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K-Youngさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 80
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メールアドレス wakasa@hf.rim.or.jp
自己紹介 映画って本当に良いですね、晴郎さんが言っていた。忠夫さんが熱く語っていた。荻さんは斜めに座って、ちと難しめな解説をしていた。土曜日には、テレビの前のあなたとお会いしましょうと、約束され、日曜日の夜には、さよならを、それも三回言われてしまう。その時まだ小中学生。今、その人達と同じ年齢になり、私も同じような事を言い始めている。追いつけたのか?それがこのレビュー。

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1.  野いちご 《ネタバレ》 
ひとつ、対比の構造を確認してみましょうか。現実と夢(うまく繋がっています)、老と若(明るい若者と苦渋に満ちた老人)、自己評価と世間の評価(自分に対する評価は夢を通して表現されているけど、自分は駄目だと思っている模様)、自分と母親の関係と自分と息子の関係(同じような冷たい関係がなんとも遺伝だなぁと思う)、禁欲と放蕩(映画を見るとだんだん「いい人」すぎるんだ!と分かってきます)自分と妻の関係と息子とその嫁の関係(これまた、同じ)、宗教と無神論(どっちに傾きすぎてもいけないのでしょうか、笑いを取るシーンに使われているから)、そして、生と死(全編に死のイメージを貼り付けて、生の意味を提出してます)等…… 言葉で書くと「生きる意味」なんて、ちょっと薄っぺらになりそうなんですが、それを映像だけで示してくれています。そこに、この映画の良さがあると感じました。凄い映画です。
[ビデオ(字幕)] 10点(2009-04-11 18:20:30)
2.  8 1/2 《ネタバレ》 
作家の苦悩が映像に映し取られているという表現の凄さ。映画とは外面を切り取るだけのものです。人物の内面を表現するなら、演技表現はもとより、夢や妄想という頭の世界かメタファーを配置するしかないのでしょう。これはその映像表現の頂点と言える作品。おそらく、幾万の映像作家が挑んだテーマなのでしょうが、タルコフスキーやベルイマンあたりを除いて自爆したのではないでしょうか。難解な映画?、いえいえ、そんなことはないですよ。心の中の苦しみ、を丁寧に拾って見てもらえれば、だんだんと周りの人物もが疎ましく思えるようになってきますよ。そうなると、どうにも救えない映画なのですが、ラストでちょっと光を与えてくれます。喜劇なトーンを見せてくれました。私たちはこの映画は「人生は祭りだ」そういう事が分からない男の喜劇なんだと少し安心したりする訳です。
[DVD(字幕)] 10点(2009-03-31 11:46:01)(良:1票)
3.  天井桟敷の人々 《ネタバレ》 
あ、いかん、他の映画に10点つけてしまった。11点は無いのか、11点。高校生の大昔見たときは、ただの長い映画でした。歳を重ね、映画の本数を重ね、再見してみると、あら、大変、凄い映画じゃないの。最初から最後までうっとりしてしまいました。そんな映画はなかったなぁ。メタ映画というか、劇中に劇があるというか。しかも、その劇中劇以外の部分も演劇的にしている。閉じられた空間ではなく、開かれた空間で、演劇を見る感じ。映画が演劇に勝負しようとしているのか。恋愛を語るならフランス人には勝てない、って言いますが、その感じそのままの台詞、台詞、台詞。悪党もいる、狂言回しもいる、決闘なんてものもある、古典的恋愛ストーリー。演技をするのを演技するという役者。たくさんの、たくさんの人。天井桟敷の人々は映画の中では劇を見る人々。私達も映画を見ている天井桟敷の人々。映画の中で天井桟敷の人々を愛すべき人たちのように描いていました。だから、この映画は見ている私達を愛してくれている、という暖かさも感じさせてくれました。
[DVD(字幕)] 10点(2008-01-26 14:40:37)(良:3票)
4.  ゲームの規則 《ネタバレ》 
私達貴族って、何と申しましても優雅ですわ。人間の品とでも申しましょうか。美しくあらねばなりませんもの。お金もかかりますけども。えぇ、そのとおりでございますわ、中身なんてそんなものは、どうでもいいのですのよ。どんな方でも同じでございましょう。人間の欲望なんて皆同じですわ、どこをどうしても喜劇にしかなれませぬもの。喜劇、ですわ。あなたも目撃なさったでしょう、この喜劇。カモなみに人が撃たれましてよ、でも、喜劇。恋は盲目、ここは悲劇かしら。追いかけっこの茶番。こう見えて貴族をやっていくのも案外大変なのよ。え?、何?、没落の始まり?、だから何なのよ。人生は喜劇って今言ったばかりじゃないの。お分かり下さるかしら……
[DVD(字幕)] 10点(2008-01-15 20:55:23)
5.  大いなる幻影(1937) 《ネタバレ》 
貴族社会の崩壊、「この戦争で誰が勝つのか私には分かりませんが、誰が勝とうと結局我々貴族の最期となるのは確かです」。国境のあることの無意味、「国境なんか人間が作ったもの。自然にとってはどうでもいいこと」。金持ちの実態、「寛大の裏側には必ず傲慢が隠れているんだがね」、親切の薄っぺらさ、「本を焼くなんて残酷だ」「本を送る方が残酷だろ」。全てが大いなる幻影か? ただし登場人物は全て誠実に生きている。幻影だと分かっても必死に生きている。この人間を見る目の暖かさ、素晴らしい………
[DVD(字幕)] 10点(2008-01-15 20:35:49)
6.  おくりびと 《ネタバレ》 
ストーリーがベタだの、盛り上がりがないだの、との声をここでたくさん見ましたが、作る方はそんな事は二の次で、映像で勝負、って所じゃないの。何しろまず、納棺師の仕事に見る儀式の静謐厳粛さを、主人公同様に見る方にも納得させなければならない。日本人が誇りとする、(って若い人に言っても分かんないのかな)様式美を示す。そこをクリアしているのが凄い。見ている方もすごいと思う。あっちこっちにメタファーをちりばめていて、その映像に厚みを与えている。タコの死から始まっている。海ではなく川に捨てられた。違う環境。自分も音楽という違う環境で死んでいたのに気がついた。鮭の話は、台詞で説明したからそのまま。食べるシーンが多用してあるのは、「生きること」の意味をそれこそ低音域で奏でている。詰め将棋に微かに感じる「終わり」の予知。命を表す白鳥。雪と白い山が見せる、ピュアさと生との対比、ラストの白い石と胎児のイメージの重なり。布団の白、ふぐの白子、ああ、白のイメージは大事だ。セロ弾きの宮沢賢治は岩手か、山形ではない。山形弁のごつごつしたイメージは広末の演技のイメージ(これは偶然か)。それでもって、やっぱり親子の情に涙するよな。良質のイタリア映画みたい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2012-06-02 13:06:57)
7.  穴(1960)
脱獄映画の傑作ではなく、映画の傑作でしょう。あんな音を立てて、との意見があるが、昼間の刑務所内はうるさい事は最初の方に提示してありますよ。別の部屋でとんとん音を立てて、トイレかなんか修理しているシーン。さて、見る者をすぐに釘付けにするのが、最初の穴を開けるところ。編集もCGも無しで、本当に最初から最後まで俳優が穴を掘って見せる。すごい。ポルノ映画を除いて、最初から最後まで一つの行為を完全に見せるものはないのではないか?ここにこの映画の剛速球がある。その後のディテールは言うまでもない。最後の方なんか、映画ファンの中には、すぐに先読みにして、「裏切るような演出だが、実際はその反対か、または、違う人が裏切る」、なんて思うのだが、その読みの反対で、普通のラスト。(でも、私は監督はそこらへんも計算しているような感じがするけどな)。私は、だから、驚いた。そして、さらに、監督は最後にもう一つ仕掛けをしてますよ。普通に空き部屋があったんですよ。さぁ、みなさん、偶々でしょうか、それとも……監督と勝負させられますね。
[DVD(字幕)] 9点(2012-05-20 13:13:54)
