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プロフィール
コメント数 1252
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  学校の怪談 《ネタバレ》 なるほどお化け屋敷のような映画に見える。花子さんはいいとして、屋外にいるはずの口裂け女や洋画風モンスターなど、「学校の怪談」というのにふさわしいかどうか怪しいものまで詰め込んで、着ぐるみから視覚効果からストップモーションアニメから何だかんだを次々出して子どもらがギャーギャー騒いでさぞかし楽しそうだと思わせる映画になっている。昔からいた用務員が子どもの習性にさんざん悪態をついていたが、これはいつの時代も子どもというのは変わらないことの表現だったかも知れない。それにしても、大事な紙を引っ張り合って破いた2人のうち片方が教員だったというのは呆れた(おまえはガキか)。 登場人物としては、親しみやすい風貌のボーイッシュな女子(男子かと思った)と、今年が最後の夏休みになったらしい美少女の両ヒロイン体制だったようである。一つ年上のお姉さんと少年との間で、ちゃんと小学生向けらしい恋物語(片思い)ができていたのは微笑ましい。 大人の方の物語も一応あったようで、かつて教室に閉じ込めた女子が脱出した方法は不明瞭だったが、要は教員が思い切って真似したことで心の傷も解消できたということか。また人物設定がよくわからなかったが、教員の幼馴染だったヤンキー女は18歳くらい?で出産して現在は11歳の子を持つシングルマザー?だが、今回の事件のおかげで教員との距離が急接近したと思えばいいのか?…よくわからないが、とにかく最後がハッピーエンドだったのは子ども向け映画らしく清々しい。 今回のことは大事件に見えても、子どもらにとっては1学期が終わって最初の出来事に過ぎなかったことになる。夏休みの本番はこれからだ、という期待感を持たせて終わる、大変楽しい(騒がしい)映画だった。[インターネット(邦画)] 6点(2018-11-09 19:41:41)《改行有》

22.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 大評判なのは知っていたがやっと見られた。 大変いい映画だとは思うが、申し訳ないが最初のワンカット部分は正直見るのが苦痛だった。初めからこういうクオリティで撮っているという設定でもあり、不自然な箇所については後で説明もあるわけだが、これを延々と見せられている間に体調のせいもあってか頭が痛くなってきた。 後半をあわせて見ればよくできたお話で、最後はみんな笑顔で和む映画になっている。真相を明らかにした中で個人的に面白かったのは監督の台詞にアドリブが入っていたというところだった。最終的に一番いい役は監督の娘だったようで、ちゃんと両親のいい所だか悪い所だかを受け継いだ人物になっている。 前半で忍耐を強いられたせいで絶賛というわけにもいかないが、それなりの点数にしておかなければと思わせる映画ではあった。[映画館(邦画)] 7点(2018-09-15 08:56:06)《改行有》

23.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 一般論としては“生きるために生まれてきた”というのが重要なように見える。映画を見ていると、なんで登場人物がそんな大事なことを都合よく忘れるのか?と思うわけだが、しかしそれを忘れて生まれるのは姫だけでなく人間全部が同じと思えば、少なくとも若年者に対しては劇中世界を超えた普遍的なメッセージになっている。 姫の犯した罪と罰というのは意味がわからなかったが、生きる苦痛から逃れようとしてこの世を去らねばならなくなり、親を泣かせた上に自分がしたいこと、すべきこともできなくなったのが罰なのだろうとは思う。それにしても逃げに走ったのが一瞬だけだったのに、いきなり召還というのは酷な気もしたが、それは罰というより父親が早く実家に呼び戻そうと待ち構えていた感じだったのではと思ったりする。 ところで最後の迎えが阿弥陀来迎図なら、西方極楽浄土(いわゆる極楽)が月にあるような設定ということになる。現代では天国とか極楽とかいったものがディストピア風に扱われることが多い気がするが、しかし昔は生きること自体が本当に過酷だったからこそ、輪廻を離れて永遠の安穏が保証された世界を願ったという面もあったのではないか。それを安易な逃げとして簡単に否定してしまう今の日本はよほど恵まれた時代なのかも知れない。また歴史的に見れば、実際に平安末期から大流行した浄土信仰を否定して終わったようなのが時代に逆行した感じで変な気もする。 自分としては残念ながらあまり心に染みるものはなかったが、しかしここのレビューを見ていると結構さまざまな見解があってなるほどと思わされる。そのように見た人それぞれの反応を引き出せる深みを持っているのは、この映画が優れた創作物であることの一つの証明かも知れない。 ほか余談としては姫の屋敷がそれらしい感じの寝殿造りで、東に中門があって西に釣殿があり、実在した「東三条殿」を模したような構造だったのが興味深い。こういう建物が出て来るからには劇中年代は平安時代ということになる。また富士山から煙が上がっていたのは芸が細かい。 登場人物では「車持皇子」の一人芝居に笑った(これはやりすぎだ)。「御門」の顎はハプスブルク家の真似ではないか。また、ひときわ雑な顔をしている「女童」は、最初は不気味に思ったが、結構愛嬌があって可笑しいキャラクターなので和んだ。これはこれで有能な人物なのだろうが何歳の想定なのか。なんで田畑智子さんがこんな役をやっているのかもわからない。[DVD(邦画)] 7点(2018-05-19 00:00:09)(良:1票) 《改行有》

