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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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1.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
なんたるおバカ! 想像を絶していた。どんでん返しはコメディだからこそ許される力業だけど、普通にびっくりできたし、いいんじゃないでしょうか。短い時間に尋常ではない労力をかけ、ほんとうに丁寧に作られている。  さまざまなネタを片っ端からぶち込み、下手すると空中分解しかねないところを、二人の警官のシンプルな友情物語を軸に据えることで回避している。またいちいち伏線を張って確実に回収していくやり方ときたらほとんど偏執的で、ここまで来ると器用なんだか不器用なんだかよくわからない。『ハートブルー』はもちろん、白鳥やクロスワードまでそう、最後に医者が復讐にやってくるのだって銃撃戦での台詞を受けているのだろう(「医者だろ、自分で治しな」→自分で治すことができたので、逃走することも可能)。  欲をいうなら終盤のエピソードはもう少しだけ削れたと思う。最高に面白かったけれど、さすがにくどい。しかしながら一見優しげな老人達ががんがん撃ってくる絵や、スーパーマーケット内のアイテムで襲ってくる絵は最高にクールだった。  しかしまさかこんなにエグいとは……まったく覚悟してなかったので驚いた。シリアスにしたくなくてブラックユーモアを選んだのだろうが、前半を観た限りでは家族で観られるような作品だと思いかけていたので、ちょっぴり残念ではあった。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-08 01:40:05)
2.  M:i:III 《ネタバレ》 
スパイものというよりは『ルパン三世』の実写版を観ているかのよう(途中カリオストロまで混ざってたような?)。橋での攻防戦までは、けっこう面白かったのに。ホフマンは爬虫類じみた不気味なオーラを放っていてさすがだが、脚本は彼の個性を充分に生かし切れていない。ヒーローが最強過ぎると安心して観ていられるのが難点だ。まさか脳に爆弾を埋め込まれて根性で立ち上がるとは……。  もっとも、「ポップコーンムービー」としては水準に達していると思う。マギーQのドレスがめくれた瞬間、多少の欠点には目をつぶろうと思った。
[DVD(字幕)] 6点(2009-08-27 22:44:15)(笑:1票)
3.  その土曜日、7時58分 《ネタバレ》 
凝った構成で、最後まで画面に釘付けにされたが、終わってみると大まかな展開としてはよくある破滅型ノワールなのだった。展開に意外性を持たせようというのでなく、薄皮を一枚ずつ剥ぐように犯人達の動機、背景にある捩じれた家族の関係を顕わにしていくための構成だと思われる。犯罪ものの三大興味は「犯人」・「方法」・「動機」であるとされるが、他の二つがどうあれ「動機」に焦点を絞ったのは手法としてはありだろう。このジャンルに家族関係を絡めてきたのはとても新鮮だったし、ただのサスペンスには終わらない厚みのあるドラマとなっている。  原題はおそらく最後に父親が息子を殺害するときの心情を指しているのだろうと考えると、ひどく痛ましい気持ちになる。光の中に消える父親の姿は、彼自身もまた自殺するか、あるいは半ば廃人のような余生しか送れないことを暗示しているのだろう。兄に銃口を向けられてもそれを受容してしまう弟の表情もまた切ない。家族間の葛藤というのはこういうものだ。憎んでも憎み切れず、かといって許したくとも完全に許すこともできない。  ホフマンが父親に「見た目が可愛かったから」弟を贔屓したんだろうと詰め寄る下りは、妙にリアルだ(まったく平和な家庭に育った人であればそんなバカなと思えるかもしれないが、実のところ児童虐待と子どもの容姿とは関連がないとはいえない)。殺人の描写もそうだが、この映画の中の暴力はシュールといっていいほどあっけなく、それだけに残酷さが際立っている。父親が車をパトカーにぶつける場面で思ったが、ルメット監督はもしかすると北野武の影響を受けたのかもしれない。アメリカの作品にしては驚くほどストイックな表現だ。  キャスティングが功を奏していて、名のある俳優陣でありながら皆いい意味でオーラを抑えていた。