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プロフィール |
コメント数 |
615 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが…… 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。 |
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1. 黒蜥蜴(1968)
《ネタバレ》 美輪明宏こと丸山明宏の妖艶さに酔いしれる映画ですね。
とはいえ、あくまでも「女装した男性の美しさ」といった感じであり、劇中では純粋に女性として描かれている事に、多少の違和感もあるのですが、それでも文章にすれば「主演女優」「彼女」という表現が自然と飛び出してくるのだから、我ながら驚かされます。
そんな彼女と「人形」とのキスシーンにも「三島先生、何やってるの!?」と吃驚。
著作を読む限りでは、結構お堅い芸術家肌の人というイメージがあったのですが、こんな剽軽な一面もあったんだなと、妙に感心させられました。
脇役である松岡きっこも、主演女優とは正反対の、まだ初々しい純情な美しさがあり、画面に彩を添えている形。
その一方で、探偵の明智役には、もっと美男子を配しても良かったのでは? と思ったりもしたのですが……この物語において黒蜥蜴が惹かれたのは「明智小五郎の容貌」ではないのだから、知的さを漂わせる木村功で正解だったのでしょうね。
落ち付いた声音の魅力を、長椅子越しに黒蜥蜴と対話するシーンなどで、じっくり堪能する事が出来ました。
ラストシーンの耽美さも勿論素晴らしかったのですが、個人的に最も心惹かれたのは、黒蜥蜴が男装した姿を鏡に映し出し、その「もう一人の自分」に語り掛ける場面。
「返事をしないのね。それなら良いわ」
「また明日、別の鏡に映る、別の私に訊くとしましょう」
という台詞回しには、本当に痺れちゃいましたね。
本作における黒蜥蜴は、普段の姿は「女装した男」にしか思えず、そしてこの場面においては「男装した女」にしか思えないという、実に倒錯性を秘めたキャラクターなのです。
それゆえに「本当の私なんてない」という台詞も切なく聞こえ「男に生まれてしまった女の悲劇」あるいは「女に生まれてしまった男の悲劇」を感じさせてくれます。
存在自体が罪深く、哀しくも美しい人物として、観賞後も、何時までも心の中に残ってくれる。
そんな素敵なヒロイン、素敵な女優と出会えた、魅惑の八十六分でありました。[ビデオ(邦画)] 7点(2016-08-07 08:32:28)《改行有》
2. くちびるに歌を
《ネタバレ》 合唱のシーンは、素晴らしいの一言。
ただ唄うだけではなくて、スポーツと同じように身体を鍛える必要もあると示す練習シーンを、事前に積み重ねておいた辺りも上手かったですね。
皆の努力の成果である歌声に、純粋に感動する事が出来ました。
その他にも、色々と「泣かせる」要素の多い映画であり、それに対して感心すると同時に「ちょっと、詰め込み過ぎたんじゃないか?」と思えたりもして、そこは残念。
特に気になったのが「柏木先生がピアノを弾けなくなった理由」で、どうも納得出来ない。
「私のピアノは誰も幸せにしない」って、誰かを幸せにする為じゃないとピアノを弾きたくないの? と思えてしまったのですよね。
終盤、その台詞が伏線となり「出産が無事に済む」=「音楽は誰かを幸せにする力がある」という形で昇華される訳ですが、ちょっとその辺りの流れも唐突。
世間話の中で「実は先生は心臓が弱い」という情報が明らかになってから、僅か三分程度で容態が急変する展開ですからね。
これには流石に「無理矢理過ぎるよ……」と気持ちが醒めてしまいました。
「マイバラード」を他の学校の合唱部まで唄い出すというのも、場所やら何やらを考えると、少し不自然かと。