24.  怪獣大戦争 《ネタバレ》 まずは冒頭のマーチが勇ましい。 基本的には子ども向け映画だろうが保護者も退屈しないようにということか、男2人のユーモラスな会話とか女優2人の美の競演とかラブコメ風味とか悲恋物語(の断片)を入れてあり、大人が見るのが苦痛というわけでもなく、けっこう幅広い娯楽性を備えた映画になっている。伝統的日本人に比べて外人男の言動があっけらかんとしてドライで、真面目な顔で笑わすようなことを言うのがいい。 X星人は宇宙人でありながらもみな不気味なアジア人顔で、歩き方も特徴的だが特に統制官の手振りが印象に残る。大きな動きは地球人類にも理解できそうだが細かい指の動きなどは意味不明というしかなく、これはまさに異文化の所産というところである。最後の「未来に向かって脱出」という台詞は空虚な負け惜しみ以外の意味が感じられないが、自分が負け惜しみを言う時に真似したいという気にはなる。 映像面ではX星での照明の使い方が印象的で、統制官が意味不明のX星語(グスタrrr、タッ、ブツザッと聞こえる)をつぶやいてから暗転するのは好きな場面である。また、あまり格好いいとはいえない円盤が、湖から水煙を引いて飛び立つところの映像美が東宝特撮らしい。 出演者は豪華というかお馴染みの面々だが、沢井桂子さんという人は特撮方面では珍しい出演者も知れない(ほかには同年の「フランケンシュタイン対地底怪獣」、特撮TV番組「ウルトラQ」第8話)。劇中人物としては可憐で清純そうな女性で、公的な場ではうつむき加減で控え目だが、親しい相手にはそれなりに言いたいことを言っていたようで、態度の使い分けがしっかりしているのが奥ゆかしい。波川女史と2人並んだ場面では引いてしまっている感もあるが、波川女史の応対がこなれ過ぎていて怪しいのに対し、この人の清楚さが際立っているという言い方もできる。 ちなみに最近、水野久美さんの出る「ケアニン ~あなたでよかった~」(2017)という映画を見たが、この映画での「ああ、あの方ね」という台詞で、この女優らしさというのが当時から現在まで継承されていることを改めて確認した気がした。[DVD(邦画)] 6点(2018-04-08 23:27:58)(良:1票) 《改行有》

25.  ガンマー第3号 宇宙大作戦 《ネタバレ》 [2017-12-16改訂] 公開当時は入替制ではなく、途中入場したところがちょうど「そこを開けちゃいかん!」の場面だったのがトラウマ級の衝撃で、とにかく怖い映画という印象がずっと残っていた。そもそも当時はガンマーという言葉からして怖かったが、劇中の怪物(台詞では「怪獣」)も子どもが親しめる要素などは全くなく、気色悪さと怖さに特化したデザインになっている。大人が見ればどうということはなくても、子どもの立場ではそのように感じたということは証言しておく。 あらためて見れば基本的には昔の特撮映画だが、日米合作のためかけっこう堅実にできており、かえって昭和特撮らしくない。地球に別の天体が衝突する話は「地球最後の日」(1951)や「妖星ゴラス」(1962)に続いてのことだが、この映画と同じく天体を破壊しようとする「アルマゲドン」(1998)より簡単に成功してしまい、あとは「エイリアン」(1979)風に追い詰められていく恐怖の物語となる。特撮は他の怪獣映画も手がけた「日本特撮映画株式会社」が担当していてそれなりの水準だが、個別の場面としては脱出用の宇宙艇が発進するときに、3回それぞれに変化をつけていたのが印象的だった。 また成人後に見ると目につくのが2人の隊長の関係性である。最前線での働きは若い頃の名コンビを髣髴させるということだろうが、しかし今となっては指揮官として明らかな差がついてしまっているのが微妙に切ない。確かにエリオット隊長は人格的に甘いところがあったようで、劇中の出来事を見る限り、判断を誤らせる原因は人助けに代表される人情の問題を優先してしまうことだったらしい。それが事態を悪化させてしまったわけだが、しかし最終的にはそれが親友と地球を救うことにもつながったと解される。タイミングのいいところで人生を切り上げて名を残す、という形に結果的にはなってしまったが、こういう人物に気持ちを寄せたくなるのも年取った証拠かという気にはなる。 ちなみに余談として太陽系内には「フローラ」(Flora)という小惑星が実在しているので、とりあえず台詞の「二等遊星」は「小惑星」のことだと思えばいいらしい。ただし実物は小惑星帯のメインベルト(火星と木星の間)にあり、それが何でわざわざ地球まで飛んで来るのかと素朴な疑問が生じるわけだが、そこは登場人物も「この際原因はどうでもいい」と投げていたので観客としても突っ込まないのが正しい。[DVD(邦画)] 7点(2017-12-16 11:39:48)《改行有》

