みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
12.《ネタバレ》 純愛映画としてコンパクトかつスピーディ。 川口浩も個性を発揮している。 野添ひとみが住んでいるボロアパート、これがまた独特の風情があり、アパート脇の坂がとても印象的。 でも題名通りの「くちづけ」だけでは満足してもらえず、やはり言葉も必要なのか、はぁ。。 【にじばぶ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-05-23 15:42:47) 11.《ネタバレ》 拘置所を訪ねたある若者(川口浩)が面会手続きを行った。面会を待つ間、若者は、目の前を泣きながら走り去る若い娘(野添ひとみ)を見る。 若者の面会相手は父親だった。丁寧語で遠慮がちに話す若者に対し、父親の口ぶりは、収監されている自分自身を誇らしげに語っているかのようだ。だが、10万という(当時としては)高額な保釈金の話が出てから、父親は急に弱気になり、その工面を若者に託す。 面会後、先ほどの娘が、食堂で「収監人の食費が足りない」と言われ困っていた。それを見た若者は、これまで一面識もなかったその娘の代わりにお金を支払い去っていく。娘は、バスに乗った若者に声をかけながら後ろから乗り込み、若者の住所や名前を聞こうとする。それに答えようとしない若者は、競輪場前で急にバスから降りる。同じように降りて後をついてくる娘に、若者は「誕生日はいつなのか」と聞き、それと同じ番号の投票券を買う。券は見事に大当りし、配当金で一緒に食事をする。こうして二人の距離が近づいていくのであった…。 本作の魅力は、通俗的かつ普遍的な恋を、当時の風俗を交えながらストレートに、シンプルかつスピーディーに描き切ったところだ。以下、解説していこうと思う。 川口浩演ずる主人公・宮本欽一は大学生だ。1957年当時の大学進学率が10%程度だったことを考えれば、エリートと言っていいだろう。両親は3年前に離婚。父親は選挙犯として現在三度目の収監中だが、一方の母親は、個人で営む宝石商の成功で羽振りがいい。欽一が住む父方の一軒家にはばあやがいて、保釈金の用意までは難しそうだが、経済的にはそこそこ恵まれているようだ。それでも、両親の離婚からか、欽一はどこか屈折したところを持っている。 野添ひとみ演ずる娘は白川章子といい、母親は清瀬の結核療養所に入所中、父親は勤めていた役所の金を使い込み、欽一の父親と同じ拘置所に収監されている(療養代金のための横領とも考えられるが、その具体的説明はない)。彼女はそんな両親を支えながら、ヌードモデルで生計を立てている。天真爛漫なところがあるが、生活苦のため、普段は心のゆとりが少ない。 欽一から見た章子は、魅力的な容姿で(江の島での水着姿を見て「いい体してる」と言っている)性格も明るい。一方、章子から見た欽一は、優しさと少々の不良っぽさを持つエリートで、お金の工面までしてくれる存在だ。 互いが持つこういった魅力は、今日の恋愛や結婚の相手に求められているものと何も変わらない。男が女に求める若さと容姿、明るさ。女が男に求める優しさ、ほどほどの野性味、そして経済力。モテる男女の条件は少なくともこの頃から変わらないと分かるし、本作が通俗的であり普遍的であるのはこのためだといえる。 さらに言えば、本作は、半ば偶然に出会った男女が惹かれていくというシンプルな物語を、74分という、映画としては非常に短い時間で中だるみなしに一気に見せるため、とても見やすい。 また、物語を描くために積極的に取り入れられている当時の風俗も、今では貴重な資料となっている。 欽一と章子が入った競輪場は、今ではなくなってしまった後楽園競輪場であり、中の様子が克明に記録されている。オートバイに乗る時はヘルメットをかぶらなくて良かったし、堂々と二人乗りもできた。恐らく舗装されて年数の経っていない道路には車が少なく、広々としていたことも分かる。 江の島の海水浴場の水着ショーで、思い思いのポーズをとる女性たちにかぶりつくようにカメラのレンズを向ける男たちは、コミケでのコスプレ撮影に比べて遥かに遠慮がない。隣接したローラースケート場では、なんと水着のまま滑っている。 また、恐らく運輸支局だと思うが、電話で車のナンバーを伝えると持ち主の住所をあっさり教えてくれるところからは、当時の個人情報に対する意識がうかがえる。 最後に、スタッフとキャストの関連性について、あえて触れてみたい。本作の原作者・川口松太郎と、欽一の母親役の三益愛子は実の夫婦だ。二人の間には4人の子供がいるが、その長男が川口浩であり、野添ひとみは、当時付き合っていた川口浩が大映重役だった父親の松太郎に頼んだことによって松竹から大映に移籍し本作に出演。そしてこの二人も1960年に結婚している。 本作には川口家の関係者が多く携わっており、当時のスタッフがどのように考えていたのか、気になるところだ。 【はあ】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-10-31 17:42:56) 10.《ネタバレ》 鬱屈を振り払う意志(即決の決断力)が生む猛烈なスピード。なるほど増村が志すように非主体的な日本映画の対極に見える。だが映画である以上、意志や主体が絶えず視覚の対象へと(つまり客体レヴェルへと)引き落とされて(やみくもの即決というのは熟考という人間的能力からの疎外態でしかないだろ!)、皮肉にもそういう疎外態が魅力なのである、増村の場合も。 【ひと3】さん [DVD(邦画)] 7点(2016-02-26 00:01:20) 9.《ネタバレ》 これが増村保造の初監督なんだけど、これがほんとに増村保造の撮った映画かと思うくらい瑞々しいタッチの作風なんですね。大人になりきれない子供といった感じの川口浩のキャラがまた良いんです。若いころの彼はセリフ回しに独特の歯切れの良さがあって、とくに増村作品でその傾向が顕著。これは増村監督の演出手腕の賜物と言えるかもしれません。川口浩が演じる大学生の、なんというか焦りに急かされている様な心情は良く判る気がします。野添ひとみも初々しくってイイなあ、じっとりしそうな役柄なんだけど、そこをあっけらかんとした明るさを前面に出して乗り切っています。そして、彼女が歌うちょっとレトロなんだけど情感たっぷりの主題歌がとても印象的なんです。 実は川口浩が川口松太郎の息子だと今回初めて知った次第ですが、母親の三益愛子まで共演していて“川口ファミリー劇場”みたいな様相です。川口浩は映画界で活躍したのはわずか五年余り、その後はご存知TV『川口探検隊』の人となってしまったのは有名ですが、個人的には同時代の裕次郎なんかより引かれます。演技力は川口の方が上だったんじゃないでしょうか。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2014-08-28 21:34:48)(良:2票) 8.《ネタバレ》 ストーリーだけとると日活風ですが、見てみるとちょっと印象がちがう。テンポの速さ、セリフの速さが、限られた「青春」を生き急いでる主人公を象徴しているよう。親に反発しつつ、肝心なところでは親に頼らざるを得ない幼い弱さも、ちゃんと描かれています。なので、最後はあれでいいのか、判断に迷ってしまいましたが、背伸びをしても子供は子供ということなのでしょうか。本作は発表時期からして太陽族を意識していると思いますが、そもそも太陽族がどういうものなのかよく知らないので、比較はできません。そういう文脈で見てみたら、また発見がありそうですが。 ちなみに増村監督は、この年続けて『青空娘』、『暖流』と発表します。三作とも当時としては新しいカラーを取り入れたものだったんでしょうね。 【アングロファイル】さん [地上波(邦画)] 7点(2012-08-08 11:40:33) 7.増村保造さんの初監督らしく制作年代のわりにはテンポも良く古さも感じなくて楽しめました。三益愛子といえばお婆さんというイメージが強いんですが、ここではハツラツとした自信たっぷりの大人の女性を演じていて、それだけでも見る価値がありました。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-07 00:47:51) 6.《ネタバレ》 なんで川口浩と野添ひとみのカップルに感動してしまうのだろう。今観てもみずみずしい。オートバイすっ飛ばして江の島へ走るとことか、ローラースケートとか、水着の撮影会のスケッチとか、当時みずみずしかったってより、そういったものをちょっとおかしがって捉えてるってこと自体がみずみずしいんじゃないか。カッコよく爽やかなはずの青春が、選挙違反とか公金横領とかつまんない犯罪者を家族の中に持ってることで屈折を持つのが本作のユニークなとこで、ユーモアにもなっている。メソメソしかけてもそれをユーモアに捩じ伏せてしまう。「また小菅で会おうぜ」がいいやね。哀れみを受けるのだけはヤだ、という女の子の強さがこれからの監督の一貫したモチーフになっていく。ヒロインの惨めな気分を描くときはとても優しい。ナプキンの住所を電話帳に挟んだままにしといて観客をヤキモキさせるあたり憎い。住所探しがどんどん真剣になっていくところが見せ場。工事現場が美しい。簡単なトロッコ用の斜面が奥へ続いていて、ザラザラしたコンクリートの感触。こういうみずみずしさの発見も新鮮だったのだ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-05-06 11:58:07) 5.大映映画一連の現代劇特有のジトっとした日本的湿気がものの見事に払拭され、乾いているけど瑞々しい(←ヘンな言葉)青春映画になってますね。役者だけを替えれば日活映画としても充分通用しそうなドライさ。キャストは川口浩→スリムだった頃の裕次郎、野添ひとみ→芦川いづみ、川口の母→轟夕起子といった布陣で。でもこの頃の川口浩探検隊長の方が、坊ちゃん坊ちゃんしててこの役柄には非常に適役。増村監督がいきなりこの作品をひっさげデビューされた、当時の反響は相当なものだったんじゃないかと推察します。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-06-30 13:32:45)(良:1票) 4.《ネタバレ》 増村保造監督のデビュー作品はどことなくヨーロッパ映画の香りがする。画面全体から漂う雰囲気も男と女の恋愛的映画作りも何もかもヨーロッパ映画のようです。共に犯罪者である父を持つ二人の主人公、川口浩と野添ひとみが互いに意地を張りつつも惹かれるという話そのものは古く感じるものの、とにかく作品のテンポが良いから見ていても退屈するなんてことはない。それとこの映画、後に夫婦となる二人のまるで結婚を予感させるような何とも不思議な作品です。それにしても水着姿にローラースケートっていうのも何だかちょっと変だが、ああいう描写、それこそ増村保造っていう監督さんの持っている感覚なのかな?その感覚に何故か知らないが、ハマりそうな、ヨーロッパの映画人、映画好きにこの監督の多くのファンがいると何かで聞いた。読んだことがあるけど、これを見ると何となく解るような気がします。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-10-24 21:04:54) 3.一貫してハイテンポ。心情なんてそっちのけ。少々ムリを感じるくらいにポンポンと進む。これが新しい映画なのかと思ったら、このムリのあるテンポの速さも納得のお話であった。主人公はムリをしているのだ。かっこつけているのだ。素直じゃないのだ。だからやたらとクールを装い心情をけして吐露することなくポンポンとセリフが飛び出すのだ。だから最期にようやく自分をさらけ出す主人公にホッとする。増村保造のデビュー作はデビュー作らしい新鮮さがある。しかしどこか安っぽい。でもこの安っぽさはデビュー作ゆえではなく増村の味だったりする。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-09-11 09:49:33) 2.溝口健二監督作品の脚本などで御馴染みの川口松太郎の原作を映画化した増村保造監督のデビュー作。この時代のほかの日本映画にはないタイプの映画と書いてたのを見たけど、まさしく増村監督がデビュー前にイタリアに映画留学していた経験が見事に生かされた作品で、日本映画というよりも同じ頃に作られたヨーロッパ映画でも見てる気分になった。のちに結婚することになる主演の川口浩と野添ひとみ(実は二人ともあんまり自分にとっては馴染みない役者だったりする。)の二人も実にいい芝居を見せていて印象に残る。とくに野添ひとみが妙に可愛い。川口浩と三益愛子の親子共演(しかも親子役。)もあって今になって出演者と原作者の名前だけ見ると川口ファミリーの映画のような感じを受けてしまうかもしれないけど、増村監督ののちの作家性をじゅうぶんに感じさせる傑作だと思う。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-08-13 14:53:32) 1.松竹大船調に代表される日本的ホームドラマの湿った情感を引き剥がしにかかった増村保造さんの監督デビュー作。お互い父が投獄された川口と野添の両人がそれを機に出会い、お金の工面に苦労しながら互いを求めるという設定は、慎ましさ、思いやり、支え合い、けなげさ・・・などといったヒューマンな内容に落ちかねないところです。しか~し、競輪場で大穴を的中させた両人は、海水浴→ローラースケート→酒場とあっけらかんと金を散在することを楽しみ、倹約の美学などは見せません。踊り疲れた野添が「わたし喉渇いたわ」、間髪を入れずに川口が「ハイボール2つ」・・・ためらいのないこのリズムなんです。アンチロマンチックな工事現場で交わされるくちづけのムード、このムードこそが増村保造のムードであり、時に無性に増村作品を見たくなるムードなのです。 【彦馬】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-06-14 17:03:43)(良:1票)
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