1001. ピグマリオン
「決然とした眼差し」というとジョン・ギールグッドに次いで思い浮かぶのがウェンディ・ヒラー。26歳時の本作でもその片鱗が見て取れ、加えて瑞々しい美しさに見惚れる。ヒギンス教授の他人は全て愚かであるとする言動に嫌気がさし、二人の仄かなロマンスにも感じ入るものがなかったのが残念。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-08 16:42:42) |
1002. 怪物の花嫁
『エド・ウッド』でのタコとジョージ・スティールの記憶が僅かに残る本作。起承転結がキチンとあり、怨念を糧に生きてきたマッドサイエンティストを演ずるベラ・ルゴシに惹きつけられた「なかなか面白い作品」で嬉しい驚きです。『海底二万哩』の巨額の費用をかけ28人がかりで操作したイカと本作のタコ。ビジュアルでは天地の差があるものの映画に対する愛情の大きさは一緒だと感じました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-30 16:41:44) |
1003. ウォーターシップダウンのうさぎたち
原作未読。野ウサギ達のサバイバル物語。水彩画のような風景とアート・ガーファンクルの澄んだ歌声が幻想的。一方で、ジョン・ハートを始めとする名優達の誇張の無い語り口で描かれる世界観は、弱肉強食、環境破壊、果ては全体主義までシビアであり小学生にはとてもじゃないが見せられない強烈さ。生き抜く事を考えさせられた余韻の残る秀作。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-09 13:46:25) |
1004. ジョージー・ガール
《ネタバレ》 「自分の気に入らない役は絶対に引き受けない」と公言していたというジェームズ・メイソンが本作に出演したのが不思議。自分のお屋敷の使用人の娘ジョージーに恋をして愛人契約を迫りキスをし、奥さんがあっさりと亡くなって、挙句の果てに結婚までしちゃう。「ロリータ」の仇を本作で討ったかのようだけど大きく違うのはジョージーがおとぼけキャラですごいブサイクであること。唇を奪う前・最中・後の欲望が滲み出た生々しい目をこの娘に向けるのはアカンわ。何処にどう惹かれたのかさっぱり分からん。アラン・ベイツとシャーロット・ランプリングのどうしようもなく鬱陶しいアホバカカップルとは絡みなくコメディ劇の中で浮いた存在だった。笑うところも殆どなく主題歌もなんだかなぁ。「意外と面白くない」4点だけど、惚れ惚れする美貌で他人を切り捨てる姿を見せてくれたシャーロット・ランプリング20歳のデビュー作に「他人様に薦められなくもない」7点に。 [インターネット(字幕)] 7点(2018-05-08 00:59:44) |
1005. ローマ帝国の滅亡
《ネタバレ》 予備知識はジェームズ・メイソン出演のみ。鑑賞史上初めての叫び声のない拷問シーンで掌にたいまつの火を3度押し付けられて声を上げずに耐えるお姿に握り拳!僅かな登場シーンでもいぶし銀の存在感に感激。クリストファー・プラマーが共演しているだけで嬉しいのに、超オトコマエで且つ主役は貴男だと言える熱演ぶりにも大感激。史実に即しているのかどうかは気にならず、長すぎる事と心理描写の浅さを差し引いても、壮大な音楽にのせて豪華なセットで数えきれない程の人馬エキストラと共に繰り広げる歴史活劇として楽しめた作品。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-07 20:05:57)(良:1票) |
1006. 砂漠の鼠
(「砂漠の鬼将軍」同様のロンメルを演ずる)ジェームズ・メイソン、リチャード・バートン共演に胸躍らせての鑑賞。唯一二人が顔を合わせるシーンで、ちょっと恰好つけ過ぎかとも思われたものの若きバートン相手に貫録を見せつけたメイソンにメロメロ。何度も何度も観直し(DVDの利点)1時間費やし2時間半の大作となりました。連合国側のバートン主役の肩のこらない戦争映画の良作。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-05 01:31:39) |
1007. ラビング 愛という名前のふたり
