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自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

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1.  精霊伝説ヒューディー
これに優るSFコミックに出会った事はない(未完だけどな)。  舞台が凄い。端から端まで何光年あるかわからんような、超巨大大陸ですぜ(作中の言葉を信じると数十光年は確実に越える)。どんだけヒューディーが暴れ回っても、あの世界の1エピソードにしかならない。その整理不可能な隈雑さが素晴らしい。 画が凄い。大野安之の画力はデビュー時から輝いていたが、このシリーズではフォルムが崩れてグチャグチャになる所まで行く。そのスタイルが完成したら、今度は他ジャンルの取り込みだ。絵柄を取り込むだけでなく、そのタッチが使われるマンガ世界のバックボーンまで取り込んでしまう。もちろんそんな程度で闇鍋化してしまうようなヤワなストーリーじゃなく、強大な敵(特に女王)が斬新なタッチで画にされる事で、他のキャラのインパクトなんて消し飛んでしまう。ヒューディーは、物語の上でも当然勝たなきゃならんのだが、タッチの強さの面でも敵に打ち勝つべく、様々に工夫が凝らされている。 言ってみれば北斗のラオウに立ち向かうシンプソンズ一家という画に、どうやったら説得力を与えうるのか。そんな、今までの作家がギャグに逃げて来た部分を、真剣に考察しながらペンを進めているのだ。 ネーミングが凄い。日本名を中国語に音訳し、さらに英語読みしたと言う固有名詞群は、他のSFファンタジーにありがちな安易なネーミングがひとつも出て来ない。当然、世界観は中国的なものをアメコミ風にブラッシュアップしたもので、一体どんな文明を元に構想したのかわけわからん状態になる。ネームが持つ力を損なわずに、様々な文献を元にしながらイメージ通りに画へ展開する根性は常人の想像の範疇を越えている。  そんな無茶やってるから未完に終るんだけどな…大野センセ、若いのに混じって萌系の画なんか描いてる場合じゃないっすよ。そろそろ一発、何かぶちかまして欲しいなあ…。
10点(2007-12-09 17:43:57)
2.  辺境警備
オイラの根っ子のひとつになってる作品だなあ。 これを越えて好きになれるファンタジーは、まだない。 紫堂恭子の全作品に言えるんだが、テーマの軸芯とキャラの複眼的な配置が、物語を豊かにしていくように慎重に設計されている。これに加えてディスカッションの多い展開が、トルストイのようなロシア文芸風の香りを生み、かなり19世紀的な、ノンブルでノンキな物語だ。当然、嫌う人は嫌う(オイラの周囲にも大勢いる)。『グラン・ローヴァ物語』以降の紫堂恭子はシステマチックに物語を構築している事もあって、その設計図が透けて見えるのも難点だろう。  だが、彼女の第一作である『辺境警備』だけは違うのだ。そういう手法を手探りで発見して行く、若い漫画家の熱が、たっぷりと含まれている。 「設計図もなしに宮殿を建て始めたら、なんと見事なモノが完成してしまいました」。 そんな感じ。彼女は、自分の土俵とする近世ファンタジーの分野では、小説・映画・テレビも含めて、向かうところ敵なしの天才なんじゃないかと思う。
10点(2007-11-07 22:47:04)
3.  気分はもう戦争 《ネタバレ》 
なにぶん中国も大変貌を遂げたし、毎日あったり前に戦争のニュースが新聞に乗る時代になったからインパクトは減った。だが今でも一読しておく価値がある作品だろう。あのラストは、当時どんなポリティカル・サスペンスよりもショッキングだった。 あえてネタを書いておくと、この物語は西遊記のキャラクター配置を真似て構想されている。いるんだが、そんなものは明後日にうっちゃられて無茶を承知のバカが展開される。このマンガで勃発する戦争が、容易にイラク戦争に重ねられる点もまた、「国際社会の本質って何も変わってないねー」としみじみ嘆息できるアルヨ。 ウェルメイドに乾いた笑いを共有してくれい。  ネタバレ的余談。 