みんなのシネマレビュー

妖婆・死棺の呪い

VIY
(ВИЙ)
(魔女伝説・ヴィー)
1967年【ソ連】 上映時間:78分
ホラーファンタジーオカルト映画
[ヨウバシカンノノロイ]
新規登録(2004-01-17)【バッテリ】さん
タイトル情報更新(2022-04-03)【かっぱ堰】さん
公開開始日(1985-01-18)


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監督アレクサンドル・プトゥシコ(総監督)
原作ニコライ・ゴーゴリ
脚本アレクサンドル・プトゥシコ
あらすじ
中世ロシアの古都キエフ。ブラッキー修道院の庭に若い神学生たちが聖歌を歌いながら喜びの表情で集まっている。待望の夏休み。司祭の送辞もほどほどに、寄宿生たちは懐かしい故郷目指してコッサクの農村地帯を進んでいく。神学生ホマーはふとしたきっかけで帰途、魔女に出会い、古びた教会の聖堂で妖怪と戦うはめに。そして悲惨な結末が彼を待ち受けていたのだった

バッテリ】さん(2004-01-17)
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【クチコミ・感想】

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7.《ネタバレ》 邦題は長いが原題は単純にヴィーである。宣材ポスターの真ん中にでっかく「ВИЙ」と書いてあるのが不気味だ。
原作者の出身地と劇中設定、及び撮影場所はウクライナとのことで、原作を読むと劇中の神学校は現在の首都(※注)にあったことになっている。ちなみに神学校の課程は(文法級・)修辞級・哲学級・神学級の順番で進級していく形だったらしい。
主人公が自分はコサックだと言って強がっていたが、原作を読むと村人もみな実際にコサックの民だったようである。村の有力者は役名が「ソートニク」(Sotnik / Сотник、百人隊長または百人長)だが、これはコサックの地区単位の軍指揮官兼行政官のような立場らしい。村人や主人公がいい声で歌ったり踊ったり、また素朴な女声合唱が聞こえたのも地元風ということか。考証的なことはよくわからないが、ウクライナ・コサックということに焦点を当ててご当地色を強く出した映画になっていたのかも知れない。ちなみにヒマワリの花も見えた。
ほか細かい点として酒場のコウノトリ3羽は絵になっていた。また酒場でドアが3つ開いたのは、村人が妖術を使ったのではなく主人公の酩酊状態の表現だったらしい。
※注:原作和訳「キーエフ」、2022.3.31日本政府発表「キーウ」、ほか「キイフ」「キーフ」「キーイフ」「クィイヴ」

全体的には、日本でいえば60年代の大映の妖怪映画のようなものかと個人的には思った。子どもが見れば結構怖いかも知れないが、基本的にユーモラスな作りなので大人なら笑って見ていられる。いきなり黒ネコが何匹も横切るとか、古典的マジック風に祈祷書から鳥が出るといった趣向は好きだ。
全体が1時間強の中に3日3晩を収めるので、毎晩ほとんどすぐ一番鶏が鳴くのがとぼけた感じである。終盤の妖怪大集合もファンタジックで賑やかで楽しめるが、邦題の妖婆と原題のヴィーが別物だったのは意外だった。最初に壁から湧いて出た異形の連中が、最後は壁に入り切れずに伸びていたのは面白い(ミミズが干からびたイメージ)。
ドラマとしては素っ気ない終わり方だったが、こういうとんでもない事件も記録に残るわけでもなく、やがて人々の記憶も不確かになって日常の中に埋もれていくような雰囲気は出ていた。ラストのクラリネットのメロディが、日本でよくある昔話の結句のようにも聞こえる。日頃から強面で不愛想だったソビエト連邦にしては、万人が楽しめる映画を作ってくれたものだと思った。 かっぱ堰さん [DVD(字幕)] 6点(2022-04-02 09:47:33)

