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1. スナッパー
アイルランドが舞台の映画はなぜか好きになってしまう。騒々しい家庭、騒々しいパブ。こういう「長屋の暮らし」的なホームドラマは、昔の邦画が得意にした世界だよな。しゃべるしゃべる。しゃべらない母が押さえ。カット数も多い。まあ下卑た顔をよくも四つ集めた、というような娘たち、それがしだいに懐かしく見えてきてしまうから不思議だ。それに対し男たちはひたすら純情。そういう世界。俗に俗に徹していって、出産の聖性を際立たせている、さらに「家族」というものの聖性も。赤ん坊のオッパイのゲップと、トーサンの黒ビールのゲップがダブる仕掛け。サラリと撫でただけの現状肯定より深く、どうしろこうしろ、こうして子孫が続いていくってのは悪いことじゃない、と思わされる。人間に関して新たな発見を誘う映画ではないけど、終わって実にいい気分になっている。他家のテンヤワンヤって、どうしてこうホノボノ面白いんだろう。原作・脚色は『コミットメンツ』の人。[映画館(字幕)] 8点(2010-10-31 10:47:53)
2. スターリングラード(2001)
うまいところに目を付けた。ヒトラーとスターリンという悪役同士の戦場なら、おのずと兵士個人の物語へと感情移入がしやすい。都市に冠した独裁者の名を守るためにのみ、無名の若者が次々と投入されていく戦場。一方は野育ち、一方はインテリ、おそらく戦争でもなけりゃ永遠に出会わなかっただろう二人が争う。けっきょく絨毯爆撃や原爆といった巨大な暴力による大量虐殺によって終わる世界戦争の中にあって、一人一人を狙撃し仕留めていく二人が、古い剣豪物語の主人公のように見え、彼らだって殺人者なのに、その外側のより無機的な殺人システムを告発しているように見えてくる。とりわけソ連のまったく消費材としてしか兵士を見ない体質、たぶんあの戦争の時ここまで自国の兵士の命をないがしろに扱ったのは、日本とソ連がダントツだったと思うのだが、その共通点が何に由来するのか、昔から気になっているが分からない。[映画館(字幕)] 7点(2008-08-14 10:03:22)
3. スターダスト(1991)
アイルランドってどこか湿っぽい。イギリスのブラックで乾いたのと手触りが違う。イギリスが人の心をとげとげしく観察するのに対して、人と人との間の空気の感触を大事にするみたい。これなんかぼんやりと心のどこかで主人公が母親かもしれないとうすうす感じてるところがいいんじゃないか。ローズ嬢のロレイン・ビルキントンっての、おそらく主役をやることはないだろうが、覚えといてやろう(そばかすがちらほらしてる文学趣味)。曇った朝に放たれる動物たちのイメージがいい。教会を訪れる象から始まって、うらぶれた幻想味が溢れる。ジミーへの情熱の解放でもあって、さっぱりした感じもある。自嘲と言うと毒々しくなりすぎて、もっと穏やかな気分。こういうのが一番アイルランド的と思っちゃう。[映画館(字幕)] 6点(2013-07-08 09:18:47)
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