Menu
 > レビュワー
 > no one さんの口コミ一覧。9ページ目
no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425
>> カレンダー表示
>> 通常表示
161.  ブルー・イン・ザ・フェイス
変てこな映画ですね。ストーリーもほとんどなく、全編味わい深い遊び心でできている。普通ならストーリーの装飾となる部分ばかりをかき集めた結果、ブルックリンという町の姿が自然と浮き上がってきます。住人のささやかだけど素敵な人生がうらやましく思えるんです。  深い意味がないけど味のあるエピソードを連ねるところなんか、ちょっぴり『パルプ・フィクション』を思い出しました。
8点(2005-03-01 15:12:22)
162.  ボーン・アイデンティティー
リアリズムに徹しているかのようでいて、そこそこのけれんも効いている。そういう意味でのバランスが、絶妙でしたね。派手にマシンガンを乱射するよりは、こうやって淡々と静かに、しかし確実に殺害する方が個人的には怖いです。スナイパーを猟銃で追い詰めるシーンは鳥肌が立ちました。このジャンルの映画が『ポンヌフの恋人』と同じ場所に連れて行ってくれたことや、音楽がスタイリッシュだったことにも感動しました。サントラ買おうかどうか迷ってます。
8点(2005-02-17 21:25:23)
163.  動くな、死ね、甦れ!
スターリン政権時代の一人の少年の青春が描かれているのだが、あまりにも救いがない。『大人は判ってくれない』にも似ているけれど、さらに重く、ハードな物語。画面から受ける印象は常に暗く、厚い雲が張った空の下の凍えるような寒さが伝わってくる。少年は一人を除いて誰からも受け入れてもらえず、自分の居場所を見つけることができない。胸を打つのは、それでも彼が健気に現実と戦い、生きていこうとするところだ。神経質な母親は彼を泥棒扱いして殴ったのに、「あんたのママはあんたを愛してるわ」と友達に言われ、「わかってるよ」と答える。スケート靴を盗まれても、取り返してはしゃぎ、笑い転げる。強盗殺人の片棒を担いで顔に返り血を浴びた横顔を見せたときは、さすがにもうだめかと思った。それでも、絶対にへこたれない。その点『大人は…』の主人公よりもずっと強く、頼もしい少年に見えた。ところが、そう思えたのも束の間、唯一の理解者であった少女が殺される。少年はいちおう生きていることが示唆されるが、もう画面に映されることもない。辛い出来事にも負けずに明るく生きようとしていた人間から、最後の希望まで奪いとる現実。たぶん彼は肉体的には生きていても、もうそれまでの彼ではいられないだろう。彼が子供でいられた時代は、銃声で終わった。一人の少年の心が殺されるまでを描いた、悲痛な作品。 また、主人公が強制収容所送りから逃がれようとする女を助けようともせずに見つめている場面も印象的だった。人が人として生きていけなかった時代の、暗鬱な空気。重く哀しく、恐ろしい映画だった。
8点(2005-02-06 02:37:05)(良:1票)
164.  スイミング・プール 《ネタバレ》 
ランプリングの存在感。神経質で底意地の悪い感じ、単なる狂人ではなく、どこかが壊れた普通の人、といった人物造形が絶妙だ。こういうオチはありがちだが、それを多重人格のようなセンセーショナルなネタを使わずに作家の創造性で説明しているのがいい。日の光にゆらめくプールの水面、裸で泳ぐ若い女、唐突に行われる殺人……これはいわばプールにぷかぷか浮んでまどろんでいるうちに見た白昼夢のようなものだったのだろう。心地よく、美しく、幸福感に満ちた、しかし背筋が冷たくなるような狂気もかいま見える夢。楽しいけれど、油断すると何かに足首を掴まれて水中に引き込まれそうな、得体の知れない不安がある。プールからあがった後、楽しく泳いでいたはずのプールが、実はある女の心の中だった、というぞっとする真実に気付かされる。
[映画館(字幕)] 8点(2005-01-16 02:54:14)(良:1票)
165.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
ある小説の一説にこんなのがあります。登場人物の子供の台詞で、「僕が神様ならもっと素敵な世界を作る。この世界と同じように僕とパパとママがいて、でも誰も年をとらなくて、永遠に幸せでいられる世界にするよ」なんてちょっと切ないことを言うんです。就職活動を間近に控えた大学生の僕自身も、いつまでも楽しい時間が続けばいいと願う気持ちはわかります。でも楽しいだけの理想郷は空虚で、たとえ辛いことがあるとしても現実の世界の方がいい。虚ろな理想世界と過酷な現実世界のどちらを選ぶか、というテーマは「エヴァ」や村上春樹の『海辺のカフカ』を先取りしています。この映画が公開された年は自分が生まれた次の年。そんな時代にこれだけ先鋭的な作品があったと知って驚きました。
8点(2004-12-26 06:42:31)(良:1票)
166.  the EYE 【アイ】 《ネタバレ》 
『降霊』(黒沢清監督)と『リング』、そしてちょっとだけ『デッドコースター』と、いろいろな映画のテイストを混ぜ合わせたような印象。しかし、それでもなおよい作品。映像と演出の素晴らしさもあるが、常人とは異なる能力を持ってしまった人間の悲哀、という古典的なホラーのテーマが中心にあることが大きい。リンの悲哀を描くシーンの痛々しさは『リング』に似ているようで、明らかにそれを凌駕している。一見いろんな材料を使っているが、実は最終的にそのテーマに集約される。目が見えないことは障害だが、かといって普通の人よりも見えすぎてしまうことはさらに大きな障害になる。ラストで再び失明した彼女が、皮肉にも重荷を捨てたかのように笑っている姿が印象的だった。クローネンバーグの『デッドゾーン』に次ぐ良作では?
8点(2004-12-18 07:29:51)(良:1票)
167.  ぼくは怖くない 《ネタバレ》 
(突然変な話をしますが)自分の曽祖父はプロテスタントの牧師で、戦時中は慈善活動をしていました。皇国主義一色の当時は当然キリスト教は疎まれていたわけで、よく石を投げられて家のガラスを割られたと聞きます。でも彼は頓着せずに自分を非国民と罵る人たちにも食べ物を分け与え続けたそうです。自分を取り巻く世界のすべてが間違っているときに正しい行いをするのは簡単なことじゃありません。この映画のミケーレの状況もそうです。子供にとっての大人の存在は大きく、とくに両親は絶対的なものです。ミケーレは心から愛している父親ですら犯罪者であることを知りながら、あくまでもまっすぐに正しい道を行こうとします(辛い現実に向き合えず、短絡に犯罪に逃げた大人たちとは対照的に)。それでも「ぼくは怖くない」といえたのだとしたら、並大抵の勇気ではありません。そういう意味で、この映画は何よりもまず勇気の物語なのだと思います。
8点(2004-12-01 02:52:26)(良:2票)
168.  ある愛の詩(1970)
付き合いで人と一緒に観ることになり、「こんなベタな話に泣くかよ」とバカにして観たら、普通に泣けた。話の大枠はシンプルだが、二人の会話のひとつひとつが洒落たセンスとやさしいユーモアに満ちている。むしろシンプルでひねりのない脚本だからこそ、いいのかもしれない。
[映画館(字幕)] 8点(2004-05-08 00:51:55)
169.  乙女の祈り
「現実は幻想の泉を汚し、一方幻想は、現実世界に噴きだすと、その覚醒とともに破壊をもたらす。」ある犯罪ノンフィクションにこんな文章があります。この映画はその言葉のまんまのお話。現実逃避のための幻想にのめりこみすぎて、しまいには現実も妄想と同じように支配できると勘ちがいしてしまう、ちょっとオタクな少女たち。美しくも滑稽で残酷な映画でした。
8点(2004-05-01 15:44:30)
170.  降霊<TVM>(1999)
『降霊』という題を文字通りに受け取ってはいけない。この映画の怖さは、霊の怖さではなく、人間の怖さだ。はじめは単なる幽霊物のようだが、だんだん犯罪サスペンスの趣になり、やがて霊媒師の女性の心のゆがみが明らかになる。そして、役所広司の前に本当の幽霊ではない、彼自身の罪の意識が「降霊」する。これは、怖い。
8点(2004-02-28 05:37:24)(良:1票)
171.  機械じかけのピアノのための未完成の戯曲 《ネタバレ》 
終盤近く、「俺(の存在価値)はゼロだ!」と絶望する夫に向かって、「あなたのすべてを愛してる」と言う妻。いいシーンです。誰だってああいうふうに絶対的に肯定してくれる人が必要なんだと思います。
8点(2004-02-28 03:45:48)(良:1票)
172.  ガタカ 《ネタバレ》 
ユージーンが自殺してしまうのが納得いかなかった。夢をもらったんじゃなかったのかよ?炎に照らされたメダルが金色に見えたのがどうにも哀しかった。
8点(2004-02-25 03:21:25)(良:1票)
173.  ミニミニ大作戦(2003)
アクションなのに暴力シーンが少なくて、ストーリーとキャラクターだけで楽しませてくれるので洒落た印象。いい意味で軽い、良質のエンターテインメント。あと、ひたすらやな奴で情けないノートンが○です。
8点(2004-02-24 02:49:30)
174.  セブン 《ネタバレ》 
さながら残虐行為のショウケースだ。映像的にグロいというより想像するだに痛そうな、精神的にきつい手口ばかりを並べたててみせる歪んだ想像力には、ある意味感心させられた。事前にネタがわかっているとそう衝撃的でもないが、後半の筋書きの秀逸さは確かで、自分だったらこんな脚本は逆立ちしても考えつかないだろうと思う。  ただ、ケヴィン・スペイシーの演じる殺人犯ジョン・ドゥにはあまり凄みを感じられなかった。ハンニバル・レクターよろしくカルト宗教の教祖的な性格を持った連続殺人犯だが、レクター博士の場合は徐々にこちらの精神を侵食してくるような底の知れない恐怖があったのに比べると、ジョン・ドゥは単なる誇大妄想狂としか感じられない。会話の通じないアホといってしまえばそれまでのような気がする(こんなやつにミルズ刑事のような一般人が操られてしまうからこそ怖いのかもしれないが)。  この手の殺人者が怖いのは、単純に危険だからというだけではなく、ノーマルな側であるはずの人々が、知らず知らずのうちにその異常性に惹きつけられている部分があるからだと思う。純粋な脅威としての殺人者を恐れているのではなく、殺人者のなかに自分自身を見てしまうからこそ怖いのだ。その点、ジョン・ドゥは完全に理解の範疇外にあり、怖いというか鬱陶しい。結局お前はなにがしたかったんだよ、と言ってやりたくなった。あるいはキリスト教圏の人であればまた受け取り方が違ったのかもしれないが。  ここでの高評価につられて再見してみたものの、自分としては繰り返し鑑賞したいと思えるほどではなかった。二人の刑事が胸毛を剃りながら「乳首を切り落としたら労災が下りるのか?」なんて話をする何気ないくだりのほうが、クライマックスよりかはむしろ楽しめた。ブラッド・ピットのかっこよさを再確認できたのが、最大の収穫だろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2009-12-25 15:34:06)
175.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
今も昔も情緒不安定な女が人の気を惹く方法は変わらないのだなあ、と変なところで感心。スワンソンの熱演はもちろん(もっとも、人間というよりモンスターにしか見えないきらいはある。悲哀の滲む演技、とは言い難い)、映画全体に漂う妙な生々しさが良い。女優が行動を決めるのにやたらと占いを重視する辺り、瑣末なネタではあるがとてももっともらしい。  実は狂った女優と同じくらい、寡黙な執事が怖い。元夫でありながら執事として仕え、現在の恋路まで援助する、その奇妙な愛情のあり方が薄気味悪かった。偽のファンレターをせっせと書き続けてもいずれ破綻の日が訪れるのはわかり切っていたはずで、ほんとうに女優を守ろうという使命感があるのであれば、鳥を駕籠に入れて飼うような支配的なやり方はありえない。この映画がこんなにもリアルなのは、単に一人の女が狂うのではなく、異常なほど依存し合う関係が狂気を培養する背景として描かれているからこそだろう。  死者を語り手に置くなど、失敗としか思えない試みもあるが、いくつかの欠点を差し引いてもやはり優れた脚本だと思う。そして特筆すべきは結末のおぞましさだ。グロリア・スワンソンの怪演も、映像が滲んでいく演出も強烈。おそらくラストシーンの衝撃度だけをとってみれば、映画史上でも屈指じゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-29 22:07:12)
176.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
なんたるおバカ! 想像を絶していた。どんでん返しはコメディだからこそ許される力業だけど、普通にびっくりできたし、いいんじゃないでしょうか。短い時間に尋常ではない労力をかけ、ほんとうに丁寧に作られている。  さまざまなネタを片っ端からぶち込み、下手すると空中分解しかねないところを、二人の警官のシンプルな友情物語を軸に据えることで回避している。またいちいち伏線を張って確実に回収していくやり方ときたらほとんど偏執的で、ここまで来ると器用なんだか不器用なんだかよくわからない。『ハートブルー』はもちろん、白鳥やクロスワードまでそう、最後に医者が復讐にやってくるのだって銃撃戦での台詞を受けているのだろう(「医者だろ、自分で治しな」→自分で治すことができたので、逃走することも可能)。  欲をいうなら終盤のエピソードはもう少しだけ削れたと思う。最高に面白かったけれど、さすがにくどい。しかしながら一見優しげな老人達ががんがん撃ってくる絵や、スーパーマーケット内のアイテムで襲ってくる絵は最高にクールだった。  しかしまさかこんなにエグいとは……まったく覚悟してなかったので驚いた。シリアスにしたくなくてブラックユーモアを選んだのだろうが、前半を観た限りでは家族で観られるような作品だと思いかけていたので、ちょっぴり残念ではあった。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-08 01:40:05)
177.  カリートの道 《ネタバレ》 
裏社会から足を洗おうとしているギャングが、時代遅れの仁義を通したがために破滅へ至る――そのまま日本の任侠ものに移し変えても通用しそうなお話。従来のマフィア映画に比べるとスケールはやや劣るものの、完成度は非常に高い。  監督が「アル・パチーノはとても美しい」、とメイキングで語っていて、普通なら笑ってしまうところなのだが、実際そう形容するほかない、尋常ではない雰囲気があった。ダンディとかセクシーとかいった表現では遠く及ばない、独自の空気を放っている。パチーノの他の出演作ももちろん良いが、この映画ほどその存在感が強烈に印象付けられたことはなかった。反対にショーン・ペンは髪型のせいもあって、アップでじっくり見ないとペンだということが納得できない(笑)。別人と見紛うほどのゲスぶりは、違う意味でお見事。  デ・パルマ節全開の駅の銃撃戦も面白かった。さして大掛かりなアクションがあるわけでもないのにサスペンスフルで、監督のキャリアの中でも最良の仕事ではないかと思う。『アンタッチャブル』でも同じく駅の階段を舞台にしたアクションがあるが、比べ物にならない出来だ。もう一つのクライマックス、パチーノがドアを破って恋人を抱くまでの下りも素晴らしい。  ただし深い感動までは至らず、7点に留めた。その理由の一つは、カリートの通そうとする義理が美学というにはあまりにも浅はか過ぎた点。つまらない意地を張ったとしか思えず、いまいち肩入れできない。もう一つは、物語そのものがあまりにも素朴に感じられたこと。わかりやすい単純な筋書きを、いかにも感傷的に描いている。お涙ちょうだいの演出は、悪い意味でも「任侠もの」的だ。だから悲劇であるにも関わらず、痛みが尾を引かない。切実さがない。  隙のない作りではある。だが自分の中では忘れ難い作品、とまでは言えない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-01 13:04:48)
178.  スペースバンパイア 《ネタバレ》 
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい! の一言で終わらせようかと思ったのだけれど、せっかくだからちょっとだけ真面目にレビューしておく。このタイトルに真面目にレビューした時点で負けのような気もしますが。  『エイリアン』の脚本家、原作コリン・ウィルソン、音楽にH・マンシーニと錚々たる面子を揃えながら、なぜにここまで安っぽい代物ができてしまったのか? (まあ問うまでもなく監督のせいかなって思うけど)。科学考証無視のおバカSFなのにおふざけで作っているという雰囲気でもなく、恐ろしく力が入っているのが異様な印象。根本的なアイディアがでたらめなのにすごく真面目に作られていて、ロンドンが壊滅する映像なんて無駄に迫力がある。  百歩譲って設定の緩さを許すとしても、これほど主要登場人物をないがしろにした脚本は珍しい。人間ドラマを描けとはいわないけれど、普通は申し訳程度にでもキャラ付けするなり、人間味を与えようという努力が見られるものだが、一切ない。しかも主要俳優陣が信じられないほど地味な顔ぶれ(マチルダ・メイを別として)。それでいて荒唐無稽な出来事が次々と起こる展開にはスピード感があって、案外退屈はしないのだから不思議なものだ。  加えてこれも独特だなと感じたのは、ユーモア感覚の欠如。普通なら作中でおちゃらけた脇役が「お前SF小説の読みすぎなんじゃねえの?」と突っ込むなりして相対化するのが定石だが、そうした台詞が一切ない。それどころかこの滅茶苦茶な事態を誰一人として疑わず、終始大真面目なテンションで乗り切っている。もちろんコメディにする必要はないのだが、これではかえって作品全体がギャグになってしまう。(唯一精神病院で女を尋問する際の「わたしは見るのが趣味なんだ」、という台詞がユーモアっぽかったが、その前の「この女は究極のマゾヒストだ…!」が意味不明すぎてそれどころでない。)  そしてなんといってもマチルダ・メイ。金髪碧眼のplaymate的なステレオタイプだったなら大して印象にも残らなかったろうが、彼女のような容姿はむしろ日本人向けと思う。皆さん冗談半分で言及していらっしゃるが、発表から四半世紀が過ぎたB級映画のヒロインがほぼ満場一致の支持を受けるというのは、それはそれですごいことだ。彼女の魅力がこの映画全体を食ってしまったのだから。ウィキで調べたらコンセルヴァトワールを首席で卒業した方だそうで、なんというか……出演作選べよマジで……。(他の出演作を確認したら『おっぱいとお月さま』だった。気の毒に、この映画でイメージが固定してしまったらしい。)  総じて、稀に見るアンバランスな作品だ。この映画では幼稚さと拙さと、成熟した技術と真剣な情熱、傑出した魅力の女優と地味すぎる出演者たちとが一緒くたになっている。真剣に論じるのは気恥ずかしいが、駄作といって斬り捨てられるのも多少気の毒な、なんとも困った作品。
[DVD(字幕)] 7点(2009-08-27 21:32:32)
179.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
入念に作りこまれた映画だと思う。構成は徹底的に考え抜かれていて、情報量も多い。夫婦の生活と有名事件の裁判を交互に語る形式で、微視的・巨視的に90年代を切り取ってみせたのはちょっとあざとくも思えるけれども、確かに成功している。年代もきちんと提示されるが、女性のファッションを見るだけで時代がわかる描写の細やかさはさすが。風呂場で椅子から落ちてごつんと音がするところとか、リアリティうんぬんというかもう、生々しくて肌に伝わってくるようだ。  女は子どもを失った罪悪感から会社を辞め、男はなにごとにも辛抱強く、自分を納得させるための涙は絶対に流さない。英題を見ると「ぐるり」は二人を取り巻く周囲の状況を指しているようだが、逃げそうで逃げない、遠回りしているようで実は真摯に現実と向き合っている二人の生き方もまた「ぐるり」なのではないか、と感じる。というか安易な答えに飛びつかずに(あのうさんくさいベストセラー作家に抱きつく変人みたいに)、生きることに真摯でいようとするとするなら、回り道せざるをえないのかもしれない。  ただ、これほど見応えのある作品も珍しいが、正直いって内容を消化し切れなかった部分もある。割と爽やかに終われそうだったのに「継母ぁ!」を入れてきたのにはびっくりした。それに巧妙な構成が仇となって、ときどきものすごく冷静になったり、展開そっちのけで考え込んだりしてしまい、肝心な夫婦のドラマを遠巻きに眺めていた感がある。なのですごい作品とは思うけれど、感動の度合いを正直に書くと7.5点くらい。繰り返し観れば、いろんなことが腑に落ちるのだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-09 22:38:00)
180.  殯の森 《ネタバレ》 
以前真夏のある日に、神社の脇の林に囲まれた広場に入ったことがある。木の枝が広場全体を天蓋のように覆う、嘘のように涼しい場所だった。一陣の風が通り過ぎて草木がいっせいにざわめいた瞬間、なぜか鳥肌が立った。スピリチュアルなんとかの類は苦手なのだが、あのときばかりは深遠な雰囲気というか、何か得体の知れない存在に対する畏怖のようなものを感じずにはいられなかった。  この映画にはそんな気持ちを呼び起こす森林の風景が捉えられている。それも単に映像を撮っているというだけでなく、澄み切った空気の味や、植物や土の匂いまで伝わってくるような、生々しい臨場感がある。現実に疲弊した女性が認知症の男性を案内役に森を彷徨い、やがて言葉を超えた境地に辿り着く。わかりやすくオカルト的な要素は登場しないが、アニミズムやシャーマニズムを体現している稀有な映像作品だ。原初的な宗教体験、悟りの瞬間を説得力をもって描き出している。自然のなかの神様を感じさせる作品といえば宮崎駿監督の『となりのトトロ』ぐらいしか思いつかないが、あれとも全然違う。類のない作品じゃないだろうか。  ただ、海外でこういった作品が評価されるのは素晴らしいこととは思うけれども、欧米の方は日本文化について極端な評価をしがちなのも確かだと思う。日本人からすると深みが足りない、安っぽいと感じる部分があっても、あちらでは異文化万歳といった感じで簡単に見逃されてしまう。ありがたいことではあるけれども、ときには「その漢字Tシャツ変ですよ」と言ってあげたくなることもある。たとえば本作でいえば前半の日常描写がぎこちないし、服を脱いで肌を寄せ合う場面などにはあざとさを感じてしまう。リアリティを出そうという意図がみえみえで、リアルを超えて無骨な感じがする。  実は鑑賞直後は4、5点にしようと思っていたのだが、観て損をした感はなかったので点を上げた。普通の意味では退屈だが見入ってしまう、なんとも不思議な作品。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-26 19:02:49)
010.21%
161.23%
261.23%
3163.29%
4255.13%
5336.78%
610521.56%
712225.05%
810922.38%
95310.88%
10112.26%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS