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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  ブルーバレンタイン 《ネタバレ》 
素晴らしい作品だ。 アメリカでの評価の高さは伊達ではない。 二人の男女の関係を、幸せだった“過去”と、崩壊寸前の“現在”を対比させながら繊細に描き出している。 浮気をしたり、暴力をふるったり、ドラッグをしたりするような特別な問題が彼らにあるわけではない。 特別な問題がないにも関わらず、二人の関係の亀裂が徐々に大きくなり、元に戻すことができない溝へと広がっていくさまが描かれていることは評価したい。 やや抽象的に描くことにより、観客はより共感しやすくなったのではないか。 具体的に描くよりも抽象的に描くことは容易なことではなく、監督にも俳優にももちろん高いレベルが必要であろう。 仕事よりも家族との時間を大切にしたい男と、家族を大切にしながらも仕事で評価されたい女、お互いに愛しているのに、心がすれ違うさまを見事に描き出されている。 パートナーが自己の才能を浪費して自堕落な生活を送っていると感じる女、パートナーが家族よりも仕事を優先していると感じる男、離れていくお互いの心をなんとか戻そうとしているのに、傷つけることでしかお互いに向き合えない二人がいる。 過去に理解し合えたはずなのに、なぜ傷つけあってしまうのか、人間というもの、男女の関係というもののもどかしさを切なく味あわせてくれる良作だ。 ラストに子どもが父親を呼ぶ姿が印象的ともなっている。 心が傷ついた子どもがまた大きくなり、同じような過ちを繰り返さないことを祈るばかりだ。 また、彼が彼女に贈った曲の歌詞や、泊まったホテルの部屋の名前なども未来を暗示させており、いい効果を発揮している。 泊まったホテルで男が掛けた曲に込められた“思い”など、彼の心情を深く感じ取れるということも良い手法だ。 カップルが鑑賞するにはかなり厳しい作品かもしれないが、個人的には逆にカップルに鑑賞して欲しい作品だ。 反面教師的な役割となり、このようにならないために、お互いがお互いのことを考えられるようになるだろう。 愛し合ったカップルが年月を経ることによって徐々に気持ちが離れて、別れることが必然だということが、本作のメッセージだとは思っていない。 多くのカップルの中には、そのようなカップルもいるということを描いているに過ぎない。 どうすればこのようにならないかという“答え”はもちろん存在しないが、お互いがお互いのことを考えるしかない。
[映画館(字幕)] 8点(2011-05-14 00:32:09)(良:1票)
2.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 
某有名人気シリーズの設定に酷似していることは気になるが、個人的には意外と楽しめたという印象。どうしても比較してしまうが、このような設定においては基本的にはどれも似通ってしまうので、それほど気にしない方がよいだろう。 特許があるわけではないので、仕方がないと思うしかない(パクリでは不味いが)。 しかし、粗もかなり目立つ作品でもある。 あんなおっさんをターゲットにするくらいならば、あんな面倒くさいことをせずに「普通に道端で襲えよ!」と思う(殺人を事故にみせかけるのがプロの仕事だろう)が、そのようなことを言い出したら映画などは作れない。 製作者は一生懸命にどんでん返しをしようと考えた“努力”と取るしかない。 それにしては、プロの暗殺集団は意外と間抜けな集団と最後になってしまった。 自分の使命を忘れる者もいれば、捨てゼリフを吐きながらも爆弾を解除できない者もいて、おまけに一人の素人の女性にほぼ全滅させられるという有り様。 仲間のおっさんがビビるほどの凄みを感じさせなかったことは残念。 銃による死者がいなかったことは製作者の意図だろうか。 その辺りは一応工夫しているのかもしれない。 残念といえば、善と悪との葛藤のようなものがないことも挙げられる。 生まれ変わったら、悪と戦うヒーローに簡単になってしまうのは単純すぎる。 確かに、訳の分からない輩に襲われたら戦わざるを得ないが、自分の使命やアイデンティティーに対して苦悩させた方がよいのではないか。 悩める主人公をヒロインやターゲットの子どもなどが影響させて、完全に生まれ変わらせるということが醍醐味であろう。 もともとは仲間なのだから、殺そうとするのではなくて懐柔させるようなアメとムチを使い分けてもよかった。 あまり難しいドラマを構築するよりも、真相やアクションを楽しむ映画なので、単純でよいともいえる。 しかし、ラストにおいても妻との再会がなかったことも残念だ。 意外な方法による退場の仕方も面白いといえば面白いが、最後はちゃんと妻と思っていた女性と向かい合わせた方がより面白い。 自分が愛したと錯覚した女性を選ぶのか、それとも自分を救ってくれた女性を選ぶのかというチョイスが最も必要なことではないか。 きちんと過去と決別させるためにもこれは必要な儀式だと思う。 情に訴えかける妻と思っていた女性に策略に乗らないようなシーンは必要であろう。
[映画館(字幕)] 6点(2011-05-09 22:20:22)(良:2票)
3.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》 
