とシナリオの巧みさ、衝撃的なクライマックスに目を見張る傑作だ。 最初はイエローマンの登場。 とある中国、外国の水兵なども訪れる賑やかな街。修行を終えた一人の中国人(どう見ても中国人て顔じゃありません。本当にありがとうございます。もしかして混血児とか裏設定有り?)が、いま師の最後の教えを受けて旅立とうとしている。 異国への憧れ、夢や希望。水兵の喧嘩を仲裁する姿にはまだ希望が溢れている。 それを打ち砕く異国の地での生活。表情は光を失い、せまい部屋の中で阿片漬になっていた。演奏者たちの爪の不気味さ。様々な肌・顔立ちの人間が入り乱れる。  続いて登場するバトリング・バロウズ。 酒を飲みボクシングで憂さ晴らしをし、情夫にうつつを抜かすダメ親父。気に入らない奴は娘だろうが当り散らす。 阿片窟にいた女がバロウズとの接点を持つ。運命はイエローマンとバロウズたちをやがて引き合わす。  最後に登場するバロウズの娘。 帽子を被り、家に帰るのが嫌そうな暗い表情で座り込む。過去を回想し、唯一帰れる安らぎのない空間へと入っていく。 帰ってくるなり机を叩いてどなりつける父親。「笑ってみやがれっ!」の怒声に、口に指をあてて無理やりの、偽りの笑みを作ってみせる。泣きそうな表情で。彼女は笑う事を知らないのだ。彼女は何度も偽りの笑みを作らされる。  そんな彼女とイエローマンの邂逅。倒れた彼女を見て蘇る“以前の自分”、異国で初めて彼に訪れる“春”の花。彼女の表情からも初めて本物の笑みが浮かぶ。  そんな至福の一瞬が、無理解な父親の一撃で粉々に散ってしまう残酷さよ!すれ違う二人、悪魔の微笑み、恐怖で歪む表情、打ち砕かれる家具、剥ぎ取られ床に打ち捨てられる衣服、霧の街に消えていく叫び。 異変に気づき絶望に暮れる表情、ドアを閉めるが逃げ場のない密室、最後の望みをかけて拳銃を握り駆け出す男、扉を打ち砕く斧の恐怖、狂ったように叫ぶ女、砕かれる板、振り上げられる鞭・・・。 あの瞬間の表情が本当に綺麗でさあ。透明な眼差しというか、何とも言えない表情で・・・何度見ても泣いてしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:40:36)
743.  白昼の決闘 《ネタバレ》 
再見。やはり何度見てもいい。 西部劇というよりは、「風と共に去りぬ」を彷彿とさせるロマンス、愛憎劇。  ほんとに凄まじいというかアホらしいというか、原題/邦題の通りクライマックスの「決闘」で物語は締めくくられる。  ただ、同じキング・ヴィダーの西部劇「星のない男」「テキサス決死隊」といった作品がアクションの充実した作品だったのに対し、本作は終盤までドラマで魅せる。 今までのヴィダーのファン&セルズニックが制作という事で期待した人も多かっただろうね。まあ俺は純粋に哀しい恋愛映画として楽しめたけど。2時間40分はあっという間だった。  戦後におけるモダニズムの錯綜、混血女性への人種的偏見、それを超えた恋、縄張り争い、哀しき殺し合い。 雄大なスケールに多くの登場人物、それが一人ずつ死んでいくって過程が切ない。制作のセルズニックは残酷な三角関係を撮らせたらピカイチだな。まあ監督に指名されたヴィダーが怒るのも無理は無いくらい色々問題点もあるけど。  冒頭の高らかに踊るヒロインを打ちのめす悲劇と銃声、一触即発を物語る馬が押し寄せる瞬間の緊張(派手な戦闘にならなかったのがやっぱりマイナスに見られたのだろうか)、酒場で引き起こされる銃撃と殺人、リリアン・ギッシュの母親として女として耐え続ける凛々しさ、なんといっても岩場における決闘。  「愛しているからこそ私が殺してあげるの」と恋人だった男の暴走を止めるため、馬にまたがり、ライフル片手に断崖の上に送る視線と狙撃、一撃! 俺はこういう映画に弱いのです。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:36:40)
744.  スター・ウォーズ 《ネタバレ》 
SF、西部劇、時代劇・・・あらゆる映画への愛に溢れた記念すべき第1作。完成度では「帝国の逆襲」や「ジェダイの復讐(帰還)」を挙げる人もいると思う。俺は第三部の畳み掛けが一番好きだ。 が、やはりこの作品無くして「スター・ウォーズ」は語れないだろう。  俺にとっての幸運はBSの再放送で「スターウォーズ」の旧三部作を小学生の頃に見れたという事。ガキだった俺は純粋に全シリーズ楽しんで見れた。本当に良かったと思う。 新3部作もリアルタイム。 だが大人になると色々なものに衝突する。捉え方も360度違うものになっちまった。それでも面白いものは面白いし、感動するもんだよ。  シンプルを極めた、王道を王道で踏破する娯楽映画の代表だね。 いきなり戦闘場面から始まる古典的かつ最上のファーストシーン、 「メトロポリス」を彷彿させる洗練された美術、 見た目は下手物、動けば実に活き活きとしているアニマトロニクスの実在感。 魅力的な登場人物も面白い。 純粋な少年のルーク。血が繋がらなくとも家族の愛情を知っている優しさに溢れた青年。「捜索者」のイーサンのように憎しみと葛藤しながら成長していく姿が力強い。 悪党と義侠心を貫くハン・ソロのカッコ良さ、 男勝りなレイア姫の気高さ、 長き修羅場をくぐり抜けた者としてのケジメを払おうと戦うオビ=ワン、 人間のように感情豊かなC-3POとR2-D2、 宿敵ダース・ベイダーのベールに包まれた底知れぬ魅力などなど。  心の強さを反映する武器「ライト・セーバー」での打ち合いは手に汗握る。光が触れた瞬間から勝負が決まるようなジリジリとした攻防がいいね。  ウィリアム・A・ウェルマンの「つばさ」等あらゆる航空映画を思い出す宇宙空間での戦闘。 迫力は元の航空映画たちには及ばないが、それでも音楽やセリフの応酬、銃撃でどんどん盛り上がる戦いはやっぱり興奮する。これぞゴリ=オシ。  ラストの決戦の破壊力、主人公たちの戦いの終結を称えるエンディングも良かった。 色々粗はあるけど、粗探しも映画の楽しみ方の一つ。むしろそれすら“娯楽”として楽しませてくれるのだからっ!