個人的な推理ですが、このマンガの奥付け(スタッフリスト)も「仕掛け」が一枚噛んでると思ってます。なぜなら、3人にスペシャルサンクスが捧げられてるから。ラストでアメリカに渡った大友がコミック誌に描いた「売れる戦争マンガ」こそが、本作の中国パート…と考えると、全体構成が(マンガ業界への皮肉も含めて)ビシッとキマる。 もしかするとこの、交互に語られるギャグとシリアスの物語は、「本物の戦争」の周囲をグルグル回りつつも一向に核心へは近付いていないのかもしれない。原作の矢作がどこまで考えているかは知らないが、情報に踊らされる日本人まで包み込んだ重層的な構造を感じてしまうアル。
10点(2007-11-06 22:00:15)
4.  封神演義 《ネタバレ》 
一般相対性理論のゲーデル解というのがありましてな…なんて書くと説明が長いからやめるか。SF者ですから、こういう「わかってる」作品はキチンと評価します。 原典の本筋を守りつつどれだけ遊べるか、という点にフォーカスし切った潔いコンセプトも好きですナ。人を選ぶ内容上等! 文句なしに10点とさせていただきます。
10点(2007-10-18 22:18:31)
5.  ゼブラーマン
幾多の欠点があろうとも、これは10点。まかりません。 イメージを壊したくないばっかりに、映画版も観てません。 オイラの中ではコレがオリジナル。 何をやってもうまく行かない時、これを読めば…やる気が出るとは限らないな(笑)。 モノゴトに「醒める」コトのカッコ悪さに気付く事だけは請け合いです。
10点(2007-10-11 22:23:46)
6.  School Rumble(スクールランブル)Z
ついに連載、終わったんですねえ。 スクランの「真の最終巻」と言いたくなる多数のエピソードを交えながら、本編へ収束していくサイドストーリーズ。ここではネタバレしたくないし文字数制限もあるから、ちゃんとしたスクラン論(《論》を出せるくらいに内容は濃い作品だよ…技法上はね)はブログの方に入れさせてもらいます。  この『Z』1冊に限った場合に言いたい事は、とにかく最終2話の主線が太~いッ! 「小林尽」という一人のクリエイターが、完成した証でもあります。太い線で明快な構図を見せる。これが結局、マンガの醍醐味なんだと思い知ります。スクラン初期の細く、頼りなく、迷いのある線と見比べてみればいいかも(ま、キャラもそれに合わせて末期は骨太になってますな)。 ガンダム初期の守護神・安彦良和は筆ペンでマンガを描く人で、線に迷いが全くないマンガ史上の傑物なんですが、本作最終話の各キャラたちを見てると、あの感覚に近いものがあります。タッチが決まればマンガの雰囲気が決まり、世界が決まり、物語も展開も終わり方も(ほぼ自由度なしに)決まってしまう。 本編のスクランは、作者のマンガに対する博識と小器用な技量でそれを避けてきていたわけだけど、『Z』では逃げていません…というのは言いすぎか…逃げていないわけじゃなくて、キチンとした作品のゴールに到達したわけです。 ラスト3ページ、主人公のあの強い、心底強いタッチには、読者として負けを認めざるを得ません。 作者と作品とキャラが一緒に成長してしまうマンガはよくありますが、その到達点をしっかりと示して「何となくここまで来ちゃった」感に溺れない、腹の据わった画を堪能できたと思いました。 …なぜここまで熱く語る必要があるんだ…後日修正するかも(笑)。
9点(2009-08-26 01:40:07)
7.  風の雀吾
知る限りではマンガ史上最大の奇作。 話がただグレエトなだけなマンガなら他にいくらでもあるが、最終話まで計算しつくして故意に破綻させている、神業のような構成力。1話読むごとに、次の展開がどうなるのか全く想像できなくなる。そして読者はいつのまにか作者チームの手の上に乗り、普通の麻雀マンガから遠く、遠く離れたトンデモナイ世界へつれて行かれるのだ。 絶版して4半世紀近く経つので入手は困難だとは思うが、目にする事があったら一度読んでみて損はない。 あなたの世界観・麻雀観は確実に打撃を受けるだろう。
9点(2007-10-14 00:50:44)
8.  School Rumble(スクールランブル)