3D吹替え版を鑑賞。 ディズニーらしく夢のある作品に仕上がっており、大人でも子供でも誰でも楽しめることができるだろう。 アドベンチャー、ラブストーリー、親子愛などの要素を盛り込み、“自由”や“夢”や“成長”などのテーマを3Dを活かした圧倒的な美しさや迫力で描き込んである。 鑑賞する前には想像していなかったが、ミュージカル要素が多数含まれており、いい裏切りが嬉しいところ。 ミュージカルをアメリカ版でも聞いてみたいとも思ったが、逆に吹替え版だからこそ楽しく聞くこともできたとも思える。 歌のパートは別の人だったようだが、中川翔子が彼女のカラーを全く感じさせない、良い仕事をしたようだ。 目的もなく、ぼんやりとしていたユージンが最後に良い仕事をすることもいい裏切りとなっている。 “自由”を求めるラプンツェルの“夢”、“自由”を謳歌するラプンツェルの楽しそうな“姿”を見て、彼自身も変わっていったのだろう。 自分自身を犠牲にして、彼女自身の大切な宝ともいえる“呪縛”から開放させることには、男としての強い勇気を感じさせた。 仲間ではないはずの荒くれ者たちやライバルのマキシマスの手助けなどの、いい裏切りが嬉しい作品。 盗賊であれ、動物であれ、赤の他人であれ、どのような関係であっても仲間ハズレにせずに、手を取り合うようなシーンには心を打たれる。 ディズニーらしく大人でも子供でも楽しめる、甘いスイーツのような作品であり、自分には少々甘すぎたところもあったが、それが目的のような作品であり、もちろんその点が本作において問題になることはないだろう。 甘いケーキを食べに行って、甘すぎると非難するのはナンセンスと分かっている。
[映画館(吹替)] 7点(2011-05-03 12:53:28)(良:1票)
4.  SOMEWHERE 《ネタバレ》 
ソフィア・コッポラ監督はそれほど好きではないので、ベネチア映画祭で賛否両論の本作を気に入ることは難しいかと思っていたが、これはこれで意外とアリということが正直な感想だ。 ハリウッドスターの日常や、父と娘が過ごすたわいもない日常が綴られているにすぎないので、ストーリー映画のような面白みを得ることはなかなか難しい。 しかし、無味乾燥な日常の中にみえる“空虚さ”、平凡なやり取りの中で父と娘が心を通わせる“穏かさ”が本作には欠かせないので、このようなアプローチは悪くはない手法だ。 ハリウッドスターが過ごす物足りない日常の生活や、父と娘が過ごすたわいもない日常の生活を、ソフィア・コッポラが極めて繊細に描いているため、自分はそれほど飽きることはなかった。 このようなストーリーがほとんど存在しないような映画を、一定の水準に保つには、監督としての技量を問われるはずだ。 ハリウッドスターとして全てを手に入れて、パーティーやレセプションをこなし、多くの女性とともに過すジョニー・マルコと、一人の父親として娘とともに過すジョニー・マルコの対比がうまくできている。 ポールダンスを見て飽きて寝てしまう姿と、娘のアイススケートを見て惜しみのない拍手をおくる姿をみるとまるで別人のようだ。 オチの付け方が難しく、中途半端な終わり方になると予想していたが、前向きになれる意外と良いオチを付けてくれた。 暮らしていた高級ホテルをチェックアウトして、高級車を降りて、何もかも捨て去り、自分の足で歩く男にはかすかな笑みがこぼれており、空虚な生活を送り、何も手にしていない男が再生し、再スタートを切る姿は美しい。 娘との再会で幕を閉じるわけでもなく、具体的な事象を描くことなく、曖昧なイメージのままで仕上げており、本作にとっては最良の仕上げではないか。 このようなラストにすることにより、自分はハリウッドスターでもなければ、子どももいないが、マルコの姿と自分自身をやや重ね合わせることができたので共感しやすかった。
[映画館(字幕)] 7点(2011-05-03 12:39:53)
5.  ブンミおじさんの森 《ネタバレ》 
さすがに全く理解できなかった。 普通の映画とは異なるため常人には製作できないという点は認めるが、本作のような映画ははっきりいって苦手である。 本作においては、この世、あの世、現世、前世といったものを超越しているようだ。 “死”というものは終わりではなくて、“自然”に帰るようなものなのかもしれない。 ハリウッド映画では作ることができない、タイ映画だからこそ作れる境地か。 唐突に挿入されている、現世に絶望しているような王女が何もかも捨て去り、自然(川)と一体化していくシーンも象徴的となっている。 本作を見れば、現世の苦痛といったものが軽減されるかもしれない。 それにしても、点数は付けにくい映画。 見る人によっては満点なのかもしれないが、自分のような若輩者には高い点数はまだ付けられない。 自然を眺めて、その中に美しさを見出せる人には向いているかもしれないが、残念ながら自分は都会に毒されてしまったか。
[映画館(字幕)] 4点(2011-05-03 12:18:48)
6.  エンジェル ウォーズ 《ネタバレ》 
嫌いなテイストではなかったが、「300」「ウォッチメン」の方が好きなので、評価としてはこの程度となる。 鑑賞する前は、5人の美少女が協力してキーアイテムを強奪しながら脱獄するようなストーリーが描かれるのではないかと思っていた。 実際の脱獄を描いても面白くはないので、空想的に見立てられていると思ったが、現実の世界と空想の世界があまりリンクされていなかったのが意外。 もちろんそれなりにリンクはされているのだが、結局彼女はいったい何と戦っていたのだろうという感想も出てくる。 仲間を助けることが出来れば、彼女にとってはそのようなことはどうでもいいことなのだが。 世界観については、ザック・スナイダー監督らしさが炸裂しており、彼のファンならばより楽しむことはできるだろう。 むしろ過去の原作が存在するような作品よりも、伸び伸びと自分らしさを発揮できていたような気がする。 そのため、一般向きというわけではなくなり、好き嫌いが分かれそうだ。 個人的に嫌いな作品ではないが、キャスティングがそれほど好みではなかったことが難点。 5人の美少女という設定かどうかは分からないが、肝心の5人が自分の好みとはやや異なるので、ハマるような感じではなかった。 微妙にアダルト過ぎたかもしれない。 また、5つ目のキーアイテムの謎が本作の“キー”となってもいいとは思うが、その“キー”を盛り立てるようにはなっていない気がする。 姉を助けようとするロケットの行動、仲間を救おうとする余りに取ったブロンディの行動を鑑みると、自ずと答えが導かれるようにはなっているが、“5つ目のキーは何か”ということをもっとアピールしてもよい。 ラストの頃にはすっかりと忘れかけていた(そういう演出だろうが)。 ストーリーを追う必要はないが、カメラワークを追う必要はある映画。 意外と凝った動きをしており、カメラの動きを追うのは楽しいが、しょせんCGなので深い関心はしにくい。 こういう映画こそ3Dの方がよかったような気がする。 3Dならば本作の印象ももっと変わったかもしれない。 冒頭にセリフなしでガンガン進めるような展開はユニークなので、空想世界だけではなくて、ミュージカル要素なども取り込みながら、全体的にもうちょっと自由自在に遊びまわってもよかったかもしれない。 パターン化されてしまっている。
[映画館(字幕)] 6点(2011-04-23 11:54:42)
7.  イリュージョニスト(2010) 《ネタバレ》 
ジャック・タチ監督のことも、シルヴァン・ショメ監督のことも全く知らない。 知っていることは、アカデミー賞長編アニメでノミネートされたことだけだ。 何も知らずに鑑賞してみたが、ドハマりするようなテイストではないものの、昔ながらの素朴なテイストに癒された。 また、時代に取り残されているにも関わらず、愚直なほどの真っ直ぐな生き方は、観た者それぞれが自分自身の姿と重ねあわせることができるだろう。 商品宣伝と魔術を組み合わせた新しい時代へと移行することもできただろうが、彼はそれを放棄している。 一方で、ど田舎から付いてきた娘が都会風のレディーへと成長していく、時代に応じた生き方も描かれており、二人が面白い対比となっている。 時代に抗いながら生きる愚直さも、時代に応じて生きる成長力も、どちらも否定されていないような気がする。 これらが“人生”ということだろう。 どちらの道にも答えのない人生というものが投影されている。 苦労して着飾らせた挙句に若い男に走る姿に違和感を覚えるかもしれないが、二人は恋人というわけではないのだから、裏切られた感覚はないだろう。 むしろ娘のような存在として見守っており、狭い世界に閉じ込めるよりも、広い世界へと進んで欲しいと成長を促すような感覚があったような気がする。 野に放ったウサギについても同様の感覚があったのかもしれない。 「魔法使いは存在しない」というメモも印象的だ。 我々は魔法使いではないのだから、成功できなくてもいいのかもしれない、 我々は魔法使いではないのだから、何もできなくてもいいのかもしれない、 地べたを這いつくばって生きていてもいいのかもしれない。 我々は魔法使いではないのだから。
[映画館(字幕)] 7点(2011-04-23 11:39:42)(良:1票)
8.  トゥルー・グリット 《ネタバレ》 
オリジナルは最近鑑賞したが、本作の方がやや好みだった。ストーリーは基本的にオリジナルと同じようなものとなっている。コグバーンとラビーフの対立がやや強めとなっており、少女のわがまま度がやや抑えられており、ラストの展開がやや異なる程度となっている。どちらもそれなりに面白いものの、どちらも感情に訴えてくるものが少ないような気がする。本作から“トゥルー・グリット”があまり感じられなかった。もちろん三者に気骨や勇気があることは疑いようがないが、特別な何かを感じさせるものが足りないのではないか。 オリジナルに忠実に描きたかったのかもしれないが、もうちょっと大胆に改良してもよかったのではないか。もっと壮絶な追跡劇にしてもよかっただろう。もっと悲惨なものにしてもよかっただろう。1969年に描けたものを今更40年経過した後に同じように描いても仕方がない。映画は止まっているのではなくて進歩しているのではないのか。 少女の成長ストーリーとしてもやや不満。自分一人の力があれば、大人も簡単に動かせることもでき、復讐も簡単にできるという傲慢でわがままで自分勝手な考えを持っていた少女が、この旅を通して協調性や自分が思うままに物事は進まない現実を学んで欲しいところだ。法律や経済や理想を振りかざす少女に対して、それらを超越した世界を体験させてもよかった。本当の勇気とは何なのか、何も考えずに進むことが勇気なのか、将来を考えて後退することが勇気なのか、ということを我々に問うてもよかっただろう。オリジナルとは異なる追加されたストーリーでは、彼女は片腕を失い、独身のままで生涯を過し、性格もあまり変わっていないようだった。コグバーンに対するリスペクトの感情を変わらずに抱いていたようだったが、果たしてそれだけで良かったのだろうか。彼女の人生は果たして幸せだったのか。 オリジナルとは異なり、『復讐には意味がない』ということを現代のテーマとして伝えても意味があるのではないかと思う。コーエン兄弟は、ラストにあえて付け足をすることで、復讐しても意味がないということを伝えたかったかもしれないが、やや分かりにくいだろう。もっと分かりやすい悲劇的なラストでもよかったかもしれないが、製作総指揮のスピルバーグが許さなかったか。普通の西部劇ならば、コーエン兄弟がわざわざ監督をする必要があったのかは疑問なところ。
[映画館(字幕)] 6点(2011-04-12 23:28:17)(良:2票)
9.  ザ・ファイター 《ネタバレ》 
