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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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81.  女狙撃兵マリュートカ 《ネタバレ》 
チュフライの傑作の一つ。 「誓いの休暇」も冒頭から“狙撃”でキッカケを掴む映画だったが、本作は狙撃に始まり狙撃に終わる。 波がうねる海原、海から砂漠に場面は移る。まるで猛吹雪の雪山のように白い砂漠を歩き続ける。砂の斜面、敵影を見つけてを迎撃態勢、走り去ろうとする敵兵を次々と狙撃していく。 兵士としての厳しい表情、彼女の呼びかけとともに指揮官が起き上がり、寝ていたい兵士たちが駆けだす!神に祈りを捧げ、遠くを進む黒い影を追跡する。指揮官はモーゼル拳銃をサーベルのように振り回して部隊を引っ張る。 駱駝は移動手段であり盾となる、長距離での撃ち合い、銃は降伏の旗や墓標・助けを呼ぶための合図。戦利品となる駱駝や情報。  たき火、夢の中に見る故郷の思い出、仲間の死、指揮官の思いやり、捕虜を連れながらの厳しい行軍、熱風が吹きすさぶ中で倒れていく兵士たち、銃を打ち捨て嘆く者も出てくる。 そんな彼らを祝福するように拡がる海原!兵士たちの表情に安堵が。 「アラビアのロレンス」が砂の海原を突き進んだ末に本物の海に辿り着いたように(映画としてはコチラが先か)。 砂漠の民に出迎えられての宴会。捕虜も一緒に宴会を楽しみ、束縛の縄を見て「ああそうだったね」という顔をするのが面白い。戦争の厳しさを忘れられる安らぎ。  会話を重ねる内に捕虜と良い雰囲気になっていく彼女、手紙、裁縫。手紙を高らかに読んでその声で目が覚めそうになる仲間、それをみて声を小さくするやり取りが微笑ましい。  浜辺で見つける船、嵐、砂漠にはなかった雨風の嵐の恐怖、無人島に二人っきりで泣き叫び弱音を見せる彼女、無人の小屋、一枚一枚服を恥ずかしそうに脱ぐ様子。味方ならともかく、相手は敵だ。 女の表情、濡れてとかれた髪、彼女の背中と投げ出された脚がエロい。荒々しくうねる海原、看病を通してどんどんデレていくマリュートカが可愛い。 彼女たちが世話になった集落にも拡がる戦火、炎のゆらめきが海の煌めきに、男の語りを彼女は黙って聞き入る。浜辺でキャッキャッウフフ。  そして訪れる最後の“狙撃”。
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-30 15:44:39)
82.  淑女は何を忘れたか 《ネタバレ》 
小津のトーキー初期のほのぼのとしたコメディ映画。コメディと言ってもほんのちょっと「クスッ」としてしまう感覚。ルビッチ風味のやり取りを積み重ねていくのが面白い。 車、大きなタイヤを覆うカバー、車から降りてきた毛皮をまとう成金女。ボールで壁当てして遊んでいる子供と会話。  囲炉裏を囲んで主婦の談笑、「ちっ」、「ちぇっ」、「ほっほっほっほっ」。冒頭8分の軽快さが素晴らしい。  小腹がすいたからうなぎを頂戴、ご飯と別々にねって贅沢だなオイ。  大学の先生、講義 居眠り男への扱いが面白い、関西弁を喋る娘、嫁入り前でも吸いたい煙草、強制的に家庭教師を頼まれる。  「地球の面積」の話をしていたらデッカい地球儀を持ってくる子供にクスッとなる。大学の兄さんよりも子供の方が賢いのが面白い。ジェネレーションギャップ、子供たちなりの励ましソング、「こんがらがっちゃダメよ♪」。  歌を歌いながら地球儀を回して国の名前を当てっこ、北極は国じゃねえwwえ?国じゃなくて地名当て?   フェンシングの剣でのやり取り、ドクトル呼び、並べられたコーヒーカップ。 歌舞伎の見物は「麦秋」のように徹底的に見せないパターン。歌舞伎を見る客の表情や後姿のみが映される。  それを待つ女たち、芸者を見に行く人々の表情、芸者の舞いは映るのに歌舞伎は何故に映されないのだろうか。延々と舞いを映すのは「鏡獅子(菊五郎の鏡獅子)」を思い出す退屈さ。  観客「もういいよ」   芸者たちと酒を飲みかわす、財布の交換、頭痛い→額に手をやって「風邪かな?」、単に酔っぱらったとちゃうんか、姪のワガママに付き合う叔父さんが優しすぎて泣いた。  叔母さんもカンカン、後を追いかけて問い詰める、雨の降る朝食、酔ってて叔母さんの声も覚えていない。この後のやり取りが特に面白い。叔母さんが来たら説教のフリ、腹を小突く姪にワロタ。嫁に頭が上がらない夫が可愛い。  手紙でバレる嘘、説教を受ける叔父、叔父をたちを助ける姪の嘘、叔母さんも話友達との気晴らしの会話でストレス発散、叔母さんを騙して脱出する叔父さんたち。コイツら・・・w 叔父さん?ドクトル?オッサン?叔父公!姪に押されて叔父さんもアタック(物理)。叔母さんは「何でアタシがぶたれないけんの」という驚きの顔、「ちょっとやりすぎたかなー」という後悔の顔をする叔父さん。優しすぎるぜ叔父さん。 二人の女の間で板挟みの叔父さん、一応謝る姪、叔父さんも謝る、巻き込まれる岡田涙目。むしろ殴ってくれる方がが良いらしい、静かに笑うお父さんの姿、時計の音とともに夜が訪れ、コーヒーの支度をする妻の姿をロングショットで捉えて物語は終わる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-28 16:58:47)
83.  太陽を盗んだ男 《ネタバレ》 
「原爆」をテーマにした日本映画では「ゴジラ」に並ぶ傑作だと思う。  時計の音、原爆の実験、爆発、日の出、双眼鏡が覗く原発。  その光景とは打って変わって満員電車で大あくびをする城戸。「風船ガム」の仇名で呼ばれる教師、風船ガムは原爆の暗示? 休み時間は一人で壁当て、フェンスを雄叫びをあげながらよじ登る。男はいつそのエネルギーを爆発させるかその機会を待っていた。  家にギッシリと詰め込まれた野望の塊。 機材の山、出入りする猫に殺虫剤をかけて気絶させてしまう!飛び交う蚊が季節を語る。猫の次は警官をシュッー!   男が牙を研いでいる間に鬱憤を爆発させてしまったバスジャック犯。 修学旅行、機銃と手榴弾で乗り込んでくるオッサン、皇居に手榴弾wwwすげえ映画だな。序盤20分の強烈さ。   そこで山下警部こと菅原文太の兄貴の登場だ!「県警察vs組織暴力」の刑事役もメッチャ良いんだよなあ。 武器を置いてたった二人で乗り込んでいく、隙は絶対に見逃さない、男だけサークルを組むように連れて行く、“約束どおり”狙いをつける狙撃手、捨て身の行動。どんな奴だろうと怪我人は怪我人・・・カッコイイ。   それが城戸にとっての“起爆装置”だったのかも知れない。ひたすら原爆作りに打ち込むシークエンスを淡々と積んでいく描写。  原爆実験の様子、肉体改造、ベランダの塀の上でイメージトレーニング、何処までもスリルを追い求める狂気。 マスクを被り、潜水服に身を包み、海を泳ぎ、容易に侵入してしまう! 監視カメラだけが見た原子炉の棒を抜く瞬間の緊張、警備員たちとの戦闘。  発電機の爆破、想像以上に厳重(笑)、授業内容もどんどんおかしな方向に向かっていく。  のんきなラジオ、「鉄腕アトム」の歌とともに手作りの防護服、液体、放射能測定器、小さな小さな原爆製造工場、誰も立ち入れない猫でさえ。  ビールを飲み、TVを見ながら原爆を作っていく。その油断と爆発、そして彼も「被爆者」となってしまう。瞬間的に放射能を吹き出す事を物語る針、針、針。 完成までの作業もほぼ無言で続けられる。生まれたての汚れた鉄球がナイフで削られて磨き上げられ、不気味な光沢を帯びていく。 作ったものよりも失ったものの方が大きい。ぬこおおおっ! まさかの梅干しは“フェイク”、粘土、電池。一人で盛り上がる有頂天、ガイガーカウンターをマイク代わりに舞い上がる。   残り1時間30分は警察との手に汗握る駆け引き。 幾度もあらわれる太陽のイメージ、あえて爆弾を置いていく挑戦、現物による脅し。  腹の中に抱えたとんでもない爆弾、易々と国会に侵入、易々と監視、口調による攪乱、ボイススクランブラー。  9つ目の核所有“国”、ぽとりと落ちる髪の毛が肉体を蝕む放射能の恐怖を語る、爆弾を転がして子供のように、いや愛した猫のように遊ぶ。 パーティーで親交を深めた過去、屋上で座り込んで話し合う交渉決裂、両手で掴んでさりげなく胸にタッチ、いつの間にか接点を持つ人々。  延々とついてくるディスクジョッキーと口づけを交わす、海辺、女も見る抜けた髪の毛、サングラスという仮面、したたる歯茎の血。   デパートでの追走劇も熱い。 電話線をカットする、覚悟、机の下、札の雨、警官もヤケクソ、あふれ出る人の津波、徐々に放射能に侵されていく肉体。   奪還ターザンで大暴れ、カーチェイスをラジオ中継、「勝手にしろ(勝手にしやがれ)」、諦めない文太の兄貴は不死身だ!ヘリに捕まりながら執念の追跡!  残り20分のラストバトル。  プールを地獄にかえる破片、新聞に隠された凶器、手錠つけると捕まったヤクザにしか見えねえ兄貴、嘔吐の隙に掴む起死回生の武器、屋上での綱引き、どっちも身も心もボロボロだ。   「さあ・・・いくぞお9番」 嘘だろ・・・まだ手がピクピクしてるぜ。音だけが語る結末・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-14 13:43:58)(良:1票)
84.  ロイドの化物屋敷 《ネタバレ》 
「ロイドの化物屋敷(化物退治)」。 ハロルド・ロイド主演の愉快な短編。屋敷、ホール、使用人、鳥や子豚といった動物と戯れる少女、ところ変わってテニス場、イスに座っていた女性が立つとそこにロイドが登場www唖然とするロイド。その面をしたいのは俺らだw 男とロイドによる女性の奪い合い、足をつまづかせたり髪を引っ張ったりひっぱたいたり、それを宥める女性。 分かれ道で再びめぐり合い、競争、一声であふれ出てくる使用人たち、あっという間に担ぎ上げて部屋から流されていく、机や人を飛び越えるアクロバティックさ!  意地でも自殺したいロイドの思惑は相次ぐ奇跡によって阻止される。 剣を持った男がいるわ、拳銃が落ちているわ、こめかみに銃を撃とうとするわ、迫る路面電車の前に立ち「僕は死にまシェーン」状態だわ、電車の神回避、水中自殺もできない浅さ、飛び込もうとする男を止める煙草の火を要求したり時間を聞いたりする男たち、落ちた先に船が通りかかる、車の神停車。  急に走り出して人を轢きそうになる車、本当に危ねえなーこの映画(褒め言葉)。鶏につつかれるので餌をやって自分も食べる、今度はアヒルがつついてくるので荷物でガード。いいから前見て走れ!鳥も神回避。  16分を過ぎてやっと「HAUNTED SPOOKS」らしい雰囲気に。ドタバタが楽しい。 屋敷を覆う暗闇、雷鳴、使用人たちも何か楽しそう、ガクブルの脚、脚、脚、階段を上る白い何か!震えすぎて踊っているようにしか見えない。 布をかぶった何かが一人でに動く、子供が可愛い、猫に驚かされて子供が粉入れに突っ込んでしまって真っ白に、みんな狂ったように驚いて隠れる。 点滅する電気、ちょくちょく現れる白い何か、影のシルエットが悪魔のよう、似たものどうしが驚きあう、剣を抜いて痛みでぎゃー、ロイドまでド髪天!
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 13:39:49)
85.  ダイナマイトどんどん 《ネタバレ》 
個人的に喜八映画で一番好きな作品。 終戦から5年後の夏。汗だくの男たちが、何かを合図に支度をすませる。トラックを待ち受け、店に隠された銃を、刀を抜き放って襲い掛かる!ジープを奪って挑発。 市場を破壊する追走劇、待ち伏せ、機銃、花火、ダイナマイトでホームランじゃあっー! ドッカーン!    ヤクザ同士の会合、組長の翻訳、市街地でおにごっこ、股間に何かを隠す、場数踏んでそうな女主人、塩まいて、指でテクテクカウンターの上を歩く仕草が可愛い。    非合法な殺し合いの場が合法な野球の場に、婦人野球(パンパン)、元野球選手の鬼コーチ、命(タマ)の取り合いから球の取り合い&金玉の潰し合い、だが体を張ってボールを受け止める命がけ。何事も本気でやれば最高の仕事にしてしまうプロフェッショナル魂。  歌で士気をあげる、本当に暴れだす、掛け声で士気をあげろ!「ダイナマイツ~ どん どん」 先攻後攻が丁で決定。  旦那と対峙、ナイフ投げ、裏では博徒、泥酔ピッチャー、ひらがなや漢字、数字が混ざる背番号、思わぬ再会、挑発しまくって真意を確かめる、指の使い方、監督の手の古傷、ピッチャーの指が示す過去、それぞれの心に刻まれた傷跡。   練習投球から試合へ、今までの仕返しにボッコボコ、ツンデレ。  「原爆ピッチャー」って不謹慎にもほどがあるわwww NGワード:指  雨の中の死闘、シャベルや鍬をとっての殴り合い、さりげなく傘をやる任侠。  野球で命の賭け合いに、敵球団のスカウト。  こしらえた着物、唐突に現れる母ちゃんの遺影、殴り込みに行く馬鹿2人・・・おい野球しろよ。 ※ご覧の映画は「ダイナマイトどんどん」です  ダイナミック不祥事!その格好で銃を持つなwww あくまで野球で蹴りをつけてやるぜという心意気。もしくは単なるご都合主義(ry   扉が思いきっりオープン、着物をそっと肩にかけ、電気を消して去っていく。肩の刺青が物語る愛情。   デッドボールの応酬、ボールを持って殴り合い、乱闘寸前、「ばかもん!」「ばけもん!」複数のルールブック、アンパイア死亡、銀次なりの償い、守備妨害。  ヌードになる必要はあるのだろうか、ベースは盾、MPもブチギレ、修羅場に慣れてきた審判。  打球が、バットが、グローブが、血潮が、ありとあらゆるものが宙を舞う大乱闘!その後に両雄が再び顔を合わせるクライマックスが良い。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-14 13:37:32)(良:1票)
86.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 
動から始まる「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」、静から始まる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」。 「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」に対してアクションは少ないが、多彩な登場人物の魅力と突然襲い掛かる恐怖はコチラの方が上かも知れない(もちろん撃ちまくる「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」も大好きです)。  一本の道を走ってくる一台の車、不気味な音楽。  車は道から墓場で止まる、男と女の会話、ラジオ、ドアを開けて一人ずつ車から降りていく。不気味に拡がる木の枝、葉。  白黒の簡素さが余計に恐怖を増大させる、墓参り、雷、くもり空。   6分を過ぎた辺りから恐怖は加速する。 ゾンビのように突然現れ襲い掛かる謎の男、走る走る走る!   倒れざまに墓に頭を打ち付けられる、他に誰もいない墓場での追いかけっこ、車にこもる、女は運転の仕方を知らないか単にパニックに陥っているのか、窓を割り伸びる手。  入口が木によって塞がれる、車を捨てて全速力で駆け出す、最寄の建物を探してまた走る走る走る、密室に逃げ込む、部屋には誰もいない、不気味な剥製。  陽が落ちる外、ぞろぞろと同類が集まってくる、とっさに掴むナイフ、階段を上った先で見た絶望、扉の先で出会った希望。滴り落ちる血、遺体を幾度も引きづる事になる地獄。  ライトを割る、何度もバールを打ち付ける、突き刺す、何かに引き寄せられるように次々と家の中に入ってくる群集の恐怖、遺体は火をつける事で壁になり、ゾンビは火に弱いらしい事がアクションだけで説明される。  バリケード、電気はまだ通っている=まだ人類は生き残っているという淡い希望、家の中から武器を探す、女も恐怖に抗うための戦いを始めていく、外から入ってくる情報によって彼らの籠城戦はより深刻なものになっていく。   落ち着いて互いの事を話し合う平穏、家族の死が信じられずに泣き叫ぶ、気を失った彼女をソファに寝かせ窮屈そうなコートをはだけさせる優しさ。  ラジオを聞きながら黙々と要塞にしていく、救助を信じて灯す暖炉、予想だにしないドアの発見、ドアから見つける武器。   扉に隠されていたものの“登場”によって、警戒心がとけはじめた事を物語る。同じ人間すら信じきれない恐怖。 窓から突然現れる恐怖、撃たれたゾンビの反応が物語る彼らにとっての急所、ゾンビは何でもかんでも貪る。  非常時とはいえ自分の家をメチャクチャにされてご立腹、ラジオ→テレビ。 脱出するための作戦開始!火を投げ込み、隙をついて奪取、行き先を見守る視点。心を失ったが故に手ごわいゾンビ、心があるが故にもろい人間。 アクシデント、燃料、焼けただれた遺体からすら肉を探して食べる、狂気も正気もないあるのはただ「食う」という本能。  電気が消える事で外との繋がりが絶たれた事を物語る、燃え尽きた遺体、極限状態で破滅へと向かっていく人間たち。自分の命欲しさ故に。   かぎ爪という人として扱われない衝撃的な結末。写真と火葬が語るのみ・・・。 
