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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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101.  シャッター アイランド 《ネタバレ》 
鑑賞前に一切の情報をシャットダウンして臨んだが、本作の設定を踏まえると、ある程度イメージは固めていた。多くの人が同じようなイメージを抱いていたとは思うが、本作はそのイメージを超えることはなく、自分のイメージが当たっているかを確認する作業でしかなかった。いい緊張感と集中力を保てたので、飽きることはないものの、謎解きや秘密や深いオチを期待させ過ぎて大きく風呂敷を広げすぎてしまったようだ。配給サイドとしては当然の宣伝手法であり、その手法により、興行収入的にはアタリそうだが、評価の面では期待感が強すぎてハズレとならざるを得ない。 しかし、謎解きがメインではないにしても、物足りなさを覚える作品でもある。スコセッシが本作に何を込めようとしたのかが十分伝わってこなかった。ディカプリオが演じた男の生き様のようなものが見えてこない。苦しい過去の記憶を消して、精神を病まざるを得なかった男の悲しさのようなものが伝わってこないので、ゴーストとして生きるよりも善人として死にたいというセリフも活きていないような気がする。「マルホランド・ドライブ」のような深みのある仕上がりになれば、評価も恐らく高まっただろう。  “現実”と“妄想”とのリンクが甘すぎる気がする。亡き妻の亡霊や子どもの姿を悪夢や幻覚というカタチでストレートな手法で描くのではなくて、もっと凝った手法をヒネって欲しかった。また、基本的に放置プレイの病院サイドのやり方も甘すぎた。ディカプリオに“失踪捜査”を行わせることにより、ディカプリオの頭の中に隠された“現実”が浮かび上がるような“誘導”が構築されていない。これでは“治療”とは呼べないだろう。 本作で良かったのは、美しい映像だけだ。亡き妻を抱き締める際に、火と水と血が混ざり合った不可思議な映像や、孤島の建造物の凝った作りには見所があったが、それ以外で評価したい部分はあまりなかった気がする。 謎解きをメインにするのであれば、ただの精神を病んだ男のストーリーではなくて、病院の“秘密”を探ろうとする精神が真っ当な刑事に対して、精神を病んだ男という記憶を産み付けるために関係者がグルになって一芝居をうったという解釈ができる余地でも残してもよかった気もする。人間を精神崩壊に追い込み、自分の記憶の曖昧さ、自分が誰であるかという確信を揺るがすようなオチもアリではないか。
[映画館(字幕)] 5点(2010-04-12 22:18:28)(良:1票)
102.  マイレージ、マイライフ 《ネタバレ》 
自分とジョージ・クルーニー役のキャラクターと考え方とほぼ同じなので、飽きることなく、共感しつつ興味深く鑑賞することができた。合理性を重視、人間関係を重視せずに、“バックパック”は常に身軽にという考え方は非常に機能的であり、現代的な生き方ともいえる。主人公の考えに近い自分が本作を鑑賞してみても、良い意味で特別深く感銘を受けるといったことはなかった。自分の人生を見つめ直すといったことや、自分の人生を改め直すといったことをしたいとは思わないが、本作の言いたいことを、少しはアタマの片隅にでも置いておこうかなというスマート作品に仕上がっている。ラストのインタビュー形式(「家族の素晴らしさやありがたみ」を強調する)以外はあまり説教くさいところがないところも好印象であり、押し付けがましさがない辺りが本作の良さでもある。 やや冷めたドライな目で本作は物事を見つめており、その視点が自分には心地よかった。ジョージ・クルーニーも見事だ。あまり感情を表に出さずに、終始それほど熱くはなっていない。相手としては裏切るつもりは毛頭なかったが、たとえ裏切られたとしても、慌てず騒がすに落ち着いて対応する辺りがリアルだ。たとえ夢見たとしても、もはや手遅れ、“現実”はそれほど甘くはないという描き方もなかなかクールではないか。 あのシーンにおいては女性と男性との違いなども垣間見られた。 また、深い人間関係を築こうとしないジョージ・クルーニーが誰よりも深く人間を見つめる一方で、彼氏を追ったりする人間らしい新人女性はダンスやカラオケ等で盛り上った相手を置き去りにしたり、大事な用件をメールやテレビ電話で済まそうとしている。 このような複雑性によって、単純ではない様々な人間味が描かれていると思われる。 ジョージ・クルーニーが利己的で自己中心的な男として単純に描かれているわけではない点も深みや共感を生んでいる。たとえ深い人間関係を築けなくても、実はジョージ・クルーニーは非常に多くの企業と関係を築いていたことが、紹介状の件で分かる仕掛けにもなっている。人間はやはりどこかで、何かで繋がっているのかもしれないとも感じさせる。バックパックは軽く見えても、実は誰しもぎっしりと詰まっているのも人生といえそうだ。
[映画館(字幕)] 8点(2010-04-10 11:40:02)(良:1票)
103.  バッド・ルーテナント 《ネタバレ》 
