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1. 一命
《ネタバレ》 原作既読。元々は武士の建前に拘る半四郎の頑固さのせいで、むざむざと娘婿を死なせてしまった。捨て身の懺悔のお話だったように思えます。(読む人の感じ方ひとつなのでしょうが)半四郎の懺悔を通じて、武士の建前の虚しさを描いていたようでした。ところがこの映画だとそういう部分よりも、貧乏でも慎ましく生きてきた下流の人々を表に出しすぎたせいで、どうにも押しつけがましい人情話になってしまいました。貧乏だけども、武士の建前を捨てられない半四郎の頑固さを描けていない時点で、この映画は失敗したも同然です。最後の竹光でばったばったと相手方の武士を倒していくのは興ざめ。テーマを踏みにじっているように感じられました。井伊家の判断、竹光で腹を切らせたのはやり過ぎですが、狂言切腹に対する対応は映画通りがベストかと思われます。礼を尽くし腹を切らせたうえで、切腹後に情状を汲んで遺族に3両を渡しているのですから。[ブルーレイ(邦画)] 5点(2015-09-09 11:22:02)
2. 異人たちとの夏
《ネタバレ》 すき焼きの下りでぼろ泣きしてしまいました。江戸っ子で乱暴だけど暖かな父親。気怠げで色っぽい母親。こちらにいる時間を縮めると解っていても、思い出の店で一緒にすき焼きを食べたいという息子の願いを叶える二人。もっと一緒に居てあげたい。父として、母としてもっとたくさんしてあげたいという自分たちの思いよりも息子の願いを優先させ、夕日とともに去っていく。切ない場面でした。桂に関して。かなり突飛に感じましたが、再び愛を得たと考えればまあ消化出来なくもないかなと。それにしても鶴太郎さんは良い役者だと感じました。[DVD(邦画)] 6点(2015-01-13 22:50:12)
3. イノセンス
《ネタバレ》 元の話は短編なんでしょうか。率直に作れば30分程度の内容なのに貧相な骨子にゴテゴテゴテゴテと装飾して着ぶくれしただけの装飾過多な映画です。余計な装飾を剥いでみればなんのこともない単純な物語しか残りません。この監督の映画を何作か見て感じたことですが、原作があったうえで手綱を握る人がいないとダメなタイプだなあということ。任せてしまうと言いたいことばかりが先走って娯楽性も何も置き去りにしてしまう。自分の世界観を構築出来ない。(この映画もそうですが)自分を客観視できない監督が作った映画は人の世界観を借りて自分が言いたいことを言わせているだけの出来が悪い二次創作に成り下がってしまいます。 その言いたいこと自体も陳腐なので余計に痛々しい。 前作GHOST IN THE SHELLではその辺を上手く消化して主張、物語、娯楽性のバランスがとれていたんですけどね。[地上波(邦画)] 3点(2010-02-07 15:54:30)
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