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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  エターナル 奇蹟の出会い 《ネタバレ》 
 ヒロインとの出会いから婚約までを描いた冒頭部分も、良質なラブコメ映画として、充分に楽しめる出来栄えですね。  けれど、この作品の真骨頂は、主人公が少年サッカーチームの監督に指名されてからの展開にこそあると思います。   「これって、もしかして……」という予感に応えてくれるかのように、チームの選手となった子供達が、超人的な身体能力で、大活躍!  そんなの全然リアルじゃないというツッコミを、完全にファンタジーな動きで吹き飛ばしてくれる様は、実に痛快です。   一刻も早く敗退してくれるように、という主人公の内なる願いに反して、チームが快進撃を続けていくのが、もう可笑しくって仕方ないんですよね。  あの手この手で監督自らチームを妨害して、子供達に薬を飲ませたり、デタラメな采配をしたり、気弱で活躍など出来そうもない子をキーパーに抜擢してみせたりするも、それが結果的に勝利に繋がってしまう不条理、もう最高です。   そして、この映画の秀逸なところは、そんな皮肉なコメディ映画というだけで終わらずに、もう一歩踏み込んだ内容を見せてくれた事にあると思います。  中盤以降、主人公の監督と、選手となる子供達の間に、家族のような絆が芽生えていく。  それを軽いタッチで、けれども大事な部分は押さえた上で描いてくれるのだから、観客の自分としても、気が付けばチームの敗北よりも勝利を願うようになるんです。  そんな願いを叶えてくれるかのように、とうとう主人公が自らの結婚よりも「この子達を勝たせたい」という想いを優先させてくれるシーンには、もう拍手喝采。  本気でチームの優勝を願って、応援させられる事になりました。   登場人物も魅力的で、主人公とヒロインだけでなく、恋敵役となる女教師と、新婦の幼馴染の男性なども良い味を出しているのですが、やはり何と言っても子供達のキャラクターが素晴らしい。  特にお気に入りなのは、キーパー役の二人。  小柄で気の強いテイルボーンは、途中でスタメンの座を剥奪されるも、さながらマネージャーのような立ち位置に収まって、ゴールの度に監督に抱き付いたりハイタッチしたりして喜びを表してくれるのが可愛いし、気弱な秘密兵器ダリクが魅せるスーパーセーブの数々は、観ているこちらの心をも鷲掴みにしてくれます。   ストリートチルドレンである選手達の塒も、妙に童心を刺激するというか、ちょっと住んでみたいなと思わせるような魅力ある造形だったりして、とにかくもう何もかもが好みな映画なんですよね。  決勝戦の前夜、主人公が子供達みんなと寄り添うように寝そべって、一緒に空を見上げるワンカットなんて、溜息が零れちゃうくらいに素敵。   面白いとか、笑ったとか、泣いたとか、そういった感情よりも何よりも「この映画、好きだな」という想いを強く抱かせてくれる。  そんな、特別な映画です。
[DVD(吹替)] 10点(2016-05-02 17:54:05)
2.  映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ 天使たち 《ネタバレ》 
 これは思い出深い一品ですね。   子供の頃に原作漫画を夢中で読み、アニメも楽しんでいた「ドラえもん」。  とはいえ僕にとって「ドラえもん」といえば原作漫画の存在を指し、アニメ版は「ドラえもんをアニメ化したもの」という、一歩引いた目線で観ていた記憶があります。  そんな考えに揺らぎが生じたのが「恐竜2006」であり、それは旧映画版どころか原作漫画よりも面白く感じられて、本当に衝撃的でした。  そして、決定的に魅了されたのが、この「新・鉄人兵団」。  以降、僕にとってのドラえもんは原作漫画であると同時に、アニメ版を指すようにもなりました。   戦闘シーンが如何に素晴らしいか、主題歌が如何に名曲であるかなど、語り出したらキリが無いけれど、やはり本作はピッポの存在に尽きると思います。  そんなキャラクターは、原作漫画には存在していません。元はジュドであるとしても見た目も中身も境遇も違う「ピッポ」に生まれ変わった以上、それは新しいキャラクターです。  何の積み重ねもない、観客である自分にとって、この映画で初めて出会う事になるキャラクターに、こんなにも心が揺さぶられる事になるとは。  ボロボロになったザンダクロスボディを操縦して、戦場で撃たれそうになったのび太を庇ってみせるシーン、友達になれたのび太の腕の中で、新しい名前を大好きだと笑顔で伝えて消えていくシーン、そして束の間の夢、幻のような切ない再会シーンなどなど、あまりにも名場面が多すぎる。   原作において「天使のようなロボットになりたい」と願ったリルルに対しては、心から「なれると良いね」と感じさせられましたが、ピッポに対しては「奴隷ロボットでもヒヨコでも鳥でも天使でも何だって構わない、とにかくピッポが大好きだ」という思いで一杯です。  原作漫画を描いてくれたF先生には勿論、この映画を生み出してくれた寺本監督にも、本当に「ありがとう」と伝えたくなる素敵な品でした。
[映画館(邦画)] 10点(2016-04-01 19:04:32)
3.  映画ドラえもん のび太の月面探査記 《ネタバレ》 
 自分には「アニメのドラえもんは原作漫画に敵わない」「原作大長編の存在する映画の方が、原作無しのオリジナル映画より面白い」という偏見があったのですが、前者を「恐竜2006」が、後者を本作が徹底的に打ち砕いてくれた気がしますね。   オリジナル映画としては間違いなく一、二を争う出来栄えですし、ドラ映画全体で考えても、これより上と言えるのは「恐竜2006」「新・鉄人兵団」「新・大魔境」「新・日本誕生」の四つくらいになるんじゃないでしょうか。  しかも「南極」「宝島」という傑作が二つ続いた後に、またまた凄いものを拝ませてもらった訳なのだから「映画ドラえもんは、オリジナルでも面白いものを作れるようになった」と潔く認め、脱帽する他無かったです。  本当にもう、作り手の皆さんに「参りました」「ありがとう」という言葉を送りたい気分。    小説版を読んだ際に一番の懸念となっていた「定説バッジの効果を、小さい子供でも分かるように描くのは大変じゃないか」って部分を、視覚的に分かり易く、面白く描いてクリアしている辺りなんか、特に見事でしたね。  「月世界旅行」に「キングコング」などの古典映画や「恐竜2006」「緑の巨人伝」のオマージュ描写が散見される辺りも、ニヤリとさせられるものがあって、良かったです。  他にも、教室に勢揃いしたクラスメイトの顔触れに、まさかのペロ登場など、ドラえもん好きなら嬉しくなっちゃう描写が多くて、本当に観ていて楽しい。  月世界にて、異説バッジが外れた途端に無音になる演出がゾクッとしたとか、出木杉くんとルカが話す場面が凄く特別感があって良いとか、細かい部分の「良かった探し」を始めたら、止まらなくなっちゃうくらいです。   それでも、これだけは書いておかずにはいられないという意味では、やはり気球での旅立ちの場面が挙げられます。  もう二度と帰ってこられないかも知れないという恐怖を乗り越え、友情が芽生えたエスパル達を救う為、約束の場所に皆が集まる流れだけでも感動しちゃうし、ここのジャイアンとスネ夫の描き方が、本当に素晴らしいんですよね。  スネ夫は来ないのかと諦めかけている他の面子に対し「頼む。もうちょっとだけ待ってくれ」と訴え、最後までスネ夫は来ると信じているジャイアン。  そんな信頼に応えるかのように、時間ギリギリでやって来て「前髪が決まらなくてさ」と照れ隠しを口にするスネ夫。  (あぁ、良いなぁ……こいつら、良い仲間だなぁ)って思えたし、それから(良い映画だな)って、しみじみ感じ入る事が出来ました。  月に向かって気球で旅立つという浪漫溢れる景色に、微かな寂寥感を伴ったBGMも最高で、本当に忘れ難い、特別な場面だったと思います。   じゃあ、そこが本作のクライマックスなのかというと、然に非ず。  ディアボロとの最終決戦や、ルカ達を「普通の人間」にして別れを交わす場面も、同じくらい素晴らしかったというんだから、本当に参っちゃいますね。  モゾは宇宙一硬い甲羅の持ち主、ノビットは「あべこべ」な道具を作る天才、という伏線を、ギャグシーンで笑わせつつ張っておいたのか、という驚き。  ムービットや怪獣達という「月からの援軍」で形成逆転する痛快さ。  空気砲ラストシューティングの迫力。  あえて涙は見せず「もう一度会える日が、きっと来る」と笑顔でルカと別れるのび太の、強さと優しさ。  そのどれもが心地良くて、観ていて幸せな気分に浸る事が出来ました。   一応難点というか、気になった点を挙げるなら「いつか、月へ行く事が当たり前になる、その日まで」という台詞でルカ達と別れるのは、なんていうか、勿体無い気持ちに襲われましたね。  これって、勿論良い台詞なんだけど、原作における「のび太の息子ノビスケは、新婚旅行で月に行く」って設定を知っていると「良い台詞」から「凄く良い台詞」に昇華されるんです。  つまり「のび太とルカは、再会するんだ」「何時かまた会えるという言葉は、嘘じゃなかったんだ」と分かって感動する形になっている訳で、凄く上手いんだけど、凄く勿体無い。  ここは、もうちょっと分かり易く描いて、原作を読んでいる人が受ける感動を、読んでいない人にも伝わるようにして欲しかったなぁ……って思わされました。   ちなみに、予告の映像からすると、来年は今井監督。  内容は「新・竜の騎士」か、あるいは恐竜を題材としたオリジナル映画となりそうで、これまたワクワクさせられましたね。  また一年、あれこれと想像力を働かせながら、楽しく過ごす事が出来そうです。
[映画館(邦画)] 9点(2019-03-01 13:31:14)(良:2票)
4.  機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY 《ネタバレ》 
 これは、ちょっと度肝を抜かれた作品。  軽い気持ちで観たところ(そこまでやるか!)(ここまで面白いのか!)と様々な衝撃を受ける事になりました。   文字数制限のギリギリまで使い、劇中で登場する「サイコ・ザク」の恰好良さについて熱く語りたい気持ちもあるのですが、その場合ガンプラや原作漫画の話題に逸れてしまいそうなので、ここはグッと堪え、映画本編の話を。   主人公二人は、軍規違反のラジオを用いて、音楽を聴きながら次々に敵兵を殺していくという、型破りなキャラクター。  その片方はジャズを好み、地球連邦軍に所属。  もう片方はポップスを好み、ジオン公国軍に所属。  そして連邦所属のイオはガンダムに乗り、ジオン所属のダリルはザクに乗って戦う訳だけど、どちらかといえば後者が主軸になっている辺りが、面白いバランスでしたね。  敵役の象徴であるザクに乗り、主役機のガンダムと戦う兵士の物語としては「ポケットの中の戦争」という先駆者が存在している訳ですが、本作はそれに引けを取らぬ程の名作である、と感じました。   ザクに乗った兵士がどんなにマシンガンを撃っても当たらない、視認出来ない程の速度で移動し、気が付けば目の前に現れて、ビームサーベルの一撃で無慈悲な死を与えてくる……という「ガンダムと戦う事の恐ろしさ」も、入念に描かれているのですよね。  そんなガンダムに搭乗するイオが「本当は戦いたくないのに、仕方なく戦う主人公」というテンプレとは一線を画する「戦うのが好きで、戦争って狂気の中でしか生きられない男」という性格設定なのも面白い。  そもそも彼にガンダム(=フルアーマー・ガンダム サンダーボルト宙域仕様)が与えられた理由が「これに乗って戦い、死んでもらった後に、英雄として喧伝する為」というのだから、凄い話です。   対するダリルも魅力的なキャラクターであり「傷痍軍人だけで結成された特殊部隊『リビング・デッド師団』の撃墜王にして、義足を装着した狙撃手」という肩書きだけでも、痺れてしまうものがあります。  金髪で鋭角的な美男子のイオとは対照的に、黒髪の穏やかな好青年といった容姿であり、哀愁を帯びた佇まいが、実に良かったです。   それと、基本的に本作は「戦争映画」としての純度が高い作品なのですよね。  優しい言葉を掛けてくれた女の子も、ガンダムに憧れる少年兵達も、次々に戦死していく理不尽さを、しっかり描いている。  特に後者は「ガンダムが無事に敵艦隊に辿り着く為の囮、捨て駒」という扱いなのだから、もう参っちゃいます。  「彼の右手を切れ!」の台詞も衝撃でしたし、怪我人を助ける振りして、自分が脱出ポットに乗り込む男という卑劣な描写があるのも良いですね。  モビルスーツによる戦闘を恰好良く、爽快感を得られる程に描く一方で、こういった「戦争とは本来酷いモノなんだよ」ってシーンを忘れずに盛り込む事は、とても大切だと思います。  ポインターでのビームサーベル誘導による敵兵の殺害など(そんな使い方があったか)と唸らされる描写もありましたね。   ア・バオア・クーの決戦にて、両脚が無いサイコミュ高機動試験用ザクと、片腕を失ったジムとの戦いを描き「手足を失ってでも殺し合いを続ける」人間の業の深さを強調している辺りも良い。  思えばそれは「めぐりあい宇宙」のガンダムとジオングの戦いでも象徴的に描かれているメッセージであり、本作が紛れもなく「機動戦士ガンダム」の系譜に連なる作品である事を感じさせてくれます。   戦いを終えて、サイコ・ザクの爆発を見届けるダリルの姿も、音楽と相まって、忘れ難い魅力がありましたね。  現実で手足を失っても、夢の中でだけは自由に動き回れていたのに、とうとうその「夢の中の手足」すらも失われた事を実感し、寂しげに佇む姿。  様々なものを失った代わりに手に入れた勝利が、如何に空しい代物かと、しみじみ感じさせる力がありました。   唯一の難点は、原作の関係上、あるいは「宇宙世紀という名の史実」の関係上、一年戦争を終えても、宇宙移民紛争に決着は付かない為「俺達の戦いは、まだ終わらない」という中途半端な結末である事でしょうか。  それでも、ラストシーンにおける「勝利を得た代わりに、絶望を背負って生き続けなければいけないダリル」と「敗北を経て捕虜になっても、諦めずに戦い続け、見事に脱出成功してみせたイオ」という両者の対比は、お見事の一言。  なので、やっぱり、この結末で良かったんじゃないかな……という想いも強かったりしますね。   ガンダム好き、あるいは戦争映画好きであれば、是非とも観賞し、その世界に浸ってみて欲しい一本。  オススメです。
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2017-05-31 20:17:21)
5.  お!バカんす家族 《ネタバレ》 
 「ホリデーロード4000キロ」から続く、Vacationシリーズの五作目である本作品。 (二作目は「ヨーロピアン・バケーション」  三作目は「クリスマス・バケーション」  四作目が「ベガス・バケーション」)  けれど、自分のように上記作品群を未見の人間であっても、充分に楽しめる内容となっています。  何せ作中にて「前回の旅っていうのを知らないけど……」「構わないさ。今回は、別の良い旅になる」という会話が挟まれているくらいですからね。  作り手としても、意図的に「シリーズ未見の人でも大丈夫」というメッセージを送っているものかと思われます。   豪華な出演陣に、シニカルな笑い。  グランドキャニオンをはじめとする道中の景色など、様々な魅力に溢れた映画なのですが、やはり主人公であるオズワルド一家の存在感が大きかったですね。  ラスティは、一見すると頼りなくてドジなダメ親父。  けれど、父譲りの「絶対に諦めない」という長所と、何よりも家族を想う優しさを備えた人物なのだから、自然と応援したい気持ちになってきます。  そして、少々生活に疲れ気味ながらも、充分に美人で魅力的な奥さん。  ナイーブな性格の兄と、やんちゃな弟である息子二人も可愛らしくて、観賞後には、この家族が大好きになっていました。   中には少々下品なギャグもあったりするのですが 「不快な映像は、極力見せない」  というバランス感覚が巧みであり、作品全体に何処となく御洒落なセンスすら漂っているのだから、本当に嬉しい限り。  個人的に好きなのは、幼い息子から 「小児性愛者って何?」 「トイレの壁に穴が開いていたけど、あれ何?」  などと質問された際に、ラスティが丁寧に教えてあげようとして、妻に止められるという一連のやり取りですね。  劇中で死亡したかと思われたリバーガイドさんが、実は生きている事がエンドロールで判明する流れなども「観客に後味の悪さを与えない」という配慮が窺えて、とても良かったです。   自分一人の時なら列に横入りされても我慢してみせたラスティが、家族と一緒の時に横入りされたら本気で怒ってみせるという脚本なんかも、実に好み。  この手の映画ではお約束とも言える「最初はバラバラだった家族が、見事に一致団結した」事を示すシーンにて、挿入曲を効果的に用いている辺りも上手かったですね。  その他、シリーズ前作まで主役を務めていたクラーク・グリズワルドが登場するファンサービスに、妻の大学時代の知られざる過去なんかも、映画に深みと彩を与えてくれています。   「愛する妻に、新婚当初の笑顔を取り戻してもらう事」 「喧嘩の絶えない息子達に、仲良くなってもらう事」  という旅行の目的が、ラストにて完璧に近い形で果たされた辺りも、観ていて気持ち良い。   肝心の遊園地では、乗り物の故障に見舞われたりもしたけれど、そんなトラブルなんて些細な笑い話。  旅行に出かける前よりも、ずっと強い絆で結ばれた一家の姿を見ているだけで、何やらこちらまで「大切な旅行の思い出」を共有出来たような、素敵な気分に浸らせてくれる。  素晴らしい映画でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2016-07-18 22:23:32)(良:3票)
6.  22ジャンプストリート 《ネタバレ》 