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:31:28)
745.  M(1931) 《ネタバレ》 
ドイツ時代のフリッツ・ラング最高傑作。 こんな凄い映画を撮りまくったラングをヒトラーがほっとくワケが無い。 ドイツ時代のトーキー作品をもっと見たかった・・・。 犯罪映画はラングの十八番であり、その中でも「M」はサイコ・スリラーの祖にして今でも抜きん出た完成度を誇る。 本作はBGMがまったくない。 なのにまったく飽きることもダレも無い独特の呼吸、サイレント映画さながらの演出と語りが見事にはまっている。 警察署でのやり取りは10分縮めても良かったかも知れないが、42分を過ぎたあたりの舐めまわすようなカメラワーク、犯人と警察たちの追走劇、“M”の強烈なイニシャル。 耳を抑えると音が消え、離すと音が聞こえてくる場面も面白かった。 物語は少女ばかりを襲う猟奇殺人の真相を追う内容。 ファースト・シーンが凄い。 街で遊ぶ子供たち、そこに現れる黒い影。 盲目の老人が配る風船は、死にゆくの魂を運ぶ「船」か・・・。 「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿」を口ずさむ殺人鬼。 ピーター・ローレの狂気に満ちた演技。 何処までも歪んだ男の筈なのだが、少女と戯れているこの男の妙な愛嬌は何なのだろうか。 まさか筋金入りのロリコンを描く映画があろうとは・・・! ドイツはヒトラーにしろ、シュトロハイムにしろ、ルーデルにしろマジで「変態」ばっかりだな(大賛辞)・・・ドイツ万歳。 後のフィルム・ノワールに与えた影響が尋常じゃなく、ピーター・ローレルがアメリカのフィルム・ノワールの祖「マルタの鷹」に出演したのは偶然なのか必然なのか。 この後「カサブランカ」やヒッチコックの「暗殺者の家」など多くの犯罪映画に出るローレルだが、やはり一番強烈なのは「M」。 それと本作は当時活躍していたドイツ演劇界の巨匠ベルトルト・ブレヒトの「三文オペラ」からの影響があるという。 ラスト20分の法廷劇は正に舞台上の論戦だ。 本作の犯罪心理は後のジャン・ルノワールの「十字路」と共にフィルム・ノワールの祖となり、ラング自身もアメリカで「飾窓の女」を始めとするフィルム・ノワールをいくつか撮る事となった。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:26:17)(良:1票)
746.  奇跡の人(1962) 《ネタバレ》 
実在したヘレン・ケラーが三重苦を乗り越え“軌跡”を起こすまでを描いた作品。 もう本当に魂を揺さぶられるというか、心と体のダイナミックなぶつかりあいが舞台劇という狭苦しさを感じさせない。 ベッドで愛する我が子を突然襲う“異変”、愛するが故に悲痛な叫びをあげる母親。 物心付いた時から聞こえない、見えない、喋れないという“闇”の中をもがき続けるヘレン。唯一残された“触感”だけがヘレンを支える。 へレンが闇の中でもがくようなオープニング、常人にはヘレンの行動が奇異に見え、事情を知る家族ですら家庭崩壊寸前まで追い詰められる。 何もしてやれない悔しさ、もどかしさ。どんなに避けんでも娘には届かない…そんなヘレンの心を開こうと列車に揺られてやってくるサリヴァン先生ことアン・サリヴァン。 彼女もまた眼の病気を乗り越え“奇跡”を起こした人だった。彼女は不安と恐怖で闇に閉ざされたヘレンにかつての自分を見る。彼女は唯一彼女に残された“触感”を信じ、それにぶつかってぶつかってぶつかりまくりヘレンを救おうと尽力する。サリヴァンは真っ先に「あなたは言葉を喋れる」と信じてくれた。 水をぶっかけられたら水をぶっかけ返して“教え”、殴られたら殴り返し“教える”。 家を破壊せんばかりに野獣の如く、癇癪を起こした子供のように暴れまわるヘレン、それをねじ伏せるサリヴァンの闘い。そこまでするのもヘレンを信じているから。互いに髪や服を乱し、料理まみれになって。 ヘレンも徐々に不安からサリヴァンへの怒り、憎悪、哀しみを打ち明けサリヴァンを“信じる”ようになる。ヘレンにとって今までここまでしてくれる人はいなかっただろう。真正面から自分とぶつかってくれたサリヴァンに心を開き始める。 ヘレンに幾度と無く刻まれる“手話”、そして感触。その積み重ねがヘレレン「W...A...T...E...R...!」と叫ばせ三重苦を打ち破る。 ポンプを動かし、水に触れ、大地を踏みしめ、樹を掴み、段差を叩き、ベルを鳴らし、母、父、そして“先生”たちとギュッと抱きしめ合う瞬間の震えるような感動。 ああ、人と解り合えるって、こんなにも素晴らしい事だったんだなあって。人を愛する事、自分を愛していてくれた事に気づく事の大切さ。こんなにも良いもんなんだな。それを魂で理解する瞬間。ヘレンにはとてつもない喜びだったと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:22:22)(良:1票)