6.《ネタバレ》 ゴーゴリの中編小説『ヴィー』の映像化。社会主義リアリズム・唯物史観のソ連で製作された珍しいホラー映画、まあ文豪ゴーゴリの作品の映画化だからお目こぼしをいただいたって感じなんでしょう。ゴーゴリにはこういうフォークロア的な怪奇譚を題材にした作品が散見され、言ってみれば小泉八雲の『怪談』の一エピソードを映像化したようなもんです。当初若手の監督が映像化を手掛けたが上手くいかず、ソ連発のカラー映画『石の花』を撮った大御所アレクサンドル・プトゥシェンコが引き継いで完成させました。 神学生が夏休みの帰郷途上で道に迷って気持ち悪い老婆の家に泊めてもらいます。老婆は夜中に神学生に迫ってきてあわや貞操の危機かと思いきや、実は彼女は魔女で神学生に馬乗りして空中浮遊を愉しみます。ここは原始的な合成特撮ですが、幻想的な雰囲気は良く出ていました。またここまでのストーリーテリングはコメディ調で、民話的な軽快さがあります。地上に降り立った魔女に神学生は反撃しこん棒で滅多打ち、瀕死になった魔女は若い美女に変身、彼はビビって逃げます。この魔女転じての美少女が確かに目を瞠るような美形で、これは眼福です。学校に逃げ帰った神学生は、校長から死にかけている地主の娘が彼を指名しているので、最期の祈祷をして来いと命令されます。行ってみると娘はすでに死んでおり、そして彼がボコボコにしたあの美少女でした。そして父親から三晩連続の祈祷を依頼されますが、それは恐怖に満ちた三晩になるのでした…ここからは死棺から夜な夜な蘇る娘と学生の対決になりますが、結界を造って籠ったので娘には中に入り込むことはもちろん彼を視認することすらできません。しかし三晩目には彼女は霊界から悪鬼と妖怪ヴィーを呼び込んで攻めまくってきます。やはりこの映画がカルトとして映画史に残ったのは、この悪鬼とヴィーのビジュアルのおどろしさでしょう。短いシークエンスでしたが子供が観たら悪夢に悩まされるのは必定でしたが、ヴィーの造形が水木しげるの描く妖怪みたいだったのには苦笑でした。  ランタイムも70分余りと中編でしたが、フォークロア調の語り口が印象的な秀作です。原作の舞台もロケ地もウクライナで、登場人物たちもウクライナ・コサックです。現在この地がとでもないことになっていると思うと、心が痛みます。 S&Sさん [DVD(字幕)] 7点(2022-03-14 02:18:41)

5.《ネタバレ》 ロシアの香り。ホラーは土地の香りが大事。と言ってもこれは「ホラー」ってより「民話」だな。話はグリム童話にもよくある三晩妖怪と戦うってのだけど、主人公の髪形見ただけでもういかにもロシアの農奴。婆さんに乗っかられてフワーッと倒れ、またフワーッと置き上がるあの感じ。回転台の上を走ってるこのセットの感じ。全体にフワフワ感。メカじゃなく手作りの感触。涙がふっと赤くなり、起き上がった魔女がスーッと滑るように下りてくる感じ。どってことないことやってるんだけど、特撮でキラキラやるよりよっぽどハッとさせる。ロシアの土の匂いと、どこかでちゃんとつながってる。そして魔群の登場。湧いてくる感じがよく、壁面をいざるように降りてきたり、板の間からボタボタ落ちてきたり、手だけが出てきたり。本の中から烏が出てきたのは、二晩目だったっけ。 なんのかんのさん [映画館(字幕)] 8点(2011-03-22 09:57:16)

4.オバハン背負ってる宣伝用の写真が妙にコケティッシュ?で強く惹かれたので観てみたら、写真のまんまの変な雰囲気の映画やったな~。だから、題名に反して、俺はあんまり怖くはなかった。怖いというより間の抜けた楽しさ(小話を一つ聞くような)って感じ。日本の「耳なし芳一」に似たストーリーなんやけど、全体的なノリは変にテンション高い(明るい)エクソシト?だから観る人によったら怖いかもしれん。特撮は幻想的(白黒なんも妙に幻想的)やねんけど映画というより舞台劇の仕掛けみたいで、ちょっと新鮮やった。特にオバハン背負って飛ぶとこ、地面が回転して人が進んでるように見せるんやけど、コントの舞台仕掛けにありそうなやつで、なんか印象残る。それに最後の妖怪大集合シーンは妖怪のデザインが日本のヒーロー物の怪人テイストでなんかいーわ。特撮のビジュアル面はほんまどれも味があって子供の時観てたら、ひょっとしたらトラウマになってたかもしれん。時間はそない長くないし(70分くらい)、テレビの日本昔話を一話分、ちょっと長めに観る感覚ちゃうかな。たまにはこんな変な怪奇映画で夜を過ごしてみてはいかがでしょうか? なにわ君さん 5点(2004-07-30 13:49:26)

3.《ネタバレ》 ホラーとしてのクオリティは正直さほど高くはないが、中世ロシアはウクライナ地方の生活感溢れる描写がズバ抜けており相当に見応えある一篇。主人公であるキエフの神学生ホマーのぐうたら生臭坊主っぷりも実に活き活きして見事。ソ連お得意の奇麗ごとで塗り固めた共産主義万歳プロパガンダ映画とは完全に一線を画して痛快ですらある。本作ではゴーゴリの原作を忠実に素朴に描くことに傾注しているようで変にキリスト教のご利益を説いて説教・折伏する訳でもない。コレも欧米のキリスト教PR映画の多さに辟易の自分にとって新鮮な印象だった。必死に逃亡しようと試みたり、真相をバラして許しを乞おうとしたりジタバタした挙句に三日目の夜を迎え敢え無く変死を遂げるホマーの姿は運命に抗おうとして果たせずに死に行く我々人間の営みそのものを象徴するかのようだ。かといって決して陰惨ではなく、民話を思わせる朴訥さとユーモラスな語り口で見せるところが本作の秀抜な点と言えよう。ラストの妖怪大集合シーンは「ロード・オブ・ザ・リング」辺りに影響を与えているような気もする。気のせいか?でもP・ジャクソンならコレ観てても別に不思議じゃないしな。ともあれ、ウォッカからボルシチまでロシアの魅力が満載の隠れた名作に8点進呈! へちょちょさん 8点(2004-04-14 01:54:42)

2.よほどの怪奇マニアでなければ知らないだろうと思われる作品であるが、思い出したようにTV放送されることもあり、DVD化もされているところをみると、以外にファンはいるようでニヤリとしてしまう。邦題はなんともおどろおどろしいが、ゴーゴリの原作を極めて忠実に映画化した正統派の作品です。ロシアの伝統的な妖怪を題材にしており、少し薀蓄を述べさせてもらうと、若い女の魔女はウェージマ、老婆はバーバ・ヤガー、そして原題にもなっているヴィイは最後に登場する瞼の垂れ下がった化け物です。あと、音楽もプロコフィエフのような大物が参加していたように記憶しており、映画も国家事業の一環と捉えていたソ連ならでは存在し得たような作品でしょう。いまや貴重な遺産的映画です。 shakuninさん 7点(2004-04-05 01:06:46)(良:1票)

1.おどろおどろしくて、でもどこか人間臭さのあるロシアの怪奇物語。中世ロシアの神学生が、夏休みに修道院から実家へ帰る途中、妖怪に取りつかれ、なんとか逃れようと必死の試みをするのだが、あえなく最期を遂げるという内容。ホラーというよりも小泉八雲『怪談』のロシア版というところ。妖婆ということだが、若くきれいな女優が演じている。当然CGなんてない頃の作品で、特撮はご愛嬌だが、ヨーロッパでもアジアでもないロシアの宗教的風土が親しみやすい恐怖を感じさせる逸品。最後になって登場する怪物のヴィーといったらもう。。。水木しげるの世界でもあります。堕落しきった当時のソ連社会において、こうした映画を一生懸命作製していた映画人がいとおしい気分になります。20年ほど前、アテネ・フランセで観ました。懐かしいなあ。 バッテリさん 10点(2004-01-17 14:06:22)(良:1票)

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【点数情報】

Review人数 7人
平均点数 7.29点
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200.00% line
300.00% line
400.00% line
5114.29% line
6114.29% line
7228.57% line
8228.57% line
900.00% line
10114.29% line

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