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 13:35:33)(良:1票)
87.  ビッグ・パレード 《ネタバレ》 
反戦のメッセージを込めた戦争映画の傑作であり、前半1時間はヴィダーらしいメロドラマとして面白おかしく過ぎていく。後半1時間は戦場における殺し合いへ。 ラオール・ウォルシュの「栄光」も女を取り合う軽妙な光景から殺伐とした戦争の光景へと切り替わっていた。  町、工場、溶鉱炉、ビルの建設現場。この何気ない風景が後の「摩天楼」へ、髭を剃る黒人の姿が「ハレルヤ」へと繋がっていくのだろうか。    煙を噴き上げる音、煙、煙、煙の噴出と新聞が知らせる戦争の足音。玄関先での別れの挨拶、戦場に行く人々を見送るパレードはお祭り騒ぎ。  入隊したての行進が戦場への行進へ。行進を見送る群衆、油断すればすぐ泥の中、穴掘り、穴倉作り、婦人とのやり取り、女目当てでやる気UPは良いが上官に土をブチまける勢いはやりすぎw  送られてきた食い物、雑にちぎりながら仲良く食べ合う、川で洗濯子供たちと空の樽を追いかけて遊ぶ、樽をかぶっての運命の出会い。  穴から覗いて挨拶、ほどけたゲートルが語るもの、川から水を組んでシャワーにデート、次々とナンパしにくる仲間たちは食事のラッパの音で慌てて戻っていく。そりゃあんな魅力的な谷間の女性(ry   チューインガム、兵士たちの余興、酔っ払い、靴を磨いていたら藁が山のように落ちてくるシーンに爆笑、サーベルを振り回す元気な爺さん。  酒蔵に侵入して飲みまくる仲間、揉みくちゃ、犯人に間違えられ大慌て、酔いすぎて船で逃げるフリ。そこは土の上だぜ酔っ払いども、大騒動に乗じて逃げる若き恋人たち。   故郷からの手紙、写真、間違えて上官を蹴ってしまうやり取り、階級章、違う手紙、お礼言われちゃったよ・・・。    ジープが知らせる風雲急・蝋燭を消し町の人々との別れを惜しみながら去っていく、群衆が流れていく最後の口づけ。  「必ず生きて帰る!忘れないよ!」足にしがみついてまで惜しむ、鎖、靴や時計を投げ残す、ジープが延々と連なるスペクタクル!   いよいよ戦場だ。 前線へ!前線へ!軍用機たちが空を駆け抜ける!  行進中の兵士たちに襲い掛かる機銃掃射、地上からも応戦、負傷して脱落できた奴らはまだ幸せさ。   銃剣をつけて敵が待ち構えるであろう森を突き進む。道を駆け抜けるバイク、地面に転がる死体、後ろで静かに散っていく仲間たち、狙撃の恐怖。   機関銃が淡々と殺していく、手榴弾、砲弾が飛び交い森が消し飛んだ最前線、ガスの気配に気づいて急いでガスマスクをするスリル。  戦車、見えてきた塹壕、夜中に複葉機が飛ぶ恐怖、挑発、砲撃に怯えながら塹壕で食事をする最後の団欒、銃剣で的を作って的当て、“死番”。  照明弾が照らす黒い影、奇襲、仲間の死が恐怖を打ち消す、死への直行、絶叫、暗闇で表情を見て殺せなくなる、灯りが見えないように煙草の火をつける。   闇の中への突撃、砲弾の雨、激しい閃光・・・まるで悪夢から目が覚めるように目覚める。蠅が顔を覆い、隣には怪我に苦しむ戦友たち。   町を去っていく人々、廃墟になった市街地で叫んでも返ってこない愛する人の声、そこになだれ込む軍隊、砲撃、過去の思い出。  畑仕事、残していったチューインガム・・・残った思いでもやがて口の中に溶けて消えていく。山の上に現れた人影、胸のざわめきで思わず駆け出す姿・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 13:26:53)(良:1票)
88.  ハナ子さん 《ネタバレ》 
フィルムセンターで鑑賞。  序盤は「撃ちてし止まむ」の文字が戦中を感じさせるのみ。 東宝舞踊隊による円を組んでの華やかな演目、上からの視点で花のように目まぐるしく運動を続けるのはバーレスク映画の流れを組むリズミカルな演出。 そして浮かぶ「ハナコサン」の文字。  ミュージカルコメディの要領で家族紹介、当時連載していた漫画が原作だから余計にコミカルだ。  軍歌や戦時歌謡が面白おかしく替え歌にされてしまう。 漫画?戦意高揚?銃後?隣組?こんな楽しい映画じゃ戦争で人殺す気なくなるわwww焦げた釜を持ってきて指示を仰ぐシーンに爆笑。  犬をしっし、子供たちの合唱、道を自転車で駆け抜けながら歌いながら空襲前の街並みを駆け抜ける、馬の調教場、夫婦でブランコならぬ懸垂でブラブラ、リンゴを投げてキャッキャッウフフ。これ本当に戦前ですか。冗談キツイですぜ(褒め言葉)。   マキノが撮っていた戦争映画の数々も良い意味で馬鹿馬鹿しいのが多い。戦時下でも明るい映画で少しでも人々を元気にしてやりたい。それがマキノの心意気だった。 ただ、俺はこの映画のラスト10分に暗い戦争の足音を感じてならない。   ススキが茂る原っぱで歌う、家族の団欒、人々が見守る二人のデュエット、電話の会話、「おめでとう~」  早く結婚させたい家族、ラジオ体操、人々が行き交う、まだスカートや洋服の人も多かった光景が興味深い。  お灸責めで攻撃(物理)!クソワロタwwwお父さん涙目。 音楽に合わせてムシャムシャ食べるのは「弥次喜多道中記」や「鴛鴦歌合戦」から続く見事さ。時計までwww音楽に合わせて料理、体操の要領で掃除と楽しくてしょうがない。  轟夕起子の「ねーねー」が何か可愛い。顔を覆って嬉しそうに「きゃっ!」 「限りなき前進」の頃と比べると可憐というほどにはいかないが、このはつらつとした演技!「姿三四郎」とはまるで別人だ。流石正博の嫁。「續清水港(清水港代参夢道中)」の夕起子も良かった。若き高峰秀子も可憐です。  帰った矢先にかくれんぼと出くわす、謎貯金システム、「赤ちゃん生まれないの?」「まーだだよ」「おかしいわ」この流れ最高。ごっちゃ混ぜの面白さ。  犬をどかっと置く感じが良い、みんなでハイキング、この後嫌でも痩せたであろうデブの父さん、「グー」じゃねえよwww  再び舞踊隊の華麗な演目、そして衣装とはいえこの時期に短いスカートで踊りまくる(要はパンチラ)シーンがあるなんてビックリ。何度でも言ってやるぞ戦前なんて信じらんねえ!   そして50分経ってようやく国民服姿に。いよいよ戦争の足音が近づく。月月火水木金金、この頃は三国同盟って言ったら楽観視できただろうね、防火訓練が愉快な音楽とともに馬鹿馬鹿しく描かれるのは後の惨状を考えるとあまりに滑稽に見える。  高射砲、空襲、おもちゃの戦車、ラスト10分の暗さ。遠くで爆音が響き笑うに笑えなくなる。人々が大勢死に行くであろうご時世に赤ん坊の誕生をみんなで祝うなんて何かせつない。  さっきの舞踏隊が階段を降りたり舞台を行進していく。いよいよ出兵か。兵隊たちのパレード。 飛行機の模型、まるで旅行に出るかのように明るく見送るしかない、おかめのお面。検閲が入る前は面をつけた彼女が泣くというシーンだったとか(仮面の下の涙をぬぐえ)。検閲官の悪魔めがっ!!!!! この事に関してはマキノの自伝「映画渡世 地の巻」が詳しいです。 空を飛んでいく飛行機たち、戦場に行く前の最後の団欒、息子と戯れるシーンの静けさ。  でんぐり返しであっかんべえ、仮面を頭の後ろにつけて笑顔で踊る姿も何処か悲しい、音楽も悲しげに響く、ススキの茂る中に消えていく人々・・・。
[映画館(邦画)] 9点(2015-07-14 13:15:41)
89.   《ネタバレ》 
