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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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101.  お父さんのバックドロップ 《ネタバレ》 
 主題歌がスネオヘアーで、主演が神木隆之介という、自分好みな布陣だったので観賞。   個人的には「声優」という印象が強い神木隆之介なのですが「子役」としても、そして「美少年」としても卓越した存在なのだと、本作によって思い知らされましたね。  時代設定が1980年という事もあり、作中では半ズボンばかり穿いているのですが、そのフトモモが眩しくて、妖しい色気すら感じちゃったくらい。  小説などで出てくる「絶世の美少年」「天使のように愛らしい子」って、現実にも存在するんだと、彼に教えてもらったような気がします。  スネオヘアーに関しても、本来は「男女の恋愛映画」に似合いそうな曲が多いのに、父子愛を描いた本作に寄り添った曲として「ストライク」を完成させているのが、お見事でした。   で、肝心の映画本編はというと……  良くも悪くも王道な作りであり、優等生的な一品。  際立った短所も無いんだけど、その分だけ面白みに欠けるというか……結局(神木くんが可愛い)って印象が、一番色濃く残る作品になってる気がします。   まぁ「ロッキー」(1976年)を観れば(スタローン恰好良いな)と思うし「レスラー」(2008年)を観れば(ミッキー・ロークも恰好良いな)と思う。  でもって「チャンプ」(1931年&1979年)の二作を観れば(どっちの子役も可愛いな)って思う訳だから、本作も「神木くんの可愛さを満喫する映画」と定義しても、全然悪くないんですけどね。  それでも(物足りない)(惜しい)と考えてしまうのは、それだけ観賞中に期待しちゃったというか……  上述の傑作に並べたかも知れない可能性を、本作に感じたゆえなのかも。   そんな「可能性」の一つとして、特に着目したいのが、母親のビデオテープの件。  普通なら、こういう物語開始時点で亡くなってる母親って「完璧な存在」として扱っても、全く問題無いと思うんですよね。  でも本作に関しては、そうじゃない。  主人公の一雄から見ても、母は「いつも優しかった訳じゃない」「時々、ボクの事を打ったりした」という存在。  だからこそ一雄は、そんな母が優しい笑顔を見せた運動会のテープを、何かに縋るように大切にしていたんだって分かる形になっており、その事に凄くグッと来ちゃったんです。   口は悪いけど、実は善人というマネージャーも良い味を出しており、自分としては彼に助演男優賞を進呈したくなったくらい。  空手チャンピオンと戦う事になった一雄の父、下田牛之助(恐らく上田馬之助がモデル)を心配し「試合の当日になったら、病院に駆け込め。後のトラブルは、儂が処理する」と言ってくれる場面なんかは、特に好き。  それでいて、いざ試合当日になったら「儂は信じとるぞ」「お前が最強やて」という熱い台詞を吐き、試合後には誰より勝利を喜んでくれるんだから、たまんなかったです。   その他「煙草のようにガムを渡す場面が印象的」とか「廃バスを秘密基地にしてる少年達って設定に、ワクワクさせられる」とか、良い部分も多いんだけど……  全体的に見ると「不満点」「気になる箇所」も目に付いたりするのが、実にもどかしい。   一番目立つのが、劇中でレスラーを辞めてしまう松山の描き方であり、これは如何にも拙くて、映画全体の完成度を下げていたように思えます。  酔って泣きながら「お前にプロレスの何が分かるんだ!」と訴え、それが感動的な場面として描かれてるんだけど、そうは言われても劇中にて「松山が如何にプロレスを愛しているか、人生を捧げてきたか」が描かれてないんだから、説得力が無いんですよね。  典型的な「唐突に出てくる泣かし所」って感じであり、こういう場面を挟みたいのであれば、ちゃんと事前に布石を打っておくべきかと。  それはタイトルになってる「バックドロップ」に関しても、また然り。  最後の試合にて、一発逆転の決着に繋げたいのであれば、事前に「牛之助の得意技」として、入念に描いておくべきだったと思います。   本当、こういう映画を観た後だと(映画を評価するって、難しいな……)と、しみじみ感じちゃいますね。  そもそも「主題歌がスネオヘアー」「主演が神木隆之介」って時点で、もう「好きな映画」になっちゃう訳だから、惚れた弱みというか、まともな判断なんか出来っこないんです。   そんな訳で、もしもスネオヘアーに興味が無く、神木くんを可愛いとも思わない人が観たら、結構厳しい出来かも知れません。  でも、自分と同じように(スネオヘアーの曲が好き)(神木くんって可愛いよね)と感じる人には、映画の後日談となる「ストライク」のPVとセットでオススメしたくなる……  そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2023-02-09 22:20:02)(良:1票)
102.  決算!忠臣蔵 《ネタバレ》 
 関西弁で話す赤穂浪士と、やたら柄の悪い大石内蔵助。  それらに対し、最初は戸惑いが大きかったのですが……   (要するにコレは、ヤクザ映画なんだ)と気付いてからは、問題無く楽しめましたね。  現代人が忠臣蔵を観賞する際にネックとなる「浅野は加害者で吉良は被害者であり、赤穂浪士は逆恨みしてるだけ」って部分に関しても「親分の死後、残った組員が面子を守る為に復讐した」と考えれば、分かり易い。  「よう見とけ、赤穂の浪人共がする事を」と大石が静かに呟く場面も印象的であり、この映画では主人公達を立派な「赤穂義士」ではなく、庶民的なヤクザとしての「赤穂の浪人共」として描いているんです。  極端に美化された忠臣蔵より、ずっと感情移入し易い作りになってるし、この路線で仕上げたのは、正解だったんじゃないかと。   それだけでなく「経済的に見た忠臣蔵」という魅力が、しっかり描かれているのも良い。  「籠城すべきか否か」を、退職金の多寡で決める序盤の時点で、もう面白かったし、最初に軍資金が幾らあるかを分かり易く現代の価値換算で示し、それが徐々に減っていく様を数字で見せる演出にしたのも、上手かったですね。  地元と江戸を行き来するだけでも旅費が掛かるのに、何度も無駄足を重ねてる様とかもう、本当に観ていて「無駄遣いすんなよ!」って気持ちにさせられる。  そんな観客の想いを、勘定方の面々が代弁し、劇中で実際に文句を言ってくれるんだから、非常に痛快。  我らは戦の担当だからと言い訳し、勘定方を見下す同僚に対し「戦なんぞ、一度もした事無いやろが!」と大野九郎兵衛が啖呵を切る場面なんかは、特に良かったですね。  観客の喜ばせ方を知ってるなと、嬉しくなっちゃいました。   そんな勘定方の代表である矢頭長助の死を、中盤の山場として用意してあるから観ていてダレないし、吉良邸への討ち入り場面を省略し「討ち入り前の、予算内に収まるかどうかの葛藤」をクライマックスに据えたのも、結果的には良かったかと。  一応、演習として討ち入る姿を大石達が思い浮かべる形になっており、観客としても「どんな風に討ち入ったのか」を、自然と想像出来るバランスになっていましたからね。  この辺り「太鼓じゃなく銅鑼を叩くのか」と落胆しちゃう大石を描いたりして「討ち入りの際には、太鼓を叩く大石内蔵助」を期待していた観客と、主人公の心情とをシンクロさせていたのも上手い。  確実に勝利する為「一向二離(一人が相手と向き合ってる隙に、他の二人が回り込んで相手を仕留める)」の兵法を用いる事に対し「それは卑怯では?」と問う者に対し「これは戦や」と返す場面なんかも「忠臣蔵」(1990年)が大好きな自分としては、嬉しくなっちゃう部分。  赤い着物ではなく、火消し用の着物を選ぶ場面とか「経費を節約出来た時の快感」を描いているのも良いですね。  限られた予算が減っていくという、マイナスの焦燥感だけでなく、プラスの充足感も味わえる作りにしたのは、本当に上手い。  そんな節約が「討ち入り後の、残された者達を救う工作資金」に繋がるというのも、ハッピーエンド色を強める効果があって、お見事でした。    難点としては……  コメディ色が強い作りゆえか、ピー音を連発する場面なんかは、ちょっと雰囲気を壊してる感じがして、微妙に思えた事。  良い味を出していた矢頭長助が、死後は回想シーンなどでも一切姿を見せないので、寂しく思えちゃう事。  そして、忠臣蔵を代表する人気者の堀部安兵衛が、徹底的に情けなくて、良い所も無く終わっちゃうのが残念とか、そのくらいになるでしょうか。  幸い、それらの点を自分は「決定的な傷」とは思わなかった訳だけど、これを駄作と断ずる人の気持ちも、分かるような気がします。   でもまぁ、2019年にもなって「面白い忠臣蔵」を撮ってくれたという、その事に対する感謝の方が、ずっと大きいですね。  忠臣蔵という鉱脈は、まだまだ掘れるんだ、面白く出来るんだって事を証明してみせたという意味でも、非常に価値ある一本だと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2023-02-02 13:50:35)(良:3票)