 シリーズ第二弾は、前作以上にメタフィクションな笑いが増えており、それが好みの分かれそうなところですね。  自分としては「ジャンプストリートの復活なんて誰も期待していなかったし、絶対大コケすると思っていた」「23ジャンプストリートマンション建設中」などのワードの数々に、クスッとさせられて、存分に楽しむ事が出来ました。  何といっても一番笑ったのは「もう予算が無い!」の件。  作中の捜査費用を指した言葉なのですが、それが映画の予算とも掛かっているのが分かる作りとなっているのですよね。  カーチェイスにて、主人公二人が「物を壊さないように」と怯えながら車を走らせたり、実際に物が壊れるシーンはカメラに映し出さずに「また壊しちゃった」という台詞だけで済ませたりと、本当に予算が足りないから仕方なくそうしたかのような演出が、もう可笑しくって仕方なかったです。   高校で仲良くなった三人組が、今度は同僚として登場するサプライズも嬉しかったですね。  ジェンコとの間に育まれた友情は偽りではなかったと分かり、じんわり胸に沁みるものがありました。  その一方で、シュミットと恋仲になったはずの前作ヒロインが登場しないのは残念でしたが、今作で新たに登場したヒロインの設定が面白過ぎたのだから、文句は言えません。  出会ったその日にベッドインまで済ませるなんて、初心なシュミットらしくないなぁ……と思っていたら、それが伏線だったのだから、もう脱帽。  「ヒロインが実は上司の娘さんだった」という展開自体は、ありふれたものかも知れませんが、その魅せ方が抜群に巧かったと思いますね。  二度目の観賞時には、シュミットと上司が笑顔でハイタッチするシーンにて、ついつい頬が緩んでしまいました。   互いに壁を感じている主人公達を、分割画面にて表現し、それがクライマックスにて一つの画面に繋がる演出なんかも良かったです。  また、前作を踏まえて(おおっ、今度はシュミットがジェンコを庇って撃たれるのか……)と思っていたら、やっぱりジェンコの方が撃たれてしまい「なんで俺ばっかり!」という叫びに繋がる辺りも面白い。  黒幕だった女の子も、悪役でありながら妙に憎めないキャラクターだったりしたので、次回作で登場するのかどうかも、気になるところです。   前作同様に、主人公コンビは聖人君子という訳ではなく、今作でも子供に対して石を投げて追い返す場面など、多少眉を顰めさせられる部分もありましたが、何とか許容範囲内。  クライマックスの「カッコいいことを言え」「カッコいいこと!」という掛け合いを目にした際には、もう二人の事が大好きになっており、映画が終わってしまうのが寂しく思えましたね。  そんな気持ちの中で始まったエンドロールの「ジャンプストリートシリーズ続編予告集」とも言うべき演出は、素晴らしいの一言。  契約で揉めて一時的に主役交代したり、原作ドラマの重要人物が登場したり、倒したはずの悪役が復活したりと、作り手も好き勝手にアイディアをぶち込んでみせている様子が、観ている側としても、非常に面白かったです。  個人的好みとしては、金髪美女が登場する「フライトアカデミー編」授業内容が気になる「マジック学校編」辺りに興味津々。  観賞後「一番観てみたいのは、どの続編?」と誰かと語り合いたくなるような、楽しい余韻が何時までも続いてくれる映画でした。
[DVD(吹替)] 9点(2016-06-13 22:02:26)(良:2票)
7.  グリーンブック 《ネタバレ》 
 ピーター・ファレリー監督が、こんな真面目な映画を撮ったのかぁ……と、その事に吃驚。   「白人」「黒人」「差別」といった属性を備えた品なんだけど、単純に「白人が黒人を救う物語」って訳でもないのが面白いですね。  主人公のトニーは白人だけどイタリア系であり、劇中にて「イタ公」と差別される側でもあるんです。  そもそも黒人のドクはトニーの雇い主であり、困窮してたトニーを雇って救ってあげた側という大前提があるんだから、非常にバランスが良い。  史実では単なる雇用関係に過ぎなかった二人を、無二の親友になったかのように描く事への批判もあるようですが……  映画の観客に過ぎない自分としては、この両者のキャラ設定は絶妙だったと思います。   その他にも「二人が旅立つまでが長い」とか「ドクが同性愛者であるという要素は、あまり活かせてない」とか、欠点らしき物も幾つか思い浮かぶんだけど「主人公であるトニーの境遇を説明する為には、止むを得ない」「実話ネタなんだから、同性愛者と示しておく必要があった」と、ちゃんと疑問に対する答えは見つかる為、さほど気になりませんでしたね。  むしろ、他のファレリー監督作の映画と比べても欠点は少ない方だと思うし、非常に出来の良い、優等生的な映画だと感じました。   そんな本作の中でも特に好きなのは、トニーが初めてドクのピアノ演奏を聴いて、虜になる場面。  実際に演奏が見事だったから、観客の自分としてもトニーの感動とシンクロ出来たし、その後すぐドク当人に「感動したよ」って伝えたりする訳ではなく、家族への手紙で「ドクは天才だ」と絶賛してるという、その遠回しな表現が、また心地良いんですよね。  そういった積み重ねがあるからこそ、本人に直接「アンタのピアノは凄ぇんだよ、アンタにしか弾けない」とトニーが訴える場面も、より感動的に響くという形。   他にも、コンサートスタッフに「クロなら、どんなピアノでも弾ける」と言われ、トニーが激昂する場面。  運転中、二人で音楽談義する場面。  ドクが初めてフライドチキンを食べて、二人で笑顔になる場面も素晴らしいし、二人が親友になるまでが、非常に丁寧に、説得力を持って描かれていたと思います。   脚本や演出の上手さという意味では「拳銃」の使い方も、本当に見事。  「銃を持ってるというハッタリ」の伏線が「本当に銃を持ってる」という形で回収される鮮やかさときたら、もう脱帽するしかないです。  この拳銃の発砲シーンって「酒場で札束を見せたがゆえに、ドクが殺されてしまうバッドエンド」を予感させておき、そんな悲劇を銃声で吹き飛ばす形にもなってるのが、実に痛快なんですよね。  ともすれば一方的な「黒人って可哀想」映画になりかねない中で、ドクを襲おうとした黒人達って場面を挟む事により「黒人は常に被害者という訳ではなく、加害者とも成り得る」と示す効果まであるんだから、二重三重に意味のある、忘れ難い名場面です。   それはその後の、親切な警官に助けてもらう場面も、また然り。  「南部にも良い人はいる」「警官にも良い人はいる」という、当たり前の事を当たり前に描いてくれる配慮が、本作を万人が楽しめる傑作たらしめていると感じました。   本来ドクにとっては屈辱なはずの「黒人が白人の為に車を運転する」という行いで、トニーを助けてあげる終盤の展開も良かったし……  最後に、トニーの妻には「手紙」の秘密がバレていたと示す終わり方も、非常に御洒落でしたね。  それまで出番は少なめだった「トニーの妻」というキャラクターが「素敵な手紙をありがとう」という一言により、一気に魅力的になったんだから凄い。   良質な脚本と、良質な演出を味わえる好例として、映画好きな人だけでなく、映画作りをする人達にも、是非観て欲しいって思えるような……  そんな、素敵な一本でありました。 
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2024-02-17 13:21:33)(良:2票)
8.  スリーデイズ 《ネタバレ》 
 久し振りに再見し、細かい部分まで「すべて彼女のために」(2008年)をそのまま再現してるんだと感心させられた一方で、物語の根幹に関わる部分を大きく改変してるって事にも気が付き、驚かされましたね。  自分は最初に本作を鑑賞し、その何年後かに「すべて彼女のために」を観賞し、此度感想を書く為に二本連続で観てみたという形なのですが……  最初に観た時より衝撃が大きかったし、それに伴って、本作に対する評価も更に高まったように思えます。   何せ本作ってば、主人公が妻への疑いを捨て切れていないんです。  一応台詞では「妻を信じる」というスタンスだし、疑いを持ってるだなんて、それこそ自分の邪推に過ぎないのかも知れませんが、一途に妻を信じていた「すべて彼女のために」の主人公に比べると、見るからに様子が違うんですよね。  でも、それによって妻への愛が弱々しく感じられるなんて事は無く「たとえ妻が殺人を犯したとしても、それでも妻を愛する」という意思の強さが感じられる形になっているんだから、本当に見事。  「すべて彼女のために」は「妻を一途に信じ抜く男」を描いたのに対し、本作では「妻に疑惑を抱きつつも、それでも愛する男」を描いたのかな、と思えました。  だからこそ、同じストーリーの映画なのに「違った味わい」「独自の魅力」が生み出されている訳で、この辺りは本当に上手い。   「ドン・キホーテ」から影響を受けて「理性を捨てた方が人は強くなれる」と言い出す場面とか「狂人となっても、絶望に生きるよりはマシ」と覚悟を決める場面とか、この主人公は愛ゆえに狂気の暴走を果たす事になると、序盤の段階で示してるのも良いですね。  「すべて彼女のために」では、中盤以降の主人公の暴走っぷりに驚かされ、多少引いちゃう気持ちになったりもしたんだけど……  その点、本作は主人公に肩入れし易いし、過激な選択に至るまでの説得力も増していた気がします。   物語の途中で出会う「ママ友」ならぬ「親友(おやとも)」な女性の活かし方も上手い。  「すべて彼女のために」では主人公とのロマンスを予感させ「その気になれば他の女性と幸せになる事も出来るが、それでも妻を選ぶ主人公」って示すだけの存在だったと思うんですが、本作は彼女に他の役目も与えているんですよね。  いざという時に備え、息子のルークを預ける場面を挟み、主人公の「もしかしたら、自分は助からないかも知れない」という悲壮感を高めるのに成功してる。  こういうリメイク映画における「既存の人物の重要性を高める改変」っていうのは、観ていて本当に嬉しくなっちゃうし、もう大好物です。   他にも「あえて偽の証拠を残しておき、警察の捜査を欺く」という罠を用いる事によって、主人公の有能さが増している事。  妻に嫌疑が掛かった殺人事件の真犯人が誰か、観客に教えてくれる事なんかも、嬉しい改変。  これらの改変部分に関しては「余計な事をした」「何でもかんでも説明し過ぎて、野暮な作りになった」と感じる人もいるんでしょうけど、自分としては正解だったと思いますね。  あれだけ用意周到に計画を立てていた主人公が、証拠を燃やしもせずにゴミ箱に捨てて警察に見つかっちゃうってのは違和感あったし、殺人事件の真相についても、明確に描いておいた方が、スッキリとした後味になるんじゃないかと。   そんな具合に、色々と改変している一方で「すべて彼女のために」でも印象的だった、不仲だった父との別れ際のハグについては、ほぼそのまま情感たっぷりに描いてくれてるのも、実に嬉しい配慮。  主人公の妻は美女で、息子は美少年っていう辺りも、殆どそのまま再現しており、感心させられましたね。   そのままの方が良い箇所に関しては、そのまま。  そして変えるべき箇所に関しては、思い切って変えるという采配が絶妙でした。   本作「スリーデイズ」は傑作であり、これ単品で鑑賞しても、文句無しに楽しめるのですが……  「すべて彼女のために」とセットで鑑賞すれば「リメイクの妙味」「新たに映画を作り直すという意義」についても感じ取る事が出来るんじゃないかって、そんな風に思えましたね。  娯楽作品としても、リメイク映画の理想形としても、オススメしたい一本です。
[DVD(吹替)] 8点(2023-09-28 21:29:31)(良:3票)
9.  ステイ・フレンズ 《ネタバレ》 
 映画オタクの思考とは不思議なもので、時に「世間の評価が高く、きっと感動出来るであろう名作」よりも「評価がイマイチで、程々の満足感しか得られないであろう凡作」を観たくなる事があります。  そんな訳で、本作も「凡作」目当てに鑑賞したという、期待値の低い一本だったのですが……   これがもう、意外なくらいに面白くって、吃驚しちゃいましたね。  序盤にて「それぞれ他の相手と電話してるのに、まるで二人がデートしてるかのように話が合ってる」っていう主人公カップルの場面で、もう心奪われたし、そこから先も中弛みを感じる事無く、最後まで楽しく完走出来たんだから凄い。   本当、何でこんなに面白かったんだろうと考えてみたんですが……  まず、主人公の設定が良かったと思います。  主人公のディランって、社会的に成功してる若きエリートで、普通ならとても感情移入出来ない存在なのに、不思議なくらい「等身大の若者」としての魅力が有ったんです。  それは演者さんの力も大きいんだろうけど、個人的には彼を「初めてニューヨークを訪れ、ヒロインに案内してもらう若者」として描いてたのが、大きかったように思えます。  「新天地を訪れた、何も知らない存在」という主人公だからこそ、観ている側としても、まるで自分がニューヨークを案内されてるかのような気持ちになれた訳だし、自然な形で観客と主人公を一体化させてるのが上手い。   物語が進むにつれ、完璧なエリートと思われたディランが、意外と弱点が多くて憎めない奴なんだって分かる流れも、良かったです。  この辺りは、もしかしたら女性の観客からすると「カッコいいと思ってたのに、幻滅」って感じちゃうかも知れませんが、彼を恋愛対象ではなく、感情移入の対象として捉えていた自分としては、大いに共感。  ヒロインのジェイミーも、お姫様願望が強くて、色々と「重い」タイプだったりするんだけど、ちゃんと可愛く思えたし……  こういう「欠点が愛嬌に感じられる描き方」って、とても大切ですよね。   認知症の父という存在も、明るく楽しい物語の中で、不協和音にならない程度の「シリアスな現実」として、良いアクセントになってたと思います。  特に終盤、空港で父に倣い、ディランも一緒にズボンを脱いで話す場面は、何かもう、凄くグッと来ちゃったんですよね。  この映画って、その場面までは「普通のラブコメ」「ありきたりな展開」でしかなかったのに、ここで主人公が「普通である事」を奪われてしまった父親と向き合い、当たり前にあると思っていた「普通」が、何時かは失われる事を説かれるんです。  主人公が親しい人に説得されて、ヒロインに告白するというラブコメお約束の流れでしかないはずなのに、この「人生は短い。だから、愛する彼女と共に過ごしたい」と主人公が悟る場面は、本当に秀逸であり、魅せ方次第でこんなに印象が変わるのかって、感心しちゃったくらい。   その後に訪れる、これまたお約束な「主人公からヒロインへの告白場面」も、良かったですね。  ジェイミーが「映画のヒロインになってみたい」と呟いていた事を踏まえての「映画のヒロインにしてあげる」という告白の仕方が、本当にロマンティック。  (うわぁ……良いなぁ、これ)(すっごく良い映画だな)って、しみじみ感じちゃいました。   改めて振り返ってみても、あらすじというか、全体の流れは「王道」「普通」なラブコメ映画でしかないのに「お約束の場面」をセンス抜群な演出で決めてくれてる御蔭で、特別な映画になってると感じられましたね。  その他にも、ディランの同僚に、ジェイミーの母親といった脇役陣も良い味を出していたし、劇中で流れる曲も好みだったしで、もう文句無し。   「ラブコメ映画のエンディングで流れるNG集を観て、幸せそうに笑う二人」で終わるという、現実と虚構が二重構造になってるハッピーエンドも、とても良かったです。   109分という時間を、映画と共に楽しく過ごせました。
[DVD(吹替)] 8点(2023-04-11 07:32:06)(良:1票)
10.  ペントハウス 《ネタバレ》 
 「オーシャンズ11」の監督を降板したブレット・ラトナーが、そのリベンジのように撮った映画って印象ですね。   オールスター感は薄めだけど、その分だけ主演のベン・スティラーの魅力が光る仕上がりになっており、個人的には大いに満足。  ビジュアル的に最高に恰好良い彼を収めたフィルムってだけでも、凄く価値があると思うんですよね。  微かに白髪交じりな「老け具合」さえも魅力的に思えちゃうし(この人、恰好良い歳の取り方してるよなぁ……)って、惚れ惚れしちゃいました。   ストーリーとしては「善人が泥棒になる話」であり、中々感情移入し難いはずなのですが、その点を上手く仕上げている辺りも、お見事。  「大金を盗んで楽に暮らしたい」なんていう身勝手な動機ではなく「皆の年金を取り戻す」という目的がある為、主人公のジョシュを自然と応援したくなるんですよね。  そもそも皆の年金が失われたのは「ジョシュが悪人のアーサー・ショウを信頼して、金を預けてしまったから」なので、一種の贖罪行為になってるという点も上手い。  この辺り、ジョシュに全く咎が無いとなると「無償で皆を救おうとする聖人」タイプの主人公になってしまい、ちょっと鼻白んじゃいますからね。  自殺未遂したレスターに同情している、と言い張るアーサーに対し 「……じゃあ、何故レスターが無事か訊かない?」  と静かに問い返す場面も印象的であり、彼の犯行動機が「自分の為」ではなく「他人の為」である事が伝わってくる、良い場面だったと思います。   上述の台詞もそうなんですが、この映画って「如何にも名台詞って感じではない、さりげない台詞が凄く良い」って特長があるんですよね。  特に終盤にて、何とか助かろうと取り引きを持ち掛けるアーサーに対し、主人公達が「チップは頂かない決まり」と答えるのも恰好良くて、痺れちゃいました。  そういった会話劇としての魅力だけでなく「宙吊りの車に掴まって、高層ビルから落ちそうになる」っていうスタント場面もあったりして、視覚的に分かり易い魅力も備わってるし、本当にバランスの良い映画だったと思います。  序盤にて、こっそり司法試験の勉強してたジョシュの部下が、いずれジョシュを助けてくれる展開なんだろうなと思っていたら、やっぱりそうなったって辺りも、実に気持ち良い。   一応、難点も挙げておくなら……  副主人公かと思われた泥棒のスライドが、全然活躍しなかった事が該当するでしょうか。  活躍しないだけなら、まだ良いんだけど「ジョシュとの間に絆が生まれてるように思えなかった」っていうのが、何とも寂しかったですね。  例えば、金を独り占めしようと銃を向ける場面にて、幼馴染であるジョシュとの子供時代を思い出し、結局撃てなくて悪態をつきながら銃を下ろすとか、そういう場面があれば、もっと印象も違ってた気がします。   後は、そもそもの犯行計画が杜撰過ぎるって点も該当しそうだけど……まぁ、この点に関しては「アーサーを終身刑にした代わりに、主人公も窃盗罪で二年ほど服役する」という相討ちに近い結末だった為、さほど違和感は抱かずに済みましたね。  特に悩んだりもせず、淡々と「クィーンを犠牲にする」事を決意した辺り、いざとなったら自分が全ての罪を背負って逮捕されるって、最初から覚悟の上だったんだと思われます。   ラストにて、屋上のプールに隠してた車を取り出す爽快感も素晴らしいし……  色々欠点があるのを承知の上で、それでもなお「傑作」と呼びたくなる。  ベン・スティラーの代表作の一つとして、彼を好きな方には、是非オススメしたいです。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-01-12 17:54:23)(良:2票)
11.  アメリカン・パイパイパイ! 完結編 俺たちの同騒会 《ネタバレ》 
 初代主人公のジム・レヴェンスタインが復帰した、記念すべき一品。   そんなジムだけでなく、他にもオールスターな面子が揃っており、特に「3」の結婚式で不在だったオズまで駆けつけているのが、嬉しくて仕方無かったですね。  初代のヒロイン勢も全員揃っているし、シャーマンにジェシカといった脇役陣まで集結しているんだから、もうそれだけで感激。  シリーズのファンにとっては、最高のお祭り映画だと思います。   妻のミッシェルは、おばさんになってもキュートだし、息子のエヴァンも可愛いしで、そんな主人公一家の姿を描いた冒頭部だけでも、楽しくなっちゃいましたね。  この後、ジムは隣に住んでた女の子のカーラに迫られ、不倫を犯しそうになる訳だけど「妻と息子の為にも、裏切れない」と誘惑を拒むジムの姿に説得力があったのは、それくらい「妻も息子も可愛い」んだって分かる場面が、事前に用意されていたお陰だと思います。   シリーズ皆勤賞となるジム父の使い方も絶妙で、ジムが「昔、愛読していたエロ雑誌」を懐かしそうに読んでいる後ろで、すいーっと部屋に入ってくるだけでも面白いんだから、もう脱帽。  途中、ジムの母が死去していたと分かり、しんみりしちゃう一幕もあったんだけど……  そこで暗くなり過ぎず「ジムの父に、デート相手を探してあげよう」っていう、明るい展開に突入するのが、如何にもこのシリーズらしくて良かったですね。  紆余曲折の末、最終的にはスティフラーの母とデートする仲になるってのも面白い。  フィンチが二人の関係を知った時、どんな反応を示すのか、気になって仕方無いです。   他にも「初代でスクーターに乗っていたフィンチが、颯爽とバイクで登場する」とか、シリーズのファンならニヤリとさせられる描写が多くて、良い意味でサービス精神豊富な映画だったと思いますね。  上述のジムに関してもそうなんですが「浮気」「不倫」といった関係に発展しそうになっても「男が勇気を出して断る」「今の恋人が、実は酷い奴だったと分かる」って答えに着地する為、罪悪感とか、不快感とかを抱かずに観られるんです。  これ、何気無い事かも知れないけど、凄く大事だと思うんですよね。  作り手にとっての「サービス精神」とは、観客を喜ばせる為の「プラスを生み出す配慮」だけでなく、観客を失望させないという「マイナスを防ぐ配慮」も指すんだなって、感心させられるものがありました。   後半、高校時代の「将来の夢」について話す場面では、大人の青春映画ならではの感動があったし 「妥協して生きてるのも、つまらない仕事してるのも、みんな同じだよ」 「恥と思う必要なんか無い」  という劇中の台詞には、本当にグッと来ちゃいましたね。  皮肉な目線で見れば、そんなの「負け犬達の慰め合い、傷の舐め合い」に過ぎないのかも知れないけど……  傷を舐め合える仲間がいるって事は、とても素敵な事なんじゃないかと思えました。   ジムが朝目覚めると、下半身裸で昨夜の記憶が無くなっていたという「ハングオーバー!」っぽい場面は、あまり意味が無かった事。  心臓発作を起こしたボブが無事かどうか、作中でハッキリ言及して欲しかった事など、欠点というか、気になる点も幾つかあるにはあるんですが、もうホント、そんなのどうでも良くなっちゃうくらいに楽しかったですね。   クライマックスには、スティフラーの母に負けないくらい美人なフィンチの母が登場し、スティフラーと結ばれるサプライズ展開もあったりして、下世話なネタのはずなのに、つい笑っちゃいます。  エンドロールにて、高校時代の写真や結婚式の写真が流れるのも、本当に素敵な演出で……  「時代が変わっても、五人はずっと仲間のままなんだ」と、しみじみ感じさせてくれました。   本作のパッケージを眺めてみると、そこには邦題で「完結編」なんて書かれている訳ですが、劇中では再会を誓う乾杯で終わっているし、自分としても是非続編に期待したいですね。  出来るなら、息子のエヴァン君が小学生か中学生、自慰を始めるくらいの思春期まで成長し、父親であるジムが戸惑いつつも一緒に成長するような……  かつてのジム父と同じように、今度はジムが息子を優しく見守り、助言を与えてあげるような、そんな「良い映画」であって欲しいものです。
[DVD(吹替)] 8点(2020-05-16 09:01:18)(良:1票)
12.  きみがくれた未来 《ネタバレ》 
 こんなに可愛くって、しかもレッドソックスのファンな弟がいるだなんて、全くもって主人公が羨ましい。   一応、本作には女性のヒロインも登場しているのですが、明らかに「男女のロマンス」よりも「兄弟の絆」を重視した作りになっていますよね。  大人な自分としては、自然に兄の側に感情移入し (こんな可愛い弟がいたら、そりゃあ楽しいだろうな)  と思えた訳ですが、多分コレ、幼い子供が弟の側に感情移入して観たとしても (こんな恰好良いお兄ちゃんがいたら、きっと楽しいだろな)  って思えたんじゃないでしょうか。  そのくらい「理想の兄弟像」が描けていると思うし、兄を演じたザック・エフロンも、弟を演じたチャーリー・ターハンも、素晴らしく魅力的だったと思います。   「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る」という設定の使い方も上手かったですね。  特に序盤の、サリバン中尉殿とのやり取りなんて、凄く好き。  出征して戦死した友人に対し「俺も一緒に行けば良かった」と悲し気に訴える主人公と「来なくて良かったんだ」と笑顔で応え、静かに立ち去る友人。  ベタなやり取りなんだけど、じんわり心に沁みるものがあって、とても良かったです。  「実はヒロインも幽霊だった(正確には、仮死状態による生霊?)」というドンデン返しについても、彼女が墓場で眠っていたという伏線なども含めて、鮮やかに決まっていたんじゃないかと。   それと、この映画って「何時までも死者に囚われていないで、前を向いて生きるべき」という、ありがちなテーマを扱っている訳だけど、それがちっとも陳腐に思えなかったんですよね。  何せ本作においては「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る。たとえ幽霊でも弟と一緒にいれば、弟が生きていた時と何も変わらない、楽しい日々を過ごせる」という設定な訳なのだから、主人公が世捨て人のような暮らしをしていても納得出来るし、自然と感情移入出来ちゃうんです。  この手の映画の場合、いつまでもウジウジ悩んでいる主人公に共感出来ず、むしろ主人公を励ます側の目線で観てしまう事が多い自分ですら、本作に限っては完全に主人公側の目線で観る事が出来た訳だし、これって何気に凄い事なんじゃないでしょうか。  「良くあるタイプの映画でも、設定や描き方に一工夫加える事によって、独特な味わいになる」例の一つとして、大いに評価したいところです。   弟とのキャッチボールに、恋の悩み相談、雨の森ではしゃいで遊ぶ姿なんかも非常に楽し気に描かれており  (このままずっと、兄弟一緒の世界で生きていくのも、それはそれで素敵な事じゃないか……)  と思わせる作りになっているのも、凄いですよね。  「死者に囚われて生きる事」を決定的に否定するような真似はせず、むしろその生き方の魅力を存分に描いておいたからこそ、終盤における主人公の決断「弟と共に過ごす日々よりも、愛する女性の命を救う事を選ぶ」行為にも重みが出てくる訳で、この前後の繋げ方は、本当に良かったと思います。   約束の森で、一人ぼっちになった弟が「兄は自分よりも大切な存在を見つけたんだ」と悟ったかのように、寂しげに立ち去るも、恨み言などは一切口にせず「お兄ちゃん」「好きだよ」と呟いてから消えゆく様も、本当に健気で……観返す度に瞳が潤んじゃうくらい。  ラストシーンにて、以前のように会話する事も、触れ合う事も出来なくなってしまった兄弟が「それでも、何時かまた会える」「会えない間も、いつまでも俺達は兄弟だ」と約束を交わす終わり方も、凄く好きですね。   冷静になって考えてみると、肝心のヒロインには魅力を感じなかったとか、弟がお兄ちゃんにしか執着してないので両親の置いてけぼり感が凄いとか、色々と難点もある映画なんですが……  眩しいくらいの長所の数々が、それらを優しく包み込んで、忘れさせてくれた気がします。   「面白い映画」という以上に「好きな映画」として、誰かにオススメしたくなる一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2019-11-07 06:36:42)(良:1票)
13.  リトルデビル 《ネタバレ》 
 明らかに「オーメン」(1976年)の亜流作なのですが、単なる模倣で終わらず「たとえ悪魔であろうと、我が子である以上は守ろうとする主人公」という物語に昇華してみせたのが、お見事でしたね。   中盤までは「義子のルーカスが悪魔であると知り、殺そうとする主人公」という「オーメン」そのまんまな展開であっただけに、途中で主人公が思い直し、全く違った方向性へと舵取りするのが、実に痛快。  監督は前作の「タッカーとデイル」でも、王道スプラッター映画をパロった上でハッピーエンドな着地を迎えてみせ(そう来たか!)と唸らせてくれたものでしたが、本作もそれに近しい魅力を備えており(やっぱりイーライ・クレイグ監督の映画は良いなぁ……)って、しみじみ感じさせてくれました。  2019年現在、僅か二本の映画しか発表していない寡作の人というのが、非常に惜しまれます。   配役も絶妙であり、特に子役のオーウェン・アトラスは「無表情だと不気味なのに、笑うと可愛い」というルーカス役を、見事に演じ切っていましたね。  この映画のストーリー上、主人公だけでなく観客にも「ルーカスは不気味に思えたけど、実は可愛くて良い子なんだ」と感じさせる必要がある訳なのですが、その点に関しては、文句無しでクリアしていたと思います。  プールで父子が仲良くなる件も微笑ましかったし、笑顔を見せる場面では、主人公同様に観ているこっちまで(笑うと、こんなに可愛かったのか……)と、ドキッとしちゃう。  アイスを舐めながら、主人公の事を初めて「パパ」と呼ぶ姿なんて、もう抱きしめたくなるくらいに愛らしかったです。   レズビアン(?)な同僚のアルも良い味出してるし、出番は少なめながら、主人公の妻に女性としての魅力が感じられた辺りも嬉しかったですね。  モンスタートラックや、最優秀パパのボールなど、伏線の張り方や、回収の仕方も鮮やかだったと思います。   主人公自身が「父親に捨てられた」という過去を持っている為、ルーカスに幼少期の自分の姿を重ね合わせ、自然と心を開いていく流れにしたのも上手い。 「お前の本当の父親が誰でも関係無い」 「お前はお前だ。何時だってなりたい自分になれる」  という台詞は、ルーカスに語り聞かせる以上に、自分に言い聞かせる効果もあったんだろうなと、自然と納得する事が出来ました。  主人公が「息子殺し」な自分ではなく「息子を守ってみせる」自分になる事を選ぶ展開にも繋がっている訳で、この辺りの脚本は、本当に巧みだったと思います。  「義理の父親です」という、ルーカスの父親である事を間接的に否定する台詞を何度も繰り返しておいた上で、クライマックスにて「絶対に離さない、お前の父親だから」と主人公に言わせる構成にも、グッと来ちゃいました。   難点としては、意味ありげな双子の少女が、本筋に絡まず終わってしまうのは寂しい事。  ルーカスの言葉で飛び降り自殺を図った理科教師が、どう見ても死んでるので、入院くらいで済ませた方が良かったんじゃないかと思えた事。  終盤に集結したパパ友が全く活躍しておらず、存在意義が感じられなかった事とか、その辺りが挙げられそう。   それと、プールでルーカスを救う場面では、出来れば「神の啓示」ではなく、完全に自分の意思で助けに飛び込んで欲しかったなと思えたのですが……  これに関しては、何度も観賞している内に(たとえ神様から「見殺しにしろ」と命じられても、主人公なら助けたはずだ)と、次第に考え方が変わってきましたね。  上述の「なりたい自分になれる」という台詞もありますし「神様のお蔭で、息子を殺さずに済んだ」という訳ではなく「神様は、悩める主人公に助言をしてあげただけ」って事なんだと思います。   父子で出場した丘下りレースにて「スピードを出し過ぎるな」と言われても聞き入れず、笑顔ではしゃぐルーカスの姿を映し出し(やっぱりこの子、悪魔だな……)って感じさせて終わるのも、非常に御洒落。  期待値の高い中で観賞したのですが、そんな高いハードルすらも飛び越えてくれた、気持ちの良い一品でした。
