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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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141.  アメリカン・パイ in ハレンチ課外授業<OV> 《ネタバレ》 
 「彼女をイケメンに取られた」という一言だけで、前作ヒロインとの絆を無かった事にされる導入部にガッカリ。   主人公エリックの父親も、相変わらず嫌な奴のままフェードアウトしちゃうし……せっかく「エリックが主人公の物語」を二作続けてやった形なのに、それを全然活かせてないのが勿体無いですよね。  「ヒロインと復縁する」とか「父親が改心する」とか「カリフォルニアに行ったライアンと再会し、友情は不滅だと語る」とか、続編だからこそ出来るオイシイ展開を全部放り投げた感じ。   それでも、大好きなジムの父さえいてくれたら問題無いだろうと思っていたんですが……  遂にその神話も崩れたというか、本作に関してはジムの父にすら魅力を感じられず仕舞いで、参っちゃいましたね。  何時ものように優しいアドバイスをしてくれるのかと思いきや「(私なら)オタクどもを叩き潰してやる」なんて物騒な事を言い出すもんだから、これにはもうホント、がっかりです。  この辺、めんどくさいファン特有の反応になっちゃうんですが(ジムの父は、そういうキャラじゃないだろう)って、つい思っちゃいました。  一応、敵役のエドガーに優しい声をかける場面もあったんだけど、それも結局は「ありがた迷惑」で終わっちゃうし……こんな扱いなら、出演してない方が良かったかもと思えたくらいです。   「地獄の黙示録」や「ディア・ハンター」のパロディにもノリ切れなかったし、射精をスローモーションで表現するとか、ゲロのぶっかけ合いとか、悪趣味な描写が散見される点もキツい。  話の大筋も「敵対していた友愛会に勝利し、ハッピーエンド」ってだけなので、意外性も何も無くて、エンドロールが流れた際には(えっ、これで終わり?)と戸惑ったくらいでしたね。  前作までは保持されていた「青春映画としての切なさ」が無くなってるのも寂しいし……正直、本作を褒めるのは難しいです。   それでも、あえて良かった点を探すとしたら「大学の寮生活ならではの楽しさ」は伝わってきたとか、その辺が挙げられるかな?  美女のステイシーが股間でビールの栓を抜くのも面白かったし、ブラ外し対決の件も、結構好きです。   あと、本作はジム父の台詞通り「オタク男子」が敵役となっており、これは新鮮に感じましたね。  かつては迫害される立場だったのに「将来金持ちになるのはオタクだから」という理由で、エリートのオタク男子がモテるようになっている。  劇中の台詞通り「時代が変わった」訳だけど、オタク男子が迫害される時代を描いた「ナーズの復讐」(1984年)を踏まえて考えると、かなり感慨深いです。  この手の映画で敵役(=恵まれた上流階級)になれるくらい、オタク男子に対する認識も変わったという訳ですからね。  似たような例としては「21ジャンプストリート」(2012年)などもありますが、本作の方が五年も先に発表されていますし、そう考えると価値が高い一本なのかも。   そんなアレコレも含め、基本的には「楽しい映画」「ハッピーエンドの映画」として作ってありますし……  「アメリカン・パイシリーズならではの魅力」を求めたりせず、これ単品として鑑賞する分には、そこそこイケる品なんじゃないかな、と思います。
[DVD(吹替)] 5点(2020-05-16 08:49:50)
142.  アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会<OV> 《ネタバレ》 
 主人公が自慰を家族に見られる場面から始まるのは「原点回帰」って感じがして良かったんですが……  そのショックで祖母が死んじゃう形なので、全然笑えないし、ノリ切れなかったんですよね。  思えば、その躓きが最後まで尾を引いて、本作を残念な印象にしてしまった気がします。   その他にも「目に見えて画面が安っぽい」とか「主人公エリックの父が嫌な奴のまま終わるので、スッキリしない」とか、色々と欠点が多いんです。  前作「バンド合宿」の分を取り戻そうとするかのようにパーティー描写が濃厚なのも、個人的には嬉しかったけど……ちょっと下品過ぎて、ウンザリしちゃう人もいるかも。   とはいえ、自分としてはやはりアメリカン・パイシリーズが好きなもので、評価も甘くなっちゃうんですよね。  「主人公とヒロインが、最初から恋人同士である」って設定にして、過去作との違いも打ち出しているし、大学生達が全裸で校内をマラソンするという「ネイキッド・マイル」って発想も面白いしで、どうも嫌いになれない。   そして何といっても、ジムの父親が出演しているのが嬉しくって……「お前はジムの父さえ出ていれば満足なんだろ」って、自分にツッコミを入れたくなったくらい。  そんなジムの父が、大学時代には「歴代最高のハジケ野郎」「ネイキッド・マイルの創始者」であったと明かされる辺りなんかも、色々と妄想をかき立てるものがあって、良かったと思います。   「走って揺れる巨乳を、スローモーションで映す場面」には正直興奮しちゃいましたし、そんなエロティック要素だけでなく、青春映画としての要素も、ちゃんと盛り込んであるんですよね。  親戚のドワイトが「家名に恥じぬ生き方をするのは大変だ」と本音を漏らす辺りは、思わずしんみりしちゃったし、それがラストシーンにて「スティフラー」と呼ばれ「エリックで良い」と応える主人公の姿にも、きちんと繋がっている。  家名に囚われたりせず、前向きに、自由に生きる事を決意した主人公って感じがして、爽やかで良かったです。  美女のブランディ相手に、童貞喪失出来そうになったのに「好きな子がいる」と誘いを断ってみせる場面も(良くぞ言った!)って気持ちになれましたし、良い場面だったんじゃないかと。   「低予算である」「欠点も多い」という事は重々承知だし、誉め言葉に負けないくらい、悪口も浮かんできそうな作りではあるんですが……  「映画としてチャーミングな部分」も、ちゃんと備え持っている。  そんな、憎めない一品だったと思います。 
[DVD(吹替)] 6点(2020-05-16 08:48:08)
143.  アメリカン・パイ in バンド合宿<OV> 《ネタバレ》 
 アメリカン・パイシリーズの四作目にして、主人公達も世代交代を果たした、仕切り直しの一作目。  8でジム達が復帰するまでの4~7に関しては、外伝色の強い内容だし、予算面でも見劣りする感じなのですが……  意外や意外、この4に関しては、前三作に決して見劣りしない出来栄えなのです。   1や2では子供だった「スティフラーの弟」ことマットが成長し、立派に主人公を務めているというのも、シリーズのファンとしては嬉しかったですね。  まるで親戚のおじさんのような目線で(大きくなったなぁ……)と感じ、微笑ましい気持ちになっちゃいました。   元々アメリカン・パイシリーズの魅力って、そういう微笑ましさというか「主人公の若者達に対する、優しい眼差し」にあると思うんですよね。  その象徴がジムの父親であり、たとえ世代交代しようと彼だけはレギュラーとして出演させ続ける事にしたのは、もう大正解だったんじゃないかと。  実の息子相手でなくても、悩み多き若者には優しく接し「ピントがズレているけど有益」という独特なアドバイスをしてくれる姿が、本当に良かったです。   その一方で、兄のスティフラーに関しては「みんな彼を嫌ってた」という発言が飛び出し、ちょっと可哀想になるんですが……  実際、彼が「良い奴」になったのは3以降の話だから、高校時代はジム達から嫌われてたってのも、間違いではないんですよね。  上述のジム父といい、学校のカウンセラーになってるシャーマンといい、過去キャラの扱いに関しては、概ね良かったんじゃないかと思います。   それと、本作は主演のダッド・ヒルゲンブリンクも、良い味を出していましたね。  主人公のマットって「如何にも頭の軽い体育会系」に思わせておいて「実は真面目な好青年であり、兄の真似をして悪ぶってるだけ」と途中で明かされるという、非常に難しい役どころなのですが、見事に演じ切っている。  これに関しては、彼個人の演技力だけじゃなく、演出というか、監督の構成も良かった気がしますね。  