41. 封神演義
おちゃらけたノリがどうしても好きになれなかった。普通に面白いんだけど。とくに登場人物が「このマンガの連載が~」なんてふうにメタ的な台詞を吐いちゃうのが、どうしても許せない。そういう要素があると真剣な下りでも白けて読んでしまうのは自分だけだろうか? あと作品の性質上仕方ないかもだけど、人の命が軽すぎる感じもいやだった。絵柄はとても斬新で面白いと思うのだけど、自分のなかではとても微妙な作品。むしろその後の完全にふざけきった短期連載作品のが、開き直った感じがして好きだったなあ。 6点(2008-01-08 14:28:12) |
42. BLEACH
ベタ過ぎる展開もあるし、中だるみ感も否めないよなあと思いつつ、ジャンプを手に取るとつい真っ先に開いてしまうマンガ。 ときどき洋楽を絡めた英語の章題や、単行本の表紙のセンスが好き(そもそものタイトルがNIRVANAなのが個人的に超好印象)。他の方も言及なさっているように「卍解」の視覚的なインパクトが強烈で楽しい。 ただ、物語が進む毎に戦闘描写がどんどん派手になっていくので、この調子だとそのうち怪獣大戦争になっちゃうんじゃないかと不安になる。話を無闇におっきくしないで、適度なところでまとめてくれると嬉しいなと思う。 7点(2008-01-08 14:24:11) |
43. 君に届け
《ネタバレ》 とても評判がいいので読んでみました。初めの方こそ風早くんのキャラにちょっと引いてしまったけれど、だんだん面白くなってくる。とくに二巻のクライマックスなんかはもう、涙腺がやばい。 君に届けというタイトルは何も恋愛に限った話じゃなくて、不器用すぎる主人公が頑張って人と絆を繋いでいこうとする姿に重ねているんですね。爽子の真っ直ぐさがあまりにも健気で痛々しく、切ない。見た目がどうであれ、実は爽子という名前はこの子にぴったりなんだよね。明るくて誠実で、純粋すぎるくらい純粋で。 いかにも女子に嫌われそうなタイプのライバルも登場するけど、しまいには全然憎めなくなってしまうのがいい。こういうキャラクターにも愛情を持って公正に描いているところに、作者の人柄を感じる。 8点(2008-01-05 00:30:23) |
44. デトロイト・メタル・シティ
何かを誤魔化そうとして泥沼にはまっていくというタイプのコメディは好きになれない。途中まで読めば先がわかってしまうし、予定調和的というか、話ができすぎている感が強くて白けてしまう。それ以前に、単純にギャグがつまらないと思う。心地良いくだらなさではあるが、大笑いできるような冴えたネタはほとんどない。有名な割には、たいして笑えない作品。 4点(2008-01-04 02:56:52) |
45. 大原さんちのダンナさん――このごろ少し神経症
エッセイマンガが増殖する中、ひときわインパクトが強かったのがこれ。潔癖症から縁起恐怖までさまざまな神経症を抱えたダンナさんとの日々を、変に深刻ぶらずに愉快に綴る。シンプルでしっかりした絵柄も可愛らしく、読みやすい。 ダンナさんの強烈なキャラクターのおかげで単純に読み物として面白くって、それでいて読み終えた頃にはやんわりと価値観が変えられている。こういう生き方も、ありなんだなあと。いやー、こんなダンナさんみたいな人が身近にいたら楽しいだろうなあ。変人といえば変人だけど、言い方を変えれば恐ろしく感受性が鋭くて、才能豊かな人だと思う。あと、何気に著者自身のキャラクターもかわいい。 唯一気に入らないのが、家庭科の教科書みたいに華のない装丁のデザイン。ちょっと地味すぎて、インパクトのある内容に相応しくない。帯に載っていたせっかくの推薦文も効果的に使われているとは言い難く、すごくもったいない。こんなにいい作品なんだから、もっと上手にプロデュースしてあげてほしい。 9点(2008-01-01 21:48:23) |
46. シグルイ
そんなバカな、というキャラと必殺技のオンパレードだけど、驚異の演出力でぐいぐい引っ張る。残酷でエロもある異色作ではあるけれど、一気読みは必至の面白さ。敵役よりも主人公位置にいる藤木源之助のがろくでなしに思えるのは気のせいか? ていうか敵も味方もばけものばっかりだ(とくに岩本虎眼がやばい)。巻を追うごとにテンションは上る一方で、新刊がほんとうに待ち遠しい。 8点(2008-01-01 21:22:45) |