26.  学校の怪談 呪いの言霊 《ネタバレ》 以前の「学校の怪談」シリーズというのを知らないので比較できないが、これ単独で見る限り、安手のアイドルホラーと割り切って見れば悪くない。撮影は全て天気のいい昼間だったようだが、それでけっこう背筋の寒い映画ができている。 ストーリーは込み入っていて理解不能だが、要は計5人が同じ日に廃校へ侵入したところ、男3人が校内の閉鎖空間に取り込まれ、以前からいた高校生と合流したということらしい。また校内で人々の発言に聞き耳を立てていたのが「あ」「く」「ま」であって、これが閉鎖空間を支配していたが、普通とは違う専用の降霊術でコンタクト可能だったようである。校舎が解体されてからも、この閉鎖空間だけはいつまでも現地に残るのだろうという気がした。 また「言霊」という言葉の解釈に関しては、暑いと言われると本当に暑くなる、というのはいい例だが、しかしガス事故を語ればガス事故が起きるというのも短絡的過ぎるので、簡単に言ってしまえば「怪を語れば怪至る」ということだと思われる。また場所の問題ということもあるわけで、まさにその現場でそんなことを言うな、と思う場面は現実世界でもなくはない。 自分が思い出したのはむかし読んだ本(※)の中で、航海中に海上で怪異を見た人物が、船長に「何か見ましたか」と聞かれて「いいえ」と答えたことに関し、「船中にては左様のことは申さぬもの、という伝統的なたしなみを持っていられたのであろう」と評した話があったことである。“たしなみ”といえば場所の問題だけでなく、そもそも死者なり鬼神なりに対して敬意を払っておく(のが無難)というのもその一つと思われる。 何かと強がって見せたい年頃の連中にそんなことを求めても無駄だろうが、それでも一応、例えば心霊スポットに突撃して現場を荒らす無鉄砲な連中を戒める教訓的な映画と取れなくはない。 ※今野圓輔「日本怪談集 幽霊篇」(1969年)(現代教養文庫666)「海坊主のあくび」 なお主演のグループは知らない人々なので何ともいえないが、気が動転して何も考えられなくなった顔がけっこう真に迫っていると思う演者はいた(これが彩乃という人?)。侵入した女子の「バッカみたい」というのも非常にいい。石橋杏奈さんは心のピュアな清楚系の役で大変結構でした。[DVD(邦画)] 6点(2017-12-06 19:27:49)《改行有》

27.  陽炎の辻 完結編 ~居眠り磐音 江戸双紙~ <TVM> 《ネタバレ》 時代小説シリーズ「居眠り磐音 江戸双紙」を原作として、2007~2009年にNHKが放送した連続TVドラマの特別編である。前回の特別編はTVシリーズの締めくくりとして放送されたものだったが、原作小説はその後も2016年まで続いて完結したことから、その最終状態を反映した「完結編」をTVでも製作したという形らしい。なお自分としては原作・TVとも未見である。 前回の特別編から7年になるがシリーズ開始からだと10年になり、その間に役者もみな10歳年を取ったことになる。劇中人物としても落ち着きが増しているように見えたが、特に前回は新婚半年だった主人公に子ができたことで、この主人公とその他の登場人物を含めた親子の情愛が大きく扱われ、これが今回のテーマにつながっていたようである。今回初出のキャストとしてはその息子が存在感を見せているほか、レギュラーの娘役で優希美青さんという人が出ており、ルーズな父親に厳しいしっかり者を演じていた。 今回は完結編とのことで、これまで因縁のあった田沼意次のほか、松平定信が顔出しで登場するため話のスケールが大きくなっている。大まかにいえば田沼が悪玉、定信が善玉だが、両者それぞれに善悪もあり理想もあり、欠けた部分や未熟な部分もあって単純な勧善懲悪にはなっていない。 田沼と主人公が対面する場面は2回あったがいずれも結構な緊張感があり、特に田沼の心情が顔に出るのが見どころである。主人公は前にも増して抑制の効いた人物に見えたが、定信の側近を𠮟りつけた場面だけはどうやらボロが出たということらしい。この場面で主人公の真意をどこまで勘繰ればいいのかよくわからなかったが、ここだけ言葉が乱暴なのは内心の弱みを突かれた形だったからかも知れない。 ちなみに個人的感覚としては、刃傷沙汰の張本人が事後にニヤリと笑ったのは痛快だった。その後の庶民の無責任な噂話も可笑しい。 そのほか見せ場としての剣劇も当然あるが、それより人の心をじっくり見せようとするドラマになっており、特に今回はいわば“青年期の終わり”を感じさせるものだったように思われる。本編ファンがどう思うかはわからないが、個人的には「完結編」にふさわしい内容になっていた気がした。[DVD(邦画)] 7点(2017-07-19 00:02:17)《改行有》