《ネタバレ》 1958年のバージニア州に於いては白人と有色人種の結婚を禁止する法律が存在した。曰く自然の摂理に反する、混血児が生まれてはならないだなどというヒトラー総統のような発想で自由の国アメリカが聞いて呆れるもの。ミルドレッドがロバート・F・ケネディ司法長官に手紙を書いたのが発端となり1967年6月12日合衆国最高裁判所が異人種間結婚禁止法は違憲であるという判決を勝ち取るまでのラビング夫妻10年の歳月を描いた物語。ほんの一瞬だけあった裁判シーンで弁護士の「二人の結婚がバージニア州にとって何の脅威を与えるのでしょうか・・・」陳述とラビング一家の真っ当で慎ましく仲睦まじくキチンとした食卓風景が重なる光景に、心底「その通り!」と心打たれました。あまりにも地味で淡々としているのが難と言えなくもないですが、罵り合いが一度たりともない夫婦の姿に「コレリ大尉のマンドリン」での「燃え上がった情熱が恋で、その燃えカスが愛」の至言がまざまざと浮かぶ秀作です。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-01 21:54:57) |
1008. 潜入者
《ネタバレ》 メイザーとアルケイノの友情が何だか切ない。同じ状況で「お前だから許す」と名台詞を残した作品がありましたが、今作で信頼を重んじるアルケイノ一家は裏切りを一生許さないと思いました。演出上の事なのでしょうが、新郎新婦を逮捕せず潜入者とばらしてしまってはこの先命が無いんじゃないでしょうか。以降も潜入捜査官を続けたというのに何だかなぁと釈然としません。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-16 00:31:57) |
1009. わたしは、ダニエル・ブレイク
フードバンクでのケイティの自分を恥じて泣く姿に号泣。 そうなるんじゃないかと薄々感じていた通りの結末がやるせない。 血の通わない行政システムを改善しようとする気はないのか、公僕という言葉は死語なのか。 危機管理が要る年齢なのに日々の暮らしに追われているだけの自分に警鐘を鳴らしてくれる作品。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-15 20:01:24) |
1010. 飾窓の女
《ネタバレ》 「10時半ですよ」と起こされたシーンに劇場の其処此処で笑いが。私は張り詰めた緊張の糸がプッツリと切れてしまいました。監督は何を思ってこんな結末にしたのか問い詰めたい。トボトボと帰路につきました。件のシーンまでは10点、以降は0点、エドワード・G・ロビンソンの惚れ惚れする重厚さに+2点 [映画館(字幕)] 7点(2018-04-15 00:39:48) |
1011. 炎上
《ネタバレ》 初見、原作未読。国の宝を焼失させるまでに至った青年の心模様が描かれています。溝口の劣等感と清くあって欲しいと願うものの濁った姿への思いを代弁している戸苅を演ずる仲代達也が圧巻。爽やかな部分が皆無の市川雷蔵は観るのが辛い重苦しさで救いの無い結末に胃が痛くなりました。多様な人物を演じ分ける役者魂で会社の猛反対をはねのけた市川雷蔵の早逝は、後年の仲代達也のような重厚さが観られたに違いないと思うと実に残念です。 [DVD(邦画)] 7点(2018-04-12 13:51:39) |
1012. 桑港(サンフランシスコ)
《ネタバレ》 メリーが愛したのはバーリーは勿論ブラッキーでもなくオペラ歌手であり、その打算的な振舞に吐き気が。息子の死を知ったバーリーの母親が「仕方ない、それが神の御意思なのだから」と取り乱すのを懸命に堪える深い信仰心に泣けてしまった一方で助かったメリーを見て神に感謝するブラッキーの姿が薄っぺらいとまでは言わないまでもご都合主義的で白けてしまった。クラーク・ゲイブルはジャイアンのようなキャラを生き生きと演じていた一方でスペンサー・トレイシーは今一つインパクトに欠けていて残念であると共にオスカーノミネートはどう考えてもおかしいでしょう。恐ろしさ溢れる地震シーンは特筆ものの素晴らしさでありました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-10 01:48:38) |
1013. Vフォー・ヴェンデッタ
《ネタバレ》 お目当てジョン・ハートの死に様は鬼畜独裁者の情けなさを見事に表す名人芸でありました。理念は死なないと立ち向かうのも独裁者を生み出すのも個人の意思なのだと思わされます。スティーブン・レイ演ずる警視がもう少し体を張って欲しかったところです。Vの無表情の仮面が表す喜怒哀楽が印象深く一度も取らなかった演出は正解でしょう。議事堂爆破は復讐を超えたテロにしか見えません。実際に起きた火薬陰謀事件の元を辿ればヘンリー8世の離婚問題に行き着くのに驚きで、トーマス・モアのあの映画をまたぞろ観たくなりました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-08 00:42:07) |
1014. ギャング・オブ・UK
