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降りつづける雨のような“しっとり”とした空気感自体は、これまでの同種の日本映画にもあり続けたものかもしれない。だから雰囲気だけを見るならば、この映画のそれは、良い意味でも悪い意味でも実に日本映画らしいと言える。しかし、この映画には、これまでの日本のラブストーリーを打破する確固たる“チカラ”がある。気取らない王道的な脚本の道筋、ありきたりと紙一重の正面を切った演技、一歩間違えば退屈してしまうところで、この映画は心を揺さぶる。ぽつりとつぶやくような何気ない一言に、とんでもないほどの幸福感と慈愛が溢れている。そうして、涙を生み、涙腺に溜め、溢れさせる。しかし、この“愛の水”に溢れる映画はそこで終わらない。ラストに展開されるとてつもない“記憶の充足感”。人生において、映画において、満ち足りるというのはこういうことだ。ああ素晴らしい、「泣ける」からではなく、この映画のとても純粋な幸福感に対してそう思う。そして、「好きよ」というあまりにありふれた常套句。この一言にこれほどまでに、あたたかく深遠な想いを込めた映画を、僕は他に知らない。
【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 9点(2004-11-26 01:00:46)
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