101. 奇跡(1955)
《ネタバレ》 これは舞台劇の映画化なのでしょうか? 主な舞台は室内、長回しでリアルタイムに芝居を見せる手法が、舞台を彷彿とさせます。個人的には好みに合っています。 信心のない人間としては、真の信仰というのは“あっち側”の人間にならないと得られないのか、などと思ってしまいました。気の触れたヨハネスが、それを象徴しているような。劇中「何が正常で何が異常なのかわからない」という台詞もありましたが、こちらでは異常と思われることが、信仰の世界では正常となるのかもしれません。 あと印象深かったのは、聖書にあるキリストの奇跡は信じるのに、目の前の奇跡は信じないというアイロニー。科学万能の考え方に対するアンチ・テーゼともとれます。いろいろと奥深い作品のようですが、それを味わえたかどうかはともかく、飽きずに見ることはできました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-03-14 21:44:54) |
102. 続・菩提樹
《ネタバレ》 トラップ・ファミリーのアメリカでの紆余曲折は、NHKのドキュメンタリーでも取りあげられていましたが、こうして映画(ドラマ)として見た方がわかりやすいし、親しみも持てます。観客に受け入れられるまでの試行錯誤が、面白く描かれています。「歌の力」を発揮するところは相変わらず。それにしても、最初は宗教曲ばかり歌っていたので成功しなかったとは聞いていましたが、パレストリーナやバッハのモテットまでレパートリーに入れていたとは恐れ入りました。そりゃあ受けませんわ。しかも、神父やマリアは宗教曲を広めるのを使命と考えているので、なぜ受け入れられないのかわからないのが、おかしいというか、実のところ歯がゆい。この辺は事実とはいえ、ドラマとしてうまい展開だと思います。私のように、アマチュアとはいえ音楽を演奏する立場にいる者としては、自分が聞かせたい音楽と聴衆が聞きたい音楽との乖離について改めて考える、良い機会ともなりました。西ドイツの映画であるためか、観光気分でニューヨークやアメリカ各地の景色を映す場面が冗長で、その点だけが残念でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-03-12 20:49:24) |
103. 深く静かに潜航せよ
《ネタバレ》 対戦相手が日本軍ということで複雑な思いもありますが、ゲイブル/ランカスターのコンビは強力。ストーリーもテンポよく、特に潜水艦同士での位置の探り合いはサスペンスもあって引き込まれました。ほとんど視覚の使えない潜水艦で、センサーがいかに重要かが改めてわかります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-05 16:44:03) |
104. 第十七捕虜収容所
《ネタバレ》 この監督らしく、ユーモアがあり各人物も個性的で、複数のエピソードを飽きさせることなく見せてくれます。スパイ捜しかと思いきや正体は勝手にわかり、唯一正体を知るセフトンを中心としたサスペンスになりますが、これが利いている。元々舞台劇だったということで動きは少ないのですが、それが気にならない面白さ。ただ、まとまりがよすぎて今ひとつこれというポイントに欠ける憾みがあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-02 21:14:22) |
105. 翼よ!あれが巴里の灯だ
《ネタバレ》 なかなかよかったです。あいかわらず小道具の使い方がうまいですね。今回は犬とかカレイとかハエとか……これって小道具? 神父さまのペンダントは予想通りですが、「やはりそう来たか!」と嬉しくなってしまいます。回想を使ったのも、時系列順に話を進めるよりよかったでしょう。ただ、最後はむりやり盛り上げたような気もします。当時は画期的な行為だったのでしょうが、やはりピンと来ません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-20 19:27:12) |
106. 恐怖の報酬(1953)
《ネタバレ》 これはもう演出がバツグンによくて、締まったサスペンスになっています。今見ると常套的な部分もありますし、次から次へと難関が待ち受けるというのは、話ができすぎという気もしますが。それと、序盤が退屈。これはあらかじめ「ニトログリセリンを運ぶ話」だということを知っていて、なかなかそこまでたどり着かないこともあったかと思います。内容的にも、後半への伏線として必要だとは思いますが(特にマリオとジョーの関係)、退屈だったものは仕方がない。ここはかなりのマイナス。それ以外はよくできた映画だと思いますが、どうも個人的な好みではないですね。どこがどうと具体的に指摘できないのですが、あまり高い点数をつけようという気にはならないです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-29 16:15:28) |
107. 明治天皇と日露大戦争
《ネタバレ》 空前の大ヒットを飛ばした映画だそうですが、見て理由がわかりました。とりあえず、単純に面白い。かつては雲の上の人であった明治天皇や乃木将軍を、苦悩する一個の人間として描いたところが見どころでしょうか。アラカンの明治天皇が、はまっています。あそこまで人格者だと、美化何%だろうと考えながら見ていたのですが、統治者の理想として描かれています。前半、陸戦をロングで捉えたところも、スペクタクルらしくてよろしい。ただ、バタバタ死んでいく兵士の芝居はわざとらしかったです。後半の海戦は、ミニチュアはのちの技術に及ばないものの、ロシア船の様子もある程度描かれていたので、前半よりはよかったと思います。 印象的だったのは、たしか井上馨だったかが「軍部が開戦を決定してはならない」と言ったこと。これはあきらかに、昭和時代に戦争を起こした軍部への批判でしょう。また、たいへんな数の死者が出たにもかかわらず、国民がそれを悼みもせず勝利に浮かれるラストシーンには、慄然とします。こういうことがあるので、なかなかどうして一筋縄ではいかない映画ではないかと感じました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-03-22 11:06:01) |
108. バンド・ワゴン(1953)
ミュージカルとしては、まあ普通ですか? 公園でのダンスはすばらしいし、三つ子の歌はおかしいし、大熱演のジャック・ブキャナンも楽しいけど、「これ」っていう決め手に欠ける。「ザッツ・エンタテインメント」が聞けてよかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-02-01 19:30:27) |
109. ピクニック(1955)
《ネタバレ》 ここで描かれているのは、大半の日本人が「ピクニック」と聞いてイメージするであろうものとは、ちょっと違いますね。町をあげての一大イベントで、日本でいえば地蔵盆を大がかりにしたようなものでしょうか。 それはともかく、このピクニックのシーンが実に楽しい。これはシーンの切りかえ、編集の妙が生きています。前半までは、のんびりムードで普通のラブコメかと思われますが、途中で思わぬところから暗雲が立ちこめ、一挙にシリアスなムードに。が、主人公が迷走し始めて、映画の展開自体がおかしなことになってしまったようです。ここは大いにマイナス。ただ最後は、なんとか無難にまとめたようです。通常のラブストーリー以外に、親と子の関係や姉妹の相克などを取り上げ、それぞれひととおり描いてみせていたのはおみごと。ちょっと欲張りすぎという気もしますが。あと、マッジやハワードが申し出を受けながらなかなか決められないのは、人生の一大事だから至極もっとも。こんなところにリアリティを感じます。 キャストはみんなはまり役で好演。ローズマリー先生が人気を呼びそうですが、個人的にはけっこう可愛いスーザン・ストラスバーグが印象的でした。劇中“不美人”と言われていましたが、キム・ノヴァクと比べられちゃあねぇ……。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-01-17 16:49:10) |
110. 渚にて
《ネタバレ》 非常に真面目に作られた反核映画で、全編リアルな演出に徹したのが効いています。力作だとは思いますが、見終わると疑問が。 放射能の影響による“死”を扱っている割には、死体がひとつも出てこない。まったく無人のサンフランシスコという図は、これはこれなりに恐怖感を抱かせるわけですが、猫の子一匹死体がないとはどういうことか。放射能汚染で突然死ぬわけではあるまいし、パニックになって暴動や略奪が起こりそうなものですが、そういった形跡もなし。まあ、作品全体の雰囲気と合わないのかもしれませんが、あまりにも静かすぎます。 核戦争が「愚かな人間」によって引き起こされたのなら、愚かであることを感じさせてくれなければ、なるほどと納得できません。どうも、あまりにも綺麗事すぎるんじゃないかと思います。結局のところ、「アメリカ人が作った反核映画」はこんなものか、という気がします。いい映画だとは思いますが、傑作とは言えません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-01 20:44:50) |
111. 刑事(1959)
事件を扱っているのはあくまで手段であって、事件に関わった人たちの生き様を描いた映画。特に目新しいところはないのですが、正統派の展開で手堅く作ってあります。その展開自体はシリアスな一方、刑事同士の会話がコミカルでバランスをうまくとってあります。なんとなく昔の日本の刑事ドラマ風なところがあり、影響を与えたのかも? と勝手に推測しました。しかし『鉄道員』もそうでしたが、監督が主演を兼ねると、やはり自分をむちゃくちゃ格好良く撮ってしまうものなんですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-08-02 19:12:21) |
112. 鉄道員(1956)
《ネタバレ》 イタリアのホームドラマ。いろいろあって家族離散するが、最後は丸く収まるという、ありがちなお話。逆に言うと正統派のストーリーであり、それなりに見せる要素は持っている。親父が単なるいい人ではなく、酒飲みで暴力を奮うというのはあまりいい気持ちがしなかったが、家族思いのいい面も描かれていて、そのあたりにリアルさを感じさせる。なかなかよかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-07-26 21:03:45)(良:1票) |
113. シェーン
《ネタバレ》 改めてみて見ると、敵であるライカーが話し合いで解決したがったりと、典型的な悪人には描かれていないところが印象的でした。「銃なんて時代遅れ」と言いつつ、結局はその銃でしか解決できないあたりに、現実の難しさを感じます。そういう点ではアクション的ではなく、あくまでドラマ中心の作りになっており、なかなか見ごたえがありました。「子供の視点から描いたヒーロー」みたいなことが言われるようですが、むしろ大人側の物語が印象に残っています。 今回デジタル・リマスター版で見たのですが、夜のシーンが暗くて、本当に何をやっているのかさっぱりわかりません。これでは見ていてストレスがたまるだけです。ここがダメだったので-1点しておきます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-01-26 10:44:09) |
114. 雪国(1957)
《ネタバレ》 原作は未読。豊田四郎の格調高い演出でいかにも「文芸映画」というたたずまいなのですが、逆に言うと暗くて重い。気が滅入るほどではないですが、ままならない現実の中で抵抗しようとする女のはかなさ、みたいなものはよく出ていたと思います。岸惠子の芸者役ってどうなの? と思ったのですが、意外とはまっていました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2018-11-24 10:49:27) |
115. 炎の人ゴッホ
《ネタバレ》 正直美術にはほとんど関心がないので、ゴッホについても「こういう人だったのか」と思いながら見ていました。エピソードはまあよかったと思いますが、序盤の宗教と美術との関連があるのかないのか、そのあたりをもう少し突っ込んで見てみたかったです。ゴーギャンも登場しますが、むしろ弟テオとの情愛の物語が中心のようで、そこはよく描けていたと思います。しかし、希望が持てるような雰囲気だったのになぜ自殺したのか、正直よくわからず不可解な気持ちになりました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-19 21:04:37) |
116. スタア誕生(1954)
《ネタバレ》 映像が欠落した(?)部分をスチル写真で補った長時間版でした。 ミュージカルとしては聞き応えがありましたが、アル中の旦那はあまり好きになれない。後半は夫婦愛の話かと思いましたが、立ち直れない情けない夫では感動できません。友人のサポートも結局あまり役に立たなかったわけですし。それで勝手に死ぬのはどうよ、と思ってしまう。その結果「スタア誕生」になったという理屈はわかりますが、それより生きてちゃんとやり直した方がよかったんじゃないの? あまり晴れ晴れとしないお話でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-15 16:07:46) |
117. 白痴(1951)
《ネタバレ》 登場人物の価値観に共感できないから、良さが感じられないんですよねぇ。やはりロシアの原作で、発表時期も古いから仕方がない? しかし監督としては、現代日本にも通じるから映画化したのでしょうが……。 舞台劇を思わせる構成で、それにふさわしく台詞のやりとりには堪能させられましたが、同時に舞台劇的重さも併せ持っていて、映画的な軽妙さがあまり感じられなかったのもマイナス。軽妙といえば、第二部前半での東山千栄子の軽妙なお芝居は楽しい。この方こういうのもできるのかと感心しました。そのほかの皆さまも熱演で、監督の演出自体も見るべきところが多く、引き込まれる部分もありましたが、しんどいところも少なくなく、結局はあまり高く評価できませんです。 [地上波(邦画)] 6点(2017-04-17 20:27:39) |
118. 赤線地帯
《ネタバレ》 風俗映画としてはまあよくできていると思いますが、人物の描き方が薄いので、夫が自殺を図ったり息子に拒絶されておかしくなるというのが、唐突であまり説得力がないところが残念。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-05 08:41:35) |
119. 新選組(1958)
《ネタバレ》 一応近藤勇が主人公ですが、鞍馬天狗や月形半平太、会津の小鉄も登場して、なんでもありという感じ。しかも近藤が公武合体派で、「武力に訴えてばかりでは不毛だから、話し合うべき」とか言うのを聞くと、戦後の思想というものが反映されているようで興味深いです。ただしその近藤も、京の町に火をつけるとかいうテロ行為が計画されていると知ると、池田屋に討ち入ったりするわけですが。このあたり、どこかの国と似ていますね。 話としては、近藤と新選組を抜けて反乱の首謀者となる関兵庫の関係が主軸のようですが、有名人をそれなりの人が演じており、見せ場を作らなければいけないためかちょっと散漫に思いました。近藤と月形半平太との関係なども面白く、あくまでフィクションだと割り切ればそれなりに楽しめそうです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-01-18 18:29:41) |
120. ショウほど素敵な商売はない
ミュージカルというかショー映画で、そのあたりはたっぷり堪能させてもらいました。特に前半の「アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド」は圧巻。これがラストに効いてくるのもよかったし、締めの主題歌につなぐところもいいです。問題はお話がありきたりすぎること。あまりにも魅力に乏しすぎる。キャスト・演出はとてもよかっただけに残念です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-12-31 17:33:21) |