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プロフィール
コメント数 43
性別 女性
年齢 59歳

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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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21.  人生はノー・リターン~僕とオカン、涙の3000マイル~ 《ネタバレ》 イイ歳した息子とその母親がドライブ旅行?一体、どんな層を狙ってんだ?っていう微妙な内容にかえって興味を引かれ鑑賞。 監督が女性なので、これはもう完全母親目線。でも悪くなかったです。もしこれが男目線のコメディだったら、きっと母親をもっとハチャメチャに描いて、醜悪な「ばばぁコント」になってたんじゃないかと。バーブラ・ストライザンドの悪乗りはたぶん見ててイラつくので(個人的に)、この程度で済んで良かったと思う。肉のバカ食いも品があるくらいだった。 セス・ローゲンはまぁ相変わらずの善人で、わりと好きな俳優さんだけど、何をやってもセス・ローゲン、基準値からブレないな~と、ちょっと退屈な感じがしなくもなかった。 全篇ほのぼの路線で、このままユルユルと親子漫才が続くのかなぁと思ってたら、終盤のクライマックスで急転直下の新事実が!いや、勘のいい人だったら予測してたかも。伏線もあったしね。私はちょっと気を抜いて薄ぼんやり観てたので、ここでまさかの涙腺決壊。急にイイ映画に思えてきたり。 ・・・が、しかし。ハリウッド映画でときどき見かけるこの手の過剰な「親子愛」「家族愛」には、やっぱり違和感を覚える。ちょっと気持ちの悪いラストシーンといい、こういうプロパガンダはあんまり感心しません。[DVD(字幕)] 5点(2017-07-27 15:17:09)《改行有》

22.  恋人はゴースト 《ネタバレ》 更年期障害の情緒不安定解消にはラブコメが有効。(※個人の感想です) で、本作の効果は抜群でした。ホントに気持ち良くキュンとなりホロリとなり。なんと言うか中枢神経にじんわり効いた感じで安らぎを得ています。2人が結ばれるのは「運命だった」という、もう100億回見てるよっていう「定番」ラブ・ストーリーですが、ロマンチックラブ・イデオロギーという強大な思想が衰退しない限り、この説話は繰り返されるのです。おばさんの情緒も一生安泰。いいんです。ラブコメよ、今夜もありがとう、です。 何がいいって、やっぱりマーク・ラファロでしょう。リース・ウィザースプーンは劇薬になりかねない。神経逆なでされそうで(笑)。彼女は実に彼女らしくワーワーキャーキャーやってますが、ま、ほっとけ、ってことで。(あれはあれでイイんですけどね) ま、とにかく、この作品は癒し系ナンバーワンのマーク・ラファロを堪能する映画。心底、上手いと思う。彼が一人でバーに行くシーンがあるのですが、酒びたりの彼の体を心配してゴーストのリースがくっついてくる。で、グラスを手に取るとリースが邪魔をして飲ませない・・・というのを、店にいた友人たちの目線で見せるので、リースの姿は見えない。マークが一人でおっとっと、ってやってるのを、マークが一人芝居してるんですね。これが上手い!要はパントマイムなんだけど、なかなかの芸達者。私としては「へぇ、こういうフィジカルな演技も得意なんだ」と軽く驚いた訳で。 あとは、なんと言っても感情表出の自然さ。奥さんの想い出話をしながら目が潤んでくるところなんて、全然わざとらしくなくて心に優しく触れてくるのです。この人の演技はホントに響く。クライマックスの救出作戦とその直後の展開なんか、思い出すと泣けてくるくらい。この時の彼のエモーショナルな演技は出色です。 物語はご都合主義フルパワーで突き進みますが、私は大好きです、そういうの。邦題に「ゴースト」と入れたかったのもよく分かる、「ゴースト/ニューヨークの幻」(90)のテイストをふんだんに取り入れた、「パクった感」ありありの本作。それでも、あの「感動のラスト」はあざといな、と思えてしまうあちらに比べて、こっちの素直なハッピーエンドは好ましいですよ。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-27 15:06:01)(良:1票) 《改行有》

23.  チャックとラリー おかしな偽装結婚!? 《ネタバレ》 ケヴィン・ジェームス狙いで鑑賞。 ゲイを偽装するというネタですが、たぶん今もってアメリカ社会ではゲイ差別ってシビアにあるんだろうなと思わせる。そこらへんを“笑い”に昇華させちゃってますが、これが当事者にとってはどう感じるのか聞いてみたいところ。 どーも製作サイドに差別問題に対する鋭敏な感覚はないんじゃないかって、私はそんな気がしますね。途中で出てくる東洋人(たぶん日本人?)の扱いなんてヒドイですもん。でも、その無神経さが逆に「悪気のなさ」にも思えて。非常に微妙。 まぁ、相手の立場になってみて初めてその苦労が理解できる、という単純かつ普遍的なテーマとして観れば良いのかな。古い作品だけど、「ミスター・ソウルマン」(86)を思い出しました。あちらは白人の大学生が黒人のフリをして奨学金をもらうというオハナシ。 で、本作ではケヴィンが期待通りの愉快な男っぷり。キュートなこと、この上ないのです。梯子のダダ落ちなんて最高!A・サンドラーはどーでも良い。(キッパリ) なんでモテモテの役なのか謎。 脇で出てくるサンドラー組の人たちも、なにげに面白かった。和気あいあいと映画作りしている感じが伝わってきます。コメディではこういう、ハッピーが醸成される空気が大事ですね。そういうのもひっくるめて、個人的にはけっこう好きな作品。[DVD(字幕)] 6点(2017-07-27 14:48:54)《改行有》

