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タイトル名 この世界の片隅に
レビュワー 目隠シストさん
点数 10点
投稿日時 2017-01-10 18:27:55
変更日時 2017-01-11 06:47:06
レビュー内容
例えば「2人分の芋ご飯」。語らずとも、伝わることはあえて触れない流儀が徹底されています。観客の考える力を信用している証拠。イチから十まで説明されたり、監督の主張を一方的にまくし立てられたりすると正直げんなりしますが、本作では監督と観客が同じ目線で共に在り、信頼関係を築けている感覚がありました。それゆえ、気構える必要がなく、水に砂糖が溶けるが如く(!)、心にお話がすっと入ってきた気がします。食事、兄妹の上下関係、家のお手伝い。天井の木目に手を伸ばした幼き日。日々の暮らしを丁寧に描いてくれたことも感情移入を助けました。すずの日常は、私たちのそれと同じだと素直に思えたのです。ですから「戦争」も決して昔話や特別な出来事ではなく、人生で起こりうる「災難」と捉えることができた気がします。言うなれば自然災害、事件、事故、病気と同じ。「反戦映画」でありながら説教臭さが微塵も感じられない理由はここにあると考えます(戦争の悲惨さに焦点を当て、観客を思考停止状態にして反戦を訴える手法とは真逆のアプローチです)。嬉しいコト、楽しいコト、辛いコト、どうにもならないコト、悔やまれるコト、死にたくなるコト、いろんな思いを抱えて、私たちは、この世界の片隅で生きている。いや、生かされている。愛し、愛されながら、命を減らしていくのです。こんな当たり前のこと(反戦も含めて)、上から目線で力説されても、素直に耳を傾けることなんでできません。だって生まれながらに(恥ずかしながら)あまのじゃくですから。でも、アニメで、あの画で、のんさんの声で、嫌みなく語られたら、心に響かないはずありません。人生がいとおしくなる映画でした。私は子供の頃、父から『十ニ人の怒れる男』を教えてもらい、世の中にこんな面白い映画があるのかと驚きました。そして父になった私は、3人の娘に本作を見せてあげたいと思います。この映画には、私が子供たちに伝えたい大切なことが詰まっているからです。



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