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【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 美しき獲物 《ネタバレ》 やっぱスリラーは金や欲よりサイコがいいね。かなり粗っぽい話でも、いちおう満足する。ゲームに憑かれた人間の気持ち悪さ。深刻な遊戯というか。繰り返される殺人はあんまり芸がないんだけど、ま雰囲気はいいですな。「ゲーム」の気味悪さみたいなものをいちおう突いている。すぐ下に沈んでいくカメラ。あの刑事、なんとなくサイコ少年に雰囲気似させてた。盲目の師匠ってのもワケアリにさせといて。何度も客に「やっぱりね」と思わせといてうっちゃるわけ。D・レインの役どころはやはり『羊たちの沈黙』からのイタダキでしょうか。水の地下室っていう舞台はいいが、ラストは長すぎ。[映画館(字幕)] 6点(2012-02-15 09:59:23) 2. ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 イスラム過激派のリクルートを思った。そこらへんを意識してたんじゃないかな。惨めな日常にうんざりしている若者に、君は選ばれた者だという暗示を与え、厳しい訓練を課し、絶対者が悪と認定したのだからと迷わず見ず知らずの人物を暗殺できるまでに、組織に信頼を寄せさせる。この先にあるのは自爆テロリストへの道だろう。でもアメリカ映画のいいところは、組織に歯向かう個人のドラマになるとこで、途中の訓練の描写などの陰惨さ・ドギツさには不健全だなあと閉口させられたが、話の大枠はいたって健全であった。そしてなにより馬鹿馬鹿しさが救っている。最初のビルを飛び越える男が、廊下の奥のエレベーターから助走をつけるあたりで、すでに作品のトーンが決まり、以下馬鹿馬鹿しさが輝いているシーンのベスト3を順に挙げれば、まずアンジェリーナ・ジョリーが車で仰向けになって撃ちまくるとこ。次に、彼女の車が特急に追いつくとこ。特急の車掌も、あそこでは急停車させず、わざわざ崖の上の陸橋に来てブレーキをかけるという、事態を悪化させるのに協力的な態度をとるところが嬉しい。そして最後の二丁拳銃での殴り込み、ほとんど新体操の運動を見ているよう。そもそも気合いを入れれば曲がる弾道ってのが、根性ものの野球マンガに出てくる魔球みたいで、馬鹿馬鹿しくも懐かしかった。みなさんは絶対まねをしないでください、とテロップでも入れたいところ。[DVD(吹替)] 6点(2009-06-23 12:06:14) 3. ヴェルクマイスター・ハーモニー いちいちに隠されているらしい寓意は、ほとんど読み取れていない。しかし全体を覆う圧倒的な不穏の気配を体験することで、モトはとれたと思う。個人の不安でも国家の不安でもない、町の不安ってとこがいかにも東欧。焦点は暴動の場。ひたすら歩く暴徒たちの、その静かな表情が怖い。ワンカットで描かれる病院襲撃(2時間25分で37カットっていうと単純に計算して1カット3分55秒か。広場に点々と立つ人々の場なんか、長回しの先輩アンゲロプロス好みのシーン)。隣人がたちまち無表情の群衆に変わり得ることの不安て、やっぱり20世紀の多くの町が体験した不安だったんだ。[映画館(字幕)] 7点(2008-06-14 12:07:02) 4. ヴァリエテ(1925) ドイツはこういう話好きだね。淫婦に振り回される男もの。5年後の『嘆きの天使』とか。あるいは時代の流行りだったのか。谷崎の「痴人の愛」もだいたいこのころ。若干先だから映画に影響されたってことじゃなさそうだ。しかもこういう淫婦の時代の後に、ドイツも日本も、病的に健全な男の時代に突入していってしまうんだな。それにしても無声映画の雄弁さ。水道のしたたりと、赤ん坊のおもらしのしたたり。二人の女を足先まで見比べる視線。あるいは耳を澄ませているそのアップ。テーブルのいたずらがきをめぐるサスペンス。ひそひそささやきあう人たち。ブランコシーンの緊張。無声映画のあらゆるテクニックが呼び集められている。ただの三面記事にしかすぎない出来事が、それ以上の物語に変わっていく。[映画館(字幕)] 6点(2008-03-23 12:15:37) 5. ウィスキー ときに人形の表情が雄弁になるように、無表情が多くを語ることがある。髪型を変えても気がついてもらえない・写真を撮らねばと言っても反応がない、そこで主人公はがっかりした表情を作らず、無表情で通す。がっかりした表情をすれば、それは「がっかり」だけだ。無表情だと、がっかりしたけどがっかりしたことを男にさとらせないぞ、という意地や、別にがっかりしてないもん、という自分へのごまかしや、その他いろいろ複雑な感情を、見てるほうが類推し膨らませてしまう。無色を保っている彼女の内面に、多彩な色彩が飛び交って見えてくる。演技力とは、そういう無表情を作れる能力を言うのだろう。[DVD(字幕)] 8点(2007-10-29 12:22:08)(良:1票)
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