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サムサッカー・サムさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 211
性別 男性
年齢 34歳
自己紹介 日本は公開日が世界的に遅い傾向があるので、最近の大作系は海外で鑑賞しています。
福岡在住ですが、終業後に出国して海外(主に韓国)で映画を観て、翌日の朝イチで帰国して出社したりしています。ちょっとキツイけど。

Filmarksというアプリでも感想を投稿していますので、内容が被ることがあるかもしれません。ご了承ください。

これからも素晴らしい映画に沢山出会えたらいいなと思います。よろしくお願いします。

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81.  キング・コング(2005) 《ネタバレ》 
大迫力のスペクタクルで楽しませてくれる一方、人間ドラマとしても秀作だ。最初のニューヨークからヴェンチャー号での航海の流れはこの映画には不可欠な部分だと思う。スカルアイランドに着くまでの間、多数のキャラクターたちが登場するがその描写に無駄がなく的確であり、アクションの見せ場であるスカルアイランドでのドラマを支えている。暗示的な台詞の使い方も巧い。この一連の流れが物語りに深みと感動を与えている。またスカルアイランドでコングとアンが心を通わせていく過程も丁寧に描かれて、コングがビルに登っていく理由も感動的だった。ピーター・ジャクソン監督のルーツでもあるコングへの情熱や愛をスクリーンから強く感じた渾身の一作。
[映画館(字幕)] 8点(2008-01-14 23:26:51)(良:1票)
82.  トランスフォーマー 《ネタバレ》 
映画館でしかこの体験は出来ないだろうと何度も劇場で鑑賞した個人的に大好きな映画。しかし驚愕の映像で魅せる反面、ストーリーや編集は不要なかキャラ、シーンが多くキレがないとも感じた。音声解析班に若者達ではなく、ジョン・タトゥーロを国防長官の同期的な設定で起用すれば、ジョン・ボイトとの間にドラマが生まれ、ラストのフレンジーとの死闘がより盛り上がったかもしれない。そして一番不要なのはなんといってもあの電話の交換手だろう。あそこで笑いをとる必要はまったくなく、未知の侵略者との戦いという緊張感をそいでしまっている。せっかくレノックス大尉とエップス軍曹が「どのポケットだ!?」「左の尻っぺただ!!左の!!」と必死に戦っているのにあの交換手のせいで台無しだ。またこの映画のテーマの一つはベイお気に入りの「自己犠牲」だろう。しかしほんとに犠牲になったのはジャズだけで、そのジャズの影がひたすら薄いのも問題だ。「サムのハッピータイム」のくだりは削って、ディセプティコンズとの戦いをいれてメンバーの性格を掘り下げたほうが良かっただろう。と散々酷評した訳だけど評価すべきことも多い。バリケードに狙われたサムがミカエラに「僕の車を信じて!」というシーンでは二人の顔の間に光が差し美しい場面になっている。全編に見られる光の演出だがこのシーンでは一際美しい。スコアとの連携もパーフェクトである。そしてこの場面が終盤、ミカエラの「あなたの車に乗った事は後悔しない。」という台詞につながるのも良い。サムの成長もよかった。はじめはファニーフェイスでミカエラに「良ければ乗っていくよ」とか言ってたときとラストでの顔つきは明らかに違う。キューブを守る、世界を守るという過酷な試練がサムを逞しくしたのだろう、シャイア・ラビオウフの好演がうれしい。アニメのノリに近くトランスフォーマーのファンとしては非常に満足のいく作品と思う。「聞け!君はもう兵士なんだ!!」すごく憧れる台詞だ。
[映画館(字幕)] 8点(2008-01-14 00:12:38)(良:1票)
83.  トランスフォーマー/ビースト覚醒 《ネタバレ》 
久しぶりのTF超大作。 本作はベイ監督の5作とは異なる世界線の「バンブルビー」の続編、かつ2007年に公開された「トランスフォーマー」の前日譚に当たるという立ち位置の良く分からない作品だ。(一応ラストでベイ時代の音楽と終了フォーマットを踏襲している。)  とはいってもベイが監督した5作品の時点で矛盾も多く、良く分からん世界観だったのも事実。 もう、TFはそれでいい。 今回も出されたTFを余すことなく楽しもう。  本作はタイトル通り、TFのアニメシリーズであるビーストウォーズをフィーチャーする。 ビーストのアニメは空前の大ブームとなったので、これは当時の子供たちにも刺さるだろう。  感想としては個人的には大いに楽しめたが、色々と歪な面も感じる。 再撮影や、カットされた多くのシーン、TFとしては短い上映時間… 本作が色々な思惑の元、当初の予定とは異なる形で世に出たことは想像に難くない。 結果から言えば、作風や上映時間の調整が行われており、ドラマの性急さ、ルール説明の曖昧さを感じたことは事実だ。  本作はオプティマスがリーダーシップを取り戻すまでの物語が主軸。 監督も言及してたが本作のオプは、鋼鉄の判断力と思慮に富んだいつものオプではない。 実際、あまりに怒りっぽいオプの姿に驚く。故郷へ帰ることができず、仲間への責任を背負い込んでいるのだ。  これは面白いと思うが、正直なところセリフベースの説明では物足りなさを感じるところでもあり、実際、本作にはカットされた異なるオプ主体のオープニングもあった。(Youtubeにあります) やはりセリフでの説明では、最低状態のインパクトが薄く、成長物語であればこそ、変化の緩急は強調してほしいものだ。  他にもテンポのよさの弊害として、トランスワープキーやユニクロンについても説明が曖昧に感じる部分があり惜しいと感じた。 しかしながらこの辺り、ドラマや設定は頭の中で補足していけば楽しめると思う。  他に本作の長所もたくさんあった。  ノアとミラージュの友情が熱い。  弟に付与した設定も良い。 ソニックとテイルズ(当然ゲームが元ネタだ)という名前を与え、本作のキーワード=チームを連想させる。困難なクッパ(この時代のGBには登場しないと思うが)の攻略に挑む姿はそのまま闘病と重なり、ノアの知る以上のガッツを描写する。 モア・ザン・ミーツ・ジアイ=目に見える以上の力、すなわちTFシリーズが秘めるメッセージだ。  エレーナとエアレイザーの絆もいい。 エレーナの才能を、翼をもった隼が外の世界へと解放していく。 ノアとミラージュ程あからさまなパートナーとしては描かれないが、明らかに二人が意識しあっていることが分かるのが良い。  ちなみにホイルジャックとの合流場所はサクサイワマンという遺跡だが、これは「満腹の隼」の意。遺跡の名はビーストが古代人に与えた影響の名残なのだろうかと、とんでもない考古学を考えてしまったりする。  一番良かった点、これはTFのカッコよさに尽きる。 オートボッツのデザインは過去イチで好きかもしれない。 「バンブルビー」とベイ作品の移行期のようなデザインが良い。  アーシーは格段に可愛くなっているし、F1に変形しない(一瞬しますが)ミラージュも鑑賞してみれば魅力的に見えた。 ホイルジャックに関しては前作でアニメ準拠の姿で登場したのに、なぜ今作で南米かぶれメガネになったのか謎。  その出自が全く語られなかったスカージにはびっくりだが、初戦でオプを圧倒する悪役ぶり痺れた。他のテラーコンズの面々もヴィランとして映画を存分に盛り上げてくれた。  惜しいのはユニクロンか、せっかくの惑星捕食がほぼないため、設定以上の怖さが感じられない。さらには援軍要請にクソザコサソリ軍団を投入するポンコツぶりで、結局テラーコンズは実質3人でTF達の連合軍と戦う羽目になっているから可哀そうになる。(モブ軍団が弱いの)  ユニクロン少々は残念だが、TFのカッコいいいシーンはたくさんあるし、オートボッツ集合シーンは、まるで実写一作目を観た時のようなワクワクを感じた。大人になったビースト世代だけでなく、本作が初めてTFに触れる子供の心に残ってくれると嬉しい。   本作は監督が本来取りたかった映画とは違う状態かもしれないが、夏の大作としてはテンポの良い本作が正解にもなるのかもしれない。 つるべ打ちのアクションに彩られた一大冒険活劇、その中に活写されるトランスフォーマーたちのカッコよさ。 実写版1作目の精神へと繋がっていく久しぶりのTF映画は、子供たちの期待を裏切らないだろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2023-08-04 02:59:10)