24.  キューティ・バニー 《ネタバレ》 『プレイボーイ』のモデルの女の子が学生寮の寮母になって大活躍という、おバカな設定が良い。イケてない女の子たちに「モテ道」を伝授するシェリー(アンナ・ファリス)の言う事が、いちいち面白くて説得力ある。「外見の美しさが内面をキレイにする」とか「目は顔の乳首」(これ名言!)とか。 変身した寮生たちが自信をつけてモテ出すところは単純に気分がアガる。学園を闊歩して注目を浴びるシーンなんかスカッとする。女ってこういう変身願望、あるあるあるある。プリクラで盛るのってそういう事じゃないのかね。そして、ライバルのミュー寮の子たちがいかにもなお嬢さんルックなのに対して、こっちはちょっとだけ下品なセクシー路線っていうのが個人的にツボ。JOCKS系ってなんとなく鼻につくのでね。メインストリームの人間に対してルサンチマンを隠しきれないマージナルな自分(苦笑)。 人間見た目も大事だけど、何より「自分らしさ」が大事よっ、というメッセージも可愛らしくて好感が持てる。表面的には仲良しを装ってて実は・・・というドンデン返しのラストに至るまでトコトン「女子」の世界、あ~、女ってなんて平和な生き物なんだろうかと笑っちゃいますー。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-27 13:12:30)(良:2票) 《改行有》

25.  それぞれの空に 《ネタバレ》 3人のイラク帰還兵のロードムービー。帰国する機内で偶然出会った男女の奇妙な友情物語。 製作年は2008年で、イラク戦争はまだ終結していなかった。当時のアメリカってこんな雰囲気だったのかなぁと思わされたのは、祖国に戻った彼らがイラク帰りであることを伝えると、親切にしてくれる一般人が少なからずいて、「ありがとう」と言えば「こちらこそ」と返ってくるシーン。ああ、これがアメリカで普通に交わされていた会話なんだなぁと、ちょっと不思議な気持ちになった。戦争が日常風景であること。嫌悪感を示す人もいるし無関心の人もいる。いずれにしても、ちょっと胸の奥がザワつく光景だった。 年齢も境遇も考え方も違う3人は、ケンカしたり意見が合わなかったりするが、それでもそれぞれの目的地に着くまで、なんだかんだで助けあう。誰かが泣けば励まし、落ち込んでいれば側についていてあげる。根本のところで信頼し合っている、彼らの関係性は爽やかで気持ちがいい。 彼らを結びつけているのは、「共に戦っている」という“同士”意識だと思うが、大義を背負った悲壮な“同志”という感じではない。フリーウェイで隣を走るアラブ系男女の車を渋面でガン見する姿など、どこかトボケていてさほど深刻な感じがしない。それが、現実なんじゃないかと思う。彼らは兵士というやや特殊な「お仕事」に就いていて、勤務地が戦場で、勤務中にケガを負ったり下手すれば死んでしまうこともある、というだけ。よもや、政府が掲げる「正義」や「自由」など本気で信じちゃいなかったろう(と思う)。 この作品は別に反戦でも厭戦でもなく、「そういう現実があるんだ」という乾いた目線で、兵士たちの“帰郷”を描いている。 出会いは偶然だったが、いつしか一緒に旅を続けることが必然になっていく3人。それぞれに何かを失って、でも新たな一歩を踏み出す。小さな成長を遂げた旅。三人三様のエピソードが切なかったり、可笑しかったり。特に女性兵士コーリー(レイチェル・マクアダムス)の言動の一つひとつを、私はとても面白く見た。インタビューでレイチェル自身も言っていたが、よく分からない女の子だ。無神経なのか繊細なのか。タフなのかか弱いのか。そんなアンビバレントなところが魅力的だった。 しかし、ホントあっちの人って備えないんだなぁと思う。いざという時のために貯金しておくって考えはないのかね。こういうところが、「リカバリー神話」の国だなと思ってしまう。アメリカにおける「リカバリー神話」とは、内田樹と岡田斗司夫の対談本『評価と贈与の経済学』に書かれていたネタで、曰く「アメリカ人には予防という考えがなく、事が起こったら並はずれた決断力と行動力で解決する、なまじリカバリー力があるから備えない」ってなハナシなんですね。あ、脇道に逸れました。 なにしろ、よく出来た「物語」だと思う。話が進むにつれて登場人物のキャラが肉付けされていき、自然にそれぞれの心情に寄り添ってしまった。そして、現代のアメリカを感じることが出来た。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-27 12:13:04)《改行有》