[インターネット(吹替)] 8点(2019-09-25 16:53:08)
14.  映画ドラえもん のび太の宝島 《ネタバレ》 
 初代アニメ版ドラえもんを盛大にリスペクトした「奇跡の島」に続いて、二代目アニメ版、所謂「大山ドラ」をリスペクトした内容となっている本作。   とはいえ「野沢雅子が主役級のキャラとして復帰」というほどの衝撃は無く、リスペクト度合いとしては低めに感じられましたね。  一応、キャラデザには「大山ドラ」調のテイストも取り入れられており、特に主人公のび太とドラえもんの造形が前作までとは異なっている為 (せっかく2006年から原作通りのキャラデザになったのに……)  という抵抗も大きかったのですが、脚本や声優陣はキチンと「現行アニメ版」の空気を保持している為、安心して観賞する事が出来ました。   ちょっとメタ的な分析をすれば 「フロックは新世代ファンの象徴」 「ジョンは旧世代ファンの象徴」  であり、この映画はそんな両者の和解を描いている……なんて事も言えそうなのですが、そんな事よりも何よりも、純粋に娯楽映画として「面白い!」と言える作品であった事が、嬉しかったですね。  上述の通り、脚本や声優陣の力も大きかったのですが、何と言っても、これが映画デビュー作である今井監督の演出が素晴らしい!   特に、クライマックスの流れは、本当に手に汗握るものがありましたね。  ドラえもんが地球を守る為に奮闘し、スーパー手袋やタケコプターが壊れていく中でも、身一つで頑張り続け、とうとう意識を失う。  それを受けて、のび太が怯える我が身を勇気でもって抑え込み、危険を顧みず奈落の底に飛び込んでみせる。  どちらも非常に熱い演出であり、普段のテレビ放送回にて今井監督が見せている切れ味を、映画という舞台でも如何なく発揮してくれた事が、心底嬉しかったです。   単なる「可愛いマスコット枠」かと思われたミニドラが、のび太達を救ってみせる際の、絶望の中に光を差し込ませる演出も良いんですよね~  船で旅をする魅力、皆で外泊する魅力、美味しそうな食事シーンの魅力と「ドラえもん映画なら、ここは押さえておいて欲しい」と思える要素が、きちんと揃っている辺りも良い。  挿入歌「ここにいないあなたへ」の使い方も上手くて、その曲が流れる親子の和解場面では、涙で画面が滲んでしまった程です。   そんな具合に、褒めだすといくらでも褒められる映画なのですが……欠点というか、気になる部分も多かったですね。  まず、主題歌の「ドラえもん」に関しては、ドラえもんという作品そのものをテーマにした曲である為「映画宝島の主題歌」という感じがせず、ラストに流れても今一つピンと来なかった事。  名曲「夢をかなえてドラえもん」が流れなかった事。  「ここは俺達に任せて、先に行け」という場面が二つ存在し、最初のジャイアンとスネ夫の方は凄く熱くなれたのに、二回目になるマリアさん達の場面では(それ、さっき同じ展開やったばっかりじゃん)と思えてしまい、白けてしまった事。  そして、静香ちゃんとセーラが瓜二つである理由について、説明が為されていない事が挙げられるでしょうか。   最後の点に関しては、過去作の「奇跡の島」において「のび太とダッケが瓜二つである理由」を、タイムマシンを絡めて劇的に説明してみせた前例があるだけに、実にもどかしい。  恐らく「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という劇中の台詞からすると、フロックもセーラもジョンも、のび太と静香ちゃんの子孫なんだよって事だとは思うんですが、そこはもっと断定的に表現して欲しかったです。  この描写だと、観賞中に(これって多分、のび太達の子孫って事だよな……いや、深読みし過ぎか?)とアレコレ考えてしまい、せっかく感動しているのに、気が散る形になっているんですよね。  ここでハッキリと「のび太とフロック達は血が繋がっている」と確信させてくれる描写さえあれば、思う存分映画に没頭して、より感動出来ていた気がします。   総評としては、前作の南極が「完成度の高い傑作」であったのとは対照的に「欠点も目立つけど、長所がそれを補って余りある傑作」であるように思えましたね。  ラストに金貨を手に取り、冒険の日々を思い出して笑顔になるのび太達という「本当の宝物は、金貨じゃなくて、そこに込められた思い出だった」と示す終わり方も、凄く良かったです。   ……そして、来年は八鍬監督による「異説クラブメンバーズバッジ」を題材にしたオリジナル映画であるらしく、こちらにも大いに期待!  予告映像からすると、再びキャラデザも原作準拠な形に戻るようですし、心から楽しみに待ちたいと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2018-03-03 12:33:13)(良:1票)
15.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
 とうとう日本にもゾンビ映画の傑作が誕生したんだなぁ……と、感無量。   邦画にも面白い作品は沢山あるけれど、その中で「ゾンビ映画」というジャンルは非常に頼りなく、胸を張って「面白い」と言える作品は、これまで無かったように思えますからね。 「火葬の風習がある日本では、死者蘇生がイメージし難い」 「銃器が身近に存在しない」  等々、ゾンビ映画を作る上では不利なお国柄なのに、そんなハンデを乗り越え、これほど面白く仕上げてみせたのだから、もう天晴です。   二時間という尺の都合上、どうしても原作漫画の要素は色々と切り捨てられてしまう訳だけど、その取捨選択も見事でしたね。  原作においては、丸々一巻分かけて「売れない漫画家の鬱屈とした日常を描いた漫画」と思わせておいて「実はゾンビ漫画だった」と一巻ラストにて種明かしするという、非常に面白い構成となっているのですが、これを再現するのは潔く諦め、十五分程で「ゾンビ物ですよ」と種明かし。  謎の存在「来栖」や妄想の産物「矢島」も登場させず「主人公の英雄」「ヒロインである比呂美と小田」の三人を中心とした作りにして、分かり易く纏めてある。  英雄の恋人である徹子の描写が大幅に削られており、彼女を殺してしまった事への葛藤すらも失われているのは気になりましたが……まぁ仕方ないかなと、納得出来る範囲内でした。   そもそも原作においては作者自身が「作中に散りばめられた謎を解く事」を放棄したフシがあり「適当にそれっぽい言葉を並べておけば、信者が勝手に深読みしてくれる」と、作中人物に嘯かせているくらいですからね。  よって、原作における「来栖とは何なのか?」「ZQNとは何なのか?」という謎解き部分を徹底的に排除したのは、もう大正解だったかと。   日常がゾンビの発生によって崩壊する様も、真に迫って描かれていましたし「日本」という身近な世界が舞台になっている分だけ、その臨場感も倍増。  ここの辺りのスピーディーさ、動きを伴うからこその迫力は、漫画には出せない、映画ならではの魅力だったと思います。   ロレックスの伏線が三重、四重になっている脚本にも、非常に感心。  「原作では準主役格だったりする中田コロリ先生が、ロレックスを付けている」→「それを気にしていた英雄が、文明崩壊後の世界では簡単にロレックスを拾える事に拍子抜けする」と、ここで伏線の回収が済まされたと油断していたところで「英雄がロレックスを大量に装備し、それが腕のガードになっていたお蔭で、噛まれても助かる事になる」「最終的には、我が身を守る虚栄心の象徴のようなロレックスを外して、射撃に専念する」ってオチに繋げてみせたのには、もう脱帽です。   ボス格の敵キャラとして「高跳びゾンビ」をチョイスするセンスも良いし、そして何といっても……終盤のショットガン描写が、素晴らしい!  それまで発砲する事が出来ず、躊躇い、怯えていた英雄が、ヒロイン達を守る為、ラスト二十分程で、とうとう引き金をひいてみせるんだから、本当に痺れちゃいましたね。  溜めて、溜めて、解き放つというカタルシスがある。  連射系の武器ではない、一撃の威力が大きいショットガンと、非常に相性の良い演出だったと思います。  襲い来る大量のゾンビに対し、素早くリロードしながら迎え撃つ英雄の姿も恰好良かったし、最後は「弾切れの銃で、敵の頭部にフルスイング」という倒し方なのも、実に痛快で良い。   原作においては「富士山に行けば助かるというのは、ガセネタだった」「実は英雄も感染していた」などの情報が明かされ、この後どんどん絶望の匂いが濃くなっていく訳ですが、本作においては「富士山に行けば、何とかなるかも知れない」「比呂美の存在によって、ワクチンが作れるかも知れない」という希望を残した段階で完結しており、その点でも好みでしたね。  最後の台詞通り「ただのヒーロー」になった英雄なら、きっと彼女達を守り抜けるだろうなと思える。  良い終わり方の、良い映画でした。
[DVD(邦画)] 8点(2017-12-01 04:19:50)(良:2票)
16.  オースティンランド 恋するテーマパーク 《ネタバレ》 
 ちょっと評価が難しい一品。   それというのも、この映画って観客が「女性である事」「作家ジェーン・オースティンのファンである事」を想定して作られている感じなんですよね。  なのに自分と来たら「男性」「オースティン作品は映画やドラマでしか知らない」という立場な訳だから、流石に門外漢過ぎる気がします。  ……でも、そんな自分の価値観からしても、面白い映画であった事は間違い無いです。   監督はジャレッド・ヘス(代表作「ナポレオン・ダイナマイト」)の妻である、ジェルーシャ・ヘス。  元々、夫の作品で共同脚本を務めていた為か、これがデビュー作とは思えないほど自然な仕上がりとなっており、落ち着いて観賞する事が出来ましたね。  低予算な作りであり、イギリス摂政時代を完全に再現しているとは言い難いのですが、それが却って劇中の「オースティンランド」の小規模さとシンクロし、リアルな箱庭感を生み出していたと思います。   主人公のジェーンが(何か、思っていたのと違うなぁ……)と失望しちゃう気持ちも分かるし(でも、せっかく全財産を注ぎ込んで訪れたんだから、楽しまなきゃ!)と自らに言い聞かせるようにする辺りなんかも、凄く小市民的で、好感が持てました。   ストーリーの流れとしては、所謂「幻想の世界に浸っていた主人公が、現実と向き合う話」「オタク趣味から卒業する話」な訳だけど、主演にケリー・ラッセルという美女を配する事によって、あまり痛々しい印象を与えない作りになっているのも、ありがたい。  短い出番ながら、元カレが最低な奴だとハッキリ伝わってくるのも良かったですね。  主人公が現実に失望して、何時までも幻想の世界に閉じ籠っていたくなる事に、説得力が増す感じ。   映画の途中から「貴族であるノーブリー様との幻想の恋」「使用人であるマーティンとの現実の恋」が逆転していく流れも、鮮やかでしたね。  劇中のジェーン同様「マーティンも役者であり、最初から彼と結ばれるよう計画されていた」「実はノーブリーとの交流こそが、演技ではない本当の恋だった」という二段仕掛けの真実には、見事に驚かされました。   まず、最初に映画に登場するのはマーティンの方であり、観客としても自然と彼の方がメインかと思うよう誘導しているのが上手い。  そして、園内の役者達が休憩中に交わす会話に違和感があって、その違和感が伏線となっている辺りなんて、本当に感心しちゃいました。   マーティンは役者ではなく、本当にジェーンを好きになった純真な男であるはずなのに、彼女の名字を憶えていなかったりする。  その一方で、彼女に興味無いかと思われたノーブリーは、しっかり憶えている。  そういった伏線が効果的に盛り込まれているからこそ「裏切られた」という不快感ではなく「そう来たかぁ!」という快感に繋がってくれる形です。   素顔のマーティンは女に困らない陽気なプレイボーイ、素顔のノーブリーは親友と婚約者に裏切られて傷心中の真面目な男、という設定なのも、これまた絶妙。  あんまりノーブリーを「王子様キャラ」として描かれちゃうと、同性の自分としては鼻白むものがあるし、何より「現実と向き合って幸せを手に入れた」という映画の結論も、嘘臭くなっちゃいますからね。   そもそも、反発し合っていたはずの男女が惹かれ合うのも「高慢と偏見」のダーシーとリジーそのままだし「貴方は、このお屋敷のダーシー様」という台詞もあるしで、本作品って「オースティン作品の幻想から抜け出したと思ったら、ダーシー様のような素敵な男性と結ばれた」という、都合が良過ぎる結末なんです。  だからこそ、その現実世界における「素敵な男性」を、なるべく嘘っぽくせず、リアルに感じさせる必要がある。  彼は美男子だけど、不器用で、不幸な女性経験があって、歴史の教授だから金持ちでもない、という辺りが、程好い「身近な存在」っぷりで、良い落としどころだなと思えました。   あえて気になった点を挙げるとしたら「妊娠中の友達が、あんまりストーリーに絡んでこない事」「エリザベスとアンドリュー大佐の仲がどうなったのか、曖昧なまま終わる事」などが該当しそうですが、欠点とも言えないレベルでしたね。  それよりも、気に入った部分の方が、ずっと多い。   主人公カップルを祝福したくなるような、良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2017-11-08 08:40:11)(良:1票)
17.  映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 《ネタバレ》 
 昨年の「新・日本誕生」が歴代ドラ映画でも三本の指に入るほどの名作であった為、大いに期待を込めて観賞。   結論から言うと、流石に前作を越えるほどの衝撃は味わえませんでしたが、まず満足出来る一品でしたね。  所謂「F原作大長編」の存在しないアニメオリジナルの作品としては「ひみつ道具博物館」に次ぐ出来栄えではないかな、と思います。   何といっても、脚本が良い。  これほど見事に「タイムトラベル」ならではの妙味を劇中の核に取り入れた作品は、ちょっと過去作品には無かったのではないでしょうか。  思えば十数年前、子供時代の自分は某ドラ映画を観賞し「何じゃそりゃ!」と盛大にツッコんで、時間軸が矛盾している脚本に呆れ返り「やっぱりアニメのドラえもんは原作漫画には敵わない」という偏見を抱くに至った経緯があったりしたのです。  それを、現代のドラえもん映画が汚名返上してくれた形なのだから、実に愉快痛快。  偏見を取り払い「アニメでも原作漫画より面白くする事は出来る」と教えてくれたのは「恐竜2006」でしたが、そこから更に十年以上の月日を経て「アニメオリジナルでも、複雑な時間軸を扱った面白い映画が作れる」と証明してくれたのは、本当に嬉しかったです。   伊藤つばさと星野スミレが背景で顔見せしたり、かき氷のシロップに「からあげ味」「かつどん味」があったり、ヒャッコイ博士が「ジャングル黒べえ」そっくりの仮面を被ったりと、遊び心に満ちているので、そういった小ネタを見つける喜びがある辺りも良いですね。  「氷細工ごて」を使って氷を溶かしながら移動するシーンは視覚的にも楽しいし、テントが強風で飛ばされてしまい、止むを得ずその場に穴を掘ってビバークするなどの「冒険」「探検」ならではのワクワクする展開がある辺りも嬉しい。  「南極でオーロラに見惚れながらカップ麺を啜ろうとしたら、すっかり凍ってしまっている」という場面が「翻訳コンニャクを食べようとしたら凍っている」という場面に繋がっている辺りも面白かったです。   また、全体的に演出がスピーディーであり、名曲「夢をかなえてドラえもん」によるオープニングの中で「氷の遊園地作り」「ジャイアン、スネ夫、静香を仲間に誘う件」を片付けてしまう辺りなんかは、大いに感心。  「南極での探検」「遺跡内での冒険」の中でもダイジェスト調にして手早く片付ける場面があり、自分としては好印象でしたが、ここは「ダイジェストになる場面が二回もあるのは、流石に如何なものか」と感じる人もいそうですね。   その他、あえて不満点を述べるとすれば「ゲストキャラであるカーラとの別れが、ややアッサリめ」だった事が該当するでしょうか。  エンディングの一枚絵にて「のび太との思い出のカキ氷機を大事にしている」と示されている為、それなりに余韻はあると思うのですが、ちょっと物足りなかったです。  前作において「ククルとの別れ」「ペガ達との別れ」と連続して描いたばかりという事もあり、今作においても別れのシーンを濃密に描いては流石に食傷気味になる……という判断だったのかも知れませんが、せめて一分くらいは尺を取って欲しかったなぁ、と。   クライマックスであるブリザーガとの戦いは「人間VS怪獣」という趣きがあり、実に自分好みで嬉しかったですね。  夢幻三剣士のシズカールに先駆けてドラえもんが「取り寄せバックで大量の水を取り寄せる」という作戦を披露しているのもニヤリとしたし「非力な人間達が知恵を働かせて、強大な怪獣を見事打ち倒す」という、心地良いカタルシスを味わう事が出来ました。  ラストにて「十万光年先のヒョーガヒョーガ星」を天体望遠鏡で観察し、十万年前に星が救われていた事を確認する演出なんかも(オシャレだなぁ)と、しみじみ感じ入りましたね。  二つの星と、十万年という時間、それらの壮大なスケールの話が、野比家にある望遠鏡のレンズの中で収束し、完結するという形。  子供の頃、原作漫画からしか感じ取る事が出来なかった「すこし」「不思議」な感覚をスクリーン越しに感じ取る事が出来た、素敵な映画でありました。    ……そして、来年はどうも「南海の大冒険」を再映画化するらしく(旧アニメ版の「南海大冒険」とは別物になるの?)なんて事も気になっていたりする訳ですが、それよりも何よりも監督候補が今井一暁さんなので、自分としては大いに期待しちゃいますね。  同氏が担当されている「最強! ころばし屋Z」や「巌流島ちょっと前の戦い」は文句無しの名作である為、映画ではどんな手腕を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。  今後も観客に夢を与えてくれるような、素敵な映画を作り続けて欲しいものです。
[映画館(邦画)] 8点(2017-03-04 13:07:28)
