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【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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41.  時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース! 《ネタバレ》 天使像があたかも飛翔しているような冒頭のカットには興奮したものだったが、この人の映画は何か「監督の世界観」が出てくるとしぼんでしまう。映像的には白黒場面のカメラがゆらゆら動き回るカットなんかいいところは多いんだけど、それが話の必然性の裏打ちが弱いんで、淡々とし過ぎちゃうっていうか。天使が人間になってつまんなくなっちゃうのは、そういう設定なんだろうが、そのつまんなさの縮小感が映画そのものにも当てはまってしまった。後半なんだかよくわかんないまま悪漢ものになっていって、空中ブランコで荷を運ぶあたり、ちゃんとした活劇もののなかでのアイデアなら、なかなか面白いと感心したかも知れないが、こうヌルヌルした展開の後で見せられると、電球のコードがもつわけがない、などとヒンヤリ見ている己れがいた。[映画館(字幕)] 6点(2011-01-22 10:12:49)

42.  マヅルカ 《ネタバレ》 色男・女たらしを描くと、この時代のドイツの右に出るものはないか(フランスよりも濃い気がする)。1935年のウィーン。真のヒロインが登場する酒場のシーンの頽廃感。バックに孔雀の羽根のようなデザインで姿を現わし、左手を腰に当てて、垂れたテープをかき分けながら歌って歩いてくる感じ。絶対に何か起こらねばならない、というワクワク感が満ちる。何しろ時代が下ってからこさえた時代色ではなく、まさに当時の空気なんだろうから。そして「何か」が起こって、映画は前半と後半にきれいに分かれる。それがどう重なっていくのか、っていうところが本作の推理小説的楽しさ。前半での女性の訪問が、後半で歌手の側から繰り返されたりする謎解き的楽しみね。物語の芯は、この時代に汎世界的にあった型で、何の作品がルーツかなんて確かめようもない人情話の世界なんだけど、やっぱりホロッとさせられる。警吏が、前に禁じたスカーフをそっと掛けてやったり。それと知らぬ実の子が礼を言って、空想の抱擁があって、歩いているうちにバックが輝きだして、となるの。前半で、女たらしと娘が踊るとこで、カメラと一緒にぐるぐる回ったりしてたなあ。[映画館(字幕)] 8点(2011-01-18 11:02:57)

43.  戦場でワルツを アニメ技術のことはよく分からないんだけど、不思議な動きをする。東南アジアの影絵のような、関節だけ留めてある人体パーツを動かしているような、でも滑らかという動き。口の動きも変にリアルで、全体新鮮な世界だった。その影絵的な感じが、記憶を探るストーリーとうまくマッチしている。話としては、ベトナム後のアメリカ映画のあのトーン。生き残ったものの後ろめたさと、心の傷。戦車の中にいるときの万能感と外に出たときの無力感、とか、カメラ越しでなくなったときの戦場の生々しさ、など兵士の証言が痛々しい。悪い映画ではなく、こういう兵士個人の心の記録が積み重なって大きな証言になればいいと、心から思う。でもかつてのアメリカもあれだけ「心の傷映画」が作られながら、ひとたび同時テロが起こると「やっつけろ」の大合唱に呑み込まれていった。個人の「私」の証言は、ひとたび「われわれ」の怒号が起こると、あっという間に掻き消されてしまう。正直、あんまり希望は持てなくなっている。もひとつこの作品が弱いのは、虐殺の本体をファランヘ党という極右組織だけに押しつけている感じがあって、もちろん黙認したイスラエル軍も非難はしているが、ちょっと逃げ腰。でも常時戦時下のあの国でこれだけ言うのも、大変だったろうとは思う。ワルシャワ・ゲットーの記憶を、イスラエルの免罪符としてでなく持ち出したのだから、そこからもひとつ、人間集団が狂う普遍的な分析にまでいってほしかった。[DVD(吹替)] 7点(2010-12-10 10:42:31)(良:1票)