47. LA QUINTA CAMERA ~5番目の部屋~
個性的な絵柄がいいですね。でもエピソードによってあたりはずれがあって、面白いものもあれば当たり障りのないものもある。最近大人気のオノナツメさんだけど、個人的には物足りなく感じることが多いです。もう一歩、なんだよなあ。 6点(2008-01-01 21:01:05) |
48. ハネムーンサラダ
完成度がどうこうというよりも、絵や台詞に通う血の熱さが半端ない。仕事や恋愛に対して、社会常識すら無視してただ“ほんとうのこと”だけを求める男女三人が織り成す、異色の恋愛ドラマ。普通に考えれば男にとって都合のいいはずの状況も、二人の女性キャラクターそれぞれが持つなんとも手に負えない感じがリアリティを生んでいる。二宮ひかるという人は、めんどくさい女を描かせたら天才じゃないかと思う。 掲載誌がヤングアニマルなのもあってかエロい描写も多いんだけど、二宮さんの作品を読むと、セックスを抜きにして恋愛を語ることのほうが不自然なんじゃないか、と思わせられる。テレビドラマとかにするのは難しいだろうけど、下手な恋愛ドラマよりかはずっと重みがある。作者自身の心血を注ぎ込んだからこその、代表作でしょう。 8点(2007-12-16 18:55:00) |
49. さよならみどりちゃん
《ネタバレ》 一時期女性作家のマンガをたくさん読んだんですけど、これはとりわけ記憶に残っている作品のひとつ。南Q太さんのマンガって短い台詞と大ゴマ(手抜きとかじゃなく)で、独特のテンポでもって進むのが面白い。さくっと描いているのにとても繊細で、暗いネタなのに能天気でユーモラス。 ダメ男に引きずられるように曖昧な関係を続ける主人公。いっちゃあなんだけど、ダメ男にはまる女の人って、自分自身もダメ女な部分があるよね。自身の根元がしっかりしてないから、自分に負けないくらいダメな男を見つけてよっかかりたがる。これはそんな主人公が一皮向けて、新たな一歩を踏み出すまでの物語。 理想が入る余地のまったくないリアルな作風で、でもそれだけにポップコーンを振りまくシーンの突き抜けた明るさが、とても爽快だ。 映画化作品は怖くて未見。シネマレビューの方を見ると平均は低いのにけっこう点数が散らばってたりして、悩ましいところだなあ……。 8点(2007-12-12 02:56:56) |
50. 範馬刃牙
《ネタバレ》 読んでいると、超強烈なトンデモ本の誕生にリアルタイムで立ち会っていることを実感する。ある意味、面白い。 きっと作者は刃牙と勇次郎を、完璧に世界最強の存在にしたいのだろう。銃や爆弾を持ってきても殺せない、国家権力ですらただの腕力でねじ伏せてしまう、絶対無敵の格闘家に仕立て上げたいんだろう。でもはっきりいってそんな発想はひどく子どもじみているし、そんなばかげた空想を真面目に語っても誰もついてきてくれやしない。 王牙を初めとする各人物のエピソードは完全に常軌を逸している。勇次郎が走っただけで人工衛星にズレが生じるとか、生まれたその日に世界各国のトップが核の保有を決意したとか……なんというかもう、失笑という言葉では生易しいくらいに失笑もののエピソードが満載。はったりに関してはドラゴンボールよりすごい。 カマキリとの対決にも唖然としたけど、のちに原人ピクル編とクロスした時点で、完全に白けた。これまでSF的な世界観をまったく創り上げてこなかったくせに、いきなりジュラ紀(白亜紀?)から甦った原人を出されたって、読者が受け入れられないのがわからなかったのか? 全体的に支離滅裂だけれども、とくにピクルの登場はシリーズ中最悪の愚挙。マスターベーションにも限度がある。 第一部から読んできた者としては、「バキ」が単なるギャグマンガに成り下がってしまったことが、残念で仕方がない。 4点(2007-12-11 00:30:34) |
51. もやしもん