84.  ペット・セメタリー(2019) 《ネタバレ》 
本作は去年の春に世界的に公開され、日本では例によってやたらと遅れて劇場に到達。 日本公開日の時点で、海外Netflixでは配信も始まっており、VPNを変えれば日本のご家庭でも鑑賞できるという…。 この公開日の遅延、どうにかならないものか。いやビデオスルーにならずに、劇場で観られるだけでも良かったか。  さてオリジナル版のネタバレを避けたいので細かいことは言及しないが、自分は前情報をほとんど入れずに鑑賞したため、本作での改変はに思わず「!?」と目を疑うものがあった。 これ以降、エリーちゃんのフィジカルを活かした攻めのペット・セメタリーへと舵が取られるが、これはこれで楽しめた。 マイナーな変更点としては、パスコウ君の出番が大幅に抑えられたことで、ファンタジー感を削り、よりダークなホラー映画に近づけようとする動きもうかがえた。(ちなみにパスコウ君は人種も変わった)  また、オリジナルでは、愛ゆえに自然の理に挑む人間が哀しさが印象に残ったが、本作は死者の怒りという面にもフォーカスすることで、ホラー映画的な間口の広さを確保できていたと思う。 死後の世界はあるの?どんな感じなの?いやないだろうよと議論を繰り広げた3人。彼らがまとめてペッセメ送りされてしまうという意地悪な脚本が良い。一体どんな答えを見たのだろうか。  しかしながら、事の発端となるチャーチの一件まではオリジナルとほぼ同一内容で進行してくため、いかに攻めた展開にしようと、しっかりとしたドラマが息づいているのもいい。 加えて、レイチェルのお姉さんの話も深く掘り下げており、これはびっくり箱的な恐ろしさを演出すると同時に、「生」という観点における人の無力さ・運命の不公平さを感じさせるエピソードになっている。  結局、生者である僕たちにとっては、「生」と「死」の謎というものは計り知れないものだ。 すべての生き物に公平にありながら、その形や時間はそれぞれ不公平なまでに異なっている。これは自然の理であり、それがどんなに苦痛だとしても、変えることはできない。  大事な人、身近な存在を亡くす悲しみ。子供であろうと大人であろうと、世界の不公平さを受け入れるのはとても難しいものだ。 でも、もしもその理を超える力があるなら。悲しみを癒す力があるなら。 ずっと一緒にいたいと思うのが人間だろう。  しかし、この「ペット・セマタリー」もまた魔法ではなく呪いであった。 悲しくて悲しくて仕方がない。  とんでもないホラー映画ながら、終わってみれば、やはりオリジナルと同じ悲しさが胸中に広がるのを感じた。 そしてオリジナルとまた同様に、軽快なエンディングテーマが余韻をぶち壊していくのを感じた。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2020-01-17 00:34:40)
85.  ゾンビランド:ダブルタップ 《ネタバレ》 
ゾンビ映画あるあるというメタ的ユーモアが話題となった「ゾンビランド」、10年ぶりの新作。  これだけ間が空いたにもかかわらず、オリジナルメンバー(+ビル・マーレイ)が集結したことがまず嬉しいところだ。  10年というのは結構長い。 前作の公開当時、ロックボトムを演じるアビゲイル・ブレスリンが既に大物子役として大成していたこともあり、丁度人気が出始めた辺りのエマ・ストーンは少々知名度に劣ると言った印象だった。しかし今では4人の中で唯一のアカデミー賞受賞を達成し、大女優になりながらもこのコメディ映画に帰ってきた。 ウディ・ハレルソンは「スリー・ビルボード」などの良作で確実に円熟味を増し、名優として扱われることが多くなったいたが、タラハシーの様なイカれた役を待っていたファンも多いのではないだろうか。ナチュラルボーンにクレイジーなウディも僕は好きである。 子供だったアビゲイルちゃんは妙にリアルに成長。劣化とか言ってはダメだぞ。ちなみに「マギー」でゾンビ役をやってたりもする。 ジェシーについては、前作が昨日公開されたんじゃないかってほどそのままで、なんか面白い。  さて、世界観の方にも続編らしい新設定が加えられた。 ホーマー、ホーキング、ニンジャ、T-800という強化ゾンビたちの出現だ。 しかしながら実はこれらが物語に強く影響することはなく、ギャグの幅を広げるために用意されているのが上手いところだ。 つまり、10年経った続編ながらも、いい意味で代わり映えがしない。  新キャラにしても、マディソンは話を動かす仕掛け&ギャグ要員としての役割に終始し、必要以上に内面が描かれることはない。「バカキャラ」で全てが完結できるようになっており、人気上昇中のゾーイ・ドゥイッチの可愛さとバカ演技で強引に押し通してくる。 他にもアルバカーキやフラッグスタッフといった面々が出てくるが、これらもギャグ+アクションで沸かせた後は意図的に退場させており、スケールを保っていることが分かる。(ルーク・ウィルソン、トーマス・ミドルディチ、ロザリオ・ドーソンなどサブキャラのキャスティングが異常なほど豪華である)  本作は相変わらず4人にまつわる話なのである。 リトルロックの反抗期、ウィチタとコロンバスの痴話げんか、タラハシーの子離れ。 サザエさんの予告みたいになったが、「ダブルタップ」で描かれるのは、数年を経て絆を強めた家族のホームコメディだ。 新キャラも設定もゾンビも、彼らのドラマ以外は全部ゆるーいギャグでいい。 そして「家」を探す旅路は、ホワイトハウスであれキャデラックであれ、家族が揃う場所なのだという答えにたどり着く。 ゾンビだらけの終末世界ながら、のほほんとした「らしい」終わり方が良いではないか。  映像が豪華になり、世界観が拡大されても、描くべき部分やオーディエンスが期待する部分をしっかり見定めており、「ダブルタップ」は非常に心地の良い続編になっていると言える。そしてもちろん存分に笑わせてくれる良作だ。   そういえば、マディソンがゾンビ化する前にコロンバスが手を打とうとするシーンは、2度撃ちということもありコーエン兄弟の傑作を思い出す…とコロンバスやフラッグスタッフ的な想像をしてみる。あと最後のビル・マーレイはズルいだろう(笑)
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-12-02 12:23:31)(良:2票)
86.  X-MEN:ダーク・フェニックス 《ネタバレ》 
20世紀FOX最後のX-MEN。(延期中の「New Mutants」はどの位置づけなのか) 同時にシリーズの最終作。  海外での低評価に加え、興行的にも敗北した本作だが、映画は観てみるまで分からない。 ヒーロー映画として相当ヤバい領域に踏み込んではないかという衝撃を受けた。  監督は同じくダーク・フェニックスを扱った「ファイナル・ディシジョン」からシリーズに携わり続けているサイモン・キンバーグだ。 「ファイナル・ディシジョン」といえば、シンガー版を継承したブレット・ラトナーにより、壮絶なバトル大作へと変貌を遂げた快作だ。対して本作はシンガー版の陰鬱さを更に掘り下げたような暗い作風が特徴である。(両作ともジーンの実家にX-MENが押しかけるシーンがあるが、作風の違いが出て興味深い)  ちなみに監督更新に伴い、音楽のジョン・オットマンは降板。残念ながらアガるテーマ曲&OPはオミットされた。代わりに、ヒーロー映画卒業を宣言のハンス・ジマーが担当している。  作品の方は、監督によればリアルさとダークさを突き詰めたとのこと。思うに狙った着地点には到達できているようだ。 本作には一線を超えてしまった描写が散見され、ガチで恐怖を感じた。 