81. エクス・マキナ(2015)
《ネタバレ》 AIの反乱というSF王道の題材だが、見せ場があまりにもない。映画的な演出は、口のきけないAIと社長のダンスくらい。映像はきれいなのだけど、残念に感じる作品。 [映画館(字幕)] 4点(2018-03-06 19:56:24) |
82. スリー・ビルボード
《ネタバレ》 S・ロックウェルに完全にしてヤられる。マヌケで虐め役の前半から、一気に変化する後半。前半の憎まれ役は彼のこれまでのキャリアの延長だが、後半はそのイメージを逆手にとって一気に物語の主役となる。人とのコミュニケーション、それを無くして生まれ得ない分かり合う心という、この映画のテーマを体現する。F・マクドーマンドの存在感も光る。自然でありながら観るものを惹きつける巧さは、先行きの見えないひたすら続く導火線のようなドラマに彼女しかなし得ない安心感を与えている。 [映画館(字幕)] 8点(2018-02-22 23:38:17)(良:3票) |
83. THE FORGER 天才贋作画家 最後のミッション
《ネタバレ》 サスペンス映画かと思いきや、父子3世代の絆を中心としたドラマであった。贋作画家のトラボルタは、ヤバいところから借金して出所。その目的が、病に侵された息子と過ごすためだということはすぐに明かされる。しかし、借金先から危ない仕事を強いられて…。ストーリーは分かりやすいが、父子をC・プラマー、J・トラボルタ、T・シェリダンという、ベテラン、陰りの出てきた大スター、期待の若手が演じているのが成功。嫌みのない、素直に楽しめる心地よい佳作になっている。掘り出し物です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-02-16 20:38:48) |
84. デトロイト
《ネタバレ》 「ハート・ロッカー」でオスカーを手にした時は、実績不足な印象だったキャスリン・ビグロー。しかしその後「ゼロ・ダーク・サーティ」では、緊張感を保ったままドラマを深く切り込むブレない手腕に驚嘆した。本作「デトロイト」でも、その演出は健在。これまで扱ってきた戦場とは異なり、舞台はモーテルという密室だ。尋問する側とされる側、10人ほどの登場人物の間に張りつめる緊張感は、人種差別、殺人、死、そして夢が複雑に入り組んだ感情を伴って、居心地が悪くとも目を背けるわけにはいかない。事件の後の裁判の描写がやや長く感じるが、登場人物それぞれの背景を描きながら人種差別の歴史の奥深さを語る上で避けられない部分か。 なお、賞レースではほぼ無視されている本作だが、人種差別が題材で賞レースを賑す「ゲット・アウト」より、確実に将来には大事にされるべき作品だと思うのだけど。 [映画館(字幕)] 7点(2018-01-30 21:17:07) |
85. ブレードランナー 2049
《ネタバレ》 「ブレードランナー」はカルト的なSF作品として数回見たがあまり好きになれなかった。理由は、レプリカントの苦悩よりも、女性レプリカントと人間の触れ合いを描くのに時間が割かれていて冗長に感じるから。それはつまり、男が思い描く、美人で従順な女性像をロボットとして具現化した恋物語に過ぎないのでは、という違和感からだ。今作の「2049」では、男が思い描く理想的女性像の具現化が増強されて物語が進む。旧型のレプリカントを追う新型レプリカントの相棒は、如何なるときも理解と忠誠を示す超美人のホログラムなのだ。その描き方に、かなりの上映時間が割かれている。本来の主題となるべきAIの反乱よりも、だ。男性的な上司として登場する人間の女性、ロビン・ライトは、理想的男性像の主人公レプリカントに親愛を示しながら、あっさりと殺されてしまう。なんという皮肉。オリジナルに敬意を示した映像世界の美しさ、ヴァンゲリスのサウンドへのオマージュは申し分ない。その一方、冗長な展開の中に堂々と描かれる男性的いやらしさが映画のおもしろさを邪魔している。余談として、H・フォードは、インディ・ジョーンズ、スター・ウォーズ、ブレードランナー。いずれも、その続編に新たな展開を構築するための父親として再登場し、オリジナルの良さをチープにしてしまっている。が、その存在感は圧倒的。 [映画館(字幕)] 5点(2018-01-08 21:45:21) |
86. ゲット・アウト