生活に行き詰った平凡な人間としての生々しい存在感を放っている。とくにフィリップ・シーモア・ホフマンは巧みで、そんなわけはないのによく似た無名の素人を引っ張ってきたんじゃないかと思えるくらい自然だった。唯一、マリサ・トメイが浮いていたかもしれない。美人過ぎるよ、この人(44歳?!)。   それにしても、必ずしもここまで入り組んだ構成にする必要はなかったのではないか、という疑いは拭い切れない。伏線が噛み合う下りも、つじつま合わせ以上の意味が読み取れない場合が多かった。パズルのピースが嵌るような感動がなく、単に混乱を避けるために描写をくどくしたという感じなのだ。サスペンスとして優れているのは事実なので小手先だけの工夫ではないと思うのだが、必然かといえば微妙なところだ。とはいえこれだけのものを観せてもらえたのだから、減点は控えておく。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-27 21:48:23)(良:1票)
4.  ジャージの二人 《ネタバレ》 
原作が好きだったのもあってちょっと敬遠していたのだけれども、ちゃんと面白かった。筋書きを忠実に辿るだけだけでなく、原作に漂う独特の空気感までもがきちんと再現されている。これは案外難しいことだと思う。二人の俳優の力、気を使われているが凝り過ぎてはいない映像、どこを取っても絶妙の匙加減だ。  真横で暮らしていても人のことはわからない。しかしまったくの孤独というわけでもなく、緩やかに繋がっている。各々で好き勝手しつつ、縛り合うわけではないが、たまになんとなく歩調を合わせてみたり。濃密で親しい間柄よりも、これぐらい緩い方が心地良く、自然なのかもしれない。  特定の場所に行って妙ちくりんなポーズでも取らない限り着信しない携帯電話、あれがこの作品を象徴しているように思う。しかし『二人』が『三人』になっただけでちょっとがちゃがちゃしてしまうのだから、人間関係というのはどうにも煩わしいものだ。『一人』でも割かし居心地が良い。だからこそ『二人』にも成れる。  心配が的中して地味なわけですが(笑)、大満足です。長嶋ファンである分贔屓目に見ているかもしれないけれど、それにしてもよくできていると思う。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-17 21:10:31)(良:1票)
5.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
入念に作りこまれた映画だと思う。構成は徹底的に考え抜かれていて、情報量も多い。夫婦の生活と有名事件の裁判を交互に語る形式で、微視的・巨視的に90年代を切り取ってみせたのはちょっとあざとくも思えるけれども、確かに成功している。年代もきちんと提示されるが、女性のファッションを見るだけで時代がわかる描写の細やかさはさすが。風呂場で椅子から落ちてごつんと音がするところとか、リアリティうんぬんというかもう、生々しくて肌に伝わってくるようだ。  女は子どもを失った罪悪感から会社を辞め、男はなにごとにも辛抱強く、自分を納得させるための涙は絶対に流さない。英題を見ると「ぐるり」は二人を取り巻く周囲の状況を指しているようだが、逃げそうで逃げない、遠回りしているようで実は真摯に現実と向き合っている二人の生き方もまた「ぐるり」なのではないか、と感じる。というか安易な答えに飛びつかずに(あのうさんくさいベストセラー作家に抱きつく変人みたいに)、生きることに真摯でいようとするとするなら、回り道せざるをえないのかもしれない。  ただ、これほど見応えのある作品も珍しいが、正直いって内容を消化し切れなかった部分もある。割と爽やかに終われそうだったのに「継母ぁ!」を入れてきたのにはびっくりした。それに巧妙な構成が仇となって、ときどきものすごく冷静になったり、展開そっちのけで考え込んだりしてしまい、肝心な夫婦のドラマを遠巻きに眺めていた感がある。なのですごい作品とは思うけれど、感動の度合いを正直に書くと7.5点くらい。繰り返し観れば、いろんなことが腑に落ちるのだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-09 22:38:00)
6.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
やはり宮崎駿作品は、なにはなくとも絵を見てるだけで面白い。細密な海の生き物たちの描写から、一転して絵本のように単純で素朴な絵が出てきたりする、手書きならではのダイナミズムが楽しい。ワーグナーの音楽(『地獄の黙示録』……)とともにポニョが津波の上を駆けてくる場面は戦慄ものだ。冷静に考えると嵐の夜に女の子が海上を走って追いかけてくるのだからちょっとしたホラーだが。半魚人状態のポニョはクトゥルー神話の住人にしか見えなくて、けっこう怖い。  また津波シーンと並んで感じ入ったのは、ポニョが宗助の家を訪れた際の一連の牧歌的なやりとり。ごはんがおいしそうなのはいうまでもないが、安全に保護された状況で、幼い子どもが日常のささやかなことごとをたっぷりと享受する、あのぬくもりに満ちた情景の描写が素晴らしい。  ジブリがプロの声優を起用しないのは話題作りというよりは素人俳優を使いたがる映画監督と同じで、演技らしくない生っぽさを狙っているんじゃないだろうか。単に宣伝目的ならもっと旬の人気者を採用するはず。声優って上手いけれど割とオーバーアクトだし、人によっては人工的過ぎる声音だったりもするから。本作の芸能人の声優起用がすべて成功しているかどうかはともかく、ポニョと宗助を務めた子役陣は文句なしに良かったと思う。前の木村拓哉だって良かったし、個人的にはそこまで目くじらを立てて批判しようとは思わなかった。
[DVD(邦画)] 8点(2009-07-28 23:20:21)(良:1票)
7.  殯の森 《ネタバレ》 
以前真夏のある日に、神社の脇の林に囲まれた広場に入ったことがある。木の枝が広場全体を天蓋のように覆う、嘘のように涼しい場所だった。一陣の風が通り過ぎて草木がいっせいにざわめいた瞬間、なぜか鳥肌が立った。スピリチュアルなんとかの類は苦手なのだが、あのときばかりは深遠な雰囲気というか、何か得体の知れない存在に対する畏怖のようなものを感じずにはいられなかった。  この映画にはそんな気持ちを呼び起こす森林の風景が捉えられている。それも単に映像を撮っているというだけでなく、澄み切った空気の味や、植物や土の匂いまで伝わってくるような、生々しい臨場感がある。現実に疲弊した女性が認知症の男性を案内役に森を彷徨い、やがて言葉を超えた境地に辿り着く。わかりやすくオカルト的な要素は登場しないが、アニミズムやシャーマニズムを体現している稀有な映像作品だ。原初的な宗教体験、悟りの瞬間を説得力をもって描き出している。自然のなかの神様を感じさせる作品といえば宮崎駿監督の『となりのトトロ』ぐらいしか思いつかないが、あれとも全然違う。類のない作品じゃないだろうか。  ただ、海外でこういった作品が評価されるのは素晴らしいこととは思うけれども、欧米の方は日本文化について極端な評価をしがちなのも確かだと思う。日本人からすると深みが足りない、安っぽいと感じる部分があっても、あちらでは異文化万歳といった感じで簡単に見逃されてしまう。ありがたいことではあるけれども、ときには「その漢字Tシャツ変ですよ」と言ってあげたくなることもある。たとえば本作でいえば前半の日常描写がぎこちないし、服を脱いで肌を寄せ合う場面などにはあざとさを感じてしまう。リアリティを出そうという意図がみえみえで、リアルを超えて無骨な感じがする。  実は鑑賞直後は4、5点にしようと思っていたのだが、観て損をした感はなかったので点を上げた。普通の意味では退屈だが見入ってしまう、なんとも不思議な作品。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-26 19:02:49)
8.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 
「数奇な人生」とは逆説的な題名のつけ方で、実際にはとてもありふれた人生の悲喜を描いているように思う。より正確にいえば、特殊な人生だからこそ普遍的な人生の意味合いが象徴的に浮き上がって見える、といったところだろうか。  体が幼くなるとともに認知症が進行し、人の世話を受けなければ生きられなくなるのは、なにも赤ん坊の姿にならなくともありふれたことだ。老いるに従って身も心も子どもに近づいていくベンジャミンが「なにも思い出せない」と嘆くのを、デイジーは「それでいいのよ」と抱きしめる。人は死ぬと生まれた場所に帰っていく――と言葉にしてしまうと陳腐だけれども、“老い”というものを描くのにこんな手法があったのかと非常に感心させられた。  デイジーが事故に遭う直前の状況の推移を丁寧に追っていたのも良い。