最初の内こそ(なんか……ショーン・ウィリアム・スコットに比べると、無理して「スティフラー」を演じている感じだなぁ)と違和感を抱かせていたのに、実はそれが伏線であり「本当に、無理して演じていただけ」と分かる形になっているんだから、もう脱帽です。  そういった仕掛けが施されている為、主人公のキャラクター性にも説得力があったし、彼が改心して「良い奴」になる展開も、自然と応援する気持ちになれたんですよね。  もしかしたら、作り手にそんな意図は無く、偶々そういう形になっただけなのかも知れませんが……  もしそうだとしたら、かなり幸運な偶然だったんじゃないかと。   バンド合宿にて同室になった眼鏡少年と、少しずつ仲良くなっていく様も微笑ましかったし、ヒロインのエリスとの関係性も良かったですね。  エリスに関しては、これまでのシリーズには無かった「幼馴染」型のヒロインであり、新鮮な魅力を放っていたと思います。   そんなエリスと一緒に寝そべって、雲を眺める場面。  少しずつバンド仲間と打ち解けていた中で、つい強がって「体育会系のスティフラー」を演じてしまう場面。  エッチな盗撮映像なんかより、仲間達と過ごした時間の方が、ずっと大切だったと気が付く場面。  どれも忘れ難い味があり、本作を良質な青春映画に仕上げていたと思います。  最後は、しっかり演奏シーンで盛り上げて、ヒロインと結ばれるキスで終わるのも、文句無し。   この後、シリーズは更なる世代交代を重ねつつ続いていく訳ですが……  (マットやエリス達の物語も、もっと見たかったな)と思えるような、そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:46:11)
144.  アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦 《ネタバレ》 
 ラブコメというのは基本、主人公とヒロインが結ばれて「めでたし、めでたし」で終わるものだから、そんなラブコメのその後、二人が結ばれた後の結婚式まで描いた本作は、とても貴重だと思います。   前二作を鑑賞済みの身としては、ジムとミッシェルに思い入れたっぷりなもので、そんな二人が結婚するというだけでも、感慨深いものがありましたね。  アメリカン・パイシリーズでは「前作まで付き合っていたカップルが、別れてしまっている」というパターンも珍しくないだけに、シリーズ中で一番好きなカップルの二人が結婚してくれた事が、もう小躍りしたくなるくらいに嬉しい。  結果的に「1で二人が出会い、初体験」「2でカップル成立」「3で結婚式」という流れになった訳で、ここまで丁寧に結ばれる過程が描かれたカップルって、映画史においても稀な例となるんじゃないでしょうか。    本作においてはシリーズ恒例の「パーティー描写」が「独身さよならパーティー」となっている訳だけど、ここの件も凄く面白い。  特に、ゲストのストリッパー達がメイドと婦警のコスプレをしていた辺り(米国だろうと日本だろうと、男の好みなんて大して変わらないんだな……)って思えて、興味深いものがありましたね。  そんな二人が花嫁の両親に見つかってしまい「本物のメイドさん」「本物の婦警さん」と言って誤魔化そうとする流れも秀逸であり、コント的な魅力があって楽しかったです。   出演者達に関しては、これまで脇役だったスティフラーが主役格となっているのが嬉しい一方、オズをはじめとした面々が多数欠席しているのが寂しいんですが……  まぁ、それに関してはカメラに写っていなかっただけで、本当は彼らも結婚式に招待され、二人を祝福していたんだと思いたいですね(「結婚式に行けなかった」と8で明言されているオズも、ビデオメッセージか何かは送ったはず)   ジムの父親も、相変わらず魅力たっぷりであり「困った時は何時も父が助けてくれた」というジムの言葉を聞いて、嬉しそうにする時の表情なんか、もう最高。  (本当に息子想いの、良い父親だよなぁ……)って思えて、微笑ましくて仕方無かったです。   「チョコ」の件は流石に引いちゃったとか、ダンス対決を見せられた際は(えっ、これってそういう映画だったの?)と戸惑ったとか、欠点と呼べそうな部分も色々あるんだけど……  シリーズに共通する「登場人物に対する、作り手の優しさ」「下品なギャグだけでなく、真面目な感動もあるバランス」が、しっかり踏襲されていたので、決定的な違和感にまでは至りませんでしたね。  「真面目な感動」に関しては、ジムが仲間達に感謝を述べる場面が顕著であり「トラブルが起きても何とかなったのは、何時も皆が助けてくれたからだ」「ありがとう」という言葉には、本当にグッと来ちゃいました。  実際に、前二作にて「何とかなった」のを見守ってきたからこその感動があり、シリーズ物の強みを存分に活かした台詞だったと思います。   二度ある事は三度あるとばかりに、最後はスティフラーのママが登場して〆るのも最高。  結果的には、この後に五本も続編が作られている訳ですが、作り手としても一旦はコレで完結という事を意識した内容だったんじゃないか……って気がしましたね。  そういう意味では「三部作」の最後を飾る品として、見事な出来栄えだったんじゃないかと。   「シリーズに興味はあるけど、流石に八本も観るのは大変」って人も、とりあえず3までは観て欲しいなと思える、そんな節目の一本でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:42:12)(良:1票)
145.  アメリカン・サマー・ストーリー 《ネタバレ》 
   初代では自慰の現場を両親に見られたのに対し、本作では女性と本番真っ最中な姿を見られてしまうっていう導入部が凄いですね。  こういう形で「前作よりパワーアップした事」を伝えてくれちゃう映画って、ちょっと他には思いつかないです。   そんな下ネタ部分だけではなく、青春映画としてもしっかりパワーアップしており「夏休みの楽しさ」を存分に感じられる内容になっているのが嬉しい。  前作で宙ぶらりんだったジムとミッシェルの関係に、きちっと決着が付いている点も良いですね。  「主人公の恋路を応援してくれる女友達」枠が好きな自分としては、実に好みな展開であり「憧れのマドンナ」枠のナディアではなく、ミッシェルと結ばれると分かった時には、思わずガッツポーズ取っちゃったくらい。  二人の関係性という意味では、前作からの繋げ方が強引だし、初見の際には(ミッシェルって、こんなに良い子だったの?)と戸惑う気持ちもあったりしたんですが……  何度目かの鑑賞となった今回は、そんな違和感も消え去り、素直に祝福する事が出来ました。   愛する彼女が出来たお陰で、すっかり真面目になったオズの変貌っぷりも面白かったし、前作にて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語っていたケビンが、高校時代の思い出に囚われる事から脱して、大人へと成長してみせる流れも良い。  アメリカン・パイシリーズって、基本的には能天気なコメディなんだけど、青春ドラマとしても良質なんだって事を、オズやケビンが証明してくれた気がしますね。  ケビンを励まし、夕暮れの中、主人公四人組のシルエットが並んで歩く場面にも、本当にグッと来ちゃいました。    そんな主人公達だけでなく、振られたナディアに、憎まれ役のシャーマンなど、脇役陣にも優しい眼差しが注がれており、それぞれを幸せな結末に導いてくれるのも、本作の長所ですよね。  シリーズ通してのMVPと呼べそうな「ジムの父」も、存分に存在感を発揮しており「息子想いだが、どこかズレてる」感じが、面白くって仕方無かったです。  病院でのやり取りには笑わせてもらったし、その後、気まずい思いをしているジムに対し「お前は自慢の息子だ」と優しく伝える姿なんかも、凄く好き。  笑いと感動の緩急があって、二つの要素が、互いを引き立て合う効果があったと思います。   賑やかなパーティーが終わり、これで「めでたし、めでたし」かと思われたところで、スティフラーのママが颯爽と登場して〆てくれるのも、お約束な魅力があって良いですね。  (そう来なくっちゃ!)とテンション上がったまま、笑顔のままで、エンドロールを眺める事が出来ました。   学生時代を卒業し、大人になった後も、夏が来る度に観返したくなる。  クライマックスとなる告白シーンだけでなく、皆で別荘に向かう場面や、だらだらとトランプ遊びしたりする場面を、もう一度観たくなる。  理想の「夏休み映画」と呼べそうな、良い映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2020-05-16 08:34:52)(良:1票)
146.  アメリカン・パイ 《ネタバレ》 
 冒頭、主人公のジムが自慰してる場面から始まる訳ですが、そこで脱落しちゃう人には時間を取らせなくて済むし、そこで耐えられた人には概ね楽しい時間を提供してくれるしで、とっても親切な映画ですね。  最初にインパクトのある映像を用意して、観客を惹き付けると同時に「篩に掛ける」効果もあったという訳で、上手いやり方だと思います。   仲良し四人組が「プロムまでの三週間で、童貞卒業する事」を誓うところから物語が動き出し、そこから群像劇というか、オムニバス的な魅力を持った内容となるのも良い。  コーラス部に入ったり、噂を利用したり、学校に代々伝わる「性書」に頼ったりと、それぞれのやり方で頑張る様が、観ていて楽しいんですよね。  結果的に、四人中三人が童貞卒業出来たので達成感があるし、唯一童貞のままなオズも「初体験の思い出なんかより、ずっと大切なものを手に入れた」という形で、一番幸せそうに描かれているくらいなので、観ているこっちまで嬉しくなっちゃう。  似たような青春映画としては「グローイング・アップ」(1978年)という先例がありましたが、あちらが堕胎などの重いテーマも匂わせていたのに比べると、本作は徹底的に明るく「健全なエロティック青春ドラマ」って感じに仕上げており、それが独自の魅力に繋がったんじゃないかな、と思います。   性に大らかなジムの父親に、愛嬌たっぷりなスティフラーと、脇役が魅力的な点も素晴らしい。  この手の青春映画だと、父親はとことん地味なまま終わるし、スティフラーのような「ヤリまくりの体育会系」は単なる憎まれ役で終わるってのが、お約束になっていますからね。  それだけに、本作には特別感があるし、印象にも残り易い。  後の外伝でも「ジムの父親」「スティフラーの血縁者」が名物キャラとなっているくらいだし、本作が人気シリーズになれたのは、この二人の力が大きかった気がします。   スティフラーの母親や、幼い弟もキュートな存在であり、特に前者が主人公の一人であるフィンチと結ばれる場面なんかは、凄く好きですね。  「友人の母親と結ばれる」っていうのは、男の浪漫ですし、たとえコメディタッチでも興奮を誘うものがある。  そこで流れる曲が「ミセス・ロビンソン」っていうのも、ベタだけど嬉しくなっちゃう選曲でした。   その一方で、後にジムと結ばれるミッシェルは出番が少なく、単なるヤリマン女みたいな描かれ方だったのは……ちょっと、残念かも。  本作を観た限りでは、彼女が将来的にジムと結婚する事になるだなんて、全然予測出来ない感じなんですよね。  自分は「アメリカン・パイ」シリーズは概ね好きなんだけど、初代が一番の傑作とは思えない理由としては、この「ミッシェルの扱いが中途半端」って点が挙げられそうなくらいです。  あとは「女性の裸をオカズに、女性が自慰する場面」があるんだけど、それがさも当然のように描かれてるのが気になったとか、盗撮されたナディアへのフォローが弱いとか……欠点と呼べそうなのは、それくらいかな?   皆で祝杯を挙げるラストシーンにて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語る台詞があるのも、今となっては興味深いですね。  実際には、映画はココで終わらず、その後の主人公達の「夏休み」「結婚式」「同騒会」も続編で描かれている訳ですし。  少なくとも、シリーズ全作を鑑賞済みの自分としては、彼らにとって「一番楽しい時間」とは「高校時代」ではなく、後に描かれた日々の方じゃないかと思えたので、興味がおありの方は、是非続編とセットで楽しまれて欲しいです。 
[DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:28:53)
147.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
 これ、話の根幹となるサスペンス部分よりも「他人の生活を覗き見する」という枝葉の部分の方が、よっぽど面白い映画ですよね。   なんせ前者に関しては「隣人が殺人犯じゃないかと疑ったら、本当にそうだった」というだけなので、今観ると新鮮味が無いというか、予定調和過ぎて楽しめないってところがあるんです。  でも、後者に関しては今でも斬新だし、普遍的な魅力があると思います。   自分が特に好きなのは「ベランダに布団を敷いて、仲良く眠るカップル」の描写ですね。  このベランダがまた、本当に布団を敷くのにピッタリなサイズというか、絶妙な手狭さで(良いなぁ……このベランダで、布団敷いて眠れたら楽しいだろうな)って、そんな風に思えちゃうんです。   飼い犬を籠に乗せ、それをエレベータのように地面に下ろす描写も、凄くミニチュア的な魅力があって好き。  もし、自分に模型作りの腕前があったら、きっとこの「裏窓の世界」を再現していたんじゃないかって気がします。   第二のメインストーリーと呼べそうな「孤独な女性」の描写も、凄く良いですよね。  殺人犯に関しては(どうせ逮捕されて終わりだろうな)と達観して観ていられたけれど、彼女に関しては本当にどうなるか読めなくて、自殺エンドも有り得るのではと思えただけに、作曲家の男性と結ばれ、幸せな結末を迎えてくれたのが、本当に嬉しかったです。  ラストシーンに関しては、バレエダンサーのトルソ女史も恋人と再会出来て、全体的にハッピーエンド色が強めな中「夫を詰る妻」という、新たな波乱を予感させる一コマも挟んでいるのが、ヒッチコックらしいシニカルさで、クスッとさせられましたね。  もしや、些細な口喧嘩から第二の殺人に発展する可能性もあるのでは……と思えるし、主人公が窓の外に興味を失くした後も、自分としては、もっともっと「裏窓の世界」を眺めていたくなっちゃいました。   それと、本作は細かい部分が丁寧に作られている点も、忘れちゃいけない魅力ですよね。  「窓を開けっ放しのままで犯行に及ぶ訳が無い」とヒロインや刑事に言わせて、主人公の話を中々信じてもらえない理由にしている辺りなんて、特に上手い。  この映画の仕組み上、どうしても「犯人は何故か窓を開けたままにしている」っていう不自然さを押し通さなきゃいけない訳で、それについて全く言及しないのではなく、むしろ率先してネタにして「だから主人公は信用してもらえないのだ」という形で活用してみせたのは、本当に見事だと思います。   裏窓からの視点に固定されている為、さながら舞台を眺めているような趣があるのも、特別な映画って感じがして楽しい。  女性が飼い犬の死を嘆き「ここで誰からも好かれてたのは、この子だけ」「だからなの? 妬ましいから殺したの?」と訴える様も、如何にも舞台劇といった感じでしたよね。  この辺りは、ヒッチコックも意図的に舞台っぽい物言いにさせたのかな、と思えました。   わざとらしいBGMを流さず「近所の作曲家の演奏が聴こえてくる」って演出にしているのも上品だし、視点が固定されているがゆえの「一方的に覗き続けていた相手と、目が合ってしまう」場面の衝撃も、実に良かったです。   そんな本作の短所はといえば……  肝心の主人公カップルには魅力を感じなかった事。  犯人と対決するクライマックスが、全然盛り上がらなかった事。  この二点が挙げられるでしょうか。   こうして書くと(いや、それって重大過ぎる欠点でしょ)(主人公達に魅力が無くて、クライマックスが盛り上がらない映画って、本当に面白いの?)って、我ながら不思議に思えてくるんですが、それでも間違いなく面白いし、傑作なんですよねコレ。  幹は細く頼りなかったとしても、枝葉が豊かに茂っていて、美しい樹木として成立している感じ。   鑑賞後も「裏窓から見える、小さな世界」が懐かしく思えて、何度でも再見したくなるような……  そんな、愛らしい映画でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-04-27 08:01:51)(良:2票)
148.  ディスタービア 《ネタバレ》 