さまざまな菌が描きこまれた絵も細かいんだけど、欄外までびっしりと各菌についての註が載っていて、雑誌掲載時の登場人物の紹介まで毎回違ったコメントという始末(その紹介を単行本まで載せているというのも初めて見た)。単行本の「地」の部分にも小さな遊び心があったりして、情報量の多さはげっそりするほど。少なくとも立ち読みには向きません。 アニメ化が進んでるそうだけど、どうかな? この楽しさを再現するのは動画では難しいと思うけど。けっして上手な絵ではないけど、丁寧で緻密な描き込みは見れば見るほど面白い。たまに菌ドラマのパートのが面白くて、人間ドラマがどうでもよくなったり……。 7点(2007-12-09 22:00:16) |
52. バキ
シンクロニシティによって、最強の死刑囚達がいっせいに脱獄して日本にやってくる――といういきなりトンデモ科学な説明で始まってびっくりしたけど、まあ普通に楽しめた。この辺りまでは。問題は『範馬』編で……。 もともと絶対ありえないネタばかりだったけど、催眠術だの「毒ガス」だの自由の女神が崩れかけるだので、いよいよ謎のファンタジーマンガと化してきた。電話ボックスのなかで戦っていたらボックスが逆さになった場面なんかは名演出(まあこれもありえないんだけど、ぎりぎり許せる)だったけど、それ以上の領域に踏み込むのは明らかに危険。誰も板垣さんを止める人はいなかったのかなあ? あと、外伝の『性』。何なんですか? 作者が心配です。普通に心配。 7点(2007-12-09 21:42:24) |
53. 未来日記
未来予知の道具を与えられた12人が、最後の1人になるまで殺し合う、というサドンデスゲーム。それぞれの予知能力が持つ異なる特性を利用して互いに知略を巡らせる、というアイディアは面白いんだけど、『デスノート』や『ジョジョ』のあとに読むと二番煎じという印象も否定はできない。 けれどこの作品にはもう一点面白いところがある。それはヒロイン由乃の、完全にイッちゃってる人物設定だ。強力な能力であるはずの未来予知をも、彼女の狂った発想が上回ってしまう。予知能力ですら狂人の思考回路についていけない、というのがなかなかに痛快だ。 リアリティを拒否するような作風がちょっと苦手(十八歳少女の爆弾テロリストが出てきた時点でひいた)だけど、こういうノリじゃなかったら矛盾点に突っ込みたくなったかもしれない。細かい荒はマンガらしい良い意味でのいい加減さ、として受け流そうと思う。 今のところ人に薦めたくなるほど良い作品だとは思わないが、どうやら作者はラストまで明確な構想があるようだし、このイカれた女の子にどんな着地点を用意しているのかによっては、現時点より点数を上げてもいいなーと思っている。 6点(2007-12-09 21:24:19) |
54. グラップラー刃牙
《ネタバレ》 最初は癖の強い絵柄に抵抗を覚えたけれど、なんとか慣れました。地下闘技場トーナメント編は、ベタだけどやっぱり面白かった。渋川VS愚地とか刃牙VS烈とか、格闘ものの面白さを極めた感があった。でもこのマンガ、刃牙の親父だの何だのが絡んでくると途端につまらなくなってしまう。理屈ぬきに無敵過ぎて、なんかもうすごいんだかアホ臭いんだかわからない。ジャック・ハンマーとの決勝戦とか、けっこうどうでもよかった。 7点(2007-12-07 03:04:42) |
55. SUGER
新井英樹が描くだけあって、他に観たことのないような斬新なボクシングものになっている。キャラクターもそうだけど、単純に表現として衝撃的な手法も多くて、読んでいて驚かされることもあった。 主人公の石川凛はボクサーとしてはまごうかたなき天才で、でも超おしゃべりのお調子者で、あほで……というかなり片寄った人物。ようするに才能としてはずば抜けていても性格的には並、というかそれ以下のところもそなえている普通の少年が、誰にも予想のつかない形で成長していく。才能に振り回されているだけだったのが重い授業料を払って、いつしか真の能力を覚醒させていく。天才の成長譚という、『はじめの一歩』とはまったく違った作品となっている(まあこれは考えすぎかもしれないけど、一時期の『一歩』は意識していたんじゃないかという雰囲気があった)。 ちなみに個人的には凛より中尾会長の救いのないキャラクターが大好きです。 9点(2007-12-06 02:38:47) |