28.  陽炎の辻 ~居眠り磐音 江戸双紙~スペシャル 海の母 <TVM> 《ネタバレ》 時代小説シリーズ「居眠り磐音 江戸双紙」を原作として、2007~2009年にNHKが放送した連続TVドラマの特別編である。それまで3年3期にわたったTVシリーズの最後をこの特別編で締めくくるということだったらしく、原作小説はこの後もまだ続いていたが、TVの方は主人公が所帯を持って地位も安定したように見えたところで一旦終了にしたようである。 自分としては原作・TVとも未見だが、今回見ると主人公はなかなかの好人物で、少々ご立派すぎるのがかえってマイナスかという感じである。長屋の衆など番組レギュラーの近況を一応紹介する場面もあったが、ちなみに本編ではもう少し存在感のある人物だったはずのお有(演・海老瀬はな)という人が、この特別編では顔出しだけで終わっていたのは個人的に残念だった。 今回のメインになるのは13歳の少年が御家存続のために仇討ちをするエピソードである。真の悪人はいないにもかかわらず結果的に人は死ぬという展開だが、武家の論理を理不尽なものとして否定するということでもなく、この時代なりの社会の厳しさに年若い少年を直面させて成長を促す話だったように取れる。登場人物の思いの絡み方が結構複雑なのは原作由来だろうが、母とか祖父とか幼馴染とかの様々な心情を見せることで視聴者が共感できるポイントを各種用意していたように見える。 なお今回は話のかなりの部分が江戸を離れて房総半島で展開しており、上総上湯江(千葉県君津市上湯江)、安房北条(千葉県館山市北条)といった実在の地名が出る。ただし北条湊の場面は岩手県大船渡市で撮影したとのことで、リアス式海岸のため房総半島にしては風景が狭苦しかったりする。港湾施設で突然仇討ちが始まったのは周囲の迷惑だろうが、野次馬で見ていた町民は本気の真剣勝負を間近に見て度肝を抜かれたのではと思ったりした。[DVD(邦画)] 6点(2017-07-19 00:00:42)《改行有》

29.  神の左手 悪魔の右手 《ネタバレ》 非常にかったるい映画だった。噂によると原作に近いとのことだが、映画を見る限り白々して単調で面白味がない。かろうじて悪人を絞り上げるという発想と、ラストの強引な展開(場面が変わるごとに怪我が治って衣服がきれいになる)が注目される程度だった。最後はかなり素っ気ない終わり方だが、「正しき人を蘇らせる」と言っていたからにはケーキ屋の娘やその妹分も復活したのだろうし、残された少女は中盤に出た児童養護施設に預けられてひとまず安心(松金よね子さんにおまかせ)ということになったはずで、その辺は適宜に察しておけばいいのだと思っておく。 なお自分としては原作を読んだことはないが、寝ていた少年が突然起き上がって目を見開いて「いけない!」と叫ぶのはいかにも楳図マンガ風だとは思った。主人公が頬を切られてギャー、ギャーと一本調子に叫ぶのもそういうことか。後半、絵を見ただけで家族関係まで見抜く老人が登場したのは不気味だったが、ここは読者に対する原作者の思いを込めた場面ということだったのかも知れない。 出演者としては、渋谷飛鳥(「デビルマン」)と前田愛(「ガメラ3」)の豪華キャスト競演かと思ったら一人が途中で脱落してしまったのは残念だ。また中学生役の紗綾という人はこの後もホラー映画などによく出ているが、この段階(12歳くらい)から結構ひどい扱いをされていたようである。 ほか2階で寝ていた少女は、少女嗜好丸出しの撮り方をされているが非常に可愛らしく映っており、ほとんど真の主役に見える。この子役は他の映画でも少女役で出ているのを見たことがあるが、現在はもう芸能活動をしていないようで、こんないかがわしい業界に関わるのをやめて真っ当な人生を歩んでいるのであれば幸いである(今年で20歳?)。[DVD(字幕)] 3点(2017-07-15 07:52:09)《改行有》

30.  母べえ 《ネタバレ》 最初から不快な人間像を次々見せつけられるのは辟易するが、全体としては単調に進行していき、防空頭巾で逃げまどう場面もないまま現代に至り、だからどうした、という感じで終わりそうなところ意外にも、最後の出来事が大きな違和感を残す作りになっている。 数十年後に長女は医師、次女は美術教員になって孫も何人かいたようで、それで何の不足があるかと思うわけだが、現時点でどれだけ満たされていても戦前戦中の恨みだけは絶対忘れない、ということを言いたいのか。仮に霊魂というものが存在するとした場合、死ぬ間際に強い感情を残すのは、いわゆる“成仏できない”ことにつながるように思われるが、人の安らかな死を妨げてまで言うことを言わせなければ気が済まないというところが、こういう世代の最後の執着なのかも知れない。 それにしても、それまでの経過を一応見せられた自分としては、夫が「思想」のせいで弾圧されたからといって「改心」までする必要はないのであって、単に社会的圧力に屈して隠していればいいだけのこととしか思われない(検事が言っていたのもそれ以上のものではない)。思ったことをそのまま言う自由、つまり表現の自由は家族の幸福にも優先することを表現したかったのであれば、その表現自体は自由だが自分としては共感しない。 登場人物としては、間抜けなところのある青年は東北(作家の藤沢周平と同郷らしい)、下卑た叔父は関西という形で、性格と出身地の対応関係をわかりやすく設定している。父親の出身地を広島にしたのは劇中の死者を一人増やす目的だったらしい。 そのうち叔父の発言はなかなか痛快である。「贅沢は素敵だ」というのは当時からあった茶化し方だろうが、“世の中理屈でなく金がものを言う”というのは、役に立たない大義とか主義主張とか信念とかに対抗しうる合理的発想であり、今日でも通用する世界共通の価値基準と思われる。ただ世界中がそれだけになるとさすがに弊害がある(戦争の原因にもなる)ので、これは今後の人類の課題ということかも知れない。 ほか個別の場面としては、近所の少年が「誰あのきれいなお姉さん」と言って逃げ去る直前の一瞬の表情には本当に笑わされた。また海水浴の場面で、水難救助のために主人公がいきなり海に入って泳ぎ始めたのは少し驚いた。もともと水泳が得意とのことで、この時点で××歳過ぎていたはずだがなお壮健ということらしい。[DVD(邦画)] 4点(2017-05-01 20:03:24)《改行有》

