|
1. バイオハザード: ザ・ファイナル
《ネタバレ》 無数のコラージュが集積してヒロインの像を象っていくオープニングは、彼女のアイデンティティをめぐるドラマを象徴する。
鏡像の反射を活用すべく設定された美術や道具立ても、分身の主題を強調する為のものだろう。
そうした謎解きはともかくとして、あの手この手のアイデアを駆使したアクションの釣瓶打ちによって、
追い追われるの状況のみを展開していく潔さがいい。
装甲車上、タワービルからピット内の地下エリアへ、装置の高低差のサスペンスを活かした見せ場がふんだんな上、
打撃系のインパクトを強調して組み立てた格闘がパワフルで素晴らしい。「指を切らせて腹を断つ」とか。
各ショットは短いながらもケレンある構図でコンティニュイティがしっかりしているので、速度に同調すればこのアクションは見れる。
ラスト、再びの映像イメージのコラージュによる記憶の補完もまた、何となくゴダールの『映画史』を連想させたりするといえば大袈裟か。
アクション映画の引用コラージュ集とも云えるし。[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-01-18 16:47:23)《改行有》
2. ハンナ・アーレント
《ネタバレ》 ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)は、モニターの中の
アドルフ・アイヒマンをひたすら凝視する。
ソファに身体を横たえながら煙草をふかしつつ、思索にふける。
学生への講義の際も、煙草は手放せない。
そうした身振りと対話のうちに、人物が象を成していく。
夜の書斎の美術や照明も、思考と執筆について映画表現する
難題に対して、よく補助している。
ラストが独演会での長広舌で、さらに賞賛の拍手というのでは少々
安直だが、中盤とラストで彼女の講義に聞き入る学生たちの
真剣な表情と眼差しがいい。
前半でアイヒマンの裁判を傍聴する彼女の批評的な眼差しからの継承の
シーンとなっている。
冒頭とラストの夜景も印象的だ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-09-16 15:43:19)《改行有》
3. ハンナ
シアーシャ・ローナンと、彼女が道中で知り合う少女がテントの中で横になりながら語り合うシーンは、二人が向き合っているはずでありながらカメラに対して二人が同一方向に身体を傾けているという、一般的にはあり得ない切り返しで撮られている。
同じく、走るキャンピングカー内でオリヴィア・ウィリアムズと対話する際もそれぞれ左右の窓際席の切り返しとなるが、
何故かどちらの窓外にも太陽光が輝いているという具合だ。
共に光の加減が見事な画面であり、自己との対話といったニュアンスを仄めかしたのか、ともあれ、整合性を無視した繋ぎをあえて選択している事は間違いない。
前半のICA施設のダクト、中盤のコンテナ置き場、後半の遊園地内といった舞台設定や、随所に現れる円形や回転のモチーフも含めて、映画に夢幻的な迷路感覚を呼び込むよう施された演出の一環だろうか。
縦横無尽の移動を絡めたバスターミナルから地下通路までの超ロングテイクや、太陽光の人物への当て方・屋内人工照明の印象的な用法といったジョー・ライト印の技巧も、その意味では効果を挙げている。
シア―シャ・ローナンの俊敏な疾走と、徒手格闘。そして、ケイト・ブランシェットの凄みは流石だ。
[DVD(字幕)] 7点(2012-05-27 07:24:14)《改行有》
|