8.  キック・アス 《ネタバレ》 
予言。公開時はそう話題にはならなかったこの映画、DVDが日本で出る頃、または、2が公開される頃には、この名が知られることになるでしょう。凄い映画です。ここのレビュー数も100は軽く超えるでしょうね。駄目高校生のお馬鹿映画と思いきや(みんなそう思っているから見てないんだ)、後半にマカロニウエスタンになる展開に、心が燃えたね。
[インターネット(字幕)] 9点(2011-02-06 13:57:33)(良:2票)
9.  運動靴と赤い金魚 《ネタバレ》 
金魚こそ、祝福の、激励の、そして、今度来る新しい靴の象徴。足にキスするのは、良き未来があることを述べ、痛む足をケアし「よくやった」と伝え、靴くるからね、と足をつついている。悲しみの象徴で終わる映画は山ほどあるが、幸福の象徴で終わるのはそうない。子供の時って、本当に純真で、どうでもいいことで、津波が来る位の心配をして、言いたいことも言えず、悔しいけどがまんしたりして……この感覚を持ったことがない人、おそらく裕福な家でお育ちの方でしょうが、この映画は何にも分からないでしょうね。主演の二人の子供がかわいいという意見が多いですが、なんてことはない、そこには自分の小さな頃の顔が鏡のように映っていただけですよ。
[DVD(字幕)] 9点(2010-12-27 21:38:52)
10.  瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 
画面が黄色みがかっている。古写真を見るような感じで、古めかしい。でも、それもわざとでしょ。時々、スタイリッシュ。冒頭の横切る人だけが、残像とか。ほら、なんか、ちょっと「セブン」風。そうそう、サッカー競技場の上空から、ずっと降りてきて、観衆の中の主人公のアップまで、ワンテイク。あれ、CG使うんだ、とアルゼンチンを少し馬鹿にしていた自分を反省。役者の老けた顔もCG? どうなのかな。いろいろと仕掛けがあって、嬉しくなる。「終身刑」って言葉がその筆頭。きたね、これ。それに、みんな気がついたかな、上司の婚約パーティーの写真に写った主人公の顔。好きな人をじっと見ているの、犯人の写真の中の視線と同じで。もう、映画のタイトル通り。「好きだったら、何も言えないさ」みたいな台詞もあった。ミステリー的には、どうだってトリックはないけど、これ恋愛映画、それも、大きなテーマを投げかける映画。「過去」をどう捌くのか。最後の5分前まで、過去は過去だ、忘れなさい、って話で終わるとみせて、あああら、大変。過去は忘れられるものではないさ、ならば、それを直視して、未来に向かおう、って、どんでん返し。メモ用紙に一字足してさ。そして、さぁ、生きようって、最後にドアが閉まるんだ。僕は「セブン」より好きだな。
[映画館(字幕)] 9点(2010-10-04 20:34:43)
11.  去年マリエンバートで 《ネタバレ》 
映像が物の客観を伝えるもの。しかし、事柄は、各人格の主観のからみでしか、浮き上がらせることはできない。男の主観が語る、女の主観が語る、現在を描写する客観が挟まる。その客観をカメラが補足する、もう一人の男の話が客観として割り込む。そういう構成で、作者は考えた。後は、どう組み合わせるか、この組み合わせのはめ込みに、工夫を懲らそうか、む、それが芸術だねって感じでおしゃれに行こうか。ばらばらにはめ込んでね。時間という客観を破壊しなきゃ。舞台が同じだから、過去と現実をちょっといじくってみようか、ほら、過去の回想場面に現在の会話をいれるとか、その逆だとかおもしろいんじゃない? マイナーな役の人は、ちょっとじっと静止してくれない。そうすると、ほら、なんかマネキンを配したみたいに、映像に立体的な感じが出るし、全く本件に関係ない外野って感じもでるし、思考が回る瞬間の一瞬を表していそうで、頭の中がくるくる回るって感じが出るでしょう。それに、フランス語の語感も、なんか、アンニュイな感じ、これを繰り返すと、不思議だが、心の苦しみの感じでたりしてね。バラック風なBGMも苦悩を表現するのにいいよね。画面のシンメトリーも映画自体が細かく作られていることを表すのにいいよね。または、人間心理の構造を示しているし、心理主義かって…… なんて、考えて作った映画なのじゃないかしら。話は、三角関係でどっちを選択するのかって、単純なんですけど。でも、最初は、男性の妄想と、女性の恋に対する、恐ろしいばかりの、忘却、って、平行線で最後までいくのかな、とか思ったら、(そこら辺を「羅生門」を参考にしたんでしょうけどね)、それなりに、女性の葛藤があって、普通のエンディングになりました。平行線のままのほうがよかったりしてね。
[DVD(字幕)] 9点(2010-05-05 22:30:17)(良:1票)
12.  突然炎のごとく(1961) 《ネタバレ》 
愛の形を教えよう、とこのフランス人監督。唯愛主義というのかな。カトリーヌの自分の心に忠実な、心がころころ変われば愛のベクトルも変わる、その心のままに愛を貫く。ジュールはただ愛すために愛する人を自由のままにさせる。複雑な愛が存在する。ジムは考えて考えて常識的な愛を求める。妊娠だの、友情だのを気にしている。私達が知っている愛は、否定されているようだ。人間の形を借りて、愛というものが、縺れ合うのを見せる映画なのか。人間よりも抽象的な「愛」である。映像にどこか夢のような、実態の無い、浮いたような感じがある。ニュースの映像を入れたり、空撮を入れたり、一瞬のストップを入れたり、早い展開……人間という物質の重さを排除し、実態の無い愛を表現するための工夫かもしれない。音楽はただただ明るい。安物の紙芝居に会いそうな、なんの象徴にもなっていない音楽。これも妙に人間の無化に役立っている。映像はお洒落だ。紙に火をつけて服が燃えたシーン、突然河に飛び込んだシーン、戦場が墓地に変わってそこを歩くシーン、この三つがラストシーンにつながっている。この監督、映像の詩人でもある。
[DVD(字幕)] 9点(2008-03-17 22:52:43)
13.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
彼の心変わりが分からない? そんなコメントを散見しますが、それならば、の私なりの一言。盗聴の後、街灯の明かりも暗い、静かな街をこつこつと歩くシーンがあります。こつこつと、です。皆さんも夜歩かれたら感じると思います。そんな時頭の中のいろいろな思いが奥へ奥へと沈んでいくのを。まさに、その象徴。自分の足音を聞きながら、彼は考えが深まっていきます。最初は女優が好きだったのでしょう、次に芸術家が自分の理想に近い社会主義者であるのも知ります。それだけではありません、芸術家の人生を見て自分の心の中にも芸術の心があるのが分かってきます。(映画の中の芸術家分析のタイプ4とは彼のことでもあるのでしょう、また、ソナタはそのことの象徴でもあります)。自分の孤独と愛し合う二人の幸福も比べます。最後に、体制側の腐敗も(見て見ぬ振りをしてきたのでしょうが)我慢ができなくなってきます。夜の道をこつこつと一歩ずつ進む姿は、その音一つ一つにあわせ、彼の頭の中でそんな思いがこつこつと重なるのです。それは、限界点に来ます。ある時、そう歩いて、エレベーターに乗り、子供と居合わせます。「ボールの名前は?」この瞬間こそ、彼が全てを覚悟した瞬間だと分かるのです。迷いが消えます……人間の(優しい)思惑のため(たとえば、彼女を巻き込みたくない、たとえば、今回は見逃してやろう)少しずつ少しずつズレができて、ドラマが進み。クライマックスへと向かいます。「私のための本です」の二重の意味で、ラスト、画面は止まります。彼の人生に、見ている私達もプレゼントを(本のプレゼントもモチーフです)してあげた気持ちになりました。涙が止まりませんでした。
[DVD(字幕)] 9点(2008-03-11 23:26:17)(良:2票)
14.  L.A.コンフィデンシャル
映画の一ジャンル、ノワールもの。「チャイナタウン」もそうだけど、この時代の、ファッションとか音楽とか車とか、きらびやかな都会とか、悪と暴力と正義と美女のノワール映画はマッチする。人間の欲望、資本主義的な欲望を見せてくれる。ジェームズ・エルロイ原作でしょ、もう、人間の根元の所で藻掻く、悪とか正義とか、そんな二元論なんか蹂躙するような、人間劇は当然と思って見なきゃ。でも、映画だから、その上、人間の善を信じているような、ハリウッド的な部分も絶妙なバランスで加わり、展開している。脚本を練って練って練り上げたんだろうな。全てのシーンに、映画自体の持つ華やかさがあるが、同時に、人間欲望のドロドロした部分を裏に感じさせるという(見る者はエルロイを知っていることが前提なのだが)、二層構造を楽しむ映画とも言えます。エルロイを知らない人は二回ご覧になってくださいね。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2008-02-28 22:36:29)
15.  仮面/ペルソナ 《ネタバレ》 
これを読んでいる人、この映画何だったんだ?って思って読んでいるでしょ。で、解説が欲しいでしょ。残念でした。私も分かったわけではありません。お役に立てずに申し訳ありません。でもね、映像で人間存在を表現しようとしているのだけは分かります。ただ、それを、ドッペルゲンガーよろしく、二人の人物の内面を混ぜて表現し、(混ぜることでに二者の同一と対比を表しているのでしょうか。それは結局人間存在の究極部分なのでしょうか)、しかも、夢と現実とが交錯し、さらに、映画自体にも、ストーリー外から作者のイメージの挿入がきたり、と、まぁ複雑。その複雑なところを味わうのが良いとも言えるんですが。最初は二人の人物の対比の映画かと思っていました。心を隠す人とさらけ出す人。しかし、ガラス事件から変わってきます。隠そうがさらけ出そうが、心の奥は同じだよって。二人の交錯が始まってきます。交錯させ、同化させるからこそ、同じだよって言ってるのかな。そういうことだ!と映像で迫ってきます。冒頭の意味不明なシークエンスの連続。これも映像の力で行きますよ、って監督の宣言じゃないのかな。心の奥底なんか映像にすれば、こんな映画になるでしょうよ。ほら、この映画以上に私たちの心の方が難解なんですから。
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-21 22:39:06)
16.  欲望(1966) 《ネタバレ》 
映像が分割される。柱や壁や家具や、その物の縁が区画線になっている。そこに人間がいる。窮屈な形でいる。現代人の孤独を表すのか、物と対比された存在だといいたいのか。色遣いも鮮明な明るさを要求している。公園の緑さえどこか人工の緑に見えてくる。あくまで映像は人間の手によるものであるとの主張。いろいろと意味の仕掛けをだしてくる。モデルにマウントポジション、あれこれは○○シーンだね、とか、公園の風、あれは、内面での心が騒いでいるか、不吉の予兆か、ってね。適当に想像しろ、と監督は言っているようだ。プロペラも何かだ。紫の紙の中での○○シーンも何かだ。ライブも何かだ……死体も意味があった。主人公が本当に見たものは何か。否、見るとは何か。そこにあると思っているから見える、とでも言いたいのか。テニスボールのように。現象学的な事を言う。写真家だってとろもミソだな。見る商売だからね。私達もつい主人公と同じように見てしまうしね。ま、監督の仕掛ける罠かな。見る事にどんでんがえしを用意していた。最後は、私はここで主人公が消えたらおもしろいのになぁと思っていたら、あれ、本当に消えた。映画自体も「あると思っているからあるんだよ」と最後の最後まで、見る者を煙に巻く
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-17 17:04:57)
17.  サンライズ 《ネタバレ》 