ミッキー・ウォードというボクサーについての知識は全くない。 そもそもボクシングについてあまり興味もない。 全く知識もないという状態だからだろうか、逆に新鮮な気持ちで鑑賞することができた。 肝心のボクシングの試合はそれほど熱いものではなかったが、ボクシング以上に熱いファイトが見られたのは、試合以外のその他の部分である。 兄と弟、母と子、恋人と男、娘と父の関係を、リアルで生の感情をむき出しにして、熱く描かれている。 それだけリアルで生の感情が表に出てくるのは、“世界チャンピオン”という栄光が彼らにとっての“夢”であり、自己の存在価値を認めるものであり、負け犬ともいえるような人生を変えることができるからなのだろう。 どん底から這い上がりたいという願う者の気持ちが渦巻いて、一つの形として成就する姿はやはり感動的と言わざるを得ない。 もろい物であり、円滑に働く物でもないが、それぞれの絆の深さ、太さが感じられ、“家族”という存在の大きさが浮き彫りとなっている。 ボクシング映画でありながら、ボクシングの試合がイマイチ盛り上がっていなかった気がするが、「ロッキー」のような映画ではないので、ボクシングの試合がやや地味でも仕方がないだろう。 現実に存在した選手の試合であり、試合を盛り上げようと思って、変な演出をしない方が逆によかったかもしれない。 試合よりも人間ドラマに重きを置いた監督の戦略でもあるだろう。 クリスチャン・ベールはアカデミー賞受賞も納得の演技。 最後に本人が出てきたときは、ほとんど同じ人としか思えなかった。 ただ単に似ているだけではなくて、登場人物の全ての者に影響を与えるほど、本作において重みがあり、本作の影の主役と言っても過言ではないだろう。 マーク・ウォルバーグもアカデミー賞から無視されたことが納得できる。 実際にファイトするのは本人なのだが、主役でありながら、板ばさみ状態で一番感情を押し殺さなくてはいけない損な役回りを引き受けたともいえる。 プロデューサーでもあり、仕方がないか。 カメラワークもなかなか凝っており、この視点からも楽しめるだろう。 久々に聴いた「ホワイト・スネイク」の曲も熱くなった。 タイトルは「ザ・ファイター」とシンプルだが、ミッキー・ウォードという固有名詞を使うのではなくて、戦っているのはボクサー一人ではないということを込めているのかもしれない。
[映画館(字幕)] 8点(2011-04-02 23:04:17)
10.  ツーリスト 《ネタバレ》 
オリジナルのフランス映画「アントニー・ジマー」は未見。デキの良くない駄作という事前情報を得ていたので、思いっきりハードルを下げて、「どんな駄作を見られるのか」という楽しみすら期待していた。ハードルを下げ切っており、恐ろしく古臭いセンス、間抜けな警察、間抜けな組織についても笑えるような状態だったためか、意外と普通の仕上りとなっており、逆の意味で期待を裏切られた。もっとトンでもない映画を見られるかと思ったが、よくあるような普通の古典的な作品だった。バレバレのネタを追認するだけの作業に過ぎず、アンジェリーナ・ジョリーが相変わらず美しいということ(痩せ過ぎでちょっと怖いようなところもあるが)以外には、ほとんど心に残らない作品となっており、もちろん素晴らしいと評価することはできない。 本作の決定的な問題はラストのオチだろう。全てを観客に明かすという愚行を犯している。ハリウッド大作映画を任されて、若いドイツ人監督は観客のレベルを低く設定したのだろうか。本当のプロならば、幾通りの解釈ができるような余地でも残しておいて欲しかったところだ。ハリウッド映画なので曖昧にするのが嫌だとしても、考えられ得るケースにおいて一番最悪なチョイスをしたという印象。フランクが実はただのツーリスト案、全てフランクとエリーズの共謀案よりも酷いチョイス。観客には正体を明かしてもよいが、エリーズには正体を明かす必要はないのではないか。個人的には、ある時に彼女の本当の素性を知り、恋愛と任務の板ばさみから彼女を開放するために、彼女には秘密に一芝居を打つこととして、迫り来る組織を自分の手を汚すことなく片付ける、彼女から共犯者という汚名を晴らす、警察の捜査を打ち切らせる、彼女から本当に愛される、犯罪とは無関係の彼女との新たな生活を手に入れる、という一挙両得の計略を用いたというような解釈ができればよかった。新たな顔、新たな人生を手に入れて、男性は完全に女性を騙したと確信しているが、女性はその嘘を知りながらも黙っているといった解釈がさらに出来るような男女の奥の深い関係や、愛する男がいるのに別の男に惹かれる、愛する男がいる女を惚れさせようとする男女の駆け引きのようなものを描ければよかっただろう。 「大金を掛けてその程度にしか整形できなかったのか」という皮肉的なセリフも面白味はあるが、ラブストーリーとしてはこれでは浅すぎた。
[映画館(字幕)] 6点(2011-03-08 23:35:16)(良:1票)
11.  英国王のスピーチ 《ネタバレ》 
心に響く作品となっている。派手さがある作品ではないが、“重み”のある作品に仕上がっている。ストーリーは展開に大きな動きのあるものでもなければ、単純に感動を煽るようなものではなくて、シンプルに構成されているので、アカデミー賞を受賞した傑作の感動作という印象とはやや異なるものの、最後のスピーチに全ての想いが結実されており、評価通りの良作といえるだろう。国民を守る王として、一緒に戦ってくれた友の期待を応える者として、自分を影から支えてくれた妻をもつ夫として、幼いながらも父を理解してくれる2人の娘を持つ父として、あのスピーチにはを感じられた。様々な想いの中で、様々なプレッシャーの中で、紡ぎ出される一つ一つの言葉には心を動かされざるを得ない。 また、王室としてのプレッシャーや、難局を迎えた王の地位としての“重み”もあった。兄の退位による戴冠、戦争を迎えるという状況がマジメな彼をさらに追い込んだように思えるが、マジメさとユーモアさを兼ね備える彼だからこそ、この難局をも乗り越えたように思える。ジョージ6世が最後までローグをライオネルと呼ばなかったように思えたが、果たしてどうだったのだろうか。もしそうならば、ジョージ6世らしさがよく出ていると思う。王という地位の重さを知るジョージ6世だからこそ、対等な立場で付き合いたくてもそれを許せなかったのだろう。王の代わりに王妃がライオネルと呼ぶ展開も、王の気持ちを痛いほど分かる妻の気持ちが込められているように感じた。それだけ威厳が必要な王だからこそ、逆にライオネルは王と対等の立場で向き合わなくてはいけなかったのだろう。対等の立場に立たないと、悩みを抱える者の真の心の声は聞こえないのかもしれない。彼は、戦場で傷ついた兵士にも、小さな子どもにも、対等な立場で向き合ったのだろうと思われる。王としての立場を守らなくてはならないジョージ6世と、対等の立場で問題を解決しなくてはならないライオネルとのベクトルの違いというものも本作をより深く、より面白くさせている。最後にライオネルがバーティではなくて、陛下と呼ぶことで、さらに深みが増している。 とてつもないプレッシャーの中で吃音症を乗り越えたのだから、現代に生きる我々が抱えるプレッシャーというものも、周囲の助けがあれば、乗り越えられないわけがないということももちろん描かれているように感じられる。
