みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
7.立派な作品です。水辺のシーンは、誘拐の場、入水の場、母との再会の場(ラストのパンより厨子王が駆け寄るところ)と、どれも素晴らしいし、セットも重厚、厨子王を探して松明かざした追っ手が寺の境内に詰めかけるあたりの空間処理は見事の一語。でもそれがどこか、クラシック歌手がスマして童謡歌ってる時のような、ピタリと合ってない違和感もある。テーマとしても、社会的に固まってしまっているシステムへ反抗することの困難さ、つまり革命の難しさをけっこう詰めて描いている一方、主人公周辺は“昔話”のトーンで進められる。溝口作品では珍しく、男女の恋愛が描かれない。女っけのない、母と妹しか頭にない主人公って、これやっぱり昔話の登場人物だよね。だから彼がやったことは昔話としては納得いくんだけど、社会変革者としてみると、自己満足というか単に意趣がえしでしかなく、あの解放された下人らの未来もあんまり明るそうではない。そこらへんのトーンのブレが気にかかる。ただ人さらいの毛利菊枝の怖さは別格で、この監督は悪い女を描くと変に染み入って記憶に残るんだ。『夜の女たち』って、作品自体は部分的にしか記憶に残ってないんだけど、転落のきっかけになる古着屋のおかみさんの、親切ごかした悪意の描写は染み入った。関西人ならではのねっとり感があって、いやーな薄暗い感じが滲んでくる。そうか、どっとも親切めかして田中絹代を“遊女”に落としたわけか。この種の酷薄さを描くと、凄い監督だった。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-07-18 12:01:25)(良:2票) 6.話の筋はもちろん、心情までもが映像で語られる。厨子王がなぜ人の心をなくしてゆくのか、そしてどこでまた取り戻してゆくのか、はたまた山椒大夫はなぜ非道なのか、息子はなぜ坊さんになったのか、、、時代背景や荘園制度の説明はあっても、それ以外は映像で語る。この手の話はついついストーリーを追って見てしまう。しかもこの映画は厄介なことにわかりやすいので余計にストーリーを追ってしまう。しかしこのわかりやすさが全て演出の賜物であるということがこの映画の凄いところ。というか本来はこれが普通なんでしょうが。長回しに拘らず話のテンポをつくるカット割も普通に絶妙。オーソドックスで完璧な映画。画はどこもかしこもきまってて、画だけ見れば全てが名場面と言ってもいいぐらい。一度しか見ていないので、今度は”話”ではなく”画(映画)”を堪能しながら見直したいです。 【R&A】さん 7点(2005-01-07 15:28:33)(良:2票) 5.《ネタバレ》 安寿と厨子王が波路の霜除けの草屋根の為に枝を折って転んでしまうシーンは勿論彼等が幼い頃のそれを彷彿とさせ、奴、端女として過ごした時の長さの無情さを感じさせますし、山椒大夫の所から厨子王を逃がすシーンでおばあさんが安寿に「私を縛っておいき」と言う意味を前の台詞から読み取ると「お行き」ではなく「お逝き」だと分かるとその後に「さようなら」と何度も言い合う2人の姿はこれ以上ないくらいに切なく映ってしまいます。 しかし、安寿を厨子王の妹にした為に逃亡シーンでは2人のキャラクターが機転の効いた利発な妹と不甲斐ない利己的な兄となってしまい、本来なら慈愛的な犠牲として安寿の死を捉えたいのに戦略的な犠牲という印象が強くなってしまっていると思います。 原作に沿った姉が弟を守るという年長者の慈悲というような見せ方なら収まりが良いのですが、強い者による自己犠牲の構図が壊れてしまい年上の男が年下の女を犠牲にして助かるという描き方では心に響くものがなくなってしまい、安寿への哀れみだけが残りこの後行動を起こす厨子王へは肯定的な感情移入が難しくなってしまいます。 原作者のこの設定を制作者が変えた理由は解りませんし腑に落ちなかったです。 その為断片的には感動できるのですが全体的に見ると少し感動が薄れた印象になってしまいます。 厨子王が佐渡に渡り船頭に中君(母親)の所在を尋ねるシーンがあります。 ほぼ何も無い砂浜の手前に人物を置いていますが、フレームに対しての人物のサイズと位置が絶妙のバランスとなっていて彼が僅かなコントラストのある白い砂浜に足跡を一つ一つ残しながら奥に歩いて行く姿は絵画的な美しさが有りもう少し見ていたい気持ちになりました。 しかし、先に見た約半年後に公開される「近松物語」との相対的な評価になってしまいますが、フィルムのラチチュードが狭い為なのか最暗部の黒の締りが弱いので画にそれ程力強さを感じられません。 構図自体は「近松物語」同様素晴らしいカットが多々あるので非常に勿体無く思いました。 獅子王が山椒大夫の元から逃げる決意を安寿に表した時にほんの一瞬だけ彼女の顔が緩みます。 それまでの彼女の人生とその後の運命を思うとあの一瞬の笑顔は言葉にならないくらい印象に残りました。 【しってるねこのち】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-07-18 18:09:02)(良:1票) 4.《ネタバレ》 世界的な評価の確立した名作に対して「7点」というのは、自分としてはやや低めの評価です。観る前のハードルが高すぎたのですが、駄作と言うほど悪いとは言えないものの、傑作と呼ぶ気にはなれません。宮川一夫のカメラと香川京子が申し分もなく美しいことに変わりないし、花柳喜章だって悪いとは思いません。じゃあ、いったい何が不満だったのか。おそらく、わたしは、鴎外の文章がもっていた非常に簡潔な叙事性と、前々作の「雨月物語」が強烈に放っていた神秘性とを、両方とも併せもったような世界に期待していたのだと思います。わたしが勝手に設定したそのハードルから見ると、この作品はごくフツーでした。いくつかの点で、鴎外の短編と違っている部分(安寿が妹である、巫女に騙される、姥竹が自殺ではない、厨子王に変節がある、山椒大夫に仕打ちが与えられる、最後に官位を捨ててしまう、地蔵の奇跡が描かれていない、等)がありますが、そうした変更を一概に悪いと言うつもりはありません。鴎外の小説じたい、もともとあった複数の伝説の翻案なのだし、たしかに小説どおりの展開にしていたら、かえってリアリティに欠けていたようにも思います。しかし、結果として現代的な意味での説得性が増しているぶん、おなじ中世の物語である「雨月物語」に感じられた理解を超越するような神秘性が薄まり、ややマンガじみた分かり易さに帰着した気がします。ヨーロッパの人たちにそのあたりがどう見えたのかは知りませんけど…。けっきょく総合的な意味でやっぱり最高傑作だって思うのは「近松物語」かなぁ。といいつつ、いまだに他の作品をレビューできていませんが。 【まいか】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-10-07 01:13:48)(良:1票) 3.《ネタバレ》 話の展開は大嫌い。でも、映画としては、引き込まれてしまう。溝口作品の怖さ。映像美術が素晴らしい。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 7点(2019-01-05 21:16:29) 2.森鴎外原作のひたすら悲劇的な物語で、姉と弟の設定が本作では兄と妹に。 テーマは一応「家族愛」なんだろうけど、それ以上に辛辣なシーンのほうが記憶に残っている。 妹さんの場面ではちょっと展開の甘さがあり、これは原作の残酷シーンを変更したせいなのかも。 母親役の田中絹代のシーンは少ないが、その分濃い演技を見せてくれ、とにかくうまいです。 誰もがあらすじぐらいは知っている名作だし、日本人なら感情移入しやすい作品なのでは? 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-10-14 15:41:49) 1.《ネタバレ》 映像もそうだが安寿の器量の良さに痺れた。何処かで見たなあと思い、ああ“芋たこなんきん”だと思い出した。とても気品のある人だ。物語はと言うと、敷居が高いと思いきや、とても判り易かったと思う。だが人物の描写に少々、違和感を感じた。成人した厨子王や無法地帯での安寿の美しさ、あれでは獣たちの餌食になることは容易に想像できる。一工夫ほしかった。そして山椒大夫に圧倒的な悪を感じないのも、いま一つ入り込めなかった原因かも。でもこう感じたのは、僕の未熟さが最大の要因かも知れない。安寿の死に憤りを覚え、海岸線の美しい映像に溜息を漏らし、暖かな日差しを浴びた浜辺での再会のシーンでは涙も流したのだから。初溝口作品だったので、もう少しエージングを重ねなければ。次は残菊物語だ。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-03-30 21:04:28)
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