|
1. 白い風船
あくまでおつかいに出た少女の心理に寄り添いつつ話を進めていき、ラストでパッと三人称になる手際。ある意味では残酷だが、しかし少女の世界がパッと開けて、仕立て屋の徒弟やら兵士やら風船売りやら都会で独りぼっちで暮らしていた周囲の星々が輝き出す、という感じ。もしかすると彼らの対極にあるのは、家で怒鳴っている父親(とうとう姿を見せない)なのかもしれない。第三世界の映画というと「家族の愛」とか「地域の親和」とかのテーマを読み取りがちだが、「都会の孤独」だってやっぱりテーマになるのだ。大人の社会に触れる子ども。おばさんには愛想よかった仕立て屋が、子どもだけになると無視する。大人は大人の客とのケンカで頭がいっぱい。そして変なオジサンっぽい相手には用心しなくちゃいけないし。そういう緊張があって初めて、子どもたちがガムをくちゃくちゃやり、目を見かわし、なんとなく笑ってしまう、なんてスケッチが生きてくるわけだ。[映画館(字幕)] 7点(2009-08-11 11:56:23)(良:1票)
2. 少女の髪どめ
献身の愛とストーカーの違いってあるのか。ただ見守るだけの愛、見守って出来るだけのことをする。自分のIDカードすら投げ出してしまう。ただただ尽くす。見返りは求めない。もう究極のストーカーで、究極の献身愛。ほとんど民話に近い物語が、難民問題というすごく現実的な背景で語られる。映画ってすごいなと思う。工事現場の監督や仲介者など、悪役になりそうな人が悪役になってないのもいい。ラスト、少女がパッと顔を隠す。強い拒絶ではない。ダメなのよ、というメッセージなのか、ともかく主人公に男として対したことを意味し、それをこれまでの献身に対する唯一の見返りとして、彼は満足の笑みを浮かべる。いい話を聴いた、という満足がこちらにも残る。[映画館(字幕)] 8点(2008-05-16 12:20:31)
|