[映画館(字幕)] 8点(2011-03-01 23:11:46)
12.  ウォール・ストリート 《ネタバレ》 
ストーリーはかなり甘いように思えるが、これはこれで嫌いではない。ゲッコーも変わるように、オリヴァー・ストーン監督も変わってしまったのだろう。諸手を挙げて歓迎したいようなチェンジとは思えないが、年齢を重ねれば、このチェンジも仕方はないか。このご時勢に、不毛なマネーゲームを強烈に繰り広げても観客は滅入るだけかもしれない。目先の利益を追うのではなくて、“家族の繋がり・家系の繋がり”や“次世代型環境テクノロジー”という将来を見据えたテーマを掲げている。 甘いと感じられる点は以下のようなものか。 ゲッコーとジェイコブとの関係、ゲッコーの心変わりとゲッコーと娘ウィニーの仲直り、ジェイコブとウィニーの仲直り、ブレトンに対する追い込み方など。前作は様々な要素が描かれており、それらをきちんと消化していたが、本作は様々なことを盛り込みすぎて、やや消化不良になったように思える。 ジェイコブは前作のバドとは異なり、野心家ではなく“良い人”キャラクターであり、深みには欠ける。金の魔力や重力に負けるような弱さのある男でもなく、ただのお人よしがゲッコーにいいように騙されただけ。得意技も『風説の流布』だけであり、あれが何度も通用してしまうのは芸がない。ただ、ゲッコーにもブレトンにも格が劣るようなイメージだが、彼のお人よしの良心がゲッコーを変えたとも捉えることはできる。もっともウィニーが好きになる人なので、野心溢れる普通の証券マンではおかしいだろう。前作のようなゲッコーとバドとの関係を同じように描いても、ストーン監督は意味はないと考えたのかもしれない。 前作では「金のためには母親までをも売り飛ばす」と罵られたゲッコーだったが、金のためにリアルに娘を裏切る辺りはゲッコーらしさがよく出ている。握手を求めても怪訝そうにされたり、娘からは「あなたの名前に昔のような価値はないわ」と言われる状況から、業界を仕切る口笛じじいに頼られるまで、見事なまでのカムバックを果たしている。ただ、カムバックを果たしてもどこか満たされない想い、崩壊してしまった家族や失ってしまった息子を、娘夫婦や孫というカタチで再建できるという想いが彼を変えたのだろう。何度も失望させられた父親や、自分に嘘を付いたジェイコブをあっけなく許すウィニーの心情は理解しにくいが、娘から母親になるというチェンジが彼女を変えたと解釈できなくもない。
[映画館(字幕)] 6点(2011-02-28 00:18:52)(良:1票)
13.  ヒア アフター 《ネタバレ》 
イーストウッド監督作品を観ていると、たまに何が言いたいのかよく感じ取れないことがある。「チェンジリング」「グラン・トリノ」といった分かりやすい作品が続いていたので、もはや問題はないと思っていたが、今回は正直言ってよく感じ取れなかった。悪い作品ではないと思うが、良い作品とも思えない。再見すると徐々に彼が言いたい事が伝わってくるので、本作も何度か観れば分かるようになるとは思うが、全体的にぼんやりとしすぎたというか、重みに欠けたような印象。イーストウッドは、派手な演出を好まないだろうし、ドラマティックな展開を盛り上げることもないだろう。これが彼の持ち味だと思うので、感じ取れる人が分かればよいかもしれない。 ①事故死した双子の兄を忘れられない弟、②死者の声を聞くことができる孤独な労働者、③臨死体験をしたことが忘れられないニュースキャスターという三者が本作のメインキャストとなっている。普通の映画ならば、きちんと“死”に向き合い、前向きに生きようとすることを決意する①の姿勢が描かれると思われる。もちろん、本作もそのようなものが描かれているが、あまり心に響いてこなかった。子役が感情を爆発させるわけではなく、子役が無口過ぎたか。彼が苦しみや悲しみを吐露し、兄ときちんとお別れすれば、単純に泣ける映画になっただろうが、イーストウッドはもちろんそのようなことはしなかった。 死者と会話をすることができるが、現実社会では上手く生きることができない労働者がようやく分かり合えるパートナーを見つけることができるということも本作の大事なポイントとなっているが、②と③の出会いが唐突すぎるような印象を受ける。もしディケンズが好きでなかったら、もしあの朗読者のことを好きでなかったら、もし少年を助けなかったら、もし手紙を書かなかったら、という運命の糸のようなものが絡まっている面白さはあるものの、この辺りもイーストウッドらしく淡々とした仕上りとなっている彼らの出会いにより、何かキセキのようなことが起きるというドラマティックな展開ではない気がする。もっとも各キャラクターが抱える悩みというものが、現在の自分とはかけ離れているので、上手く感じ取ることができないのだろう。また、自分が精神的に若すぎて、イーストウッド作品を理解できるレベルに達していないので、もうちょっと後にもう一回観た方がいいのかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2011-02-21 23:58:13)
14.  ザ・タウン 《ネタバレ》 
緊張感に溢れ、重々しくかつ渋めの作風となっており、自分好みの作品に仕上がっている。監督としてのキャリアが浅いこともあるのか、あまり変なところに凝ることなく、オーソドックスで分かりやすい構成ともなっている(リアリティにはこだわっているようだが)。クライムサスペンス、アクション、ラブストーリー、ヒューマンドラマという要素をバランスよく、重厚かつリアルに描き込んでおり、エンターテイメント作品としても人間ドラマとしても、どちらの面からも楽しめられる。アフレックは役柄的にぼんやりしたところはあったが、ジェレミー・レナーが“街”とともに生きるという決意が表れたような演技をしている点も評価できるところ。 父親との関係、幼なじみとの関係、元恋人との関係、現在の恋人との関係、街を仕切るボスとの関係など、自分が住む“街”、自分と切り離すことができない“街”について、あまり多くを語らずに必要最小限に留めているところも好感がもてる。 獄中にいる父親に会って、母親の話をするだけでよい。 幼なじみとは罪を犯し、むかつく奴を殴り、昔話をするだけでよい。 元恋人とはヤッて、泣きつかれるだけでよい。 街に仕切るボスとは交渉して、逆に脅されるだけでよい。 それぞれを詳細には描き込んでいないが、しがらみに絡みつかれていることがよく分かるようになっている。 幹と枝の部分をしっかりと描き、葉っぱのような部分をカットしていることはなかなかの思い切りの良さを感じられる。 エピソードも効果的に使われている。 母親に関するエピソード、自分のために獄中に入ってくれた幼なじみのエピソードなど、実際に描くよりもエピソードとして挿入することの方が心に響き、大きな効果を生んでいるように感じられた。 スケートリンク、土いじり、恋人との会話などもさりげなく描き、それらを効果的に使っている。 ただ、ラストのヒゲ面は多少蛇足かもしれない。 彼が警察に捕まったのか、野垂れ死んだのか、幸せに暮らしているのか、罪を償っているのかといったことはそれぞれの観客の判断に任せてもよいのではないか。 あまり描かないことが効果的だったので、手紙のナレーションだけでもよかったかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2011-02-08 23:32:17)(良:1票)
15.  RED/レッド(2010) 《ネタバレ》 
かなり面白く感じられた。アメコミ原作ということもあり、画面を使って上手く遊んでいる。コメディ的な要素をベースにして、シリアス的な要素も取り入れているので、他の監督作品とは違うような独特の“味”のある作品に仕上がった。 ただ、「フライトプラン」を撮っている様に、基本的にはマジメなタイプのようであり、完全に遊び切れていないイメージも受けるが、マジメに遊んでおり、これはこれでアリのような気もする。遊び一辺倒やシリアス一辺倒よりも、バランスはそれほど悪くはない。主要キャラクターが一人亡くなるだけではなくて、かなり追い込まれているにも関わらず、ギリギリしたような緊迫感には欠けているが、そこまで本格的に仕上げる必要もないだろう。ただ、テンポの悪さや冗長感もあるので高い評価はしにくいところもある。 ストーリーはどこかで見たような政府による陰謀的な展開ではあるが、一応はしっかりとしている。サプライズはなく、平凡な黒幕や落としどころといった難点もあるが、『この先どうなるのだろうか』と感じられることが重要だ。 それだけではなくて“恋愛”を中心に添えているので、他のアクション作品とは異なり、若干引き締まった。「ナイト&デイ」など、巻き込まれタイプのアクション作品は多いが、彼女の天然さや美人ともいえない容姿も本作にはプラスに働いた。 ブルース・ウィリスは相変わらずのブルース・ウィリスではあったが、クールな仕事人であり、無理をしてキャラクターを作る必要もない。彼の代わりに、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、ブライアン・コックスが良い演技をしており、非常に良い味を発揮してくれた。彼らの存在感も本作には大きなプラスをもたらしただろう。ジョン・マルコヴィッチはセリフを喋らない場面でも、きっちりと演技している。モーガン・フリーマンはスケジュールの都合だろうか、出番があまりなかったことは残念だったが、ブライアン・コックスの出番が想像外に大きかったのでカバーされている。ブルース・ウィリスとメアリー=ルイーズ・パーカーだけではなくて、ブライアン・コックスとヘレン・ミレンという熟年カップルを登場させており、歳を取っても活躍することはできる、恋愛することもできるというメッセージを送っているのだろうか。 遊びもかなりあるが、全体的に落ち着いた作品にも仕上がっており、大人向けに仕上げているのかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2011-02-02 22:28:20)(良:1票)
16.  デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~ 《ネタバレ》 
「ハングオーバー」が面白かったので、ある程度期待していたが、期待どおりの面白さだった。この監督とはやはり相性があいそうだ。誰にでもススメられる良質のコメディ作品だ。ただ、「ハングオーバー」の際も同様の現象が起きていたが、近くにいたアメリカ人は大爆笑しているにも関わらず、日本人は静かにしているところが多々見られた。恐らくセリフと字幕には多少のニュアンスの違いがあり、微妙な面白みを伝え切れていないところがあるようだ。 コメディ作品は非現実的な事象が巻き起こり、それが不自然に感じられることが多々ある。本作も同様に非現実的な事象が多く生じているにも関わらず、意外とナチュラルで無理がない仕上りとなっている。ロバート・ダウニーJr.の演技力の賜物かもしれないが、演出・演技にわざとらしさがなく、全体的に自然体のように感じられた。 また、テロリスト、児童虐待、イラクからの軍人の帰還、メキシコからの不法移民、ドラッグなど、かなり際どい題材を盛り込んでいるにも関わらず、これらに関しても嫌らしさを全く感じられない。アメリカ人にとってはどのように感じるかは分からないが、これらを上手く笑いに転じさせている。 トリップモノ、バディモノとしても悪くはない。イーサンはバカではあるが、バカ正直でもあり、裏がなく憎めないキャラクターになっている。父親を亡くして孤独になったイーサンは一人ぼっちになりたくなかっただけなのかもしれない。ピーターはただのつまらない大人ではあったが、イーサンとの出会いにより、徐々に変わっていっている。その象徴的なものは、グランドキャニオンへの立ち寄りだろう。あれほどキレやすかったのに、終盤は財布の件以外は比較的穏やかだ。 イーサンにとっては、ピーターは孤独を癒すかけがえのない相棒なのかもしれないが、ピーターにとってイーサンの存在とはどうなのだろうと考えてしまう。大嫌いでやっかいな相手から、どうしてかけがえのない相棒へと変わったのか。メキシコで拘留中に無謀な手段によって助けられたことが、ピーターにとってイーサンが相棒へと変わったポイントなのかと思われた。妻の出産に立ち会えないという“絶望”から彼を救ったことによって、イーサンに対する想いが大きく変わったのだろう。 これらのように、ただ単に笑えるだけではなくて、ちょっとだけ相棒のことを考えられる点も評価したいところだ。
[映画館(字幕)] 7点(2011-02-02 22:14:06)(良:1票)
17.  グリーン・ホーネット 《ネタバレ》 
3D字幕版を鑑賞。オリジナルについてはもちろん知識はない。本作のようなアクション作品は期待していないが、観れば意外と楽しめるというものが多いかと思われる。本作に関しても、もちろん過度な期待などしていなかったが、その期待を下回るデキのように思われた。素晴らしいストーリーや大どんでん返しのあるオチや複雑な人間ドラマなどは毛頭期待していないが、鑑賞中くらいは飽きさせずに楽しませて欲しかったところだ。 何か新しいモノが観られるのではないかという想いがあったが、心が躍るような展開がほぼ皆無だった。常に空回りしているような状態が続いている。子どもじみたやり取りや、子どもじみた喧嘩が続き、どこかで見たような展開やシーンばかりで見所がない。 大金が掛かっているので失敗を怖れてか冒険ができず、他のハリウッドアクション作品との差異を見出せなかった。冒頭のアクションシーンだけは少し面白かったのに、あの勢いはいつの間にかどこかへ消え失せてしまっている。 また、キャラクターが全体的に薄っぺらく、仲間や敵を含めて、それぞれの関係性が活きていない構成となっている(キャメロン・ディアスが他のヒーローモノとは異なり、主人公を好んでいない辺りがちょっとだけ面白いが)。それぞれがバラバラにムチャをやって収拾がつかなくなったようなイメージ。バカなムチャをやるのならば、とことん派手にムチャクチャなものを作れば良かったが、中途半端にマジメな作りにもなっていることも欠点といえる。コメディタッチで押すのか、シリアス路線で押すのか、場面によって分けるのか、もっと色濃く演出できればよいが、全体的にボンヤリした感じとなった。本編よりもエンドクレジットの方がデキのような作品を評価することはできない。 チャウ・シンチーの降板など紆余曲折を経て製作されたが、チャウ・シンチーが監督をしていたとしても、これでは難しかっただろう。ましてや、アクション作品の経験が少ないミシェル・ゴンドリーではもっと厳しいだろう。 ミシェル・ゴンドリーらしさを発揮できなったのか、発揮するつもりがなかったのか分からないが、あまり“彼らしさ”を感じられなかった。 画面が16分割していく辺りや、空想シーンなどの“彼らしさ”は少しは醸し出されていたが、この作品に対して心血を注いでも無駄だと思って、手を抜いたのだろうか。
[映画館(字幕)] 4点(2011-01-24 21:43:45)(良:1票)
18.  ソーシャル・ネットワーク 《ネタバレ》 
スピード感や疾走感があり、レベルは高い作品かもしれないが、賞レースの首位に立つような作品なのかという気もする。確かに面白い映画だとは思うが、感じ取りにくい作品でもある。心に訴えてくるものはあるが、心の中で整理しにくく、味わいにくいところもある映画だ。 本作の難しさは、多くのアメリカ人が知っている実在の人間であり、現役バリバリの人間を描いているという点だろう。悪人あるいは善人に偏って映画を構成することはしにくい。あくまでも事実をベースになるべく中立的な立場にたちながら、観た者に「ザッカーバーグとはどのような人間か」を考えてもらう“問題提起”をしている。成功者なのか、失敗者なのか、どちらでもないのか、観た者によって、ザッカーバーグの印象というものは180度異なるかもしれない。そのような視点からは優れた作品といえるだろう。 また、実在の人間を描きながら、人間の本質的な部分が描かれている点も優れた点といえる。ネットやビジネスや法律の世界を扱った映画ではあるが、それらよりも友情の崩壊などの“人間関係”を中心に描かれている。人間と人間を繋ぐシステムを構築したにも関わらず、親友を失い、仕事仲間を失い、恋人も失っている様が皮肉的・象徴的でもある。莫大の大金を得て、莫大の登録者数を得て、成功を収めていくにつれて、どことなくザッカーバーグの影が薄くなっている点が印象的でもある。 冒頭の会話からザッカーバーグの性格や思考パターンが読み取れるようになっていることも面白い作りとなっている。彼に欠落しているのは、他人の気持ちなどを考える“想い”ということではないか。誰かの気持ちを一切考えることなく、自分に付いて来れば、それでハッピーになれるという驕りがある。論理的・合理的に考えれば、それで良いのかもしれないが、人間関係というものはそれでは成り立たない。 しかしながら、ネットの世界に入り込み、他者と壁を作って、自分の世界に閉じ篭もるだけではなくて、弁護士の女性を食事に誘うような“複雑さ”をも兼ね備えている。他者との関わりを絶っているのではなくて、他者との関わりをもちたいという気持ちは彼には確かにあるのだろう。そうでなければ、フェイスブックという世界を構築したりはしないが、関わりを持ちたくても、それが上手く構築できないというのも人間社会の常でもある。ネットの世界と人間社会の世界とは違うのであるから。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-17 22:46:44)(良:1票)
19.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
緊張感・緊迫感に溢れたスリリングな仕上りとなっており、だいたいの顛末を知っている自分でもかなり楽しむことはできた。 実際の事故を基にしたストーリーであるため、このような映画の製作は難しいものだ。 思いっきり脚色すると、関係者や専門家から文句を付けられてしまう。 娘の誕生日、妻との不仲、コネ入社といった飾り程度の最低限の設定はあるが、だいたいのことは無視して、暴走する列車を“メイン”に仕立てた戦略はある程度の成功といえるだろう。 このような脚本があってないような映画は、監督の技量が問われるものであり、映像の技術屋・トニー・スコットだからこそ、この映画は成立できたようなものだ。 映画開始10秒ほどでぐにゃぐにゃとした画面にトニー・スコットの映画が始まったと感じさせており、彼の世界に飛び込むことができる。 また、列車に乗っているデンゼルの顔を撮るショットを中心として、画面が左から右へと急速に流れていることが繰り返されており、それが列車の動きと合っている。 カメラの動きが象徴的となっている作品であり、トニー・スコットの技術と映画の中で描かれる出来事と上手くマッチしているように感じられた。 面白い映画だとは思うが、ラストのオチがややショボ過ぎやしないかと個人的には感じられた。 クルマから飛び移って停められるぐらいならば、それほど苦労は要らないように思える。 列車を後部に連結させてスピードがかなり落ち切ったところで、飛び乗るのならば、少しは分かる話ではあるが、再び時速100キロ近くまでスピードが上がったような描写もあったと思う。 実話をベースにしているので、メチャクチャなミラクルを描くことを避けたのかもしれないが、もうちょっとドラマティックな展開の方がより楽しめたように思える。 ただ、確かに「あのシンプルさがかえって良い」というようにも感じられるので、難しいところではあるが、もう一工夫欲しかったところ。 オチをシンプルにするのならば、二人の鉄道屋をもうちょっと“熱め”に描いてもよかったかもしれない。 利益主義の上層部や司令室の混乱を描くと問題が生じそうなので、その辺りには触れずに、彼らの熱い魂をもっと感じたかった。 一方(人間ドラマ)を描けば、他方(列車の凶暴化)が疎かになるので、二兎を追うことなく、確実に一兎(列車の凶暴化)を追ったということだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-11 23:30:46)
20.  キック・アス 《ネタバレ》 
素直に面白いと思える映画。 他のヒーローモノの世界とも異なり、もちろん現実的な世界とも異なるが、“現実”をベースにした独特な世界観が非常にユニークと感じられる。 あまり見たことのないタイプの作品だけに、評価をしたいところ。 世界観だけではなくて、ストーリーに関しても観客を裏切るような展開が多く、飽きることが全くない。 ゲイネタを盛り込んだり、他のヒーローモノのパロディネタを盛り込んだり、いきなり大量虐殺が始まったり、主人公がとんでもないところから登場したり、バズーカの使いどころといったように、自由自在さが観客を驚かせる。 さらにオタク系の恋愛モノや親子愛モノなども盛り込まれており、“現実感”を取り込み続けることで、映画が非常に豊かな仕上りとなっている。 瀕死のビッグダディがヒットガールに対して、指示を送り続けるシーンには親子の長年の訓練による“絆”のようなものも感じられる良いシーン。 「悪者はただぶっ殺せばよいのか」「女児童による殺人は許されるのか」という問題もあるが、リアリティや倫理性を重視している作品ではなくて、正義感やエンターテイメント性を重視しているのであり、それほど問題はない(現実感がある作品にリアリティがないというのも面白い)。 主人公のガールフレンドがきちんと悲しんでいたので、この点に関しても一応はフォローされている。 ビッグダディの友達の警官もフォロー役として機能している。 最後にキックアスとヒットガールが本名を交し合っており、ヒーロー(殺し屋)ではなくて、生身の人間であるという確認する行為を行うことでこれらの問題に対する提起もなされているように思えた。 また、声高々に「ヒーローとは何か」「正義とは何か」といったテーマを叫ぶようなことはしていない点に好感がもてる。 そのようなことをしなくても、他のヒーローモノとは異なり、生身の人間だからこそ、心に訴えてくるようなものがあったように思える。 ヒーローを見て「カッコいい」と思うようなことはあっても、ヒーローと同じことをしようとは思わないが、キックアスを見ると「自分は何をすべきなのだろうか」と思うようなことはある。 日本は幸いなことに暴力や強奪が横行しているわけではないが、少なくとも傍観者ではいられないのではないだろうか。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-07 00:55:25)(良:2票)
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