《ネタバレ》 米国内の賞レースでかなりの健闘をみせていて、まさかのオスカー候補も(?)ということで鑑賞。スリラーとしてはかなりおもしろい。グロさのない演出でどきっとさせられるのは、シャマラン風。なにが起こっているか分からない不気味さは中盤まで。ネタが明かされてからは脱出劇になるが、最後まで飽きさせない。一方、批評家から評価されている人種差別を逆手に取った演出というはイマイチぴんとこなかった。捻りのきいた低予算スリラーが、人権問題を扱う作品として高い評価をされているところこそ、アメリカに潜む人種差別の根強さを反映している、というところだろうか。 [映画館(字幕)] 6点(2017-12-19 09:00:42)(良:1票) |
87. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 「オリエント急行殺人事件」は、アルバート・フィニー版よりむしろデヴィッド・スーシェ版が印象深いのだが、2017年版はまずケネス・ブラナーのポワロに馴れるのに時間がかかった。ウィットを交えたトークと機敏に動く姿は、ポワロというよりシャーロック・ホームズかアルセーヌ・ルパン。物語は、あまりにも有名な事件の真相にたどりつくまでどう魅せるかが肝なのだが、アクションが所々に挿入される以外は奇をてらわない展開で違和感はなかった。ポワロの苦悩は丁寧に描かれている。映画を楽しめるかどうか、もっとも大事な点はなんといっても豪華なキャストだろう。M・ファイファー以外はなかなか目立たない気もしたが、J・デップの悪役など、舞台を見ている感覚で実力のある俳優たちの演技を堪能できた。 [映画館(字幕)] 7点(2017-12-13 20:41:10)(良:1票) |
88. Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
《ネタバレ》 イアン・マッケランの存在が全て。物覚えが悪くなり、過去の記憶が薄れたホームズが、最後の事件を振り返る。とはいえ、物語の中心は人生の終盤に差し掛かった老人が子供や未亡人と触れ合う人間ドラマだ。日本に行くエピソードなど、さほど重要と思えない逸話も盛り込まれるものの、田舎の風景の美しさも合わさって心地よい感動が得られる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-13 17:04:04) |
89. コップ・カー
《ネタバレ》 テンポの悪さが目立つ。題材はおもしろいのだけど、少年らの運転シーンやK・ベーコンの靴紐シーンがじれったい。少年が、悪徳警官のパトカーを盗むところから負の連鎖が起こるという展開はとてもおもしろいだけに、残念。低予算で犯罪を楽しませるなら、コーエン兄弟を見倣って! [DVD(字幕)] 4点(2017-11-29 00:07:07) |
90. アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
《ネタバレ》 戦場と離れた場所で生死を決める現代の戦争。その葛藤と現状が描かれている。サスペンスとしても申し分なく、問題提起に値する作品でもある。遺作となるA・リックマンの存在感は会議室の中で必然であり、最後に放たれるセリフはこの映画の核心をなす。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-11-28 23:57:21) |
91. ジェイソン・ボーン
《ネタバレ》 ボーンの目的が父親殺しの真相探しで、いまいちピンとこない。一方、CIAがボーンを追う目的は完全に見失っている。追わなきゃ、ボーンも現れないのに。アクションは前3作と大差なく、カーアクションがやたらに長くて間延びする。それでも、マット・デイモンとトミー・リー・ジョーンズの気迫に飽きることはない。ヴィキャンテルは2人に比べると小粒感がある。もっと大物女優でよかったのかもしれない。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-11-21 11:57:15)(良:1票) |
92. ノクターナル・アニマルズ