「簪(かんざし)」。題名にもそう書いてあるのに肝心の“簪”はまったく映されない。 「按摩と女」を思い出す部分が多い。林道を歩くシーンからはじまりとにかくテンポが良いし面白い。夏に見たくなる傑作だ。特にスリリングなリハビリ風景は見物だ。  芸人?たちがズンチャカズンチャカ賑やかに歩いてくる。ロングショットで捉える視線、日差しが照りつける真夏の暑さ、林道の日陰の涼しそうな様子。  宿についてマッサージをしてくれる按摩目当てで人々もお祭り騒ぎ。きゃっきゃっきゃっきゃとうるせえww そういえば冒頭で語り合う二人というのも「按摩と女」だった。あの映画は按摩の男が二人、この映画は普通の女性が二人で、按摩は完全な脇役だ。 せっかく静かに本を読んでたのに騒ぎで怒るお父さん。 他の人は「賑やか」「五月蠅い」「景気が良い」「派手」と様々な捉え方、このやり取りを何回もやるのが笑える。「また怒られちゃった」    何度もかけられる電話、届く手紙、リハビリ風景。  フロントへの電話、女たちに独占されてやって来ない按摩さん、男どもの風呂浴びは水浴びのようにも見える(しかし野郎の入浴シーンばっかりだ)、「情緒が足の裏に突き刺さる」怪我。 「退屈しのぎに喋りたい」とはまさにこの映画を表すような一言。何かと五月蠅い父親。  簪の主から手紙、パーマに簪とかww まだ見ぬ女性に期待を寄せる男ども、なんつーデリカシーの欠片もない会話。よくもまあ奥さんがいる前でこんな会話をできるなコイツらわ。しかも美人の嫁の前で。 情緒的イリュージョンw  笠智衆と田中絹代の演技が本当に良い。嫌味ったらしくないというか、くどくないというか。清水宏の映画は良いなあ。「みかえりの塔」の笠智衆も良かった。  なんだか見合いでもさせるような雰囲気、足をひきずる男を手を取ってエスコート、服の違いで時間の経過を伝える。 リハビリに付き合う女性、木を目指す男を傘をさして不安そうに見守る女の視点。子供たちの声援、音楽までムードを引き立て無駄にサスペンスフル。松葉杖を置くのはどれくらい歩けたかを一目で判断するため。  子供たちの嫉妬が可愛い。木登りで距離を置く子供たちの主張をしっかり聞いてやるのが良い。男の姿がないので杖はしっかりと渡したらしい。 静かに囲碁をたしなむ、絶対に来ない按摩、幾度も書かれる手紙、いびきの競争とか五月蠅いことこの上ない。それを応援すんなww  「いびきかぁ五月蠅いなあ」 おまえが言うな。  朝の河原で体操、洗濯、水浴び、リハビリ再び。怪我でまだまっすぐに出来ないが、力強く大地を踏みしめる脚!   後半は戦争の足音が近づいているのが会話で語られる。 髪を下して涼む姿がちょっと色っポイ。こうして見るとおばさんてほど老けてないんだよね。まだ若々しさのある女性って感じ。  傘をさして原っぱで会話、日陰、「日に焼けた」と差し出す腕、何処か不安げな横顔は彼女を追うという男がここに来ないかどうか感じているのだろうか。 河に駆けられたまがりくねる橋、おじさんのリハビリを実況、意外と速い流れの上で必死にバランスを取る、見守る方も駆け寄りたいのを我慢する。どうしてこんなにもスリリングなリハビリ描写なんだろう。  男を女がおぶる力持ち、不安定な岩場を歩く脚。余計にスリリングだ。按摩にまで実況せんでいい! 隣の部屋では別の女性がすやすや寝ている、待ちくたびれた友人の艶かしさ。どうして着物はこんなに色っポイんだろう。  洗濯ものを取り込みかがんで泣き出してしまう、涙は顔を洗って拭う、冒頭の騒いでた娘たちが隣の部屋にまで来て「うるさあいっ!」お父さんのいびきもうるさあいっ!! 小声で「えい」と可愛い脅かし方。  クライマックスを飾る階段でのリハビリ。時間経過、一段一段確実に上っていく脚、大分まっすぐになってきた、リハビリの終わりは彼女との時間の終わりでもある。階段を一緒に上らず見守ってしまった心の距離。  一人寂しく男がリハビリをした道を歩いていく後姿・・・。 
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-12 14:01:36)
90.  家光と彦左 《ネタバレ》 
「長谷川・ロッパの家光と彦左」。フィルムセンターで鑑賞。 古川碌波と長谷川一夫の共演。この二人は「婦系圖(婦系図)」でも共演していたね。 いきなり将軍?を抱えて歩く彦左、時は戦国時代、爆発の中を人馬が駆け抜ける文字通りのスタートダッシュの素晴らしさ!  打ち捨てられた旗、ところ変わって江戸の城。 元気に遊ぶ子供たち、天高く舞う鞠、転んで泣いた友を励ます姿を見て「これが将軍争いをするのか」とでも思ったか哀しげな表情を見せる母親。 将軍争いの議論中の場にドカドカと現れ堅苦しさをブッ壊すように座る彦左。  目の前で切腹をしようと着物を脱ぎ始める。皮肉たっぷりの会話が面白い。振り返って遺言、命がけの進言、さっきまで生きるか死ぬだったのにすぐに馬になって遊びに付き合う切り替えの早さ!  時は流れて成長した家光。 田園風景の穏やかさと正反対な室内の暗さと重苦しさ、まさかの伊達正宗、かっぷくの良い正宗さんですこと。 彦左が現れると共に急に明るくなる室内。まるで灯でも灯したように。乱世の暴れ者は太平時の骨董品。上様も名君すぎて何か味気ない。  しばらくはこの静寂が続く。骨董品として静かに余生を過ごそうとしていた彦左のように。 本多忠勝をはじめ、平和になった時代に静かに亡くなっていった猛将も多かった。彦左もまたその一人に過ぎないのだろう。 仕事中の若を見守り「自分は邪魔かな」とでも言うように静かに去っていく孤独さが背中から滲み出る。 まるで孫の祖父と孫の母親のように茶を愉しみ話し合う。  30分を過ぎた辺りから物語は再び加速していく。ダダをこねた子供のように若に迫る爺や、それに「馬鹿!バカ!ばか!」と死んで欲しくないからこその「ばか」呼ばわり。爺やと若殿様のやり取りに和む。  そして爺やを元気にするための「茶番劇」のはじまりはじまり。 大広場の壇上で華麗な舞踊を披露する余興、身分なぞ知らんという具合に一緒に踊るのが良い。  ひょっとこお面を付けて踊り明かす、爺やも呆れながら踊りに巻き込まれ元気になっていく。お茶目な殿様は舌をだしながら「文武の道に励むであろう(嘘乙)」 襖の話を立ち聞きして彦左も段々と乗り気に。抜刀して手打ちという場面で「御随意に」の一言で本気じゃない事が解る表情をする。  斬られそうになる人涙目。コイツらゲラゲラ笑いやがってwwwwww   日光にお参りからは結構シリアスに。 闇夜に燃える提灯、嬉しくて嬉しくてしょうがない爺や。 そこに反旗をうかがう男たちの将軍争いは続く。彼らの「馬鹿」は家光たちの「ばか」とはちょっと違う、灯りでかろうじて照らせるような途方もない闇。それが広がる空間が素晴らしい。  地獄へお供いたします、闇の中に見えてくる希望の光。  行列に狙いをつけるように聳える城、日光での舞踊、合図と共に閉まってしまう重厚な扉、光も遮断する密室に変わる。もう本当に完全な暗闇で何が起きているのか解らない恐怖、かろうじて照らし出す強調する蝋燭の閃光。   これも「例のアレ」だと思ってしまう彦左。命がけの強硬手段も「良い芝居するなあ」くらいにしか思ってないんだろうな・・・w 本当にヤバイと思っている人と本気で芝居だと思っている人の温度差。武者姿の舞はブラフ、ギシギシと音を立てる屋根の不気味さ、蝋燭切ったら大爆破! 国を裏切れないが主君も裏切れない苦しみ。  思い出す戦国の修羅場、冒頭とは打って変わって今度は爺やの手を引いて歩く将軍。立派な真の名君へとなっていた。 「許しも待たず死ぬでないぞ」、田園に消えていく行列。
[映画館(邦画)] 9点(2015-07-12 13:56:29)
91.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
