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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  いまを生きる 《ネタバレ》 自由で創造性に富んだ才能を育てるには、やはりその基礎というべき教養を身につけなければならない。しかし基礎教養は若い者にとって退屈だ。 だから教育者は、いろいろ工夫しながら教養の面白さを伝えなければならない。教養なんて無くても感性豊かに育てば自ずと創造性も発揮されるみたいな感性至上主義は日本だけの話。残念ながらイギリスのような階級社会では、教養が無い者はエリートとして認められない。創造性を発揮したくともその機会は大きく減じられるだろう。  この映画の中の教養の象徴は、詩とシェイクスピアだ。イギリスのエリートビジネスマンと会食などすればわかることだが、彼らは会話の中でさりげなくシェイクスピアのセリフやエリオットやブレイクの詩の断片を喋ったりする。日本のように古典を知らなくても金儲けだけできれば良いというような者は明らかに馬鹿にされる社会なのだ。そうした背景を知らないと、この映画の真髄は理解できない。  この映画はそうした教養に対する愛憎まみれの者たちの物語である。「いまを生きる」と言いながら、愛する詩は「いま」の詩ではなく、「死せる詩人」たちの過去の教養に属する詩を崇拝する教師と生徒。息子が演じるシェイクスピアの演劇に明らかに魅了されながらも、演劇を憎む父親。  教養が重んじられ、その力が有効である国の持つ葛藤がここには溢れかえっている。[DVD(字幕)] 6点(2015-12-08 20:54:10)《改行有》

2.  夜の大捜査線 《ネタバレ》 黒人がエリートで白人はクズという、当時の観客からすると意表を突いた設定。思い込みだけで逮捕したり街の有力者の言いなりだったりという腐った田舎の警察署長(白人)と都会からきた敏腕刑事(黒人)の二人を軸に展開する、いわゆる「バディ・ムービー」である。最初は反発しあっていた二人が事件を通じて協力関係になり、いつしか友情を築くというパターンだ。この手のものだと二人の関係がドラマチックに変わり最後は無二の親友みたいになるみたいなベタベタな展開も多いが、さすがにこれはアメリカン・ニュー・シネマだけあって、そこは苦く抑えられていて胸焼けしない。ちなみにこの作品、スパイク・リーによる「映画制作者になりたい人は必ず見ておいたほうがいい映画」のひとつに数えられている。作品を見てからプロットを書き出してみたのだが、導入でのさりげない伏線、主人公二人の対比、豊かな個性の脇役、巧みなミスリード的展開、中だるみさせないタイミングのよいアクションシーンの挿入、主人公たちの和解と別れにおけるカタルシスなど、まさにプロットのお手本とも言っていい要素が豊かに詰まっている。オフビートで苦い雰囲気の映画だが、つくりは実にまともなのである。[DVD(字幕)] 9点(2015-04-11 07:00:57)

3.  ワイルドバンチ 《ネタバレ》 様々な「笑い」のシーンが随所に登場する。「笑い」といってもギャグという意味ではなく、「黙って笑うだけ」で意思疎通するシーンのことである。例えば、エンジェルが昔の女を撃ち殺し、あたり一面騒然となるが、撃った理由を話したことで、広がっていく安堵の笑い。あるいは、列車強盗の後、酒を回し飲みし、最後のひとりに渡る前に酒瓶がカラになってしまった時の全員での哄笑。または、エンジェルの仲間に武器をパクられた後のやれやれ感漂う苦笑。そしてエンドロールの時に浮かび上がる登場人物達の顔もすべて笑っているのだ。それぞれの笑いが言葉よりもずっと多くの意味を含んでいる。男同士は黙っていても笑いひとつで通じ合うものなのさという美学なのだろうか。最後の4人で並んで対決に向かうシーンなども考えると、西部劇というより時代劇や任侠ものに近いメンタリティが流れているのかもしれない(ちなみに、たった4人で数百の敵と戦うという滅びのラストは、サソリが無数のアリにたかられて死んでいく冒頭シーンで不気味に予見されている)。あと、女をモノ扱いしていると批判される本作だが、ちゃんと最後に女に背中から撃たれているし、おまけに子ども兵士にまで撃たれている。男の身勝手な美学は女子供によって見事に崩れてゆくのである。[DVD(字幕)] 7点(2015-04-09 05:31:17)