747.  怪物團 《ネタバレ》 
「三人」「知られぬ人」から続くトッド・ブラウニングのサーカスもの。この「フリークス(怪物團)」は間違いなくブラウニングの最高傑作でしょ。  この映画には様々な身体的特徴によって差別され、それを跳ね返しながら生きてきた人間たちがひしめき合っている。彼等にスポットライトを当てたブラウニングの手腕、そして本当の怪物は「人間の心」だという事を教えてくれる素晴らしい映画だ。  肉体の繋がった双子の姉妹、腕だけで地面を駆ける男、脚だけで生きる女性、胴と頭を使って生きる男、女と男の間で揺れる者、吃音に苦しむ男、豊かな髭を持つ女、るいそうを芸に活かして生きる男、鳥のように生きる女などなど。  題名を引き裂くように現れる一人の男、狭い空間に押し込められ、それを見てある者は凍りつき、ある者は悲鳴をあげる。映画は見世物にされた者が何者なのかを語り始める。 サーカスのブランコで微笑む女性、それに羨望の眼差しをおくる小さな紳士と淑女。 垂れ幕の外に向けられる笑顔、内側ではドロドロした情念が渦巻く。女がわざと落とした上着を拾い、律儀にかける。彼は彼女を愛していたが、普通の人間たちと偏見の眼で見られる者たちの間にある心の壁。 サーカスの座長はそんな人々を暖かく迎え入れてきたのだろう。それを人々は奇異な眼を向け、嘲笑う。あのパーティー気分だった幸福なシーンを、彼女の言葉が凍りつかせる戦慄・失望。解ってくれる人は良い理解者になり、解らない人は一生解らない。  その魂を裏切った者たちへの復讐戦!雷雨が降り注ぐ中を走る馬車、それを包む不穏な空気。ギャングのように守る者たちの頼もしさ、走り続ける馬車に侵入する衝撃、ナイフ!雨は彼らの仕事を応援するように周囲を遮断する。復讐者が迫りくる恐怖…を応援してしまうクライマックスの畳み掛け。  完全版と編集された版では結末がかなり違う。彼らが和解するシーンがあるか無いかでまったく違う後味なので。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-17 11:17:40)
748.  メトロポリス 完全復元版(1926)
フリッツ・ラングは「M(エム)」、それにアメリカ時代の「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」や「激怒」「スカーレット・ストリート」いった作品の方が完成度が高いが、今回「メトロポリス」の完全版を見た上で大満足な出来だったのでレビューしたい。 フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。 完全版ではヨシワラにおける人間達の欲望が弾ける様子、フレーダーセンの部下がヨザフォートに迫るサスペンス、アンドロイドマリアのダンスシーンの一部などなど重要な部分が修復されている。修復部分の痛みは激しいが、今まで欠けていた部分が補われた事でより、いや本来の魅力を存分に愉しめるようになったのである。 今日では散逸したフィルムも補完されて「完全版」として楽しむ事が出来るようになったが、それまでの80年を生きてきた人にとってはどれほど長い道のりだったか・・・。 そしてそのフィルムを含めて、今日まで作品を守ってきた人々は、もっともっと評価されなければならない。 ここに感謝の意を評したい。 ありがとう・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-15 11:41:50)
749.  瀧の白糸(1933) 《ネタバレ》 
「狂恋の女師匠」「日本橋」「唐人お吉」のフィルムが見つかるまでは、当分この作品が溝口のサイレント期の最高傑作の一つとして語られる事だろう。 誰かが見つけてくれるのが楽しみだ・・・。  この映画が面白くなかったという人は、恐らく状態の悪い物を見てしまったのだろう。 もったいない。  俺の見た奴も画質こそフィルムの状態が悪く荒れてはいたが、弁士の神調子、神BGM。  そして何といっても始めから終わりまで目まぐるしく展開されるストーリー。 飯を喰らい、心と心の交流、そして別れ。  溝口映画でも指折りのファースト・シーンは凄い。  初期の溝口はこんなにも動き、スピード、テンポに溢れ、女の描き方も素晴らしい。 カメラワークが凄いのよ。 馬車の中からのカメラ! “手ブレ”のリズムはこの頃からあったのか! 馬丁とヒロインの粋なやりとりも相まって最高の出だしだったよ。 