18.  ラブ&ピース 《ネタバレ》 
 二十五年以上前、まだ無名であった監督自身が書き上げた脚本を基に「夢見る若者」について描いた一品。    序盤に関しては、ハッキリ言って、観ているのが辛い内容。  主人公は「冴えない若者」どころの話じゃなくて、さながら精神的な病でも抱えているかのような、酷い描かれ方をしているのですよね。  トイレの個室の落書きが、そのまま主人公の強迫観念を描き出している演出と「炬燵に隠れる主人公の姿」が「亀」を連想させる演出などには、クスっとさせられましたが、精々それくらい。   怪獣みたいで良い名前だ、という理由でペットの亀に「ピカドン」と名付けるシーン。  そして、そんなピカドンに、人生ゲームのマップや、野球盤の上を歩かせて遊ぶシーンにて(おぉ、怪獣映画みたい!)と思わされた辺りから、ようやく面白くなってきて、後は右肩上がり。   いくら会社で揶揄われたのが原因とはいえ、ピカドンを主人公が自らトイレに流してしまう展開には疑問も残りましたが「皆に笑われて、自ら夢を諦めてしまった若者」を暗示している描写の為、仕方なかったのだろうなと、何とか納得出来る範疇でした。  その後に、ピカドンを想って作った曲を路上で熱唱し、主人公がスター街道を駆け上っていく展開は、本当に痛快で面白かったですね。  映画「地獄でなぜ悪い」の劇中曲が、本作で使われているファンサービスにも、思わずニヤリ。   また、サイドストーリーも秀逸であり、視点が主人公から離れる場面でも、全く飽きさせない作りとなっていましたね。  謎の老人の正体が判明する件には「サンタクロースだったの!?」と本当に吃驚。  作中にて彼に浴びせられる「どうせ来年も、アンタの配った夢が、ここに戻ってくるんだ……」という台詞にも、独特の情感があって、非常に良かったです。  サンタさんは皆に夢を与えている訳ではなく、皆が捨てた夢を配り直しているだけなのだという、哀しい世界観。  それが、実に味わい深い魅力を、作品に与えてくれていました。   予見していた通り、怪獣映画そのものなクライマックスが訪れた瞬間には、もう大興奮。  そして主人公が「過去の自分」「恥ずかしい夢を抱えていた頃の自分そのもの」であるピカドンと向き合い、耐え切れずに、震え出してしまう件では、こちらも固唾を飲んで、画面を見つめる事になりました。  誰だって、他人に知られたら恥ずかしいような夢を抱いていた事はあるはずですが、この映画は、そんな過去の自分を、否応無く思い出させてくれる。  そして、夢を叶えてみせたはずの主人公が、段々と嫌な奴へと化してしまった事も併せて描き「夢を抱く事って、そんなに素晴らしいか? 夢を叶えたら幸せになれるのか?」という、極めて難しい問いかけを投げかけてくるのです。   ピカドンが消えたのを目にし、呆然としたまま元いた家に帰っていく主人公の姿に、RCサクセションの「スローバラード」が重なる演出に関しては、もう反則。  名曲というだけでなく、非常に思い入れ深い曲でもあったりする為に、それだけで満点を付けたい気持ちに襲われました。   ただ、最後の最後、主人公がピカドンと再会して「カメ」と呼んだ事に関しては、大いに不満。  「スローバラード」曲中にて「カメ」と言っているように聞こえる部分があるからと、無理やり重ねたように思えてしまい「空耳アワーかよ!」とツッコんでしまいましたね。  「僕ら、夢を見たのさ」「とっても、良く似た夢を……」というフレーズに関しては、主人公とピカドンに似合っていただけに、そこだけが残念で仕方ない。  他にも、家具をそのままにしておいたという発言など「最終的に主人公は、この家に帰ってくる」伏線が分かり易過ぎた辺りは、欠点と言えそうです。   監督の特色である血みどろバイオレス描写、フェティッシュな性描写が無くとも、しっかり面白かった辺りは、嬉しかったですね。  上述の「夢」に関する問い掛けについても 「夢を抱く姿は滑稽で、馬鹿にされたりするかも知れないが、きっと分かってくれる人がいる」 「夢を叶える為に自分を見失うくらいなら、叶わなくても構わない」  という、優しい答えが示されているように思えて、じんわり胸が温かくなりました。   結局、この作品のラストにて主人公は、夢が叶う前の、ピカドンに夢を語り聞かせていた頃の、恥ずかしい自分に戻ってしまいます。  何の進歩もしていないと、馬鹿にして笑い飛ばす事だって出来てしまいそうな、寂しいエンディング。  だけど、今度こそは自分を見失わないまま、ピカドンを見失わないままで、夢を叶えてみせて欲しいと、全力で応援したくなる。  そんな、素敵な映画でした。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-07 23:01:17)
19.  ミリオンダラー・アーム 《ネタバレ》 
 ストーリーの概要を知った段階で「これは好みの映画のはず!」と予測していたのですが、それが当たっていて嬉しかったですね。   人物間の絆が育まれるまでの過程にて、さほど劇的なイベントは起こらない点。  そして、目標が「プロで活躍してみせる事」ではなく「プロになる事」に設定されている点など、実話ネタゆえの物足りなさのようなものは感じましたが、それ以上に胸をときめかされるものが多かったです。   涙腺を刺激された場面も幾つかあって、特に印象深いのは、父と子の別れの件。  母国インドを離れ、アメリカで野球に挑戦すると息子に告げられた父親が「お前なら、きっとやれる」と、強く抱き締めて送り出してあげる。  当初は息子の野球挑戦に反対していた、頑固者の親父さんとして描かれていただけに、この展開には「えっ、認めてくれるの!?」という意外性も内包されていて、凄く良かったと思います。  それは裏を返せば「何故、急に息子の事を認めて応援してくれたのか、描写が不足している」とも言えるのですが、少なくとも自分は全然気になりませんでした。  それまでは父親の言いなりになって生きてきた、内気な息子であった事が示唆されていただけに、はっきりと目を見て意思表示してくれた姿が、親父さんとしては嬉しかったのだろうな、と推測します。   上述のシーンが凄く良かったもので、そこが本作のクライマックスかなと思っていたら、それを裏切ってくれた辺りも素敵。  ラストのプロテストの場面。  「君達が成功する事は、インドの子供達に夢を与える事に繋がる」という通訳の言葉には、本当に感動させられましたね。  それによって勇気を与えられ、見事にプロ選手になってみせた二人。  そしてエンディングでは、彼らを真似して野球に興じるインドの子供達が描かれるとあっては、もう脱帽。大満足です。   良い映画だったと、確信を持って言える一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2016-06-19 10:05:43)(良:1票)
20.  21ジャンプストリート 《ネタバレ》 
 ジョニー・デップ主演で、彼の出世作となったドラマを映画化した一品。  作中にて、ドラマ版主人公の未来の姿と思しき役どころで、ジョニー・デップ本人が出演しており、彼のファンには嬉しい驚きを提供してくれていますね。  残念ながら自分はドラマの方は未見なのですが、それでも情報として「元々はジョニー・デップが主演していた作品」という事は承知だった為、登場シーンでは大いにテンションが上がりました。   ただ、理由は何故か分からないのですが、彼の登場以降やたらと血が流れたり、目を背けたくなるような描写が続いたりして、せっかく盛り上がった気持ちに水を差されるような思いもありましたね。  撃ち合いのシーンなのだから、血が出るのは当たり前といえば当たり前なのですが、それまでは全くそんな素振りが無かったもので、少し戸惑いました。  今となっては、あの「急に血生臭い銃撃戦になる」という切り替えも一種のギャグなのかな、と思えてきますが、真相や如何に。   そんな訳で、クライマックスにて「あれ?」と違和感を覚えたりもしたのですが、全体的には楽しめる時間の方が、ずっと長かったですね。  何といっても「もう一度高校生に戻って、やり直したい」という願望を、疑似的に満たしてくれる作りとなっているのが心憎い。  例えば、両親が旅行に出掛けた隙に、家でパーティーを行うシーン。  二人が笑いながらアレコレと準備している様が、本当に楽しそうで、観ているこちらまでテンションが上がって来るのですよね。  「酒はどうする?」「偽のID無いよな……」と、惚けた会話を交わす辺りなんかも、お気に入り。  「子供の振りをしているけど、本当は大人」というズルい立場だからこその喜びを、上手く表現していたように思えます。  その一方で、過去に囚われる事を良しとする作風ではなく、きちんと作中で前向きな答えを出して終わる辺りも、好みのバランスでした。   他にも「スーパーマンII/冒険篇」に登場したゾッド将軍が、作中で妙にリスペクトされているのも可笑しかったし、やたらと扇情的な言動の女教師なんかも、魅惑的なアクセントになっていましたね。  特に後者に関しては、もっと出番を増やして欲しいと思ったくらい。  「俺は麻薬捜査官だ」「お前の盾になっても良い」などの台詞が、伏線として機能している辺りも心地良かったです。   人気の高さゆえに続編も制作されて、三作目では「メン・イン・ブラック」とのコラボも決定したという本シリーズ。  この一作目の終り方も、続編に直接繋がるような形となっており、観賞後もテンションの高さを持続させてくれたのが嬉しかったですね。  楽しい映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-06-13 06:33:22)(良:1票)
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