「あそこでああしていれば今頃は」という誰でも抱いたことがある後悔の念を、丹念に、繊細に拾い上げていく。ささいなことの積み重ねで人生は決定的に変わる。ときには知らないうちに選択がされていて、あとから取り返そうとしてもどうにもならない、大きな流れがある。もっとも映画全体を通して感じられるのは一瞬一瞬をいとおしむ穏やかな慈愛の気持ちであって、けっして負のトーンが強すぎるということはない。  ラストに登場人物をさらりと振り返って、なにか教訓めいたことをいうのかと思いきやそのままエンドロールに突入する、あの控えめさがまたいい。終始美しい映像だが、わざとらしい作り込みもなく、押し付けがましいドラマもない。いわゆる“泣ける映画”ではない分、切なさがいつまでも後を引く。
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-22 14:14:11)(良:2票)
9.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
現代版『東京物語』を目指したのだろうか。とてもよく練られた脚本だと感じた。かなり突飛な展開もあるが、それも込みですべてが明確に家族の破綻へと収束していく。映像は常に被写体と一定の距離をとり、情緒的なべたつきを許さない。一家団欒のシーンでは小津ばりにカメラを固定しているが、おそらくかなりこだわったのだろう、これほどまずそうな食事の場面も珍しい(あ、でも朝ごはんのところはちょっとおいしそうかも)。  しかし筋書きがしっかりし過ぎているせいで、香川照之や小泉今日子の演じる人物が平板であるようにも思えた。今どき珍しいほど家父長的に振る舞う夫と従順な妻、という家族モデルは90年代の社会学研究から引っ張り出してきたようで、正直ちょっと古いんじゃないかと思う。俳優の力で救われているものの、率直過ぎる台詞もいくつかある(そうした台詞は一歩間違えるとまるで自分の不幸に酔っているようにも聞こえる)。  とはいえさすがは黒沢清だなと思わされたのは、単純に家族の再生を暗示して終わるのではなく、家族の変容を受け入れるという答えを提示して見せたことだ。初めは単純に反発していただけの長男はやがて精神的にも自立していくし、次男がピアノの才能を開花させたことも将来の独立を予想させる。そして無闇に威張りくさっていただけの父親は、次男が弾くソナタに黙って耳を傾ける。  無理に古い家族の形式を守るのではなく、それぞれが精神的に独立した個人であることを認めて、かつ家族であり続けようと努力する。題名が『ソナタ(=独奏曲)』である理由はここだろう。これはソナタが合奏になるのではなく、ソナタがソナタとして完成されるまでの物語なのだ。核家族のその先、という新たな時代と家族の変遷を描くことで、明確に『東京物語』“以降”であろうとする意欲が見て取れる。  ただ単純に楽しめたかどうかというと、この点数になる。人物の平板さもあるが、強盗のエピソードの唐突さに引いてしまったというのが一番の理由かもしれない。なぜもっとリアリティに徹しなかったのか、理解できない。
[DVD(邦画)] 6点(2009-07-14 08:17:37)(良:1票)
10.  幻影師アイゼンハイム 《ネタバレ》 
映像はきれいだし、雰囲気もいい。しかし、それらもまずまずといった程度に留まっている。脚本は複雑な割に荒っぽく、とくに後半は話の筋を追うのに必死で、とりえであるはずの映像もなおざりになる。この題材なら世界観を魅せるのを優先して脚本は単純化しても許されただろうに、やっていることがまるでちぐはぐだ。肝心のどんでん返しも新味はない。なにもかもがひどく中途半端だ。  また奇術の描写に堂々とCGを使っているが、それをやったら映画だからなんでもありというのが前面に出てしまうわけで、マジック本来の魅力である不思議さ、幻想性が損なわれてしまう。トリックとも魔法ともつかないぎりぎりの境界線上を描くべきだったんじゃないだろうか。E・ノートンを十九世紀の奇術師に据えるというわくわくするような配役だが、充分に魅力を引き出せているとはいい難い。  恋愛描写に重みがないのも痛い。少年時代に引き裂かれた初恋の相手が現れたからといってそうそう夢中にならない――っていうか幻滅するパターンの方が多いだろう。  そもそもどうしてスティーヴン・ミルハウザーの小説を、どんでん返しがメインの娯楽映画にしようと思ったのだろうか? 別に原作に忠実である必要はないが、これは村上春樹を原作にミステリを撮るぐらいむちゃな挑戦だ。その結果がこの微妙な出来なのだから、なんとも残念としかいいようがない。