26.  パパVS新しいパパ 《ネタバレ》 実父と継父が張り合うというシチュエーションで笑わせるコメディ。 面白いなと思ったのは、なかなかの良き夫・良き父親ぶりを発揮している継父ウィル・フェレルを脅かす存在として現れる実父が、Tシャツに革ジャン姿でバイクを乗りまわす「ワイルドな男」という設定。アメリカってやっぱりこういう「マッチョ神話」があるのかなーと思ったのだけど、これはマーク・ウォルバーグがキャスティングされた時点でのキャラ改変だったのか?(笑) パパ対決の内容がさほどブッ飛んでいないというか、どっちかが大金持ちだったらもっとエゲツない物量作戦になるところを、そこそこリアルにやってるのがパンチ力に欠ける気もする。子どもたちの送り迎えや地域での奉仕活動など、子育てパパの「あるある」ネタがむしろクスッと笑わせてくれるって感じなのかも? まぁ、私としては、とにもかくにもマーク・ウォルバーグです。この人、大好き♪ むやみやたらな筋肉自慢にニヤニヤ笑いが止まりません。あそこで片手懸垂する意味あるのか?(笑) 彼の過去作「ブギーナイツ」(1997)や「ロックスター」(2001)に目配せしたようなシーンがあったのも嬉しかった。 あと、脇役のトーマス・ヘイデン・チャーチも、いつもながらのテキトー男ぶりが可笑しい。アメリカの高田純次と呼びたい(笑)。   まぁ、爆笑するようなシーンは一つもなく、ず~っとユルユルなのは否めませんが、ラストで畳みかけてくるアイロニーがけっこうキョーレツで、私はそこがいちばん笑えたので、一応そこ推しってことで。[DVD(字幕)] 6点(2017-07-27 11:29:46)(良:1票) 《改行有》

27.  スティーブ・ジョブズ(2015) 《ネタバレ》 とにもかくにも、あの怒涛の会話劇!ア-ロン・ソーキン節炸裂なので、好きな人にはたまらんでしょう。 元恋人との間に生まれた娘を認知せず、十分な支援をしてあげなかったり、盟友ウォズニアックが別機の開発チームに対して「謝辞を言ってくれ」と頼んでも頑として拒んだり。部下に無理難題を押し付けといて、自分は何も出来ないくせに涼しい顔をしてたり。ホント、本作のジョブズは礼儀も情けもないクソ野郎なんだけど、こういうサイコパス的なところが、ぶっ飛んだ天才っぽい。 細かい演出も良かったと思う。1988年NeXT Cubeの発表会のとき、ロビーに飾られた花をジョブズが入れ替えるシーンがある。ケイト・ウィンスレットと話しながら、花瓶に挿された淡い色の花を抜いて、その前に宴会場で拝借していた真っ白なカラーを入れる。この花の入れ替えについては特にセリフもなくサラっと流れてしまうのだけど、舞台に上がる直前に一瞬、このテーブルが映る。そこにはブラックの完全なる立方体(実は目の錯覚を利用して1ミリだけ寸法をズラし「完全な立方体」に“見せている”ジョブズの仕掛けがある)、新製品ネクストキューブが置かれ、隣にスッキリとしたカラーが黒を引き立たせているのだ。完璧主義にも程があるというか、ほとんどビョーキ(笑)。こういうジョブズらしい「こだわり」の見せ方、魅せ方が実に上手いと思った。 株主にも顧客にも媚びないジョブズの姿を通して、この作品自体の「こだわり」というか「頑なさ」も感じられる。観客側にかなり「負荷をかけてくる」映画ですね。M気質の自分はゾクゾクしました(笑)。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-27 00:31:16)《改行有》

28.  ミッドナイト・イン・パリ 《ネタバレ》 こういうのってやっぱりヨーロッパが舞台でないと成立しなさそうですね。古い街並みがそのまま残っているからこそ、地続きでタイムスリップが出来る。自分はヨーロッパってイタリアしか行ったことないけど、イタリアの街もやっぱり、「外国に来た」ってトリップ感だけじゃなく、其処ここに残されている何世紀も前の建造物のせいで、時代までトリップした感覚に襲われた。この映画はそういう「体感」をも上手く作品世界に生かしているんじゃないかな。そう、これってきっと「テーマパーク」なんでしょうね。1920年代のパリの世界にようこそっていう。オプションで1890年代もちょっとアリ(笑)。 主人公のオーウェン・ウィルソンが当時の有名人たちとお友達になっちゃう妄想全開シーンは、ウディ・アレンらしいペダントリーに満ちていて「やり過ぎ」な感じもしたけど、恋のエピソードはちょっと良い。彼がタイムスリップして出逢ったアドリアナという女性(マリオン・コティヤール)の手記?を、現代のパリで見つけて読んでみたら、なんと自分への想いが綴られていた!こりゃテンション上がるね~(笑)。現代の自分が過去の彼女に影響を与え、また彼女が過去に書いた文章によって、彼が行動を起こす・・・という時間のメビウスの輪の中でグルグルしちゃうような展開に、ワクワクしてしまった。 こういう「大人の妄想」は楽しいですよ。自分も銀座のルパンで飲んでたら隣に太宰治が座ってた、なんてことになったら舞い上がっちゃうだろうなぁ。「アタシも志賀直哉キライ!」とか、まともに読んじゃいないクセにおべんちゃら言っちゃうね(笑)。玉川上水に誘われても行きませんが。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-26 18:52:56)(良:1票) 《改行有》