それは悪役が強すぎて怖いとのレベルじゃない。  例えば、ジーンがエリックに殺人について相談するシーン。 「悪役を殺害すること」についてフォローのないヒーロー映画が少なくない中、彼を大量殺人者と明確に言及した点に恐ろしさを感じる。  中盤ニューヨークのシーンもヤバい。 ジーンは葛藤したくないからと、全ての力を吸収させることを選ぶ。責苦から逃れるべく自殺を図る心境など辛すぎる。  またここでのチャールズへの仕打ちは恐怖しかない。 「歩いて来なさいよ」と冷酷に言い放ち、身障者を無理矢理歩かせるなど残酷極まりない。こんな非道な拷問を誰が平然と見れようか。 その痛々しい映像と「お願いだ、やめてくれ」と懇願するマカヴォイの熱演が恐怖と悲しみに拍車をかける。  終盤では、マグニートーが敵を車両ごと潰すという恐ろしい大技まで繰り出してしまう。ふっ飛ばして画面から退場とかではない。 敵は性質上から擬態するため、ハタから見れば一般人であり、その画作りがマグニートーの明確な殺意に凄みを持たせた。  荒唐無稽ながら、その中で描けるリアルさ、ダークさは一線を超えたと言える。怖すぎるのだ。  ノーラン版「バットマン」や「ローガン」など、大人向けな内容を含んだアメコミ映画は確かにある。 問題は、これらはハナから「いつものアメコミ映画じゃないよ」という雰囲気なのに対し、本作はいつものX-MEN映画のツラをしながら、その中に凶暴な演出を内包している点だ。  個人的にはこういう尖った部分は評価するが、やりすぎなのでは?という気持ちもあった。 多くの観客がその陰鬱さににたじろぐのも理解できる。  マンネリを感じさる構成もマイナスか。 ジーン対Vuk、吸収系の能力との闘い。 シリーズ内で思い付くだけで、ショウ対ダーウィン、ビショップ対センチネルがある。 ジーンが自分から回答を示すように工夫されただけ良かったが、新鮮味はない。 エリックについては、またも大事な人を奪われブチ切れパターンである。流石に既視感は禁じ得ないか。  更にはいくつかのエピソードもウヤムヤに解決されてしまい、全体的に歪な印象は否めない。 レイブンとチャールズの確執や、調子乗りチャールズの件はしっかりと解決させて欲しかったところか。   90年代を俯瞰できる強みを活かしきれなかったのも惜しいか。リブート版は「実際の出来事の裏でのミュータントの活躍」が面白い点であったが、前作「アポカリプス」同様にここは残念だ。 (シリーズ内で30年経過してるのに、誰も老けてないのは苦笑だが)  また、最終作なのにシリーズとの連携が疎かになっているのも物足りない。 サイロック、ストライカー、モイラなど、決着をつけるべき部分が沢山放棄されてしまっている。  とはいえ最終的にはシリーズ共通のテーマである「希望」を絡めて無難にまとめ上げられている。これからの未来に希望を持たせられるような余韻のある幕引きだ。  アクションも地味目で数も少ないが力強さはある。各々が能力を発展させて繰り出す奇想天外な見せ場はまさにX-MENの真骨頂。複雑な思惑が絡んだバトルが熱い。エモい。  X-MENを支えてきたキンバーグが演出する本作は、公開後数日で「失敗」と位置づけられ、監督自らが「私の責任」と公言する事態を招いている。確かに残念な点は多いが、ダークな描写のパンチ力は本物である。印象に残ったことは事実だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-06-12 21:21:39)
87.  キャプテン・マーベル 《ネタバレ》 
キャプテン・マーベルといえば、DCコミックスに在籍するキャプテン・マーベル、AKA=シャザムを思い出す人もいるだろうが、本作はMarvelコミックスの女性の方のキャプテン・マーベルである。 (シャザムはシャザムで来月「シャザム!!」でDCEUに合流する)  さて、衝撃的な形で参戦が決まったキャプテン・マーベルだが、MCU初の女性ヒーローの単独主演作として制作されている。 マーベルスタジオ社長の発言や主演ブリー・ラーソンのストロング・パーソナリティも相まって、公開前からコントラバーシャルな一面が強調されたのも話題となっているようだ。 といったものの、僕個人はアメコミ映画を観に来たただのおっさんなので、そいうった論争には加わらず純粋に作品を楽しむことにする。  まず、ブリー・ラーソン。 可愛いじゃないですか。アカデミー賞も受賞し、その演技力は言わずもがなだが、ここにきてこんな素敵な笑顔を披露するとは嬉しい驚きである。 そして最新技術で若返ったサミュエル・L・ジャクソン。 「アベンジャーズ」では強キャラ感を醸し出してるが、本作では愉快なおじさん。シリーズを追いかけているとこういうギャップも楽しめて面白い。 フューリーのアイパッチの理由の酷さよ。  ジュード・ロウが敵で、ベン・メンデルソーンが味方という配役も意表を突く。スクラル達を「一見したところ間違いなく悪者」と思わせるから、終盤の彼らのぐう聖ぶりが本作のメッセージ性を強めた。戦争という難しい局面を絡めて、ヒーローが追及すべき正義を考えさせてくれる。見た目で判断してスマン、タロスご一行。  余談だがタロスは、メンデルソーンがオーストラリア出身ということもあり、オーストラリア英語しゃべっていたが、変身したらしっかりアメリカ英語になっててちょっとおもしろかった。   話を戻すと、本作はいわゆるヒーロー誕生映画である。 ヒーローものに不可欠であるが故、既視感バリバリの危険なパートとも取れるが、本作は打開策としてミステリ映画的なアプローチを試みている。  謎が解ける過程で、「何も知らずに使われてきた者が、真実を知ったうえで自分の判断を下す」というテーマや、「強い女性」を表現することに繋がる仕掛けも良い。 面白さとメッセージ性を両立できている。  印象的に用いられる90年代設定も、他作品との差別化になるいいスパイスになった。 店舗型レンタル店の時代に、Netflixを圧倒していたブロックバスターに墜落する辺りから面白い。 アメリカにおいて「今では見かけないけど当時は当たり前だったもの」を最初に引っ張り出してきて、一気に空気感を伝えてくれる。 Windowsのローディングのあの遅さも今となっては笑い話か。   もちろん、ある種インフィニティウォーの答えとも取れる位置にある本作は、壮大なMCUの世界観の面白さも全面に押し出してくる。 先にも述べたニック・フューリー以外にも、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」での大ボスが本作にも登場するなど、シリーズファンなら尚更楽しめる作りだ。  惜しい点としては、これらの要素が上手くまとめられていないため、全体としてみると少しバランスが悪いところか。 ミステリ展開で仕掛けてきた割に、敵がクリーと分かったとたんに普通のアクション映画の趣になってしまったり、90年代とSF映画のミスマッチな雰囲気も中盤以降は弱くなったりと、全体としての統一感に欠ける印象だった。  同じく地球文化とSFの両方を扱い、さらにシリアス・ギャグ・アクションの調和を満たす「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の好例があるので、少し厳しくなってしまったかもしれないが。   演出についても力が入り過ぎな印象。マリア・ランボーの庭での会話シーンは、環境音・BGM・役者の演技がどれも全面に出てきてしまい、逆に発信する力が散漫に感じた。 終盤では「何度挫折してもその度に立ち上がってきたキャロル」をカットとブリー・ラーソンの演技だけで表現するなど、キラリと光る部分もあったので、こういう部分でも差別化していけると良かったと思う。 削ることによって、より印象的に伝わることもあるものだ。  脚本は「スクラル人説明下手か!!」というツッコミに尽きるが、大目に見よう。構成や演出に精細を欠く場面もあったが、MCUのパワーで最終的には満足させてくれる。次作への布石も挿入され、まだまだ目が離せないシリーズである。  それにしてもキャプテン・マーベルの強さは何だ。「エンドゲーム」ではまさにゲームチェンジャーを担うのだろうが、体当たりで戦艦を破壊するようなヤツと闘わないといけないサノスさんが逆に心配でしょうがないのだが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-03-08 13:43:33)(良:1票)
88.  アクアマン 《ネタバレ》 
マーベルのアベンジャーズに負けず劣らずの超大作シリーズながら、ザック・スナイダーのヴィジュアル作家性の影響で、どこか暗く地味な印象のまとわりつく「ジャスティス・リーグ」。  今回のスピンオフは「アクアマン」というこれまた地味目なヒーローをフィーチャー。 魚と話すだけの男に果たして映画一本務まるのか…?と疑問を抱いていたが、いざ鑑賞してみればサービス精神抜群のスーパー超大作に仕上がっている。  メガホンをとったジェームズ・ワンといえば「ソウ」で注目を浴びて以降、「インシディアス」「死霊館」など、ホラー映画を得意としてきたが、最近は超大作にも起用されているようだ。  そんなワン監督のスーパーヒーロー映画だが、監督が以前に車が出れば何をやっても良いよ的な「ワイルド・スピード」を手掛けたからか、本作はDCEUの中でも群を抜いて派手でハチャメチャ。凄まじい映像の物量で攻め立ててくる。  序盤こそキャラクターデザインの絶妙なダサさや(ブラックマンタなど原作に準拠しすぎだろう)、突然のBGMシガー・ロスなど、やりたい放題な感じに戸惑ってしまったが、アトランティスという名のネオン街で繰り広げられる潜水艦チェイスの辺りで、もうどうにも楽しくなってしまった。以降、トライデントの話はいいから変な映像をもっと見せてくれ!というスタンスで鑑賞したら、なかなか見所は多かった。  アクアマンだからと言って海中のシーンだけにこだわる必要はない。もちろん海中のハイスピードフワフワバトルも面白いが、唐突なインディ・ジョーンズ化、イタリアの明るい屋外の素晴らしいアクション・シークエンス、さらにはかわいいニコール・キッドマン、そしてキレイなウィレム・デフォーなどヤバい映像のオンパレード。 アーサーとアトランナの再会シーンに至っては、アトランナのプレデターみたいな衣装が気になって感動がブレそうではないか。ぶっ飛びすぎだろうよ、このビジュアル世界は。  ストーリー自体はアリガチで内容も薄いきらいはあるが、映像面に振り切ってくるアメコミ映画も個人的には嫌いではない。(シュマッカー版の悪趣味なバットマンとか僕は結構好きなのです) 次回のジャスティス・リーグではアクアマンのド派手な活躍を期待したくなる出来だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2019-01-20 19:50:39)(良:1票)
89.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 
時間を持て余してた時に劇場で見かけて、予告も観たことない状態で鑑賞。 これは…いったい何だったのか。僕は一体何を観ていたのか。  おばあちゃんの葬式の後に怪異が置き始め、悪魔パイモンが絡んだ謎が少しずつ紐解かれていく。話ももちろん面白いのだが、終始「なんか嫌だなぁ」という嫌悪感がまとわりつく。  ピークはかわいい妹の凄惨な死。もうすんごい嫌な感じ。 語彙力が低くて申し訳ない。ただただ嫌な感じ。  完全に兄(ジュマンジ続編の主役)のミスだし、それで実際こういう時ってどうすれば良いんだろうっていう手詰まり感。 実際、詰んじゃって帰宅して寝るしかないっていう恐ろしさ。(もちろん警察呼ぶとかあるだろうけど、妹の首が吹っ飛んだ状況って、気も狂っちゃうほど計り知れないショックと怖さがあると思います)  まるで月曜日に取引先への謝罪が確定した状態で迎える週末。分かりにくい例えで申し訳ない。もうただただ嫌な感じなんです。  そのほか演技力の高さを遺憾なく発揮するトニ・コレットも壮絶。お前笑わせに来てないかと疑ってしまう霊感おばちゃんもまた良し。 そしてこの話の救いの無さもまた…もう嫌な感じ。  一応ホラー映画に分類されており、僕もそれは納得なのだが、何というか、きちんと筋道がたった上での恐怖とはまた違うような、本能的というか生理的というか。恐ろしく、不快で、そしてどこか滑稽で。 半年ほど前に劇場で鑑賞したのだが、「悪夢だったのかな?」というフワフワした変な気分で劇場を後にしたことを記憶している。  日本でも劇場公開が決まり、ポスターには「完璧な悪夢」の文字が。やっぱりアレは悪夢だったのかと。 いやはや強烈な映画でした。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-11-29 15:09:33)(良:3票)
90.  ヴェノム 《ネタバレ》 
アンドリュー・ガーフィールドが主演を務めたマーク・ウェブ版「スパイダーマン」の失敗以降、スパイダーマンをMCU(雑に言ったらアベンジャーズシリーズ)に譲ったソニー・ピクチャーズだが、全てのキャラクターの権利を失っていたわけではないようで…今後、MCUとの合流は不確かながら、ソニー独自のクロスオーバーを展開するという。  その第一作となるのが本作である。 「ヴェノム」とはスパイダーマンに登場する宇宙生物でいわゆるヴィラン(敵キャラ)である。 サム・ライミ版「スパイダーマン」では第三作目に登場し、ヴェノムに寄生されるエディ・ブロックはトファー・グレースが演じていたので、覚えている人も多いのではないか。  さて予告などを見る限り、MCUとはまた違ったダークで大人向けな雰囲気を醸した本作だがいざ見てみると、ユーモアにあふれた楽しいアメコミ・バディ映画に仕上がっているではないか。  「俺、自分の星では負け犬だけど地球じゃ強くね?残るわ!」というヘタレな発言に加え、ドレークの刺客たちの銃弾から一般人を守ったり、最後も「グッバイ!エディ!!」とか感動セリフまで吐くという妙に親しみのある相棒じみたヒーローが今回のヴェノムである。  宣伝や事前情報から得られるイメージとは少々の乖離があったものの、これはこれで僕は好きである。 そもそもサム・ライミ版のエディ及びヴェノムは、人格的にも難のあるような小物悪役に徹していたので、あの程度のヴェノムでは主役は張れまい。(サム・ライミ版は原作との違いにファンから非難されていたが…) 今回のヴェノムは、本作でも抜群にチャーミングなトム・ハーディとの掛け合いで、もはやデッドプールなんじゃないのかというくらい笑わせてくれる。(EDは「デッドプール」と同じくエミネムだし)  アクションに関しては、第一作ということもあり物量自体は少ないものの、中盤のドカのスクランブラ―が疾駆するバイクチェイスは「ヴェノム」であることを活かした楽しい見せ場になっている。 坂の高低差を利用したスーパー・タマヒュン・ジャンプも良い。無論僕もタマヒュンした。 最近でも「アントマン&ワスプ」で印象的なカーチェイスの舞台となったサンフランシスコだが名作カーチェイス量産地としての面目躍如か。  他にも犬ヴェノムやら女ヴェノムやらと、通常なら2作目以降に入れてくるようなギミックまで惜しげもなく投入していて、最後まで楽しませてくれた。  ヴェノムのヴィジュアルを活かすために夜のシーンが多いことが(特に目新しくない)特徴だが、内容自体はヒーローの誕生譚としてオーソドックスそのもの。鑑賞した後味としてはダークヒーローというか普通のヒーロー並みの清々しさである。 日本版のキャッチにあるような「残虐なダークヒーロー」とは何かイメージが違うが、娯楽作として純粋に楽しめるレベルの出来である。  次作があるならば、やはりスパイダーマンシリーズのヴィランであるカーネイジが登場するようだ。 批評家からの評価は得られなかったものの、公開初週ではそれなりの興行成績を残している。新たなアメコミのクロスオーバーがカーネイジ(虐殺)されぬように健闘を祈る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-10-13 20:28:05)
91.  クワイエット・プレイス 《ネタバレ》 