後半もテンションをほとんど落とさず、ラストの悲しくも凛々しい最後に繋がった。 水面、海、船、溝口映画の漆の藍色。 初期の溝口はクローズアップが多いので、その美しさをじっくり堪能できる。 そこからあの溝口映画独特のロングショットが挿入される時の威力ときたら・・・。  入江たか子のエネルギーに満ちた美しさもそうだが、この頃の溝口は脂の乗り切ったパワーがあった。 岡田時彦の演技も光る。 馬鹿正直な男が一人の立派な人間に成長した様子。 サイレントとはいえここまで違いを見せつけてくれた。 この後も数本の作品に出演するが、残念な事にそのほとんどのフィルムが未だ行方不明であり、すぐに亡くなってしまった彼の実質最後の出演作だ。 他のフィルムが発見される事を切に願う。  サイレントは絵で見せることが勝負。 小説の世界を絵で魅せる事に魂を燃やした描写、そして溝口映画の十八番とも言えるたたみかけるようなセリフ・・・もうね、密度が半端じゃないね。  何より男の心理にも迫った描写も良い。 泉鏡花の素晴らしい原作を、映像でも遺憾無く見せる。  オマケにこの上を行くほど面白かったという「狂恋の女師匠」「日本橋」「唐人お吉」の存在。 もっと凄いのか・・・見たいなあー・・・。
[試写会(邦画)] 9点(2013-12-14 17:46:39)
750.  見えざる敵 《ネタバレ》 
リリアン&ドロシー・ギッシュ姉妹の初々しさ。人差し指で顎をクイッとあげる仕草。 女が気に掛ける“穴”、室内で髪がなびきカーテンが揺れ動く理由、姉妹の髪が風でなびく姿が本当に可愛い。  電話が呼ぶもの、葉っぱに囲まれた中で迫るもの・断るもの、手を引いて家に戻った瞬間から奔る戦慄、窓から引き入れ侵入し、密室に閉じ込められ、穴から突きつけられる“恐怖”。 突き付ける側も気が気でないのか酒をあおぎたくなる気分のようだ。姿を見られないためにあの穴に固執するのだろうか。  「穴を防げばいいじゃん」とか「腕を掴んでやれ」とか思うかも知れないが、突然得体の知れない物体から味合わされた銃撃の威力を物語る“音”。それを体験した本人にしか分からない恐怖が彼女たちを震わせているのだろう。なんせ目の前に迫り気を失ってしまうくらいだからな。だが、恐怖を前に倒れた家族を抱え庇う健気さよ!  出入りを繰り返すシュールな光景、銃撃が知らせる凶事、疾走する車のスピードを殺すように突き出される遮断機(手動)、動き始め回転する橋、戻されるもの、戻って来て“突破口”を開くもの、吹き出し充満するもの、駆け付けるもの、受け入れるもの。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2017-05-27 01:35:40)
751.  ドリーの冒険 《ネタバレ》 
茂みの向こうから駆けて来る少女、それを見守るように現れるその家族たち。 変な壺?を売りつけて来るオジサンを突っぱね、それに盗んで返答しようとして家族のお父さんにひっつかまり殴られ追い返される。  妻の静止を振り切る横暴な夫、親娘の無邪気なバトミントン?テニス?、眼を放した瞬間に背後から襲い掛かる報復者!  野の中を走り丘の上へ登り下っていく「おっかけ」、閉じ込める隠蔽、捜索、馬車をブッ飛ばす逃走。カーブを曲がり、水辺を突き進んだ瞬間に“さらわれ”流されていく流転。ガバガバじゃねえかおめえの馬車!  後の「東への道」では氷漬けになり“動かない”はずのものが砕け流れ始めるスリルになる。 向きを変え、小さな滝を降り、どんぶらこ、流れ着いた先で釣り上げ、駆け付け、抱きかかえるもの。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2017-05-27 01:33:27)
752.  これらのいやな帽子 《ネタバレ》 
「これらのいやな帽子(迷惑帽子)」。 椅子に座った観客が見つめる先、壇上の上では何やら揉め事。どうやら映画のフィルムの様だ。フィルムは溶けたりして映像が乱れ、場面がパッと切り替わったり。 それを遮るように帽子を被った女性が観客の中に現れる。満席なので彼女が去ろうとした時、胡散臭い髯を生やしたオッサンが彼女を引き戻し、観客はそのオッサンにキレだし、現実世界まで映像が乱れ始めメタな展開に。  一難去ってまた一難、派手に飾り立てた女性がどんどん増えていき遂には頭上からクレーンまで降りてきて飾りや貴婦人そのものをさらっていってしまう。拍手するとこが違うわww
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2017-05-27 01:32:24)
753.  ほしのこえ 《ネタバレ》 
日差しが注ぎ込む電車の窓、その窓辺で携帯を打ち続ける少女。 回想、階段、椅子が逆さまに置かれた机と教室、星を背にたたずむロボットの中でも、宇宙船の中でも頭の中は好きな男の子のことで溢れかえる。その気持ちを携帯電話のメールにしたため続ける。  ゲームオープニングの制作にも腕を振るってきた新海誠。この頃から異常なまでにリアルで美しい風景を楽しませてくれる。 雨を予感させる積乱雲、飛行機雲、ドアの向こうの夕暮れ(「彼女と彼女の猫」でもドアの開閉は印象的だった)、夕陽に染まる雲、星空、クレーターの中の市街地と水辺、桜の花びらを運ぶ風は寝ている者を揺り起こし、ミサイルから尾を引く雲、爆炎、宇宙空間に飛び散る鮮血、しぶきをあげるように星の海へ飛び出していく宇宙船、鳥の群、足跡はクレーターになり水たまりへ。 雨が降りしきるのは雨宿りさせ二人だけの時間を作るため。  メールのやり取りが断たれてしまう光景は「君の名は。」にも繋がる。  登場人物たちは漫画的な(眼がデカい)タッチ。 風景は二人の心情を表すように変化し続ける。汗と涙を落とし、開閉する遮断機の前、降り積もる雪の中、雲間から降り注ぐ木漏れ日の下で立ち尽くす。  傘を断るのは「あの人」に悪いと思うから。だからこそ待ち続け、返事が来るのを、帰って来ることを信じ続けたのだろう。  異文明との衝突、対話、ただ「会いたい」というエネルギーが彼女を動かし続ける。その果て…贈り続けたからこそ「文字」ではなくそこに込められたものが伝わったのだと思う。声に、言葉にならないような想いが。  切ない。実は生きてて再会できたとかないんですかねえ。もれなくタルシアンが地球にお礼参り(ry
[DVD(邦画)] 8点(2017-03-27 07:32:26)
754.  彼女と彼女の猫 《ネタバレ》 
1999年制作のフルver.を見た。  白黒の画面の中を四季がめぐり、ナレーションによる語り。  雨が降りしきる外、傘の下で微笑む?猫との出会い。 猫だけ漫画のキャラの様にデフォルメされ、顔がハッキリ映されない彼女の衣服はかなり描き込まれている。  髪、化粧、人間である彼女には母親のようなぬくもりと憧れ、同じ猫の彼女(コッチもデフォルメ調)にはそんな姿を嫉妬されてしまう。  空を覆う雲、カーテンを揺らす風、倒された椅子、こぼれる涙、座り込んだ姿が伝える哀しみ。  撫でてくれる手、白い息を受け止める手、扉を開き今日も出ていく。  これの続編?にあたるのが「Everything Flows」版なのだろうか。
[DVD(邦画)] 8点(2017-03-26 14:02:37)
755.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
霧、霧、霧である。 冒頭から行く先の見えない光景に遭遇し、霧が晴れたかと思えば、磔にする責め苦と説明過多のナレーションによる二重の拷問を観客は受けることになる。  主人公たちが乗る船は常に視界を阻まれるように霧が発生し続ける。スコセッシが敬愛する溝口健二「雨月物語」の船がそうであったように。 噂だけしか入ってこない先人たちの現状、この目で直接見なければ納得がいかない。霧をかき分け、海原を超えてでも真実を知りたい。時折上から見下ろされているような視点。まるで神が見守っていてくれているとでも思いたげな。 自らも小高い丘から見守ることしかできない苦しみを味わうなんて知らずに。  信用できない水先案内人、洞窟に取り残される不安、松明を掲げる者が静かに十字を切ることでようやく表情が緩む。  日本側の容赦の無い隠れキリシタン狩り、弾圧の様子。 村を材木が散乱し野生の猫が跋扈する無人地帯にし、押し寄せる波に晒し、抜刀して首を跳ね飛ばし、簀巻きにして海の中に沈め、血を垂らしながら逆さまに吊るす“見せしめ”の数々。  壁に刻まれた母国語、再会させるのは、目の前で処刑を行うのは、踏みにじらせるのは異邦人の信仰心をへし折るために。  スコセッシが今までの作品で描いてきた死にたくても死ねない生き地獄。床や水面に見る“幻”、主の声(幻聴)、幾度も気が狂ったように自分自身を嗤う。生きる恥をさらし続けてまで生き延びる意味を探しながら。  家財道具に刻まれた無言(沈黙)の抵抗。 何度も何度も許しを請い逃げて来た男が首にぶら下げる「逃げるのをやめた」証。   遠藤周作の原作との決定的な違いは、「夜明け」という希望の灯が昇らない点にある。闇の中で蝉の鳴き声だけが響き続けるのだから。  その代わりに燃え盛る焔、掌の中で鈍く輝く“尊厳”が無言(沈黙)の抵抗を示すのだ。  かつてイエス・キリストを題材に「最後の誘惑」を撮ったスコセッシだ。この映画もまた、こんなご時世だからこそ存分に“挑発”し、問いかけるような作品だ。
[映画館(邦画)] 8点(2017-02-09 09:31:59)(良:2票)