29.  スカイライン-征服- 《ネタバレ》 (かなりのネタバレ) もっとボロクソにけなされてるかと思いきや、わりと高評価レビューもあって腰砕け。 なにやら真面目にSF大作みたいな雰囲気出してるんで、私も途中までは「ひどいな、こりゃ」と思ってたんですが、後半のアホアホな展開でだんだん頬が弛んできた。エイリアン相手にまさかのフルボッコ!彼女の妊娠発覚で亀裂の入りかけたカップルが、エイリアン侵略という危機的状況に遭遇したことで絆を取り戻すという、ばっかじゃないの?なお話なのでした。犬も喰わない痴話ゲンカを繰り返す2人。そんな2人を喰おうとするエイリアン。説教たれる管理人、ときどき金髪美女。(なんだ、そりゃ)スケールでかいんだか小さいんだか良く分かりません。 ヘタレな主人公が家族愛に目覚めて「生まれ変わって」、最後はクローネンバーグみたいな悲哀も出しちゃって、もう好きにやってちょうだい、という感じでした(笑)。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-26 18:27:11)《改行有》

30.  SOMEWHERE 《ネタバレ》 車がブーンと走ってぐるっと廻ってまた戻ってきて・・・という冒頭の長回し。この時のカメラ、片側が切れててフレームがオープンになっているので、車が走ってる途中で画面から消えてしまう訳です。この不安定さ、不確実さ。ぐるぐる回ってそのうちピョーンと外側に飛び出していなくなってしまうかもと、ちょっとドキドキしながら見守る数分間は、決して長くは感じられなかった。作り手としては退屈やルーティンの隠喩だったかもしれず(たぶんそうでしょう)、となれば自分の観方が外れているんですが。でも、これが映画の面白さだと思う。そのものが持つ「意味」以上の「意味」を放ってしまうテクストの豊饒さこそが、自分にとって映画の魅力なのです。 そんな訳で、この作品は全篇にわたってそうした「多彩な語り」が散見され心地よかった。何気ないシーンの一つひとつが観る者に様々な感慨をもたらす、余韻と余白に満ちた画作り。こういうの作れちゃうってやっぱりソフィア・コッポラという人は才能あるのだなぁと思う。 まぁ、そうは言っても「セレブ男の孤独の行方」という題材を、どこまで上手いこと料理できてたのかは疑問。泣いて心情を吐露しても高級車を乗り捨てても、この主人公に実存の深み重みは見えない。 なんか、酒と女の日々っていう主人公の日常が、あんまり現実感がなくてキレイなんですよね。生臭くない。ポールダンスなんかぜんぜんエロくない(苦笑)。この感じはヨーロッパ映画みたいで、思えばこの人の作品ってみんなそうかもしれない。すごく冷めた目線。世界を対象化して眺めている感じがする。 娘が対象化されているのはトーゼンで(主人公は父親なので)、目の前に現れたり消えたり、氷上で妖精のようだったりドレス姿で大人の女のようだったり、主人公の日常生活とこれまで纏ってきた価値観を揺さぶる「外部」であるのは、物語の定石で新しくはないんだけど。エル・ファニングの個性がそれ以上の効果を出しているので、とてもスペシャルな時空間を創り上げていて、映画を観る喜びに浸れた。ところが、娘と一緒に過ごす男のほうも「外部」的な気がしたのです。なんかヨソヨソしいというか表層的というか。だいたいスティーブン・ドーフがあんなにカッコいいって驚きだし(苦笑)。そういうところが「物語」としてはどーなのかなぁと思ったりもしたのだけど、ま、最終的には「SOMEWHERE」はそーゆー作品なのだ、それでいーのだってバカボンのパパ風に納得しました。なんとも言えず風合いが良いので。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-26 00:42:33)(良:1票) 《改行有》

31.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 (もしかしたら、ものすごいネタバレ) あ、しまった やべー だめだー あほう じゃ俺が止めたる 頑張れー 危ない お前いい奴じゃん よくやった。そういう映画でした。 誰かの悪意じゃなくて、うっかりミスの事故っていうのが良かったです。いや、良くないんだけど。でもさ、人間だもの。 兄貴のほうが偉大だと思ってた自分が、トニー・スコットもわりと頑固職人的な監督さんだったのねと、遅まきながら気付いた作品。ただ、画(え)がウルサイのだけはどーしても好きになれなくて、なんでそんなにカット割るのかなぁと、この度も思いました。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-26 00:22:41)《改行有》