ここ数年で個人的に感じていることなんだけど、(作品の良し悪しとは別にしても)とにかく印象に残るホラー映画が多い気がする。  例えば、実話モノながらエンタメ方向に振り切った傑作「死霊館 エンフィールド事件」、または超ド級の興行成績を記録した青春ホラーのリブート版「IT」(リブート前はTVムービー)。 他にもホワイトウォッシングから多様性に移りつつあるハリウッドにおいて、危険なレースカード(人種カード)を匂わせながら、大胆極まりないどんでん返しを決めた「●●●○○○」(タイトルは伏せます。) 或いは、得体のしれない不快感・恐怖感を纏った悪夢のようなホラー映画「Hereditary」(邦題・日本公開未定?)も強烈に記憶に残る。  一口にホラーと言えど、スラッシャーとかスリラーとか、お化けやら怪物やらと、その性格は様々。 話を本作に戻すと、「クワイエット・プレイス」は日本では世界最遅の公開となってしまったが、半年ほど前にその完成度の高さから話題となり、大ヒットを飛ばしたホラー映画である。  音に反応してやってくる得体のしれない捕食者から逃げ惑う家族。パニック・モンスター・サバイバルを合わせた典型ホラーのようだが、その真価はジョン・クラシンスキーが演じきり、クラシンスキーが演出した家族の絆にあったと思う。  末っ子を失った家族が抱えた心の傷が本作のドラマの中心。 音を立ててはいけないというホラー映画的テーマと、どのようにして気持ちを伝えるかというドラマ的な見せ場とが上手く調和している。  中でも父と長女の間の溝が深待っていく中、男同士の会話で長男が提示したアドバイスがシンプルながら響く。  「大好きなら、気持ちをちゃんと伝えてあげないと」  口に出して音にして伝えてもいい、それがだめなら手話で伝えてもいい。いや言葉も手話もいらないかもしれない。 伝わってくれればいい。  ホラー映画としても面白い本作だが、クラシンスキー流の愛の伝え方には目頭も熱くなってしまう。  実際に聴覚障害者であるミリセント・シモンズ(「ワンダーストラック」でも聴覚障害者を演じていた)の印象的な眼差しも心に残るし、「ワンダー」「サバ―ビコン」などで最近よく見かける子役のノア君も良い雰囲気。お父さんとお母さん役は、私生活でも夫婦であるクラシンスキーとエミリー・ブラント。抜群のパフォーマンスを披露していて、とても良い演者が集まっていたと思う。  総じて完成度の高いドラマティックな一作だ。 本作もまた冒頭に述べたような印象に残るホラー映画である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-09-11 01:28:37)
92.  アントマン&ワスプ 《ネタバレ》 
「インフィニティ・ウォー」であれだけの衝撃エンド(他作品のネタバレになりますので詳細は避けますが)を叩きつけてられてしまっては、MCUがどんなテンションでシリーズを再開するんだろう…と、シリーズを見守ってきた側からすれば非常に気になるところ。公開された週末にそわそわと劇場に行ってしまった。  一体どんな展開が待ち受けているのだろうか…いざ見てみると…! これがもう拍子抜けするほど、ほのぼのとした作風でびっくり。 (ポストクレジットでアベンジャーズに繋がる形ではありますが…)  一応テクノロジーの争奪戦という大筋はあるものの、敵サイドのゴーストにも同情の余地があるし、ウォルトン・ゴギンズが演じるソニー・バーチについてもどこかトホホな雰囲気が漂う。 このスーパーヒーロー映画には、本当に凶悪な悪漢、或いは小難しい理屈を並べて善悪を問うような必要悪も出てこないのだ。大体のことはサンフランシスコの街の中で完結してしまうのである。  こう言うとユルユルのアクション映画に思える「アントマン」だが、逆にホームドラマとコメディを掛け合わせたような作風はマーベルの中でも異色のヒーロー象を確立出来ている。  映像面においても「モノの大きさを変えられる」「モノをすり抜けられる」というシンプルな設定で演出できる楽しさを突き詰めており、アイデアの豊富さには目を見張るものがある。 せわしなくサイズを変えながらの奇想天外な肉弾戦など序の口、サンフランシスコのカーチェイスでは坂の起伏までをしっかり考慮したクラッシュシーンで楽しませてくれる。 トラックをキックボード(?)のように使う巨大化アントマンも面白い。  ジャネット(ミシェル・ファイファー)に関してはどんな原理なんだよというツッコミもあるにしろ、ピム博士とスコットの二人がともに身近な家族のために奔走するという状態を作り出したのも巧いところだ。  先に述べたようにこの映画は1つの街と家族内の小さな小さな物語である。 しかしヒーローとは、多分、世界の危機を救ってくれる超人である必要は決してない。 大切な存在のために、大きくなったり小さくなったり。ただひたすらに頑張るお父さん。その熱さこそがお父さんをヒーローたらしめる。  「アントマン&ワスプ」はMCUの中でも特にコンパクトに描かれているが、ヒーロー映画の最もピュアで身近な心意気は、どのMCU作品よりデカく感じられる作品である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-07-31 00:45:01)(良:3票)
93.  ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 《ネタバレ》 
「ローグ・ワン」に続くスピンオフ第2作目。 監督の降板など制作面での苦心が耳に入る本作。一応シリーズ最高の製作費(3億ドルを超えるという…)もこれに伴う再撮影が一因である。  興行面でも、12月公開の法則を覆し、「最後のジェダイ」からわずか半年で公開されたうえ、アメコミ勢が幅を利かす中で苦戦を強いられ、思うような興行成績を上げられなかったようだ。(実際には北米だけで2億ドル以上も稼いだが、SW作品として見れば、これは失敗とみなされる数字である。普通2億ドルって大ヒットなんだけども…)  ネガティブな話題が先行してしまったが、実際に観てみるとコレがとても「楽しい」。 最終的に大ベテランのロン・ハワードが上手くまとめてくれたようだ。 「ソロ」は明らかにスター・ウォーズの雰囲気・世界観を纏いながら、どこかクラシックな活劇の匂いを感じ取れる楽しい楽しいアドベンチャー映画である。  それは大列車強盗を思わせる中盤の素晴らしいアクション・シーケンスによく現れている。 どんだけCGで武装しても、結局は走るノリモノに乗り移って敵との攻防をきっちり描けば、それは楽しいのである。 さらにカルリジアンが合流したあたりからは、キャラの魅力も深まり、これまた胸のすく銃撃戦が繰り広げられる。うん、面白い!  ハリソン・フォードの後釜として登場したエアエンライクは、予想をはるかに超えるソロっぷり。大胆不敵で自信家ながらも、隠しきれないのチャーミングさをよく体現している。 これはビックリしたけど、本当に期待を超える良いソロだった。  しかし、そんな素晴らしいソロが登場する一方、個人的に本作で一番残念な点もまたソロである。  先に述べたとおり、エアエンライクは期待以上だし、監督の演出も適切である。しかし脚本視点からみたソロについては物足りなさを禁じ得ない。  この映画はソロの始まりを描く立ち位置のはずが、本当の意味で僕の知らないソロは出てこない。 つまりソロがスクリーンに登場した時からソロ過ぎるのである。  本作のラストには、もともと利害関係だけのドライデンの想像通りの裏切り、そしてメンターであるベケットの裏切り、さらには(フォローもあるが)最愛のキーラの裏切りというどんなメンタル強者でも泣いて帰りたくなる裏切りの連打が用意されている。  これほどの心理攻撃がありながら、そこにソロの成長・学びは感じられない。 元からいつものソロだったため、成長譚・誕生譚としての深みが希薄なのだ。  劇中にはソロを構成するいくつものキーワードや、シリーズが抱える要素に答えや驚きを提供しているが、大事なのは「ソロ」だろう。  