「だだっ広い砂漠をハイテンションで走ってブッ殺し合う」という光景が99%続くというだけでも最高に頭がおかしい(褒め言葉)のに、残り1%に凝縮されたドラマの輝きも眩しいったらありゃしない。  砂漠に一台の車、その横で黄昏る毛むくじゃらの男。男は何かに気付いたのか荷物を放り込んで乗り込み、砂漠を走り出す。口にサソリをほおばりながら!  それを追う雲霞の如きヒャッハーども、ひっくり返った車から這い出る男の脳裏に浮かぶ光景、女が車に追われる記憶がフラッシュバックし、男は狩りの得物として連行されていく。 髪を刈られ、ゴテゴテしたマスクを付けられ、肉体に文字を刻まれ、焼き鏝で“奴隷”にされかけ、ふざけんなと言わんばかりに野郎どもをブッ飛ばし、観客もこのワケの解らない状況からマックスが脱出してくれる事を祈りながら見届けるしかないのである。断崖に刻まれた巨大な髑髏の印を・・・。  ヒャッハーどもが巣食う砦を支配する狂気120%の王国。 頭をスキンヘッドにして濃いアイシャドウ(メイクは頭の上まで染まる者も)をほどこし、異様に白い肌をした兵士たち。それを指揮する者は髪もフサフサで格好も自由自在。彼らは強烈な個性によって同一化した集団を統率する。 その上に立つイモータン・ジョーはもっと異様だ。全身真っ白で長髪、腐敗していく肉体を隠すようにガラスの鎧と勲章、マスクで着飾る。彼等は肉体的障害を克服するために自らを狂気で駆り立てる。 砦の中ももの凄い。人間の母乳を集める搾乳機械、地下農園、戦車やバギーといった重武装のイカつい車両が走り回り、人々を狂気に駆り立てる太鼓やロックといった激しい音楽が響き、叫び続ける。  最下層で生きる人々は泥だらけになり、髑髏のマークを象った司令塔から一時的に放出される滝のような水でどうにか生きているようだ。一度の放出量は多いが、人々にとっては奪い合わなければならない一滴一滴。 マックスから抜かれる血も、マックスにとっては生きるか死ぬかの量だが、それを求める人々にはあまりに少ない量なのだろう。 首の後ろやトラックにまでびっしり刻まれた髑髏のマーク。たとえくたばって骨だけになっても彼等はこのマークから逃れられない。冗談じゃねえっ、何がなんでも生きてやらあ、逃げらんねえならソイツをブッ殺して自由をブン奪ってやらあっ!  大砂漠で幾度も繰り返される凄まじいカーチェイス、クラッシュ、大爆発! ジョン・フォードの「駅馬車」を思い出す爆走とアクロバティックさ、バスター・キートンの「セブン・チャンス」や「探偵学入門」を思い出すような素晴らしきクレイジー振り。 自然の渓谷は巨大な要塞や迷路となり、人々は音楽を大音量で奏で、顔にメイクを施して己を奮い立たせる。恐怖をブッ殺すために! ブービートラップ、一瞬の判断、夥しい車両が連なるスペクタクル、ハリネズミのような車や馬のように飛び跳ねるバイク、車両はぐしゃぐしゃに砕け散り、人間は投げ出され叩きつけられ落ちまくり、チェーンソーを振り回し、槍をブッ刺し、火炎放射器や火炎瓶や銃弾をブッ放しまくり、殴り蹴り合い、棒高跳びみたいな「何か」で飛び乗って大暴れ、散々殺りたい放題殺って、超巨大な砂嵐に大激突してくたばりまくる。 馬鹿デカい「エンブレム」と化したマックスは観客と一緒にひたすら地獄を見守りチャンスを待ち続ける。いや、ニュークスに選ばれた時点でマックスの運命は決まっていたのだろう。  砂嵐がマックスたちに与えるチャンスと出会いと殴り合い。謎の花嫁軍団、スポーツ刈りのイカしたトラックの姉ちゃん、ニュークスのように何処か憎めないヒャッハー軍団との楽しい楽しい鬼ごっこ、マックスたちを助けるバイクの似合う黒髪姉ちゃんと婆ちゃんズ。  遠くに見える都市の光景が、マックスたちに追っ手が迫る緊張を持続させる。 彼女たちを縛っていた奴隷の紋章を足蹴にし、鎖を何度も切断し、マスクを投げ捨て、車の中に隠してあった武器を片っ端から集めて撃って刺してブッ放す。奴隷から“人間”になるために。 一人の女性を、一人の赤ん坊の命を巡って繰り広げられる利害の一致と団結、殺し合い。体を張って自ら盾となる命懸けの戦い。 女たちは仲間や子供のために男どもをぶん殴り、子供をあやす母親のように励ます。男たちもそれに応えて命を賭ける。  星空が闇夜を青く染める不気味さ、雨でぬかるんだ大地が何度もトラックを止めるスリル、「007 ロシアより愛をこめて」を思い出す肩越しの狙撃、霧の向こうの爆発が物語る決着。砂漠の海原に消えていく叫び、星空と流れ星が戦士たちの心を潤す。  最後の最後までこの映画は全力で駆け続け、再び戻ってくる。そして男はまたあてのない荒野へと去っていく・・・。
[映画館(字幕)] 9点(2015-07-06 21:01:36)(良:1票)
92.  新幹線大爆破 《ネタバレ》 
和製パニック映画の傑作。 後にヤン・デ・ポンが「スピード」という共通点の多い映画を撮ったが、あの映画で失われてしまった“スピード”の恐怖がこの映画にはある。スピードによって狂う人々の、速度を落としすぎれば木端微塵に吹っ飛ぶというスリルが! それにスピードが速まっていく恐怖。車両だけでなく導火線やガスの音までそのスリルを醸し出す。  冒頭からシークエンスを重ねていく様子がスリリングで面白い。 夜、煙草を吸い、人目のなくなった列車の下に何かをゴソゴソと仕掛ける男。 仕事を終えた男は、仲間らしき男に電話をかける。公衆電話が時代を感じさせるが、10円を入れ続けなければ電話が切れてしまう・中断してしまうという緊張。  決行当日の朝。階段ですれ違う男との無言のやり取り、列車に乗り込んでいく人質たちの会話が、後の緊張を盛り上げる。男たちの計画に参加する者の不穏な空気。  そして1本の電話によってテロ事件が、オープニングが、この映画が動き出す。  爆弾が何処に・何個あるのか解らない恐怖。客がそれを知ればパニックに、機関車乗りたちの決死の行動が示す爆弾の恐ろしさ、猛スピードで走る新幹線で同じ脱出はできない、密室状態(回送)で徐々にパニックになっていく人々、時計代わりのストップウォッチ、迫る列車によって決断を迫られる人々、安全装置や別の車両が爆弾の「起爆装置」になりかねない恐怖、分岐点でのすれ違い、スピードを殺せない状況でのブレーキの使い方・・・1分1分が濃い。  犯人の要求の仕方が面白い。円ではなくドルという単位の真意、「千数百人の乗客の命代に比べたら、遥かに安い要求じゃないか」の言葉。 日本政府を相手にたった数人の連携で戦いに挑むのだ。犯人たちの素性が明らかになるにつれて、観客は犯人たちに感情移入していく。あの回想は卑怯だ。自分の目の前で・・・。  犯人、鉄道員、警察どうしの葛藤も面白い。恐慌状態が人間の醜さを炙り出す。募る苛立ち、ある赤ん坊を抱えた妊婦は我が子を思うばかりにパニックに陥る。女を殴るのは母親と赤ん坊の命を死なせたくないから。それに比べて仕事命で他人どころじゃない人々、ジャーナルストは興味本位で、犯人は人々が慌てる様子を楽しんで見守る。 パニックが1本のアナウンスで収まる内はまだいい。緊急停止装置をめぐる恐怖、チャンスを待つ犯人、車掌の対応も時間の問題だ。  船上という密室、それを追跡する複数の視点。受取人が金を落とさないか、思わぬ援軍、バイクとパトカーの追跡、市街地での追跡。やっと掴んだ手掛かりは同時に人質や警察の首も絞めにかかる。バイクに乗るのは複数の公衆電話で尻尾を掴ませないため。ビル、橋の上、路上と視点がどんどん低くなっていく駆け引き。  “忘れ物”による攪乱、仲間の後退を確認して情報を地獄まで持っていく散り様、パスポートと死者への手向け。  密室から密室への受け渡し、迫る障害物、車両下での作業・・・1500人の、小さな命の、一人一人の命の重さがのしかかる。たとえ最後の一人になろうとも・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-26 22:23:23)
93.  黒い雨 《ネタバレ》 
どうでもいい事だが、自分は井伏鱒二の原作を読んで一週間うなされた経験を持つ。あの凄まじさがこの映画でも完璧なまでに再現されていたら、自分はきっと一ヶ月はうなされていたかも知れない。  それでも、人々の挨拶から始まるオープニングからして不気味な静けさが漂う。嵐の前のような。 まばゆい閃光と共に夥しい窓ガラスが砕け散り、爆風によって一瞬にして路面電車から投げ出され叩きつけられる、遠距離から巨大なキノコ雲を見る瞬間の、川の上から市内に向かう瞬間の、黒い雨がぽつぽつと降ってくる瞬間の恐怖。 吹き飛ばされた女性がうめき声をあげる、火傷で顔が崩れる人々、倒壊しかけた家からの脱出、生き埋めになり屋根の中から瓦礫を投げて助けをこう(あるいわ気がふれてしまった)姿、黒焦げになった遺体が山積みになる市街地、防火水槽に体を突っ込んでいる黒焦げの死体、大火傷を負い腕から皮膚が垂れ下がる子供、その子供が「兄ちゃん・・・」と声を必死に張り上げて青年を呼び止める場面、変わり果てた姿になった子供がやっと弟だと解り抱きつく瞬間の残酷さ、黒焦げになって死んだ赤ん坊を抱きかかえる母親らしき女性、馬の遺体、川の水を飲んでそのまま死んでしまう人々、川を流れてくる多数の遺体、水の中から引き上げた魚(うなぎ?)が元気よく動く姿が異様に見える、引火して爆発する列車。こういった爆発が新たな火種となって広島は尚も焼き尽くされていったのだろう。トラックに積まれる遺体・・・こうして書いているのも恐ろしい映像ばかりだ。  だが、焦点は原爆の惨禍ではない。原爆後の、戦後の後遺症に襲われる人々の叫びや苦しみに重点が置かれる。戦場から帰ってきたタツが敵襲に怯える姿の恐怖、あの日の恐怖を思い出して泣き叫び、次々と後遺症によって死んでいく人々。