男の手だ、半開きに宙に構える手だ。殺意を語る、迷いを語る、懺悔を語る。妻の首だ、時には斜めにしなだれ、時にはぴょこぴょこ動く、失意を語る、幸福を語る。ホーンが呼ぶ、妻の名を呼ぶ。名前は分からない、でも、妻の名前が分かる。オーバーラップ、交換するショットも使う。善と悪、現実と妄想、田舎と都会、幸福と不幸、その対比。浮き袋代わりの芦の束、見る者に最後はこれが左右するはずだ、つまりは、ボートが転覆するはずだ、と教えつつ、見る者はストーリーの展開にはらはらすることになる。男が死ぬのか、女が死ぬのか、はたまた…… サイレント映画の、表現の極みを見せる。きくところによると、ドイツ表現主義の流れにいる監督であるとか。これが表現主義かと、うーんと唸る。さらに、ここは賛否が分かれるところだが、ギャグも「教会のシーン」を越えてから入っている。ハリウッド側の興行的な要請か?それとも、チャップリン同様の笑いと涙路線というのが、この当時の映画の王道であったのだろうか?何れにしろ、素晴らしい映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-09 14:40:05)
18.  甘い生活 《ネタバレ》 
この監督は、映像にメタファーを散りばめているんですね。ストーリーなんか二の次。真の映像作家。そう思えば、難しくもなんともない。一シーン、一シーン、あ、これはそうだ、あれはこの例えだ、と勝手に思えばいい。冒頭のキリスト像の宙づりから、あ、もう、宗教をコケにしているな、と思うし、それが、ローマの街だと思うから、ほほうって、そういうことね。トレビの泉のシーンも、ベッドシーンの代わりと思おうが、歴史を無視している現代性と思おうが、それも自由。パパラッチ(この映画からこの言葉は出たのかしら)なんて、腐った物(退廃した貴族とインテリ)にたかる蠅とでも思えばいいし、主人公のお父さんも、善人を狂わせる街ローマって言いたい材料かもしれない。そんな街早く逃げなさいって、ね。ひっきりなしにアメリカへの傾倒があるが、どこか明るいアメリカをローマの対照物と出しているような感じ。最後の魚、それは、主人公の姿でしょうし、最後の少女、健康的な正常な世界へ戻る差し伸べられた救いの手、正常になる最後のチャンス。それに背を向けた。夜の世界でしか生きられない。踊らないと生きられない。酒だ、女性だ。そして、この監督、横の動き、横長に人物、物を配置する構図が好きですね。それに横といえば、行列好きだなぁ。アメリカ女優で一回、田舎の屋敷で二回、最後のパーティ退場シーンで三回、もっとあったかな? この行列になんとも哀れさと滑稽さを出すのを発見したんでしょうね。8 1/2 でもやってたなぁ。この退廃映画、不思議なのは、こんな不道徳いかんと思うのではなく、どこか憧れてしまうんですね。映像の魔力ですよ、きっと
[DVD(字幕)] 9点(2008-02-06 22:31:42)(良:1票)
19.  マンハッタン 《ネタバレ》 
maturity の話でした。頭がいい男。見ている者に、頭がいいって素敵なんだ、と思わせていく。なんだか、金があって、女性にもてるもんね。まぁ、憎らしいねぇって。でも、最後の最後で、maturity という意味で、彼の真性がどうであったかを見るものに教える。お嬢さんの方が大人でした。ここで、見ている者は、ああ、自分が駄目人間なんで、知性の鎧を着るんだな? それが都会の人なんだ、マンハッタンなのだ、と思ってしまう。そこまでインテリ卑下するか、とも思うけど、悲劇にしたいのね。で、それでも、主人公はマンハッタンを愛す。そして、その思いが冒頭のナレーションにつながる。ガーシュインの音楽が支持する。そう、悲劇的失敗者だって思えないんですよ、逆に、その悲劇にあこがれるから人間って不思議で、あこがれるようにさせる映画だから、すごいんですね、これ。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2008-01-17 22:21:47)
20.  浮雲(1955) 《ネタバレ》 
薄情な男が後悔して泣きます、ってフェリーニの「道」と同じだな、と思いました。どっちが先なんだろう。時代的に近く偶然じゃないと思います。もう高峰姉さんの演技、いいですね。目の動きだけで、喜怒哀楽を表現していて、それと崩れた女の物言いが入り、複雑な感情をよく表してましたね。今日本にこんな演技できる女優さんはいるのかしらん? これこそスター。今リメークブームだからね、誰か挑戦するのかな。まっ、止めた方が良いと思うけどな。
[DVD(邦画)] 9点(2008-01-14 21:38:49)
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