|
1. モーターサイクル・ダイアリーズ
1952年、ほとんど半世紀前という時代の空気は感じられなかったが、演出のせいなのか、そういう風土なのか。旅行者・ゆきずりの「見る人」だったものから、次第に「関わっていく人」に変わっていくのがポイントだろう。それもすぐに「怒り」にはならず、社会の不平等への戸惑いが順々に蓄積して高まっていくところを描いているわけだ。銅山のあたりから、船の後ろに繋がれた舟。そして閉ざされたハンセン病の島へ泳いで渡れることを身を持って証明する「行動する人」になっていく。偉大な革命家の誕生物語という型にはまった伝記ではなく、「見る青年」が「行動する青年」に変貌していく記録として描かれている。繰り返されるダンス。南米万歳と唱えた彼が、なぜキューバへ向かうのかは、それはまた別の話と言うことで。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-15 09:45:25)
2. モンゴル
ひとつ興味があったのは、遊牧民族の伝説ってのは、農耕民族の伝説となんか根本的に異質なものがあるのではないか、というところだったが、さして違わなかった。親の仇を討ち、さらわれた妻を奪い返す。もっともこの映画がどの程度、モンゴル現地の伝説に由来しているのかが分からず、途中で農耕民族にも分かり易いように変形させられたという可能性もある。現在世界に流布している文化の型は、圧倒的に定住の農耕系由来のものなので、非定住から生まれるまったく異質のものも見てみたかった。ちょっと違うかなあ、ってとこは、盟友との関係がサラッとしているとこ、あるいは血のつながりに関してもサラッとしているとこ。ここらへんに湿度の低い文化圏をわずかに感じた。映画としては、省略や物語のジャンプに変わったところがあり、不思議なリズムの体験。浅野忠信の起用と血煙りの描写は、たぶん監督が北野の『座頭市』を観ているのだろう。騎馬兵が、両刀を水牛の角のように構えて走ってくるところがいい。それと、とにかく広いこと。[DVD(字幕)] 6点(2009-05-11 12:03:49)
|