娘の未来に絶望したのか、狂ったように「結婚するな」と繰り返す母親、それに何も出来ない無力さに打ちのめされる夫として・父親としての重松。  かつて原爆の惨禍と後遺症で苦しむ人々を描いた作品は幾つも存在する。 今村昌平のこの作品は戦後数十年だからこそ、あの日を直接経験しなかったからこそ描けた作品だが、今までの作品が描けなかった限界を超えているとは思えない。 確かに原爆後遺症で嘔吐するシーンや髪が抜けていくシーンは凄みを感じたし、デジタルニューマスター版のDVDに収録された矢須子のその後をカラーで描いた映像の強烈さ。  しかし、たどり着いた後に亡くなった会社の同僚の姿。顔は白い布で覆われているし、「黄色い水を吐いたとたんに死んでしまった」という事が口で語られるだけ、白い布の下をハッキリ見たのも彼らだけ。重松がお経を読み上げる場面も、遺体は既に燃え盛る炎の中であり、跡に残った白骨だけが静かに語る。 女性の裸にしても、新藤兼人の「原爆の子」が爆風で衣服を剥ぎ取られ乳房を丸出しにした女性を描く事で惨禍をより際立たせていたのに対し、この映画は女性の裸体はほとんど描写されない。女性たちが汚れた服を脱ぎ体を洗う場面も、首というより鎖骨から下は水につかり映されない。 冒頭の徹底的な描写に比べると、観客にその過程を見せない必然性は何なのだろう。重松がお経を頼まれる辺りから、物語は何処か抑圧に向かっていった気がする。  今村昌平はアニメ映画「はだしのゲン」の凄まじさを参考にしたそうだが、あくまで参考であり、物語は原爆で人生を狂わされた人々のやりきれない姿に心血が注がれる。抑圧された、誰にも理解されないかもしれない苦しみを。病院に運ばれる最愛の人の無事を祈る事しかできない、遠のく姿を見守る事しかできない無力さが・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-19 13:54:44)(良:1票)
94.  二十四時間の情事 《ネタバレ》 
「ヒロシマ・モナムール(広島、我が愛)」。  「君は何も見ていない」という言葉は、アラン・レネ自身の自問自答がこの映画に刻まれているのではないだろうか。 「夜と霧」がそうであったように、人が殺された“跡”とそれを記録したフィルムを通して見たにすぎない。直接あの惨状を見てはいないのだ、と。 レネが冒頭で原爆の惨状を伝えるフィルムとして関川秀雄の「ひろしま」を選らんだのも、あの日を経験した・あの日に家族や友人を失った者が大勢参加したフィルムだったからだろうか。岡田英次も「ひろしま」に出ていたのだから。  原爆資料館、被爆者を治療する映像、それを再現した映画が重なり、2人の男女が情事にふけながら広島の話をするのである。いや、話すのは広島にとって外部の人間であるエマニュエル・リヴァ。岡田英次はそれを黙って聞くように彼女の体を抱き続ける。人の死が刻まれた映像と共に二人は新しい生命が生まれる勢いで性交を続けるのである。 「夜と霧」が「死」だけの描かれたドキュメンタリーとして終わったならば、この映画は「死」の次にある「生」を交えながら描こうとしたのだろうか。 さすがにあれだけズッコンバッコンされると平手打ちどころじゃないけど。岡田英次もちょっと殴りたくなったわ。  2人の男女は心の中に戦争の傷跡、見えない傷が刻まれている。家族を失った男、最愛の恋人を失った女。2人は共通の痛みで接近するし、また完全な理解者にはなれないだろうという心の距離も置いている。自分の故郷にいる岡田英次は尚更だ。それは英次にとってもリヴァの過去を知らないという問題が出てくる。  リヴァもまた自分の愛した軍人と、軍人として生きていた英次の境遇を重ねているだけ。同情?興味本位?疑問が浮かぶ関係の二人は心の底から愛し合っていない。冒頭で二人の肌を覆う灰?のような粉が消えていくのは表面上の事に過ぎない。  広島のデモ行進で呼び起される彼女の記憶・「手」に刻まれた忘れることのできない記憶。冒頭シーンからして手、手、手が映される。 広島が変わりゆく街並みの中で「あの日の惨劇を絶対に忘れるものか」といたるところで叫ぶように(デモのプラカード、写真や絵まで混ざる遺影の生々しさ、被爆した人間のようなメイクを施して祭りを見物する人々、メイクで背中の火傷を再現する描写など)、女も英次に恋人の面影を狂ったように求め始める。  リヴァが悩んだ次は英次が悩む。英次はリヴァの記憶を直接見ることは出来ないのだから。リヴァが思い浮かべる故郷ヌヴェールの姿も英次は恐らく知らない。この瞬間に2人の男女の間に決定的な心の壁が生まれる。 英次がストーカーまがいの行為までして彼女を追うのも、それが悔しくてしょうがなかったのだろうか。自分も彼女も何も知る事が出来ないという点じゃ一緒だ、と。  その見えない壁は、ラストでそれぞれの故郷の名で異性を呼び合う瞬間まで存在していたのではないだろうか。何て事を思ってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-19 13:06:26)
95.  シムソンズ 《ネタバレ》 
俺が「キサラギ」を見直し再評価するキッカケになった映画。  70年代風のスポーツ映画・・・いやTVドラマの感触。 人間の善良さを信じぬく物語に、我々は何処か懐かしさを覚えるのだ。どの世代にも関係なく。 毎回凝ったOPの佐藤裕市、簡単な自己紹介。  撮影は「キサラギ」でも組んだ川村明弘。  未来への不安、悲惨な人生想像、それを中断するように飛んでくるカーリングのブラシ。  劇中で幾度も画面を横切る自転車、軽トラ。少女たちは車をコントロールするようにカーリングの石を滑らせ、走らせていく。 「キサラギ」同様にアイドル(偶像)・憧れに誘われる主人公。「キサラギ」と違い最初からハッキリと映されるアイドル。 「キサラギ」に振り回される男たち、「シムソンズ」のために団結する女たち。  他に何も無い、何もないからみんなカーリングに熱狂し、何もないから勉強して現状から“抜け出そう”とする。  主人公も先輩への“憧れ”しかなかったから見栄を張ってしまう。  そんな何もないからこそ一つの事を徹底的に極める人々、それを追うメディア。  ブラシで擦るのは牛舎を綺麗にするため、石を走らせるため、己の未来を拓くため。  いつの間にか揃っていく面々、分かりやすいカーリング講座、「simsons」のゼッケンで自分を飾る。 シンプソンズ(The Simpsons)。とシムソンズ(simsons)。彼女たちはオリジナルの「シムソンズ」になれるのかなれないのか。  鏡に映るコーチ、憧れが遠のいていく現実、石に振り回される面々。  手に書いて覚える“勉強”。でも机と向き合い自分を偽る勉強とはワケが違う。  ワンマン少女、農家の少女、ずうずうしい少女、挨拶は「最低」の勉学少女。 それぞれが石で打ち砕きたい現実を抱え、嘘をつき続ける。  対照的に現金なコーチは自分に嘘をつけない。ホタテ漁に打ち込むのは幼い子供のため、誇れる“恥”をかいたのも仲間の名誉のために。 正直者と嘘つき少女たちの邂逅。  幾度も響くゼロ(0点)の言葉、丸い形。  ブラシを奪うのは人質にするため、たまねぎを切るのは女を泣かすため、声を出すのは自分を鼓舞するため、資金を集めるため、警察の手から逃げるため。 少女たちが走れば石も氷の上を走る走る走る。  ド素人もプロもイチからミッチリ訓練、木に刻まれる“目標”。  氷職人の超カッコイイ丸投げ、トイレのドアで練習、授業中も脚を動かさずにはいられない。 一応挨拶と握手はするようになる司令塔さん。彼女が“一線を越えた”のは自分のためか「1点」を目指す他人のためか。 やっと不平不満が爆発する。 「ずうずうしい!」という言葉のブーメランの投げ合い。  悪役に徹するホワイトエンジェルズ。名前と正反対の漆黒のユニフォーム。 表情が活き活きしたシムソンズに対し、エンジェルズの面々の表情の暗さは何なのだろう。 監督は何故、藤井美菜のような女性をエンジェルズ側にもキャスティングしなかったのだろう。エンジェルズがミキに嫉妬しているような側面も感じる。 ミキの過去がコーチの出した写真と記事だけで語られるだけ。ミキもあまり自分の過去は語らなかった。  ミキは言葉ではあまり語らない。 放り投げられたコインに思わず走り出すような、行動で示す女性だった。海の中に躊躇無く脚を入れるのだから。やはり他人のために頑張ってしまうタイプの女の子だった。  勝つ前の1点・勝つための1点。笑顔でエールを送る。  身を引き締める衣装と刺繍、大事なものを譲り合う女たち。初雪、ミキの選択、緊張をほぐす笑顔。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:44:52)
