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【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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61.  エレニの旅 もちろんすばらしい映画ではある。筏を連ねての葬儀や、樹に吊るされている羊たちや、水没していく村など、アンゲロプロス以外には作れない厳粛な映像が展開している。難民の世紀としての20世紀を検証しようとする姿勢も正しい。でもなんかツルッとしている。初期の作品はもっと歴史と人間がジャリジャリと擦れ合っていた。脚本にトニーノ・グエッラが加わるようになってから、このジャリジャリ感が少しずつ薄れてはいないか。どこかページェント的、オリンピック閉会式のショーを見ているような気にもなってしまうのだ。[映画館(字幕)] 7点(2007-12-05 12:25:20)(良:1票)

62.  春夏秋冬そして春 西洋のイメージした東洋を見ている気がずっとした。老師の感じなんかスターウォーズみたいだし、池の中の浮き堂も美しいんだけど、西洋の視線を経由してるように感じちゃう。季節ごとに若者の設定が替わるの。罪を越えて次の世代の老師になる。それらを仏が高みから見てござる、って感じ。猫の尻尾で般若心経を書いたり、どうも禅的なハッタリにすべて感じられ、まあ禅と言うものが、大部分そういうハッタリの世界なのかもしれないが、他者の思惑を意識しすぎた精神性って、やでしょ。こちらが必要以上に拒否反応起こしてる気もするけど、せっかく画は美しいんだから、それを素直に愛で られるストーリーだったら良かったのに。むかし韓国で作られた『達磨はなぜ東へ行ったのか』なんてのは、素直だったよ。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-22 09:48:46)

63.  明りを灯す人 ほのぼのした映画の線かと思っていた。たしかにおおむねそうなのだが、政治の混乱期のドラマなのだった。アカーエフ独裁政権が崩壊したあとのキルギス。当時一応日本でも報じられていた記憶はあるが、「独裁者」の風貌がモロに日本人だなあといった感想しか持たなかった。イラクは独裁者が消えたあと、混乱に突入した。こちらは都市部ではワイワイやってるようだが本作の舞台となった村ではのどか。電気のメーターを操作した罪で捕らえられていた主人公が、政権崩壊で釈放されたくらい。と思ってると、底のほうでは動いていた。やり手の男が村を牛耳りだし、親戚のおとなしい男(妻は赤旗なびかせたトラックに乗って出奔してしまう)を次の村長に押したて、中国の土地開発団を呼んだりしている。そういった動きの気配に合わないものを感じていく主人公の困惑、といった話で「ほのぼの」では終わらない。そしてこういう「転換か否か」という話は、変革期の国では(日本の幕末維新期もそうだったが)どこでも起こってきた。主人公は子どもがみな娘で息子がいないのを気に病んでいる昔風の男、でも電気技術者である彼を尊敬しているらしい男の子がいつもそばをチョロチョロしている。電信柱に乗っているときマッチを投げ上げてくれと頼むと、中に小石を入れて風に飛ばないように工夫してくれる賢い子。後にこの子が(だと思うんだけど、顔をよく識別できない)木に上って降りられなくなり主人公が助けにいく。山の向こうを見たかったと言う少年。この地方の希望がじんわい感じられるいいシーンだった。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-29 09:04:55)

64.  サウンド・オブ・サンダー 《ネタバレ》 大事になるきっかけが「些細」ってのが、ワクワクさせる。倒して液体酸素が漏れる「些細」な事故。塀を突き破る植物の出現ってのも「些細」だった。大事そのものよりも、そのクレッシェンドがワクワクさせるんだ。最初は蝶のように些細なら些細なほど嬉しい。その分植物に覆われる都市ってのをもっと味わいたかったな。こちらにモロ敵意を示す動物よりも。あからさまに邪悪の相してるんだもの。もっと無関心なのに害をなしてくる、って方が怖いと思うんだ。哺乳類と爬虫類がくっついて進化したんだって。例のごとく有色人種が麗しい犠牲者となる。エネルギーはどういうふうに供給してるのか、自家発電なのか。[DVD(字幕)] 6点(2013-10-24 09:42:30)

65.  三文オペラ(1931) 友情讃歌ととればいいんだろうか。警視総監、泥棒、乞食の巴となっての。それらをひっくるめて、乞食の群衆の裏表の関係になってたのか。とにかく全部セットで、風景を映したシーンがないのも、舞台を意識したよう。泥棒の情婦、乞食の娘としっかりした女たちが小気味いい。男のキザ加減も見事、警官に追われても走らないし、屋根から下りてくるときでもステッキを離さない。こういうキザに徹するのを風刺としてでなくそのままで楽しむって姿勢、日本にはないけど、ヨーロッパは「007」なんか見てもあるな。紳士の文化ってのが、なんかあるんだな。あと「愛すべき泥棒たち」ってのも、あちらの文化的。日本で似たのを考えると、歌舞伎の白浪ものになるが、あれは「愛すべき」という仲間的な親しみじゃなく、やはり見上げるヒーローという距離がある。鼠小僧ってのは、江戸の町人にとってどうだったんだろう、仲間・同類って感じあったのかな。[映画館(字幕)] 6点(2012-08-07 09:01:52)

66.  カリガリ博士 《ネタバレ》 ストーリーはたわいないもので、「権力とは何ぞや」などといろいろ深読みするより、当時の娯楽一般が病的に歪んでいたものだったことを確認するぐらいでいい。この表現主義に影響された日本の『狂った一頁』も精神病院になっちゃうわけで、時代のグロテスク趣味にとどまっている気がする(それはそれでセットの美術だけ見れば悪くないけど)。夢遊病男が夜、女性の家に忍び込む場面は不気味であった。これよりもこの翌年の『朝から夜中まで』のほうが、狂気で片づけてないぶん、一歩前進があるよう。ことの起こりは主人公の狂ったような激情だけど、ストーリーは幻想というわけでなく、いわば悪夢のような現実。電灯の光までヒラヒラを付けて描写し、表現主義もこういった方向で発展していったら、グロテスクで病的なものだけに閉じない新展開があったんだろうが、不健全を許さない「病的に健康」な時代にドイツが入っていってしまうからなあ。[映画館(字幕)] 6点(2012-07-08 09:59:02)

67.  夢の涯てまでも この人は求心力よりも遠心力の人だったけど、これはもう分解寸前までいってる。前半の世界旅行は正直言ってほとんどノレなかった。部分で言えばリスボンの路面電車なんかは悪くないんだけど、前半キチンと物語としての面白さを出していないと後半生きないから、これでは困る。でも作家の質として仕方ないんでしょうな。皮肉なことに、その物語が終わって人々が映像病に閉じていく後半、オーストラリアに入ってからのほうが若干面白いんです。荒野をさすらうあたりからこの人のトーンが出てくる。世界の終わりという大規模なスケールのところから、次第に極所に集中してくる。盲目の母に視界を与えるという家の世界になり、そこから個人の夢の世界にと狭く狭くなっていく。意外と「家族」って、この作家のポイントなのかもしれない。世界はあまりに広すぎ、個人の夢はあまりに普遍から遠い。家族の愛を単位としたらどうか、って。も一つ意外だったのは、映像の病いから抜け出すのが「言葉」なんですな。映像作家の皮肉な結論。映像は閉じ、言葉は開く。映像(夢)は人それぞれのものだが、言葉は普遍に使われているものを借りて綴っていく。そこに開かれるものを見ている。ハイビジョンによる夢の映像ってのがウリだったが、ある種の夢のような感じ・明晰でないことの美しさは出ていた。今見るとどうだろうか。[映画館(字幕)] 6点(2012-07-03 09:56:33)

68.  ブンミおじさんの森 《ネタバレ》 夏の夜の感じ。背後では虫の声が続き、夕涼みをしている部屋でぼそぼそと語り合う親族一同。そこにふんわりともう一人、すでに亡くなった親族が現われてきてもおかしくないような夜。一年中こういう夏の夜の感じが続いているのなら、さらに毛むくじゃらの猿の精霊となったせがれも、階段をゆっくり上がって来ることがあるかも知れない。ちょっとは驚くが、あとはすんなり状況を受け入れて会話は続いていく。「ずいぶん毛が伸びたのね」。すると次に美貌を失った王女さま(?)と輿かつぎの若者の悲恋っぽい話になり、それを見守るナマズが慰めたりする鏡花にでもありそうな世界に唐突に切り替わる。バックの滝が美しいが、こちら観客はその展開にただ呆然とする。するとさきのブンミさんの話に戻って幽霊との洞窟探検になり、分かりやすく判断すれば亡妻に死の国へ導かれたような図だが、そういうおどろおどろしさはない。いたって淡々とブンミさん死んで、淡々と葬儀に移り、画面では香典の金勘定をやってる。王女さまのおとぎ話の対極のような世界。お寺が怖くて睡眠不足だった坊さんはシャワーを浴びTシャツに着替え(坊さんがシャワー使ってる光景なんてたぶん人生でこれ一回見るきりだろうが、だからってなぜこう丹念に見せられるのか)、さて飯でも食うか、と出かけるところで最後のサプライズが来、観てるものの呆然を残して映画は終わる。ついついこちらは「アジア映画」というものを「素朴な良さがある」「癒しの」世界という心構えで観てしまっていた。題名もなんかそれっぽいし。ところが前衛映画ってやつだった。エピソードのひとつひとつは奇譚として面白いんだけど、それがどう関係しているのかが分からない(前世ってこと?)。もうちょっとヒントくれてたら心穏やかに観られたのに。アジアの映画も、そう「癒し」ばかりじゃなく、むかし見たバングラデシュの『車輪』っていうのは、行き倒れの死体を遺族の村に運ぶように頼まれた男の話で、なかなか目的地の村にたどり着けず(村の名前を間違えていたり、結婚式をやっていて不吉だと追い返されたり)、しだいに死体には蝿もたかり、死者の幽霊が「俺の村を見つけられるかな」とからかってきたりと、なんかブニュエルを思わせるような傑作だった。アジア映画が、「癒し」「素朴」の方向で享受される時代はとっくに終わっていたことを悟らされるこの『ブンミおじさん』ではあった。[DVD(字幕)] 6点(2012-05-26 10:23:21)(良:1票)

69.  ゴーストライター 《ネタバレ》 冷戦時代、西側にとって悪役は東側陣営のスパイにしとけばよく、あとはナチの残党とか「とりあえず使える公認の悪役」ってのが存在した。それが今ではCIAだ。もちろんCIAが「それほど悪くない」と思ってるわけじゃないよ。CIAの悪行抜きでは南米の歴史も書けないだろう。でもこの「とりあえず」感というか、「公認性」に寄りかかっている横着さを、こういった「CIA陰謀史観もの」に感じてしまう。本気で詰めろ、と思ってしまう。悪玉をCIAにしとけば、みな何となくそれで納得してしまう、その作る側と観る側の横着さが(自戒も込めて)気に入らない。純粋にスリラーとしても、なんか横着に作られてて、メモが手渡しされていくあたりでやっとそれらしい空気が出てきたが遅いし、スリラー演出を離れストーリーとして見ると、主人公はアホなことやっちゃったことになる。カーナビの使い方など、もっと新鮮な味が出せそうだったが、そうでもない。車で追われてフェリーに逃げ込んだつもりでいたのが…、ってところでちょっとワクワクした。車の「無表情」感が生きてる。この手の映画では、重要人物の「日常」はこんなか、と思わせるあたりに味わい。散歩してると黙ってついてくる警備とか。[DVD(字幕)] 6点(2012-05-19 09:08:08)

70.  美しき獲物 《ネタバレ》 やっぱスリラーは金や欲よりサイコがいいね。かなり粗っぽい話でも、いちおう満足する。ゲームに憑かれた人間の気持ち悪さ。深刻な遊戯というか。繰り返される殺人はあんまり芸がないんだけど、ま雰囲気はいいですな。「ゲーム」の気味悪さみたいなものをいちおう突いている。すぐ下に沈んでいくカメラ。あの刑事、なんとなくサイコ少年に雰囲気似させてた。盲目の師匠ってのもワケアリにさせといて。何度も客に「やっぱりね」と思わせといてうっちゃるわけ。D・レインの役どころはやはり『羊たちの沈黙』からのイタダキでしょうか。水の地下室っていう舞台はいいが、ラストは長すぎ。[映画館(字幕)] 6点(2012-02-15 09:59:23)

71.  白いリボン 《ネタバレ》 たぶん、村を覆う不穏の気配を描いた映画なのだろう。それは圧倒的で、白黒の美しい田園風景が周りを囲んでいるだけ、さらに不穏である。誰が犯人か、というミステリーの興味にしちゃ余計なものが多すぎるし、厳格さは子どもをダメにする、というテーマにしちゃ集中感がない。子どもに収斂されていく不穏な気配(やがて世界大戦に移ろっていく)を味わう映画なんだ、と納得しようと思ったが、なんかそれにしても集中感に欠けるなあ。語り手のロマンスは村の厳格な風土との対比で入れてるのだろうか。そのほか意味ありげなエピソードがあったり中途半端なエピソードがあったり、すべて「気配」を醸成してはくれても「テーマ」に集中してはくれない。トーンとしてはベルイマン的で、だいたいあの厳格な牧師の顔がグンナール・ビョルンストランドを思い出させる。ドクターが助産婦に毒づくあたりの容赦のなさもベルイマンタッチ、でもあちらにはもっと集中感があった。2時間半も使って「気配」を描こうとはしなかった。キーになる子どもたちが、へんにニタニタ笑ったりしないのはいいんだけど。ここらへんの時代を描くとなるとパリやウィーン、ベルリンなど都会が多く、田舎の20世紀初頭ってのは珍しかった気がする。最初のうちは18世紀末かと思って観ていたら、シューベルトがどうのこうのと言うんで19世紀かと思い直したところ、セルビアで暗殺事件が起こったという報が入って驚いた。もっぱら都市で語られる世界史と地方史ではズレがあるんだな。あそこらへんのヨーロッパの北側、第一次大戦前後の田舎の風物としては、北隣デンマークの『奇跡』(30年ごろが背景)が思い出される。神の罰が重くのしかかっている風土ではある。「神さまに僕を殺す機会を与えたんだ」。[DVD(字幕)] 6点(2011-12-29 10:11:22)

72.  イン・ザ・スープ この監督は海と父との取り合わせが好きらしい。ジョー(シーモア・カッセル)は友だちと言うよりも父的になっている。ニコニコ笑いながら悪いことに誘っていくジョーがなかなかいい。サンタのかっこして車を盗んだり。ブーシェミがキートン的な困惑に落ちいっていくあたり『ミステリー・トレイン』の彼を思い出させる。車の席の構図なんかも。おっかない男との対話、心の声に対してエッと言われたり。こういう被害妄想的ユーモアってこのころの流行のようでもあり、サイレント時代から連綿と続いていたようでもある。ジャームッシュの匂いが強い。本人も出てるし。前作『父の恋人』では男のオカマ役だったJ・ビールス(「こいつ女じゃねえ、男だぜ」って言われる役。ついでに言っとくとこのひどい役を設定した監督とビールスは結婚したが、やがて別れた)が今回は女性役。作品として面白い気分はあるんだけど、ちょっと物足りない。この監督はいっそセンチメンタリズムに徹したほうが、ジャームッシュとの違いを出せたか。[映画館(字幕)] 6点(2011-09-25 10:12:32)

73.  春にして君を想う 《ネタバレ》 荒涼とした風景が見もの。かえってああいう風景の中での生活をリアルに見せてくれたほうが、ファンタジックになったかもしれない(と思うのは、そこで暮らしていないせいかも)。かつての村が生き生きしてた時代の場に、味わいがあった。セリフのない冒頭。犬の埋葬はラストの伏線であった。埋葬で始まり埋葬で終わる仕掛け。ジープでのホームからの脱走、ふっと消滅してから幻想が入り込んでくるのか。労働者を逮捕できない警察のエピソードは、あれは不法出稼ぎ外国人労働者かなんかなのか。死んだステラの脇を流れる砂が美しい。風土と幻想性が互いに相殺してしまっているような気がした。風土そのものの幻想性をもっと掘り起こせたのでは。[映画館(字幕)] 6点(2011-03-03 09:28:16)

74.  倫敦から来た男 ワンカットの中で、しばしば「近いアップ映像」と「遠いロング映像」が入れ替わる。とりわけ浮き輪を投げて始まる、刑事が来たときのカットが面白かった。その舞台の広さが実感として伝わる。そういう何事かが展開している長回しもあるんだけど、ただカット尻を引き伸ばしただけのようなのもあって(娘の食事とか、妻の嘆きとか)、映画全体のリズムとして、ラルゴの曲の調べを聴いているような味わいの統一は出るものの、よくわかんない(『ヴェルクマイスター・ハーモニー』でも、延々と暴徒の行進を何分間かただ映してたとこがあったけど、それはちゃんと圧迫感として迫ってきてた)。それを補うためか、ときに音楽が鳴り続け、これはちょっとうるさい。同じ曲想を延々と繰り返してるんだから、まあ時間の停滞感は画面とフィットしてるんだけど。(たぶん)そういう音楽のように時間を味わう映画なのであって、物語を理解させるのには不向きな手法。はっきり言って、理屈で展開すべき推理系ドラマとしては無理がある。こちらは漠然と、そういう話なんだろうと、理解したつもりになっただけ。いかにもシムノン的なすがれた感じは満ちているし、白黒の画面は美しい。ラストのブラウンの妻は、監督の指示か本人の体質か知らないけど、長いアップで一度もまたたきしなかったんじゃないか。『サイコ』のジャネット・リーより大変そう。[DVD(字幕)] 6点(2011-02-06 09:45:05)

75.  時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース! 《ネタバレ》 天使像があたかも飛翔しているような冒頭のカットには興奮したものだったが、この人の映画は何か「監督の世界観」が出てくるとしぼんでしまう。映像的には白黒場面のカメラがゆらゆら動き回るカットなんかいいところは多いんだけど、それが話の必然性の裏打ちが弱いんで、淡々とし過ぎちゃうっていうか。天使が人間になってつまんなくなっちゃうのは、そういう設定なんだろうが、そのつまんなさの縮小感が映画そのものにも当てはまってしまった。後半なんだかよくわかんないまま悪漢ものになっていって、空中ブランコで荷を運ぶあたり、ちゃんとした活劇もののなかでのアイデアなら、なかなか面白いと感心したかも知れないが、こうヌルヌルした展開の後で見せられると、電球のコードがもつわけがない、などとヒンヤリ見ている己れがいた。[映画館(字幕)] 6点(2011-01-22 10:12:49)

76.  愛と精霊の家 長編の映画化は本当に難しい。総集編になってしまう。弟たちをカットして女系の線でまとめたのは仕方あるまい。それでもエステバンという人物の複雑さは出せなかった。いっそエステバンだけに絞るという手もあっただろう、「『愛と精霊の家』より」、として。メリル・ストリープは、まったくの死に役、グレン・クローズに負けた。風土は南米でも監督の北欧の気配がところどころある。空気の濃密さが感じられないとか、少女たちは北欧っぽいとか。大河ものってのは忘れたころに人物が再登場するところにドキドキがあるんだけど、この時間だとそのタメが足りなくて、ドキドキにまで至らない。私生児はまだしも、あの娼婦なんかオッという感じがまったく出ない。まあ豪華配役陣を眺め回す楽しみはあった。[映画館(字幕)] 6点(2010-12-03 10:27:10)

77.  ボーン・アイデンティティー 《ネタバレ》 映画を見始めるときってのは、他人の生活の中に途中から割り込んでいく訳で、周囲とのやりとりや会話から類推し、次第に状況やら主人公の立場なりを理解していくことになる。つまり記憶喪失者と似たようなものなのだ。不意に記憶喪失者として登場する人物こそ、映画の主人公としてもっとも理想的ということになる。観客は一体感を持って主人公に寄り添える。だからCIAの登場はもっと展開した後でも良かったんじゃないか、とも思うが、相手の巨大さを最初から印象づけたい気持ちも分からないではない。また女性観客にとっては、巻き込まれるヒロインが重要人物として手配されるあたり、心地よく感情移入できるのではないか。グダグダした日常から、CIAに謎の女として手配されるまで格上げされる。実際には「問題の女」になることはできなくても、これぐらいなら人生に起こり得るかも、って。セリフも練れていて「忘れっこないだろ、君しか知らないんだ」なんて主人公に言われるのも心地よい。そのお返しのように、逃げよと言う主人公に対して、彼女が黙ってシートベルトを締めるシーンがある。アクションは、階段落下のシーンあたり微妙だが、やたら派手なドンパチが多い昨今のなかでは、そのノワール調に好感が持てた。一匹狼のストイシズムを優先している。[DVD(吹替)] 6点(2010-08-01 09:55:45)(良:3票)

78.  王妃マルゴ とにかくなにやら陰謀が渦巻いているのは分かった。それが一族の崩壊へと向かっていけば『ゴッドファーザー』のような作品になっただろう。どうもカメラが近寄りすぎて、ひいて息を抜きたいところでも熱演のアップになって、陰謀ってのはもっと静かにロングの画面の中で進行するのではないか。そして薄暗さ、陰影の美をあまり感じさせず、ただ薄汚れた暗さだった。『ディーバ』や『リバー・ランズ…』のカメラなんだけど。ヒロイン、政略結婚の旦那との間には、友人のような・兄弟のような、いたわり・気の配り合いがあって、実の血のつながった兄弟とは近親相姦やってんの。澱んでますなあ、16世紀末のヨーロッパ。死体の脳で運命占いするってのもすごい。[映画館(字幕)] 6点(2010-06-08 11:53:58)

79.  愛を読むひと 《ネタバレ》 彼女の秘密とドイツの歴史との絡み具合がよくわかんなかった。どうも私のなかでピントがピタリと合わない。時代の罪と個人の罪の関係、とか、本当の意味で違う時代を裁けるのか、といった話だけなら、日本にも引き寄せてよく分かるテーマなんだけど、そこに彼女の秘密が入ってくると、かえってぼやけて感じられた。法廷のシーンはいいんだよ。最初にハンナの声が入ってきて、次に遠景の彼女が見えて、という段取りもいいし、裁判長もそう権威的でなく、いかにも戦後の「ナチズムを反省した市民」の代表って感じで、彼の正義感もよく理解できるようになっている。そこで時代の溝が、映画として生きている。個人にとって歴史というものの冷酷さが感じられた(ただほかの元女看守たちはやや造形が雑だった気がする)。法廷のシーンは緊迫していた。でもあの「秘密」によって、話のポイントがずれて縮む印象。なんか重要な点を理解し損なったのかなあ。住まいを定めるときとか、仕事に就くときとか、どうしたってそれを世間に隠し通せない場面が今までにもたくさんあっただろうし、そもそもこの法廷に至るまでの裁判の過程で、告発する側も弁護する側も、それに気がつかないってのは不自然なんじゃないか、やたら書類にサインさせる社会で。それほどいいかげんな裁判だったのかも知れないけど。いや、そういう女性の物語としてそれだけで完結してるのなら作品の設定枠として受け入れられるんだけど、歴史の悲惨に絡んでくるとなると、疑問。[DVD(吹替)] 6点(2010-05-23 12:05:33)(良:1票)

80.  リスボン物語 この監督は、どうも映画の中で「批評」してしまう。この人がしなければならないのは、手回しカメラで一本撮ることなのであって、そういう人物について語ることではないのではないか。自意識過剰の映画。すぐれた映画ってのは、自分が映画だということを忘れ去って生まれてくるものだろう。音を拾う場、街の音が次々に鮮明に立ち現われてくるあたりが面白かった。蚊とは、姿が見えず音だけでいらいらさせる存在だ。サイレントでは捉えられなかったものたち。そして音楽の豊かさ。人の声。これはロードムービーとは違うね。冒頭の各言語を突っ切ってリスボンの青空に至るところまではロードムービーと呼べるかも知れないが、あとは「人待ちムービー」、旅しているものを待つ映画だ。[映画館(字幕)] 6点(2010-02-08 12:03:44)

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