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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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161.  プレミアム・ラッシュ 《ネタバレ》 
 これは面白い。   自転車によるメッセンジャーを題材とした作品としては、邦画にもタイトルそのまま「メッセンジャー」なる傑作がありましたが、洋画代表として本作の名前も挙げたくなるほどの出来栄えでしたね。  とにかくもう、車や歩行者をスイスイ避けて、道路を駆け抜ける主人公の姿を捉えるだけで面白い。迷惑なんだけど面白い。   普通、こういった作りだと「主人公側を善玉として描いているけど、こいつらの方が周りに迷惑掛けているよなぁ」なんて疑念が湧いてしまい、距離を感じがちなのですが、本作はその辺りの観客の反発も、上手く躱しているんですよね。  序盤にて、主人公も「道路の嫌われ者」と自嘲しているし、悪役となる警官にも「クズども」とハッキリ言わせている。  些細な演出かも知れませんが、それによって主人公達は「勘違い野郎」ではないという印象を与えてくれるし、悪役の言葉に対しては(そこまで言わなくても……)と思えるしで、むしろ応援したくなってくるんです。  この辺りのバランス感覚は、非常に巧みだったかと。   特に素晴らしいのが、主人公が事故を起こしそうになった瞬間、時間が止まり、その止まった時間の中で、様々なルートを模索するという演出。  「この道を行ったら、車に轢かれる」「あっちの道を行ったら、乳母車と衝突する」「唯一、この道だけが無事に通過出来る」といった具合に、事故に遭う様も交えてのシミュレーション映像となっており、非常にユニークなんです。  あえて喩えるなら、TVゲームにてセーブ&ロードを繰り返して、正解を確かめる作業に似ているようにも思え、とにかく観ていて楽しかったですね。   また、ストーリー面においても複雑になり過ぎない程度に時間軸を弄っており、主人公と観客とが同時に「依頼者の真の目的」を知る構成になっているのも、凄く上手い。  麻薬の密輸かと思い、一度は依頼を放棄した主人公が「今回の依頼主は悪人ではない。幼い息子と共に暮らしたいと願う善良な母親だ」と悟り、メッセンジャーの誇りに掛けて仕事をやり遂げるべく決意する流れには、熱くなるものがありました。   そんな具合に長所が幾つもあって、かなり好きな映画なんですけど……唯一の難点は「クライマックスが微妙」という事ですね。  主人公は最高のメッセンジャーであり、その腕前を駆使して悪徳警官の追跡を躱し続け、無事に荷物を送り届けようとするという、基本のストーリーラインが良かっただけに、最後の決め手が「人海戦術」というのは、どうも受け入れ難い。  一応、序盤にて「結束力も強い」という一言があったので、それが伏線といえば伏線なんですけど、ちょっと弱いかなと。  主人公単独の技量によって勝利出来たのだ、と思えるような決着の付け方だったら、もっと好きになれていたかも知れません。   そんな具合に、肩透かし感もあったのですが、無事に依頼は達成され、母子が共に過ごせるようになってと、ハッピーエンドを迎えてくれたのは、嬉しい限り。  「このままメッセンジャーを続けていれば、いずれ主人公は事故死してしまう」事を連想させ、刹那的な快楽を求め続けるがゆえの「止まらない」「止まりたくない」という、明るさの中に悲劇の匂いを帯びた終わり方だったのも、良かったです。  何時か事故に見舞われ、死んでしまうとしても、彼であれば、そんな瞬間も満足気な笑顔で迎えられるんじゃないかな……と思えました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-27 08:28:30)(良:1票)
162.  Mr.ボディガード/学園生活は命がけ! 《ネタバレ》 
 オーウェン・ウィルソンという人は、綺麗な金髪で二枚目なのに、こういう「負け犬男」を演じても妙にハマっているから不思議ですね。  どこか間の抜けた感じや、愛嬌があるからこそ出来る芸当なのだろうけど、それでいて元々のルックスは良いものだから「ダメ男でも、やれば出来る」を実践してみせるシーンで、しっかり説得力があったりする。  これは俳優さんとして、凄く強みになっているんじゃないかな、と思います。   そんな彼を主演に据えた本作は、お約束の「スクール下剋上映画」であり、特に目新しさは無い内容。  セス・ローゲンが原案と脚本を担当している為か、子供達三人のキャラクターも「スーパーバッド 童貞ウォーズ」と似通っており、既視感を覚えてしまうくらいでしたね。  でも、だからこそ安心して、しっかり楽しむ事が出来たように思えます。   子供側の主人公であるウェイドの義理の父が「私もイジメっ子だった」と誇らしげに語るような奴だったもので、彼と弟達が逞しくなったウェイドを見直すなり、幼少期にイジメていた相手に仕返しされるなりの顛末を迎えるかと思ったら、何にも無しで拍子抜けした事。  そしてヒロインの女教師が主人公を許し、刑務所に迎えに来るまでの心理描写が足りないように思えた事など、細かい不満点は色々あるんですが、面白い部分の方が多かったです。   物凄ぉ~くベタなんだけど、最初は金目当てでボディガードを引き受け、子供達を騙していた主人公が、徐々に優しさに目覚めていく流れが良いんですよね。  最初からそうなるって分かっていたし、見え見えのあざとい展開かも知れないけど、やっぱりグッと来ちゃう。  一緒に撮った写真を渡し「作戦が終わっても友達でいて」と訴えられて、何とも言えない表情を浮かべる辺りなんかは、特に好き。  一度は仲間を見捨てたかと思われたがエミットが、土壇場で「やっぱり仲間だった」と証明し、一緒に戦ってくれる展開も、これまたベタながら素敵でありました。   クライマックスの喧嘩に関しては、あくまで「リーチが長い」で通して、ウェイド達が自力でイジメっ子達を倒す方が良いんじゃないかなとも思いましたが、主人公が助けに来てくれる展開も熱かったし、判断が難しいところですね。  とはいえ、相手が十八歳で成人していると分かった途端、容赦無く殴り飛ばして「本当に強かったんだ!」と驚かせてくれる主人公の姿に関しては、実に痛快で、大満足。  日本刀を掴み、子供達の命を救った訳だけど、作中で過度にヒーロー扱いされる事は無いというバランス感覚も良かったです。   窃盗やら軍法違反やらの罪状で逮捕され、しっかり罪は償う事になる。  でも、たった三週間で出所して、ヒロインと子供達に再会するハッピーエンドを迎えてくれるから、後味は悪くないし、妙な罪悪感も残らないしで、とても爽やかな終わり方。   作中で描かれる「特別な時間」が過ぎ去った後も、彼らはずっと仲間のままなんだろうなと思える、良い映画でした。
[DVD(字幕)] 7点(2017-09-05 23:21:06)
163.  アナコンダ2 《ネタバレ》 
 前作とは異なり「如何にも胡散臭いが頼りになりそうな男」が、一貫して味方側だったのが嬉しいですね。  ワニをナイフ一本で倒すシーンなんかもう、恰好良くて惚れ惚れしちゃうくらい。  終わってみれば、そんな彼=ビルこそが主役であり、当初主役格かと思われたジャックが悪役に転じるという構成なのですが、その辺りの「転換」描写も巧みでした。  始まってから大体四十分くらいでビルは「金よりも人の命が大事」ジャックは「人の命よりも研究(と、それによって齎される金)が大事」という考えだと分かる為、観客も自然と善悪が判別出来るという形。  そんな「主役交代」の仕掛けを用意する一方で、作中全体を通してのヒロインとしてサムも用意している為、視点が散漫に感じられる事も無く、素直に楽しめたように思えます。   序盤では「川下り映画」としての魅力を堪能出来たし、巨大な滝に落ちて船が壊れ、徒歩となった後も「吸血ヒル」「毒蜘蛛」など、様々な障害を用意して、飽きさせない作りになっている辺りも良い。  本命の「アナコンダ」は要所要所で襲い掛かる程度に留め、最終的には人類にとって最も恐ろしい動物である「人間」との戦いになる構成も、王道な魅力があったかと。   その他「JAWS/ジョーズ」や「サバイバー」をパロった場面ではニヤリとさせられるし、ビルのペットの子猿は可愛いしで、全体的に愛嬌がある作りなんですよね。  アナコンダの恐怖だとか、人間同士の争いで剥き出しになる醜さだとか、そういった面は薄味なんだけど、それゆえ気軽に、肩の力を抜いて楽しめる。  繁殖期の為、沢山の大蛇が集まっているという設定なのに、実際は単体の蛇に襲われるシーンばかりな点など、物足りなさを感じる部分もありますが「まぁ、面白いし良いか」と納得出来る範囲内でした。   最後は爆発オチで倒すというお約束も守ってくれたし、四人という結構な人数が生き残る事が出来て、妙に明るいノリで終わる辺りも好みでしたね。  総合的な面白さという意味では前作と甲乙付け難いですが、どちらが好きかと問われたら、本作の方を挙げちゃいそうです。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-22 10:06:54)(良:1票)
164.  アナコンダ 《ネタバレ》 
 こういった川下りを疑似体験出来る映画、好きですね。  「アフリカの女王」みたいなロマンス物も良し、本作のようなモンスターパニック物も良し、という感じ。  出発シーンにて、上空からグルリと回って船を映し出す件なんて、荘厳な音楽も合わさり「実際に船旅をしても味わえない程の高揚感」を与えてくれるように思えます。   しかしまぁ、映画冒頭の説明文「獲物を呑み込むだけでは満足出来ず、捕った獲物をわざわざ吐き出して、また新たな獲物に襲い掛かる」が伏線だったと判明するシーンには、もう吃驚。  ジョン・ヴォイト演じる悪役のサローンが、大蛇に吐き出された後、死にかけの体であるにも拘らずウインクしてみせるのだから、忘れ難いインパクトがありました。   サローンに関しては「殺す相手の目は見るな」「見ると亡霊が付き纏うぞ」などの台詞も恰好良く、悪党には悪党の魅力があるのだと教えてくれた気がしますね。  もしかしたら生きていて、2で再登場する事も有り得るのではないか? と思えただけに、1にしか出て来ないのが残念です。   その他、あえて不満を述べるとすれば、贔屓の俳優であるオーウェン・ウィルソンが、散々な役どころだったという事くらいでしょうか。  一応、最後は川に落ちた恋人を救った末に殺されているけど、主要人物の中で一番情けないキャラクターだったように思えます。  物語の欠点と呼べるような類ではありませんが、彼のファンとしては寂しかったですね。  ダニー・トレホが冒頭でアッサリ死んじゃうのも、ちょっと勿体無い。   でも、その分他のキャラクターには見せ場が用意されており、バランスは良かったです。  ヒロインの恋人役であるケイルが、昏睡状態の身体を押してサローンを倒してみせたり、気弱で嫌味なだけの男かと思われたウエストリッジが、意外な活躍を見せたりと、気持ち良いサプライズ感を味わえました。   最後も、派手な爆発オチで大蛇を倒してくれるし「実は、まだ生きていた」なオチも交えて、二重に盛り上げてくれるしで、大いに満足。  当初の目的通り「霧の民」と遭遇するのに成功した事も、ハッピーエンド感を強めてくれましたね。   細かいツッコミどころはあるかも知れないけど、観賞後は、そんなの気にならなくなる。  楽しい映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-22 06:34:25)(良:2票)
165.  ディープ・ブルー(1999) 《ネタバレ》 
 以前観た時は何の疑いも無く、トーマス・ジェーン演じるカーターが主人公だと思っていたし、特に奇抜な内容だったという印象も残っていなかったのですが、改めて観賞してみると、色々と遊び心満載の映画でしたね。   まず、序盤は明らかに、サミュエル・L・ジャクソン演じるラッセルを主人公として扱っています。  俳優さんがビッグネームであるというだけに留まらず「海に浮かぶアルカトラズ」な研究施設に彼が訪れ、色々と説明してもらったり、人物を紹介してもらったりするという流れですからね。  観客の目線とラッセルの目線とが、自然に重なり合い、彼に感情移入してしまう形。  だから、中盤にて彼が食い殺されるシーンはショッキングだし(こりゃあ誰が生き残るか分からないぞ……)と思わせる効果もあるしで、非常に計算された構成であったと思います。   それも、ただ「予想を裏切る」「お約束の展開とは逆にする」という天邪鬼な作りというだけじゃなくて、ちゃんと観客が納得して、受け入れられるように作ってあるのが凄いですね。  上述のラッセル死亡シーンにおいても、事前に「水際は危険だ」と警告させているので、不意打ちの衝撃はあっても(こりゃあ反則だよ)という不快感には繋がらない。  カーターの存在にしたって、ルックスや性格を考えれば彼が一番主人公に相応しいし、何より劇中でもラッセルより先に登場しているので「実は彼こそが主人公だった」と後半に判明しても、自然と納得出来ちゃう訳です。   それは「一緒にビールを飲む」という生存フラグを立てつつ死んじゃったヒロインも然り。  「遺言ビデオを撮影する」という死亡フラグを立てつつ生き残った黒人コックも然り、ですね。  前者には「嫌な女だ」と思わせるような場面があったし、そもそも彼女が事態の元凶だったりする訳だから、死んでもそこまで衝撃は受けないし、逆に黒人コックは観客に「こいつは良い奴だ。生き残って欲しいな」と思わせる描写が色々あったからこそ、生存を素直に喜べるという形。    今の自分のように、伏線だの何だのアレコレ考えながら観て(おっ、このナンバープレートは「JAWS/ジョーズ」のパロディだな)とニヤリとしちゃうような映画オタクでも、昔の自分のように(男前さんだから、きっとこの人が主人公だろう)と直感的に考えるような初心な人であっても、等しく楽しめるように作られているのだから、これは凄い事だと思います。  ちゃんと中盤に爆発シーンという山場を用意しているし、サメが人を食い殺すシーンも間隔を開け過ぎず、それぞれ工夫して演出しているしで、シンプルな娯楽映画としてもレベルが高い。   敵となるサメが求めていたものが「自由」だったと判明するシーンも、情感が込められていて、良かったですね。  お約束の爆発と共にラスボスを倒した後「サメは本当に三匹だけか?」と、わざわざ確認して「生き残りに襲われるエンド」の可能性を摘み取ってくれる辺りなんかも、実に心憎い。   昔観た時とは、受ける印象が全く違ったけれど、それでも面白かったという本作品。  「期待外れ」でも「期待通り」でもない、不思議な満足感を味わう事が出来ました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-18 06:41:39)
166.  アンストッパブル 《ネタバレ》 