《ネタバレ》 本筋とその中で語られる小説物語が同時に進行していく。こうした展開は、劇中物語がどうしても余計なものに感じて本筋に気が向かないのだが、本作も同様の印象。ただし、J・ギレンホールが本筋と小説内の主人公という二役を演じることで、集中力は辛うじて保たれる。小説内で語られる高速での誘拐シーンがやたらに緊張感が高かったり、マイケル・シャノンの凄みが他を圧倒したり、オープニングの無意味な全裸女性が見る人を選別したり、全体的に焦点をぼかしているのは作り手のしてやったり感があっておもしろい。好きにはなれないが、どこか惹きつけられる魅力のある作品。 [映画館(字幕)] 6点(2017-11-15 21:31:33) |
93. ザ・ガンマン
《ネタバレ》 ハビエル・バルデムやレイ・ウィンストンという渋い役者が出ているのに、見せ場なく呆気なく死んでしまうのは残念。ショーン・ペンが頻繁に眩暈を起こして倒れこむ設定が効いていなくてムダ。とはいえ、そこまで酷い作品ではない。CGを多用したアクションとは異なる、体張ったアクションで緊張感がある。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-05 10:58:12) |
94. エイリアン:コヴェナント
《ネタバレ》 「コヴェナント」は良くも悪くも、エイリアンシリーズの原点回帰である。1、2作の見どころを集めた作りで、新しい驚きや緊迫感はないがそれなりに楽しめる。「コヴェナント」を見ることで、肩透かし感のあった「プロメテウス」が、実はヴィジュアル、サウンドともに優れていたのだと思い直した。 [映画館(字幕)] 7点(2017-09-24 11:30:49) |
95. エル ELLE
《ネタバレ》 カメラは最初から最後までイザベル・ユペールを追いかける。これは彼女の物語だ。過去のトラウマからの解放と尽きない性への欲望を付きまとわせながら、周りを翻弄し、翻弄され、ひたすらに観客は戸惑わせられる。出てくる男がみんなダメな男ばかり。男性に虐げられた女性が主人公のサスペンスという前提をとりながら、実は女性賛歌のブラックコメディ的ドラマなのである。 [映画館(字幕)] 7点(2017-09-17 20:04:46)(良:2票) |
96. ダンケルク(2017)
《ネタバレ》 ストーリーの欠如が映画を単なる映像にしている。スクリーン全体に展開される映像の数々はノーランらしく見入るものがある。しかし、そこに感情移入できる物語はなく、映画の世界に入ることのないまま終わってしまう。 [映画館(字幕)] 5点(2017-09-17 19:46:11) |
97. ベイビー・ドライバー
《ネタバレ》 丁寧な作りに満足。映画ネタなどを絡めたセリフにスマートなアクション、適度な暴力に個性的で憎めない登場人物たち、絶妙な選曲の数々。若者二人の恋物語もぴったりストーリーにハマッている。スゴい映画をみたという感動はないけど、映画館でみるべき良作である。ジェイミー・フォックスはあまり悪役の印象がないのだけど、この映画では印象に残る悪役を演じている。 [映画館(字幕)] 7点(2017-08-27 19:50:45) |
98. ルーム
《ネタバレ》 ルームから脱出するまでの緊迫感、脱出後に母子が再会する高揚感にくぎ付けになる。後半は、広い現実世界の中でどう母子が生きていくかに話が転換される。主演2人の演技もさることながら、内面をみつめる丁寧な演出もよかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2017-08-16 16:11:08) |
99. マネーモンスター
サスペンス性も問題提起もやや物足りない。主人公である番組司会者のG・クルーニーは犯人の添え物的な役回りで、勿体ない印象だ。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-07-30 13:39:18) |
100. ニュースの真相
《ネタバレ》 公開当時は目立たない作品だったが、ブッシュの軍歴詐称疑惑を巡る実話作品で俳優陣も豪華である。誤った報道に対して、誰がウソをついたかではなく、ジャーナリズムの在り方に話が進む。突っ込み方が中途半端な印象はあるが、報道関係者や視聴者にとって考えさせられる部分は大いにある。 [DVD(字幕)] 6点(2017-07-30 13:36:36) |