 2020年の春。  自宅待機しながら観るにはピッタリの映画じゃないかと思ったので、久々に再鑑賞。   言わずと知れた名作「裏窓」の系譜の品なのですが、主演がシャイア・ラブーフというだけでも、一気に現代的な魅力が出るから凄いですよね。  良い奴過ぎず、嫌な奴過ぎず。  二枚目過ぎず、不細工過ぎずって感じで、等身大で感情移入しやすい若者を、今回も好演していたと思います。   ただ、内容については……  肝心の「裏窓」要素が微妙というか、なんていうか(これなら「裏窓」をなぞらなくても良かったじゃん)って感じなんですよね。  「ずっと覗き見していた近所の美少女と、紆余曲折の末に結ばれる」という展開も、男に都合良過ぎで説得力を感じないし、女性がコレを観て、ときめくとも思えなかったです。  序盤にあった「父親の死」も意味が無くて、作中で「悲しみを乗り越え、成長する主人公」に繋がる事も無かったし……  「因縁のある警官」は全く活躍せずに退場するし「家から30m離れたら警報が鳴る装置」も犯人との対決で何の意味も持たなかったし……  色んな要素をアレコレ詰め込んだは良いけど、それらを活かしきれないまま「元ネタの『裏窓』と同じように犯人を退治して、めでたしめでたし」で終わらせているので、凄く中途半端なんですよね。  正直、作品の完成度という意味では、かなり低いんじゃないかと。   そんな具合に、短所を挙げだすと止まらなくなるような品なのですが……  好きか嫌いかで言うと、何故か「好きな映画」になるんですよね、これ。  いやホント、自分でも不思議。   一番の長所を挙げようとしても「主人公三人組が、張り込みごっこをする様が楽しそう」とか、そのくらいになっちゃうレベルなのに、何か好きなんです。  理由を考えてみるに「ヒロイン、男友達、母親と、死んで欲しくないと思えるキャラが全員無事に生き残る事」「血生臭い描写が少なくて、安心して観ていられる事」が大きいのかな?  あとは、音楽の使い方が良いとか、カメラワークもベタではあるけど、お約束を押さえてる(冷蔵庫のドアを閉めたら、それまで見えなかった人影がカメラに映り、主人公も驚く)とか、その辺が良かったのかも。  こういう細かい良さが色々あったので、上述の欠点についても、観ている間はそこまで気にならなかったです。   かつての自分もそうでしたが「血生臭いホラー物が苦手な青少年」に、適度な怖さとスリルを与える映画としては、合格ラインに達しているんじゃないかな……と、そんな風に思えましたね。  「自宅監禁は楽そうだけど、ストレスでおかしくなる人も結構多いの」って台詞が劇中にありましたが、少なくともこういう映画を楽しめている内は、おかしくなる心配をしないで済みそうです。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-27 07:41:39)
149.  ハングオーバー!!! 最後の反省会 《ネタバレ》 
 三部作の最後は、完全にアランが主人公。   その分、アランの魅力も堪能出来る内容なら良かったのですが……  むしろ、その「嫌な奴」っぷりが前二作より強まってるくらいで、本当にもう「何でだよ!」とツッコみたくなっちゃいましたね。   これ、作り手としては「愛嬌のある、憎めないアラン」として魅力的に描いてるつもりなんでしょうけど、自分は全然そうは思えなくて、辛かったです。  息子のアランに怒り狂って死んじゃったパパも可哀想だし、そんなパパの最後の言葉まで偽って、母親に迷惑かけながらニート生活を続ける気満々な辺りとか、流石に呆れちゃいます。  フィル達には懐いてるけど、母親や女中への態度は悪いって点も(可愛い奴だ)とは全然思えなくて(人として最低)(周りに世話してもらって生きてるんだから、せめて周りに優しくしようよ)と、嫌悪感しか湧いてこなかったです。   終盤「キャシーという恋人が出来る」「悪友のチャウに別れを告げる」って形で、アランなりに成長した事が描かれているんだけど、それに関してもノリ切れなかったんですよね。  キャシーと意気投合したキッカケの一つが「母親に対する悪口」ってのも引いちゃうし、チャウに関しては(いやいや、アランが嫌な奴なのって別にチャウのせいじゃないでしょ?)と思えちゃうしで、全然マイナスが挽回出来てなかったと思います。   そんな訳で「主人公のアランに魅力を感じない」という、大きなハンデを背負って鑑賞した本作なのですが……  意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。  といっても、1ほどではなくて、2と同じくらいの面白さって感じなんですが、それでも(結構面白いじゃん)と、好意的な印象が残りました。   まず、2が「1の焼き直し過ぎて、2独自の良さが殆ど無いから良さを書けない」って内容だったのに対し、3には間違い無く「本作独自の良さ」が沢山あるってのがポイント高い。  それはつまり「1や2とは違う内容」「ハングオーバーシリーズである必要が無い」って事でもあるんですが、自分としてはそれで正解だったと思いますね。  感想を書く立場としても、3の方がずっと書き易いし、書いていて楽しいです。   冒頭、チャウの脱獄から物語が始まるっていうのも、刑務所もの(&脱獄もの)が好きな身としては興奮しちゃったし、そんなチャウが「第四の主人公格」として活躍しまくっているのも良い。  これは2にあった欠点「メインとなるのが前作と同じ三人組で、新鮮味が無い」を、見事に打ち消す効果があったと思います。   皆で力を合わせ、豪邸に忍び込む件も面白かったし「実はチャウの金塊ではなく、マーシャルの金塊を盗む手伝いをさせられていた」という、どんでん返しも良かったですね。  これは1や2には備わってなかった面白さであり、それだけでも(3を観て良かった)と思えました。   それでいて、後半には再びベガスに戻ったり、ジェイドが再登場したりと、1からの観客に対するファンサービスが、しっかり行われている点も良い。  今回は三部作を続けて鑑賞する形を取った為、1では赤ん坊だったジェイドの息子が成長してる事にも、何だかグッと来ちゃいましたね。   それと同じく、1では端役に過ぎなかったチャウが、立派なメインキャラに成長している事も、これまた感慨深い。  自分としては、アランよりもむしろチャウの方が魅力的なキャラなんじゃないか、と思えたくらいでしたね。  悪人だけど、彼なりに仲間は大切に思っているって事が伝わってきましたし、金塊を独り占めした後に警報を鳴らす時の、意味深な表情や仕草なんかも(アラン達を警察に保護させようとした、チャウなりの優しさでは?)と思えて、印象深いです。   最後には、しっかりチャウがトランクに閉じ込められて、そこから解放され、また馬鹿騒ぎのパーティーをやって終わりというのも、実に「ハングオーバー」らしくて好き。  映画の面白さという意味で考えると、点数では2と同じになっちゃうんですが……  印象としては、ずっと好ましい、良い完結編だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-16 18:07:52)
150.  ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える 《ネタバレ》 
 三部作の真ん中に位置する品なのですが、初代の焼き直し感の強い内容なのが残念でしたね。   逆に考えると「1を好きだった人なら問題無く楽しめる続編」なのですが、どうもマンネリっぷりを強く感じてしまいました。  理由の一端としては、主人公グループが「フィル、スチュ、アラン」の三人組で、前作と全く同じ顔触れだったのが痛いんじゃないかと。  ここは三人の中の誰かが行方不明になって、新キャラの天才少年テディが捜索側に回るか、あるいはダグも一緒に行動する形にしても良かったんじゃないかと思いますね。  作り手側としては「イケメン主人公のフィル」「頼りないけど知性派で、真相を解く探偵役のスチュ」「トラブルメーカーのアラン」の三人組が、バランスとして完璧という自負ゆえに、前作と全く同じ布陣にしたのでしょうが、流石に変化が無さ過ぎた気がします。   そもそも、スチュが結婚する相手がジェイドじゃなく、新顔のローレンって時点で(えっ、何で?)と思えてしまって、物語に入りきれなかったんですよね。  舞台をタイにする以上、仕方無かったのかも知れませんが、自分としては「タイが舞台である事」に必然性を感じなかったし、アメリカの田舎町かどこかでも良かったんじゃないかと思えたくらい。  スチュとローレンパパとの和解も無理矢理感があったので、もう少し自然な感じに仕上げて欲しかったです。   あとは、アランの嫌な奴っぷりが明らかにアップしている点もキツい。  両親に対して嫌味な態度を取る場面とか「俺は専業ニートなんだ」と偉そうにしている場面とか、本当ゲンナリしちゃったんですよね。  そんな描写が序盤にあった以上、改心して「これからは両親を大事にする」「ちゃんと働き出す」って結末になるんだろうなと思ったのに、それも無し。  前作の時点では、ここまで酷い奴じゃなかったと思いますし、アランが好きだった自分としては、かなり寂しかったです。   何だか欠点ばかりを書いちゃいましたが、それというのも、本作の良い部分って「答え合わせが、盲点を突かれた感じで気持ち良い」とか「エンドロールで明かされるパーティーの光景が楽しそう」とか、前作にあったのと同じ良さだったりするので、改めて本作の感想として書くのが、ちょっと難しいんですよね。  それでも、あえて本作独自の長所を挙げるなら……  「マイク・タイソンやチャウの再登場が嬉しい」「テディが指を失ったのは可哀想だけど、実は自業自得だったと分かり、思わず笑っちゃった」とか、そのくらいになりそう。   総合すると「それなりに楽しめた」「続編としては、そこまで悪くない」って感じになりますし、点数を付けるなら、決して低くはならないんですが……  自分としては、物足りない印象が残る一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-16 17:48:41)(良:1票)
151.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
 既に三部作を鑑賞済みで再見した為 (1は意外と出だしがシリアスで、サスペンス物にも思えるような作りだ) (この頃はダグも主人公の一人だし、チャウは端役でしかなかったんだな……)  といった具合に、色んな発見があって面白かったですね。  本作の場合「新郎のダグは、何処にいるのか?」という謎がキーとなっているので、その答えを知っている状態で観たら楽しめないかもという不安もあったんですが、それを見事に吹き飛ばしてもらえました。   あと、1の時点だとアランの駄目人間っぷりも控えめで、観ていて不愉快に思える場面が無かった事も、非常にありがたい。  三部作の中では本作が最も優れていると思うんですが、その理由としては「長所が多い」という以上に、後の二作よりも「短所が少ない」という事が挙げられそうなくらいです。   特に感心したのが「昨夜の出来事を何も憶えていない」という設定にも「酒の飲み過ぎ」だけで済まさず「ドラッグの効果」という理由まで付け足し、リアリティを補強している事。  そして「ドアは開けておけよ」という、序盤の何気無い一言が伏線になっている事ですね。  後者は短いながらも印象的な場面ですし、真相が判明した際(そうだ、屋上のドアは中からじゃないと開けられないんだ)と観客に思い出させる効果があるしで、とても良かったです。  こういう部分がしっかりしていないと「設定に無理がある」「伏線が弱い」っていう欠点に繋がってしまう訳で、本作はそういう欠点を生まないように、丁寧に作られているのが窺えました。   足を引っ張ってばかりのアランが、実はカードカウンティングが可能な天才だったと判明する流れも、非常に気持ち良い。  三部作の中では、本作が最もアランの主人公っぷりが薄いんですが、活躍度では随一だったと思いますね。  義兄となったダグを「お兄ちゃん」と呼んでハグする場面も、幼い男の子なら感動的になりそうなんだけど、実際は髭っ面の良い歳した男性なのでシュールな絵面にしかならない可笑しさがあったし、自分としては本作のアランが一番好きです。   「虎」「赤ん坊」「パトカー」といった謎掛けアイテムの数々も魅力的だし、車を飛ばして結婚式場に向かう場面はカーチェイス的な魅力もあったしで「掴み」と「盛り上げ方」が上手かった点も、お見事。  「屋上での乾杯から記憶を失う」「実は、ダグの居所も屋上」っていう構成になっているのも、凄く良いですね。  盲点を突かれたというか「答えの場所を予め示しておいた」というフェア精神のようなものが感じられて、観ていて心地良かったです。   そんな中、数少ない欠点を挙げるとしたら……  フィルが生徒達から金を騙し取り、ベガスで遊ぶ為の資金にしている冒頭部分が、不要に思える事(カードカウンティングの際の資金にしたのがコレと示すとか、予想以上に儲けたので生徒達に豪華な見学旅行をプレゼントする後日談を付け足すとか、もっと上手い活かし方があったはず)  次作以降で明かされる「アランは歌が上手い」「スチュはジェイドと結ばれない」などの情報とは、矛盾した描写が目に付く事とか、そのくらいかな?  勿論「無茶をやり過ぎ、車の修理費だけで凄い額になる」とか「鶏は虎の餌にする為に連れてきたの?」とか、細かいツッコミ所や疑問点はあるけど、観ている間は気にならなかったです。  「その後のシリーズと比べると矛盾がある」って点に関しても、コレ単体で評価する限りでは欠点とは言い難いですし、本当に良く出来ていると思いますね。   「実際には、どんなパーティーだったのか」を明かしてくれるエンドロールに至るまで、楽しい時間を過ごせました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-04-16 17:25:04)(良:2票)
152.  極道めし 《ネタバレ》 
 刑務所+グルメ物という事で、どうしても「刑務所の中」(2002年)と比較してしまうのですが……  「刑務所の中」のような乾いたシニカルさとは真逆の、湿っぽい人情路線が、独自の魅力に繋がっていましたね。  ・出所後に意中の女性を訪ねるも、彼女が別の男と結ばれているのを見て、そのまま立ち去る。 ・作り話だと強がった後に、実は本当の話であった事を窺わせる。   といった原作の名場面の数々を、少しずつ作中に取り入れ、別の話として再構成しているのも上手い。  「マカロニをストロー代わりにして牛乳を飲む」「看守がビールを飲む話をして、満点を叩き出す」等の小ネタも再現されているんですが、それらが原作と同じ流れで出てくる訳じゃないので(ほほう、ここでコレを出してきたか……)といった感じに、観ていてニヤリとさせられるんですよね。  たとえ原作をそのまま映像化した訳じゃなくても、原作のファンが満足するような品に仕上げる事は出来るんだなって思えて、嬉しくなっちゃいました。   「上を向いて歩こう」「待つわ」「さよなら」などの曲の使い方も巧みだったし、それより何よりも「ちゃんと美味しそうに食べる役者さんを選んでる」って点が、素晴らしいですよね。  メインとなる五人組の内(この人の食べっぷりは微妙だな)と感じるような人は一人もいなかったし、この原作を映像化する上で最も大切な点を、きちんとクリアしていたと思います。   主人公とヒロインの幸せな日々の中で「いただきます」をちゃんとしなきゃダメと要求するヒロインの姿が印象的であり、別れのラーメンを振舞った際にも「いただきます」してくれなかった主人公を、寂し気に見つめていた演出なんかも、良かったですね。  モノローグこそありませんでしたが(この人には、私の言葉は届かないんだ……)と、しみじみ感じていたように見えましたし、その後に二人が破局する結末に、自然と繋がっていたと思います。  出所後に再びラーメンを食し、泣き声の代わりのように麺を啜り、涙を飲み干すようにスープを飲み干す主人公の姿も、非常に味わい深い。   不満点としては……主人公と母親との別れの件が、ちょっと不自然だった事。  最後に子供が風船を渡すのは、わざとらしく思えた事。  作中で満点を取った「すき焼き」は確かに美味しそうだったけど、お肉が今時のスーパーで買った代物にしか見えなくて、今一つノリきれなかった事とか、そのくらいかな?   自分としては「すき焼き」よりも「パイナップルの缶詰」そして「黄金飯」の方が美味しそうに思えちゃったくらいですね。  もし、作中に出てきた料理で一番を決めるなら「黄金飯」に一票入れさせてもらいたいです。
[DVD(邦画)] 7点(2020-04-09 14:55:09)(良:1票)
153.  ゾンビーワールドへようこそ 《ネタバレ》 
 ボーイスカウトとゾンビの組み合わせといえば「バンクス/ゾンビキャンプ」(2013年)という前例がありましたが、あちらが子供向けに仕上げていたのに比べると、こちらは背伸びしたい若者向けって感じの内容でしたね。  グロい場面や、エロい場面なんかも適度に配してあるし、何よりティーンエージャーの成長物語として作ってある。   である以上、何時まで経っても大人になりきれない自分としても、大好物な品のはずなのですが……  要所要所で引っ掛かる部分があって、手放しで絶賛出来ないのが残念でしたね。   いやもうホント、出来は良いんですよ。  ゾンビ映画ってジャンルは、百本観たら八十本以上は「外れ」と感じてしまうくらい「当たり」率の低いもんなのだけど、本作は間違い無く「当たり」の部類。  映像や音楽もしっかりしていますし、途中で間延びする場面も無かったし、娯楽作品として高い水準に達していると思います。   テントを張ったり焚火したりする「ゾンビに襲われる前の楽しい一時」が、きちんと描かれてるのもポイント高いし、お約束の武器としてショットガンが登場し、豪快にゾンビの頭を吹き飛ばしてくれるのも良い。  普段は車が壊れても全然手伝ってくれなかった悪友が、ゾンビに襲われている最中には積極的に手伝ってくれる対比なんかも、上手いなぁと感心しちゃいましたね。  主人公達がボーイスカウトという設定を活かした「ホームセンターで材料を集め、自前の武器を作成する場面」も、凄く良かったです。  物語上、特に必要は無いのに爆発シーンを挟み、分かり易く「はい、ここがクライマックスですよ」と教えてくれてる感じなのも、憎めない愛嬌がありました。    じゃあ、何が気に入らなかったのかというと……  本当に些細な事なんだけど、主人公のベンの言動が問題だったんです。  勿論、彼は良い奴だし、真面目だし、自分も彼が嫌いって訳じゃないんですが、何故か肝心な部分で(えっ? 何それ?)って思うような選択したり、行動を取ったりするんですよね。  なまじ彼が「良い奴」で、自分も序盤から彼に感情移入して観ていたもんだから、途中から徐々に(この主人公は、何か違う……)って違和感を抱き始めたのが、失望に繋がっちゃったんだと思います。   そんな違和感が決定的になったのが、パトリック・シュワルツェネッガー演じるジェフの首を切断して「この、カスが」と毒付く場面。  そりゃあジェフは「嫌味なイケメン男子」という、オタク映画における最大の憎まれ役キャラだったけど(ゾンビ化した知り合いを殺しておいて、そんな態度取る?)って引いちゃったんですよね。  なんか首の斬り方も妙に恰好良く、スタイリッシュに描いて「どう? 観客の皆もスカっとしたでしょ?」と言わんばかりの演出していたのにも(悪趣味だなぁ……)と、ゲンナリするばかりでした。  ここは、お調子者の相棒であるカーターが「ざまぁみろ」と罵って死体を蹴るのを「やり過ぎだ」とベンが咎めるくらいのバランスでも良かった気がします。    あとラストシーンにて、共に苦難を乗り越え、絆を育んできたデニースではなく、ケンドルの方と結ばれるというのも、スッキリしない感じ。  作中の人物の立場になれば「映画で描かれたのは、長い人生のほんのワンシーンに過ぎない。ずっと前から好きだったケンドルを選ぶのは当たり前」って話なんでしょうけど、映画を観ている観客からすれば、出番なんて僅かしかないケンドルより、ヒロイン格であったデニースの肩を持っちゃう訳で、どうも納得出来ないんですよね。  それならせめてデニースの目線で(あぁ、ベンに振られちゃった……)的な切なさを出してくれたら、彼女に同情して、切ない余韻が残ったと思うんですけど、それも無し。   良い映画だし、面白い映画だったんですが、肝心の部分が肌に合わないっていう、非常に勿体無いパターンでした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-07 08:59:31)(良:1票)
154.  刑務所の中 《ネタバレ》 
 この映画に対する礼儀のような気分で、コーラとアルフォートを携えて鑑賞。   結論としては、ほぼ文句無しの出来栄えだったのですが……  数少ない不満点が導入部にあるってのが残念でしたね。   それというのも、原作漫画では「拘置所で朝食を食べる主人公」という場面から物語がスタートしており、読者は自然と囚人生活を疑似体験出来るような作りになっていたんですが、本作は導入部で十分近く掛けて「主人公はミリタリーマニアであり、銃を不法所持していた」事を描いてしまっているんです。  これには流石に出鼻を挫かれたというか……ミリタリーマニアの人じゃないと「まるで自分が刑務所に入ったような気分になる」って感覚を味わえない気がするんですよね。  序盤から主人公の情報を明かし過ぎてしまったのは、構成としてマズかった気がします。  恐らく監督さんとしては「この主人公は悪い奴じゃないよ。誰かに危害を加えて刑務所に入った訳じゃないよ」という事を冒頭で描いておく必要があると考えたのでしょうが、自分としてはやはり「刑務所の中」もしくは「拘置所の中」から物語をスタートさせ、状況説明はその後に行って欲しかったです。   あとは、ハードボイルド色の濃い短編「冬の一日」も映像化して欲しかったんですが……まぁ、これは主人公を「漫画家の花輪和一」に統一する以上、仕方無かったんだろうなと納得出来る範囲内。  登場人物が幼女化するという漫画的演出などもスッパリ切り捨てていますし、その辺りの取捨選択は上手かった気がしますね。  不満点もあるにはあるんだけど、それが致命的になってはいない、というバランスなのは嬉しかったです。   そもそもこの映画って、オリジナル要素が冒頭の「軍隊ごっこ」と「避難訓練」くらいしかなく「原作には無い独自の魅力を生み出した」っていう褒め方は出来なかったりするんですが……  その分「原作漫画の良さを忠実に映像化した部分」が素晴らしくって、それだけでも傑作認定したくなっちゃうんですよね。   原作で「ムショオタク」を自認していた主人公が「刑務所の中」を楽しんでいる様子もしっかり描かれていたし、刑務作業の際のキビキビした囚人達の動きなんかも、如何にも映画的で面白い。  「パン食」「正月の御馳走」「2級者集会」の場面についても、良くぞここまでやってくれたと、思わず拍手したくなるくらいの出来栄え。  「殺人犯が周りの囚人から憧れの目で見られる」「教官に媚びを売る者は嫌われる」などの刑務所事情を、さり気無く描いている辺りも良かったです。   それと、原作と違って懲罰房の件をクライマックスに持ってきたのも上手いですよね。  原作では拘置所(個室)のエピソードの後、すぐ懲罰房(個室)で過ごすエピソードを描いている為、あまり違いが分からないという欠点があったんですが、映画では「五人部屋での生活」をたっぷり描いた後、個室に隔離される形になっており、懲罰房が凄く新鮮に思えるんです。  先程自分は「映画版独自の魅力が無い」という書き方をしちゃいましたが、何も独自の場面を追加せずとも、こういった「順番の入れ替え」だけでも、充分に面白さはアップするんだなと、大いに感心させられました。   映画のオオトリを飾るのが「醤油ご飯とソースご飯の話」というのは、原作の「一生無縁」に比べると、インパクトが弱いんじゃないかとも思えたんですが……  何度も鑑賞している内に(この終わり方も、シュールな味わいがあって良いな)と、考え方が変わってきましたね。   脱獄する訳でも無いし、裁判で無罪を勝ち取る訳でも無い、刑務所の中の日常を描いてるだけなんだけど、それが面白いし、それが良い。  文字通りの「刑務所映画」として、価値のある一本だと思います。
[DVD(邦画)] 8点(2020-04-05 22:07:41)(良:1票)
155.  ゾンビランド:ダブルタップ 《ネタバレ》 
 大好きな「ゾンビランド」の主人公四人組が、十年後も家族であり続けたという、それだけでも嬉しくなっちゃう映画。   家族ともなれば当然、意見が合わなくて喧嘩別れしちゃう事もあるんだけど、最後は元の鞘に収まり仲直りっていうのも気持ち良かったですね。  誰か一人くらいは死んじゃう可能性もあるかもって警戒していただけに、そんな懸念を吹き飛ばして全員生存エンドを迎えてくれたのも嬉しかったです。   監督も主要メンバーも同じ顔触れが揃っており、前作が好きな人なら安心して楽しめる内容となっているんですが……  「終盤の展開が雑」っていう欠点まで前作と同じだったりして、ちょっと困っちゃいましたね。  「ゾンビも進化して、更に厄介な敵となった」という伏線があったのに、それに殆ど意味が無かったという肩透かし感も寂しい。  「高さ」を利用してゾンビ達を一斉に退治するクライマックスも、中々痛快ではあったんだけど、上述の設定があるせいで (これなら敵は普通のゾンビのままで良かったな……)  って考えがチラついてノリ切れなかったし、典型的な設定倒れに思えちゃいました。  「二度撃ち」でも倒せない新型ゾンビって印象は強烈だっただけに、もっと上手く活用して欲しかったですね。   勿論、長所も色々あるというか、どちらかといえばそちらの方が多かったくらいだと思います。  ホワイトハウスを「我が家」にして四人で生活する様も楽し気で良かったし、人気漫画「ウォーキング・デッド」を読んで「全然リアルじゃない」と感想を漏らすのも、実際にゾンビ世界に住んでいる主人公達ならではって感じがして、面白かったですね。  すっかり豊満な女性に成長したリトルロックが、反抗期を迎えてしまい、それに他の三人が振り回される展開になるのも、ファミリー映画らしい魅力があって良かったです。  新キャラのマディソンを殺す場面をハッキリ描かなかったから (実は彼女は生きていて、ゾンビ化した彼女と再会する事になるんだろうな)  とばかり思っていたのに (……生きてるだけじゃなくて、ゾンビ化すらしてなかったよ!)  ってツッコまされた辺りも、程好いサプライズ感があって好き。   他にも、リトルロックの彼氏を「胡散臭い」と観客に感じさせる流れも自然で (なんだ、この彼氏って良い奴かと思ってたのに、実は嫌な奴だったのか)  と失望させたりしないバランスに仕上げてあるんですよね。  かなり早い段階で、有名なボブ・ディランの曲を「自分の曲」と言ってリトルロックに聴かせる場面が挟まれており「こいつは信用出来ない」と印象付ける事に成功している。  こういった形の、さり気無い人物描写が上手い監督さんなのだなと、改めて感心させられました。  モンスタートラックや「誕生日プレゼントの銃」の使い方も巧みだし、人間をゾンビと勘違いして殺す事を「マーレイしちゃう」なんて表現するセンスにも、クスっとさせられましたね。   終わり方に関しては、前作と同じ「家族エンド」であり、予定調和な心地良さがある一方で、ちょっと物足りないとも感じていたのですが……  エンドロールの後、ビル・マーレイの大暴れを描いてくれた事には、もう大満足!  もし「ガーフィールド3」ならぬ「ゾンビランド3」があったら、再びエンドロール後には「ビル・マーレイが生きていた頃の話」を流して欲しいな、と思えたくらいでしたね。  完全なコメディパートかと思わせ、観客を油断させておき、意表を突いて格好良いゾンビ退治に突入する流れが、本当に面白かったです。   「ゾンビ世界を生き抜く為のルール」ならぬ「ゾンビランドを楽しむ為のルール」を作るとしたら、そこには是非「エンドロール中に席を立ったり、停止ボタンを押したりしてはいけない」って一文を付け加えたいな……と、そんな風に思えました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-03-04 23:41:12)(良:1票)
156.  9か月 《ネタバレ》 
 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。   残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが……  これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。   結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。  「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。   それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。  もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。  本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど……  もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。  そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。   子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。  母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。  我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。   主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。  途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。  車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど……  まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。   それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか  (妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ)  って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。  女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。   産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。  「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-27 04:30:10)(良:1票)
157.  フラッド 《ネタバレ》 
  これは……  「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。    クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。  両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。  トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。   繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。  町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。  牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。  口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。  「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。   じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと……  やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。  せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。  本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。   あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが……  (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。   途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。  スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが……  もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-26 05:37:51)
158.  10日間で男を上手にフル方法 《ネタバレ》 
 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。   男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。  それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。  これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。  これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。   主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。  相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。  ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。  その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。  クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。   よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。  中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。   それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな?   ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票)
159.  オールド・ボーイ(2013) 《ネタバレ》 
 今度は原作準拠で作ってくれるんじゃないかという期待があったのですが「原作漫画の再映画化」というよりは「2003年の韓国映画版のリメイク」という内容であった事が残念。   とはいえ、2003年版における欠点が色々と補われた形となっており、そこは良かったですね。  欠点が消えると同時に、あの独特の迫力というか、粘っこい魅力のようなものも失われているので、結果的にはプラマイゼロって感じなのですが……  それでも、リメイクした意義は充分にあったんじゃないかと思います。   まず、原作にもあった「催眠術」の要素をバッサリ削ってみせたのは、間違いなく英断でしたね。  「映画より原作漫画の方が面白い」と考えている自分ですら「あの漫画は催眠術で何でも出来ちゃうのがツマラナイ」って言われたら、反論出来ないところがありますし。  一応、本作においても「心理的な誘導工作」のようなものはありましたが、さほど非現実的ではなく、充分にリアルな範疇に留まっていたんじゃないかと。   また、2003年版においては「これ、ヒロインが主人公の娘なんじゃない?」と途中で観客も気付いちゃうような、作りが甘いところがあったんですが、本作はその点もフォロー済み。  「架空のテレビ番組」「スマホの待ち受け画面」を効果的に活用し、ヒロインの正体を上手くはぐらかす形にしてあったのは、お見事でしたね。  2003年版より先に、こちらを観賞していたとしたら、ネタバラシの瞬間まで「ヒロインのマリーは主人公の娘である」って事に気付かず仕舞いで、大いに衝撃を受けたんじゃないかと思えました。   他にも「飛び降り自殺する男を見殺しにする場面が無くなってる」「娘を人質にしていると犯人が語るので、主人公は彼を殺せない」などの改変が施されており、それらに不満を持っていた自分としては、嬉しい限り。  その一方で「テレビを観ながら自慰に耽る場面」「金槌を武器に大立ち回りを演じる場面」など、2003年版で印象深かったポイントは、しっかり再現してあったんだから、非常にバランスの良い作りだったと思います。   肝心の「犯人の動機」については「2003年版と違って、思いっきり本番行為しているのを見られたんだから、噂が広まるのは当然」「娘だけでなく息子とも性的な関係にあった男って設定にしたのは、流石にやり過ぎでは」「主人公の元嫁はアマンダをいじめるどころか庇っていたのに、殺されたのが可哀想」等々、気になる点も多かったんですが……  家族を淡々と射殺していく場面は不気味で良かったですし、これまた「結果的にはプラマイゼロ」って感じでしたね。  特に、犯人が「近親相姦の罪を背負って生きる事になった主人公」に対し、同情を示す描写があった点は、原作漫画における「孤独な二人の、奇妙な友情」を連想させるものがあり、僅かながらも原作の要素を取り入れてくれたように思えて、自分としては嬉しかったです。   オチとなる「再び監禁部屋に戻るエンド」に関しても、娘との近親相姦関係をスッパリ断ち切ったという感じがして、良かったですね。  曖昧なまま終わらせた2003年版よりも、ずっと誠実な終わり方だったと思います。   あっさり薄味だけど、薄味には薄味ならではの魅力があるんだなと感じさせてくれた、そんな一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-10 20:18:15)
160.  オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 
 原作を久し振りに読み返した勢いで、本作も再観賞。   「謎の部屋に十年以上も監禁されていた主人公が、犯人の正体と目的を探ろうとする」という粗筋こそ共通しているものの、基本的には全く別の物語であり、しかも原作も映画版も両方面白いっていうんだから、中々珍しいパターンですよね。  自分としては「犯人の動機が詩的で味わい深い」という理由で原作の方が好みなのですが、映画版も間違い無く快作だと思います。   そもそも「原作の方が好き」という立場の人間としては「この映画が面白いのは原作のお蔭だ」と主張したくなるんですけど、本作の場合、それを言うのはかなり無理がありそうなんですよね。  犯人の人物像や、動機も全然違っているし、何より映画版の方が「憎たらしい悪役」「ショッキングで分かり易い動機」になっている。  多分、原作通りに映画化していたといたら、ここまで大衆受けはしなかったんじゃないでしょうか。  それだけ、この映画のオリジナル部分、独自の部分が優れているって事なんだと思います。   主演のチェ・ミンシクは男臭い魅力があって良かったし、ヒロイン役のカン・ヘジョンも可憐な雰囲気がたまらないしで、キャスティングも絶妙。  その他にも「脱獄が成功しそうな直前に釈放される」というシニカルな脚本、ハンマーを手に大立ち回りを演じる場面での、泥臭いのにスタイリッシュなカメラワークなど「映画版独自の魅力」を感じさせる場面が沢山あったんだから、お見事です。   ……ただ、一つだけ。  「犯人の動機については、原作の方が絶対に良かった」っていう事に関してだけは、どうしても譲れそうにないんですよね、自分の場合。  確かに原作の時点で「催眠術を便利に使い過ぎ」とか「犯人のやり方が遠回り過ぎ」とか、色んな欠点があるって事は分かるんです。  それでも、最後に明かされる真相「わたしの人生に《他者》は存在しなかった……」「生涯で、おそらくキミだけが、わたしの”孤独”を……」という悲しい独白には、非常に胸打たれるものがあって、忘れ難い余韻を残してくれるんですね。  自分が久し振りに「オールド・ボーイ」に触れようと思った際、映画版ではなく、原作漫画を先に選んだのも、やはりこの「真相」の差にあるんじゃないかと。   で、以下は映画版に関する文句というか、難癖になってしまうのですが……  「孤独」ではなく「近親相姦」をテーマにした本作に対しては、抵抗も大きかったりするんですよね。  それは何も「近親相姦はタブーだから、見るのもおぞましい」とか、そんな理由じゃなくて「犯人像を変えた事により、不自然な点が生じている」のが気になっちゃうんです。  まず、原作の場合は「犯人を殺して復讐する事より、真相を知りたい好奇心を優先させてしまう」のも納得なんですが、映画版に関しては、そうじゃない。  なんせ原作の犯人と違って、映画版の犯人は主人公の妻を殺してる訳ですからね。  この時点でもう破綻しているというか「私を殺したら真相は分からず仕舞いだぞ」と原作の犯人同様に挑発してくるイ・ウジンという存在にも、それに従う主人公にも、感情移入出来なくなっちゃうんです。  (いや、真相を知りたい気持ちとか優先させてないで、妻の仇を取れよ)と思えちゃって仕方無い。  また「俺は確かに獣にも劣る人間だが、生きる権利はあるんじゃないか」という台詞が印象的に使われている訳だけど、その台詞を最初に吐いた男を主人公は見殺しにした形なのも気になります。  死者の台詞を剽窃する形で、自分だけは特別と言わんばかりに「生きる権利」を求められても、勝手な奴だなぁとしか思えなかったです。    そんな訳で「映画オリジナルで面白い部分」「原作と違っているがゆえに不満がある部分」が、どちらも強烈な光を放っており、何とも評価が難しい本作品。  面白かったし、観て良かったと思えたのは確かなのですが……  諸手を挙げて「好きな映画」とは言えない、そんな引っ掛かりの残る一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-06 02:13:32)(良:2票)
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