 私生活が上手くいっていない主人公達が、事件を解決してヒーローになるという、非常に単純明快で気持ちの良い映画。   こういったストーリーの場合、現実逃避的な色合いが濃くなり、興醒めしてしまう事も多いのですが、本作に関しては「実話が元ネタなんだ。文句あるか」とばかりに、開き直った作りになっているのが良かったですね。  その為、素直に主人公達の活躍を祝福出来たように思えます。   若手とベテランの対立を軸に据え、両者の衝突と和解を、スピーディーさを損なう事無く描いている辺りも、素晴らしい。  「今はそんな会話している場合じゃないだろう。事態の解決に集中しろよ」とツッコませる作品も少なくない中で、本作はその辺りを非常にスムーズに、自然に描いているんだから、これは凄い事だと思います。   人為的なミスによって列車の暴走が始まり、周りのスタッフも当初は笑っていたのに、それがどんどん取り返しのつかない事態に発展していく流れも、上手く描かれていましたね。  お偉いさんが「命令に逆らったらクビにする」と脅してきた際に「とっくにクビになっていますよ」とベテラン機関士役のデンゼル・ワシントンが返す場面も、実に恰好良い。  自分としては相棒役のクリス・パインの方が贔屓だったりもするのですが、本作は完全にデンゼル側が「オイシイ」役でしたね。  緊迫した場面でも冗談を飛ばす剽軽さと、命を投げ打つ覚悟で暴走列車を止めようとする生真面目さ、両方を持ち合わせた男。  正に、彼の為にあるような役柄だったと思います。   難所のカーブを曲がり切る場面や、並走する車に列車から飛び移る場面なども、トニー・スコット監督らしい迫力があって、良かったですね。  無事に暴走を止めた後、エンディングのテロップにて「出世後、円満退社」「第二子が誕生」と、主人公達の幸福な顛末が語られる演出も、ハッピーエンド色を強めてくれている。   ただ、会社のお偉いさんや、事故を起こした機関士のテロップが、それぞれ「解雇」「ファストフード業界へ」となっているのは、喜ぶべきかどうか、迷っちゃいました。  そりゃあ作中で主人公達を「クビにするぞ!」と脅していた傲慢な上司がクビになるというのは、皮肉が効いていて面白いし、後者に関しても転職出来たなら、一応めでたしめでたしと思えますが、そのテロップで映画が終わってしまうというのは、如何にも寂しい。  順番を入れ替え、まずは上司達の末路について説明し、最後に主人公二人の幸福な顛末を示す形にしてくれていたら、もっと好きな映画になっていたかも知れませんね。  そこだけ、ちょっと残念。   とはいえ総合的には充分楽しめたし、娯楽作品としてレベルの高い一品だったと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2017-08-08 22:08:20)(良:2票)
167.  ブルークラッシュ2<OV> 《ネタバレ》 
 あまり期待せずに観賞したのですが、意外や意外。  良質な青春ロードムービーでしたね。   流石にサーフィン場面の美しさでは前作に及ばないかも知れませんが、その他の部分が魅力たっぷり。  金持ちのブロンドお嬢様で、サーフィンなんて出来る訳無いと嘲笑われていた主人公が、見事な波乗り姿を披露して周りを黙らせるシーンなんて、実に痛快です。  ここでハートを掴まれ、以降は最後まで、明るい気分で楽しめたように思えます。   それと、前作と共通している「家族の問題を乗り越えての自己再生」と「プロサーファーになる夢を叶える」という二つの要素を、二人の人物に分担させたのも上手かったですね。  主人公のデイナが一人で思い悩み、精神的に成長したりするのをカメラが捉えている間にも、親友のプッシーはプロになる為に必死に練習しているんだろうな……と、自然と脳内補完出来る形。  二人の出会いと友情、共に特訓するシーンについても描かれているので、主人公と同じようにプッシーを応援したくなるし、彼女が合格した際には、一緒に祝福したい気持ちになれました。   ヒッチハイクしたトラックの荷台に乗せてもらって移動するシーンなど「旅行」「家出」ならではの風情が感じられるのも良かったし、浜辺のコミュニティで皆が住んでいる住居の数々も、思わず泊まってみたくなるような魅力があります。  そんな住居の中の一つが、改造を施したバスであり「その気になれば、何時か動かしてみせる」という台詞が伏線だった事には、本当に吃驚。  立ち退き命令によって、皆の住居が強制的に取り壊されていく中、バスが動き出すシーンの爽快感は、特筆物でしたね。  その後のバス旅行に関しても、短い時間ながら「コミュニティの皆が家族」という絆の強さが伝わってきたし、全員で一斉に橋から河に飛び込むシーンなんかも、凄く好き。   物語のクライマックスとして「プッシーのプロテスト合格」を用意し、そこで最高潮に盛り上げておいて、その後に「父との和解」「母の思い出の場所でサーフィンする主人公」を静かに、情感たっぷりに描いて終わるのも、良い流れだったと思います。   難点を挙げるなら、ティムとグラントとの三角関係が微妙というか、好みでは無かったという事でしょうか。  ティムの方は自然保護活動をしている気の良い青年、グラントの方は少々嫌味っぽい気障なイケメン、という両者のキャラ付けが分かり易過ぎたのですよね。  前者と結ばれるのが見え見えなのに「主人公はグラントの方に惹かれている」「でもグラントは嫌な奴だったと分かる」「結局ティムの方と良い感じに」と、お約束の流れを辿るのが、ちょっと退屈でした。  その後、グラントにも「悪事に手を染めていたのは、経済的に困窮して止むを得ずだった」などと、色々とフォローが入るし、後味は決して悪くないんですけどね。  後は、ゾウやサイと遭遇するシーンが(如何にも合成映像って感じだなぁ……)と思えてしまうクオリティなのも残念。  この辺りは、低予算ゆえの悲しさを感じます。   でも、そんな難点についても「女の子が主人公なんだから、恋愛要素が濃い目になるのは仕方ない」「低予算なんだから特撮が拙いのは仕方ない」と、妥協出来る範囲内でしたね。  魅力的な部分の方が、ずっと多いので「そんなの、別に良いじゃん」と軽く流し、受け入れてあげたくなります。   中々レアな「初代よりも続編の方が面白かった」例の一つとして、オススメしたい映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-06 22:18:34)
168.  パニック・マーケット3D 《ネタバレ》 
 万引き娘と、その父親である警官、武装強盗犯の存在など、舞台がスーパーマーケットである事に意味を持たせているのが好印象。   津波によって浸水し、水没していく店内からの脱出という「ポセイドン・アドベンチャー」のようなテイストがあるのも良いですね。  「覆面していた強盗犯の正体」についても、適度な伏線込みのサプライズになっていたかと。  皆が避難する中で、一人だけ津波に向かって嬉しそうに走り出すサーファーや、ちゃっかり生き残っていた仔犬の存在など、緊迫した画作りの中で、どこか愛嬌が漂っている辺りも有難い。   その一方で、サメ映画としては「サメが単なる障害の一つでしかない」「サメ自身にも何の個性も無く、普通の人喰いザメ」という点が、ネックになってしまいそうな感じ。  とはいえ「しっかりと掴んでいたはずの相手が、サメに海中へと引きずり込まれ、手の中にはペンダントしか残らなかった」場面や「天井にぶら下がった人間の下半身を、サメが食い千切る」場面などは、中々ショッキングで良かったと思いますし、自分としては満足。  最近は色々と変わり種のサメが登場する映画が多いせいか、真っ当なタイプのサメが登場する本作には、妙な安心感を覚えたりもしました。   作りとしては群像劇となっており、基本的に生存者は全員善人である為、観ていて理不尽さを感じない点も良かったですね。  ……ただ、車内に閉じ込められたカップルに関しては、男女共に好感が持てなかったりしたもので、そこは観ていて少し辛かったです。  あそこの尺を縮めて、もっと主人公のジョッシュ達を中心とした作りになっていたら、より好みだったかも知れません。   そして何といっても、本作の白眉。  水中でショットガンを放ち、サメを倒すシーンが痛快でしたね。  この手の映画でサメを倒す手段といえば、海上からどうにかするパターンが多い為「水中で倒す」というだけでも斬新に思えましたし、武器がショットガンというのも、実に自分好み。  その後に、もう一匹のサメを感電死させるシーンも、スタイリッシュに描かれていて良かったです。  それまでアクション要素は控えめだっただけに、このラストの件は意外性があるし「過去のトラウマを乗り越えた主人公が、超人的な活躍を見せる」というカタルシスも相まって、実に気持ち良い。   最後は少しハッピーエンド感が足りないようにも思えましたが、あれだけの災害が発生している以上は仕方ないでしょうし、主人公とヒロイン、父と娘とが、それぞれ蟠りを越えて「やり直そう」と前向きな姿勢を示して終わるのだから、嬉しかったですね。  冷静に振り返ってみると、不満点もあったり、退屈に感じた場面もあったりしたのですが、ラスト二十分程の展開で、全部チャラにしてくれた感じ。  満足度高めの、良い映画でした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-08-01 16:55:04)(良:2票)
