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1. クラッシュ(2004)
群像もの。善人でも悪人でもない人々の小さな気分の揺れが、大きな善になったり大きな悪になったりすること。やくざな警官が必死の救助者になったり、正義感ばりばりの新入り警官が人を撃ってしまったり。そういう社会なのだよ、という諦めを語ったのか。希望を語りたい・夢を持ちたい、という前提で社会を点検してみたら…、というスタンスなのか。妖精のマント。昔のアメリカの「社会もの」は、白人と黒人との対立だけですんでいたんだけど、いまは複雑で、アラブ人と間違えられて襲撃されるペルシャ人もいる。少数民族は優遇されすぎてるという白人の不満も高まっている。希望や夢を持つことが難しい状況が蔓延している中で、何か手探りしようとしている意志を感じる。希望そのものを歌うより、希望を持とうとする意志を模索していることに希望を持とう、と控え目な控え目な夢を語っているような。[DVD(字幕)] 7点(2013-10-31 09:39:32)
2. クロッシング・ザ・ブリッジ~サウンド・オブ・イスタンブール~
最初のほうのトルコのバンドの連中、東洋と西洋の融合とか立派なことを言ってるんだけど、やってる音楽はおおむね西欧音楽の和音やリズムにオリエント風味を付けたもので、モーツァルトのトルコ行進曲の異国情緒と五十歩百歩。ヒップポップやブレイクダンスと、いまや世界中どこでも同じ光景になってしまった。やたら唇が動くトルコ語のラップは聴き応えあり。でもだんだんロードムービー的に進むにつれて、音楽世界が深まってくる。それが純粋なトルコ音楽に向かうというより、トルコ音楽と他の音楽との接点に集中していく。ジプシー音楽、クルドの民謡、アラビア音楽としてのトルコ音楽たち。純粋な伝統ってあるのか、そもそも文化とは不純な融合によって発展したものじゃないか、ってことをこの後半で言ってるみたい。そう思うと前半のバンドたちの音楽も、その中途半端さの意義を認めてやりたくなる。[DVD(字幕)] 6点(2008-07-08 12:14:55)
3. グッバイ、レーニン!
《ネタバレ》 国やぶれた経験のある国民には、さらに“分かる”話だなあ。社会の激変のショック、価値観の変転、かつての“よき国民”の哀しみ。そういったことも、こうやってやっと笑えるようになりました、って映画を作った心理からして、よ~く分かるなあ。かつて東ドイツの中に西ベルリンがうたかたのように存在していたように、滅んでいく東ドイツの中で、うたかたのような東ドイツの部屋が死守されていく。ユーモアあふれる歴史修正主義者たち。窓からコカコーラの広告が見えると「実はコーラはドイツ生まれで、このたび提携の和解が成ったのだ」という歴史が捏造される。傑作なのが統一の解釈で「競争のない理想の国を求めて、西の難民が東へ流れ込んできたのだ」ということになる。しかもこれは単にジョークだけでなく、これから競争社会になっていくだろう統一後ドイツへの批評にもなっているわけだ。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-07 12:21:26)
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