幸運のお守り、ソロという名前、チューイとの出会い、ブラスター、ミレニアムファルコンとその速さの秘密、「知ってるさ」、「帝国のマーチ」のCM、名前だけ出て結局謎な格闘技「テラス・カシ」、ソロの活躍が反乱軍の血肉となっていた等々…興味深い考察が盛りだくさんだ。(PSのゲームでフィーチャーされたテラス・カシは個人的にずっと謎に思ってたので、映画での初登場は驚き)  非情に興味深く嬉しい演出の数々だが、問題はこういう部分を優等生的に回収するのみで、肝心のソロの誕生に踏み込めなかった脚本か。 制作側が往年のファンのバッシングに敏感になっているのは承知だが、ソロの内面についてはもう少し冒険して欲しかったのが個人的な感想だ。  また敵キャラの描きこみが薄いのも物足りないか。 サノスのアゴからポール・ベタニーが出てきたような見た目のドライデンなど、どうも雑魚臭がぬぐいきれない。そのうえ紋切り型のキャラ造形のためハックスやカイロのような「味」がない。 ドライデンなど「小物だけどウザい中ボス」に据えておいて、スター性のあるダース・モールさんを惜しげなく暗躍させた方が良かったのではないだろうか。  L3と絡めたカルリジアン、ハンの「相棒」で独立した面を見せるチューイなど面白い部分もあるだけに、敵キャラを上手く見せられなかったのが惜しい。  しかしながら、要所要所であのテーマ曲が否応なしに心を躍らせてくれるのも、この映画の巧いところ。盛り上げ方は熟知している。 惜しい点もあったが「ハン・ソロ」は楽しいアドベンチャー映画として高次元に位置し、とても魅力的な映画に仕上がっていることは事実だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-06-05 00:43:30)(良:2票)
94.  デッドプール2 《ネタバレ》 
「次はケーブルがでるぞ」という宣言通りに作られたデップ―第二弾。しかしまさかアベンジャーズ相手に猛威を振るうサノスを起用するとは、これまたイジらずにはいられないところ。(J・ブローリンが出演していた「グーニーズ」の片目のウィリーも漏れなくイジる) これにはキャスト発表の時点で一笑い。  「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」で世界中から総スカンをくらったデッドプール=ライアン・レイノルズは、自身の主演「デッドプール」でR指定ヒーローの可能性を華々しく証明した…ハズだったんだが、「LOGAN/ローガン」を引っ提げた天敵ウルヴァリン=H・ジャックマンもR指定で大成功。 更には自らのサラリーをカットすることを条件にR指定を勝ち取った逸話まで持てはやされるモンだから、デップーはこれが気に食わない。  「まず初めにね、ヤツは他人の成功に乗っかった毛深いクソ野郎なんだよ。」と開始早々、辛辣にウルヴァリンをディスる安定の俺ちゃんである。  今回は監督が交代して、「ジョン・ウィック」「アトミック・ブロンド」を手掛けたデビッド・リーチが起用された。 デビッド・リーチは元スタントマン故の性分なのか、出来は素晴らしいけど、世界観にそぐわないアクションシーンを挿入して、演出の一貫性を欠く印象があったが、今回は変にマジメにならずに雰囲気を死守出来ている。 プレタイトルからオープニングの移行時こそ、シリアス→ギャグへの間の取り方がギクシャクしたが、後は概ね良好な演出だ。  ストーリーは、これはもうビックリである。話の運び自体はオーソドックス。ケーブルが悪人ではないことなどハナからバレているようなものなのだが、同一ユニバース内で過去にやったプロット(ネタバレになるので伏せます)をそのままコンパクトに流用してしまうとは。なんともレイジーライティングである。確信犯だろうが。  しかしながら話が分かりやすいからこそ、俺ちゃん初めとする濃いめのキャラが活きてくる。 それこそオールスター・カメオ出演で構成されるX-Forceの面々には笑わせてもらった。 格闘無しのテリー・クルーズ、ゲロッただけのビル・スカルスゲルド(ステランの息子、アレックスの弟であり、新「IT」のペニー・ワイズ)、そしてヴァニッシュしたブラピ…お前ら一体何だったんだよと。 (ちなみに誰も気づかないようなところにマット・デイモンが出演しているが、スタッフに内緒で特殊メイクで参加したため、現場でも気づかれなかったという。何やってんだホントに。)  ウィーゼルやコロッサス初め、既存キャストも負けじとバカっぷりを増して帰ってきている。 前作は予算の都合上、アクションにX-MEN程のお金をかけられなかったが、今作では少し余裕が出たようで迫力もマシマシ。一瞬だけどX-MENの主要メンバーも登場して、笑いもマシマシ。  最初から最後まで館内爆笑、デッドプールは楽しい正常進化を遂げていた。ナイス! あと、みんなはクソだっていうけど、「グリーンランタン」、僕は結構好きだぞ。「ブレイド3」はまぁちょとキツいけど…。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-05-29 23:55:38)(良:1票)
95.  アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 《ネタバレ》 
観賞後に呆然、「やべぇ…まじかよ」という語彙力ひっくひくな言葉しか浮かばないほどの衝撃。  MCUも10年目。 最近でもブラックパンサーの快進撃で不動の人気を見せつけたが、本丸と言える「アベンジャーズ」はなかなかに尖った作品に仕上がっている。  10周年の重みを感じさせる豪華キャスト、ヒーロー達が繰り広げる物語は、もう見せ場の飽和状態。  冒頭、中盤、終盤にアクションを入れ、その間にストーリーを語り緩急をつける。そんな基本はアベンジャーズには全く通じない。  バトルに次ぐバトル、全てがクライマックス。 ぶっ壊れレベルのストーリーテリングで鑑賞者の映画体内時計も異常を来たすこと必至である。 しかしながら最近のMCUは軒並みできが良かったこともあり、キャラの個性で押し通すやり方でも面白さを保てている。さらにこのカツカツ状態のなか、サノスだけはじっくり掘り下げたのも良い。  結末から考えると、やはりヒーロー映画としてはかなりの衝撃エンドである。 何しろヒーローの大半がたいした散り様も見せずに指パッチンで消えてしまうのだから。自分としては嫌いではないが、このような大作としては突っ走りすぎ感があるので賛否別れるかもしれない。  二部作にするにせよ、アベンジャーズが小さな勝利を納めて、なお余裕を見せるサノスというエンディングを用意するのが定石というもの。  前作「エイジ・オブ・ウルトロン」のアベンジャーズ無敵感から一転、この辺りはジョス・ウィードンから監督を引き継いだ「ウィンター・ソルジャー」「シビル・ウォー」のルッソ兄弟のシビアな作風が出たか。良い意味で「ええ~」となる幕切れでだった。  もちろんこのままでは終わるまい。  現実を改変する力を持つ設定のワンダまで死んでしまい、いったいどーなるの?と焦ったが、ニック・フューリーはキャプテン・マーベル(送信先に彼女のインシグニアが見られる)に望みを託したようである。  アベンジャーズのアベンジはここからだ。 サノスさんも黄昏てる場合じゃない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-04-26 19:56:37)(良:1票)
96.  ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル 《ネタバレ》 
