2.単純にスポ根ではない、SFでもない、幻想モノというのも何か違う・・既存のジャンルに当て嵌める事が出来ない、まさに「車田モノ」としか言いようのない独自の世界の確立が見事。「ワンパターンの美学」とは横山光輝氏によく使われる称号だけど、違う意味でこの作者にも当て嵌まる気がする。 マフィアのイタリア、科学力のドイツ、神話世界のギリシャ…等々、外国といえばアメリカと中国くらいしか知らなかった子供時分の自分にとって、各々の国が持つ文化的なるものが大変斬新に映りました。
「ストーリーが単純すぎる」という評をよく見るけど、ちょっと違う気がする。元々初期は「あしたのジョー」真っ青のドロドロとした複雑な人間ドラマだった。それがどんどん贅肉を削ぎ落として行って、シンプルな(そして凝縮された)完全オリジナルな様式美を生み出すに至ったという感じ。
少し大げさに言えば、絵画の具象画→抽象画だとか、現代音楽やフリージャズの猛者達が集まって生み出したジャーマンプログレ(CAN)のシンプルなビートにも通ずる構図ではないかと思う。
ただ本作以降のジャンプはこの様式の模倣に依存しすぎて、逆にきちんとした人間ドラマが蔑ろにされてしまったという部分が無くもない。