[DVD(字幕)] 5点(2009-07-08 00:50:06)(良:1票)
11.  D-WARS ディー・ウォーズ 《ネタバレ》 
中世ヨーロッパの甲冑を纏った騎士団が現代兵器と戦うおバカ映像をテレビ番組で観た記憶があり、思わず借りてしまった。……不覚だった。  あらすじをそのまま映像化したのではないかと疑わしいほどの足早な展開は、とてもじゃないがプロの仕事とは思えない。それなりの見せ場になりそうな部分でも必ずなにかしら仕出かしては着実に台無しにしていく。日本のヒーロー戦隊ものの匂いがそこかしこにするのだけれど、それらより一回りも二回りも薄っぺらいドラマを創り上げているのは驚異としか言いようがない。確かに特殊効果は努力が感じられるのだが、それ以外があまりに不毛だ。  若手芸人並みのオーラしかない出演者達には、鑑賞しながら同情の念が湧いてきた。どうしてこんなことに? いったいどこでこの人たちの人生は狂い始めたんだろう? クライマックスでのヒロインの台詞(「わたしが死んでも愛は永遠よ」)に、別の意味で涙腺が決壊しかけた。  監督は元コメディアンだというから、もしかするとこれは手の込んだジョークなのかもしれない。しかしそう思ってネット上でインタビューを見つけ出してみたら、怪獣映画への情熱をそれはまあ嬉しそうに語っていて、なんというかもう、頭を抱えた。C級ホラー『案山子男』のメイキング(本編よりホラー)を観てしまったときにも似たような感覚になった。監督は製作のトップに携わろうなんて欲は抑えて、特殊効果の専門家として腕を磨いてはどうだろうか。
[DVD(字幕)] 2点(2009-07-06 18:31:03)(笑:1票)
12.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
以前ある場所で、庵野秀明は『エヴァ』でやり残したことについて語っていた。それは簡単にいえば、観客に向けて、現実の世界で生きていくためのエネルギーを届けることだったと思う。  『エヴァ』はもちろん傑作だったけれども、反面問題作でもあり、観客にも監督自身にもやりきれなさを残した。十代を中心とするファンの強い共感を得ながら、その鬱屈を完全に昇華することはできなかった。十四歳の子どもが破綻していく過程をつぶさに描いておいて、「現実に帰れ」などと主張したのだから無理もない。良くも悪くも先鋭的すぎて、すべての観客を納得させる力は持てなかったのだ。  しかし今、監督は前回の借りを正面から取り返そうとしている。時代を席巻した代表作を自らの手でリメイクするという、失敗したらキャリアを台無しにしかねないやり方で。アニメや映画に限らず、なにかを表現しようとする者にとって、これ以上ないほど困難で、真っ正直過ぎる挑戦だ。こんな形の『リメイク』は前代未聞だろう。  そしてやってのけた。普通に面白くて、観終えた後にお腹の底から力が湧いてくるような作品を。  これはまったくの個人的な考えだが、フィクションはそこに依存して現実から逃げ出すための場所であってはならない、と思う。大切なのは、ほんの束の間そこに浸って現実に帰ってきたとき、視界が前よりも開けて見えること。元気が出て体が軽くなって、明日からも頑張れる、自分自身も人生も変えていけると感じられること。観る前と観た後とで、ほんの少しでも強くなれたと思えること。それが物語の、とりわけエンターテインメントが持てる最良の力なのだ。  『ヱヴァ』はまだ途中だ。しかし続編がどうなろうと、筆者は製作陣を称賛せずにはいられない。断っておくが、なにも監督を神様みたいに思ってるわけじゃない。この作品も欠点がないわけではないのだから。ただ確実にいえるのは、庵野秀明は表現者としても人としても、とても純粋に仕事に向かっているということだ。  恥ずかしい話、ほんの二三滴だけ筆者は泣いた。正直言って、今まで自分にとっての『エヴァ』は思い出でありつつ、ちょっとした若気の至りの証でもあった。だが今は素直に、この作品のファンでよかったと思う。そう思えたことがほんとうにうれしい。
[映画館(邦画)] 10点(2009-07-03 01:22:47)(良:7票)
13.  ダーウィン・アワード 《ネタバレ》 