44.  愛と精霊の家 長編の映画化は本当に難しい。総集編になってしまう。弟たちをカットして女系の線でまとめたのは仕方あるまい。それでもエステバンという人物の複雑さは出せなかった。いっそエステバンだけに絞るという手もあっただろう、「『愛と精霊の家』より」、として。メリル・ストリープは、まったくの死に役、グレン・クローズに負けた。風土は南米でも監督の北欧の気配がところどころある。空気の濃密さが感じられないとか、少女たちは北欧っぽいとか。大河ものってのは忘れたころに人物が再登場するところにドキドキがあるんだけど、この時間だとそのタメが足りなくて、ドキドキにまで至らない。私生児はまだしも、あの娼婦なんかオッという感じがまったく出ない。まあ豪華配役陣を眺め回す楽しみはあった。[映画館(字幕)] 6点(2010-12-03 10:27:10)

45.  豚が飛ぶとき 一応アメリカ映画なんだけど、ドイツで撮っている。カメラはロビー・ミューラー。くすんだ色調、とりわけ幽霊のいるシーンでのがいい。夕方の散歩、長回しの移動、ぼんやりと幽霊たちがたたずむ、二重写しという初歩の技術の美しさ。サイレントを観るようなアンティークな哀感。主人公の夢と犬の夢で始まるあたりも、サイレント的だったし。椅子の引越しシーン、窓の外を運ばれる椅子に少女が横向きにつかまっている図。話の根本は典型的な「現実復帰もの」。幽霊の助力で、過去から現在へ。失われたもの・過去のものを描くときに気合いが入る、ってこの頃の映画の傾向だった。幽霊ってのは「失われたものが、でも何らかの形で存在していてほしい」って願いが生むものなんだな。この幽霊、復讐したいとか呪いたいとか、そういう感じじゃないの。娘を心配してる「想い」が主。それが哀感につながっている。[映画館(字幕)] 7点(2010-11-24 10:15:25)

46.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 ナチと連合軍の争いを描いたハリウッド映画で、「正義」のイデオロギーがまったく感じられないのは珍しい。狂気と復讐の殺戮のみが展開していく。レジスタンスはあっさり密告し、仲間を裏切らないナチはバットであっさり撲殺される。今までのドラマだと助かる立場の人、子どもが生まれた兵や心の呵責を覚える狙撃兵も、仲間を裏切らなかったナチと同じく猶予されない。この「あっさり」感が、この人の持ち味(かつてのタランティーノだと、ブラピも中盤であっさり死ぬ筈なんだけど)。善悪を判断する余地がない狂騒の場に観客は拉致される。多言語が行き交うのも、その善悪が渾然としている状況にふさわしい。言葉のなまりや、映画が通じないことなどが、次に続く殺戮のステップになっている。とりわけいいのは、地下酒場のシーン、ここにこの監督のエッセンスが詰まっていた。作られた笑顔の中でじわじわと高まっていく緊張、殺意と殺意とが寄りかかって固まっている状況。このキングコングを当てるナチ役の俳優もよかった、この映画でおそらくユダヤ・ハンターの次に記憶に残る、笑顔の不気味な二人だろう。ここのところタランティーノ監督、映画中毒者のための映画遊びにのめり込んでいた印象で不満だったんだけど、私でも楽しめる世界へ戻ってきてくれたようだ。[DVD(字幕)] 7点(2010-08-29 09:45:50)(良:2票)

47.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 巨大な組織と個人の対比を見せるためにこのシリーズがしばしば採用するのは、監視網の中で逃げ切る主人公。同じような趣向の繰り返しではあり、CIAがマヌケに見える ギリギリの線なのだが、サスペンスとしては楽しい。本作では、ウォータールー駅のシーン。携帯で指示を出しながら、ボーンと記者が動き回る。へたなアクションよりも、映画の楽しみが満ちていた。そこでしゃがんで靴の紐を結び直せ、とか。周囲に配置されたカメラの目と、個人とのかくれんぼ。敵が潜んでいるかも知れない群衆だが、そこに隠れることもできる群衆の海。終盤、アメリカに帰還してからは、CIAのオフィスががら空きとか無理が目立つが、その「いよいよアメリカに帰ってきた」という舞台設定自体が、「大詰め近し」のワクワク感を盛り上げてくれているので、許そう。シリーズ全体としては、マリー、ニッキー、パメラと、主要女性キャスティングにハリウッド的美人をいっさい排除した姿勢がよろしい(M・デイモンに合わせたのか)。どれも「美人」としてでなく「顔」としてインパクトがある。ラストのニッキーの笑顔なんて、アン・ハサウェイだったらちっとも効果なかったでしょ。[DVD(吹替)] 7点(2010-08-05 09:42:07)(良:1票) 《改行有》

48.  ボーン・スプレマシー 《ネタバレ》 製作会議では以下のような会話が交わされたのではないか。「今回は一匹狼を前面に出しましょう」「だとマリーが邪魔になるなあ」「開始早々殺しちゃえばいいんですよ、すると復讐のドラマにもなりますから」「でもボーン自身殺し屋みたいなもんだろ、正義の復讐って言ってもなあ」「それなら釣り合いを取って、彼の贖罪の旅を重ねればいいでしょ」「なるほど、深みっぽくなるなあ」「舞台はどうする」「前回が女連れの花のパリでしたから、もっと寒色系の街がいいですな、いかにも女っけに乏しい都市、ベルリンとかモスクワとか」「あ、それ両方いただき」「じゃあ冒頭でマリーに消えてもらうのは、反対に暑い街ですね、インドのゴアあたり行っちゃいますか」「ヤマちゃん、今日冴えてるねえ」、…などといった感じであったろう。アレキサンダー広場のシーンは、もっと面白くできそうだったが、その禁欲的なところがこのシリーズの魅力なのか、とも思わせられてしまう。それなりにドキドキした。カーチェイスっていつもはだいたい退屈するものだが、今回のモスクワはけっこう引き込まれた。こちらの車にパトカーが横からぶつかってくるのを車内から捉えたところの、驚きの効果と迫力。それと望遠で覗きながらのパメラとの電話、ああいうシーンはドキドキさせる、「ニッキーならあんたの隣に立っている」。黒澤の『天国と地獄』で、捜査員一同がパッと窓の視野から隠れて身を伏せる名場面を思い出した。見えない相手と耳元の声とのギャップから来るスリル。[DVD(吹替)] 7点(2010-08-03 10:07:35)(良:1票)

49.  ボーン・アイデンティティー 《ネタバレ》 映画を見始めるときってのは、他人の生活の中に途中から割り込んでいく訳で、周囲とのやりとりや会話から類推し、次第に状況やら主人公の立場なりを理解していくことになる。つまり記憶喪失者と似たようなものなのだ。不意に記憶喪失者として登場する人物こそ、映画の主人公としてもっとも理想的ということになる。観客は一体感を持って主人公に寄り添える。だからCIAの登場はもっと展開した後でも良かったんじゃないか、とも思うが、相手の巨大さを最初から印象づけたい気持ちも分からないではない。また女性観客にとっては、巻き込まれるヒロインが重要人物として手配されるあたり、心地よく感情移入できるのではないか。グダグダした日常から、CIAに謎の女として手配されるまで格上げされる。実際には「問題の女」になることはできなくても、これぐらいなら人生に起こり得るかも、って。セリフも練れていて「忘れっこないだろ、君しか知らないんだ」なんて主人公に言われるのも心地よい。そのお返しのように、逃げよと言う主人公に対して、彼女が黙ってシートベルトを締めるシーンがある。アクションは、階段落下のシーンあたり微妙だが、やたら派手なドンパチが多い昨今のなかでは、そのノワール調に好感が持てた。一匹狼のストイシズムを優先している。[DVD(吹替)] 6点(2010-08-01 09:55:45)(良:3票)

50.  未来は今 時代はフラフープの58年ということになっているが、空気は20~30年代。アールデコ調の美術、それとキャプラタッチのせいだろう。冒頭のリズムなんかなかなかよろしく、運命の求人広告につくカップのワッカが後のフラフープを予告したり。でもストーリーは美術的興味へ奉仕するだけに提供されていて、いやそれでもいいんだけど、やっぱりなにかキャプラの伝統に対する批評もほしいところ。伝統を継ぐってのは、批評精神を持って生かせるものを生かしていく、ってなかにあるんじゃないか。落ちた主人公が助かる展開などパロディとしての批評なのかも知れないが。実際に存在したフラフープを使って、ここまで話を作っちゃうってのは、素直にすごいと思う。でもやっぱりポール・ニューマンの副社長室の秒針の影など、美術のほうがこの映画の命。[映画館(字幕)] 7点(2010-07-28 10:02:25)