56. どうにかなる日々
マンガエロティクスFに連載されていたバラエティ豊かなシリーズ。お得意の同性愛ネタから幽霊もの、主婦や子どもが主役の割と地味なお話まで、どれも面白い。長編もいいけど、この連作短篇はいろんなアイディアで自由に遊んだおもちゃ箱のような印象で、作者自身もきっと楽しんで書いたんだろうなという感じがする。志村さんは短編作家としてもとても秀でていると思う。 ちょっとHな部分も全然エグくなく(第一話は別か?)、むしろ可愛らしい。登場人物の営みとして素直に受け止められた。物語は常にやんわりと着地する。ときにはつげ義春の某有名短篇を思い出させるような気の抜けた感じで。とくにしんちゃんとみか、志乃と民子のカップル、あとひとりで悶々とするゲイの高校教師のエピソードが好きだ。 長編連載を追うのもいいけれど、こういう質の高いコレクションもまたそのうち読んでみたい。 9点(2007-12-04 03:44:34) |
57. ドロヘドロ
スタイリッシュな独自の絵柄と世界観がかっこいい。ものの肌触りまで伝わってくるかのような厚みのある画。かなり暴力的な描写も多いんだけど、ブラックなユーモアとキャラクターの愛嬌のよさが、殺伐とした空気を相当に和らげている。トカゲ頭のカイマンは強さよりもかわいらしいし、女性キャラがみんな驚くほどごつくてガンダムみたいに強いんだけど、なぜか普通にかわいく感じられる。アクションシーンは迫力があるし、心臓を象ったマスクなど、作者独特のセンスが随所で光る。作者が普通の少年マンガに影響を受けたというだけあって、普通にわかりやすくて一般受けしそうだと思うんだけど、そんなにメジャーでもないのかな? もっと知られてもいい作品だと思う。 8点(2007-12-03 00:54:08) |
58. ラヴ・バズ
《ネタバレ》 志村作品のなかでも相当にマイナーだけど、好き。ヘタレすぎる女子プロレスラーの主人公キャラがいい。明るくて体力バカで、まるで違う漫画家が考えたみたいだと思っていたら、例の逃走シーンでやっぱり志村さんにしか生み出せないキャラクターなのだとわかった。負け続けるのを通して成長を描く、という珍しいスポコン。地味だけど面白かった。 7点(2007-12-02 00:00:20) |
59. 臨死!!江古田ちゃん
《ネタバレ》 明日をも知れぬ孤高の女、江古田ちゃんのなんとも筆舌に尽くし難い感じの日常を描いたインパクト抜群の四コママンガ。シニカルかつシビアな笑いのキレは相当レベル高いです。たぶん非常に女性受けのいい作風だと思うので、アフタヌーンに掲載されているのがちょっと不思議。さまざまなバイトに手を出しつつ経済的死線をかいくぐり、いつもろくでもない男にあっさり体を許してしまう江古田ちゃん。見ていていたたまれないほどたくましい。たまに「あんたがほしいのは母親か愛玩動物だもんね」と男心を突き刺すこといってくれたりして、油断なりません。 8点(2007-11-30 15:38:16) |
60. ONE PIECE
《ネタバレ》 登録しといてなんだけど、苦手です。連載当初から、なにが面白いのかわからなかった。 少年ジャンプの悪しき伝統に乗っ取って、必要以上にバトルものの要素が濃い。お互いの技を見せっこして、結局は根性で敵の攻撃を耐え切って勝利という、駆け引きも何もあったもんじゃないパターン。毎回律儀に仲間の数と同数の敵キャラクターを用意して、全員を一対一で戦わせ、全員が勝つ。味方の側にはまず死人が出ないので、緊張感は薄れる一方。尾田さんには戦いを面白く描く才能が、欠けている。 人間ドラマを展開する力はあるし、ディティールにこだわった絵は見ていてとても楽しい。戦いの要素を減らして、もっと人間ドラマ、冒険物語としての純度を高めるべきだと思う。悪魔の実などの設定は浅はか過ぎるし、キャラクターの設定なんかはあとから足しているのが見え見えで白ける。ついでにギャグも寒い。 なんというか、尾田さんの他に脚本や設定に関するブレーンがいたなら、傑作になっていたと思う。 5点(2007-11-30 00:22:29) |