32.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 観終わった直後は「納得いかない!」って未消化感が確かにあったが、原作者がレイプ被害者と知ってからスルスルっと呑み込めてしまった。…この自分自身の感じ方の変化に戸惑って、しばらく考え込んだ。 ヒロインのスージーは14歳でレイプされ殺されてしまう。物語は、天国と現世の間でさまようスージーと残された家族が、どうやってこの悲劇を乗り越えていくのかを描く。 スージーのいる世界はカラフルで美しく、彼女が苦しみから解き放たれたのが分かる。一方で、家族は事件によって壊れていく・・・というか、だんだん「物語」自体が破綻していく。ママなぜ出ていく?、パパもうちっと考えて行動しろよ、今頃なぜ大活躍なのか妹よ、貴女はどういうポジションなんだグランマ、そしてどこ行っちゃった弟・・・? スージーが好きだった男の子、彼女を「感じ取ってくれる」女の子の扱いもヘン。どっちも影響力が大きそうで、そうでもない(苦笑)。今ひとつ活躍せず、観客が期待する方向に話を運んでくれない。 つまりは、これ、ちっとも「よく出来たオハナシではない」のだ。「事件」と「家族」と「正義」と「愛」という要素の配分、焦点の当て方、描き方が明らかにおかしい。それにも関わらず、最初から最後まで惹きつけられてしまったのは、何かこの作品を貫く“力”があったからだと思わされた。で、その力の正体が冒頭に書いた原作者の姿なのかなぁと。 それはスージーが天国に行く前にしたことに端的に現れている。彼女が「まだ、やり残したことがある」と言って現世に戻った時、観客の誰しもが正義を願ったはずだ。自分の恨みを晴らすと共に、この悲劇の連鎖を止め、更なる犠牲者を出さないようにする、それこそが彼女の使命だろうと。ところが、彼女は自分の個人的な幸せを選んだのだ。社会的な正義を捨てて。私はどっひゃあ~、そっちかよ、と腰がくだけた。ハリウッド映画ってサルにも分かる勧善懲悪がウリじゃないの?なんで、なんで? ・・・でも。これはスージーの物語。もっと言えば原作者(名前も知らないけど)の方の物語なのだろうと。クソッタレな現実に打ちのめされ自尊心を踏みにじられ人生を台無しにされた女の子の物語なのだ。そう考えると、そういう現実を彼女が受け入れて乗り越える為には、あの決着のつけ方しかなかったのだろうと思えた。たとえ復讐を果たしたとしても、或いは犯人に社会的制裁が下ったとしても、彼女に起こった「事実」は変わらないのだから。起きてしまった悲劇を帳消しにすることは誰にもできない。本人がそれを「帳消しにする」と心に決めて忘れるしかない。 第三者には納得いかなくても、当事者であるスージーが救われれば良い。そんな具合に観客を置いてきぼりにして物語は終わる。なんとなく家族も落ち着いていく。忘れた頃に犯人に天罰が下る(偶然の事故とも思えるが)。現実はこんなもんだ。ヒドイ。ヒドイけど、せめてこのクソッタレな現実に打ちのめされ自尊心を踏みにじられ人生を台無しにされた女の子が心の平安を取り戻せれば、それで良いではないか・・・。そんな不思議な着地点に辿り着いて私自身は納得がいったのでした。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-25 18:50:29)《改行有》

33.  お!バカんす家族 《ネタバレ》 この作品、別のサイトではものすごく評判悪かったんですよねー。 そりゃ、まったく笑えない部分もあるし、余りにも品がないとか、配慮に欠けるとか、不快感を覚える人もいるだろうなーというシーンもたくさんあるので、快・不快の天秤が「不快」の方にドンと傾いちゃったら全くダメなんでしょう。 自分はもともとアメリカのコメディが好きで、デイヴ・スペクターのジョークも笑っちゃう奴なんで、この「くだらなさ」はツボりました。脳みそスカスカですいません・・・。 アルバニア製のレンタカーのリモコンが謎のマークだらけで「うさぎ」のマークを押したらバンパーが落ちるとか、「ロケット」を押したら椅子が回るとか。ホント意味不明(笑)。うーん、こうやって説明すると幼児的な発想なんですが(汗)。でも、なんか笑っちゃうのです。状況も状況なので。 韓国語のカーナビも笑っちゃう。ずーっと絶叫調って。韓国っていうか北朝鮮っぽい?(笑) ラフティングのシーンも可笑しかった。ガイドさんがものすごーいお調子者で冗談ばっかり言ってたのにボートに乗る直前に婚約者にフラれて、傷心のままボートに乗り込んで、ヤケになって急流の方に舵をきって主人公一家も死にそうになるっていう(笑)。 基本、自分が好きなのはこの手のバカバカしいネタなんだけど、アメリカのコメディではデフォルトな尾籠(びろう)ネタもポリティカル・コレクトネスなんか知らんがなって感じの際どいネタも、「あー、アホだなぁ」って生温かく見逃せるので、全般的に好印象のまま見終わったのでした。 個人的には大好きな作品ですが、モノ好きな人にしかオススメしません(苦笑)。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-24 21:03:55)(笑:1票) (良:2票) 《改行有》

