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プロフィール |
コメント数 |
407 |
性別 |
男性 |
ホームページ |
http://onomichi.exblog.jp/ |
年齢 |
55歳 |
自己紹介 |
作品を観ることは個人的な体験ですが、それをレビューし、文章にすることには普遍さを求めようと思っています。但し、作品を悪し様にすることはしません。作品に対しては、その恣意性の中から多様性を汲み取るようにし、常に中立であり、素直でありたいと思っています。 |
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1. 怪物(2023)
《ネタバレ》 是枝裕和の『怪物』は3部構成。ひとつのプロットを3つの視点により描いている。
1つ目の母親の視点では、保利がとことん歪んでいる。
2つ目の保利の視点では、湊が歪む。
3つ目の湊の視点で、歪むのは誰か?
羅生門形式。そもそも、映画とは他者の視線から見られた世界の風景。世界を捉えようと思ったら、その世界なるものを多くの視点で囲んでいくしかない。それは視線の「反復性」と呼ばれる。
視点によって人物像が違っているのは、主観による視点であるから。それが怪物を生む。湊の視点は不安定で、「それ」が歪んで見えかけるのだけど、自分がどうしようもなくなり、それを受け入れる。そのキッカケが校長のいるところ。結局、怪物を断つ回路は、言葉(世界)ではないところ「非言語性」にあったのだなと。
すべての物語は本来、謎解きである。でもそれは容易には解かれない。だから謎は宙吊りとなり、観ている人の身体の中に「内面化」され、その人のものになる。
「反復性」「非言語性」「内面化」
『怪物』を傑作たらしめているターム。私ならこの3つを挙げる。
「なぜ性的マイノリティを描きながら不可視化したのか?」
それは、映画がその「気付き」こそを描きたかったから。ある人は、最後に二人が死んで違う世界で生き返ったとし、現世の死を以て、制裁が再生産されたと言う。これを「君と世界の戦い」(カフカの『君と世界の戦いでは、世界に支援せよ』)として単純化すれば、ある人は、「君が世界となるべきだ」と見做し、映画は「君は君であるべきだ」として映す。
私は、映画が文芸であるとすれば、映画は「君は君であるべきだ」ということこそ捨ててはいけないと思う。それが優先されなければ、君が世界になる、その世界を描くことだけに過ぎなくなるから。監督は、性的マイノリティーの世界ではなく、「君」を描きたかった。その決意を『怪物』から強く感じる。
彼ら二人は何処に生き返ったのか?ビッグクランチは時間の逆行。実は死んだのは飽和した世界の方だった、というのが私の解釈である。[映画館(邦画)] 9点(2024-06-19 00:33:19)《改行有》
2. 鍵泥棒のメソッド
『運命じゃない人』『アフタースクール』と観てきて、内田けんじ監督の独特の作風に感心していただけにとても楽しみな作品だった。前2作の良さ、監督の作風を確実に受け継ぎ、さらに面白さが格段にパワーアップしていると感じた。『運命じゃない人』も面白かったけど、僕には演技の素人っぽさがどうしても目について仕方なかった。それに比べて『鍵泥棒のメソッド』は、出演陣が独特のキャラクター達をうまく演じていて、とても自然に観ることができた。特に香川照之と広末涼子がよかったかな。この監督特有のプロットの巧みさに、キャラクターの面白さが加わり、尚且つ笑いがあった。そして、胸がキュンとなった。
単に面白い、といった表層的で突発的な笑いではなく、計算され、手の込んだ演出が生み出す笑いというのは重みがあり、心に残る。思い出し、噛締められる余韻がある。今回の作品は、その完成度として、プロット、キャラクター、セリフ、オチ等、全てが上手くハマっていた。よく出来たミステリーを読んだ後のような爽やかで胸に残る余韻があった。また、人それぞれかもしれないけれど、その笑いは僕のツボにもうまくハマったのである。秀作。[映画館(邦画)] 10点(2013-01-29 20:07:18)《改行有》
3. 川の底からこんにちは
主人公の「頑張る」という言葉が妙に切実に響いたのは、「頑張る」とか「頑張ろう」という言葉自体が最近世間で使われなくなったからかもしれない。一億総うつ社会。敢えて「頑張らない」ことや競争しないことが今や美徳となっているから。みんな「ナンバーワンにならなくてもいい、元々特別なオンリーワン」なのだから。
また、他人に「頑張れ」と言わないこと。それは「頑張れ」という言葉の無責任さや無神経さを自覚してのことだというが、裏を返せば、他人の気持ちに深く踏み込めない、責任を持てない関係性そのものの希薄さを表している。
僕自身は、年がら年中、「頑張る」と言い続けているような気がする。そう言って自分を鼓舞しないとやっていけないので、それは「しょうがない」のだ。とにかく頑張って、家族や会社を守る。人は社会で(ちっぽけでも何でも)責任ある立場を得ると、無根拠でも何でも頑張らないとやっていけないのです。とにかく明日も頑張るので、今日は寝る。それは決めたことだから。それはもうしょうがないから。
満島ひかりは相変わらずうまいなぁと思うのだけど、今回の主人公はちょっと共感しづらい点がところどころにあり。そういう違和感も彼女の魅力なのだけどね。[DVD(邦画)] 8点(2011-10-10 10:12:12)(良:2票) 《改行有》
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