103.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 《ネタバレ》 
 実際に起きた悲劇をハッピーエンドに変えた映画としては「ザ・チェイス」(1994年)などの先例がありましたが、そういったジャンルの決定版とも言うべき品ですね。   何せ(これは、あの事件が元ネタなのでは?)と観客に想像させるだけでなく、思いっ切り「シャロン・テート」って人名を出しているんだから、恐れ入ります。  現実では悲痛な死を遂げた彼女を、映画の中で救ってみせた形であり、そんな「優しい作り話」を、元ネタを知らない観客でも楽しめるように仕上げてるんだから、本当に見事でした。    上述の通り「シャロン・テート」という存在ありきの内容ではあるんですが、この映画って「主人公のリックとクリフ、二人の友情の物語」としても、綺麗に成立しているんですよね。  離れ離れになってしまうかと思われた二人が「これからも、ずっと一緒だ」「友情は不滅だ」と感じさせる結末を迎えてくれるんだから、もう嬉しくって仕方無い。  作中で「兄弟以上、夫婦未満」なんて言葉が出てくるけど、事件後の描写からすると、この二人の絆は夫婦以上としか思えなかったくらいです。   ……で、ココがこの映画の上手いところなんですが、そういった「友情の映画」としての側面もあるからこそ、本作は「分かる人だけが分かれば良いという、独り善がりな映画」ではなく「色んな人が楽しめるような、立派な娯楽映画」になってるんですよね。  例の事件を知っている身であれば(良かった、シャロン・テートが殺されずに済んだ……)とホッと出来る訳だけど、知らない人からすれば、そういうカタルシスは得られ難い。  そんな弱点を補うように、誰もが理解出来る要素として「主人公二人の友情」を追加したのは、本当に上手かったと思います。     自分としては、ブラッド・ピット演じるクリフに肩入れする気持ちが強かったんですが、ディカプリオ演じるリックも魅力的だったし、二大スターの見せ場のバランスも良かったですね。  中盤でリックが見事な演技を披露し、監督や子役に称賛される場面には感動しちゃったし「落ち目の俳優が、意地を見せて業界にしがみ付く物語」としても、充分に楽しめる出来栄え。  アル・パチーノやカート・ラッセルまで出てくるし、かつての映画小僧タランティーノが「何時か、こんな映画を撮ってみたい」と夢見ていた品を、そのまま形にしたようであり、豪華な出演陣にワクワクするという以上に、ほのぼのしちゃいました。   この映画の世界では、チャールズ・マンソンが「悪のカリスマ」と持て囃される未来も訪れず「単なる犯罪者」という、至極真っ当な扱いを受けるんだろうなと思えるような、皮肉なユーモアが備わってる点も面白い。  犯人の一味が「俺は悪魔だ。悪魔の仕事をしに来た」という有名な台詞を吐いた後、クリフに倒されちゃう展開とか、実に痛快でしたからね。   ただ、ちょっとクリフが強過ぎるというか……  敵側の戦力が少な過ぎて(こんな奴ら、リックとクリフなら返り討ちにするだろ)と展開を予想出来ちゃったのは、少し残念。  映画本編の情報だけだと、彼らが事前に殺人を犯していた事も明かされていないし、クリフ達に痛めつけられる姿が、可哀想に思えてくるのも難点ですね。  この辺りは「マンソン・ファミリーが殺されて当然の連中だって事くらい、観客は分かってるはず」という、慢心のようなものがあった気がします。  もっと分かり易く「こいつらは極悪人なんだよ」と、事前に説明しておいてくれたら、より強いカタルシスを得られたかも。   恐らくは映画オリジナルの台詞で「みんな、テレビを観て育つよね」「アイ・ラブ・ルーシー以外、全部殺人の話だよ」「殺しを教えた連中を殺そう」っていう、犯行動機のようなものが語られているのも、興味深いものがありましたね。  そんな事を言ってた連中が、映画やドラマを作る側であるリック達に一蹴される展開な訳だし「テレビから影響を受けて人を殺した」と主張するような輩に「馬鹿言ってんじゃねぇよ」と、作り手側がメッセージを送ってるようにも思えました。   そんな具合に、シンプルに観ても面白いし、色々深読みしても楽しいという、贅沢な一本。  「シャロン・テート事件を扱った映画の中で、一番好き」「昔の作品をパロってみせてる、オタク気質な部分が好き」「男二人の友情映画として、凄く好き」って感じに、色んな観客の、色んな形の「好き」を受け入れてくれそうな……  懐の広い映画でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2022-11-24 07:56:40)(良:2票)
104.  七人のおたく cult seven 《ネタバレ》 
 これは七人のおたくを描いた映画……というより「内村光良のアクション映画」ってイメージが強かったりしますね。   そのくらい終盤の格闘シーンが衝撃的だったし、実に痛快。  ウッチャン演じる近藤に対し、それまで散々「弱いぞコイツ」って印象を与えておいて、それがいざ本気で戦ったら強かったっていう、そのカタルシスが半端無いんです。   本作はメインとなる七人全員、ちゃんとキャラが立っているし、群像劇と呼べる構成なんですが……  それでもなお「ウッチャンが全部オイシイとこ持っていってる」って、そんな風に感じちゃいます。  監督や脚本家が苦心して整えたであろうバランスを、一人の演者さんのパワーが引っ繰り返してみせた形であり、ここまで来るともう、その「バランスの悪さ」が気持ち良いし、天晴と拍手を送りたいですね。   そんな訳で「ウッチャンのアクションが楽しめるだけで満足」「それ以外の場面は、正直微妙」って評価になっちゃいそうな作品なのですが……  一応「おたく達が仲良くなって、夢を叶える青春映画」としての魅力もあるし、全体のストーリーや雰囲気も、決して嫌いじゃなかったです。   とにかく作りが粗くて、脚本のツッコミ所も多いんだけど、何となく庇いたくなるような愛嬌があるんですよね。  例えば、山口智子演じる湯川リサは、設定上はレジャーおたくって事になってるけど、明らかに「普通の人」であり、この時点で「七人のおたく」って看板に偽り有りじゃないかって話になるんですけど……  劇中にて、主人公の星が「キミも同じ目になろう」とリサに計画書を渡す場面があるし、今回の冒険を通して「彼女も、おたくの仲間入りを果たした」って事なんだろうなと、好意的に捉えたくなっちゃうんです。   他にも、ダンさんの秘密基地で模型作りする場面とか、皆で竹筒の皿を使って食事する場面とかも、妙に好きなんですよね。  「仲間で集まって、ワイワイ遊ぶ楽しさ」が、しっかり描かれてたと思います。   飛行機の玩具で始まり、玩具のような飛行機で終わる構成も綺麗だったし、空から見た島の景色が、ダンさんと作った模型そっくりだった事にも感動。  最後に「皆、同じ目になった……」と満足気に呟く星に対し、他のメンバーが「そんな目はしてない」とツッコんで終わるのも、仲良しな雰囲気が伝わってきて好きですね。   自分にとっての映画もそうなんですが、おたく趣味の持ち主って「それが面白いから」というより「それが好きだから」ハマってしまい、おたくになったってパターンが多いでしょうし……  本作も「おたく映画」らしく「面白い」って言葉よりも「好き」って言葉が似合うような、そんな一本に仕上がってると思います。
[DVD(邦画)] 7点(2022-10-21 17:23:40)(良:1票)
105.  彼女が水着にきがえたら 《ネタバレ》 
 馬場監督がアマチュア時代に撮った「イパネマの娘」という映画が原型の一品。   それと「冒険者たち」(1967年)の影響もあると監督当人が語っており(言われてみれば……)と納得しちゃいますね。  他の監督作に比べるとスケジュールがキツかったらしく、公開の直前まで撮影していたくらいなので、仕上がりに満足出来ず「一番後悔のある作品」と語っているのも印象深い。   それらの情報を踏まえ、鑑賞前の自分としては(つまり、一番の失敗作って事か)(配給収入では前作よりヒットしてるけど、まぁ売り上げなんて当てにならないしな)と思ってたんですが……  意外や意外、中々に面白かったです。   とはいえ、この映画が失敗作というか「求められてるものとは違った映画」っていうのは、なんか分かる気がするんですよね。  監督の前作である「私をスキーに連れてって」(1987年)に対し、自分は「オシャレでバブルの匂いを感じさせるけど、純粋に物語として考えたら面白くない」って評価を下しましたが、本作は全くの逆。  映画としての面白さはアップした代わりに、オシャレさもバブルの匂いも薄れてるというんだから、そりゃあ大半の観客はガッカリしちゃうと思います。  もし自分が前作を高評価してたとしたら「ごくごく平凡な娯楽映画になっており、あの独特の味が失われてしまった」「スキーの魅力を伝えてた前作と違い、本作はスキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」なんて事を言い出してたかも知れません。   ……でもまぁ、そんな妄想をしてみたところで、やっぱり現実の自分としては「面白かった」「良い映画だった」と思ってしまったんだから、これはもう仕方無いですね。  主演の織田裕二も魅力的だったし、ちゃんと全編に亘って「海での宝探し」って目的があるから、話の軸がしっかりしてる辺りも良い。  最終的な目的が何なのか曖昧であり、途中で退屈しちゃった前作に比べると、明らかに話作りの成長が見受けられます。   上の方で書いた「スキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」っていうのも、実は当たり前の話であり、これって明らかに「宝探し」がメインの映画なんですよね。  海に潜るのは宝を見つける為の手段に過ぎず、海に潜る事が主題ではないんだから、そこの捉え方次第で、映画の評価が変わってくるように思えます。   あと、主人公達は自由人ではあっても善人ではないってタイプなので、そこも評価が分かれそうですね。  この映画が好きな自分でさえ「強姦してでも、あの女からポイント聞き出せ」って谷啓おじさんが言い出した時は引いちゃったし、ヒロインが怒った「ゲーム」に関しても、ちょっと趣味が悪い。  自分は織田裕二が演じてるって時点で主人公に肩入れして観てたから(まぁ、こいつは模範的な善人って訳じゃないんだろう……)って早めに意識を切り替えられたけど、そうでない場合は、結構キツいかも知れません。   何か、さっきから「良かった所を語る」というよりも「微妙な部分を庇ってみせる」って感じの論調になってますけど、本当、良い所も色々ある映画なんですよ、これ。   「五十億の宝を手に入れたら、五十億の船を買って百億の宝を探す」っていう主人公達のスタンスも、浪漫があって良いなって思うし「アウトロー気質な男に振り回される、真面目で普通な女の子」って形で、原田知世演じるヒロインの魅力が際立ってるのも良い。   「もう一つの宝」の正体がヒロインだったってオチも、ベタで嬉しくなっちゃうし……  水中でのキスシーンも、間抜けな感じで全然ロマンティックじゃないのに、その間抜けさが良いなって思えちゃうんです。  宝石なんかより価値のある「宝」を手に入れた主人公カップルは、宝石を持ち逃げされても呑気に笑ってるって終わり方なのも、もう文句無し。   皆はブスって笑いものにしてるけど、自分には可愛らしい美人にしか思えないっていう、不思議な女の子のような……  そんな、愛すべき映画です。
[DVD(邦画)] 7点(2022-10-10 17:55:29)
106.  ハムナプトラ2/黄金のピラミッド 《ネタバレ》 
 前作のファンとしては、あの後リックとエヴリンが結婚したという、その一事だけでも嬉しくなっちゃいます。  しかも可愛い息子まで産まれてるんだから、もう言う事無し。  続編で主人公とヒロインが別れてるとか、下手すりゃ主人公が死んでるとか、そんなパターンも結構あったりするだけに、本作のような「幸福な続編世界」に仕上げてくれた事には、心から感謝したいです。   そんな「可愛い息子」ことアレックスが、ちゃんと魅力的なキャラに仕上がっていた点も良いですね。  生意気過ぎず、良い子過ぎずってバランスで可愛かったし、頭の良さには感心させられるしで「続編から登場した新キャラ」なのに、異分子って感じが全くせず、自然に馴染んでる。  特に「母と同じように物をドミノ倒しにしちゃう場面」には笑っちゃったし、こういう形で前作のファンを和ませ(この子は間違いなく、エヴリンの子供なんだ)って感じさせる演出が、本当に上手かったと思います。  囚われの身でも「お前なんか、ボクのパパに敵うもんか」と言い張る姿も健気だったし、自分としては彼をMVPに推したいくらい、お気に入りの存在ですね。   ザ・ロック演じるスコーピオン・キングも迫力あったし、味方側だけでなく、敵側にも魅力的な新キャラが揃ってるっていうのも良い。  そして何より「続編の魅力」の一つである「強くなった主人公達」の姿を拝めるのが、ポイント高いんですよね。  単なる司書だったはずのエヴリンも、何度も冒険して鍛えられたゆえか、雑魚敵なら蹴散らしちゃうくらいに強くなってて、前作から彼女を見守ってきた身としては、もうニンマリしちゃうんです。  主人公のリックもますます強くなり「投げられたナイフを空中で掴む」なんて芸当を見せる程になってるんだけど、それがラスボスを倒す伏線だったりするから(おぉ、なるほど!)と思えて、観ていて気持ち良い。  中盤にて「実はリックは、人類の守護者メジャイという特別な存在だった」と明かされるんだけど、あまり戸惑わず(まぁ、リックだしな……)と納得出来ちゃうのは、その強さや特別性を、きちんと描いておいたお陰だと思います。   「貴方のキスって嫌いよ、貴方の言いなりになっちゃうから」とボヤくエヴリンとか、夫婦がイチャつく描写も良かったし、二階建てバスを用いたカーチェイスも面白いしで「1には無かった、2ならではの魅力」が盛り沢山だった事も、嬉しい限り。   そんな本作の欠点としては……クライマックスが納得いかないって点が挙げられるでしょうか。  例えば、スコーピオン・キングと並ぶボス格だったはずのイムホテップが「アヌビス神の横槍によって超常的な力を奪われる」って展開になるのは流石に唐突だったし、敵が理不尽に弱体化してから倒す形になるので、何かスッキリしないんですよね。   最後の最後で、命を懸けてリックを救おうとするエヴリンと、イムホテップを見捨てて逃げるアナクスナムンって形で「愛し合う男女」の明暗が分かれちゃうのも、ちょっと納得いかないです。  これって、2単体で評価すれば良い脚本かも知れないけど、やはり1の冒頭から「悪のカップルかも知れないけど、二人は確かに愛し合ってる」って事を感じてきた身としては「観客の幻想への裏切り」に思えてしまうんですよね。  自分としては「悪のカップル」も愛し合ったまま、心中のように退場する結末の方が、より好みだったかも。   その他「リックの二丁拳銃属性が薄まったのは寂しい」とか「ラブロマンスとしての魅力が失われてる」とか、細かい不満点もあるんだけど……  まぁ、それらに関しては「代わりにショットガン使う場面が増えてて恰好良い」「妖艶なエジプト美女の姿を拝める場面が増えてて眼福」といった具合に、また違う良さが生まれているので、差し引きゼロって感じでしょうか。  不思議とバランスが取れてるというか、かつての良さが消えてる分だけ、新たな良さも生まれてるって形。   「文句無しにパワーアップして、1より面白い映画になった」とまでは言えないけど……  「2も1と同じくらい面白くて、しかも新鮮な魅力がある」っていうのは、充分に凄い事ですよね。   続編の成功例として、大いに評価されて良い映画だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:40:38)
107.  ハムナプトラ/失われた砂漠の都 《ネタバレ》 
 「ミイラ再生」(1932年)のリメイク……というよりは、それを元ネタにしたオリジナル映画って感じですね。  元々はジョージ・A・ロメロが監督する予定もあったとか、過酷な撮影現場で主演のブレンダン・フレイザーは死に掛けたとか、面白い裏話も満載。  そして映画本編の方も、裏話の数々に負けないくらい、面白く仕上がっていたと思います。   そんな本作の魅力といえば、何と言っても登場人物達。  何せミイラ映画であるにも拘わらず、ミイラが甦るまでに一時間以上も掛かる構成になってますからね、これ。  じゃあ前半は何やってるのと言えば、主に人間同士が争ってる訳なんだけど、それがキチンと面白く仕上がってる。  それもこれも、魅力的なキャラクターが揃っているからこそ。  そして、ミイラ映画という枠組みに囚われない、柔軟な発想の監督だからこそ出来た事ではないでしょうか。   そもそも本作を「ミイラ映画」と評するのすら躊躇われるくらいで、どちらかといえば「冒険映画」という、そんな懐の大きいジャンルの方が、より似合う気がしますね。  鏡の角度を変えるだけで、暗かった部屋が明るく照らされる仕組みとか「ハムナプトラの遺跡」にも魅力たっぷりであり、観ていて少年心をくすぐられます。   監督の前作「ザ・グリード」(1998年)同様に、主人公にはお調子者の相棒がいるのかと思わせておいて、冒頭でその相棒ベニーに逃げられちゃう展開には驚かされたし、話作りも上手かったですよね。  思えば、あれで一気に物語に惹き込まれたし、たとえ監督に関する予備知識が無くとも、充分に「話の掴み」として成功してた気がします。  自然というか、面白い流れで「このヒロインは古代エジプト語の読み書きが出来る」「ヒロインの兄にはスリの才能がある」と説明してる辺りにも感心。   脚本だけでなく、視覚的な演出も優れており、刑務所長が体内をスカラベに侵食される場面なんかも、ショッキングで良かったです。  派手な出血や内臓露出などのグロ描写を用いずとも、こういう形で「エグい場面」を描けるのって、凄い事だと思います。   主人公のリックが二丁拳銃使いなのも新鮮だったし、何より恰好良い。  ヒロインのエヴリンもキュートであり、武闘派の主人公と、知性派のヒロインって形で、綺麗に色分けされてるのも良かったですね。  二人が冒険を通して結ばれて、ラストには財宝よりも価値のある「愛」を手に入れてハッピーエンドになるっていうのも、文句無しの終わり方。   そんな具合に、とにかく優等生というか、ほぼ全編に亘って面白い映画なんですが、あえて欠点を探すなら……  主人公が頼もし過ぎて、緊迫感に欠ける(窮地に陥っても簡単に脱出するので、拍子抜けしたりする)って事くらいかな?   「観客を楽しませる映画」という意味では、本当に王道な作りであり、お手本になりそうなくらい、完成度が高い。  良い映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-09-11 15:25:19)(良:1票)
108.  ラッシュアワー 《ネタバレ》 
 米国におけるジャッキー人気を決定付けたという、記念すべき一本。  そう考えると、映画史においても重要な品のはずなのですが……  そんなアレコレを加味しなくとも、単純に刑事物のバディムービーとして、良く出来てると思います。   この手の映画の場合、主人公は「常識人タイプ」と「型破りタイプ」に分かれがちであり、本作も一見するとリー刑事が「常識人」カーター刑事が「型破り」なのかと思えるのですが、映画が進むにつれ、徐々にその関係性が逆転していく様が面白いんですよね。  カーターの方は「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)的な「陽気な黒人刑事」というキャラクターであり、どう考えても相手を振り回す側のはずなのに、無口で真面目そうなリーに振り回されるという意外性。  旧来のバディ物、そして刑事物に慣れ親しんだ観客であればあるほど、この展開には意表を突かれ、新鮮な魅力を味わえたんじゃないでしょうか。   監督のブレット・ラトナーがジャッキーのファンだったので、アクション・シーンもジャッキーが好きなように演じる事が出来たという、その一点も素晴らしいですね。  クライマックスにて描かれる「展示品を壊さぬように、必死にフォローしながら戦う場面」「絨毯ダイブ」などの魅力は、如何にもジャッキー映画的であり、彼のファンとしても、大いに満足。   そんなジャッキー演じるリーだけでなく、相棒となるカーターが魅力的なキャラクターであった事も、忘れちゃいけないポイント。  「誰にでも出来る、下らない任務」としてリーの接待を任されたカーターだけど、見事に誘拐事件を解決してみせて「高慢なFBIの鼻を明かす」って痛快さを描いてるんですよね。  リーの側だけでなく、カーターの側に感情移入して観ても面白いって辺りは、続編の「2」や「3」では失われてしまった長所であり、本作のバディムービーとしての完成度の高さを証明してる気がします。   「カーターは銃を二丁持ってる」「リーから銃の奪い方を教わっている」などの伏線が、きちんと張られている事にも感心しちゃうし、反目する主人公達が仲良くなるキッカケが「歌と踊り」っていうのも、お約束な魅力がありましたね。  幼女のスー・ヤンに、爆弾処理に長けたタニアといった具合に、魅力的な脇役が揃ってる点も良い。   商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが……  本作に関しては、ヒットしたのも納得。  そしてシリーズ化したのも納得な、魅力のある映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2022-06-24 09:14:47)
109.  ビバリーヒルズ・コップ2 《ネタバレ》 
 前作に比べると、よりエディ・マーフィらしい映画になってる気がしますね。  特に「ニトロを届けに来た」と受付の女性を騙し、目当ての情報を引き出す場面なんかは、それが顕著。  爆発シーンも派手になってるし、バズーカで車を撃ったりもするしで、笑いとアクション要素に関しては「1よりパワーアップした続編」だと、胸を張って言えると思います。   ただ、自分が1に感じた「意外とシリアスで、ハードボイルドな魅力」は薄れてしまったように思えて……そこが、ちょっと残念ですね。  前作のホテル以上に「宿泊先の確保の仕方」が傍迷惑であり、豪邸の持ち主である金持ち夫婦が可哀想に思えちゃうのも、スッキリしない感じ。  元々、主人公のアクセルって「模範的な刑事とは言えない、悪党に近い人物」ではあるんだけど、本作に関しては「やり過ぎ」だったんじゃないかと。   とはいえ、欠点らしい欠点なんてそのくらいだし、基本的には「楽しい映画」でしたね。  ブリジット・ニールセン演じるカーラは「理想的な悪役美女」って感じで、男心を擽る魅力がありましたし。  アクセルの同僚であるジェフリーが、上司のトッド警部に成り切って電話に出る場面なんかも、コント的な魅力があって好き。   そして何と言っても、1で絆を育んだ「ビバリーヒルズの警官」達との友情描写が、本当に良かったです。  1のラストで友達になった二人と、2では仲良しトリオとして一緒に行動してるってだけでも、嬉しくなっちゃうんですよね。  これはシリーズ物ならでは、続編映画ならではの魅力であり、映画一本だけでは決して生み出せない味わいがあると思います。  ローズウッドの部屋で会話する三人とか、アクセルの嘘に呆れて他二人が同時にサングラス掛ける場面とかも、凄く好き。   ある意味では、続編映画というよりも、同窓会映画って感じですね。  「1で生まれた友情を、再び確認する映画」「懐かしいアイツらと再会して、また楽しく盛り上がる映画」って考えても、本作は充分に成功してると思います。  (こいつら、仲良いなぁ……)って、主人公達を微笑ましく見守るような気持ちで、エンドロールまでの時間を楽しむ事が出来ました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-04-29 15:09:35)(良:1票)
110.  ナイト ミュージアム 《ネタバレ》 
 ベン・スティラーという俳優を初めて意識したのが、この映画だったように思えますね。  コミカルな演技を軸としつつも「決める時は決める」恰好良さに痺れて (この人、良いなぁ……)  と惚れ惚れしちゃったのを憶えています。  後に彼の主演作をチェックする事となり、その中には本作より面白いって感じるような品もチラホラあったりしたんですが……  やはり「初めての映画」として、本作は印象深いです。   そんな具合に、自分としては主演俳優ばかり注目しがちな品なんだけど、映画全体で考えても、やっぱり「面白い映画」「良い映画」なんじゃないかって思えますね。  冒頭に色んな展示物を映し出し、予備知識を持った観客には「こいつらが動き出すのか」とワクワクさせる作りになってる辺りなんて、特に良い。  観客の喜ばせ方を分かってるというか、夢や期待を裏切らない作りになってると思います。   本作の特徴としては「女性ヒロインが不在である」って事も挙げられますが、それもまた自分好みなんですよね。  一応、それっぽい存在としては同僚のレベッカがいるんだけど、彼女とはロマンスに発展せず、あくまで同僚止まりで終わっちゃう。  主人公は夜警として頑張り、それが最終的にハッピーエンドに結びつく訳ですが、その姿を「女にモテたいバツイチ男」ではなく「息子に認められたい父親」として描いてるのは、本当に良かったと思います。  ここで作り手が欲張って「レベッカとも結ばれた」なんてオチにしていたら、話の軸がブレちゃいますからね。  色恋沙汰の要素を排し「頼りない父が、可愛い息子を笑顔にしてみせる物語」として纏めたのは、もう大正解だったんじゃないかと。   他にも「ミニチュア模型好きには嬉しくなる場面が多い」とか「自分は歴史上の偉人ではなく、それを模して造られた人形に過ぎないと語るテディの姿が切ない」とか、色んな長所が備わってる映画なんです。  敵が老人三人組じゃあ脅威として弱いなと思っていたら「石板の力で強くなる」って展開になり (ほほう、そう来たか)  と感心させられる辺りなんかも、観ていて気持ち良い。  嫌味な感じの上司は、最終的には主人公を認めてくれるし、悪人とは言い切れない老人三人組も博物館に復職する後日談が付くしで、鑑賞後の後味が爽やかなのも良いですね。  最後の「博物館の夜」も本当に楽しそうだし「楽園を守り抜いた」という主人公の感慨が伝わってくる、最高のエンディングだったと思います。   そんな本作の難点としては……色々と説明不足で、モヤモヤしちゃう辺りが挙げられそうかな?  監禁されたマヤ族へのフォローは無いし、ラジコンの車に関しても何故か人形が乗り込み操縦出来ちゃうしで、観ていて気になる箇所が多いんです。  正直、作品の完成度は高いとは言えないかも知れません。   でも、そんな「説明不足」という欠点に関しても (マヤ族の人形達は、あの後なんだかんだで皆の仲間入りしたんだろう) (ラジコンの車は、ジェデダイア達が改造したんだろう)  って具合に、あれこれ考えて補いたくなるというか……  ある意味では、凄く想像力を刺激される作りになってるんですよね。  「作りが丁寧で、観た後に何のモヤモヤも残らないような傑作」ともまた違う、独特の味わい。   「想像力を刺激される」「それによって、色んな夢が広がる」という意味では、非常に博物館らしい映画と言えるかも知れません。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-04-14 05:55:51)(良:1票)
111.  ラブ・アクチュアリー 《ネタバレ》 
 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。   所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。  この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。   登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。  特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。  主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。   個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。  そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。  後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。   それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。  カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。  しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。  つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。  正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど……  彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。   その他、欠点としては  ・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。 ・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。 ・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。   等々が挙げられそうですが……  これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。  やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。   後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな?  サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。   「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。    ……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。  本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-12-25 21:12:45)(良:3票)
112.  ユーロトリップ 《ネタバレ》 
 旅映画としても、青春映画としても楽しい一品ですね。  国から国へと移動する際の演出も凝ってて飽きないし、観光地としての欧州の魅力を感じられる内容だったと思います。   ただし、この場合の「欧州の魅力」というのは、非常に漫画的というか……  あくまでも「アメリカの若者が思い描くような欧州」って事なので、注意が必要ですね。  さながら「忍者や芸者が一杯いる日本」のような、色々と強調された欧州の国々が描かれており、ちょっと不謹慎かも知れないけど、つい笑っちゃいます。  この辺りのバランス感覚が絶妙で、たとえば「5セントもあればホテルが買えちゃう国」なんかが登場するもんだから、観ている側としても「完全なフィクション、映画という名のファンタジー」として、割り切って楽しめちゃうんですよね。  巷に溢れる「頓珍漢な日本を描いた映画」の数々も、外国の方が観たらこんな感じなのかも……って思えたりして、不思議な可笑しさがありました。   旅先で遭遇したフーリガンすらも「なんだかんだで良い人達」だったりして、最後まで明るく陽気に仕上げてある点も良い。  「アメリカでは違法」「旅先では合法」というドラッグ入りケーキや、幻覚を見る酒に挑戦する姿が描かれているのも、程好いドキドキ感がありましたね。  「俺達は違う大学に進むんだから、四人でツルめるチャンスはコレが最後かも知れない」  という台詞が象徴するように「仲間と一緒の旅」が強調されており、途中で失敗してもあまり落ち込まずに「皆でいれば何とかなるさ」とばかりに、前向きな姿勢のまま旅を続けていくのも、凄く好みでした。   そんな本作の欠点は何かと考えてみると……  割と根本的な部分に関する事なんだけど「主人公のスコットに対する違和感」ってのが大きいでしょうか。  いくら泥酔してたとはいえ、結果的に「男に迫られたら怒って罵倒するけど、美女と知った途端に態度を変えて会いに行こうとする」って姿が描かれてる訳で、どうも彼の恋路を応援する気になれないんです。  その後になって「見た目じゃなくて、中身が好き」的な事を言われても、全然説得力が無かったし……  ここは変に良い子ぶって「彼女の中身が好きなんだ」なんてフォローを入れたりせず「男だと思ってたけど、本当は美女だった。美女だから好きになった」って流れにした方が、スッキリした気持ちで観れた気がします。   でもまぁ、そんなスコットも、お調子者な悪友のクーパーも、基本的には「良い奴」じゃないかと感じさせる作風でしたし……  彼らに恋人が出来るハッピーエンドには、こちらまで嬉しくなっちゃいましたね。   観終わった後は、主人公達と「旅の思い出」を共有したような気持ちになれる。  彼らと、仲間になれたような気持ちになる。  良い映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-12-02 08:01:14)(良:1票)
113.  最凶女装計画 《ネタバレ》 
 明らかに「バッドボーイズ」(1995年)が元ネタであり、途中までは「最終絶叫計画」のようなパロディ映画かと思っていたのですが……  終わってみれば、しっかりとオリジナルの魅力を備えた映画でしたね。   刑事物のバディムービーとして考えても、女装ネタのコメディ映画として考えても、充分に楽しめる出来栄えでした。   前者に関しては「主人公達が喧嘩して仲直りし、絆が深まる」というお約束の魅力を描いているし、銃撃戦の際には、意外とシリアスで恰好良い雰囲気になったりもするんですよね。  この辺の「切り替えの上手さ」って、コメディタッチの刑事物では凄く重要ですし。  そこがしっかりしているというだけでも、もう拍手を送りたくなっちゃいます。   後者に関しても、女装ネタならではの可笑しみを感じる部分が色々あって、大いに満足。  「女装した主人公が男に迫られ、窮地に追い込まれる」っていうお約束ネタも、しっかり描いてあるし……  本物のウィルソン姉妹の方を「女装した男」だと思って取り調べする場面なんか、特に可笑しかったですね。  ここ、普通ならウィルソン姉妹が可哀想で笑えなくなりそうなんだけど、序盤にて彼女達の「嫌な女」っぷりを描いてたから、素直に楽しめちゃうんです。  この辺りのバランス感覚は、本当に見事でした。   女装して女の子達と仲良くしている内に、何時しか性別を越えた友情が生まれていく流れも、凄く好み。  最後に正体を明かした後も、彼らの友情はずっと続いていくって示すハッピーエンドであり、後味爽やかなんですよね。  彼らには性別以外にも、年齢やら人種やら、色んな壁があるはずなのに……  そんなの関係無いとばかりに「仲間」として笑い合う姿が、とても眩しく思えました。   一応、欠点も挙げておくなら、女装したマーカスに迫るラトレルが色々頑張ってて、憎めないキャラだったのに「結局は嫌な奴だった」ってオチになるのが、微妙に思えた事。  女装した二人が周りから「美女」と認識されてるのに違和感を覚えた事。  後は……女子トイレでの一幕とか、下品で笑えないネタも幾つかあった事くらいかな?  でも、こうして色々振り返ってみても「ダンス対決が面白かった」とか「喧嘩ばかりしてた同僚と、土壇場では熱いやり取り交わすのが良い」とか、長所の方が数多く浮かんできちゃいますね。   ウェイアンズ監督の代表作といえば、世間的には「最終絶叫計画」となるんだろうけど……  個人的には、こちらをオススメしたいです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-11-18 13:38:31)
114.  スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
 ホラー映画の「ファイナル・ガール」になりたい少女が、その願望を叶える為に「殺人鬼」になるという映画。   こうして文章にしてみると、非常に複雑なテーマを扱っているはずなのですが、それをサラッと分かり易く作ってあるのが見事ですね。  思えば初代の時点で主人公シドニーは「注目を浴びたくて嘘をついた」と周りに陰口を叩かれてるし、1&3の犯人も「生き残った被害者に成り済ます」という手口を用いているしで、スクリームシリーズに自然と馴染む「動機」と「トリック」なんです。  そしてなおかつ、犯人であるジルを「主人公シドニーが守るべき、お姫様ポジション」として描いておいたから「犯人の意外性」も高まってるという形。  スクリームの伝統である「共犯がいる」というトリックを活かし「殺人鬼から電話が掛かってくる場面」「襲われる場面」にて、ジルが被害者側にいる事が多い為、観客としても自然と彼女は犯人候補から外して考えちゃいますし、この辺りの描写は本当に上手かったと思います。   理想の「ファイナル・ガール」になる為、ジルが偽装工作する様も面白かったし、傷だらけで報道陣に囲まれ、幸せそうに微笑む姿も良かったですね。  ジルは悪役だし、母親まで殺してるような罪深い子なんだけど、ちゃんと感情移入出来るキャラクターに仕上がってたと思います。  そんなジルの夢破れた死に顔に、彼女をヒーローと称える報道が重なって終わるのも、実に皮肉が効いてて素敵。   そして、なんといっても主人公シドニーの描写が、抜群に良かったです。  「殺人鬼の相手なら任せて」とばかりに、経験を活かして適切な対応を取る様が、凄く恰好良い。  正直、前三作の彼女には全く魅力を感じなかったんですが、本作では大いに成長して「私こそがスクリームの主人公」という貫禄を得ていたように思います。   今の映画のルールで生き残るのは「処女」ではなく「同性愛者」だと語る場面や「冷蔵庫が閉まる度にドッキリ」などの台詞も面白い。  他にも、デューイの着メロが「ビバリーヒルズ・コップ」だったりして、映画オタクがニヤリとしちゃう小ネタが散りばめられているんですよね。  スクリームって「ホラー」や「スラッシャー」や「ミステリー」という以上に「オタク映画」だと思いますし、四作目になってもその芯がブレてなかった事にも、拍手を送りたいです。   とはいえ、良い伝統だけじゃなく悪い伝統も受け継いでおり、特に「シドニーを殺す前に、共犯者を刺し殺す不自然さ」まで1と同じってのは、如何なものかと思えましたが……  まぁ、そういうのも全部ひっくるめてスクリームなんだから、これはもう仕方無いですね。  「ほらっ、またシドニー殺すの忘れてるよ」って、優しくツッコんであげるのが正解なんだと思います。   あとは「前作のキンケイド刑事が出てこないのが寂しい」とか「ジグソウを好きと言ってた女の子が意味深に包丁を手にしていたけど、特に何事も無く殺されて拍子抜け」とか、不満点としてはそのくらいかな?   今回、スクリームシリーズを一気見する前は「1が一番面白く、それに次ぐのが4」という認識だったのですが、今は「4が一番面白い」って評価に変わっちゃいましたね。  十段階で評価する為、点数としては同じ「7点」って形になりましたけど、自分としては1より4の方が好み。   スクリーム2にて「続編はオリジナルを超えられない」という台詞がありましたが……  同じシリーズの続編である4がそれを否定してみせたんだから、実に痛快な話だと思います。  いずれ訪れるであろう「5」の公開も、今から楽しみです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-11-03 09:21:23)(良:1票)
115.  スクリーム(1996) 《ネタバレ》 
 2021年に鑑賞してみると「主演はドリューバリモアかと思ったのに、冒頭で殺されて吃驚」感が当時より高まってる気がしますね。   この「電話の向こうの殺人鬼に襲われる」導入部は秀逸であり、ウェス・クレイブン初期の秀作「鮮血の美学」に通じるような、陰鬱さと絶望感があったと思います。  此度再鑑賞してみて(ここだけクオリティ高過ぎて、浮いてるなぁ……)と感じちゃったくらい、見事な仕上がりでした。   作中で論理的な手掛かりが示された訳でもない為「犯人探しのミステリー」としては成立していないんじゃないかと思えますが……  それでも「犯人は二人組」「最初に犯人かと疑われた彼氏のビリーが、本当に犯人」ってのは意外性があって、良かったですね。  この辺りは、単なるスラッシャー映画の枠に留まらない魅力を感じます。  鑑賞後に「スクリームの犯人は誰か知ってる?」と周りに語りたくなっちゃいますし、本作が公開当時ヒットしたのも、大いに納得。  冒頭から「二つのドア、どっちにいるでしょう?」というクイズを出したり「ビリーは犯人ではない」と思わせるミスリードに貢献したりと「犯人が二人いる」事に、ちゃんと意味があるのも良かったです。   作中にて「ホラー映画の法則」を茶化す場面が挟まれているのも、特長の一つ。  「ヴァージンの特権」とか「すぐ戻るって台詞だけは言わない」とか、生き残るコツについて説明する件も面白かったけど、個人的に一番ツボだったのは「殺さないで」「続編にも出たい」と訴えてた女友達キャラが、本当に殺されちゃった場面ですね。  その後、殺人鬼達も「俺達は生き残って、続編を作ってやるんだ!」と言ってたのに死んじゃうし……  何とも皮肉で滑稽で、人死にが絡んでるのに、つい笑っちゃいました。   ホラー映画が嫌いなヴァージン少女のシドニーと、ホラー映画オタクな殺人鬼のビリーっていう主人公カップルの組み合わせも面白くって、真相を知った上で再見すると、序盤のやり取りが更に楽しめちゃう作りなのも良いですね。  ビリーは「エクソシスト」のテレビ放送版で、過激なシーンが省略されてる事に不満を示したりと、実は序盤からオタク的な一面を見せていたし、ビデオ店で働くランディに絡む場面では「主人公の彼氏」とは思えないくらいの「嫌な奴」っぷりを披露していたしで、その後の展開に自然に繋げてる辺りも上手い。  犯人の動機について「ホラー映画が原因じゃない」「両親が離婚したせい」「周りの期待がプレッシャーになったせい」とわざわざ語らせているのも、脚本家の「ホラー映画愛好家」としての譲れない一線のようなものが窺えて、面白かったです。   「怪しまれないように自分達も傷を負っておく」にしても、シドニーに止めを刺してからやるべきだろうに、勝手に自滅した犯人達が間抜け過ぎるとか、デューイとゲイルのロマンスなど、中途半端に終わった要素が多くて消化不良とか、不満点も色々あるんだけど……  まぁ、この映画の場合、作中でホラー映画を観て楽しんでる若者達同様、そういう部分にツッコミ入れつつ観るのが正しい作法なんでしょうね。  実際、誰かと一緒にコレ観た時は絶対「いや、先にシドニー殺せよ!」ってツッコんじゃいますし。  そういった諸々も計算して、意図的に「ツッコミ所」を用意した脚本だったのだとしたら、本当に見事だと思います。    あとは……「エルム街の悪夢」は1以外は最低と作中で言わせるのは、ちょっと大人げないって思えた事(ウェス・クレイヴン監督は初代「エルム街の悪夢」の監督&脚本担当)  それと「13日の金曜日」でジェイソンが出てくるのは二作目からってのは間違いでは?(一作目ラストの夢のシーンでも少年ジェイソンが出てくる)って事が気になったとか、そのくらいですね。   今回、スクリーム4まで一気に再見する予定なのですが、それによって「スクリームは1が一番面白い」っていう自分の固定観念が揺らぐかどうか、今から楽しみです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-11-03 08:37:04)(良:3票)
116.  レッド・ブロンクス 《ネタバレ》 
 配給側が「ジャッキー・チェンこそが世界最大のアクションスターであると、世界中の皆に教えてみせる」という気概を持ち、並々ならぬ熱意で宣伝したという一作。  その甲斐もあり、ジャッキーの悲願であったハリウッド進出を成功させた、記念すべき作品なのですが……   所謂「ジャッキー映画」の中では、際立った傑作というほどではないというのが、少し寂しいですね。  (他にも良い映画は一杯あるのに、これを観るまで全米はジャッキーの魅力に気付かなかったのか)って、つい思っちゃいます。   とはいえ、商業的に成功しない事には始まらないんだとばかりに「米国でウケる為のアレコレ」を映画に盛り込んでいる辺りは、結構微笑ましく、また興味深くもありましたね。  この辺りは、ジャッキーの「芸術家」としての拘りとは違った「プロフェッショナル」としての懐の広さを感じられます。   アジア人以外の俳優も多く起用し、対話の大部分を英語にしてる辺りなんかが、特に顕著。  自伝によると、ジャッキーも「できるだけ国際的な香港映画」を目指していたようで「これは香港映画である」という信念は崩さないまま、可能な限りの配慮を行ったのが窺えました。   映画の完成度は高いとは言えず(香港に恋人がいるって設定、必要だった?)とか(最後ホバークラフトを使わなきゃ黒幕を逮捕出来ないって、無理矢理過ぎない?)とか、色々ツッコミ所は多いんだけど……  自分としては、そういった粗の数々も含めて楽しめちゃいましたね。   「アジア人の主人公が、治安の悪いブロンクスで生活している内に、美女二人と良い仲になり、車椅子の少年と友達になったりする」ってストーリー展開も、非常に好み。  「主人公はカンフーの達人である」と分かる場面を序盤に挟んであったりして、ジャッキー・チェンという存在を知らない観客に対し、丁寧な作りになっている点も良いですね。  これって、一見すると何気無い場面だけど、実は「ハリウッドで成功する為には、絶対必要な描写」だったと思いますし。  商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが、こういう「目的の為に必要な事」をキチンと行ってる映画って、観ていて嬉しくなっちゃいます。   序盤、不良グループが好き勝手に暴れる件は陰鬱だけど、それだけにジャッキーが「お前らはクズだ!」と断言し、彼らを倒してみせる流れが痛快。  そこで悪い奴らを倒して「めでたし、めでたし」で終わらせず、彼らを改心させ友情が芽生えるって展開にした辺りも、ジャッキー映画らしい魅力があって好きですね。  欲を言えば、後半にその「和解」っぷりを活かし、彼らと共闘して巨悪を倒すような展開にしても良かったんじゃないかって思えるんですが……まぁ、それは贅沢な要望でしょうか。   終盤の、海から上陸して市街地を暴走するホバークラフトという展開に関しても、文句無しの迫力があって良いですね。  車に剣を添えて、擦れ違いざまにタイヤを切り裂くという「ホバークラフトの倒し方」も、恰好良くて好き。  本作が成功した理由としては、この場面も大きかったんじゃないかなって思えます。  つまり「ジャッキー・チェン特有のアクション」を求めていない観客でも満足出来ちゃうような「見せ場」が用意されている訳であり、それが客を呼ぶ一因になってくれたんじゃないかと。   それと、自分としてはスーパーの店主になったエレインってキャラが、凄くお気に入りなんですよね。  話の筋としては、ダニー少年の姉であるナンシーの方がヒロインっぽいんですが(エレインと結ばれて欲しいな)って、そう思えたくらい。  でも、ダニー少年も良い子なので、彼を喜ばせる為にはナンシーと結ばれた方が……とも思えるしで、そんな歪な三角関係が、妙に好きなんです。   ストーリー展開よりも「主人公周りの設定」「ヒロインや脇役」が魅力的っていう意味では、映画よりも、むしろ連続ドラマ向きの題材だったのかも知れませんね。  元々のプロットも「主人公は留学生で、スーパーマーケットで働いている」「様々な苦難を乗り越えて異国に馴染んでいき、周りの人々と友情を育んでいく」って形であり、一本で終わる映画よりも、何話も使えるドラマの方が面白くなりそうですし。  そうしたら、最終回にて香港に帰る主人公を、寂しそうに見送るダニー少年とか、向こうに恋人がいると理解しつつも諦めきれないヒロイン達とか、そんな展開に繋がったかもと考えたりするのが、何だか楽しい。   完成度も低く、粗も多いだけに、妄想で補う楽しみもあるという……  そんな一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-06-10 08:04:43)
117.  80デイズ 《ネタバレ》 
 「八十日間世界一周」をジャッキー主演で映画化したという、正に夢のような映画。   その分、ちょっとファンタジー色が強過ぎるというか、映画版「八十日間世界一周」(1956年)のリメイクと考えたら違和感が大きいけど、自分としては満足でしたね。  あくまでも、ジュール・ヴェルヌの小説を翻案した「ジャッキー映画」として楽しむべきなんだと思います(エンディングのNG集は無いけど)   物語の大オチ「日付変更線を越えたから期限に間に合った」は変えてないし、世界一周の旅を通して「金や名誉よりも大切な人を得る事が出来た」という、原作で一番大切な部分を、きちんと踏襲しているのも嬉しい。  随所にアクションも盛り込まれているし、急造飛行機以外にも「色んな機能を備えたステッキ」「車輪を付けた靴」など、ワクワクさせられるアイテムが揃ってるのも良かったです。  主人公格のフォッグを発明家キャラにした事に、ちゃんと意味があったと思います。   ゴッホやライト兄弟にウォン・フェイフォンなど、史実におけるビッグネームが登場する事と「俳優としてのビッグネーム」が登場する事をシンクロさせている作りも面白い。  この辺りは「さりげなくスターを出演させる」という1956年版の遊び心に通じるものがあるし、ただ真似をするだけでなく、一歩先に進んでみせた感もありますよね。  特に「ジャッキー・チェンとシュワルツェネッガーの共演」には胸躍るものがあって、本作が「夢の映画」である事を実感させてくれました。   万里の長城を徒歩で移動する場面なんかも、旅映画らしい切なさを感じられて好きだし、パスパルトゥーの故郷の描写も「懐かしき我が家に帰ってきた……」って感じがして、良かったですね。  敵と戦っている内に、自然とキャンパスに絵が完成しちゃう場面も可笑しくって、コメディ部分としては、ここが一番お気に入りかも。   そんな具合に、様々な長所が備わっている映画なんですが……  ・船を材料として提供した船長達が、その後どうなったかについて描かれていない。 ・「また腕が取れた」と笑いを取って終わるのは、ちょっと微妙。   といった具合に、終盤において短所が目立つのが残念ですね。  最後の最後で、テンションが下がって終わっちゃう形。  これって「終わり良ければ全て良し」の逆の現象であり、作品全体の印象も微妙なまま終わっちゃう訳だから、凄く勿体無い。   せっかく旅の途中までは楽しかったのだから、その勢いのままハッピーエンドまで駆け抜けて欲しかったものです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-04-15 17:19:01)
118.  幸せがおカネで買えるワケ 《ネタバレ》 
 「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者まで発生する陰鬱な展開に吃驚。   とはいえ、急転直下に作品の空気が変わる訳ではなく、少しずつ悲劇を予兆させるのが上手かったもので、違和感は無かったですね。  序盤にて (この家族、なんか変だぞ?)  と観客に思わせる描写も丁寧であり、すっかり映画の中に惹き込まれちゃいました。   「偽りの家族の中で、主人公のスティーヴだけは本当の家族になりたがっている」という設定も絶妙であり、自分としては大いに感情移入。  チームが崩壊しかけた時「家族に問題は付き物さ」と場を繕おうとするも「家族じゃないわよ」と、妻役のケイトに素っ気なくされる場面なんか、凄く切なかったですね。  単純に「ケイトを愛しているから、本当の夫婦になりたい」というだけでなく「皆で本当の家族になりたい」と願っているのが、絶妙なバランスだったと思います。  それだけに、好成績を認められて他のチームと組むよう上司に命じられても、それを拒否して「今の家族と一緒に頑張る事」を選ぶ場面が、凄く痛快。  スティーヴとケイトが、失恋した娘を慰め「家に帰ろう」と促す場面も (偽物なんかじゃなくて、立派な家族じゃないか……)  と思えて好きです。   終盤にて、隣人のラリーが自殺する場面もショッキングだったし、そこからスティーヴが「ご近所さん」に真相を告げる流れも、不思議なカタルシスがあって良かったんですが……  そこが最高潮で、その後に失速しちゃったというか、ラストの纏め方が強引だったのが残念ですね。   「スティーヴとケイトが結ばれ、前々から話してたアリゾナ行きを実現させる」って形なので、この二人にとってはハッピーエンドなんだけど (……で、息子と娘は置いてくの?)  って事が気になっちゃうんです。  息子と「父子のような抱擁を交わして」別れる場面は良かったんですが、その分だけ (娘とはロクに会話もしてないけど、寂しくないのか)  って疑問も湧いてくる。  他にも「同性愛者な息子の恋人ナオミ」についても放ったらかしで終わってるし、どうも風呂敷の畳み方が拙かった気がします。  エンドロールにて「まだまだ他にも宣伝家族は沢山いる」って示すのも、後味が悪くなっただけなんじゃないかと。   個人的には「夫婦」ではなく、四人揃って「家族」としてハッピーエンドを迎えて欲しかったですね。  総評としては「隠れた良作」って感じで、充分楽しめたんですが……  一抹の寂しさが残ってしまう映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-03-25 08:17:04)(良:1票)
119.  あなたは私の婿になる 《ネタバレ》 
 これ、好きですね。  「偽りの恋が、いつしか真実の愛へと変わっていく」という既視感満載なラブコメ物なのですが、適度なサプライズがあり、ちゃんと新鮮な魅力を味わえるんです。  その最たる例が「心臓発作で倒れる祖母」であり(これは彼女を死なせて盛り上げる展開か)と、観ていてまんまと騙されちゃいました。  それが「家族を仲直りさせる為の演技でした」と判明する訳だけど、全く嫌味が無いし「悲劇を回避出来た」「お陰で皆が仲良くなれた」という形の嘘なんだから、不快感が無いんですよね。  「観客を騙す映画」って沢山あるけれど、ここまで気持ち良い騙され方をした例は、ちょっと他に思いつかないくらい。   アンドリューの元カレが復縁を迫るのかと思いきや「このままマーガレットと別れても良いの?」と言い出す場面も、凄く良かったですね。  本当に脇役が良い人達ばかりだから、彼らに支えられる形で主人公二人が結ばれる流れが、観ていて心地良い。  そんな「サプライズ」が巧みな一方、序盤でヒロインのマーガレットが「泳げない」と言う伏線があったら、ちゃんと後に溺れそうになる場面を用意したりとか、観客の予想や期待を裏切らない構成になっているのも、お見事でした。   あとは、男性目線で観ると「美人な女上司の弱みを握り、言いなりにする」という邪な願望を満たす内容になっているし、女性目線で観ると「実家が金持ちの彼と結ばれる玉の輿展開」になっているしで、その辺の「男女どちらが観ても楽しめる」というバランスの良さも、絶妙でしたね。  孤独だったマーガレットが「家族の温もり」に触れ、アンドリューの家族を騙す事に耐えられなくなり、結婚式での告白に至る流れも丁寧に描かれており、説得力がありました。   そんな本作の不満点を述べるとしたら……  冒頭にて登場する「毎朝ラテを用意してくれる店員」が可愛くて、メインキャラかと思ったら違ってたのが残念とか、男性ストリッパーの場面は観ていてキツかったとか、精々そのくらいかな?   サンドラ・ブロック主演のラブコメ映画は色々ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  エンドロールの質問にて「婚約者は誰?」と問われ、嬉しそうに「アンドリュー」と答える姿も可愛らしいし、彼女の魅力が存分に味わえる一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-02-11 16:50:27)(良:2票)
120.  STAND BY ME ドラえもん 《ネタバレ》 
 コレさえ観ておけばドラえもんの基礎知識は身に付くという、有りそうで無かった一本ですね。  主人公のび太がドラえもんと出会い、友達になり、別れて、再び出会うまでを完璧に描き切っている。   「ドラえもんの事は知ってて当たり前」だからと、説明を排したドラ映画ばかりの中で、本作は極めて異質だし、初心者でも安心な作りになってるんです。  似たような例としては「ひみつ道具博物館」という傑作もありましたが、本作の方がより徹底して「ドラえもんとの出会いを、最初から描く」作りになってますからね。  国内だけでなく、海外でも歴代最高のヒットを記録したのは、こういった「ドラえもんを知らない人でも楽しめる」という、丁寧な作りが大きかったんじゃないでしょうか。   特に感心させられたのが「ドラえもんとは本来セワシの子分であり、いざとなったら電撃浴びせて機能停止させる存在に過ぎない」という原作の初期設定を踏まえた上で「ドラえもんはのび太の友達である」という結末に繋げてみせた事ですね。  しかも「謎の電撃ステッキ」「何時の間にか対等の関係になってる」という有耶無耶にされていた部分を「成し遂げプログラム」という形で分かり易く説明している。  その上で「何故か分からないけど未来に帰らなくちゃいけなくなった(初期設定では航時法が変わった為)」「何故か分からないけど現代に戻ってこれた」という部分にまで「成し遂げプログラムのせいで帰らなきゃいけない」「成し遂げプログラムが除去されたお陰で戻ってこれた」という形で、説得力ある展開に仕上げてみせたんだから、本当にお見事です。   そんな本作の中で、最も感動させられたのは「あえてドラえもんに会わない大人のび太」の場面。  「のび太が大人になっても、ノビスケが生まれたら再びドラと一緒に暮らす事になる」「今度は息子のノビスケがドラえもんの友達になる」っていう(そんなの知ってる奴が何人いるんだよ)ってレベルのマイナー設定まで把握した上で「ドラえもんは子供時代の友達」って事を描いてくれたのが伝わってきて、嬉しくって仕方無かったです。  思えば脚本担当でもある山崎監督は、デビュー作からドラえもん愛に満ちていた人ですし、そんなマニアックな設定のアレコレも、ちゃんと把握済みだったのでしょうね。   タケコプターやタイム風呂敷の描写など「恐竜2006」を参考にして、ちゃんと「今のドラえもんが好き」という層でも楽しめる形に仕上げてあるのも嬉しい。  本作に関しては「子供の頃はドラえもん好きだったけど、大人になってからは全然観ていない」って人の為に、徹底的に媚びた作風にする事も可能だったろうし、客を呼び込む為にはそれが一番簡単だったと思うんですよね。  所謂「大山ドラ世代」の声優や歌手をゲストとして呼んでも良いし、昔の主題歌やBGMを使っても良かったはず。  実際、ほぼ同時期に制作された実写版ドラCMなんかでは、これ見よがしに大山ドラ時代のBGMを使っていましたからね。  にも拘らず、本作はそういった真似を一切やらず、きちんと原作漫画や現行アニメ版に寄り添って作ってくれたんだから、なんて誠実なスタッフ達なんだと感心させられました。   他にも「ジャイスネが悪役のまま本編が終わるけど、NG集では皆楽しく映画作りしており、後味の悪さを残さない」とか「雪山のロマンスで何もせず棚ボタで結婚出来た大人のび太に、きちんと見せ場を用意してるのが素晴らしい」とか、褒め出すと止まらなくなっちゃう映画なんですが……  あえて言うなら「良い場面が多過ぎる」のが、本作の欠点と言えそうですね。  100分に満たない尺の中で、原作のエピソードを幾つもこなしているもんだから、どうも性急過ぎるというか「本来はもっと長い話なのを、総集編として短く纏めました」感は否めないんです。  インタビューからすると、八木監督も山崎監督も「自分達が作るドラえもん映画は、コレ一本きり」という覚悟で作ったようなので、アレもやりたいコレもやりたいという「ドラえもん好き心」を抑え切れず、暴走してしまい、全体の完成度には若干の陰りを残してしまった気がします。   ……とはいえ、それらを加味したとしても、充分に良い出来栄えだったと思いますね。  冒頭にて述べた通り、コレさえ観ておけば基礎知識が身に付いて、その他の「無数のドラ映画」を楽しめるようになるという意味でも、オススメの一本です。
[映画館(邦画)] 7点(2020-12-10 03:28:06)
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