34.  偶然の恋人 《ネタバレ》 これは思いのほか良かった、拾い物作品。 演出になんの工夫もない(と思える)のでフツーのドラマになってしまっているが、脚本はかなりイイと思う。 それぞれのキャラクターを説明するエピソードがなかなかイイのだ。 主人公バディ(ベン・アフレック)がちょっとイヤな奴だということは開巻すぐに分かる。 空港のバーで一緒に飲むことになった作家の男性に対して、開口一番「当ててみようか。国語教師?」だと。 この短いセリフに「アンタ、頭は良さそうだけど堅物で稼ぎも少ないんだろうな」ってな“上から目線”のニュアンスが滲む。 ベン・アフレックがまた軽薄そうな薄ら笑い浮かべちゃって、あのツラが鼻持ちならないのだよ(笑)。 この映画、ホント「ダイアローグ(会話)」が上手いなぁと思う。ダラダラと冗長な説明ゼリフもないし、何より凡庸じゃない。 ヒロインのアビー(グウィネス・パルトロウ)が「ニコチンガム中毒をやめるためにタバコを吸ってる」って言うのなんか、すごく可笑しい。 このエピソード、ちょっとファニーな彼女の魅力を伝えているだけじゃなくて、実は1年前に夫を失くした彼女が立ち直っていく過程を語っているのだ。 このとき彼女はこう説明している。「去年、友達から『神経を落ち着かせるのにいい』ってニコチンガムを勧められてやめられなくなった」と。つまり、夫の死で不安定になっていた彼女に「これ噛んでると落ち着くよ」って友達がガムをくれたって事なんでしょう。それが中毒になるほど彼女はずっとずっとガムを噛み続けていた・・・。 「悲しかった」とか「辛かった」とか直接的な言葉を使わないで、彼女の心を表現している訳で、実に上手い脚本だなぁと思う。 もう、いちいち書いてるとキリがないけど、あと一つだけ書いちゃおう。私がいちばん気に入ったのはコレ。 バディが素性を隠して自分たちに近づいたという事実をアビーが知り、バディに別れを告げる。(ここもすごくイイ。涙目のベン・アフレックが可愛い) で、その後、親友のドナに「騙されてた」と愚痴った時にドナはむしろアビーをいさめ、「(彼は)貴方たちが心配だったのよ」とバディをかばう。それに対してアビーが「確かめたらすぐに立ち去るべきよ」と反論すると親友は言う。 「男はドジを踏む生き物よ」 くぅ~~っ、上手い!バディが思いがけずアビーに惚れてしまったことを「screwed up(ドジった)」と表現するなんて。洒落てるゼ! かつて本当に恋人同士だったベンとグウィネスは、惹かれあっていく様子も苦渋に満ちた別れもリアルで響いてくる。そんな2人の繊細な演技も見もの。 いやぁ、これは隠れた名作じゃないかなぁ。衣装とかロケ地がもっと美しくて演出も凝ってたら、「恋人たちの予感」(1989)ぐらいの作品になってたんじゃないだろか。(褒めすぎですかね?)[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-24 20:42:12)《改行有》

35.  スケアクロウ 《ネタバレ》 冒頭、マックス(G・ハックマン)とライオン(A・パチーノ)の出会いのシーンから、映画らしい息遣いに嬉しくなる。画面奥に長くのびる道路を大男のマックスがスタスタ歩いて行くと、後ろを背の低いライオンがちょこちょこ付いて行く。マンガみたいなでこぼこコンビの2人をカメラがロングショットで追う。風がビュービュー吹きすさぶ中、タンブルウィードが手前から奥にコロコロと転がる。奥行きのある画(え)と忍耐強いリズム。こういう画作りをする映画に最近はとんとお目にかからなくなった。ライターがつかないマックスにライオンが残り1本のマッチを惜しげもなく差し出し、2人の間に奇妙な友情の火が灯る。 2人は一緒に旅をすることになるが、粗暴なマックスは行く先々でトラブルを起こす。「寒いから」と言ってボロを何枚も重ね着しているのは、体ではなく心が冷え切っているのだ。他人を信じられない頑なな心を粗末な布切れで包み、必死で守っている。頑丈に覆われてはいない自我は脆く、些細なことで理性を失い攻撃の衝動を抑えられない。一方のライオンは、繊細な心を守るため「道化」を使う。「かかし(=スケアクロウ)は道化によって相手の信頼を得て危機を回避する」と言うのは彼らしい処世訓だ。そんな卑屈でひ弱なライオンの自我は、旅の途中で見舞われた不運、収容所での暴力によってバランスを崩し始める。 収容所では意地を張って友を守らなかった、その悔恨の思いがマックスを変える。喧嘩騒ぎを起こしかけた酒場で、寸でのところで拳を収めストリップでおどけて窮地を脱したマックス。他人に踏み込まれないよう、後生大事に守ってきた心を開かんと1枚1枚洋服を脱いでいく、不格好な大男の滑稽なダンスに涙が出た。彼はここで古い自分を脱ぎ捨てたのだ。ジーン・ハックマンの無骨な笑顔が眩しい。 マックスが人との繋がりを信じ始めていた時、ライオンは元妻との電話で人との繋がりを断たれてしまう。彼女に拒絶されウソをつかれるのだ。これは身重の身で捨てられた妻の復讐だったのか。不安定になっていた彼にはそれが決定打となってしまった。放心したように噴水の中に入っていくライオン。心理学で水は「無意識」を現わすが、意識の閾を越えて精神の闇に陥ってしまった比喩とも取れる。彼は心を閉ざし廃人のようになってしまう。診断した医師が「州立病院に移す」と言うのだが、当時のアメリカはベトナム帰還兵のPTSDが深刻で、精神病患者が増大し州立病院は軒並み精神病院に転換したというから、そのセリフの意味するところが推し量れる。そんなライオンを助けるためにマックスは開業資金として貯めていた金を、今度は自分の方が惜しげもなく友に捧げようとする。 ラストシーンは忘れられない。空港カウンターでのこの男のふるまいったら。こんなに無作法でカッコ悪い主人公がいるだろうか。「人は変われる」・・・そんなメッセージをこの映画から感じていたのに、最後にこんな姿を見せられたら、本当に彼は帰ってくるのか?と不安がよぎってしまう。人は変われる?そんな甘いものか?分からない。分からないけど信じたい。そんな、観客の祈るような思いを宙づりにして物語は幕を下ろす。ニューシネマは安心なんかさせてくれない(笑)。でも、このツンデレがたまらなく好きだ。[CS・衛星(字幕)] 10点(2017-07-24 11:05:23)《改行有》

36.  カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 舞台となっている精神病院は私たちが生きている“社会”の一部を象徴している。社会の中で生きる事は、あらゆるルールに縛られること。でも、ルールは自分たちを守ってくれてもいる。そういう中で「自由に生きる」「自分らしく生きる」ってどういうことなんだろう、という普遍的な問いかけになっている。 「体制と自由」、「集団と個」の問題ですね。 主人公マクマーフィーを演じるジャック・ニコルソンの演技が圧巻。こんな人が身近にいたら、乙女座・A型のわたしゃ耐えられません。秩序を乱す人はノーサンキュー、あああ、そんな乱痴気騒ぎで、その汚れた壁、散らかった床は誰が掃除するのぉぉぉッ!きぃぃぃ~ッ!っとパニックを起してしまいそうです。 それに女の扱いもヒドイ。ちょっとアタマの足りなそうな女の子を、ものすごく都合よく利用しているのが、やや不快。 うん、書いてて思ったけど私は完全にラチェット婦長派の人間でした。マクマーフィーのような男は自分の半径100m以内に近寄ってほしくない。…だからこそ、彼が病院の仲間たちをあれほど魅了しイキイキと再生させていく様子が、妬ましくも許しがたかった婦長の気持ちが分かる。彼女だってちゃんと患者たちのことを考えていると思う。彼らが心穏やかに過ごしてくれるようケアをしていたと思う。ただ、彼女の経験値からは、あのルーティンワークが最善としか考えられなかった。あれが彼女の限界だったってだけ。 脱走するつもりだったマクマーフィーが、ビリーのためにほんの少しだけ出発を先延ばしにしたことが運命を狂わせる。開け放たれた窓のすぐ横で、椅子に座ってボンヤリと考えを巡らせている表情のJ・ニコルソンが素晴らしい。マクマーフィーがマクマーフィーでいられた最後の姿をカメラは不自然なほど長くとらえている。窓の外には自由が待っている。それはもうすぐそこ、目の前にある。彼はあのとき何を思っていたのだろうか。 そして、ラストのカタルシスは言葉では表わせない。心が解放される、というのを実存レベルで実感できる名シーンだ。婦長派の自分も「まいりました」の自由讃歌です。 多くの人に見てほしい名作。[DVD(字幕)] 10点(2017-07-23 16:10:57)(良:2票) 《改行有》

37.  エスター 《ネタバレ》 「怖さ」というのは色々あるわけで、単純に追っかけられる体育会系の恐怖もコワ楽しいが、本作はヒロインがじわじわと精神的に追い詰められる文化系の恐怖描写が秀逸。 孤児院から養子として引き取られたエスターが、父親に取り入り、妹を手なずけ、対立する兄は恐怖で押さえつけ、母親のことはとことん翻弄して痛めつける・・・といったエピソードが実にうまい。ヒロインである母親(ベラ・ファーミガ)のトラウマ体験など、人としての「弱み」に付け込み、家族間の隙間をグイグイついてくる、その「やり口」のエグさったらない。直接に攻撃するのではなく、「共感」を寄せて懐柔したり「愛情」を装って傷つけたりと、実に巧妙。思わず「ぬぉおおお~」と身もだえしてしまう。 一見、可愛らしい少女が大人を徹底的にイジメ抜くという、その恐怖はまじホラー。被害者は母親なのに、エスターの方が一枚も二枚も上手で、周囲の人間を操作し「悪いのは母親のほう」と思わせてしまうのだ。この辺のヂグジョ~感たっぷりなところをM気質の人には是非、堪能していただきたい。(?) そして、なんといってもオチが素晴らしいです。私は最後まで読めなかった!「犯罪者像」としては適度にリアリティを持たせつつフィクションの荒唐無稽さも絶妙に加味され、実に魅力的なモンスター。エスター役のイザベル・ファーマンという子がまた上手いというか合ってるというか、とにかく彼女の存在があってこそ、という気も。撮り方も上手いんでしょうけど非常に説得力があって物語を強化していたと思う。 とにかく、ここまで魅せてくれたので、ラストのグダグダも許せる。DVDには特典で「もう一つの結末」が付いていて、私はこっちの方が好きでした。「サンセット大通り」(50)の味わい。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-23 14:33:41)(良:1票) 《改行有》