原作はちゃんと読んだわけではありませんが、ある程度内容を知ってました。それでちょっと、期待しすぎたのかもしれない。非常に努力の感じられる脚本で、さまざまなエピソードの寄せ集めである原作を一本の映画にまとめたのは評価できる。温かい視点にも好感が持てました。しかし……。  元心理分析官で保険調査員というところまでは文句なしに秀逸な設定だけど、素人カメラマンの視点というのはさすがに詰め込みすぎなのでは? やりたいことはわかるんだけど、いろんなアイディアを使ったせいでごちゃごちゃしてるというか。コメディに突っ込みたくはないが、あまりにぎこちない展開も目に付いた。  ちゃんと笑えるのは確かで、クオリティも高く、手抜きが感じられない。とりわけ役者がよかったと思う。もっともよくできていたのはロケットエンジンで吹っ飛ぶ男のエピソードで、単に笑えるだけでなく、じんときた。短い登場ながらジュリエット・ルイスの演技が印象深い。メタリカの出演にはびっくり。  ただ、最後のシリアルキラーとの対決がそれまでに比べて面白くないというか、そもそもあんまりテーマに沿っておらず、ちぐはぐに感じた。主人公が〝バロウズ〟で事件にもビートニク文学が絡んでいるのは、作り手の趣味だろうか。尺が短いのだから、本編であるダーウィン賞のエピソードをもう一つくらい付け足してもよかったと思う。
[DVD(字幕)] 5点(2009-06-23 13:03:52)
14.  ハプニング 《ネタバレ》 
多少の顰蹙は承知で、自分勝手な解釈を書きます。  おそらく毒素を出す植物が反応していたのは「人間の集団」ではなく、人間の集団に発生しやすい「憎悪」の方だったのです。  老婆が死んだとき、彼女は集団で行動こそしていないものの、直前までエリオットを罵っていました。また草原を2班に別れて移動していたときに兵士が錯乱したのは、先頭を歩いていた男性陣が激しい喧嘩を始めた直後。集団行動していれば否応なく軋轢は生じますから、エリオットが初めに立てた仮説は身を守るのにある程度は有効でした。だからてっきり正解だと思い込んだ。  毒素が「憎悪」への反応だとすると、直接的な原因は植物ですが、引き金を引いたのは人間自身。つまり集団自殺現象は、そのメカニズムにおいても文字通りの自殺行為、お互いへの憎悪で己の首を絞める、人類という種の自殺だったのです。  このように考えると、テーマとしてもしっくりきます。主人公のエリオットは情緒不安定な妻と行動を共にし、友達の娘も励ます優しい人物です。草原の移動中に高まりかけたパニックの気配を抑えて理性的に振る舞うし、妻のちょっとした裏切りにも寛大に接します。常に冷静で、人間関係の和を保とうとする性格なのです。  孤独な生活を送っていた老婆は生き延びていましたが、狂気の淵にあり、人と接した途端にあっさり破綻してしまいます。エリオットが最後に取った行動は老婆とは正反対。孤立した状況でも人と繋がり続けようとし、誰といても安全ではないことを知っていてなお、一人で死ぬくらいなら妻とともにあることを選ぶのです。  最後にエリオットが嵌める指輪が示した色は「愛情」でしょう。「憎悪」によって自滅しかけた人間の危機に、彼が生き残るのは必然でした。エピローグでの懐妊は予定調和にも見えますが、つまりは彼らこそが新しい世代を育み、人類を担っていくのだという象徴でしょう。  実のところ欠点がない作品とは言えませんが、批判は山ほどあるようなので自分は控えておきます。グロテスクなだけの場面もありましたが、集団の飛び降り、銃を手渡しての連鎖自殺などは、映像的にも鮮烈。首吊りの画なんかは残酷な宗教画のようで(不謹慎ですが)荘厳ですらありました。いかにもシャマランらしい、信仰心が滲んだ作品だと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-21 20:38:14)(良:2票)
15.  大日本人 《ネタバレ》 
同じくお笑い出身の北野武も自身が主演する場合が多いが、あちらがあからさまにナルシスティックなかっこいいキャラクターであるのに対し、松本人志は徹底的に情けないオッサンであるというのが面白い。なんだあの変な長髪は。  エッセイを読んでも感じたけれど、やっぱこの人相当孤独感が強いんだな、寂しいんだろうなと思う。みんなから蔑まれつつも「大日本人なんだよっ」と強がる姿は、天才を自負しつつ(いや、実際そうだと思いますが)大衆からはとやかく言われてしまう自身と重なって見える。シャイで悪ぶってるから、こんな形でしか孤独を表現できない。というより、苦悩すらも笑いにせずにはいられないという、松本人志の業なのだろう。  公開当時の舞台挨拶で、松本は「今の日本、そして自分もがんばれと常々思っていますよ」と発言していた。