みんなのシネマレビュー |
|
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
4.《ネタバレ》 小学校の女子児童の作文が原作という異色作。 貧困にあえぎながらも、明るく懸命に生きていく庶民の姿が清新に描かれる。 綴方とは作文のことだ。先生は、「見たまま、思ったままを正直に、一番頭に残っていることを自由にのんびりと書け」と指導する。写生文の勧めだ。それは正子の、横着者だが可愛い末弟、弟との英語ごっこ、弟との胡瓜の取り合い、鶏をさばく、立ち往生する馬車、道端の団子売り等の文に結実する。しかし、それだけでは「良い作文」にすぎない。原作が優れているのは、豊かな物語性を包容していることだ。 裁判所からの立ち退き命令が、実は家賃催促にすぎなかった。 兎をもらった作文が、思いも寄らぬ筆禍事件を引き起こし、父親が失業の危機に陥る。 友達が母親と田舎に行く話を羨んでいると、実際は離婚で帰るのだった。 自転車が盗まれたことが、父親がブリキ職人を辞め、日雇い人夫になることに繋がる。 芸者に売られていく娘を目撃するが、それが我が身にも降かかりそうになる。 父親が仕事にあぶれていると仕事が飛び込んできて、喜び勇んで出掛けて行ったが、仲介人に騙されて給与が貰えず、泥酔して帰ってくる。 このように、一方ならず劇的なのだ。貧困の悲哀を描いても明るさを失わないのは、人が良すぎて世渡り下手だが、妻子思いの父親の存在が大きい。どこか可笑しくて温かみのある、愛すべき人物なのだ。 正子にとって貧乏は特別なものではなく、日常だ。だからありのままに描いた。貧乏故に意外な出来事や幸不幸が起りやすい。それが文章に起伏をもたらし、期せずして物語性をもつに到った。貧乏も、子供の明澄な眼と感性を通じて文章化されると、瑞々しい抒情性を持ったものになる。一種の奇跡だ。その作文に目を付けた監督の感性が素晴らしい。 冒頭、カメラは、荒川を映し、明るく歌を唄って下校する子供達の姿を追い、あばら家集落に消えるを見せ、明るくはしゃぐ広子の様子を捉え、広子の長屋の入口にたどり着く。観客に映画の世界観を端的に表出して見せる、傑出した導入部だ。日常をそのまま切り取ったような自然な演出で、観客を無理に感動させようとするあざとさとは無縁。長屋のセットも本物とみまがうもの。寔に好ましい。この映画を通じて得た経験が、黒澤明に大きな影響を与えたものと察する。 【よしのぶ】さん [地上波(邦画)] 8点(2014-09-09 18:11:49) 3.『馬』同様の、一年間を追う構成(学期ごとの章立て)とセミ・ドキュメンタリー風の手法が特長的。セットなのか、ロケーションなのか、高峰秀子らが暮らす長屋の生活実感と風情が素晴らしい。雨のぬかるみ、大雨で川のようになった路地、馬車の嵌った水たまりなど、変化に富んだ表情を見せる路地の情景にも親近感をもつ。高峰秀子が窓外に目をやると、柔らかな光に雨滴が輝いているソフトフォーカスのショットの叙情性、近所付き合いや姉弟喧嘩のやり取りのほのぼの感なども忘れがたい。教室の終礼の場面で、後席の子が立った瞬間に鞄の重みで椅子が倒れてしまうショットがあるが、これは思わぬNGをそのまま活かしたものではないだろうか。全体の写実的手法の中から自ずと醸しだされた巧まざるユーモアといえるだろう。卒業式を終え、学友たちと一本道を歩いていく後ろ姿で終わるかと思いきや、続いて就職した彼女が画面に向かい笑顔で前向きに歩いてくるショットに繋がるという、幸福感に満ちた粋なエンディングが素敵だ。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-12-24 20:53:45) 2.《ネタバレ》 「綴方」とは今で言う作文の事を言うのですね。初めて知りました。この映画の高峰秀子を少しは見習いたい。「綴方」=作文など自分がガキだった頃、まともに書いた覚えはない。いつも適当に書いていては先生に叱られていたような気がします。高峰秀子演じるこの映画の原作者豊田正子の少女の眼から見た戦争の跡地、面影、高峰秀子の少女のあの眼からは本物の少女らしい眼を感じると共に早くも天才子役としての、また、後の日本を代表する名女優への未来を予感させる凄さが見られる。作文を発表する場面や弟と遊ぶ場面もいずれもこれが子供だというものを演技とは思えない演技ぶりで見せてるところが本当に凄さを感じる。そしてこの映画、最初と最後に、子供達が暫しも休まず槌打つ響き♪て「村の鍛冶屋」を疑いながら子供達が歩く場面があるけど高峰秀子でこの曲を聞くと私にとっては生まれて初めて高峰秀子という女優を見た「二十四の瞳」を思わずにはいられない。まあ、なんだかんだとにかく高峰秀子が見せる演技を超えてるような初々しさ、小津映画でも見てるような何かほっとするそんな作品になっていて心が温かくなりました。 天才子役は大成しないは高峰秀子には当てはまらない。例外ではないでしょうか? 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-11-29 14:51:54)(良:1票) 1.山本監督の特集上映の際に「馬」と一緒に鑑賞。二作とも高峰秀子の少女時代の代表作ですが、この「綴方教室」の方がフィルムの保存状態がずっと良かったです。子役が達者に演技しているという感じは彼女の場合あまりしなくて、もういっぱしの一人前の女優がきちんと役を摑んで演じているという印象です。もうこの時期から後年の聡明な美しさの片鱗は窺えてそれだけでもファンとしては充分でしたが、ストーリーも心温まる展開で楽しめました。豊田正子という勤勉家の少女の自伝の映画化。「貧しきながらも楽しき我が家」って言葉を連想します。「冬の朝っていい匂いがするね」っていう台詞いいよなあ。この秀子少女が平成の世にテレビに出てきたとしても、俺は絶対ファンになると思います! 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-12-26 13:47:51)(良:2票)
【点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS