パッチギ! LOVE&PEACE の ぐるぐる さんのクチコミ・感想

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パッチギ! LOVE&PEACE の ぐるぐる さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 パッチギ! LOVE&PEACE
製作国
上映時間127分
劇場公開日 2007-05-19
ジャンルドラマ,シリーズもの,青春もの
レビュー情報
《ネタバレ》 今思うと、前作「パッチギ!」は(井筒作品としては例外的と言えるほど)ウェルメイドな作品だった。だからこそ井筒作品に触れたことのなかった観客にも受け入れられた。それゆえ今回の作品に同様のものを(意識的・無意識的に)期待した観客の中には期待や予想を裏切られ、失望した人もいると思う。かく言う自分も最初に観た時は唖然とした。前作以上に映画に盛られたいわゆる社会的・思想的要素。露骨に、赤裸々に「差別」が語られる(余談だが、ここまで差別を正面から扱った邦画は、皆無とは言わないまでもそれほど多くはない。アメリカ映画では珍しくないのだが、邦画の枠で考えると突出して見えるのかもしれない)。そして、多くの要素―朝鮮人差別や戦争、芸能界、家族、孤独、絶望、そして「難病モノ(!)」―がこれでもかとばかりにブチ込まれていることもあり、前作と比較すると物語や整合性が破綻しているし、混乱しているとさえ言える(ネタバレになるが一例を挙げれば、結局難病の子供は死ぬ訳でもなく治る訳でもない。つまり何らかの分かり易い決着もなく、「投げられっぱなし」なのだ)。■井筒はなぜ、前作以上に予算も公開規模も増え、また観客の期待も上がった作品でこのような「暴投」をしたのか。たぶん、彼が本当に喧嘩を売っているのは石原慎太郎などではなく前作に“安住”する「観客」に対してなのだ。前述した様々な要素を「どやねん!」とばかりに無造作に、ぶっきらぼうに提示し、挑発する(まるで「怒劇」の森崎東のように)。インタビューで彼は「日本の歴史」やら「家族の絆」やらテーマめいたものを語っているが、本当に言いたかったことはそんな言葉で語れるものではない(言葉で語れるものを表現するなら、映画なんぞ撮る必要はない。「ゲルニカ」が単に「反戦」を訴えたいだけのものなら、ピカソは「戦争反対!」と描けば良かったのだ)。彼は「日本の歴史」「家族の絆」「差別の実態」といった言葉では表現できないもの(或いはそれら全てを含んだもの)、映画でしか表現し得ないものを「映画的」としか言いようがないやり方であぶり出し、さらけ出そうとした。この作品で「思想」や「メッセージ」はあくまで表層的なものでしかない。■この作品は「読む」映画ではなく「観る」映画。つまり本当の「映画」。誰が何と言おうと断然支持します。
ぐるぐるさん [映画館(邦画)] 10点(2007-05-24 16:42:13)(良:4票)
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投稿日付邦題コメント平均点
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2010-07-28アマルフィ 女神の報酬9レビュー4.84点
2010-07-28借りぐらしのアリエッティ7レビュー5.69点
2010-07-28目撃(1997)8レビュー5.74点
2010-07-28インビクタス/負けざる者たち8レビュー7.08点
2010-07-10ヒーローショー9レビュー6.87点
2008-08-24妄想少女オタク系7レビュー7.00点
2008-08-24青空のルーレット4レビュー2.50点
2008-08-24ROBO☆ROCK3レビュー3.66点
2008-06-02靖国 YASUKUNI9レビュー4.22点
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