169.  シャーク・ナイト 《ネタバレ》 
 傑作映画「セルラー」(2004年)の監督が撮ったサメ映画という事で、非常に楽しみにしていた一本。   序盤の段階から「Aと思わせておいて、実はB」(鮫に襲われたかと思いきや、実は人間による悪戯だったと判明する、など)という展開が何度もあって、ゲンナリさせられたりと、欠点も目立ってしまうのですが、総合的には面白い映画でしたね。  「何故こんな湖にサメがいる?」「それは人喰いシーンを撮影して金儲けする為、意図的に放流した悪人がいるから」って形で、スナッフ要素をサメ映画に取り入れたのも斬新であり、そう来たかという感じ。  この手の映画では嫌な奴として描かれがちなアメフト部員が、凄く良い奴として描かれているんだけど、結局死んじゃったりとか、愛嬌のある保安官が実は悪人だったとか、適度に意外性を盛り込んでいるのも良かったです。   それと、個人的に本作の白眉は、サメが出て来てからの展開ではなく、その前の段階にあるようにも思えましたね。  「若者達が湖畔の別荘に出掛ける」→「そこでサメに襲われる」というお約束な流れなんですが、前半のパートの方が面白かったんです。  狭っ苦しい車に皆で乗り込み、夜を徹して走り続けるシーンなんかも、早回しや音楽によってスタイリッシュに決めているし、湖をボートで移動しながら皆で乾杯するシーンも、本当に楽しそうで良い。  91分の内、実に20分以上も尺を取って「皆でバカンスを満喫する」様を描いているので、この手の「モンスターが出てくる前の、皆で楽しく騒いでいる場面」が好きな自分としては、もう大満足。  サメ映画って「肝心のサメが出てくるまでが退屈」な作りの品が多い印象があるのですが、本作に関しては「このままサメに襲われないで、普通の青春映画として終わって欲しい」と思わされたくらいです。   勿論、サメ映画としても一定以上のクオリティはあるので安心。  怪我人をボートで運ぶ際に、水面に落ちる血液を映し出すカットなんかは、特に印象深いですね。  (あぁ、サメ来ちゃう! サメ来ちゃうよ!)とドキドキ出来るのが楽しい。  正直、ちょっと中盤はダレ気味だったりもするのですが、要所要所でそういった見せ場が用意されている為、退屈さにまでは至らなかったです。   主人公のニックが、医者志望でガリ勉と揶揄われる割には鍛えられた身体をしており、ミスキャストじゃないかと思っていたら、終盤で筋肉に見合った大活躍をしてくれるのも良いですね。  特に、椅子に縛られた状態からの逆転劇は痛快であり「死に際に聴きたい曲はあるか?」「ガンズ・アンド・ローゼズ」というやり取りなんて、もう痺れちゃいました。  そこで、ヘヴィメタ好きの敵が機嫌を良くし、曲を変える為に背を向けた一瞬の隙を突いて反撃というのが、凄く恰好良い。   終わってみれば、主人公とヒロインだけが生き残る王道エンドであった本作。  でも観賞中は、重苦しく陰鬱な「殺されエンド」も有り得るんじゃないかと身構えていた為、あの終わり方には、ホッとさせられましたね。  最後にサメのアップで終わる為「まだ惨劇は終わっていない」とも解釈出来そうなんですが、主人公達の乗っている船とは距離があったし、まぁ大丈夫だろうなと思えます。   正統派なサメ映画ではなく「人喰いザメを利用する悪人達との対決を描いた映画」という側面が強い為「サメ映画を観たい!」という欲求を叶えるには不適切かも知れませんが……  自分としては満足度の高い一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-07-28 09:34:08)(良:2票)
170.  ドッジボール 《ネタバレ》 
 「時には一人で二人ゲットする事だってある」という台詞が伏線であった事に吃驚。  主人公が二人の美女と同時に付き合う事になったと見るべきか、あるいはヒロインが男女の恋人を両方ゲットしたと見るべきか、いずれにしても予想外な形のハッピーエンドで楽しかったです。   基本的にはコメディなのですが、努力→成長→勝利というスポーツ物の王道の魅力も押さえている為「ドッジボール大会で優勝する」という約束された結末まで、安心して観賞する事が出来ましたね。  途中「コーチの死」「決勝戦の前日に主人公が戦意を喪失してしまう」などの、やや暗い展開が挟まれたとしても、最後は笑顔で終わるんだろうなと予測出来る形。   「ウルトラアメリカン教育映像」の悪趣味さとか、日本人チームが小馬鹿にされている感じ、ラストの「爆乳ダンス」披露なんかは観ていて鼻白むものがありましたけど、不愉快になるという程じゃなかったです。  それより一番悲しかったのは、ランス・アームストロングが「逆境にぶつかり挫折しかけた主人公に、勇気を与える者」として出演している事ですね。  偶然なのか皮肉なのかは不明だけど、作中で「選手のドーピングが発覚し、敵チームが失格になる」なんて展開まであったものだから、本当にやりきれない。  映画自体に罪は無いんですけど、ここだけは観ていて憂鬱になっちゃいました。    でも、基本的には「観ていて笑顔になる」要素の方が、ずっと大きかったと思いますね。  ヒロインが剛速球を投げられる理由を「ソフトボールやってたの」と一言で片付けちゃう大雑把さなんかは、実に気持ち良いです。  主人公がスポーツジムの経営破綻を受け入れて「一晩中飲み明かそう」と皆にビール缶を投げ配るシーンなんかも、妙にお気に入り。  気弱なオーウェンと、濃過ぎる顔のビッチスキーとのロマンスも良かったし、ジャスティンが片想いのチアリーダーにキスするシーンなんかも好きですね。  作中で結ばれたカップルが三組もいて、ドッジボールの大会を通し、多くの人が幸せになっているという、優しい雰囲気が伝わってきました。   大好きな俳優であるベン・スティラーも、憎たらしい悪役を楽し気に演じてくれていましたね。  彼が敗者となる結末に関しても、あんまり可哀想にはならないというか「こいつなら一度は挫折しても再起出来るんじゃないか」と思わせるようなパワーがあった為、ハッピーエンドにも水を差していない。   海賊ことスティーブも「とうとう宝物を見つけた」という形で、優勝の喜びに華を添えてくれているのですが……彼の扱いに関しては、ちょっと中途半端な印象も受けました。  決勝戦を欠場するなら「スティーブの活躍のお蔭で勝てた」という試合が、途中に一つくらいはあっても良かったかも。   あと、サドンデスで主人公が目隠しする展開に関しては、伏線が弱かった気もします。  特訓シーンでも一応目隠しはしているんだけど、さらっと流されていたし、目隠しする姿を見てチームメイトも「何をやっているんだ?」と言い出すしで、観客の自分としても、少し戸惑っちゃいました。  あそこは「目隠しして踊れるようになる事だ」などの、亡きコーチの台詞をオーバーラップさせてくれていたら、もっと感動出来ていた気がします。   こうして文章にしてみると「良かった部分」と同じくらい「気になった部分」も多くなっちゃう訳ですが、後者を「悪かった部分」と感じさせない愛嬌を備えているのが、この作品の特長なのでしょうね。  定期的に何度も観返したくなるような、親しみが湧いてくる映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-07-11 19:51:01)(良:2票)
171.  ゾンビハーレム 《ネタバレ》 
 冒頭「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)のコミック片手に熱弁を振るうオタク男が出てきた時点で、掴みはOKといった感じ。  他にも、恋人と別れたばかりの男、ゲイの男、プレイボーイに、離婚の危機を迎えている男という、バラエティ豊かな面子が、彼女や彼氏や妻の罵倒を背に旅に出る導入部は「Wild Hogs」(邦題:団塊ボーイズ)っぽいしで、どちらの映画も好きな自分としては、嬉しくなっちゃいました。   そんな中年男達のドライブ旅行にて、バスの運転手を務め、唯一の女性メンバーとなったキャンディが、あっさりゾンビ化しちゃうのだから、意外性も抜群。  何せ彼女、メンバーの誰かと恋人になりそうな気配があったし、鹿の死体を片付ける件では、一番男らしく(?)て頼もしい姿を見せていましたからね。  彼女だけは紅一点としてゾンビ化せずに、一緒に戦ってくれるんだろうなと予想していただけに、それを気持ち良く裏切られました。  舞台となる町に子供の姿が見えない事を含め、徹底的に「男VS女」という構図に拘ったからこそ、思い切り良く彼女を序盤で退場させたのでしょうね。  結果的に、それは大成功だったかと。   斧を持った花嫁ゾンビに、両手に鋏を装備した美容師ゾンビと、登場する女ゾンビ達が個性豊かなのも嬉しい。  中盤にて、今まで遭遇した女ゾンビの中で、誰が可愛かったかと男達が品定めするシーンなんて、如何にも「旅の夜」ならではの会話って感じがして、楽しかったです。   上述の場面に限った話ではなく、全体的に男性目線で作られた品であり、女性ゾンビを指して「あいつらは頭が悪い」なんて言い放つシーンもあるから、女性が観ると、ちょっと抵抗があるかも知れませんね。  物を投げたら女ゾンビの巨乳に命中して跳ね返る場面とか、思わず笑っちゃったけど、上品とは言い難いです。   玩具屋で即席の火炎放射器を作る件はワクワクさせられたし、ゾンビ映画ではお約束となりつつある「ゾンビの振りをして、襲われないように移動する」が「女装して襲われないように移動する」になっている辺りも、クスッとさせられました。   ラストも物凄く爽やかで、仲間の絆を確認し合い、皆で笑顔になって、走って終わりというハッピーエンドっぷり。  彼らの背後には大量の女ゾンビが迫っており、根本的な解決にはなっていないのですが、それでも友情の強さの前には、些細な問題と思えてくるのだから凄いです。  ショッピングカートに男を乗せて、それを押しながら爽やかに終わるのは「What to Do in Case of Fire」(邦題:レボリューション6)の影響もあるのかも知れませんね。   気になった点としては、そんな終わり方で「友情は素晴らしい」と感じさせる内容であるにも拘らず、作中で友達の中から死者が出てしまっている事が挙げられそう。  皆して楽しそうに笑っているけど、友達が死んだばかりなんだよなぁ……って事が、どうしても引っ掛かっちゃうんですよね。  ちょっと残酷な物言いとなりますが、所謂「殺され要員」ならキャンディや、途中で出会った軍人さんもいる訳だし、こんなに明るいハッピーエンドで纏めるなら、男友達グループの死者はゼロにしても良かったんじゃないかなと。  その方が、ラストの爽快感も強まったように思えます。   とはいえ、総合的には満足感の方が大きかったですね。  こういう「当たり」と出会えるから、ゾンビ映画の棚を漁るのを止められないんだよなぁ……と、しみじみ感じました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-06-20 06:40:49)(良:1票)
172.  憧れのウェディング・ベル 《ネタバレ》 
 「そうそう、こういうのが観たかったんだよなぁ……」と、ニンマリさせられる一品。   期待通りのラブコメといった感じで、安心して楽しむ事が出来ましたね。  音楽の使い方も良いし、出てくる料理も美味しそうだし、観ていて気持ち良い。   指を斬る、膝を射られるなどの「痛い場面」もありましたが、それも残酷になり過ぎない程度の撮り方をしている為、気にならない範疇。  「大丈夫。死にやしない」「誰か死んだ訳じゃあるまいし」という台詞の後に、葬式のシーンに移るというネタを天丼でやっちゃうのも、不謹慎ながら笑っちゃいました。   ラブコメお約束の「互いに浮気してしまう」というネタにしたって、女性側は酔ってキスした程度、それを知って自暴自棄になった男性側も本番直前までしか行ってないという形にしており、非常に配慮して作られているんですよね。  観客目線での「何も考えずに楽しめる映画」って、作り手側からすると、凄く気を使わなきゃいけないから大変だなって、改めて感じました。   「ドーナツ実験」の件も中々興味深く、面白い。  目先の利益に飛びつくタイプは、駄目人間が多いという実験結果に対し、それなりの説得力を感じていただけに、主人公がそれを否定し「出来たてのドーナツが貰えるという保証が無い」と指摘してみせる流れには、ハッとさせられるものがありました。   恋の当て馬となる男女についても、教授は最低男だったけど、オードリーの方は「口が悪いだけで、根は良い子」ってバランスだったのも好みですね。  両方とも「嫌な男」と「嫌な女」として描かれていたら、流石にゲンナリさせられたでしょうし、上手い着地だなと思います。   終盤にて、プロポーズのプランを再び台無しにするという、冒頭に繋がる脚本も鮮やかだったし、その後のスピーディーな結婚式も最高。   物凄い傑作という訳じゃないし、映画史に残る一品でもないでしょうけど……  こういうタイプの、観賞後に幸せな気持ちに浸れる映画って、好きです。
[DVD(吹替)] 7点(2017-04-26 23:46:27)(良:1票)
173.  ガバリン 《ネタバレ》 
 この映画、妙に好きです。  もう三十年以上も前の作品だからか、ちょっとテンポが悪いし、終わり方も唐突で余韻もへったくれも無くて、洗練されていない印象も受けるけど、何処か憎めない愛嬌がある。  胸を張って「面白い! 好きだ!」と言えるタイプの品ではなく「そこまで面白いって訳でもないんだけど、何となく好き」って感じの品ですね。   「基本的にはホラー」「でも、全編に亘ってユーモアが溢れており、全く怖がらずに観賞出来る」「それでいて、怪物のデザインは結構不気味……」なんて具合に掴み所が無い内容であり、その魅力を語るのは難しいのだけど、特に「ユーモア」の部分が自分好みであった気がします。  怪物の手を踏みつけながら「いまは手がはなせない」と言ってみせたり、緊迫した場面で「絶対放さないぞ」と言った途端に掴んだ手を放しちゃうとか、そういう会話の妙があるんですよね。  主題歌もホラー映画らしからぬ惚けたテンポで「お前、怖がらせる気無いだろ」と、楽しくツッコませてくれます。   妻と離婚したばかりの主人公が、インスタント食品だらけの冷蔵庫を覗き込み、憂鬱そうにしながら電子レンジで調理する場面なんかも良かったですね。  こういう何気ない演出で感情移入させてもらえると、その後の面白さも倍増するように思えます。   その他、鏡の中に入り込むシーンはドキドキさせられるし、怪物と間違って元妻を射殺してしまったかと取り乱すシーンではハラハラさせられるしで、本当に色んな魅力が詰まっているんですよね。  親切な隣人、近所の少年、行方不明となっていた幼い息子など、怪物に殺されてしまうかと思われたキャラクター達が、全員無事に生き残る脚本なのも、後味が良くて嬉しい限り。   悪役である怪物達を除けば、誰も死なないし、不幸にもならない。  主人公一家にとっては文句無しのハッピーエンドという、非常に希少価値の高いホラー映画でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2017-03-01 12:00:58)
174.  ドライヴ(2011) 《ネタバレ》 
 「男が抱いているヒーロー願望を、そのまま映画にしましたよ」という感じですね。  理由なんて全く語られないけど、とにかく主人公は強い。  幼い少年には無邪気に懐かれて、人妻と許されぬ恋に落ちたりする。  観ていて恥ずかしさも覚えるのだけど、それでも作り手のセンスの良さや、主演俳優の恰好良さに痺れる思いの方が強かったです。   派手なカーチェイスを繰り広げる訳ではなく、警察の目から巧みに車体を隠しながら逃げおおせるという冒頭のシーンが、特に素晴らしい。  「追いかけっこ」の興奮とは違う「かくれんぼ」の緊張感を味わえたように思えます。  それだけに、中盤にて車同士で火花を散らすような「普通のカーチェイス」の場面もあった事は(あっ、結局そっちもやっちゃうの?)という落胆もあったりしたのですが……まぁ、そちらはそちらで、やはり魅力的だったし「タイプの異なるカーチェイスを両方味わえる、お得な映画」と考えたいところ。   ちょっと気になるのは「恰好良い主人公」を意識し過ぎたあまりか、敵側の恐ろしさが欠けているように思えた事ですね。  丁寧に敵側の目線での物語も描いている為「底知れない不気味さ」なんてものとは無縁だし、単純に人数も少ないものだから、作中で「強敵と立ち向かう主人公の悲壮感」を醸し出す演出がなされていても、今一つ説得力が感じられなかったのです。  ここの部分は、少々バランスの取り方を間違えたのではないかな、と。   逆に「上手いなぁ」と感じたのは、エロティックな要素の挟み方。  バイオレンスな内容である以上、性的な場面が全く存在しないというのは不自然になってしまいそうだし、ある程度は必要になってくると思うのですが、この映画では、それを「敵地に乗り込んだ際に、そこに裸の女が沢山いる」って形でクリアしているのです。  こういった場合、ついつい安易に「人妻であるヒロインと許されぬ関係を結んでしまうベッドシーン」なんて形で性的な要素を満たそうとするものですが、そこを踏み止まって、あくまでもプラトニックな恋愛描写に留めてくれた事が、本当に嬉しかったですね。  夜の車内で二人きりになって、そっと手を握るだけでも充分に「背徳感」「許されぬ逢瀬」という雰囲気が伝わってきたのだから、これはもう大成功だったかと。  ヒロインの息子との交流シーンにて、普段は滅多に笑顔を見せぬ主人公が笑ってみせる描写を挟む辺りも、ベタだけど効果的で良かったと思います。   ベタといえば、そもそも「裏稼業のプロフェッショナルな主人公が、美女や子供と交流する事によって癒され、彼らを守ろうと戦う」というストーリーライン自体、ベタで陳腐で王道な代物なんですよね。  である以上「何度も使われてきた魅力的な骨組みである」という長所と「もう観客は見飽きているマンネリな内容」という短所が混在している訳ですが、この映画に関しては、前者の方を色濃く感じる事が出来ました。   ラストシーンも、これまたお約束の「主人公の生死は曖昧にしておきます」「お好みの後日談を想像して下さい」という、観客に委ねる形の結末だったのですが、音楽の使い方やカメラワークが上手いせいか、あんまり「ズルい」って感じはしませんでした。  自分としては「お腹を刺されたけど、病院に行けば治るんじゃない?」「とりあえず一番の脅威は排除したし、残党が襲ってきても主人公なら大丈夫でしょう」「あの奥さんと子供とも、きっと再会して三人で幸せになれるよ」なんていう、楽天的な未来を想像する訳だけど、それも有り得そうな気がするんです。  バッドエンドとは程遠い、不思議な爽やかさと明るさが感じられる終わり方だったからこそ、そう思う事が出来た訳で、非常に後味が良い。   ダメ男の現実逃避用とも言われてしまいそうな、そんな感じの代物なのですが……  やっぱり好きですね、こういう映画。
[DVD(字幕)] 7点(2017-02-20 21:44:39)(良:4票)
175.  ソルト 《ネタバレ》 
 「主人公の身辺に、もう一人ロシア側のスパイがいる」という事は、途中で察しが付くように作られていますね。  自分は彼女の夫を疑っていた為、あっさりと死亡したのに驚き「何かと主人公を庇ってくれていた同僚がスパイ」というオチには、素直に騙される事が出来ました。  予想が外れて悔しい思いもありますが、映画を楽しめたという意味では、こちらの方が正解だったと自分を慰めたいところです。   それと、この手の「続編を意識したような終わり」って、どうも印象は良くないのですが、本作は何となく毛色が違うようにも思えました。  続編を作るつもりなら「主人公の夫」「スパイとして育てた師」「同僚」と、続編に活かせそうな重要人物を三人も殺しているのが不自然というか、如何にも勿体無いのですよね。  インタビュー動画などによると、どうやら監督さんも続編には気が乗らないみたいで、これはあくまでも「主人公にとっての始まりの物語」として完結させたようです。  自分としては、上記の「重要人物でも必要なら殺す」という思い切りの良さが、続編の可能性を薄めた代わりに、本作の完成度を高めていると感じられましたね。   しかしまぁ、アンジェリーナ・ジョリーという女優さんは本当に身体を張る人なんだなぁ……と、今更ながらに驚嘆です。  映画本編を観た限りでも「これってスタントマンじゃないよね?」と思えるアクションでしたが、特典映像をチェックしたら、やっぱり本人だったみたいで、大いに納得。  高層マンションの窓を伝い歩くシーンの迫力も凄かったですが「手錠をはめられたままで相手を絞殺してみせる姿」が、アクロバティックで恰好良くて、特にお気に入り。  どちらかといえば、男性がアクションをこなす映画の方が好みだったりもするのですが、彼女くらいの根性を見せられると、もう「参りました」と脱帽する他ありませんね。   脚本の細部が気になったりもしたけれど、素直に面白いと思えた映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-08 04:01:06)(良:1票)
176.  ショコラ(2000) 《ネタバレ》 
 こういった内容の映画である以上、観賞後に「チョコレートを食べてみたい」と観客に思わせる事が出来れば成功なのだと思います。   自分はといえば、事前に買い込んでおいたチョコレート菓子の包装を解いて、美味しく頂かせてもらったので、まず満足。  基本的に優しい映画であり、作中の人物殆どが幸せな結末を迎えてくれるので、後味も良かったですね。   特に感心させられたのが主人公の扱いで、こういった御話では 『主人公は癒しを与える天使のような存在なので、心の弱さを見せて取り乱したりしない』 『村の人々が幸せになるのを見届けた後、主人公は次の村に幸せを運ぶ為に風のように去っていく』  という不文律が存在しているにも関わらず、本作は意図的にそれを覆しているのです。  終盤に北風が誘い掛けるシーンでは(あぁ、やはり立ち去ってしまうのか……)と寂しく思っていただけに、それを否定して窓を閉め、街に留まる事を選択する姿に驚き、安堵もさせられましたね。  遺灰を撒いて、それが北風に運ばれる描写もあったとなると、次の「幸せを運ぶ旅人」の役目は、あのお婆ちゃんにバトンタッチされたのかな? とも推理出来て楽しかったです。   ちょっと気になったのは、作中で唯一「救われない」人物として、セルジュが存在している事。  彼の扱いが完全なハッピーエンドとなる事を妨げているので、そこをもう少し上手くやってくれていたら、より満足出来たんじゃないかと思えましたね。  女性目線の映画なのだから「家庭内暴力」を振るった以上は許されるべきではないという判断なのかも知れませんが、一応彼なりに妻を愛していて、反省し、許しを乞うていたのだから、復縁するのは無理としても、もうちょっと救いを感じさせる顛末にしても良かったんじゃないかなぁ、と。  火事の件など、物語の進行上に必要な悪事は全て彼に押し付けて、村から追放したという形だったのが、どうにも居心地が悪かったです。  意地悪な見方かも知れませんが、村長の妻だって浮気という罪を犯しているのに、そちらは全く罰せられる描写が無しというのも、何だか女性に都合の良い世界観に思えてしまいました。  いっそ次の「幸せを運ぶ旅人」の役目を、セルジュに担わせても良かったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。   そんな本作の中で自分の一番のお気に入りは、倦怠期に陥っていた夫婦が「情熱を呼び戻すカカオ豆」を通じて、仲睦まじい夫婦に変わっていくシークエンス。  ちょっと下世話な描写でしたが、お風呂掃除中の妻のお尻に欲情してしまう件なんかが、非常に共感を持てたのですよね。  その後に、妻の荷物を「持つよ」と優しく提案する姿など、些細な描写の中にも「不器用ながらも、妻想いな旦那様」に変わった事が窺えて、微笑ましかったです。   断食の果てにチョコレートに貪り付く村長の姿からは、一種のカタルシスが感じられたし 「人間の価値は何を禁じるか、何を否定するか、誰を排除するかではなく、何を受け入れ、何を創造し、誰を歓迎するかで決まる」  というアンリ神父のお説教も、心に沁みるものがあって良かったですね。  娘の友達であるカンガルーの存在も、物語の寓話性を高める程好いアクセントになっていたと思います。   ゆったりと身を委ねたくなるような甘みと、微かな苦み、両方を味わえた映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-03 05:58:00)(良:3票)
177.  恋とニュースのつくり方 《ネタバレ》 
 冒頭のシーンにて(シニアプロデューサーには昇格出来ず、当てが外れて落ち込むんだろうな)と思っていたら、まさかのクビ宣告。  失意のスタートとなった主人公なのですが、とにかく明るさと元気に満ちており、観ている側としても「彼女なら、きっとハッピーエンドを迎えてくれるはず」と、安心して見守る事が出来ましたね。   今は亡き父は彼女の夢を応援してくれており、それとは対照的に、存命の母は現実主義者という家族構成も良かったと思います。 「八つの時なら可愛い夢。十八の時には胸も躍った夢。でも二十八の今は、正直言って困った夢よ」  と諭す母の言葉には説得力がありましたし、いつもの出社時刻に目覚まし時計が鳴るも、それを止めてから何もする事が無く途方に暮れる主人公の描写なんかも、味わい深くて良い。  そういった「ドン底」をキチンと描いてくれたからこそ、その後のサクセスストーリーにも共感し、応援出来た気がします。   新しい職場に採用された後、早回しで引っ越しをするシーンや、初めての会議で矢継ぎ早に質問を浴びるも、ちゃんと一つずつ回答するシーンなんかも、スタイリッシュな魅力がありましたね。  こういった具合に、働く楽しさが感じられる映画って好きです。  陳腐な表現となってしまいますが、明日への活力を貰える気がします。  この辺りは監督が同じである「ノッティングヒルの恋人」よりも、脚本が同じである「プラダを着た悪魔」に近い魅力かも。   今や大統領となっているドナルド・トランプの名前が飛び出すのもニヤリとさせられたし、男性キャスターと女性キャスターの子供っぽい対立、そしてラストにて二人が和解し、恋仲となった事を匂わせる演出なんかも、オシャレな感じ。  唯一の難点はクライマックスに関してで、事前に料理の伏線を張っておいたのは分かるのですが、オチに使うには弱いネタだな……と思えましたね。  演出に関しても、あんな大袈裟に感動的な場面に仕上げる必要があったのか疑問。  「主人公を引き止める為に、傲慢なキャスターがささやかな、彼にとっては精一杯の誠意を見せてくれた」というストーリーな訳だから、もっとさりげなく、小さな感動を与えるような形にした方が良かったんじゃないかな、と。   一応ラブコメ要素もあるのですが「別に無くても良かったなぁ……」と思えるくらいに、彼氏役の存在が希薄な辺りも、不満と言えば不満。  あくまでも「仕事に生きる女」に特化させた方が、主人公のキャラクターも際立ったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。  そんなのは男性的な価値観であり、やはり女性からすると恋と仕事を両立させてもらわないと、観ていて嬉しくないのかも……とも考えられるし、難しいところですね。   とはいえ、その後の「これでもか!」とばかりに、次々と笑顔が咲き乱れるハッピーエンドっぷりは、本当に好きです。  母親が新聞記事を切り抜いたりして、実は娘の活躍をずっと見守っていた事を示す描写にもグッと来ましたし、冒頭の職場にて仲良しだった女性と再会し、また一緒に働ける事を喜んで、ハグしてみせる姿なんかも良い。  主人公達が頑張って幸せになる姿を見届けられる、気持ちの良い映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2017-02-01 11:59:10)(良:1票)
178.  忠臣蔵外伝 四谷怪談 《ネタバレ》 
 「赤穂浪士になれなかった男」の物語として、興味深く観賞する事が出来ました。   深作監督の忠臣蔵といえば「赤穂城断絶」という前例がありますが、あちらが予想以上に真っ当な作りだったのに比べると、こちらはもう「全力で好き勝手やらしてもらいました」という雰囲気が漂っていて、痛快なものがありましたね。  手首は斬り飛ばすわ、生首は斬り落とすわで、そこまでやるかと呆れつつも笑ってしまうような感じ。  当初は「俺達の手で時代を変えるのだ」と熱く語っていた若者達が、浪人として困窮する内に現実的な思考に染まってしまい「時代の方が俺達を変えちまった」と嘆くようになったりと、青春ドラマとしての側面まで備えているのだから、本当に贅沢な映画なのだと思います。   とはいえ、基本的なジャンルとしては「怪談」になる訳であり、そこの描写がキチっとしている辺りが、お見事。  あれもこれもと詰め込んだ闇鍋状態なのに、芯がブレていないというか、観ていて落ち着かない気持ちになる事も無く、エログロ濃い目の味付けなのに、不思議と尾を引かないんですよね。   お岩さんが超常的な力で討ち入りに助太刀するというのは、ちょっとやり過ぎ感もありましたが、中盤くらいで「やり過ぎ」な演出の数々にも慣れてしまうので、違和感という程には至らず。  どちらかというと「顔の白塗り」演出の方が良く分からなくて(死相を映像的に分かり易く表現したのか? あるいは悪人であるという証?)と軽く混乱させられましたね。  あれに関しては、もう少し説明が欲しかったところです。   人の良い親父さん風の津川内蔵助に関しては、実に魅力的で、好感触。  1990年版の「忠臣蔵」と同じように「本当は討ち入りをしたくない」という立場であるのも、自分としては嬉しいポイントでした。  自らが義士として称えられる未来を予見し、伊右衛門には「可哀想な男だ」と同情する姿からは、歴史に名を残した男としての、凄みのようなものが漂っていたと思います。   とにかくパワーを感じさせる一品で、高岡お岩さんの巨乳を拝んだり、琵琶の音色に聞き惚れたりするだけでも楽しめるのですが、上述のように「やり過ぎ」に感じられる場面も多々あり、そこを受け入れられるかどうかでも、評価が変わってきそう。  例えば、主人公の伊右衛門は、金策の為に辻斬りを行ってしまった事が負い目となり、赤穂浪士ではなくなる訳だけど「堀部安兵衛だって同じ事をしたのに、あちらだけが義士として英雄視されるのか」というやるせなさを伴った展開である為「義士としての赤穂浪士の偶像を否定する」描写だとしても、ちょっと理不尽で、納得いかないものがあったりするんです。  また、清水一学が伊右衛門のフトモモを撫で回す件などは、同性愛描写には免疫があるはずの自分でも(気色悪いなぁ……)と思うものがあり「フトモモの奥にある何かまで触っている」と気付いてしまった時には、流石に後悔。  最後は綺麗なお岩さんに戻って、伊右衛門と和解し、夫婦仲睦まじく幽霊となって終わりというのも、急展開過ぎるというか、主人公に都合が良過ぎるようにも思えましたね。   それら全てをひっくるめて、この映画特有の味であり、全てが好みである人にとっては、もう凄まじい傑作に感じられそうな……そんな作品でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-16 20:47:47)
179.  矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~ 《ネタバレ》 
 新年一発目の映画という事で、楽しい気分に浸れそうな作品をチョイス。   元々とんねるずが大好きという事も相まってか、充分に満足のいく内容でしたね。  これまでレビューしてきたタイトルの中には「クオリティが高いのは分かるけど、どうも好きになれない」というタイプの品もありましたが、これはその逆をいく一品。  どう見ても安っぽい「アニメ的な世界観を実写で大真面目に演じてしまう作品」のはずなのに、それが妙に面白かったりしたんです。   理由は色々あると思うのですが、その一つとして「内輪ネタ」が挙げられて「細かすぎて伝わらないモノマネ」でお馴染みの方が端役が出演していたり、ノリダーとチビノリダーとのやり取りが描かれていたりするのが、元ネタを知っている身としては、もう嬉しくって仕方なかったのですよね。  こういう「分かる人には分かるネタ」って、興醒めになったり、疎外感を抱かされたりする事も多いのでしょうが、自分としては正にドストライク。  「間違いなく、この映画の世界観を共有している」「観ている自分も、この映画の仲間なんだ」という感覚に浸らせてくれました。   全体的にはコント調の作風の為、ちょっと中弛みするというか、九十八分は長過ぎたようにも思えましたが、終盤にて「ソフトボールの試合」という山場をキチンと用意してくれている為、全体としては綺麗に纏まっていたんじゃないかな、と思えます。  「友情より恋愛が大事」「だって、恋愛はすぐに壊れちゃう。大切にしなきゃ」「友情は永遠。滅多な事じゃ壊れない」という台詞の数々も、非常に好みでしたね。  燃えるボールを燃えるバットで打ち返すというベタな演出も良かったし、最後は元気良く皆で唄って、笑顔で終わるのも気持ち良い。   父親との再会は描かれなかった事や「この借りはパート2で必ず返す」という台詞など、続編が存在しないのが寂しくなってしまう部分もありましたが……まぁ、それらも「ネタ、ギャグの一種」と受け止められるような大らかさ、笑い飛ばせるような馬鹿々々しさが備わっていたのではないかな、と。   期待通りの、楽しい映画でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-05 16:15:30)(良:1票)
180.  県庁の星 《ネタバレ》 
 これは面白い。  失礼ながら期待値は低かっただけに、嬉しい不意打ちを食らわせてもらった気分です。   劇中においても、こういった気持ち良い「不意打ち」が幾つかあって、特に印象深いのは主人公が婚約者に振られてしまう場面。  ここは観客の自分としても、主人公の気持ちとシンクロして「出世コースから外れたので振られてしまった」とばかり思っていたのですよね。  けれど、実際はそうじゃない。  「私の事を見てくれなかった」のが破局の理由であり、思い返せば、確かに伏線(=主人公は仕事について考えてばかりで、彼女のウェディングドレスを選ぶ際にも上の空)が張られていたのですよね。  これが「理不尽な裏切り」ではない「心地良い意外性」となっており、自分としても、この場面をキッカケとして(これは思っていたような映画とは違うぞ……)と襟を正して観賞する事が出来たように思えます。   潰れそうなスーパーを主人公が再生させる話といえば「スーパーの女」という先例が存在しており、あまり目新しさは望めないだろうと覚悟していたのですが、そんな予想も覆される事になりましたね。  あちらの作品は、ちょっと意地悪に解釈すれば「絶対的に正しい主人公が、間違っているスーパーを改革する話」という、やや一方的な内容であったのに対し、本作では公務員の主人公と店で働くヒロイン、それぞれに「正しい部分」「間違っている部分」が存在しており、対立を経て互いに認め合い、欠点を補完し合っていくという内容なのです。  それが非常に好ましいというか、自分の感性に合っていたように思えますね。   他にも「水で手を洗おうとしたら、蛇口が汚くて躊躇する主人公」という些細な描写で、その性格を端的に示してみせる辺りも好みでしたし「プライドの高さゆえ僅かなお辞儀しか出来なかった主人公が、研修期間を終えて店を立ち去る際には深々と頭を下げる」というベタな演出を挟んでくれる辺りも心地良い。   最後の最後で、店を守る決め手が「カンニング」という辺りには幻滅しかけましたが、そこで、またまたサプライズ。  それまで役立たずとして描かれていた店長が、意地を見せて店を守る形となっているのも嬉しかったです。   現実的な題材であるにも拘らず、そこかしこにリアリティの乏しい部分が見受けられる事。  主人公とヒロインが恋愛関係になる必然性は無かったように思える事。  そして、店のパートと行政パートが、あまり密接に絡んでいない辺りなど、色々と粗も目立ってしまうのですが、それでも全体としては長所の方が多かったかと。   研修を通して主人公が学んだのは「素直に謝る事」「素直に教わる事」「何かを成し遂げるには、仲間が必要だという事」と語る件も良かったですね。  完全無欠のハッピーエンドとはいかず、女性知事の狡賢さ、強かさを見せ付けるシニカルなテイストも備えており、それで後味が悪くなるかと思いきや、主人公は全て承知の上であり、前向きな姿勢と共に終わってくれたのも素晴らしい。  「そう簡単には通らないはずだ」「でも、諦めない」という、一時的な努力だけで済まさない、努力を継続する決意の恰好良さが伝わってきました。  その第一歩が、県庁におけるエスプレッソの有料化という、非常に小さなものであった辺りも、ユニークな落としどころだと思います。   面白い、楽しめたというのは勿論ですが、それ以上に「気持ちの良い映画」でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2016-12-29 08:20:51)(良:2票)
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