51.  王妃マルゴ とにかくなにやら陰謀が渦巻いているのは分かった。それが一族の崩壊へと向かっていけば『ゴッドファーザー』のような作品になっただろう。どうもカメラが近寄りすぎて、ひいて息を抜きたいところでも熱演のアップになって、陰謀ってのはもっと静かにロングの画面の中で進行するのではないか。そして薄暗さ、陰影の美をあまり感じさせず、ただ薄汚れた暗さだった。『ディーバ』や『リバー・ランズ…』のカメラなんだけど。ヒロイン、政略結婚の旦那との間には、友人のような・兄弟のような、いたわり・気の配り合いがあって、実の血のつながった兄弟とは近親相姦やってんの。澱んでますなあ、16世紀末のヨーロッパ。死体の脳で運命占いするってのもすごい。[映画館(字幕)] 6点(2010-06-08 11:53:58)

52.  愛を読むひと 《ネタバレ》 彼女の秘密とドイツの歴史との絡み具合がよくわかんなかった。どうも私のなかでピントがピタリと合わない。時代の罪と個人の罪の関係、とか、本当の意味で違う時代を裁けるのか、といった話だけなら、日本にも引き寄せてよく分かるテーマなんだけど、そこに彼女の秘密が入ってくると、かえってぼやけて感じられた。法廷のシーンはいいんだよ。最初にハンナの声が入ってきて、次に遠景の彼女が見えて、という段取りもいいし、裁判長もそう権威的でなく、いかにも戦後の「ナチズムを反省した市民」の代表って感じで、彼の正義感もよく理解できるようになっている。そこで時代の溝が、映画として生きている。個人にとって歴史というものの冷酷さが感じられた(ただほかの元女看守たちはやや造形が雑だった気がする)。法廷のシーンは緊迫していた。でもあの「秘密」によって、話のポイントがずれて縮む印象。なんか重要な点を理解し損なったのかなあ。住まいを定めるときとか、仕事に就くときとか、どうしたってそれを世間に隠し通せない場面が今までにもたくさんあっただろうし、そもそもこの法廷に至るまでの裁判の過程で、告発する側も弁護する側も、それに気がつかないってのは不自然なんじゃないか、やたら書類にサインさせる社会で。それほどいいかげんな裁判だったのかも知れないけど。いや、そういう女性の物語としてそれだけで完結してるのなら作品の設定枠として受け入れられるんだけど、歴史の悲惨に絡んでくるとなると、疑問。[DVD(吹替)] 6点(2010-05-23 12:05:33)(良:1票)

53.  ロルナの祈り 《ネタバレ》 2度驚かされる。「ああ、そういう話か」と映画の輪郭が大体つかめた気になった中盤でうっちゃられ、一回り大きな話になり、それで安心しているともう一度うっちゃられ、さらに話が深まる。見事。まずヤク中の男、部屋に閉じ込めてくれと自分で哀願する痛ましさ、しかし痛ましさと同時に、何の価値もない男だな、という冷たい目で我々も見てしまう。「人間やめますか」というコピーがかつてあったが、もうホントそういう感じ。しかしだんだん、そのどうしようもない男の、「やがてヤクで死んでいくだろう」というところに価値を見ている組織があらわになってくる。究極の貧困ビジネスというか、すさまじい。すると彼のどうしても女を殴れない気の弱さや、必要なお金しか取らない律儀さがしみてくる。いい奴じゃないか。対するヒロインの心の変化も、仏頂面を変えないところがいい。そこで予想されたロマンチックな展開を唐突にくつがえして、後半。ヒロインにも、組織にとっては男と同じ「道具としての価値」以上のものはなく、苛酷な展開になっていく。そこで彼女は「母という価値」にすがるわけだ。それも一ひねりされていて、彼女のすがる切なさがよりしみてくる。狭いほうへ狭いほうへと逃げていく彼女、解放と呼ぶにはあまりに痛ましい解放。暗い結末ではあるが、彼女の行動自体がかすかな希望となっていた。いつもと違い、あまりカメラを振り回さないでくれたのが何より嬉しい。[DVD(字幕)] 8点(2010-03-05 12:08:14)(良:1票)

