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1. ディストラクション・ベイビーズ
《ネタバレ》 うーん、執拗でありながら流れるような暴力シーンは評価に値するが、ぶっちゃけそれ以上の評価をこの映画に与えることはできないというのが本音のところだ。執拗な暴力シーンや無軌道で無責任で自分勝手な若者たちの姿を通じて、この映画がなにを表現したかったのかが見えてこなかった。単に凄まじい暴力シーンを描きたかったというなら、それは浅薄でしかないし、繰り返される祭りの描写と暴力の描写がなにか関連づけられ、なんらかの意味性や象徴性を帯びるのかと思えば、必ずしもそういうわけでもない。
たとえばファイトクラブは暴力や破壊衝動の描写を通じて、現代人の退廃やグローバリゼーションへの怒りや敵愾心が、明白な説明はなくとも観客に提示されていた。それがファイトクラブという映画に奥行を与えた。翻って本作はなにを提示したかったのだろうか? 剥き出しの暴力だろうか? 少年たちの凶暴性だろうか? 凶暴性はわかるにしても、そこから先になにを訴えたかったのかがわからず、ただ消化不良のまま映画が終わってしまった。感覚的にはノーカントリーを観たときと似ている。あの映画も暴力や殺戮がなにを意味するのか、なにを象徴するのかをはっきり提示せずに終わってしまった映画だった。テーマ性がはっきりと伝わらない映画には、高評価を与えるのは難しい。[インターネット(邦画)] 5点(2019-06-12 14:51:31)《改行有》
2. 天国と地獄
《ネタバレ》 ほんとに面白い映画だな、と毎回見るたびにつくづく感心してしまう。
間違って誘拐された子供を助けるべきかの心理的葛藤、現金を詰めたかばんを持って特急こだまに乗れ、7cm開く洗面所の窓…。
冒頭から息詰まる展開の連続、後半で犯人が割れてからは警察の狂気さえ感ずるような執念の捜査、モノクロ画面に浮かぶ唯一のカラー。
名場面・名演出のオンパレードだ。誘拐罪の刑の軽さに対する黒澤の怒りが本作の大きなテーマだというが、それが映画全編を通じて伝わってくる。
皮肉なのは、名声名誉の象徴である高台の住人を憎悪して犯行に及んだ犯人だが、その被害者である大富豪権藤も、かつては貧しい靴屋であり、高圧的ではあっても仕事には熱心で、善良な男であったことだ。
要は犯人は、自分と似たような境遇にあった人間に対して罪を働いてしまい、もっといえば、未来の自分がなりうるだろう立場の人間に罪を働いたともいえる。
犯人は医師の資格もあり、それなりの教養もあったのだろうから、高台に対する屈折した憎悪など抱かずに、善良さを持ち、仕事には熱心に励んでいればよかったのに・・・。そう思わずにはいられなかった。
黒澤映画が偉大なのは、娯楽性が十二分にありながら、こうした人間性や善良さについて深く考えさせてくれるところだ。[DVD(邦画)] 10点(2018-08-18 15:19:45)《改行有》
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