《ネタバレ》 邦題からヒリヒリする物語の中でのジョン・ハートの最期に寄せた期待が悪ふざけスレスレのコメディ調に萎んでいきましたが、二転三転四転五転の展開に父娘の物語が盛り込まれていて結構見応えがありました。若作りに無理を感じたもののほろ苦さを醸し出すジョン・ハートはいぶし銀の味わいがありました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-07 19:07:46) |
1015. ジキル博士とハイド氏(1931)
《ネタバレ》 神の領域を侵した科学者の好奇心が生んだ悲劇。ジキル博士のフレデリック・マーチは私的米国男優ナンバーワンのオトコマエでウットリさせられ通し。悪役好きの身にハイド氏への変身過程に身悶えし期待がパンパンに膨れ上がったのですが、変身終了のエテ公ヅラに唖然茫然! スペンサー・トレイシーとは異なり原型を留めておらず、別の俳優が演じていると納得させ鑑賞続行。下流階級の女性に対する残忍な言動(ミリアム・ホプキンスの泣き笑いの表情が何とも憐れ)が赴くままの本能と言うのところの悪役ぶりにも惹かれない。あのエテ公もフレデリック・マーチだという事で何回も観直してみたけれど面影が何一つ見いだせなかった。だからこそのオスカー受賞なのでしょう(怪奇役では60年後の「レクター博士」まで唯一だとか)がションボリです。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-05 14:48:02) |
1016. エイリアン
《ネタバレ》 このジャンルは苦手なのですが、ジョン・ハート目当てで初めての鑑賞。あんなのが顔に貼り付いたら顔が見えないよ(怒)ご愁傷様と思ったら取れていて普通に食事している。やれやれと思ったら・・・ 「う、う、う、うわ~っ!!! 何じゃお前は~」 キャリア50年超で40回死んだ(デビュー作で破滅に追いやった聖人の呪いなのか?)中でも屈指の死に様を見せて早々のご退場に放心状態。 その後はお決まりの展開と結末でしたが、本作がその「お決まり」の元祖という事を考えると映画史に名を残す逸品と言えるでしょう。エイリアン以上に度肝を抜かれたのがアッシュで、アカデミー視覚効果賞受賞も当然の仕事ぶりでした。 あの猫がエイリアンとなってお尻にかぶりつくのかと思いきや・・・不要なキャラに減点です。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2018-04-02 15:31:53) |
1017. ルワンダの涙
《ネタバレ》 ベルギー軍撤退後に笛の音を合図に学校になだれ込む一団(フツ族の穏健派を真っ先に虐殺したらしい)は人間の姿かたちをしているだけの狂犬で、神の言葉はおろか人間の言葉も通じない姿が心底恐ろしい。撤退せず留まる決断をした時点で死が確定したジョン・ハートの最期の演出はドラマチックに過ぎるものの切り刻まれるよりはマシだったかなとちょっとホッとしました。と、同時に、死ぬのなら銃殺されたいと懇願されたベルギー軍の隊長の無力感を思うとやるせないものがあります。後年再会した教師に「何故、逃げたの?」と言う少女に自分が逆の立場だったら逃げなかったのかと言ってやりたい。 このような極端な話でなくとも、生かさせてもらっている事を少しは意識して文句や不満を少しは慎まなきゃいけないなぁ、などとエンドロールを見ながら考えさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-03-25 21:59:19) |
1018. 失はれた地平線
飛行機が雪山に不時着する迄は手に汗握りましたが、そこから先はなんともはや、脱力感で一杯でした。「足るを知る」考え方は一理ありますが、競争のない世の中は廃れ滅びると思います。静止画像のシーンは驚きましたが、関係者の方々の尽力に敬意を表します。 [DVD(字幕)] 7点(2018-03-10 22:30:14) |
1019. ひとり狼
《ネタバレ》 渡世の掟のみを心の拠り所に生きる伊佐蔵を演じる市川雷蔵に高倉健とは違う重みを感じる。父子の関わりがひとり狼にそぐわないのだが、決闘後に去って行く後ろ姿はさすがに切ないものがあった。美味しい役どころの長門勇の好演も印象的。 [DVD(邦画)] 7点(2018-03-07 15:45:49) |
1020. キンスキー、我が最愛の敵
《ネタバレ》 クラウス・キンスキー死後に作られた本作。キンスキーの天才はナントカと紙一重ぶりを強調するヴェルナー・ヘルツォーク監督。キンスキーが動の奇人でヘルツォークが静の奇人である事が良く解りました。 原住民エキストラが「貴方(ヘルツォーク)の為にあの男(キンスキー)を殺しましょうか」と真剣に申し出たというエピソードに、こんな最凶タッグの二人と共に仕事をしたスタッフに拍手を送りたい。 [DVD(字幕)] 7点(2018-03-07 15:31:32) |