54.  リスボン物語 この監督は、どうも映画の中で「批評」してしまう。この人がしなければならないのは、手回しカメラで一本撮ることなのであって、そういう人物について語ることではないのではないか。自意識過剰の映画。すぐれた映画ってのは、自分が映画だということを忘れ去って生まれてくるものだろう。音を拾う場、街の音が次々に鮮明に立ち現われてくるあたりが面白かった。蚊とは、姿が見えず音だけでいらいらさせる存在だ。サイレントでは捉えられなかったものたち。そして音楽の豊かさ。人の声。これはロードムービーとは違うね。冒頭の各言語を突っ切ってリスボンの青空に至るところまではロードムービーと呼べるかも知れないが、あとは「人待ちムービー」、旅しているものを待つ映画だ。[映画館(字幕)] 6点(2010-02-08 12:03:44)

55.  シリアの花嫁 《ネタバレ》 遠く極東に暮らすものにとっては、イスラエル占領地域からは出てシリアには入っていけない花嫁の歩むラストを、寓意ととっていいのかリアリズムととっていいのか、そこらへんからして曖昧で、ただ、占領地の住人は「無国籍」ってことになるのか、ってことは分かった。ニュースではパレスチナとの摩擦はよく出るが、北でもこすれてるんだよな、この国は。映画そのものより、この作品がどういう環境で製作されたのか、イスラエル内でどういう反応を得たのか、ってほうに興味がいった。なんか最近この国の映画はちょっと元気がいいようなのだ。軍のガザ侵攻に90%の国民が賛同している、なんてニュースを聞くと溜め息が出ていたものだが、一方でこういう映画も作られている。「我々」を歌うのではなく、「我々」によって疎外されているものに目を向け出している。かつてラビン首相を暗殺したような極右によって、「売国映画」と騒がれたりスクリーンを切られたりはしなかったのか。こういうフィルムが存在していること自体が、希望である。あの「修正液」に、まず正すべきはイスラエルの占領政策だ、とまで読み込んでいいのか。あちらの花婿をコメディアンに設定したのは、テレビでしか会えないということ以上の意味はあるのか。といろいろ湧き起こる疑問に遠い地の観客は戸惑いっぱなしだが、そういう疑点を得たことが私にとっては収穫である。[DVD(字幕)] 6点(2010-01-30 11:56:51)

56.  ヨーロッパ 《ネタバレ》 この監督で初めて観たのが『エレメント・オブ・クライム』だった。タルコフスキーを思わせる水への惑溺、水中で馬の死骸がゆらゆら揺れているあたりは陰気なブニュエルといった感じ。次の『エピデミック』ってのは字幕なしのビデオ公開で観られたが、これはドライヤーのトーン。この人独自のタッチがも一つつかめなかったものの、どちらも催眠術シーンがあることで共通していた。そしたら本作も催眠術で始まった。映画全体も催眠術のような夢魔の連続である。室内の鉄道模型を俯瞰していたカメラが引いていってその家から出、本物の列車の中に入ったかと思うとそれが走り出していくまでをワンカット、とか、カメラがバスルームのドアの上にゆっくりとねじれのぼっていくと、ドアの内側の血の洪水が見えてくる、とか、並行して走る列車越しの会話がやがて二つに分かれていくところ、とか、スクリーン・プロセスを使って背景とその前とで同じ人物が出たり入ったりするところ、とか。話は、戦後のドイツの復興の役に立とうとやってきたドイツ系アメリカ人の車掌としての放浪譚。カフカの「アメリカ」を裏返しにした設定ではないのかな。もっともあれ、カフカとしては珍しく爽やかな小説だったが、こっちは深いメランコリーを滲み出している。ヨーロッパの映画でよく感じるのは、こういったメランコリー。アンゲロプロスの登場人物が国境線の手前で遠い目をしているように、アントニオーニの登場人物がここではないどこかへ憧れ続けているように、タルコフスキーのノスタルジーのように。文化の伝統を重く背負い続け、そういう風土への憎悪と愛着とが常に憂鬱という気分を導き、そのメランコリーを文化の一つの型として自分たちの中に公認することで、彼らはなんとか耐えているのかも知れない。アメリカ育ちの主人公が単純に考えていた国家の再建というイメージは、列車の旅とともに複雑にグロテスクに屈折していく。ナチの残党が国家再建という大命題の前でうまく生き残っていく状況も、政治的メッセージとしては語られない。ナチズムという明瞭な傷口でさえ、ヒリヒリとしみわたる感覚ではなく、鈍痛のうずきに変わってしまう底なし沼のようなヨーロッパの風土、それをこの映画は捉えていたと思う。このタッチで先もやっていってみてほしかったんだけど、また次から変えてっちゃうんだな。[映画館(字幕)] 8点(2010-01-08 12:10:41)