播磨拳児の決まり文句「砕けろ! 俺!!」はもう自分でも口グセだからなあ。巻を重ねる毎にイタい奴になって行くけど、けっこうハマるキャラです。 天満も八雲もいいけど、一巻に一度は必ずある沢近のドツボっぷりが毎度の楽しみ。これがなきゃスクランじゃないね。水着相撲トリオも10巻目以降はいい味DASUて来た。本来、軸になってしかるべき烏丸がイマイチなのが…ま、出すぎると『究極超人あ~る』と区別つかなくなりますが。  毒にも薬にもならない内容にありったけのパワーを込める、そういうバカが大好きなオイラとしては、学園モノの中ではアニメ『トラブルチョコレート』と並んで外せない逸品です。   ●2009/8/15 追記: このタイミングにしてやっと全巻読み終わった(レビューしたのは16巻までの段階)。 ラスト数巻のほとんど末期ドストエフスキー(つーかカラマーゾフ)な展開に打ちのめされました。こいつらホント活きてるわ…キャラをないがしろにせず進めてきたからこそやれたクライマックスだったと思います。 実はずーっと、伊織が死ぬ事でラストを迎える(そして八雲の超能力は消え、塚本家は平凡な日常に戻る)と予想していたので、かなり、大きく、裏切られました。 最終3巻は幾度となく涙流したもんなあ…。
9点(2007-10-12 23:45:51)
9.  監査役野崎修平 《ネタバレ》 
いまのところ、SFファンタジー系を除けば最も好きなマンガって事になるだろうな。 世間的な評価について。この作品がどれだけ社会に影響を与えたかは、連載の途中で本当にできてしまった「あおぞら銀行」と、まさにリアル野崎修平登場と言ってよかった西武グループの不正会計スッパ抜き(あの監査役、絶対本作に影響されてるよなあ…)をみればわかること。本宮ひろ志が「女の子のパンティを描かなくてもサラリーマン漫画が売れる時代になったんだなあ」と泣いたエピソードも有名だ。 個人的な評価は何と言ってもまず「破滅的なまでの善良さ」、これだ。澄んだ目をして曲がった事のできない(でも押しは弱い)野崎の純真ぶりは、読んでいてうざったくなるほど。こんな奴、現実に監査役できるわけがない(いや現実に登場したわけだが…)、絶対首を斬られる、システム抜きの人力で銀行業務できるわけないだろ、総会屋を無視して株主総会だなんてそんな無茶な…etc etc. その無茶苦茶さがラストのあおぞら銀行崩壊までつっ走って行く。これがもう、まるで大悪党を見ているかのような爽快さで、正義と悪の価値観が頭の中でぐるんぐるんと逆転し始める。『バスタード!』の陰画と言っても差し支えない。 社内で敵に回る奴らは、みんな人間らしい暗部を持った男たちばかり。リアルで、非常に微妙な存在で、90年代には本当にこんな銀行マンたちが日本を動かしてたんだろナ、と想像してしまう。そういう猛者が野崎監査役の非常識力の前にどんどん敗退して行く。何しろ相手はバカである。神の加護を受けた無敵のバカ。 だが最強の敵はなかなか尻尾を出して来ない。中盤以降でないとあおぞら銀行のバックで何が起こっているのか想像もできず、ただの監査役はやがて日本の歴史の暗部にまで目を向けざるを得なくなる…と、このあたりのスケールアップの仕方が、実に大人向けでしっかり描かれているのが良いのだ。  10点に届かないのは、ほとんど終り近くで連載が集英社に移り、現実離れしたスピード伏線回収に向かったため。物語としてはキッチリ終らせたものの、新シリーズ『頭取野崎修平』に移行する段取りがミエミエで、「あんな作品を書くために急いで終らせなくてもよかったのに…」と悔やむ事しきり。 それでも「善」が「悪」になる大人の黒い世界で善を通し続ける破壊的な痛快さは、この程度の欠点で消えてしまうものではないですよ。
9点(2007-10-11 22:06:16)
10.  テルマエ・ロマエ