それを聞いたときはなに言ってんだろと思ったが、映画を観て納得。日本人を風刺しつつ、自分自身も風刺している。  あと、これは考えついた自分でもアホらしいとは思うんだけどせっかくだから言わせてもらうと、『大日本人』と『松本人志』、共通する字を抜き出すと、『本人』ですよね。この映画は監督『本人』の話なんですよ、とそういうメッセージが読め――ああ、書いてて変な汗出てきたからやめます。まあそれはともかく。  終始かみ合うことのないインタビュー、そして飲み屋でいい気分になっている場面の物悲しさといったらなかった。大佐藤は見るからに滑稽で笑いを誘う主人公だが、その一方で、これ以上ないほど壮絶な孤独を抱えている。この映画はドキュメンタリー風のフィクションに見えるが、その実真逆で、フィクションを通して語られたドキュメンタリーなんじゃないだろうか。  ただ、高得点はつけられないというのが正直な感想。別にコントのエッセンスを映画の枠組みに持ち込むのは構わないが、コントの枠組みで映画を撮ってしまったせいで、単に安っぽさともの珍しさが際立つ結果になっている。序盤までは普通に上手かったと思う。いかにも映画的な長回しをさらりと使いこなしていたし、原付バイクのシーンで主人公を取り巻く状況が徐々にわかっていく演出は素晴らしかった。しかし中盤以降急速に半端が目立つようになり、最後はさすがに、やっちゃった感が否めない。  次作は挽回してくれるものと期待しております。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-16 01:21:39)(良:2票)
16.  千年女優 《ネタバレ》 
リアルな画風だが、これが実写映像だったらかなり違和感があるだろう。何しろ虚実入り混じった回想をその場の数人で共有するという、冷静に考えたら相当に破天荒な視点だ。なまじ写実的な絵なだけに、アニメーションが通常とは異なるリアリティの分法を持っているということがよくわかる。  実は構成が『PERFECT BLUE』に引き続き、ミステリとなっている。映像と音楽で多少は誤魔かせているが、致命的に人間を描けていない。心理描写がプロモーションビデオ並みに浅く、87分の尺も長く感じられるほどだ。最後の台詞が必要なのはミステリの文法で脚本を書いているからで、ドラマ部分がちゃんとしていればあそこまで明示する必要はなかったし、仮にそのまま書いたとしても重みが全然違っただろう。  この内容ならいっそのこと一時間以内の短篇に凝縮してくれた方が、端正な秀作に仕上がったんじゃないだろうか。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-15 23:58:35)(良:2票)
17.  MIND GAME マインド・ゲーム(2004) 《ネタバレ》 
刺激的な作品であるのは確か。神様のイメージ、主人公とヒロインと結ばれるシーンもすごい。あんなの観たことない。ほとんどの声優にお笑い芸人を起用する大胆な試みも見事に成功している。湯浅政明さんという方は得難い才能の持ち主なのだと思う。  けれども、力技過ぎる後半の筋書きがいまいち……。心構えが変わっただけでなんでもできるわけもなし、テーマが率直なのは良しとしてもこれだけ語られるとさすがにクドくて、イライラさせられた。こういう熱いノリにはついていけたらいいけど、いったん白々しく感じたらそれでおしまい、おきざりにされてしまう。クライマックスであるイメージの奔流は、いろいろ詰め込まれてはいるけれど個々の発想はさほど切れがなく、冗長に感じた(ああ、でもアメンボやカツラには笑ったなあ)。序盤のテンションを維持できるだけの脚本力があったなら、名作になり得たと思う。  とはいえ、このような作品はとても貴重。アニメーションは半端無く自由度の高い分野のはずなのに、過去の作品のコピー&ペーストでしかない代物が多すぎる。これぐらいむちゃくちゃやってくれる才能がもっとあってもいい。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-09 17:59:01)
18.  ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