31.  カラスの親指 《ネタバレ》 原作は読んでいない。この映画は残念ながら好きになれなかった。 まず主要人物のうち「テツ」は声質が耳障りで序盤の馴れ馴れしさが気色悪く、「やひろ」「貫太郎」は存在自体が苛立たしい。そういう印象のまま全体の半分程度まで使って疑似家族形成の部分が続くため、自分としては見るのにかなりの忍耐を要する。これで映画全体への好意が失われてしまい、その後の非常に都合のいい展開や、終盤の説明調の付け足し部分も素直に受け取れなくなった。 ちなみにDVDで見ていると、ハッピーエンド風になった時点でまだ20分以上残っていることがわかるので、これからまだ意外な展開があるわけかと思ってしまって新鮮な驚きがない。160分という時間も長かった。 なお村上ショージという人物は、顔を見ていると味があるともいえるが、ラストの種明かしを長々と台詞で語らせるのはさすがに少しきつい感じだった。西日本アクセントであるのに仙台出身というのも変だ。また「シン・ゴジラ」(2016)に続いて(というか時間を遡って)、石原さとみという女優の印象がさらに悪化した(本人のせいではないが)。[DVD(邦画)] 4点(2016-12-30 16:38:28)《改行有》

32.  海賊とよばれた男 《ネタバレ》 何の予備知識もなくほとんど偶発的に見たので、どういう映画かわからないまま最後はどうなるのかと思いながら見ていたが、エンドロールに実在の社名が出てやっと何のことかわかった。原作は長編小説とのことだが映画としてはダイジェスト感が強く、特に登場人物については観客側の自主的補完にかなり頼っている気がする。 また全体として石油元売会社の社史なのか、創業者の一代記なのかが不明瞭である。実在する会社の沿革であれば「日章丸事件」(劇中では日承丸)で意気を上げたところで切り上げてもいいはずで、その後の後日談の意味がよくわからない。原作のどこを取り上げて構成するかの問題だろうが、少なくともこの映画ではせっかくの女優陣(綾瀬はるかと黒木華)が半端な登場人物に終わっていたようで残念である。 ところで個人的に「日章丸事件」のことは知らなかったが、これは憶えておいてもいい話だという気がした。巨大資本の脅しに一歩も引かず、また映像的な誇張はあるにせよ、横暴なイギリス海軍を相手に真っ向勝負というのは非常に痛快だった(単純に気分がいいだけでなく歴史的意義もあったようだが)。昨年は日本が関わる国際的美談の映画が同時に2つ公開されて両方とも微妙な印象だったが、今回のこれは日本人の心意気を示した点が素直に心地いい。 また個人的には船の映像が多いのがよかった。手漕ぎの舟から発動機船、復員輸送艦(駆逐艦神風)、大型タンカーに英軍艦(ベイ級フリゲート?)が映り、タンカーの進水式もそれらしい感じを出していた。どこまで特殊効果かわからないが素人的には出来に文句をいう気にならず、こういった映像面での印象が映画の価値を高めていた気がする。 ちなみに主演俳優の老け顔には特に違和感がなく、これはこういう男だ、という雰囲気は出ていたように思う。 追記:社歌の背景に必ずBGMが入って邪魔していたのは確かにわけがわからない。これはサントラCDを買って聞けということか。[映画館(邦画)] 7点(2016-12-24 11:04:33)《改行有》

33.  学校 《ネタバレ》 かなり昔の映画のように見えるが、劇中の事物(金のうんこなど)や登場人物の発言によると、劇中年代としても製作時期と同じ頃だったようである。 自分としての感想を正直に書くと、映画のかなりの部分は生徒の個人的事情を描写しているだけで、かつそれ自体に心を打つものは特にない。また後半では泣きを誘うためか、田舎~不運~貧乏~愚か~善人といった定型パターンを持ち出してきたようで鼻白むものがある。終盤に至ってまとめにかかるが、個別事情の一般化とか話題の飛躍で物語の流れを無理に導くのが気に障り、結果として出た教育論らしきものも素直に受け取れない。創作物でしか実現できない理想状態を描写しようとしたとすれば文句をいう筋合いではないが、そのまま乗れない人間も当然いるということである。 ラストでは、これだけ雪が降ると東京の人なら転倒して怪我をするのではないか、ということの方が心配だった(タイル張りなどの上を歩く場合は要注意)。 個別の場面としては、クライマックスで出た“しあわせって何?”の論議が聞きどころだった。ここではまず焼肉屋店主の発言に非常に説得力があり、これは民族性などと無関係に人生の真理を語っていた気がする。その後、萩原聖人がかなり高純度にまとめた台詞を言ったので、これで結論が出たも同然と思ったわけだが、なぜか言った本人がこれでわかったとは認めない。その上で中江有里が、この発言をどう処理すれば教員が満足するか知っている優等生のような発言で教育の意義ということに繋いだので、そこで話が逸らされたように感じたのは不満だった。ただこの場面での裕木奈江の語りは、この映画のような学校の根源的な効用の一つを語っていた気はしなくもない。 ちなみに個人的な思い出話として、この映画と同じ頃に勤め先で大規模なコンピュータシステムの導入があり、それまで手書き伝票しか扱ったことのない庶務担当の人々(主に年長の女性)への講習を担当したことがあるが、そのうちの何人かがその後に定年を迎えた際に、在職中に電子機器を使えるようになって感謝している、というようなことをわざわざ言われて恐縮したことがある。この映画でそれを思い出し、学ぶことの意味を少し意識したのは間違いない。[DVD(邦画)] 5点(2016-11-15 20:52:45)《改行有》

34.  帰ってきた手裏剣戦隊ニンニンジャー ニンニンガールズVSボーイズ FINAL WARS<OV> 《ネタバレ》 TVシリーズ終了後の特別編Vシネマとのことで、劇場公開の場合の時間的制約がないということなのか、サイズ的に55分もあって内容が充実している。序盤のニンニンガールズの大活躍がいきなり爽快で、なぜか突然アニメ化する場面もあったが個人的には実写の方がかわいく見えた。 今回はゲストが豪華なようで、中山忍という人は戦隊ヒーローの母親役にはさすがに若すぎる気がしなくもないが、もしかすると名前でキャスティングされたということか。またミドニンジャーの人は戦隊ヒロインとしては明らかに違和感があって笑いを誘うが、本編を見ていた人々にとっては声優の顔出し出演ということになるらしい。もう一人、敵方のおふくろさん役の声優も顔見せしていたようである。 今回も当然ながら視聴者を楽しませようという意図が前面に出ていたようだが、物語に込められた一応のメッセージとしては、夢は誰のものでもなく自分のものだからその気で頑張れ、ということらしく、そういうことなら番組終了後(いわば卒業後)の後日談にふさわしい。かすみ姉(個人的にファン)には自分としても研究者の道でがんばってもらいたいが、今回は可愛いアイドル姿を見せてもらって大変よかった。 ラストで「冠婚葬祭の時」にまた集まるようなことを言っていたのは現代日本の生活感が出ているが、シリーズはこれで本当に終わりということらしい。エンディングでの御礼と年少の視聴者への励ましを見ていると、自分は対象外だと思いながらも嬉しくなる。[DVD(邦画)] 6点(2016-11-10 20:34:28)《改行有》

35.  ガールズ・ステップ 《ネタバレ》 原作をそのまま映画化すると「幕が上がる」(2015)との違いが出なかったかも知れないが、映画ではより一般向けにアレンジして、多くの若年者が共感できる青春物語にしたように見える。少なくとも序盤は普通にほのぼのして可笑しく、フェスティバル出演のあたりまでは素直に楽しめる。「××JK」のJKはいわば職名のようなものだろうが一定の敬意も感じられて面白い。 しかし屈託ないのは前半のうちだけで、あとは意外にも重い話が続く。何で女子高生の話となると妊娠事件など出さなければ気が済まないかと思うが、主人公もまたすぐそこに答えが見えているのに気づかないのが非常にもどかしく、八方美人という設定らしいが強者に媚びているだけのようで説得力がない。また片思いの問題がどのように処理されたのかも不明瞭だった。 しかし全編の何か所かに感動ポイントが設けてあって泣かされるのも間違いない。「…自分のダンスを踊れ…」というのは万人向けの処方箋ではないだろうが、劇中人物のようにつぶれそうになっている連中がいるなら自分としてもそのように言ってやりたくなる。その上でみんなのためにということも考えればいいだろう。 ところで登場人物のうちメインのJKは原作でも5人だが、映画では劇中人物というより女優5人がそれぞれ存在感を出せる形で補正したようにも見える。 まず秋月三佳さんは予想を裏切らない感じだが、小芝風花さんはついこの前は可愛らしい魔女役だったのに今回はかなりシビアな役柄で、見せ場での渾身の(多分)演技には泣かされた。小野花梨さんは南極料理人のわがまま娘よりも大人になって個性がより前面に出ており、この人の見せ場にも泣かされる。上原実矩さんはヤンキー女子ぶりがベタだが「暗殺教室」とのギャップはかなり大きかったりする。また主演の石井杏奈という人は、ダンスはこの中で第一人者だろうが容貌としてはけっこう普通の(普通に可愛らしい)女子に見え、こういうと失礼だろうが他のキャストから突出して見えないのが全体の調和に貢献している。ちゃんと一人ひとりが主役になれそうな感じの映画なのは嬉しいことだった。 なお終盤でコーチを見送りに来ておいて、一度そのまま帰ろうとした場面は笑った。若いので対人関係の取り方がいい加減とも取れるが、若いからこそドライに心機一転して次のステージを目指すラストへも素直につながるように見えた。[DVD(邦画)] 6点(2016-10-01 14:07:07)《改行有》

36.  海難1890 《ネタバレ》 まず前半では、海難と遊興の対比が意味不明だとか、悪人が突然転向して本当はいい人だったことになるといったマイナス要素が何かと多いが、そういうのも感動物語に紛れて見過ごしにしてしまう面がなくはない。一ついいと思ったのは、日本人は相手に頭を下げられると頭を下げ返さずにはいられない人々だというのを映像化していた場面だった。 しかし素朴な疑問として、両国の民に共通のメロディがスコットランド民謡(誰かさんと誰かさんが麦畑)だったというのは実話なのか。2013年の別の映画でも似たような場面があったが、それは当の相手国の歌であり(蛍の光/Auld Lang Syne)、かつ原歌詞がその場面に合っていたからこそ感動的だったのであって、トルコ人相手に同じことをしても違和感しかない。表層的な文化は違っても、人の心は間違いなく通じたというだけでいいのではないのか。 また劇中の海難救助が「村人たちにとって当たり前のことなんだ」というのは紀伊大島に限らずその通りと思うが、それなら助けられた当人を相手にして、これでもかこれでもかと恩を着せるようなことを言うものではない。トルコ人は船が難破すると生存者を殺して財物を奪う民だとでも言いたいのか。自分の善行を強調しすぎて相手を貶めている。 後半に関していえば、日本人も陸路で逃げればいいのでは、という素朴な疑問を解消しようともしないまま、トルコ人の一部を排除してまで日本人が割り込んだ形になっていたのは非常に抵抗感がある。助けられたのは事実であるから感謝しなければならないが、そもそも日本国政府とナショナルフラッグキャリアの尻拭いを他国にやらせておいて、それは恩返しだから当然だ、というような映画を作ったのは日本側として恥ずかしくないか。そんな根性でよくも前半では偉そうに説教などしたものだ。 加えて、緊急時に怒鳴るばかりで妻子を危険にさらすような男を、よりによって真っ先に助けるなどという展開は全く受容できない。男児が泣いていたのは父親が激高していたのが原因だろうが。自分だけ残って死ね馬鹿が。 以上、ネット動画で見ていればいいものをまともに映画化などするような話か、というのが正直な感想だった。点数は日本人とトルコ人の友情のために入れておく。ちなみに個人的には自室の壁にトルコの青い目玉の魔除けを3個も飾ったりして親トルコ派のつもりだが、最近は何かと物騒な国になってしまったのが悲しい。[DVD(邦画)] 5点(2016-07-30 21:40:59)《改行有》

37.  カルト 《ネタバレ》 この監督のフェイクドキュメンタリー路線の一作かも知れないが、今回は本人役の芸能人を主要人物として出したことで、初めから作り物と割り切って見られるものになっている。途中からフィクションの印象がさらに強くなり、後半になって登場する霊能者は明らかに役者が演じていた感じだが、今度は逆に最初からいた芸能人が現実との接点を残す形になってフェイクドキュメンタリー風味が持続する。序盤では見知った芸能人のユーモラスな会話が面白いが、後半はあからさまにマンガっぽい人格を役者が白々しく演じるのが可笑しいなど、笑いの種類でも前後半に違いがあったように見える。 またストーリーとしては、最初から最後まで一応筋が通っているようでいて、途中で微妙な齟齬が生じていた気がしなくもない。最後が唐突に打ち切りになるだけでなく、途中段階で基本設定を変えながら延長していく(話も次第に大きくなっていく)といった点でも他ジャンルのパロディになっていたかも知れない。 他の同種映画と比較すると、例えば「オカルト」が純正フェイクドキュメンタリーホラー、「シロメ」がフェイクドキュメンタリーホラー風アイドル映画だったとすれば、これはフェイクドキュメンタリー風のホラーコメディ(マンガの実写化風)というところか。複合的でなかなか整理が難しいが、さまざまなエンタメ趣向を盛り込んだサービス満載の映画と思えばいいかも知れない。 ただし最後はちょっと何とかしてくれという感じで、ここまでに一応ホラー映画の体裁ができているのだから、これはさすがに少しおふざけが過ぎる印象があった。そういうものにどこまで乗れるかという問題もあって、個人的充足感としては「シロメ」に負けているという結果だった。[DVD(邦画)] 5点(2016-06-23 19:44:59)《改行有》