57.  デッドマン(1995) 言ってみれば“もがり”の期間ということか。死の開始から完成までの。冒頭の機関車・主人公・風景のセットが、ラストのカヌーのシーンでも繰り返される。主人公はひたすら運ばれて、フダラク渡海にまで至るわけだ。3人組ってのが好きね、この監督。アメリカはしばらく「自然に優しく」とか、インディアンの生き方を真似ようというのが流行ってたが、とうとう死に方まで教わろうという段階になったようだ。この監督はやはり中・短編系の作家であって、オムニバスでなく2時間を越えると長すぎる印象。そもそも死生観を語ったりするのは似合わない。ちょっと出て殺されるのがガブリエル・バーンなどという贅沢はある。[映画館(字幕)] 6点(2009-11-03 11:55:08)

58.  ユリシーズの瞳 前作のラストでは黄色い服を着た作業員たちが、絶望の中の希望を示唆していたけど、今回は黄色の補色の青に浸されていて、ラストは希望の中の絶望に見える。でもそれが希望であったのか絶望であったのかは、どこかに到着して初めてわかるので、いつもアンゲロプロスが描いているのは、途上で途方に暮れて立ちすくんでいる人々なんだ。路上で、あるいは岸辺で、帰還の途上ということだけがわかっていて、それがどこへの帰路なのかは分からない。20世紀史と映画史が重ねられた旅の途上、第一次世界大戦のサラエボから世紀末のサラエボ紛争への百年の旅の途上。映像としての緊張度は前半のほうが高かったけど、後半に込められた気迫のようなものの感動も、映画の感動として除外したくはない。歴史が凝縮されるお得意の手で、1944年の大晦日から1950年の新年までをワンカットで見せる踊りのシーンなど、やはりたまらない。[映画館(字幕)] 8点(2009-09-27 12:06:11)

59.  サブリナ 《ネタバレ》 オリジナルでは、ハンフリー・ボガートが小娘のオードリー・ヘップバーンに恋をしてしまうって意外性がおかしかったんだけど、ハリソン・フォードでは、まあそういうこともあるだろうな、って感じ。ワイルダー作品としては中級かと思っていたが、リメイク見て思い返すと、やはりちゃんとした映画だった。周囲の人たちがサブリナを見る目が優しく嫌がらせがない、こういい人たちだけでもドラマは出来るってこと。こういう優しさの処理、今では出来まい。美人になって帰ってきたサブリナを弟は気づかないが、兄ハリソン・フォードはあっさり「やあサブリナ」と言うところで、兄弟のサブリナ観の違いをサラッと見せる手際。芝居の切符の手配を頼まれた秘書が「ミュージカルって、役者が不意に歌ったり踊ったりする芝居ですよ」と解説するところは笑った。恋をすると男も女も眼鏡をはずすのだ。[映画館(字幕)] 6点(2009-09-24 12:02:27)

60.  カットスロート・アイランド 海賊映画というジャンルにそもそも懐かしさがあり、そういうナツメロ的に味わえば楽しく見られる。ロープがよく出てくる映画になるのだ。見せ場はちゃんと次々にあるんだけど、なんかキレがもひとつ感じられないのは、不必要なスローモーションがブレーキになってるんじゃないか。ペキンパーのスローモーションは「思わず息を詰めて」ってところで使われた。でもその後、アクションのごまかし、つまり本当のスピードで映したらゆっくりしてるのを隠すためにスローにしてる、って使い方になってきて、とくにこの作品でそれをしばしば感じた。馬車のシーンなどよくやってるんだが、ロングでスピード感が減じ、一番の見せどころの、下を馬車、上を駆け抜けるいうとこ、上のバタバタが若干多すぎて、きびきび感が失われていた。こういうリズムは本当に難しいものだなあと思う。島もあんまり生きなかったし、かといって船のアクションてのも新味を出しづらい。ジーナ・デイヴィスの色気のない明るさってのは貴重だった。[映画館(字幕)] 6点(2009-09-20 12:07:24)(良:1票)

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