開始十五分で七十人が生きたまま喰われたのにはちょっとびびったが、面白かった。キレイ目のクラウザーさんみたいな魔界の王子に率いられた怪物たちはいずれもユニークで、いかにもこの監督らしいデザインの「歯の妖精」や、『もののけ姫』の影響がもろに出ている森の精霊などは楽しかった。それに対して主人公は怪力で銃を振り回しているだけ、外見以外これといった特徴がなく、むしろさまざまなキャラクターを見せるための狂言まわし(引き立て役?)に回っているのがヘルボーイの面白いところだ。『忍たま乱太郎』の乱太郎みたいな。単純に楽しめる作品だが、出来の悪い第一作を観ていないとわかりにくいのがもったいない。  しかし怪物たちの造形や独特の美的センスはすごいけれど、物語は普通だ。異形のヒーローたちが差別とアイデンティティに悩まされるのもアメコミとしてはいたって凡庸。ヘルボーイもエイブも親しみやすく憎めないキャラクターではあるものの、感動を与えてくれるほど厚みある存在ではなかった。普通なら泣ける場面も、平板なメロドラマになってしまっている。デル・トロ監督は精緻な世界観を構築するのが第一で、作品を通してこれだけは伝えたいテーマみたいなものはないのかもしれない。それは必ずしも悪いことではないけれど、ちょっぴり物足りないのも事実だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-01 11:32:16)(良:2票)
19.  4ヶ月、3週と2日 《ネタバレ》 
時代背景がわからず、鑑賞後に当時のルーマニアの情勢を調べて初めて納得する部分が多かった。  チャウシェスク独裁政権下では労働力増強のために中絶どころか避妊まで禁止されていたそうで、恋人との口論の下りで違和感を持ったのだけれども、あれはつまり排卵日を計る以外、ろくに避妊方法がなかったのですね(ちなみにこの政策は元首夫人のエレナによるもの。皮肉なことに、女性による政策なのです。夫以上の暴君だったよう)。また避妊具の禁止と注射器不足から西欧国中最悪のHIV蔓延を招いた史実もあり、そうすると手術間際の「注射するの?」という不安げな台詞にも含みがあったのだろう。  夜の市街地がやホテルが暗いのも、電力すら満足でない国の経済状況を表す描写。生活物資にも事欠き、街には野犬が往行する。女性の出産を奨励する一方で国民の生活は極端に貧しく、一万人近くのストリート・チルドレン(通称「チャウシェスクの子ども達」)を生み出す結果となる。そして彼らを待ち受けていたのは貧困、児童買春、薬物中毒とHIVといった、あまりにも悲惨な運命。ヨーロッパ中から子どもの性を買うための観光客が集まっていたこの国が、本格的な孤児救済に取り組むのは21世紀になってから。  主人公が「工学部」に所属することが何度か言及されているが、これは「化学」に並んで政府が最も奨励した産業。初めて会ったときにベベがオティリアの身分を知り「都会で働けるな」と呟いたのはつまり、将来安泰のエリートであるということ。片やベベは老いた母を抱え、危険な違法行為に手を染めなければ生活できない身。もちろんベベのオティリアへの仕打ちは決して許されるものではないが、そこには嫉妬からくる歪んだ憎悪があっただろう。母子の場面を挟んだのは、彼が単純な悪人ではなく、ある意味では時代の犠牲者であると示したかったのだろう。  少し注意してみれば、さり気ない描写に史実が織り込まれているのがわかる。これは女性映画であると同時に、たった一日の情景に時代を浮かび上がらせる、優れた歴史映画でもあるのだ。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-22 07:12:00)(良:3票)
20.  シューテム・アップ
笑った笑った、腹を抱えて笑わせてもらいました。子どもには見せられない残酷度だけれど、めちゃくちゃ面白かった。普通のアクションで思いついてはみたもののさすがにないわ、と没にされたネタをことごとくぶち込んだかのよう。あの空中戦は旧007シリーズのノリでも遠慮するだろう。アクションというよりブラックコメディとして楽しんだ。いやに楽しそうなポール・ジアマッティさんも印象的。きっと悪役なんて滅多にもらえないんでしょうね。もっとも、出産シーンでは正直引きました。赤ん坊に銃の使い方をレクチャーして「撃つ気がない相手に向けちゃダメだ」って、自分は妊婦の股間に向けてたからね?
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 15:43:27)
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