38.  怪談新耳袋 劇場版 幽霊マンション 《ネタバレ》 「新耳袋」第六夜80~99話が元ネタとのことだが、設定のごく一部と小エピソード1つを使っただけでほぼ完全に別の話になっている。原話の良さは全くなくなっているが、原話をそのまま映像化するわけにもいかないのはわかる(ヤバいことになる)。 時間からすれば長編映画の部類だろうが、基本的にはオムニバス用短編ホラーのようなラストのインパクトに頼った一発勝負形式で、そこに直接関係ない思い付きのようなエピソードを継ぎ合わせて長くしただけに見える。意外性優先のために登場人物の人格が一変したように見えるのは安手の短編ホラーに時々あることだが、この映画でもラストの衝撃的事実に先立つ全体としての流れができていない。ここでこのように伏線を張って最後に回収しました、などという形だけ整えれば済むというものではないだろう。そもそも昔の陰惨な事件によって建物が呪われたことまではいいとして、それが門限や境界線の設置につながる必然性が全く感じられない。 加えて普通はホラーというのは怖く作ろうとするものだろうが、実際問題として怖さは全く感じない。コメディまがいの演出が煩わしく、また途中でゾンビの群れのようなのが押し寄せるのはどういう効果を目指したのか不明である。ここで笑えということか。 だいたい以上のようなことで非常に不満足な映画だったので、点数は黒川芽以だけに入れておく。主題歌の「シアワセがふえるより哀しみをへらしたい」は、題名は好きだが映画本体の評価には影響しない。 なお少尉殿への復讐の件は本筋と完全に無関係な孤立的エピソードだが、これは公開日が8月15日だったことに対応した趣向と思うことにして突っ込まないでおく。[DVD(邦画)] 3点(2016-06-09 23:26:58)《改行有》

39.  渇き。(2014) 《ネタバレ》 オープニングがマンガじみたハードボイルド調で、昔の刑事ドラマのような大都会に沈む夕陽の映像も出ていたが、その大都会が新宿副都心などではなく、さいたま新都心というのは微妙な滑稽さを出していたかも知れない(現地感がないので想像)。本編では相手構わず喧嘩を売りながら暴走する主人公が痛快で、劇中世界が異常なだけでなく本人からしてかなり非道な輩に見える。しかし鑑賞者の倫理基準の隙間をくぐるような展開のため、善悪がどうとか言わずにとりあえず面白がって見ているか、という気にはなる。妻夫木聡のぶっ飛び方が非常にいい。 しかし最後は雪山の場面でクールダウンさせられてしまい、また観客の感情移入先を元担任の方に振り替えたような形で終わるため、結局は一般人の常識的な世界に回帰したような印象もあった。考えてみれば劇中人物の全員が異常だったのではなく、元担任のほかに高校の同級生(橋本愛)など、意外にまともな面を見せる人間もいたのだが、それが異常な劇中世界に見えたのは、主人公の目で歪められた世界がそのまま映像化されていたせいかも知れない。こういう異常な人間につき合っていると自分も変になってしまうということだ。 現実世界でも未成年者がヤクとかウリとかいうものに関わる機会は多くなっているのだろうが、だからといってそれが当たり前でも普通でもないわけである。やはり善良な市民としては、煽情的な報道や下劣な映画などに惑わされることなく、一般常識をしっかり持って平和な社会を維持するよう努めなければならない。そういうメッセージをこの映画が発していたかどうか不明だが、自分としては勝手にそのように受け取った。非常に陳腐な感想だが。 ところで主人公の娘は本当に死んだということでよかったのか。劇中では2つの時間系列が並行していたこともあり、どこに出るのか出ないのかわからないバケモノのような印象を生んでいた。死んでも殺してもしつこくまた出て来そうで、貞子とか「富江」のように扱えばホラーシリーズ化するのではないか(富江のイメージに近い)。この人物だけはそもそも人間扱いする気にならなかった。[DVD(邦画)] 5点(2016-04-29 08:34:01)《改行有》

40.  かぐらめ 《ネタバレ》 冒頭で「都留市制60周年 協賛映画」と表示されるからにはご当地映画だろうが、そのわりに地元PRの意図はほとんど感じられない。それ自体はいいことだと思うが、あまりに欲がなさすぎのようで、さすがにもう少し都留市というのがどういうところか見えるようにした方がよかったのではと言いたくなる。 ストーリーとしては納得できない部分が非常に多く、また素人ながら神事というものの扱いが本当にこれでいいのかという疑問もあって、素直にいい映画だったとは全くいえないのが残念である。しかし生真面目な印象があることも間違いなく、見る人によって共感できる部分も多いだろうとは想像する。エンディングの雰囲気(テーマ曲)はかなりよかった。 キャスティングとしてもいい役者を揃えたようで、決して見どころのない映画ではないだろう。主演の武田梨奈という人はこれまで知らなかったが(「ワカコ酒」という言葉だけ知っていた)感じのいい女優で、この映画では笑顔があまり見えなかったのは惜しいかも知れない。ちなみにご当地映画としても、もう少し楽しい場面があってよかった気がする(うちの地元の映画で、あまりにシリアスな内容だけのため怒ったことがある)。 なお疑問点として、陽子という人が神楽の後に一人で去ったのはどういう意味だったのか。これで本当に父娘のもとから消えてしまったのならこの人が哀れであり、またこの先にあるべき家族の再生というようなことを見通す上でも不足が生じる気がする。[DVD(邦画)] 5点(2016-04-12 20:02:10)《改行有》

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