個人的には、音楽というものは存在自体が美しくて素晴らしいのだから「音楽は素晴らしい」だけで完結させずに「……何故なら、人の命を救うから」という実利的な面を付け足すような真似は、必要無かったんじゃないかな、と思う次第です。
終盤の合唱シーンは、ただそれだけでも感動させる力があったと思うので、もっと歌本来の力を信じて、シンプルな演出にしてもらいたかったところ。
主人公を複数用意し、群像劇として描いているのは、とても良かったですね。
合唱というテーマとの相性の良さを感じさせてくれました。
特に印象深いのが、自閉症の兄を持つ少年の存在。
彼が「天使の歌声」の持ち主である事が判明する場面では「才能を発見する喜び」を味わえましたし、内気な彼が少しずつクラスメイトと仲良くなっていく姿も、実に微笑ましかったです。
「兄が自閉症だったお蔭で、僕は生まれてくる事が出来た」という独白も、強烈なインパクトを備えており、色々と考えさせられるものがありました。
欲を言えば「アンタもおって良かった」という優しい言葉を、彼にも聞かせてあげて欲しかったですね。
ストーリーを彩る長崎弁は、耳に心地良く、のどかな島の風景と併せて、何だか懐かしい気分に浸らせてくれます。
細かな部分が気になったりもしたけれど、それを差し引いても「良い映画だった」と、しみじみ思える一品でした。[DVD(邦画)] 7点(2016-07-21 06:40:21)(良:2票) 《改行有》
3. 狂った果実(1956)
《ネタバレ》 「要するに退屈なのよ、現代ってのは」という台詞が、六十年前の映画にて発せられている事に驚きです。
2016年を迎えても、未だに「退屈な現代」が続いているように思える今日この頃。
ですが、退屈を感じる事が出来ない社会というのも、それはそれで落ち着かない気がするので、恐らくそれは歓迎すべき事象なのでしょうね。
本作の登場人物も、腹が減れば食事し、トランプで賭け事を楽しみ、海に出掛けてボート遊びに興じてと、一見すると裕福な、満たされた生活を送っているように思えます。
それでも若者特有の倦怠感、人生の諦観からは逃れられないみたいで、何だ哀しくなってきますね。
作中にて「時代遅れの年寄り」を皆で貶すシーンがあるけれど、この時代の若者達も、今では老人となり、現代の若者から白い目で見られているのだろうなと思えば、実に興味深い。
これが初主演作となる石原裕次郎に関しては、後の「嵐を呼ぶ男」などと比較してみても、まだ演技は拙い印象ですね。
他の出演陣にしても、年配の演技巧者が少ないせいか、全体的に棒読みに聞こえてしまう台詞、わざとらしい動きに思えてしまう場面が多かったりもして、そこは残念。
ただ、時代を越えて眩しさを与えてくれる「モノクロ映画の中の光」も確かに存在していて、それをおぼろげながらも感じ取る事が出来たのは、嬉しかったです。
先駆性の高い作品ゆえか、細部が粗削りで、現代の作品ほど洗練されていないのが気になったりもしたけれど、それもまた新鮮な感覚。
「ご縁と命があったら、また会いましょう」なんて台詞を、劇中の人物が、さらっと口にする辺りも御洒落ですし、裕次郎演じる夏久が、ヒロインの恵梨に頬を叩かれた後、無言で抱き締めてキスをする件も良かったですね。
後者に関しては、今となっては見慣れた演出なのですが「もしかして、この映画が元祖なのかな?」と思えるくらいのクオリティを感じられました。
衝撃的なラストシーンに関しても、大いに評価したいところなのですが、主人公の弟が冷徹に狂うまでの描写が、やや不足気味かも。
もう少し濃密に、兄に対する猜疑心や劣等感、ヒロインの恵梨に対する愛情や執着などを描いてくれていたら、もっと感動出来たように思えます。
そんな長所と短所が入り乱れる本作にて、最も印象深いのは、裕次郎が甘い歌声を披露する場面。
演技の巧拙などを超越した「大スターの片鱗」を窺わせてくれる、忘れ難い瞬間でした。[DVD(邦画)] 6点(2016-08-04 06:22:58)《改行有》
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