故ロビン・ウィリアムス氏の主演作「ジュマンジ」のことはよく覚えている。子供のころにVHSに録画して楽しく鑑賞した記憶があるが、なんとあれから20年以上の月日が流れたらしい。(その間にザスーラという、Wiki曰く精神的続編が制作されている)  今みると、古いCGの嘘っぽさだとか、子役時代のキルステンのキュートさとか、子供のころとはまた違った部分に気づくかもしれない。本作「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が公開される間に、僕もしっかり大人になっていたということだろうか。  今作では子供に見向きされなくなったジュマンジが、ビデオゲームにトランスフォームして新たなゲームに誘う。 大人になるにつれて、僕もやはりゲームから遠ざかってしまったが、この導入にはある種の懐かしさ、そしてワクワク感を感じずにはいられない。NESよりさらに古っぽく、アタリやコリコを彷彿させるレトロなルックス。カートリッジタイプながらローディングを有するというヘンテコ極まりないゲームコンソールとはソソるではないか。  自分はザ・ロック主演くらいしか前情報が無い状態で本作に臨んだため、今時のティーン達が癖のあるゲームキャラになるという設定から十分に笑わせてもらった。 ゲームナードとアメフトヒーローのパワーバランスが入れ替わり、合理主義者は半袖ハーフパンツのララ・クロフトのようなゲーム仕様に、セルフィー女子に至っては性別を超えてしまう。 ヒーローになって世界を救うも良し、トホホなキャラで笑いを取るも良し。リアルとはかけ離れた自分になれるのもゲームの面白さである。 演じるキャストも良好。 圧倒的強者感を醸しながら、ネタのテンドンに耐えうるコメディアンぶりを発揮するザ・ロックの楽しいことなんの。青い顔でツンケンしているイメージ(GotGのネビュラ)が強いカレン・ギランも今作ではかわいい。(ちょい役で出てくるコリン・ハンクスは年とともに父トム・ハンクスに似てきてる気がする)  以降も過剰搭載されたギャグの応酬が続く。もちろん映像的なギャグや下ネタも挟まれているのだが、絶妙に「ゲームあるある」を持ち出してくるのが良い。 コマンド入力による無双、味方のライフを犠牲にしてステージクリア、NPCキャラへのツッコミなど、身に覚えのある人もいるのではと思う。 また、回復アイテム(ケーキ)からの謎の死や、ほとんど見えないプロジェクタイル(このゲームでは蚊)という、洋ゲー特有のあの理不尽さもよく表現できている。  さらにアドベンチャーゲームの世界を描いているから、荒唐無稽なアクションの展開にも無理がない。いや、無理なアクションを展開させても問題ない世界観というべきか。 ド派手でヒロイックなアクションも抜かりなく、映像面においてはゲームと映画の好コラボと言える。  しかしながら僕が最も素晴らしいと思うのは、この映画が「ジュマンジ」を楽しむティーンや子供たちにとって非情に真摯に作られているという点だ。。 主役4人が居残り組として集められる導入部分もその例で、彼らの抱える欠点が分かりやすく処理されていてよい。向き合うべき問題があり、それを克服するにはどう行動するか。ジュマンジに勝つ為に何をすれば良いのか。 それは結果を問わずに壁に挑戦し、仲間と結束して互いの信頼を育むことに他ならない。友情、努力、なんたらかんたら~…の精神がしっかりと息づいている。 コメディと映像の勢いも素晴らしいが、ド直球の「成長」ドラマも熱いのである。  日本では4月公開となったが、本作は世界的には年末のホリデーシーズンに公開された。 同時期にはスター・ウォーズの新作が公開されており、多くの作品が競合を避けたわけだが、本作はあえて真っ向勝負を選び、多くのファミリー層の支持を得た。 実際、僕の行った回は、家族連れや友達同士の観客で大入り、終始笑い声の絶えない賑やかな上映であった。 ゲームあるあるというニッチな笑いをフィーチャーしていながら、その根底にファミリームービーとしての万人向けの面白さ、そして子供たちに向けた教訓をしっかりと内包した「ジュマンジ」。大ヒットも納得の痛快アクションコメディである。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-06 18:11:02)
97.  ノクターナル・アニマルズ 《ネタバレ》 
希代のファッションデザイナーの監督作ということで、構図や映像の美しさに納得のセンスを感じる一方、内容の方も示唆に富んでおり、なかなかどうして味わい深い一作である。  現実世界のイメージを投影した「夜の獣たち」を劇中劇として描いているのが特徴的だ。とはいっても入れ子構造など今となってはありふれた手法である。しかし個人的には、そこに存在する「ある違和感」が良いアクセントになっていると感じた。  つまり、なぜエイミー・アダムスではなくアイラ・フィッシャーなのか? 「夜の獣たち」は小説を読み進めるスーザンの目線で映像化される。そのため劇中劇のトニーはシェフィールドの投影、つまりジェイクの1人二役となっている。  しかし小説内のローラはどうだろうか。 定石では現実世界同様にスーザンの投影、つまりエイミー・アダムスが演じるのであろうが、まったく別の女優であるアイラ・フィッシャーが登場する。 さらにはエイミー・アダムスに意図的に似せてあるようだから不思議だ。  理由は明らかにされないが、適度に思案を巡らせる余地があって良い。  小説内の家族構成はスーザンがシェフィールドといた場合の姿ともとれる。思うにスーザンは、シェフィールドを選択した別のミライの自分をローラに投影していたのではないか。  ではスーザンは誰に自分の人間性を投影したのか。それはアーロン・テイラー・ジョンソン演じるレイ、つまり「夜の獣」ではないだろうか。  人は、自分にされたこと相応の態度で人に臨む。 スーザンは自分が他人に与えた傷を、客観的に顧みているのである。  以前シェフィールドはスーザンを「夜の獣」と呼んでいたということを踏まえると、スーザンはシェフィールドの思惑通り、レイに自分を重ね、トニーからローラを奪う理不尽さ・非情さを痛感したのだろう。  本作は復讐の物語だ。 映画や小説において復讐というと、大儀や正義を果たすための戦いや、血みどろの復讐劇を思い浮かべる。(英語で言う「アヴェンジ」「ヴェンジェンス」といった類か。)実際、小説「夜の獣たち」の中での復讐はそれに近い。  しかし作品内における現実世界での復讐はまた違った形をとる。 最愛の人に見限られ、非情な方法で見捨てられた者の声。 それは画廊に飾られた「リベンジ」の文字が示す通り、過去の遺恨に救いを求める出口のない不毛な感情なのだ。 レイを討ったトニーが盲目となり自らの身を滅ぼしたように、復讐を果たしたシェフィールドもまた、この負の連鎖を覚悟の上なのだろう。  若きシェフィールドを信じていたら、どんな未来が待っていたのか。 美しさと成功、はたから見れば全てを手に入れたように見える現在のスーザンだが、頼れる者もなく心は虚ろだ。 それは冒頭の裸婦(絵面キツイな)の世界とは完全に逆。一般的な理想とはかけ離れた醜悪さで、一糸まとわず文字通り持たざる者たちのなんと楽しげなことか。そんな裸婦たちも次のカットでは作者の演出によって殺害され息絶える。  シェフィールドとの未来を殺してしまったスーザンのもとに、待てども待てども彼は現れない。謝罪も精算も許されない。(そもそも劇中に現在のシェフィールドが一度も現れないので、小説自体が懺悔することしかできない彼女の妄想とも取れるが) 本作は復讐の物語であるとともに、哀しい愛の物語でもある。
[映画館(字幕)] 7点(2018-01-11 14:02:21)(良:2票)
98.  スプリット 《ネタバレ》 
なんだかんだで目が離せないシャマラン監督。しばらく雇われ監督的なポジションをこなしていたが、自ら企画した「ヴィジット」に続き、本作もシャマ節全開の作品になっている。  まず普通に面白い。 クラシックな監禁スリラーに、興味深い多重人格者の設定や、24人目にまつわるミステリなど、様々な要素を加味しているのが良い。 女子高生のキャラ付をさっさと済ませた後は、するりと日常が地獄に変わっていくテンポの良さもなかなか。これらをまとめあげるシャマランのストーリーテリングに狂いは無い。マカヴォイのパフォーマンスも素晴らしい。  題材となっている多重人格。これはスポット制度、3人の女性被害者、24人目の人格などから察するに、同じく23(+1)の人格を持つビリー・ミリガンに着想を得ているのだろう。彼の場合は最後の人格が「教師」だそうだが、本作では24人目に「ビースト」を創り出すことで、「人格次第で身体能力も変わる」という設定が、映画的な面白さに昇華している。 (ちなみに本家ミリガンに関しては、ディカプリオ主演で映画化が予定されている。ディカプリオはJ・ベルフォート、J・エドガー、H・グラスなど実在の人物を多く演じているが、さらに24人プラスとはとんだスプリット野郎である)  個人的に一番面白かった点は、ユーモアと悪意が織りなすなんとも言えないあの空気感か。 怖い・不気味・絶望的だが、どこか滑稽。最悪の状況で踊り狂うヘドウィグの狂気じみたユーモアなど、このさじ加減はシャマランの上手い所である。  また時折あらわれるシャマランの悪意も面白い。 なんせ主役以外の2人は何の武器もない普通の高校生。 「リア充?ビーストに喰われちまえ!!」と言わんばかりの設定だが、この部分こそ本作のキモでもある。  SNSでの評判ばかり気にかけて、車を待つ主人公には「彼女はUber(配車アプリ)で帰るんじゃん?」と言うような今時のリアル(を拡張した)高校生。(※Uberの下りは字幕では省略されている) 誘拐事件は架空の場所ではなくKOP(※キングオブプルシア、アメリカ最大級の実在するショッピングモール。誘拐後、ニュースで名指しで登場するがこちらも字幕では省略されている)で発生する。 青島刑事ではないが、事件はSNSのタイムラインではなく彼女たちのリアルで起きているのだ  しかしながらネット上で生きている彼女たちにとっては、拉致監禁など半年習ったケンポーカラテで打開すればいいだけ。3人力を合わせればどうにかなるでしょという戦略だ。 当然そんな精神ではこの世界を生き抜けまい。 傷つくことなく眠ったまま生きてきたからこその価値観・世界観。そういうものはシャマランおじさんが全部まとめてぶっ壊す。 自分はフーターズ大好き野郎で出演しておきながら、なかなか毒のある鋭い展開で魅せてくれるではないか。  最後に唐突な続編発表をしたときは「何勝手にシャマラン・ユニバース始めてるんすか」とも思ったが、やはりそういう部分も含めて個人的に気になるシャマラン監督なのである。金髪は胸、黒髪はケツというチョイスも個人的には支持している。
[映画館(字幕)] 7点(2017-05-18 15:21:53)
99.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 《ネタバレ》 
MCU15作目にしてシリーズ2作目となる本作。強烈なキャラとユーモア、オウサムなチューンの不思議な調和で魅せた前作の正常進化版と言ったところか。壮大な宇宙で繰り広げられる人情ドラマに、笑って泣いての満足度の高い娯楽作品に仕上がっている。  「ショウタイム、エイホー(Showtime A-holes)!!」の掛け声から始まるオープニングからもう演出に迷いなし、一気に作品のペースに引き込んでくる。他の作品が派手なアクションシーンの創作に苦心する中、本作はその1つをベイビー・グルートのダンスだけで印象付けるから凄い。(ちなみに通常のグルートが再登場する案があったがガン監督はベイビー・グルートを起用した。声は引き続きヴィン・ディーゼル) こういった世界観なんだよと早々と説明してくれるおかげで、ラストまでいい意味で気を抜いて楽しめる。  どのキャラも濃く描きこまれているのがまた素晴らしい。映像でカッコよさを、行動でキャラの心情をしっかり描写できている。また若干反則気味のマンティスの設定を上手く利用することで、悲しみなどの感情を暗くなりすぎずに表現しているし、ドラックスの清々しい笑いも心に響くものになっている。  やはり2作目ということで、映像面ではより派手に壮大に作られている。加えてドラマ面に関してもスターロードの生い立ちを核にして各キャラのさらに深部を掘り下げていく。さらにチームは分断され、それぞれで裏切りや陰謀が進行する。 さすがにこれは色んな方向に散らかしすぎたかとも思ったが、最終的には全てが「家族」というテーマに帰結するのはなかなか良いまとめ方だったと思う。   今回、週末の昼間に映画館に行ったのもあると思うが、小さな子供を連れたファミリー層が多かったのが印象的だった。 上映中はグルートが出るたびに子供たちが「あいむぐるーと」と真似し、顔面崩壊ヨンドゥ&ロケットではスーパー大爆笑。それは賑やかな時間だった。  考えてみればMCUの開始は2008年。最近のアメコミ関連映画は観客の成長にも合わせ、大人に向けたものが増えてきたと思う。 近作で言えば「シビル・ウォー」「ドクター・ストレンジ」。やはり子供というよりは大人が楽しめるような作風である。日本では公開順が前後したが、同じアメコミ枠の「ローガン」などそもそもR指定、子供は見ちゃダメである。  実は本作には別れ、裏切りなど暗いキーワードが多く、陰鬱な物語に成り得たかもしれない。しかし底抜けに明るいキャラとご機嫌な音楽、子供にも届きやすいメッセージが絶妙に折り重なって、笑って泣ける冒険活劇として成立していた。 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」であること。続編を作る上で、そういう当たり前だが大事で難しい部分が上手く表現できていたと思う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-05-11 18:20:46)(良:4票)
100.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
アイアンマンがキャップと殴り合い、スーパーマンはバットマンと競い合ってるんですから…そりゃハリウッドゴジラにもそれ相応の相手が必要でしょう。  今後、ハリウッドではスター怪獣同士がぶつかり合う大作の制作が予定されている。そこで相見えるのがゴジラと、本作に登場するコングというワケだ。(今作にもムートーなどのいくつかのキーワードが登場する) そのため今回、PJ監督の「キングコング」以来の復活を果たしたキングコングは、過去最大級の規格外モンスターとして描かれている。立ち姿も以前のゴリラ然としたものから、シュッとした感じに変わって、時には武器をも使う器用さを見せる。そしてデカい、とにかくデカい。さらに相変わらず女性に対してはジェントル。  ストーリーは至極単純ながら、怪獣が出てくるまでが早く、とても潔い造り。あれよあれよという間にメイン舞台のスカルアイランド入りだ。「怪獣だらけの島からの脱出」という明快なコンセプトを楽しもうとする観客にとって、お涙頂戴ドラマの描写がどれほど野暮なものかをよく分かっている。こういった振り切り具合は素晴らしい。  また人間側もサミュエル・L・ジャクソンがやけに頑張っているため、キャラ立ち・濃さは十分。最近出演作は多いものの、黒幕とか上司役とかで体を動かす機会の少なかったサミュエル先輩が、楽しそうに体を張ったイカれ演技をしているのが良い。 WW2から戦いつづけているという兵士も、怪しげで如何わしい独特の雰囲気をこの作品に加味している。 けっこうな数の人間が出演するが、終わってみれば殆どキャラが立っていた。やはり見せ方や死に方(死なせ方)がうまく機能していたということだろう。   70年代の世相や雰囲気もいいスパイスになっていて、味のある映画に仕上がっていたと思う。 ベトナムで撮影したという映像も、よくこんな場所があったなと思うほどこの世界観にピッタリだ。(ちなみにベトナムでのプレミア時に巨大コング人形が燃えるというハプニングがあった) クロスオーバーやら対決モノの弊害というか、企画の為だけにあつらえられた映画になっていたら嫌だなと思ったが、そんな心配は杞憂だった。本作でコングの雄姿を見届け、しっかりと次の闘いに備えられるような作品になっている。  以下余談ですが。 なぜかタコが食べたくなりますね。 なんででしょう。コングが捕食したタコがいい感じに茹で上がった色してたからすかね。どうでもいいですよね。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-03-20 13:18:42)
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