オリジナルは未見。 有名のようだが、本作の監督についてもよく知らない。 ストーリーは理解できるが、正直言って、本作を通して何を伝えたかったのかが理解しにくかった。 ガッチリとハマる人にはハマるようだが、自分はそうではなかったようだ。 爬虫類メイン、死者のダンス、長回し、ニコラス・ケイジの独特の演技など、面白い部分は多々みられるが、ややヒネリのあるだけのクライムサスペンスという印象も受ける。 肝心の“善悪”の扱いについて、答えのようなものが自分には見えてこなかった。 善と悪の間で葛藤するというよりも、銃とバッジのチカラを借りて自己の利益だけに突っ走り、ただのラッキーで事態が好転しているようにも見える。 それはそれでもよいのだが、何か分かりやすいポイントも欲しかった。 本作の冒頭で、賭けの対象にしているのに溺れそうな囚人を救ったり、ギャングの仲間になり下がったのにパイプを証拠にデッチ上げたりと、土壇場で理屈抜きに翻意していることが、良心ともいえないのではないか。 ただ、全てが万事解決というわけではなくて、薬物中毒に関しては簡単に解決というわけにはいかず、それがなんともいえないラストに繋がっているようだ。 様々な事態が悪化して、どんどんとドツボに陥っていくニコラス・ケイジの演技は確かに素晴らしい。 衣装もネクタイも終始変わっていないような気もする。 実生活でもリアルで財政難に陥り、訴訟を起こされているだけのことはある。 本作の主人公のように事態が好転していけばよいが。 ニコラス・ケイジについてはお腹いっぱい堪能できるが、ヴァル・キルマーとエヴァ・メンデスについては役不足であり、物足りない。 ヴァル・キルマーについてはニコラス・ケイジと対極的な役柄でも与えておけばよかったのではないか。 表向きは善良だが、裏では心から腐っているような存在。 ラストの展開において彼の性格が少し見えたが、あれだけでは足りないだろう。 エヴァ・メンデス辺りには、ニコラス・ケイジが道を踏み外しそうになったところを元に戻すようなきっかけを与える存在になって欲しかった。 “銀のスプーン”辺りのエピソードではやや弱いか。 あまり深く考えたり、善悪といったことに捉われずに、個性的な映画には仕上がっているので、本作の雰囲気を楽しく鑑賞した方がよかったかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2010-04-04 18:12:56)(良:2票)
104.  ハートブルー 《ネタバレ》 
評価が非常に難しいが、良くも悪くも個性的な映画に仕上がっている。 事件の捜査よりもスカイダイビングやサーフィンを重視するという斬新さ、登場人物の行為が一切理解できないムチャクチャで強引な展開、キレのある追いかけっこなどで随所にキラリと光る演出等には意外と夢中になれる。 既存の刑事モノや覆面捜査モノ映画の公式には則らず(お約束には従うところもあるが)に、好きなことを好きなように撮るというのは大事なことかもしれないと感じさせる。 追いかけっこはなんとか撮影できるかもしれないが、スカイダイビングやサーフィンをここまでキレイに撮影できるのかと感心させられもする。 かなりムチャクチャなストーリーだが、才能のある者は細かいことには気にしないのだろう。 ルールに従っていない映画だけに、パトリック・スウェイジもルールに従わずにもっともっと弾けてもよかったとも思わせる。 「時計じかけのオレンジ」のアレックスのようにもっとクレイジーになってもよかったか。 彼を撃てない、彼を逮捕できないというように、規格外の彼の魅力にキアヌが惹かれる要因をもうちょっとアピールして欲しいところ。 パトリック・スウェイジがまだまだ“ノーマル”だと思わせるところが多い。 彼がもっとクレイジーになってくれれば、強引な展開も何もかも許されてくるようになるのではないか。 キアヌはあの程度でもよいだろうが、パトリックに毒されて、彼もルール無用のクレイジーになったと感じさせてくれれば、彼の最後の行為も納得できそうだ。 パラシュートなしでのスカイダイビングだけではなくて、ドーナツをおもむろにホウバル、大事なところでヒザが痛み出すなど、冒頭からクレイジーな資質を見せてはいるが、今一歩何かが足りない部分もある。
[DVD(字幕)] 6点(2010-03-28 13:51:42)
105.  ニア・ダーク/月夜の出来事 《ネタバレ》 
評価はやや低いが、個性的な映画に仕上がっており、嫌いではない作品。 「ヴァンパイアがひ弱すぎる」「輸血ってなんやそれ」という設定もあるが、なかなかデキの良いヴァンパイアモノとなっている。 逆に、こういったユニークな設定が本作の長所となっているところもあるかもしれない。 また、ヴァイオレンスアクション的な要素だけではなくて、ヒューマンドラマ、ラブストーリー、西部劇・犯罪モノ映画などの要素を付加しており、見応えも意外と十分な仕上がりとなっている。 ヒューマンドラマ、ラブストーリーに関しては、やや中途半端なところもあるが、あまり突き詰めると、本旨とズレてきそうなので、この辺りがちょうどいいバランスともいえる。 ホラー度やスプラッターテイストがいいバランスで抑えられている。 主演の二人もなかなか良い雰囲気を醸し出しており、女性監督らしくそういった魅力を引き出している。 ヴァンパイアになっても人間を殺さないような優しさ、家族に対する愛情を持つ男だからこそ、彼女は彼に惹かれたのかもしれない。 一方で、妖しく、物憂げな魅力をもち、人間を殺せない彼を最後まで見捨てないような彼女に彼は惚れたのではないか。 女性監督らしく、そういった微妙な感覚も描かれているように思われた。
[DVD(字幕)] 6点(2010-03-28 13:47:12)
106.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 