96.  南極料理人 《ネタバレ》 
猛吹雪の雪原、建物らしき黒い影。その中を駆け抜ける3人の男たち、倒れて揉み合う。逃げ場のない氷原、生きるために仲間を励ます。 「遊星からの物体X」みたいなサバイバルアクションでも始まるのかな?と思ったらぬくぬくとした部屋で麻雀始めちゃうんだもんなー。 撮影は「トウキョウソナタ」といった黒沢清作品でも腕を振るう芦澤明子。冒頭シーンの凍りつく画面、その後の居心地が良い画面が素晴らしい。  麻雀、漫画、ビデオ、音楽、ボウリングでストライク、カクテルとバー、卓球。極寒の密室、その極限状態に耐えるための娯楽、美味い飯!  命懸けで仕事に挑む人間たちが、飯を美味そうに食っているシーンの多さ。なんて腹の減る映画なんだ。心は満腹になるけどね。 飯を食いながら登場人物の紹介、好き嫌い、トマトに悪戦苦闘、丹精込めた料理に調味料をかけられすぎるのは料理人のプライドが見過ごせない。  空が晴れると白い建物。太陽が遮られた時はあれほど黒く見えたのに。  朝、ドアをめぐるやり取り、ラジオ体操と“目の保養”、落花生の箸置き、仕事内容の確認。  1年だけの付き合い、1年も務めなければならない厳しさ。  意気揚々と仕事にかかるプロフェッショナルたち、掲げられる旗、旗、旗。風の強さをストレートに教えてくれるし、時には誕生日といっためでたい日を祝う。   ボーリング調査といった仕事。 天然の冷蔵庫から材料を運び入れ、一品一品真剣な眼差しで作っていく。  サングラスをして何かを待つ男たち。「ワルキューレ騎行」と共に自転車に乗ってやってくる飯時。 飯めがけて全力で駆け、転ぶ。  読書中の主任に弁当の配達、積み重ねられ始める不平不満。基地のアチコチに張られた異性のポスター、受話器の向うの甘い声、家族の写真や宝物。すべてはホームシックの叫びを抑えるために。  雪を掘って水作り。他の面々も生きるために食飲み食いするものを作る。8人にとって無限に等しい原料。伊勢海老につられてくる面々、エビフライコール。  回想、揺れる船、帰りを待つ家族、胃がもたれる嫁の手料理は母の味。文句を言いながら食う食卓の団欒。 願った人間に訪れる事故、願わなかった人間に降りかかる仕事。 「家族と相談させて下さい」 「おめでとう」 「家族と相談・・・」 「行ってらっしゃいお元気で」 ああ殴りたいあの笑顔。  節分のお面、裸の鬼を締め出す・・・て殺す気かwww 劇中の面々は度々裸になって氷点下を満喫する。記念撮影もトライアスロンの特訓もパンツ一丁。 時間の限られた電話、砂時計、天然の氷で乾杯。  夜食を目の当たりにして「もう勝手にしろよ・・・」とドアを閉じる。人が何のために丹精込めて飯を作っているんだよと。 でも食う本人たちもそれはそれ、これはこれ。  凍傷への対応で怒る男たち。真剣な者と嫌々でやっている者たちの対立。  でっかい肉を外で火をつけて肉を振り回すシーンの面白いさこと。 「楽しいwww」  巻き込まれる主任、誕生日ケーキと肉のステーキでパーティー、料理人を支える娘の歯。  いちごの原液をかける天然のかき氷、原液はそのまま野球のベースラインに。  太陽を拝めない日々の鬱屈とした様子。 誰のための正装か解らない祭、凍傷が治った手と伸びた髪が物語る日数。  料理人もお母さん状態。 「あ~ぐ~ら」  ラーメン中毒者とバター中毒者が出てくる状況。重症です。  さあクソ主任との対決だ!後ろから迫る怒り、料理人も有無を言わさず蹴る、フラれたショックで自殺行為、医者「はい凍傷ね」  そして娘の分身に等しかった歯ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 精神的にグロッキー。  胃にもたれる母の味が料理人に涙と活力を与える。仕事仲間たちが、家族たちが食べさせてくれていた愛情。お母さんと娘の計らい。  本土との通信。 「可愛い動物は~?」 こんなに可愛いおっちゃんたちがいっぱいいるじゃありませんか。おっさんは非売品。   “冠水”作り、ラーメン>>>>>>>>>>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>>>>>>>>>>>オーロラ。  いつもの朝食風景が、食卓を囲む人々が消えていく瞬間の何ともいえない寂しさ。  再会、そして出会う人々。“声”だけで出会った恋人たち。  成長した子供たち、氷原と灼熱のアスファルトを駆け抜ける男の生き様。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:36:31)(良:1票)
97.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 《ネタバレ》 
銀河から集まったアウトロー集団の大暴れを描く快作。 ダークで主人公がウジウジするようなアメコミは嫌だ、頭からっぽで楽しめるのが見たい!という面々が撮った痛快なカウンターパンチ。  それはかつての西部劇といった娯楽映画にも通じる流れ。 「真昼の決闘」という退屈なクソリアリズム西部劇は御免だよ、という人々に向けて撮られた痛快な傑作「ヴェラクルス」や「リオ・ブラボー」といった流れを思い出す。  ただ、最近のアメコミはダークさとツッコミどころにも溢れた従前たるアクション映画の傑作・良作の方が多い。数十年前より遥かに進歩している事は確かだ。  要は雰囲気の問題。 とにかく単純明快で楽しいのが見たいという人に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を全力でオススメします。   冒頭の病室における別れとレクイエム、膨大な過去が眠るであろう遺跡でダンス、そして踊るようなバトルとそれを盛り上げる“音楽”。 「キック・アス」にも参加したベン・デイヴィスの軽快なキャメラワークも良い。冒頭のお葬式ムードが嘘みたいに馬鹿馬鹿しくなっちまった(褒め言葉)。  時代を超える魂のリズム!クラシックが何百年の時を超えるように、音楽は時代を選ばないし、好きなものに過去も未来も存在しない。その人にとっての現在進行形。それは映画でもアメコミでもアニメでも、すべての娯楽に共通する醍醐味だ。  「スクービー・ドゥー」や「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本・「スーパー!」を監督したジェームズ・ガンの演出は楽しい。 今まで参加してきた作品にあった暴力性(ヴァイオレンス)の快感。それを子供も楽しめる生粋のエンターテインメントに仕上げている。 クラシックとアクションが弾ける瞬間!  音楽とダンスは戦闘前にアドレナリンを高めるおまじない。俺には天国のママンがついているぜっ!アジトに殴りこんで獲物を奪い逃げていく見事さ、グリーン姉さん(検索する際は細心の注意を)の大立ち回り、刑務所での大騒ぎと大脱走、次々に増えていく面子。  最愛の人の手を握ってやれなかった幼き頃の悔しさ、今度はもう離さない!たとて氷点下の宇宙だろうと!  え? 横でその他大勢の正義のために立ち上がった面々がアボーンしまくっているって? 主人公のスルースキルがありえないんだぜって? ここまでCG使うならいっそフルCGにしてくれた方が違和感なかったって? 細かい事は気にするな!ツッコミどころの多さもまた楽しんだもん勝ちの娯楽よぉ!  ラストで“生まれ変わった”者が踊りあげる生命のダンスも可愛い&グッとくるじゃないか。  特に好きになったキャラは宇宙海賊ヨンドゥのオッサン。 地味に無双するわクイルたちの事も何だかんだ言って気にかけてくれる。 流石に原作漫画のモヒカン族(インディアン)スタイルはNGだったか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:08:19)(良:1票)
98.  ニーベルンゲン 第I部 ジークフリート 《ネタバレ》 
