5.《ネタバレ》 細田守監督の作品って前作の『時をかける少女』でもそんな気がしたんだけど、主人公たちが向かい合う問題、立ち向かう敵が外部からのものになっていない。
身から出たサビ、というか自分との戦いみたいなのが核になってる。
『時かけ』ではほとんど真琴の行動が原因で色々事件が発生するし、今作でも事件の原因は(主人公は健二というより陣内家全体なので)主人公=陣内一家の影の部分である侘助。
明確な問題、敵はあるけれど、それが微妙に“勧善懲悪”にはなっていない。
こういう所がかなり良心的でもあるし、細田監督の(良くも悪くも地味だけど)上手い所なんだなぁと思った。
それに加えて、今作は“進んだネット社会と田舎の大家族”っていういくらでも説教臭くなる題材を扱っている・・・のに、そうはならない。細田監督は「顔も見えず、匿名性の高いネットとかじゃなくて、やっぱり実際に人と人とが向かい合ってこそ“真のつながり”だ」なんてことは言わない。ネットも田舎のやかましいまでの大家族も、どっちも肯定して描く。この辺りネット絡み、家族絡みで嫌な事件が多いからこその細田監督の思いが強く出てるんじゃないだろうか。
ただ、あくまでこう言ったテーマはオマケみたいなもので、『サマーウォーズ』の一番の楽しみは『時かけ』からも通ずる登場人物たちへの愛着であり、OZの世界観(これ一番!)、そして大家族がそれぞれのスペシャリストとして活躍し、色んな人々が一丸となって試合に勝つ、何かを成し遂げる気持ち良さ。ただ、健二と夏希の関係や学校での立場についての描写はもっと欲しかったかな。あの2人は物語の軸にしては弱い。このキャラの薄さは結構大きな欠点だったりする。
物語自体の完成度や面白さとか衝撃度は『時かけ』の方がだいぶ上なんですが、『時かけ』以上にまたあの世界観に浸りたいという思いが強いのでちょっと甘めに9点とします。 ・・・うーん、今作も『時かけ』ももう一回観直してみたんですが、やっぱりすごく惜しいんだけど8点にします。『時かけ』と比較しての点数になってしまって良くはないのですが・・・。