行きつけのショットバーに全巻置いてあったので2巻まで読んでみました。 キモは文明の異化にあって、そこで風呂を肴にするとこが面白いんだけど、日本人側じゃなくローマ人側を主人公にしたとこが意外に深い。 一種の現代の戯画になってます。時代を映画『グラディエーター』の50年くらい前に設定して、帝国最盛期の当時の典型的マジメローマ人に現代日本人を「属州民」「平たい顔族」と言わしめるあたり、まさに西欧と日本の立ち位置を踏襲してる。 その上で、日本では西洋文化が流入してくる前に確立していた「風呂」を土俵にすると、割りと万国共通な、根本的な問題を語れたりするわけですな(なのでフルーツ牛乳とシャンプーハットはちょっと勇み足ですが、スタンプラリーと滑り台はアリかな)。 自国文明が最高だと奢るのは誰もが陥る罠で、時の帝国人であればなおのこと…そこを冷静な技術者の目で、謙虚に比較していく点。その思索の結果を自文明で再現しようと努力する姿。オイラはルシウスのその姿勢にローマ・中国・イギリスにかつてあった「良き帝国人」の影を見たりします。作品意図を大きく越えていますけど。 さすがローマ人、ルシウスの器は大きい。
8点(2012-02-12 10:21:40)
11.  マージナル
萩尾ワールド版『闇の左手』。SFとしての完成度は、アイデア/ディテール/キャラクター共に『スターレッド』を凌駕している(スケールでは負けるが)。そして暗黙の男性上位にあるメインストリームSFの世界に撃ち込まれた、ヘビー級パンチ。  どこに出しても恥ずかしくない、堂々としたバイオテクノロジーSFで…普通やりますかぶぉーいずらぶオンリーの世界創造を…。 そもそもが、コミケ会場で「やおい」の言葉がやっとこさ現れ始めた80年代後半に本作は出版された。多くのジャンルで萩尾望都はいつも先駆者だ(コミケ自体の先駆者と言う話もある)。今なら普通に読めるこの作品も、当時、多くの人間が黙って通り過ぎて行った。萩尾アンテナは10年未来からのタキオン粒子に反応していたのだ。 まあ正直な話、ハードSF部分は女性層に受けると思えないし、メインストーリーは男性読者がドン引き。どう考えても、作者が「自分の読みたいマンガ」を描いたとしか考えられない。そういう手すさびにここまでのパワーを傾けちゃうんですか。後悔しませんか先生。 いっやぁ萩尾作品には永遠に勝てませんわー。
8点(2007-11-12 23:04:25)
12.  わたしは真悟
「叫び」で有名なムンクには、もう一つの代表作「マドンナ」がある。だが、精神病院で療養中に描いたクロッキー連作「アルファとオメガ」が、最も印象深く凄まじい。 絵本と呼んで差し支えない「アルファとオメガ」は全然恐くないので、「叫び」に比べれば最初のインパクトは薄い。だが、世界観全体が狂っているので、常識や理性が邪魔して容易に呑み込む事ができないのだ。自分の狂気に永住地を見つけてしまったムンクの逝きっぷりが、まるで『カリガリ博士』の物語のように読む者を「恐くない不安」に陥れる。ここで、真に恐いのはアルファでもオメガでもなく、ムンク自身なのだ。  さて『わたしは真悟』。ムンクのこの作品を目指したかは知らないが、物語を引き受けるナレーションが相当に恐い。この時期の楳図かずおはグロな恐怖漫画から一歩離れて、もっと凄い恐怖、さらにもっととてつもない恐怖…と自らの心を探求していたんじゃないかと思う(結局、本作の少し後の『左手右手』で原点に戻って来る)。そういう意味では『わたしは真悟』が、楳図マンガの最深部のように思える。もうここまで来るとトラウマになるような恐怖は描かれないが、もっと根深い、自由だった精神をねじまげられて奇怪な形の鋳型に押し込まれるような、「正常な思考って何だろう」みたいな哲学的恐怖が味わえる。 物語自体が直観的で、論理性が排され、電波でお花畑で幼児的で、換言すれば神話に近い。末期の星新一作品も同じような境地に達していたと思っているけど、果てしない試行錯誤/自己探索の末に他の選択肢をなくして自らの狂気(と言って悪ければ自分の内的空間)に安住した星と違い、楳図かずおの方がこの領域へ計画的に、パワフルに到達しただろうと思っている。 この話を語る真悟は、ある一人の人間の表現しがたいギリギリの内奥に、厳戒まで肉薄した姿だと評価する。オイラの中ではムンクと等価です。
8点(2007-11-06 22:38:04)(良:1票)
13.  マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語
本作はコミックで唯一、ピューリッツアー賞を受賞した作品である。 マンガに一体何ができるのか、という事を考え抜かれたこの物語は、削りすぎで語らなすぎで、だがとてつもなく饒舌で、当然ながら深い底なし沼みたいな内容になっている。 これは作者の父が体験した、ナチス時代のアウシュビッツを描いた物語だ。ちょうど『シンドラーのリスト』を観る半年ほど前に読んで、まあ今でもコッチの方が数段優れていると思っている(泣かせは100%削られてるけどね)。 10年スケールの長い時間をかけて、自分の中にじんわりと染み込んでくるコミック。自分の内面に潜む「親から譲り受けたもの」を見つめる鏡として、静かに、真顔でオススメしたいと思います。
8点(2007-10-09 21:51:48)
14.  進撃の巨人 《ネタバレ》 
ひとつのキーワードを口にすれば、おそらく半分以上のパーツが有機的に繋がってくる。宗教画家のヒエロニムス・ボッシュだ。 類を見ない凄惨さ、画的な遠近の崩壊、中世ゴシック風の建築様式、裸体で手足の短い巨人…『快楽の園』『最後の審判』あたりのボッシュの代表作を見れば、大体察しがつくだろう。本作はカトリック教の黙示録的な枠組みに現代の倫理観をぶつけるという意味で、記号的にはエヴァンゲリオン(TV版)の亜種に分類できる。またそこから派生して、巨人が人類に審判を下す《天使》として機能していること、《人間》であり《神性》をも秘めるエレンは再降臨したキリストの立ち位置にいるであろう事が推測できる。大きな枠組はこれで理解完了だ。 だがこれだけで終わる話ならレビューすら書く気にならん。恐ろしいのは、1巻目冒頭の「なんかすっげー長い夢を見ていた気がする」というセリフ/そして1話の『二千年後の君へ』というタイトルが、ルールなく素っ頓狂にジャンプする語り口に効いてくる点だ(計算なしに素でやってるとは思えない)。もう一段上のメタな構造がありそうな匂いがする。 ここにまたキリスト教の《信仰》なんかを絡めて世界構築するとジーン・ウルフの『新しい太陽の書』、個人の成長物語に留めようとすると『エヴァンゲリオン』、グダグダにやってしまうと『大日本人』というあたりか。 定期的に登場する800番台の数字のコマなんかを考えると、ちゃんとした仕掛けは用意されてそうだ(って書いたけど、読み直してみたらコレただの年号かよ…?)。ガチガチのキリスト教的世界観をどこで、どうイリュージョンさせるか。読者として今の興味はその一点に尽きる。
7点(2011-09-20 01:23:10)
15.  童夢
レビューというか思い出話。 バブルもすっかり終わった頃、中野のまんだらけに、当時ホームステイしていたイギリス人の学生を連れて行った事がある。彼は幕末の浮世絵師、月岡芳年に衝撃を受け、浮世絵研究をしたくて日本語学に手を染めたという(なので神保町にも連れて行った)。 浮世絵の製作システムは、現代ではマンガに受け継がれている。絵師と刷り師と版元の関係は、漫画家と印刷工と出版社のそれに置き換わり…とか書くと長いんで省くけど、要は現代にも浮世絵文化は継承されている事を知ってもらいたかった。  所持金二千円。これで日本のマンガ文化を知らしめるために、何をチョイスするべきか? 結局セレクトしたのは、『百億の昼と千億の夜』、そして本作『童夢』だ。ヒトによって選択は異なるだろうが、オイラにとっては今でもこれがベストの回答だったと思っている。 写真、映画と違い、マンガは全てを作者のペンによって創造する。本作が書かれた時代はまだコンピュータも使用できず(少し後で大野安之がMacでの作画を、寺沢武一がン千万円かけたCG専用システムでの作画を始める)、画家のペン先が世界を産む全てだった。 本作は間違いなく旧時代のマンガ製作システム(印刷・出版を含む)における写実の頂点だと信じている。  件のイギリス人からは、その後インターネットが普及した頃にメールをもらった。大学を卒業した後は国連職員になったらしい。数年前に検索してみたら北朝鮮の兵力分析のレポートを出版していた。今やすっかり極東アナリストだ。 いろいろな意味で、時代は変わったんだと実感した。
7点(2009-08-09 10:39:33)
16.  ハジメルド物語
SF界の異才・竹本泉のデビュー作。 同人誌ヤッターペンギン時代にはあの絵柄でクロカワいいマンガを書いていた竹本泉も、なかよしでの初連載ですから無茶はできない…と思ったら原始人マンがですよ。『おはようスパンク』の頃のなかよしで。 お約束の棍棒持った巨漢も登場、恐竜も登場、火山も大噴火。要するにナンチャッテ原始時代ムービー『恐竜100万年』の、竹本解釈ほのぼの版です。マニアックすぎます。当然、単行本が出るのは遅れに遅れ、何度か再版したものの即時絶版という悲しいデビュー作に。  『あおいちゃんパニック!』で(マニア間で)プチブレイクするのは、この後数ヵ月を待たなければならないのであった…。
7点(2007-11-03 09:32:29)
17.  私立味狩り学園
良質のエンターテインメントというモノは、言ってみれば流れを邪魔しないで、受け手が物語世界へ接触できる空間なり作品である。言い替えると「ツッコミのないボケ」である。そもそもツッコミは受け手の代わりとなって、その世界の独自ルールなりを橋渡しする役目。そんなまだるっこしい手順はない方がいいのだ。「突っ込む必要がないボケ」を実現できるのが良質のエンターテインメントだと言っていいだろう。 料理マンガの世界を見回すと、この「ツッコミ役」が異常に幅を利かせているのがわかる。ブームの発端が『美味しんぼ』だから、仕方のない面はある。あるんだが、あまりに物語の流れが生まれない。知る限りで唯一及第点を出せるのが本作だ。 というより本作にはツッコミ役はいない。山積みの米俵を炎上させて「この熱で釜飯を作れ!」と言われてはサスガにツッコミようがない(『スーパー食いしん坊』なら突っ込みかねないが…)。この全編ボケまくる、読者の立場に立ったジャッジメントが一切ない展開は、平凡なキッチンを軽々と異世界へ飛ばしてくれる。最後のカレー対決など、まさに「命賭ける必要ないんでないの」という無駄にパワフルな展開でブッちぎってくれた。  …もちろんこのマンガ、常識人には失笑を買うんだけどな。
7点(2007-10-20 23:14:40)
18.  寄生獣
実は寄生獣の評価、あんまり高くありません。 哲学的な内容展開をしていた割には、言っていることがイマイチぶれ気味。個の問題・環境の問題・政治の問題、その場その場で扱うテーマが風見鶏のように変化していく割には、どこにも着地点がなかったりする。「問題提起が多い割には、考えながら読むのに不向き」と評させてもらおう。 後年出る『ホムンクルス』が、この辺の欠点を意図的に補修している(個の問題に絞り込んだ)。なので、本作『寄生獣』はメタモルフォーゼ・ジャンルの画的・理論的な支柱として礎になった、と感じている。 この作品、いつの日か映画化でもう一度花を開くチャンスがあるだろう。CGの進展度から言えばあと3~4年後かな? その時には(時間制限から)総花的な内容にはできないだろうから、キッチリとピントを絞って欲しいと願っている。 個人的には、ミギーにキッチリとした目的を見出させて欲しい。
6点(2009-08-09 10:06:45)
19.  墓場鬼太郎
水木作品の中ではマイナーなモノを選んで登録してみたつもりなんですが。 登録されたとたんにテレビ化ですか。 鬼太郎の目がつぶれるシーンや、目玉親父誕生の生々しい逸話、話の発端となる血液銀行(うわっ戦後ッ!)…本当にやれんのか? 大丈夫か? ネズミ男も登場するらしいので、薬でベロベロになる鬼太郎の逸話もやるはずだな(記憶あいまい)。 ともかく、世の中なにが起こるかわからんもんです。
6点(2007-11-16 00:47:28)
20.  墨攻 《ネタバレ》 
酒見賢一の原作が出た時、速攻で買って即座に読破し躊躇なくファンになったからねえ…マンガ版のアコギな膨らませ方、引き延ばし方は罪だと思います。 特に原作を消化し切った後の、墨家の本丸と戦う中盤/始皇帝と戦う後半は惰性で仕方なく読んでた。悲しかった。だが最も悲しかったのはラストだ。 革離は梁で死ぬからこそ、常人には到底たどり着けないほど凄味が増すのだよ。 梁は一瞬で消滅するからこそ、中国の酷い古代史を味わえるのだよ。 多分、藤原カムイならそういう風に書いてただろう。
6点(2007-10-17 21:35:15)
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