38.  偶然の旅行者 《ネタバレ》 ローレンス・カスダンという職人監督が好きだ。作品全体の手触りが心地よい。何と言っても人物造形が自然で上手だと思う。初めのうちはどういう人物なのかよく分からない登場人物たちが、エピソードを追う毎に肉付けされキャラの深みと魅力を増していく。分かりやすい薄っぺらな善人もいなければ、万人が嫌うような悪人もいない。イヤな奴が最後に劇的にイイ人に変身することもない。皆それぞれに欠点や弱さを抱えながらも「その人らしさ」がキラリと輝く、そんな実のある人間像を見せてくれて気持ちいい。 本作の場合、陰気でシニカルな主人公とその家族の変人ぶりなど、描き方次第で愛されるキャラになるかドン引きされるかがハッキリ分かれてしまう気がするがその辺りのさばき方が上手いから物語が破綻しない。主人公に付きまとう「ヘンな女」ジーナ・デイヴィスにしても、個性的で魅力ある女性なのか自分勝手でウザイ奴なのか難しいところなんだけど、彼女自身の素養も加わって可愛く見えてくるのが、やはり演出の妙と思える。ジーナの衣装にも注目したいところ。チープシックでちょっとヘンテコなお洒落がこの女性の性質を饒舌に物語っている。 ビジネス旅行(出張)とは自宅から出なければならないアクシデント(不測の出来事)なんだと言って、その数日間を心安らかに過せる方法を伝授する、そんな旅行記を書いている主人公なんだけど、実は人生そのものがアクシデントの連続、生きていくって偶発的な出来事にあふれた世の中を旅していくことなんだよね、誰もがアクシデンタル・ツーリストなのさ、ってそんなオハナシ。子供を亡くして心の内に引き籠ってしまっていた主人公が、新しい人生に一歩を踏み出す勇気を得たラストの笑顔がグッとくる。最強のパスポートは「誰かから必要とされる自分」であること、なのです。[DVD(字幕)] 8点(2017-07-23 00:01:02)《改行有》

39.  MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間 《ネタバレ》 マイルス・デイヴィスが引退した1975年から数年。 健康状態の悪化により入退院を繰り返しているうちに、コカインやアルコールなどに 溺れて生活は荒み切っていたという。 それでも、音楽に対する情熱は冷めずにいて、ひっそりとスタジオ入りして セッションを行った事もあるらしい。 本作はそんな「幻のセッション音源」をめぐる騒動を主軸に、現在と過去を行き来しながら マイルス・デイヴィスという偉大なるミュージシャンの姿を描く。 個人的に気に入ったのは、ありがちな伝記物語になってないところ。 類まれなる才能ゆえに早くから頭角を現し、時代の寵児になって、でもドラッグに溺れて、 愛する女性に支えらえ&愛想つかされ、そんな彼の晩年は悲しい色やねん~的な。 ぜんぜん、そういうのと違いますー。 レコード会社や野心家のプロデューサーらがこぞって狙う「幻のテープ」。 これがマクガフィンとなって映画を転がし、ユアン・マクレガー扮する音楽ライター (見た目ふかわりょう)とのコンビが、バディムービー調でちょっと弾む。 「スケッチ・オブ・スペイン」のジャケットが飾られたレコード会社のエレベーターの中から するっと過去に移動したり、転んで床に倒れこむ人物のマッチカットで現在に戻ったりする 映画のマジックが楽しい演出も個人的に好き。 演奏シーンと回想シーンのつなぎ方や、時間と場所の飛ばし方なども手際がよくて、 編集もイイと思いますね。 あとは、とにもかくにも音楽です。演奏シーンはマイルスの音源を使っているのが殆どで、 聞き惚れてしまう。特に彼のファンでもなかった自分でも思わず身体が揺れる(笑)。 特にラストのライブ・シーンのカッコ良さったら!! もしやと思ってエンド・クレジットを確認したら、やっぱりハービー・ハンコックと ウェイン・ショーターが参加していました(泣)。 ドン・チードルも嗄声のボソボソ喋りで役作りを頑張ってた感じ。 最後のステージなんて、すごいサマになってて震えます。 音楽ファンの方にはオススメ。[DVD(字幕)] 7点(2017-07-22 23:20:40)《改行有》

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