756.  ピアノ・ブルース 《ネタバレ》 
マーティン・スコセッシが制作を仕切る「ブルース・ムーヴィー・プロジェクト」シリーズの中でイーストウッドが手掛けたドキュメンタリー。  レイ・チャールズをはじめデイヴ・ブルーベック、ファッツ・ドミノといった伝説、その先人たちの系譜をたどりながらブルース・ピアノの歴史に迫っていく。  初っ端から響き渡るピアノの音色。 「ピアノ」を創造した先人の肖像、製造し、組み立て、弾き語る映像・写真に残されたピアニストたち、それを経てレイ・チャールズをラフな格好で迎え入れる。 この作品のイーストウッドは実に気軽で、歴史も振り返りながら音楽を楽しみ・学んでいこうという姿を見せてくれる。  白黒の映像で記録されたピアノを弾いて弾いて弾きまくる人々の姿。イーストウッドも自らピアノの音色と言葉で「語り」続ける。  最初に登場するレイ・チャールズの存在感。 キャメラの前を幾度か通り過ぎるスタッフを他所に、サングラスをかけたまま傍らに座り、先人の演奏とスタジオの光景を交互に交え、時折咳をしながら熱を帯びていく語り。  レイがイーストウッドの隣で弾く場面。 鍵盤の上で指先が踊り、リズムをとる足先、起き上がるハンマー。イーストウッドは立ち上がりピアノの脇へ移動し、チャールズは肉体を揺り動かすように歌声をあげる。大きなピアノのフタに反射するチャールズの笑顔が素敵だ。 キャメラもあまり動かないようで、鍵盤を叩く手からピアノの上で波打つハンマーへ移動しながらその光景を捉えたりする。  若き日のレイのエネルギッシュな演奏。 ピアノを弾きながら体を大きく揺らし、足でステップを踏み、微笑み、旋律と歌声を会場に轟かせる。膝を楽器のように叩き、ステップとリズムを刻み盛り上げ、コーラスの女性陣、バックの奏者もそれに合わせノリにのっていく。  レイに先駆けたピアニストたちの演奏も凄い。 様々な技巧でプロフェッショナルとして、音楽を心から楽しみ鍵盤の上で指先をけたたましく奔らせる。ピアノそのものまでが彼等・彼女等の演奏に反応でもするかのように動き出したりもするのだ。 しかしYAMAHAのピアノって昔から向こうで活躍してたんだな(誰がそのピアノを弾いていたかは見た人だけのお楽しみ)。  その系譜に「俺もいるんだぜ」とばかりに「センチメンタル・アドベンチャー」でテンガロンハットを被りながら演奏を務めるイーストウッド自身の姿も挿入してしまう。しかし良い笑顔だこと。  肩に手をやり演奏を終えた者を称え、取り出したハンカチで口の汗をぬぐう熱気。  現在のピアニストの手から過去の奏者たちのセッションに飛び、再び現代へと戻り、受け継がれていくメロディ。 最後は今までの演奏をひたすら繋げていき、レイの歌声で締めくくる。  イーストウッドは自ら映画音楽にも携わり、作品でもチャーリー・パーカーの伝記「バード」、カントリー歌手を題材にした「センチメンタル・アドベンチャー」、「ピアノ・ブルース」の後にはフォー・シーズンズの伝記「ジャージ・ボーイズ」と音楽に対する思い入れをぶつけてきた。 いずれの作品でもピアノの音色が響き、無くてはならない存在だった。それだけイーストウッドはピアノが好きなんだろうなあ。
[DVD(字幕)] 8点(2017-02-08 06:10:59)
757.  ボビーに首ったけ 《ネタバレ》 
実に興味深い映画だった。どうしてこれほどの作品がDVD化されないのだろう。誰か出してくんねえかな~。  霧の中で点滅する灯、それを頼りに疾走する車、轟音をあげるバイク。  ヘルメットをかぶり(それまでノーヘルだったのか…)、画面の奥から迫り来るように走り去っていく。そこからこの中編は始まる。  この作品は実験的趣向に溢れており、特に「光」やそれが強調する「黒い影」の動きが印象的だ。  女のモノローグ、机の上に置かれた「もの」によってそれが手紙の内容だということを観客はさとる。 シャッターを上げた先に拡がる空間に貼られたバイクの写真、ラジカセ、白い光の中から駆け寄る者。  黙々とバイクの整備を続ける黒いシルエット、その周りで舞い踊るように語り掛ける少女。男はそれに淡々とした喋りで応え続けるが、座席にベッタリ寝そべっても怒らないくらい親しい間柄なのだろう。  逆光、人形のようにギコチナイTVの中の人間たち、それを見つめる光の無い眼、視線も交えない冷えた親子の関係。  回想の中でページをめくる女の影、いくつもの写真が男の過去を語り、次の旅先を想い描く瞳。  どっかの漫画から切り抜いてきたかのような止め絵、止め絵、止め絵、行く先々で視線に飛び込む単車、単車、単車というロマンの塊。  雨にあたる銅像のように固まった肉体、干された片靴、TVを見続けるのは顔を背ける・向かい合えないからだろうか。それとも声だけが響き続ける手紙の差出人に夢中だから、それを見つけるため、現実から逃げるためにバイクに乗るのだろうか。「手紙」だけで繋がる、傘を楽しそうに回す「憧れ」を求めて…。  真後ろのナンバープレートから真上に移動して捉えられる疾走、振り払い詰め寄り平手打ちを浴びせるシルエット、その影から逃げ去るように旅立っていく。 闇の中を揺れ動く光、光、光、逃げ込む場所。その瞳は自由を得たように灯を帯びる。 バイト、労働、心地よい疲労、喜び。楽しそうに家族の近況と「あるもの」を届けに来てくれる妹。彼女がいるからこそ親を放って出ていけたのかも知れない。  友人が残した「家族」の世話をするためにも増々帰るに帰れない。 道の向こうから接近し、地面を削り取るように砂を撒き上げ見事なターンを決める黒いライダー。マスター渋すぎるぜ…。  その「誘い」に心を弾ませるようにバイクを飛ばして追いかける。照り付ける日差し、風に揺れる服と豊かな口髭、横切っていく影。  辿り着いた先で跳んで跳んで飛び交うバイクの群、土煙をあげ、土砂に身を投げ出しながら鎬を削り競い合うバイク乗りたちの集う場所。  声をかける店の常連・顔見知り。 瞳の輝きが増すのは「求めていた」ものの一つに巡り合えた嬉しさから。そして、交わし続けた「約束」を思い出したかのように瞳はさらに輝きながら眩い太陽を見つめる。  木漏れ日が差し込む木々、行く先を照らすように白く輝く道、流れ落ち降り注ぐ光の線、うねり、縫うように、抜け出すように、「色」が消え去り、風を切り、延々と走り続けた先…。  その後どうなってしまったのか、気になる終わり方だった。
[ビデオ(邦画)] 8点(2017-02-08 00:50:08)(良:1票)
758.  ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 
見渡す限り雪が拡がる空間、鳥の群が雪原を飛び立ち、キリストをかたどった十字架が今にも崩れそう立ち、その向こうから駅馬車が駆けてくるまで長ーいことキャメラが捉え続ける。 ジョン・フォードを愛する種田陽平のドアにこだわりまくった美しい美術、外から密室の天井・床下まで滑らかに移動するロバート・リチャードソンのキャメラワーク。否応なしにワクワクするようなオープニング。  だが、タランティーノは6章に渡り2時間50分かけて描かれる恐ろしい世界に観客を叩き落すのである。   駅馬車を引っ張る馬を横移動で捉えるショットが幾つかあった。タランティーノは駅馬車版「デス・プルーフ」も撮ろうと思えば撮れただろう。だがそうしなかった。  確かに「デス・プルーフ」のように終盤大爆発型タイプの映画だが、あの映画ほどの密度と爽快・痛快なものはない。延々くっちゃべっている気さえしてくる。 「ジャンゴ」が冒頭からブチかますセルジオ・レオーネのマカロニウエスタンやハワード・ホークスといった痛快な西部劇へのオマージュだったのに対し、本作は中々撃たずにダラダラ展開されるタイプの西部劇を挑発するかのような内容だ。  死体の山に座り待っていた男、駅馬車からライフルを突き付け“検査”する男、それに手錠で繋がれた痣だらけの女、サングラスをした御者、雪原の向こうから声をかけ歩いてくる男。  人種差別と暴力が支配し延々と走り続け、観客を不快な気分に沈める閉鎖空間、唾を吐くならドアの外に叩き出し道連れだ。  雪原に打ち込むもの、馬小屋、板の間から入っては溶けて消えていく粉雪、ドアを板でイチイチ打ち付けなきゃならない理由。  床の溝に転がっていた赤いもの、首筋に突き立てられるナイフ、暖かい飲み物と食事を口にする時でさえ安らがない野郎どもの心。  得物を渡し侮辱と挑発を重ねた果てに浴びせる一撃、ポッドに入れられるもの、ぶちまけられる死、二挺拳銃で吹き飛ばし生き残りを黙らせる尋問。 銃を渡すのは信頼のため、後ろで弾込めをしながら続く緊張状態、犯人探し、床下から“判明”する真相。  弾け飛ぶもの、布で隠されるもの、隠された銃、立てかけてあったもので断ち切るもの、吊り上げられるもの、鎮魂の歌。
[DVD(字幕)] 8点(2016-12-15 04:24:30)
759.  西部の男 《ネタバレ》 