4.  恐怖のメロディ 《ネタバレ》 主人公は詩を朗読し、リクエスト曲をかける人気DJという設定。詩を朗読する男というのが、ある種伏線となっている。ストーカー女から告げられる謎の言葉はエドガー・アラン・ポーの詩「アナベル・リー」の一節。この詩はアメリカの子どもの教科書に載っている有名なものなのだが、ストーカーの口から発せられるとなんとも意味深な趣きを帯びてくる。最後のストーカー女が波間に漂っている光景も、この詩の最終行「ひびきを立てて波の寄せくる彼女の墓所に」に一致する。日本人だとピンと来ないが、アメリカ人だと誰でも暗誦できる詩なので、最後のシーンでなるほどと思うに違いない。ストーカー女の願いは「アナベル・リー」のように、彼がいるすぐそばの海で永遠に横たわることだったのだ。[DVD(字幕)] 8点(2015-04-05 06:23:52)

5.  ディパーテッド 《ネタバレ》 信用できる人間とはいったいどういう相手だろうか。決して裏切らない者か。嘘を言わない者か。しかし誰かを裏切らないために、他の誰かに対して嘘や裏切りをしなくてはならないことがある。信用とは相対的なものであって、絶対的なものではないのだ。そのことをこの映画は痛切に語っている。考えてみると警察もギャングも、人を信用するか疑うかの見極めを間違うと命取りになる商売だ。この映画は、双方が送り込んだスパイは誰かという裏切り者捜しゲームのようなストーリーだが、そこには裏切りの中で生きている人々の、せつないほどの他人への信頼欲求が横たわっている。魂のやすらぎとは、金でも名誉でもなく、愛する者に信用され愛されることで得られるのだと、彼らは語っているようだ。[地上波(吹替)] 7点(2015-04-01 03:13:16)

6.  暗くなるまで待って 《ネタバレ》  舞台となる場所は、盲人に優しいとは言いがたい半地下の部屋。ドアを開けるといきなり階段になっているし、キッチンに行く途中にも段差がある。目が不自由な居住者のための工夫も全く無さそう。盲人の妻を持つ夫は何もそのへん考えないのだろうかといささか疑問に思わないでもないが、バリアフリーなんて言葉が無い時代はこんなものなんだろう。  夫の職業はカメラマン。部屋の壁にも妻を写した写真が飾ってあるが、妻自身はきっとそれを見ることはない。写真は「目が見える」ことの象徴なのか。  目が見えないスージーの代わりに「目」の役割を果たすのは、隣人であるグロリアという少女。この子の服が目にも鮮やかな赤だったり、鋭角的フレームのメガネをかけていたりするのも「目が見える」ことの象徴なのだろう。  スージーが身の危険を感じて家中の電球を壊し、暗闇のシーンが何度か登場する。セリフは聞こえるが、画面は真っ暗。リアルタイムで映画館でこれを見ていた観客たちは、まさに漆黒の闇の中に身を任せ、「目に見えない」映画を体感したことだろう。 物語は麻薬を詰めた人形を巡るサスペンス。監督が007シリーズの中でも大袈裟で有名な「サンダーボール作戦」や「ドクター・ノオ」を撮ったテレンス・ヤングなので、変な人形型の仕込みナイフやらクローゼットの戸袋に無理矢理隠した死体とか瀕死の男が横っ飛びに襲いかかってきたりと、随所に妙な動きやギミックが登場して面白い。そういえば人形を抱えたまま空港を通過したりしていたが、この時代は麻薬犬もいなかったということだろうか。大らかな時代である。 [DVD(字幕)] 7点(2015-03-27 05:55:03)《改行有》

7.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 アメリカは自由の国というけれど、映画で描かれるアメリカの姿は不自由で息苦しいことが多い。とりわけ家族愛に疑問を呈すことは絶対に許されない。様々な家族のあり方が実際は存在するにもかかわらず、ステレオタイプ的な仲良し家族像だけを信奉する。政治家や有名人などで人気を維持するには、ベタな一家団欒を強調し演出する必要がある。 アメリカは世界の警察官と呼ばれ、正義のお手本として振る舞うべきとアメリカ自身が思っている。つまり「完璧な」国として存在すべきという自己にかけた呪いの中にいる。この映画に登場する「完璧なエイミー」とは、ある種アメリカそのものへの暗喩に等しい。 崩壊した家族の再生という物語を、対外的には信じ込ませることに成功したエイミーたちは、さらなる「完璧」という呪いを求めて踏み出していく。 [映画館(字幕)] 7点(2015-03-26 18:40:47)《改行有》

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