たとえアカデミー賞という肩書きがなくても評価したい作品。完璧な作品とは言いがたいが、賞賛されてもおかしくはない。戦争モノやイラクモノ作品が溢れている中で、他の作品とは異なるアプローチを試みて、独特かつ個性的な作品に仕上がっている。声高々に野暮ったいメッセージを発するということも必要だが、本作のようなユニークなアプローチで戦争の現実や悲惨さを伝えるということも必要ではないか。イラクモノ作品の多くは真正面からマジメに向き合い過ぎている感もあったが、本作のバランスは優れており、イラクの現実を描くだけではなくて、エンターテイメント的な要素も含まれている点も評価したいところ。 個人的に評価したいところは、針を刺されたように突き刺さる張り詰めた“緊張感”をビグロー監督が演出できているということだ。ハエが目に入ろうと、口に入ろうと集中力を持続させる主人公たちのように、あまりに画面に集中しすぎたために、「自分が今どこにいるのか」「自分が今何をみているのか」かが一瞬分からなくなるほどの異様な緊張感で溢れていた。数多くの作品を見ている自分でも、現実(ドキュメンタリー)なのか、虚構(フィクション)なのかを混乱するほどのリアリティ度の高い作品といえる。 また、戦争ジャンキーのリアルな姿も描かれている。冒頭に語られる「戦いは中毒症状を引き起こす」といった趣旨の引用も活かされている。恐らく爆弾ならば、どんなものでも判別できるだろうが、現実社会においては種類豊富なシリアルを判断することができないというのはユニークな皮肉となっている。 ただ、主人公をカッコいい英雄のような存在にも感じられたが、果たしてそれで良かったのかどうかという問題もある。中途半端に英雄のような存在として描くよりも、もっとクレイジーさがあり、もっとぶっ壊れていてもよいのではないか。彼には人間味や善悪の感情が残りすぎているような気がする。マトモな神経を持っているようでは、この世界では生きていけないだろう。メッセージ性という観点からすると、英雄的では弱くなってしまうのではないか。あまりゴチャゴチャさせると作風が損なわれるので、難しいところでもあるが、戦争ジャンキーの主人公によって他の兵隊の人間性などが喪失していくような過程も描いて欲しかったところ。主題の“戦争ジャンキー”という扱いに対して、やや中途半端な仕上がりという印象は受ける。
[映画館(字幕)] 8点(2010-03-23 22:05:18)(良:1票)
107.  ロックンローラ 《ネタバレ》 
それほど悪くはないが、それほど良いとも思えない作品。 悪くはない点としては、鋭いユーモアとエッジの効いたガイ・リッチー独特のセンスは光っている。 ハリウッドコメディ作品を観ているときよりも笑っている時間が多かったような気がする。 ベタな部分でもあるが、「オマエ、俺とやりたいのか」という意表を付いたゲイネタの使い方などが悪くなかった。 このネタを途中でつまらないネタ晴らしをせずに、ラストまで引っ張ってもよかったのではないか。 それほど評価できない点としては、やはりゴチャゴチャし過ぎている。 ストーリーはほぼ100%理解でき、登場人物もほぼ100%把握できるにも関わらず、整理されておらず雑然としている。 そういう雑然さがいい効果を生み、評価される場合もあるが、本作はそういう効果を生まなかった。 ゴチャゴチャしているために、肝心の主題ともいえるものが見えてこず、観ていて途中で飽きてしまうところもあった。 「あぁ、なるほど“ロックンローラ”とはこういうことだな!」というぶっ飛んだ生き様が感じられない。 ボスの忠実な腹心、女に動かされて強盗をする奴、ただのジャンキーが“ロックンローラ”というわけではあるまい。 こいつら全員ヤバイな、イッチャッているなというものがなく、ある種ぬるま湯のような生き様しか描かれていないのは残念だ。 全員が主役というような位置付けのようであり、ユニークなキャラクター像はそれぞれ描かれているものの、個々のキャラクターが逆に弱まったような印象も受ける。 存在感を発揮しなければならないボスの腹心やボスの義理の息子があまりにも存在感が弱すぎるのではないか。 彼らが活躍してくれなければ、本作が躍動しない。 また、“絵画の行方”“裏切り者は誰か”という根幹に関わるネタも上手くストーリーに溶け込んで活かされているとは思えず、ストーリー展開の上手さが感じられない。 “裏切り者は誰か”というネタを活かしたいのならば、もっと伏線を張っておいた方がよかっただろう。 “絵画の行方”もいい意味での裏切りやドタバタが少なく、サプライズ感が生まれなかった。 会計士への求婚もラストのオチを付けるために、取ってつけたような仕上がりとなっている。 全体的にスムーズで精錬された流れを構築できずに、行き当たりばったりに進んでいったような印象を拭えない点がマイナス評価となってしまった。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2010-03-20 00:22:11)
108.  リボルバー(2005) 《ネタバレ》 
「シャーロック・ホームズ」鑑賞時にはガイ・リッチーはそれほど大したことがないと思っていたが、本作を観れば、それが誤解だということが分かる。 「シャーロック・ホームズ」で不満に思っていたようなことが本作では全てクリアーになっていた。 先が全く読めない展開であり、一瞬も気を置けない緊張感で溢れている。 本作によって彼の評価は“特異な才能をもつ優秀な監督”というものに変わった。 デヴィット・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、クエンティン・タランティーノ監督などの他の作品からのアイディア借用のような展開もみられるが、批判を恐れずに、自分のやりたいことを追求したことによって、個性の感じられる自己流の作品に仕上がった。 エッジの効いた独自の世界観が構築されているだけではなくて、ガイ・リッチー節が効いたクライムサスペンスをベースにしたエンターテイメント性も十分感じられる。 突然アニメを使ったり、エンドロールがなかったりと行き過ぎた点も見られるが、一種の“遊び”と捉えて、多めに見よう。 様々なことをやりたくなって、暴走してしまっただけだろう。 初見では完全に理解できたとは言いがたいところもあるが、彼が描こうとしたことはだいたい伝わったような気がする。 “全てが現実”から“全て独房における妄想”といったものまで様々な解釈が可能なので、あえて紹介する必要はないだろうが、個人的には精神を病んだ元囚人の見事な復讐劇だったという解釈にしたい。 ゲームに勝つために、彼は自分で自分を騙したのだろうか。 前半のゲーム性のあるクライムサスペンスから一転して、後半では心理的な要素をメインにしていくという思い切った意外性も評価したい。 おかげで付いていくのが大変かもしれないが、訳の分からない世界にいざなってくれたおかげで、各キャラクターと同様に何が現実で、何が虚構なのかという“混乱”した精神状態を堪能できるのではないか。 過去の彼の作品とは異なり、観客を騙す、騙されるという“オチ”のようなものを披露して観客を驚かすといった単純なものではないという点も評価したい。 初期の作品から成長して、本作によって前進しているのではないかと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2010-03-16 21:34:09)(良:1票)
109.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 
つまらなくはないが、期待度が高かっただけに少々物足りなさも覚える。全体的にドキドキ感やワクワク感には乏しく、爽快感やサプライズも感じられなかった。もっとホームズを危機やピンチに陥らせて、もう少しハラハラさせた方がよかったのではないか。危機に陥ったとしても明晰な頭脳で切り抜けたり、本当に危険な際にはワトソンが助けてくれたりしないと盛り上がらない。屠殺場でのアイリーン救出劇や大爆発といった展開はもちろん用意されているが、基本的には予定調和気味の仕上がりといえる。 アクションをメインにしてもよいが、ホームズらしい謎解きという要素がほとんど見当たらないのも残念だ。ホームズがおかしな動きをしたり、やたら変な物をクローズアップして、伏線的なものはきちんと張っているが、観客が推理するという仕掛けにはなっておらず、観客はやや置き去り気味となっている。最後に一気にネタ晴らしされても、「ふ~ん、そうだったんだ」位にしか感じられない。 その肝心のトリックや謎や陰謀も分かるごとにテンションが下がってしまった。自分に従わない国会議員を殺すというどうしようもないネタには拍子抜けであり、トリックは古典的かつ既視感があるだけではなくて無理があるものばかり。ブラックウッド卿自身にカリスマ的な“悪”が見えてこないのもマイナスだ。 そのようなネタやトリックを無視できるほど、ホームズとワトソンの相棒愛やコンビが光っていたかというとそうでもない。ロバート・ダウニーJr.は頭脳明晰ではあるものの、人間的にやや足りず、女には甘いというルパンⅢ世のような親しみやすいユニークなキャラクターには仕上がっているが、アイリーンは峰不二子、ワトソンは次元や銭形のようなキャラクターには仕上がり切っていないため、肝心のホームズとワトソンの友情や信頼感などをそれほど深いものだとは感じられなかった。 変装して彼を見舞い治療するという姿にはやや驚いたものの、それだけでは足りない。 モリアーティ教授の登場は嬉しいが、こちらもどうしようもない動機にはテンションが下がる。モリアーティ教授を登場させるくらいならば、ホームズもブラックウッド卿も実はモリアーティ教授の掌で転がされていただけ、事件は何も終わっていない、むしろ今から事件が始まるというオチくらいのものを出して欲しいところ。 そうしないと続編に対する期待感を欠くこととなるだろう。
[映画館(字幕)] 6点(2010-03-15 21:03:57)(良:3票)
110.  恋するベーカリー 《ネタバレ》 
ナンシー・マイヤーズはそれなりに評価をしていたが、本作ははっきり言って全く合わず、冗長という印象。ユニークかつ個性豊かに演じられていたものの、いかなるキャラクターにも感情移入させられなかった。自分の年齢が本作のキャラクターほど高くはないので、仕方がないのかもしれないが、何をやりたいのか、何を描きたいのかが見えてこず、全体的にまとまりを失い、ぼんやりと手探り状態で進んでいるイメージ。過去の作品とは異なる新しいことを模索したが、やろうとしたことが難しすぎて上手くいかなかったのだろうか。笑えるシーン(少々反則気味)もあるが、コメディパートも全体的にノリ切れない。ラリったシーンも、娘の婚約者の存在も悪くはないものの、上手く活かし切れているとは思えない。 きちんと見なかったのかもしれないが、メリルとアレックがよく分からない理由で再び別れたような印象。デートを一度すっぽかされただけで、一気に関係が冷えてしまった。別れる理由に明確な理由は必要ないかもしれないが、もう少しきちんとまとめて欲しいところだ。メリルが「離婚の原因は自分にもある」というようなことを言っていたと思うが、結婚というものは“愛している愛していない”という単純なものではなくて、原題のタイトルどおりに複雑でデリケートなものであろうと思われる。 同じ道を歩んでいた二人が別の道を選んでしまった結果、もう同じ道は歩むことはできないということを描き、終わってしまったものはやはり元に戻らないということを少々切なめに仕上げて欲しかった。子どもが独立した妻は寂しさから、夫は自宅に居場所がないから、逃げ場所が欲しかっただけであり、過去にあった“愛情”とはやや別のカタチだったということでもよかったのではないか。子持ちの若い奥さんもアレックとの子どもを欲していたり、建築家と踊る元妻を悲しそうに見つめるアレックを寂しそうに見つめるシーンを見る限りでは、若い奥さんは夫に対して、愛情があるのだろう。アレックが若い妻からの愛情に気付いたり、ベタかもしれないが彼女が妊娠したりと状況をもっと“複雑化”させて、メリルとアレックの夫婦が上手くいかないように進めてもよかった。子ども達もほとんど“飾り”という存在でしかないのも寂しく、この辺りも上手くまとまっている感がない。 笑えて、泣けるというナンシー・マイヤーズという特徴が全体的に感じられなかった。
[映画館(字幕)] 3点(2010-03-13 10:39:57)
111.  ジュリー&ジュリア 《ネタバレ》 
ユニークな構成かつハートウォーミングなテイストに仕上がっており、思ったよりも楽しめる作品だ。劇的なストーリー展開や驚くような感動的なオチもなく、不満な部分も多々あるが、二つのストーリーを上手く編集し組み合わせることで、それほど飽きることなく鑑賞することができる。 女性が書いた原作作品を女性監督が監督したことで、女性が女性らしく描かれている。 単調な仕事の中で自分の人生に疑問を持ち、何かで埋めようと必死になる姿や、時にはポジティブに、時にはネガティブに振舞う姿や、わがままで自己中心的、負けず嫌いで自分勝手な姿など、作り物ではない等身大の女性の姿が描かれているように感じられた。女性の観客は彼女たちをより身近に感じられて、自分も頑張ろうという気持ちになれるのではないか。 そのような妻たちを支える夫たちにはそれほどスポットが当てられていないが、要所要所で彼らの優しさが垣間見られるように製作されている。料理に没頭する姿にそれほど文句も言わずに、ひたすら付き合い、甘いケーキにはつまみ食いをして無言の励ましや賞賛を与えつつ、時には適切なアドバイスを送るという夫の鑑のような存在だ。 逆に、落ち込む妻たちをなんとか励まそうと努力しても、夫たちの苦労も知らずに“ピザ屋の2階”“パリに戻りたい”というような無神経なわがままを言ったりもする。 しかし、この辺りが個人的には非常に上手いと感じられた。 現実の人間は“聖人”ではなくある意味では“自分勝手な存在”なので、よりリアリティ度が増すように計算されている。 ジュリーに対するジュリアの誤解の件がやや尻切れになっているが、完全に美談にしたくはないという想いもあったのだろう。途中で彼女をネタにするようなコメディアンのシーンを盛り込んでおり、このような類と彼女が誤解したのではないかという想像させるようになっている。コメディアンのシーンも計算して盛り込んだように思われる。 それにしても、ジュリアの書物がジュリーに影響を与えて、ジュリーのブログが読者に影響を与えて、読者となった新聞記者の記事が出版業界に影響を与えて、出版物が映画界に影響を与えて、そのようにして出来た映画を我々が鑑賞するという流れは非常に不思議な気持ちになる。時間や空間を超えて一つに繋がっているということを改めて認識させられる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-11 22:47:02)(良:1票)
112.  コララインとボタンの魔女 《ネタバレ》 
満点にしてもいいくらいの作品。子どもだましのアニメ作品とは一線を画す芸術的ともいえる高レベルのものに仕上がっている。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の監督ということしか知らなかったが、優れた才能にはただただ圧倒されるだけだ。個人的には「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」よりも本作の方が好みかもしれない。 誇張なしにして、まさに幻想的かつ魅惑的な世界に放り込まされるような感覚に陥る。 現実世界ともう一つの世界を繋ぐ通路の“ぐにょぐにょ”した感じが非常に心地よい。 アニメはそれほど好きではないが、実写とは異なる独特の世界観を構築できるので、アニメ作品の可能性は改めて広いとも感じられた。 また、恐らく3Dでなくとも素晴らしい作品だと思うが、3Dの利点を活かされた作品ともいえる。昨今は何でも3D作品にしていく傾向がみられるが、他の作品は本作を見習って欲しいものだ。 さらに自由自在に描くことができるCG作品(本作も一部使用しているが)とは異なり、制約のかかるストップモーション作品であることをまるで感じさせないほどの手間の掛け方にはただただアタマが下がる想いだ。 大したストーリーがなく、非常に狭い世界を描いているにも関わらず、ほとんど飽きることがないというのは世界観や各キャラクターにそれだけ魅了されたということだろう。ストップモーション作品であるにも関わらず、各キャラクターの豊かな表情には驚かされるばかりだ。 「閉じ込められた親を助ける」「幽霊たちの眼を探す」「魔女を倒す」といったメインストーリーもあり、この辺りの展開については多少中途半端かつあっさりした感じもあるが、そういったことにはほとんど気にならないほどの仕上がりとなっている。ストーリーには多少物足りなさがあるが、“親に甘えたくても、素直に甘えられない少女の気持ち(一人寂しくてベッドで涙するシーンが良い)”“少年や猫や隣人たちとの友情”といった要素もみられる。“最後まで諦めない気持ち”や“勇気”や“少女の成長”辺りの要素ももっと加えて欲しいところだが、世界観で圧倒しているので、過大な要求をすべきではないか。 字幕版を鑑賞することとなったが、ダコタ・ファニングのノリがなかなか良く、コララインというアメリカ人らしい少女に生命感を与えている。 ストップモーション作品であることに、違和感を覚えさせないほどマッチしていた。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-08 22:31:03)(良:1票)
113.  インビクタス/負けざる者たち 《ネタバレ》 
良い映画である、それについては否定しにくい。しかし、好みの問題もあるが、ややあっさりとしすぎているという印象も拭えないところはある。自分がラグビー、南アフリカ、マンデラにほとんど関心がないという理由もあるだろうが、心に熱いものをそれほど感じなかったということも言えなくはない。ただ、実話モノでもあり、あまり感情を込めて描くとやや支障や批判を受ける可能性もあるので、ある程度は客観的な視点に立たざるを得なかったのかという気もする。また、あまり押し付けがましいものはイーストウッドが好まないのだろう。鑑賞する者に様々な判断を委ねているのはイーストウッドならではの余裕か。 一本の道を境にしてラグビーをプレイする“白人”とサッカーをプレイする“黒人”を二つに分けて、その間をマンデラの車が走り抜けるという冒頭のシーンが非常に印象的だ。このシーンだけでほとんどのことを語り尽くしている。イーストウッドはさらに分かりやすくするために、SPに関しても白人チームと黒人チームを分けていき、対抗軸を構築している。徐々に白人と黒人が混ざり合っていく仮定を“マンデラ”を象徴的に描きながら、最後には共に“勝利”という気持ちを共有し、一つの国家としてまとまるほどに盛り上げていっている。熟練された演出は磐石と言わざるを得ない計算されたものとなっている。 また、“赦す”というキーワードは現在にも通じることだ。昨今のアメリカを巡る紛争や解決の見通しの立たない民族対立などのワールドワイドのことから、我々が属する小さなサークル・社会にまで当てはまる。人間の集まりである以上、“対立”が生じることは防ぎようがないが、“憎しみ”からは新たな“対立”しか産まない。“赦す”というシンプルだが、難しいことを一つの解決策として提示している。何十年も牢獄に入れられたマンデラが出来たことなのだから、我々にも出来るはずだというメッセージだろうか。マンデラ同様にイーストウッド自身も“過去”ではなくて“未来”を見続けているような気がしてならない。 さらに冬季オリンピック及びサッカーワールドカップイヤーという時期にふさわしい映画となっている。本作やオリンピックを見ていると、やはりスポーツは多くの人をまとめるチカラを持っているものだと改めて感じさせる。 ややドライな感情をもつ日本人にとっては、こういった感情こそ必要なのかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-01 21:49:52)(良:1票)
114.  パラノーマル・アクティビティ 《ネタバレ》 
殺人鬼やモンスター・ゾンビを登場させて、派手な流血を好むと一般的に思われているアメリカ人としてはなかなかユニークな作品を作ったという印象。恐怖を与える存在が具象化されることはなく、音や影や足跡などを利用して得体の知れない“存在”で驚かせる発想やアイディアはそれなりに評価したいところ。 また、(実際には大して起こらないが)何かが起こるかもしれないという人間の感じる恐怖感を上手く煽り、恐怖感を効果的に利用するできているのではないか(個人的にはそれほどの恐怖は感じなかったが)。製作者の計算なのか、予算の関係なのかは分からないが、観客の“恐怖”が発散されずに最後まで“維持”されていくので、ラストに上手く繋がっていく。さらに、素人のような俳優、ブレまくるカメラの映像、いい位置にセットしてある寝室のカメラなどのマイナス的な要素も逆手にとって効果的に利用している。しかし、全体的に作り込みの甘さ、粗さ、稚拙さも目立つ作品(意見は分かれるかもしれないが、「ブレアウィッチ」の方が作り込み度は高かったと思われる)。 低予算による試験版のようなものなので、この程度でも仕方がないかもしれないが、もうちょっとだけでも丁寧に作成し、もう少し様々なアイディアを盛り込むことができていれば、評価はもっと高まっただろう。夜間に突っ立っているだけ、突然ベランダに行くといったネタもあるが、ラスト付近で突然おかしなことを言い始めるといった“不気味さ”などをもっと前面的に押し出してもよかったか(ラスト後の余韻は評価)。序盤は楽観的な雰囲気を出していてもよいが、楽観が悲観に上手く変わるような演出も求めたいところ。 ところで、やむを得ず、渋谷で鑑賞することとなったが、観客層が非常に若かった。 驚いた声を出す・隣の連れと常にしゃべり続ける・前の席の後ろに足裏をくっ付けるような体勢で見るといったように鑑賞態度は非常に悪かったが、リアルに感情を表してくれるので、本作のような作品を鑑賞するにあたっては、悪くはない環境だった。 予告編や紹介VTRなどを見ていると、ラストではだいたい“アレ”が来ることが分かるので、自分は構えることができたが、不意を付かれると相当にビビルようだ。 後ろの席から、どれほどビックリすれば、そのような衝撃を与えることができるのかと思えるほどの衝撃が自分の席を直撃した。 映画よりも、それが一番ビビった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-20 13:41:41)(笑:1票)
115.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 
素晴らしい作品だと思うが、同時につまらない作品でもある。ジャッジするのはかなりやっかいな作品だ。ただ、ピーター以外には作れないような作品に仕上がっており、独創性は評価したいところ。初見では上手く感じ取れなかったが、何回か見ることがあれば、評価は変わると思われる。 「事件の真相」「殺された少女が幽霊になり、家族にメッセージを送って犯人を暴く」「残された家族が犯人に復讐をする」といった視点からみてしまうと、はっきり言ってつまらない作品としか思えないだろう。本作はそういった視点をメインには描こうとしていない。大人の事情からかサスペンスタッチが前面に出ているテイストとなっているが、ピーターはそういった面はもっとカットしたかったのではないかと思えるほどだ。スタンリー・トゥッチが必要以上に頑張り過ぎてしまったのも誤算だったか。おかげでバランス感が悪くなった点は否定しがたい。 本作は「殺された少女が天国に行くまでの過程」及び「残された家族・関係者が再生していく姿」を描いた作品であると思われる。そういった視点から見てみると、本作の評価はがらりと変わると思う。ピーターにとっては、犯人の存在なんて本当はどうでもよかったのではないかと思われる仕上りだ。 殺された少女の少女らしい想いや、家族の苦しみや悲しみが、ストレートではないものの、時間を掛けてゆっくりと丁寧に描かれている。しかし、本来描きたい部分を何故か真正面から十分なヒカリを当てずに描こうとしており、豪華な俳優を起用しているのも逆に計算外だったか。各キャラクターを活かしきれていないと感じてしまうのは仕方がない。 面白いと感じられる点は、関係者それぞれが“愛”を見出して、スージーの死を受け入れていくところだ。スージーのボーイフレンドや妹は新たなパートナーを見つけて愛を感じたことで、スージーの死を受け入れることができたのではないか。また、娘の死という事態に上手く向き合っていくことができなかった父母も時間の経過とともに悲しみを癒して、それぞれの壊れかけた“愛”を再認識することで娘の死と向き合うことができるというまとめ方はなかなか感動的なところだ。喪失感・無力感から救われていく“希望”のような光が見えたような感じがした。しかし、つまらなさを否定しにくく、アプローチが監督の思惑とはズレていったようなところがあるので、賞賛しにくい映画ではある。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-09 23:03:10)(良:1票)
116.  重力ピエロ 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 雰囲気や仕上りは悪くはないので、評価は低くはない。しかし、「どこが良かったか」と問われると、なかなか答えが見当たらないという困った作品。家族の絆に対して感動できるものでもなく、不可思議なストーリーやサスペンスに関しては文句を付けるレベルではないが、回りくどさにやや疑問点も生じてしまう。 “たかだか・・・”という事柄がいかに関係者を苦しめるかが痛いほどに伝わってくるが、一歩間違えれば「改心しない犯罪者は殺してもよい」という極端な結論が導かれてもおかしくはない。どんなに苦しいことがあっても、笑って明るくしていればよいというメッセージは心に響くので、ありきたりでキレイごとのオチになるかもしれないが、“復讐”を果たすことなく、犯罪者にある程度のダメージを与える程度に済ませてもよかったかもしれない。復讐を果たすことである程度スッキリとするかもしれないが、別の苦しみにさいなまれることになるだろう。しっかりとしていないかもしれないが、兄なのだから、やはり弟を止めないといけない。兄だからこそ、弟を止めないといけないというべきだろうか。逆に、兄が犯罪を企てているとすれば、弟だからこそ、兄を止めるということもあるだろう。「グレープ」のやり取りのように一緒になって、笑って明るくすれば、弟の心の傷を癒してやることができるのではないか。“血”よりも家族の“絆”は濃いのであり、“最強の家族”というのはそういうことではないだろうか。 (統計学的なデータは分からないが)暴力的な性質は先天的にひょっとして遺伝するかもしれないが、犯罪に対して犯罪で仕返しをするというのはいかがなものか。自己の遺伝子を否定したいにも関わらず、自らそれを認めることにはならないか。せっかく産んで育ててくれた父母の恩に報いることにもならないだろう。どんなに苦しいことがあっても、“復讐”をしなくても最強の家族の“絆”はそれを乗り越えることができるはずだ。 もし、“復讐”を肯定ないし是認できるレベルにもっていきたいならば、もう少し深く兄弟の内面に切り込まないといけない。“法律”“倫理”といったものを超越できる作品レベルに達しないと、「殺人はやっぱりダメだよ」という意見が多くなっても仕方がないだろう。原作を読んでいないので、こういうことしか言えない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-08 23:09:26)
117.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 「フィッシュストーリー」という一曲が世界を救うという流れだが、ほとんど直球がなくて、大部分が変化球というところは逆に面白い仕組み。 『それ関係ないやん』という突っ込みを観客に入れさせることを当然に念頭に置かれて製作されているだろうが、狙い通り突っ込みを入れたくなる流れとなっている。 マジメに直球を待っていると、意外な変化球に戸惑わされることになるだろう。 この世の中では何が起きても不思議ではないということをユニークな視点から感じさせる作品となっている。 また、70年代はパンクロックに情熱を燃やす青年たちを描き、80年代はオカルトチックな昭和テイストを感じさせ、00年代はアクション作品を描き、10年代はSFテイストを交えながら、終末をまさに迎えようとする3人の男たちによる独特な世界を描かれており、年代ごとに演出のテイストを変えていることは評価したいところ。 ただ、どういう趣旨かは分からないが、多部未華子が出演している大部分のシーンにはどこか違和感を覚えさせる。 いい意味でのアンバランスなバランス感覚に優れている作品だが、この部分が悪い意味で失敗しているように思われる(別に彼女のことは好きでも嫌いでもない)。 「正義のみかた」というキーワードから、特撮やアクションヒーローのようなテイストに振りすぎてしまったか。 もともとリアリティのある作品ではないが、胡散臭さが倍増したというイメージ。 こういうテイストが好きな人もいるとは思うので、正解・不正解という単純な割り切りはできないが、個人的な感覚では少し合わなかったという印象。 また、「シージャック発生○分前」というテロップを出すことに対しても違和感がある。 そんな種明かしをすることによって、どういう効果を期待しているのだろうか。 こういうことは、むしろ突然やった方が観客にインパクトを与えられるのではないか。 逆鱗による居酒屋での“フィッシュストーリー”の種明かしも、彗星の爆発のあとのオーラスに持ってきた方がいいかなという印象。 “フィッシュストーリー=ほら話”というオチをもってくると、今までのこと全て現実なのか虚構なのか、観客に対して“混乱”させる効果を生じさせることができるだろう。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-07 20:37:03)
118.  ラッシュライフ
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作未読のためか、終始疎外感を覚えてしまった。 学生が製作に関わっているようであり、自分の世界を構築することにこだわりすぎて、観客の目を意識するまでには至らなかったようだ。 しかし、それほど嫌いではないテイストにはなっている。 原作を読んでいないので何ともいえないが、調理するのは難しい題材だったのだろうか。 もう少し練り込めばもうちょっと良い作品に仕上がった気がする。 また、個別エピソード自体理解できないものがないが、あまりにも漠然かつふんわりとしすぎてしまったか。 全体を通して、何を伝えたいのか完全にボヤけてしまった。 4人の監督がそれぞれを受け持っているようなので、バランスも少々悪くなっている。 黒澤編のような分かりやすい作品にするのも何か違和感を覚えてしまう。 そのアンバランスさが本作の“味”のようなものにもなっているが、一般受けするのは難しいだろう。
[DVD(邦画)] 4点(2010-02-06 23:20:33)
119.  Sweet Rain 死神の精度 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作未読のためか、終始ズレを感じてしまった。 47年近い時間のズレを製作者は懸命に表現しようとしたのかもしれないが、それが上手くマッチしてないという印象。 難しいところだが、時間のズレなどは思い切って無視して演出してもよかったのではないか。 詰まらないことに監督はコダワリを持ったようであり、観客からするともっと他の事をきちんとして欲しいと言いたくなる。 また、ステレオタイプ型の表現が多く、それが違和感を与えているばかりか、全体的に表面の部分をすくったようにしか思えないために深みを感じられない。 さらに“死”を問い切れていないように思えたので、高く評価することはしにくい。 死神の立ち位置も曖昧のような気がした。 死神よりも、ある意味で藤木さんの方が達観しているのには違和感を覚える。 ラストでは成長しているようには感じられるものの、死神としての成長を描くということも重要なことではないか。 死神は全てのことは知っているが、人間の感情を理解していないということといった設定を付加するとよかったかもしれない。 そういう意図は込められていたようだったが、雨が止まないのは、死神としての途中の状態であり、人間の感情を理解して初めて一人前の死神になれるというようなことでもよかったか。 一人の女性を描くのならば、『なぜあの時に殺さなかったのか』ということをもう少し問うてもよかっただろう。 生き続けることによって、不幸で苦しい思いをしたことは間違いないが、生き続けることによって、素晴らしい経験もできたということを藤木さんに伝えてもよい。 映画内では、藤木さんの方で自己解決してしまっており、死神をただの使い走りにしているのはちょっと違うのではないかという印象。
[DVD(邦画)] 5点(2010-02-05 23:31:21)
120.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
原作未読。長尺だが、飽きることがなくストーリーに集中でき、鑑賞後は素直に面白かったと感じたので評価は高めにしたい。宗教ネタや重いネタも絡んではいるが、事件のネタ自体はそれほど驚かされるものではなく、比較的ありふれた猟奇的殺人事件がベースとなっているものの、捜査の推移を見守っていれば、それなりに楽しむことができる。事件の謎や人間関係は一見複雑にみえるが、比較的シンプルで丁寧な作りとなっているので、付いていきやすいと思われる。観客を置き去りにして、製作者の都合でストーリーをガンガン進めるというようなハリウッド映画のような作りではなくて、捜査を依頼された雑誌記者と同じような目線で観客はゆっくりと丹念に事件を見つめることができるのも好印象だ。シンプルで丁寧な作りとはいっても、訳の分からない伏線を張って自滅したり、登場した瞬間に「オマエ犯人だろう」というような単純な作りではなっておらず、犯人や事件の真相は最後まで分かりにくいので、ハリウッド映画とは異なる“新鮮味”を感じられる。スウェーデンの最近の映画はあまり見たことがなかったので、この機会に見られてよかった。 また、ハリウッド映画とは異なり、派手さがない一方で、エログロ度が高いというのも特徴。殺そうとする直前に、水を飲ませてやるといったやり取りなどは、なかなか興味深い視点からも描かれている。 リスベットとミカエルの微妙な関係も物足りないながらも、興味深く描かれている。この二者の関係がより深まるのは“続編”を待つしかないようだ。ただ、自己の感情は押し殺し、暴力的な感情に満ちているように見えるリスベットだったが、ミカエルにメールを送付した時点で、心のどこかで何かを求めているのではないかと推測もできる。 リスベットは消えない“過去”をもっているからこそ、ノーマルとはいえないアプローチを図り、一緒に寝ようとするミカエルに対してストレートな対応ができないところも何かを雄弁に語っている。抱いてはいけない感情が溢れてきたから、あの時に姿を消したのだろうか。忘れることができないから、刑務所に逢いに来たのだろうか。 サスペンスの面白みだけではなくて、こういった複雑な感情が入り混じっている点も面白みの一つとなっている。単純化された相対する性格のコンビとはやや異なるタイプのコンビであり、二者の微妙で単純ではない関係も本作を豊かなものにしている。
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-04 23:04:01)
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