初っ端から柵を切断するペンチ、牛を引き連れた牧童たちと農夫たちの銃撃戦、斃れる牛、理不尽な絞首刑。 コレは…ワイラーによるアクションが充実した西部劇が…始まると思ったら少し違うようだ。  酒場という裁判所、立ち会う人間も酔っ払いだらけ、オマケに葬儀屋まで待機でタチが悪い、後ろに立てば振り向きざまに拳銃突き付けられる。 弁護人、罪を着せられた流れ者とインチキ判事、女の話と一夜の酒で結ばれた奇妙な友情。 朝起きたらベッドに二人きり…ウォルター・ブレナンをお姫様抱っこまでするのだから想像するなと言う方が無理だよなアッー! 当時のゲイリー・クーパーファンはさぞかしあんなことやこんなことを考えただろう(何の話だ)。  馬を猛烈に走らせる追跡、キャメラも平行移動で丘を登ったりと凄い。グレッグ・トーランドのキャメラワークが遺憾なく発揮されている。 相変わらずワイラーは馬を撮る時だけ本気出すタイプ(褒め言葉)。トーランドが「ベン・ハー」の頃まで生きていたらなあ…惜しまれる。  抱き着いて男からは銃を奪う代わりに髪をひとふさプレゼント、友人として悪徳判事の側面に触れ、農民たちとも関係を深め互いの主張を尊重し、水と油を和解させようと努力した。  火をつけ窓の向こうで微笑む不気味な顔。コレはまだいい。無意味なズームはちょっとやりすぎ。  祭りを阿鼻叫喚に変える大火災、実行者たちの蠢き、無力さ。何食わぬ顔で嘲笑い賑わう街と焼き出された人々の対比。そうと判っても“忠告”で済ませ、受けて立ってしまうのは“友情”故か。 胸に輝く星、劇場を独り占め…あえて孤独を選び椅子を真ん中に置く寂しい後ろ姿。  幕が上がる“めぐり逢い”、一騎打ちの銃撃戦。響く空の弾丸の音、込められる弾、立ち上がった瞬間に訪れる決着、最後の頼み。
[DVD(字幕)] 8点(2016-12-15 04:17:33)
760.  果てしなき蒼空 《ネタバレ》 
雄大な大地の中をひたすら進む、のどかな開拓劇。 「赤い河」のような激しさやアクションはあまり無いが、その代わりに優しさに満ちている。  過去を振り返るようなナレーション、森林の中から馬車に乗って現れる旅人、小鳥のさえずりに誘われるように森の中へ入り、出会う。ナイフを投げるのは蛇を仕留め警戒している筈の男の命を救うために。 出会ったばかりの者に見舞う鉄拳は闘争の始まりを意味しない。ホークス映画における拳や平手打ちによる頬への“一撃”は親交を深める前の挨拶に過ぎないのだ(「暗黒街の顔役(スカーフェイス)」は除く)。  インディアン、黒人が歌い踊り、白人が入り乱れる街の光景、インディアン嫌いと言いつつ混血の伯父を侮辱する奴は許さない精神、あっけなく終わる酒場での騒動、指、留置所での思わぬ出会い、鉄拳の秘密、霧が立ち込める夜の内に出航していく旅の始まり。  フランス語、英語、ブラックフット族と様々な言語が飛び交い、ひたすら川を突き進んでは休息を繰り返すのどかさ。狩りで得た獲物の肉を木に乗せ、それをカタパルト(投石機)の要領で木の反動を利用して下の川に浮かぶ船の近くに射出して“渡す”場面も面白い。 不意に現れるブラックフット族の娘は亀裂を生じさせるためでなく取っ組み合いを経て友情を結ぶために。 交易を成功させるためのルールと沈黙・顔を覆う布。争いを生むのは男にとっても女にとっても形見のような頭皮、護身用のために渡したナイフだ。 あれだけ争った二人が何事もなかったかのように傷の手当てをしそれを受け入れるのだから不思議だ。ジムも「自業自得だ」と言いながら傷を理由に鞭打ちの刑を止めさせる優しさを見せる。  急流で野郎どもが綱を引き船を進ませようとする瞬間の緊張、仲間が流されりゃ飛び込んで無我夢中で追いかける。以降ジムは貧乏くじばかり引くハメに。 麻酔が無いので酒で泥酔させて痛みを麻痺させるしかない苦肉の策、みんなで四つん這いになって指を探す場面なんかちょっと狂気地味たものを感じた。  毛皮会社の仕向けた追手との戦闘、仲間が殺され船を燃やされても人質の救出最優先で殺し合いを避ける。本部に乗り込んで弁償(猟銃突き付けて)させる場面は愉快だ。仲間を助けるために船上から狙撃して壁を抉る一撃!  宴会を沈黙させる矢の一撃、クロウ族の追跡と避けられぬ殺し合い、帰らぬ仲間を探し出すために一人で敵地に乗り込み目撃する事実。託すナイフ、敵地で火を焚こうとする気遣い、何も言わず抱擁し温める思いやり。手渡される証拠(弾丸くらいは映像で見せて欲しかった)、因果を断つために松明を投げつけ、一瞬でケリを付ける銃撃戦。  女が馬に乗り込み去るのは仲間たちを迎え入れるために。入り口を閉めナイフを投げ捨てるのは情事のため、燃えたぎる火の中に投げ捨てる過去との決別・友人との別れ。  カーク・ダグラスの狂った野獣のような役も見たかったが(彼が売り込みをかけていた「捜索者」もしかり)、何処までも優しいダグラスの姿も俺には心地よかった。
[DVD(字幕)] 8点(2016-11-11 20:28:52)
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
500.00%
600.00%
700.00%
829828.46%
971868.58%
10312.96%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS