早春(1956) の まぶぜたろう さんのクチコミ・感想

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早春(1956) の まぶぜたろう さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 早春(1956)
製作国
上映時間144分
劇場公開日 1956-01-29
ジャンルドラマ,モノクロ映画
レビュー情報
人と話をしていて、つい別のことを考えたり、文脈からずれたことを言ったり、親しい相手以外は通じないことを言ったり…、それをそのまま映画に撮って成立するのは小津だけだ。ごく日常の言葉を物語の中に再構成し、ごく自然に演出することの素晴らしさ。それは、淡島千景が池部良と久々に顔を合わせる際に発する「こんちわ」という感動的な一言に結実する。この「こんちわ」には泣けた。       
若い夫婦の危機という題材や、狭い二階屋という空間、窓からの光を生かした演出は、小津というよりは成瀬巳喜男的で、とりわけ、暗い部屋で座り込む淡島と、2階にいる池部良とのカットバックは、小津にしては珍しいのではないか。というより、「いつも同じ話」「どれがどれかわからない」と人は小津を評するが、小津作品に珍しくない映画、異色作でない映画などあるのだろうか。      
それにしても、ビール瓶に手を添える岸恵子のエロティック、朝の光の美しさ、笠智衆と池部の会話に不意に登場するボートのスピード感、眼帯をかけた女性の不気味、いつもながら小津の細部は感動的だ。「感情移入できなかった」だの「古い価値観についてけない」だのといった個人的な感想を軽~く超えて、小津はやっぱり素晴らしい。「古くったってね、人間に変わりはないよ」と浦辺粂子も言ってます。      
最後に一言。成瀬組常連の中北千枝子が小津映画に最初で最後の出演をしています。「秋日和」などの岡田茉莉子、「麦秋」での淡島千景のような、主人公の友人といった役どころ。これが小津ワールドに見事にはまってない。妙に自由奔放、アドリブ演技しちゃったわ、って感じで、成瀬との演出の差がうかがえるのも、ファンには楽しいところです。
まぶぜたろうさん 10点(2003-12-11 01:45:12)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2013-08-23風立ちぬ(2013)10レビュー6.53点
2013-08-18美味しんぼ10レビュー4.33点
2012-10-03アイアン・スカイ10レビュー5.63点
2011-05-25アンノウン(2011)10レビュー5.78点
2011-04-21キラー・インサイド・ミー10レビュー5.40点
2011-04-16エンジェル ウォーズ0レビュー5.70点
2011-02-23ヒア アフター10レビュー6.65点
2011-02-20ザ・タウン10レビュー6.65点
2011-02-18白いリボン0レビュー6.00点
2011-02-17ソーシャル・ネットワーク10レビュー6.53点
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