ラングによるファンタジー映画の大作。第一部「ジークフリート」、第二部「クリームヒルトの復讐」。 同じ大作でも「ドクトル・マブゼ」は謎解きと犯罪活劇の面白さがそこかしこに満ちていたが、この映画はそれほど緊張がみなぎる作品だろうか。 そりゃあ細部にいたるドイツ美術の見事さには目を見張るし、ジークがドラゴン退治をするシーンは中々迫力があって面白かったが、それまでの20分はちょっと退屈だった。  この2時間30分の第一部は、大いなる序章に過ぎない。 むしろ第二部の2時間10分、特にラスト50分の凄絶な復讐劇こそこの映画の真骨頂!なので、思い切って第二部から見て見るのも面白いかもしれない。   さて話を一部に戻そう。 おどるおどろしいドイツ語の文字がかもしだす雰囲気、虹のかかる山、林と住民、剣を叩き鍛える青年、それを見守る老人。 老人に完成した剣を見せ、空を舞い落ちてきたワタが切れる。このセリフの無い導入部の5分間、完璧だ。  日の光を背に立つ城、黒い影をまとい移動する兵士たち。  上記でも述べた竜退治の迫力!一見すると巨大なトカゲがのそのそやっているようで拍子抜けする(眼は可愛らしすぎるし)が、造形や動き・演出が凝ってる。噂を聞いただけで、劇中では実質何もしないまま殺されるドラゴン。オマケに眼も可愛気で何処か哀しい表情。これじゃジークがただのDQNじゃないか(え?原作も大体そんな感じ?)。 滝が落ち、木の影から剣を抜いて様子をうかがう。剣を振り上げ火を噴くドラゴンの眼をえぐる!喉をついて血が流れ落ちる。剣にベットリついた血の跡。鳥だけがその一部始終を見ていた。 滝のように溢れる竜の血を、水につかるように浴びる。この間わずか3分。  ジークの旅は続く。霧がたちこめ、木がうねった不気味な森の雰囲気、変な網で透明になり変装もできる魔法のアイテム、月夜が差し込む渓谷、奇妙な洞窟、映像を映す光の玉、石になる人々・・・。  影のようにうねる砂絵の迫力!鳥、光と闇。  一色触発の事態を止める真の主人公とも言うべきクリームヒルトの登場。どうでもいいけどマユ太い。殺し合いそうになった男たちが手を取り合い、そして再び殺し合う運命。  男勝りなブリュンヒルデとの対決。炎で埋められた大地、そこにそびえる城。 中性的な顔立ちのブリュンヒルデ。石投げ競争、投擲による一騎打ち。使い込まれた盾を砕く一撃。戦士から“女”の顔になってしまう。 腕輪、ドロドロになっていく関係、ジークとクリームヒルトの淡い結婚生活、萌える木々が枯れていく残酷さ、森の中での競争、眼と影で表現される“暗殺”。異様な影で表現される“下手人”。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:04:04)
99.  ニーベルンゲン 第II部 クリームヒルトの復讐 《ネタバレ》 
二部から先に見て欲しいくらい。というか、二部の方が面白い。 亡き者の墓の前で建てられる誓い、フン族の王たちの蛮勇を利用する計画、黒衣は復讐の決意。普段は傷を負った兵士たちを励ますが、瞳の奥には復讐の炎を燃えたぎらせる。  従者が見てしまった真実、クリームヒルトもそれを見届ける。雪の下の土に眠る“愛した人”を布に包む。遠景で一行が去っていくショット、娘の決意を黙って見送るしかなかった人々の辛さ、楽器を城壁に打ち付けて憤りを表す。  出撃して突っ走る軍隊の疾走感。木の上から飛び降り、馬に乗り換えて迎う伝令のスピード。木の周りを裸で踊る子供たち、彼等に金を振る舞う兵士たちの気前の良さ。 蛮族の前で堂々と屹立するクリームヒルトの存在感!それを迎える蛮族のダンス。  ラスト50分、修羅場と化す酒宴。 密かに渡される武器、合図と共に切りかかる!弓矢の一撃、斧の投擲、二重三重の悲劇。 死者を弔いながら行進する人々、凄惨な殺し合いはエスカレートしていく。何度も押し寄せる群衆スペクタクル、死者を弔う暇もない、焼き討ち、パニックになり当たった矢を1本1本抜く姿。既に火はまわっているのに。 階段を駆け下り、崩れ落ちる瓦礫にまきこまれ重傷を負う者、燃えた瓦礫の中に消えていく戦士たち。滅びを見届ける演奏者。死者へのレクイエムは、阿鼻叫喚の地獄の中でどれほどの人間に届いたのだろう。サイレント映画だからこそ、その想像を掻き立てられる。 門の前で“待伏せて”いた男の一撃、“首”が無言で語る絶望・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:59:04)
100.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
00年代、実際の出来事を“告白”でもするかのようなドイツ映画が複数撮られた。 一つは「ヒトラー ~最期の12日間~」によって戦時中を、 もう一つはこの「善き人のためのソナタ」によって戦後の闇を告白するように。  冷戦時代の尋問というとリシャルト・ブガイスキ&アンジェイ・ワイダによる「尋問」を何故か思い出した。 「尋問」は監視者が監視対象だった者から“証拠”をでっちあげ、自分のテリトリーに引きずり込んで散々痛めつける事で屈服させようとした。 この映画は、監視者が監視対象から“証拠”を引きずり出せるか出せないかという過程を追っていく。疑はしきは罰せよ、何かされる前に先手を打たなければならないという恐怖。 この二つの映画に共通する事は、一人の女性が他の人間のために“犠牲”になる事を選ぶということ。  劇中でも引用されるベルトルト・ブレヒトの存在。 ブレヒトもまた戦時下のナチスに反撥してフリッツ・ラングと組んだスパイ映画「死刑執行人もまた死す」を発表している。 ラングのこういった映画の女性たちが活き活きとしていた事に比べ、この映画の女性たちは観客の感情移入を許さないような深い闇を背負っている。   廊下、腕を捕まれ連れてこられる“監視対象”だった男。男の声からテープレコーダー→現在→過去を行き来する。 疲弊していく男の表情を知るのは立ち会った本人だけ、声を聞いて当時を想像するのは生徒たち、そしてこの映画のスタッフたちだ。 椅子に付着した“匂い”、涼しい顔で男を言葉によって弄り続ける男。教壇に立つ男は、自分の過去を隠すことなく、生徒たちに教えていく。きっと同じような“告白”を何度も繰り返してきたのだろう。  劇場の鑑賞会から既に監視は始まる。上からの視点・パンフレット。 標的の家に慣れた手つきで黙々と盗聴器とカメラを仕込んでいく。ありとあらゆるところに。 その監視者を“監視”してしまった者の視点。  この映画の監視者は、勝手に疑い、勝手に同情し、勝手に揺さぶられ、勝手に自分を緊張状態に追い込む。監視されている者は何も知らないし、生を謳歌している。知らない事の不幸・幸福。妻の隠す真実にすら中々気付けない。妻と楽しんでいる間も、情報は絶えず流れ続ける。 勝手にピアノの音色に心を打たれてしまうのだから。男の葛藤が表情一つで語られ、その音楽は監視される者たちの“抵抗”の証になっていく。 人の出入りが少ない“仕事場”で画面や針、タイプライターとにらめっこ、ヘッドフォンの音に耳をそばだてていなければならない。そりゃあ監視対象に興味を持って退屈しのぎもしたくなる。ハイタッチする気分でも無くなってくる。エレベーターで子供とおしゃべりをする一時、暇な時は豊満な情婦と楽しい一時でもせにゃやってられない。豊満なバストに顔をうずめても何処か満たされない様子。そりゃ監視者は人妻の方が気になるし、情婦とも真に仲良くなれない。偽りの愛だ。  その監視されている者たちが、監視者を意識し、恐怖し、反撃に出る瞬間の恐怖。スパイのように潜り込む男たちも、いつ監視者側を裏切る・・・いや表返るか解らない。 ケーキの下の“武器”、盗聴器への“祝杯”は監視者への宣戦布告。  監視者の存在を知りながらドアの鍵をかけない。床下の“武器”の存在を偽らないのも妻を信じていたから。 妻も夫を愛していたからこそ“言わなかった”し、“躊躇”しなかったし、耐える自信も無かった。監視者との決定的な違いがそこにあった。 床下を剥がす瞬間に奔る緊張。  一瞬映る新聞が物語る“終焉”、それぞれが失った物の大きさ。  ラスト20分は真実を知っていく者たちの顛末。 コードを引き抜く力なき姿、表情。大量の書類に眼を通し、人々の告白でも聞く様に読み進める哀しげな表情。  そこには互いを探り合った憎悪ではなく、直接会って語り明かす事のできない哀しみだけが横たわっている。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:56:24)
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