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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  豚と軍艦 《ネタバレ》 長門裕之、ちょっと演技過剰だけど「滅びゆく豚の代理人」としてその愚かさを否定的でなく描いている。ヤマ場で豚に向かって「逃げろ」と叫ぶのは、初めて恋人吉村実子への真摯な語りかけだったんだろう。アメリカに寄生する豚のような人間たちを豚が押し潰していく60年安保直後の夢の爆発、アメリカに色目を使うネオンサインを機関銃で破壊していく爽快な夢。でも本人は便器に顔を突っ込んで死んでいくわけで、夢でない現実は吉村実子のこれからに託されるわけだ。ラストの超望遠で口紅を拭き取るシーン、以後も今村でよく目にする望遠の効果の代表例となる(その対極のように豚とそれに潰されていくやくざの顔が画面にミッチリ詰め込まれたカットもあった)。基地に寄生するという形で現実を生きていく女たちも、批判的ながらイキイキ描かれていた(70年安保のときにもう一度横須賀をドキュメンタリーで描いた『にっぽん戦後史』で、そういうマダムを対象にする)。でも本作が記憶に残るのは日本では珍しかったブラックユーモアの連発で、癌ノイローゼのやくざという造形が傑作。自殺できない気の弱さから殺し屋に「知らない間の射殺」を依頼するも、その後勘違いが分かって逃げ回るという滑稽。それ以上に記憶に刻みつけられるのが加藤武で、ニコニコ笑いながら「へへへ、シルが出たよ~」と死体処理の汚れを人につけて楽しんでいる。「豚から入れ歯」のシーンも、彼のニコニコ笑いがあるのでさらに弾ける。小沢昭一のエッセイにはよく加藤の話が登場し、生粋の江戸っ子なのね、彼。本作のニコニコ笑いを見てからずっとファンです。[CS・衛星(邦画)] 9点(2012-09-27 09:49:15)

2.  プーサン 《ネタバレ》 昭和20年代末の社会批評映画として私が観た中では、木下恵介の『カルメン純情す』と渋谷実の『勲章』とこれが三大傑作だと思う。社会批評がそのまま芸術ともなり得た稀有な時代だ。笑ったところは、交番で「もっと神経を太く持たなきゃあ」と諭されていると、ピストル持った男や刃物持った女が次々と自首してくるところ。ニヒルな医者が弁当食べてるとこに重い肺病患者が咳するところ。美人の下着姿自殺未遂のほうにワッと警官が来て、野の首吊りのほうは寂しくブラブラしてるところ。菅井一郎の「牢獄記」の立て看板、などなど。きびきびした画面だが、まだ編集の独特のリズムは生まれていない。ただし税理士の目が疲れると0の行列が欄外に出ていく、なんてアニメも使っている。上っ調子で斜面を滑っていくような社会を、やや外に立つ主人公が眺め、巻き込まれていく展開の映画だ。これが10年たつと“無責任時代”となって、主人公のほうが調子よく社会を滑っていくようになる。[映画館(邦画)] 8点(2009-11-22 12:05:27)

3.  笛吹川 この映画、特殊なカラー効果が印象に残るが、音もいいのではないか。主人公たちの家に“政治”がかかわってくるときは、橋の板を踏むバタバタいう音が、まるで歌舞伎の、あれ何て言うの、舞台の端に座ってて板を打つヤツ、あのように響いてくる。原泉の御詠歌のチリンチリンが、戦闘場面の間にも鳴り渡る。まあ原作が傑作なんだけど、傑作文学を映画化して傑作になった稀有の映画だ。やたら被害者意識のみが蔓延してた中で、戦争で生き生きとする庶民て視点が新鮮なんだろうな。つらい日常を忘れさせてくれる祭りの興奮であって、親方様にさんざん痛めつけられても、先祖代々御恩になって…、っていうとこほど戦争における庶民を批判したものはない。けっして庶民は一方的な被害者ではなく、戦争を盛り上げた当事者でもあった。一方、親方様への怨みだけで生きている荒木道子もすごく、息子ともども山門で火に包まれながら、親方様の滅びに歓喜するところ。ラストで高峰秀子が行列に着いていってしまうとこのみ、やや湿り気を帯びたが、あれは思えば『陸軍』の母親にそのまま一緒に行かせてやったものだな。一家が戻ってきたらどこに住もうか、と老夫婦が相談してる場のほうがゾクッとくる。ともかく戦争における庶民を批判する映画で、これほど厳しいものはあんまりなかったと思う。やがて『心中天網島』で夫婦をやる二人が、ここではういういしく兄妹をやってた。[映画館(邦画)] 8点(2009-05-21 12:06:27)

4.  冬の宿 《ネタバレ》 前半はキリスト教狂いの妻とその夫の、ユーモアものみたいな展開。酒を飲んで帰ってくる亭主が、うがいをして匂いを消したり気をつかっている。恐妻家コメディの型で進みながら、しだいに話は深刻になっていく。最初にコメディタッチだっただけに、その深刻への傾斜が効いている。亭主、会社をクビになり、なのに見栄を張って宴会やったりする。地元の工場を処分してできた金を、キャバレーで散財してしまう。競馬で取り返そうとしてスッカラカンになる。コメディだったら愛すべき豪放な性格、ということでそれで済んでしまうんだけど、実際にはこういう“愛すべき性格”は、身内にとっては生活破綻者であって迷惑至極なわけだ。近所にこういう人がいても、いい人なんですけどね、と同情はするが、積極的に手を差し伸べはしない。そこらへんの、笑顔がしだいに強ばっていく展開が、見ているほうでも納得がいくだけにけっこう怖い。これを演じた勝見庸太郎も絶品だった。一見優しく見守っていたような作者の視線が、じつはヒンヤリと観察している。子どもたちに、そっちに行っちゃいけないよ、と言っていた貧民窟への坂を下っていくラストの厳しさ、まるで時代の下り坂と重ね合わされるふうで、ゾクッとした。前年の内田吐夢『限りなき前進』の暗さをちょっと思わせ、豊田四郎の文芸ものの中でも、重要な作品ではないだろうか。原作、阿部知二。[映画館(邦画)] 8点(2009-05-09 12:12:42)

5.  [Focus]/フォーカス(1996) 《ネタバレ》 浅野忠信っていいな、と思ったのがこの映画だった。強引なテレビ局の取材に押され、「えー」とか照れ笑い浮かべつつ、ストレスがたまっていくオタク青年の役。このテレビのディレクターやった白井晃がまた傑作で、強引かつ傲慢、口ばかり達者で他人を素材としてしか見られなくなっている人種を、誇張のようなリアリズムのようなきわどい線で怪演。ドラマとしては、そのオタク青年がキレ、がらっと変わるところが見せ場で、まあ落語の「らくだ」とか、そう珍しい企みではないのだけれど、ここでカメラマンの存在がだんだん怖くなってくるところがこの映画のポイントだ。カメラマンはこのクルーの中心にいるんだけど、加害者にも被害者にもならず、中立的な安全地帯を確保し、ただただ見続けているの。いや、中立を装いつつ、常に加害者の側に立ってんだな。もちろんそれは我々視聴者のことでもあって、けっして当人は傷つかない。実体験よりテレビ映像のほうに、より本物らしさを感じるようになった我々の、内なる加害者をあぶり出す。画面を経由しないと生々しくならない世界って、かなり不気味だ。[映画館(邦画)] 8点(2009-04-09 12:09:33)(良:2票)

6.  ふたり(1991) 《ネタバレ》 オバケをスンナリ受け入れて、日常の中に組み込んじゃっている何気ない会話のトーンがいい。比較される高い基準であった姉だけど、見守ってくれると心強い。差を見るより加算していこうという人生の見方。「あたしは終わったことばっかりだけど、あんたは始まることばっかり」。家族が一人一人減っていって、最後は一人で斜面を上がっていくの。でもそれが正しいことだと納得させられる。よく雨が降るんだけど、幽霊の舞台装置じゃなく、かえって慈雨と言うか成長を促す恵みの雨なんだ。あとは赤のイメージか。赤い花、赤い糸。ストーリーの構えがハッキリしすぎちゃって道筋がわかってるぶん、ちょっとダラダラした印象があるんだけど、徐々に姉の影が薄れていくそのダウンビートに身をゆだねるのが観客の義務か。タイガースとピンクレディと緋牡丹お竜との長回し。[映画館(邦画)] 7点(2013-08-08 09:02:38)

7.  不法侵入 普通は無邪気な笑顔ってのはロビン・ウィリアムズみたいにいい人を演じるときの看板なんだけど、このレイ・リオッタは無邪気な笑顔を見せて怖がらせる。なんつうんだろ、口の中央だけで笑うような感じ。必要以上に表情が澄んでいってしまう。純粋の怖さ、純愛の怖さ、一途の怖さ。この時代、純愛を描くとすると、まるでそれしかないようにサイコ人間のクレイジーな物語になってしまうんだな、ってところが一番怖かった。理想の女性への献身と、邪悪な世界への暴力。正義は己れだけにあるんだ、って義務感の裏打ちがある。ほどほどならいいんだけど、それがドン・キホーテ的な滑稽止まりならいいんだけど、やがてそれをも乗り越えると恐怖映画になってしまう。ストーリーとしてはカードが使えなくなるあたりの鈍い怖さ。この世のシステムがそっくりヤツの側にあるんだ、ってあたり。「健全な社会」ってあくまで夫婦が単位で、独身者はそれを脅かす存在なんだなあ。最後に忍び込んで料理を作っているのも怖いけど、独身者は人に料理を提供するのが夢なんだよなあ。[映画館(字幕)] 7点(2011-12-12 10:23:10)(良:1票)

8.  吹けよ春風(1953) 《ネタバレ》 脚本の谷口・黒澤がどういう分担だったか分からないが、こういう短編連作への好みをすでに黒澤が持っていたのか。乗客の人生観察をするインテリ傾向のタクシー運転手って三船敏郎に似合わないけど、まあいい。外苑を越路吹雪とデュエットしながら回るミュージカル的シーンなんか、似合わなさを突き抜けていて感動しちゃう。風船売り、マンホールの工事人、都電の乗客らがあっけにとられてタクシーを見送るあたりがたまらない。一番好きなのは、早慶戦帰りらしい二人の酔っ払い客(藤原釜足・小林桂樹)のエピソード。これから見る人のためにネタばらしはしないが、タクシーの屋根を人が這うボコンバコンという音の効果がよかった。映画として充実している一編。次に東京で暮らす大阪ものの寂しい夫婦のエピソードがあり、三好栄子があいかわらず達者。三国連太郎のタクシー強盗があって、最後に、おそらくBC級戦犯だったらしい山村聡が釈放され、子の待つ家に妻の山根寿子とためらいながら帰る、という時代ならではの話で締めている。当時の東京風景をたっぷり眺められて嬉しい一本。冒頭、新人の小泉博と岡田茉莉子がちょっとだけ出てた。[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-09-05 12:19:53)

9.  プラットホーム おそらく二度目により感動するたぐいの映画だろう、と日記に記しているが、まだ二度目は果たしていない。青春の自由と自由ゆえの頼りなさみたいなものが、あわあわと描かれていた。炭坑で働く人々の描写が向こうでは当局のチェックにあったとか聞いたけど、社会問題を提示するというより、青年たちがこれから出て行かねばならぬ社会の苛酷さにおびえためらう要素として置かれていたよう。汽車のモチーフが全編を貫いた。汽車を見たことのない彼らが、バスの中で警笛を真似て始まり、最後は村に戻って家庭にはいった一人の部屋でケトルが警笛のように鳴って終わる。その部屋からは、若いときにタムロしていた城門が見えている。日本にもあるサークル青春ものの中国拡大版だ。日本の青春ものの過剰ななれなれしさがない。外から聞こえてくる町の音、半野喜弘のヴァイオリンとチェロの音楽が、断片的に入る。[映画館(字幕)] 7点(2008-07-04 11:22:36)

10.  腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 《ネタバレ》 周囲のせいで“十分実力が発揮できない”スミカさん。田舎生まれのせいだし、仕送りが不十分のせいだし、困った妹のせいだし、自分が自分を発揮できなくさせる環境のせい、と思ってる。一方兄嫁のマチコさんは、自分が自分だけという状況をいやと言うほど味わってきて、やっと家族を得られた。この新しい環境を保持したい。尽くして尽くして笑顔を絶やさない。この和合家、家族がある不幸と家族がある幸福が、変に噛み合って同居してる、それは家族のせいにできる幸福と家族の鬱陶しさを知らない不幸でもあるのだけど。黙ってそれを観察してるのが妹のキヨミさんで、もしかすると一番性格が悪いのは彼女かもしれない。お姉ちゃんのいいとこを百コ歌いなさい、と命じられて歌いながらも、そういう姉を「面白い」と観察している眼がある。ラスト「これからが面白いんだから」とタンカを切ったことで、やっと姉も妹と同じレベルになったということか。また一人になったマチコさんの後ろ姿も気になるエンディング。この三人の、押したり引いたりの被害者合戦が見ものでした。サトエリはオーディションの場が一番良かったが、それが女優として喜ぶべきことなのかどうかは不明。[DVD(邦画)] 7点(2008-05-25 12:16:50)

11.  武士の一分 《ネタバレ》 木村拓哉の、良く言えば反逆児的・悪く言えばふてくされ的キャラクターに合わせたのか、主人公は毒見役の仕事に我慢が出来ず、やめて道場をやりたがってる設定にしてある。虫に刺されながらお上の一言を待つ場でも、立場の馬鹿馬鹿しさに対する主人公の不快が強調された。でもこの馬鹿馬鹿しさに耐え諦めることが、この時代の武士の本来の姿だっただろう。扶持で生活する立場の不安定さが、加世の決断の重要な要素にもなっていたはずだ。その不安定さが前提にあって、親族の圧力や仇役の卑劣が際立つ。武士生活を軽蔑するキムタクが表面的にかっこいいぶん、話の厚みはやや減ってしまったような。[DVD(邦画)] 7点(2007-10-15 12:17:07)

12.  二人で歩いた幾春秋 入学式のあたり木下節快調。金網越しに親子が並行移動する。この金網は学歴の差なんだろう。『二十四の瞳』では船に乗っている修学旅行の同級生と、奉公人となって働いている松っちゃんが並行移動し、『野菊の如き君なりき』では若坊ちゃんと奉公人がやはり並行移動する。一緒に進みたい者たちが、遠慮や気後れから離れて同じ方向へ進むとき、木下映画では泣けるんだ。本作では父と子がそれをやる。佐田啓二は木下に見いだされて『不死鳥』でデビューしており、二年後に亡くなる彼は木下作品ではこれが最後の主演だろうが、渋い境地を見せ始めていた(せがれの恋人が倍賞千恵子という年齢)。佐田・高峰の夫婦で若山彰の歌が入るという明らかな『喜びも悲しみも幾歳月』の二番煎じだが、五年おいて二番煎じやるってのもすごい自信だ(本作は道路工夫の話)。[地上波(邦画)] 6点(2013-09-12 09:52:19)

13.  不死鳥 前作『結婚』で、田中・上原コンビでヒットさせたので会社から同じようなのを、と依頼されて作ったどうということもない作品だが、上原の都合がつかなかったため新人佐田啓二の抜擢デビューとなった。相変わらず家の重さが描かれる。この人は家族主義の人と言われるが、それは核家族で、家長的な重みには嫌悪を隠さない。父的な家ではなく母的な家が、この人の理想。二人が出会うところを、一切のセリフ抜きでエピソードの羅列で描くのが、彼の凝るところ。電車のなか、雪の本屋の忘れ物、カルタとり、ドライヴ、出征見送り、など。どちらもいい家の人なの。庶民の作家とよく言われるが、モボとしてブルジョワ的なものへの憧れもあったよう。それとも敗戦直後の観客の趣味か。冒頭タイトル部分が欠落。[映画館(邦画)] 6点(2013-02-03 09:44:14)

14.  プロスペローの本 ハイビジョンを駆使した、ってのが宣伝文句になってたが、その入れ子になってる画面にとうとう最後まで慣れなかった。本のイメージ、あるいは本の挿し絵のイメージなのか。それが横移動と拮抗するのかと思ってるとそうでもなく、けっきょく中の小さな画面を中心に見ることになって、あとはうるさく感じられた。技術がかえって世界を狭くしてしまう例。この人は本の映画よりも、絵巻物の映画を作るべき人だよね。横に長~いセットを作って。偉大なるシェイクスピアを扱っても、悪趣味志向が残っているのは嬉しい。小便の雨、本の上にドロッと落ちてくる何やら汚らしいもの、内臓好み。ミランダの結婚式のとこのミュージカルシーンは楽しめた。アフリカの結婚式から横移動で島になっちゃうとこなんかも嫌いじゃない。[映画館(字幕)] 6点(2012-09-12 09:47:39)

15.  フランケンシュタイン(1994) 《ネタバレ》 ケネス・ブラナーって、舞台は知らないが、映画では役者としても演出者としても、あんまり才を感じないなあ。一人浮いてた。トム・ハルスやロバート・デ・ニーロはちゃんと映画の俳優だなあと思った。音楽を延々と垂れ流すのも困ったもので、なにかしばらく間違って予告編を見せられてるんじゃないかと思ったもん。カットとカットのつながりがそんな感じなんだ、尻が座ってないってのか。まあ18世紀末の実験室はこんなものかという面白味はありましたが。原作尊重ということで、主人公が博士なのか怪物なのか揺れてたみたい。やはりこの話の面白さは、怪物が怪物にされていく過程にあるわけで、博士の科学論などは脇に回してもよかったんじゃないか。つまりフランケンシュタイン博士が出しゃばりすぎた。「フレンド」を求める孤独こそ中心に来るべきだった。と、ここらへんはこちらの好みに引き寄せた愚痴だが、セットの大階段をあまり生かせなかったのは明らかに監督の罪。醜くなったものが自殺しちゃうってのは、一般人にとって都合が良すぎる展開だなあ。改めて思ったのは、怪物に名前がないのは大事なポイント。まだ名付けられない新しいものってのは、すべて怪物視される可能性があるんだ。[映画館(字幕)] 6点(2010-05-29 11:56:16)

16.  ファザー・ファッカー 《ネタバレ》 すごく神話になりそうな話で、しかも父親の象徴的な誇張なんかがあるために、抽象的な世界になってしまいかねないところを、桃井かおりがリアリティを与えている。ただ現状を受け入れるだけの母、「なんだかわかんなくなっちゃった」とか言うような。父はまっとうな家庭を求める、冷蔵庫という祭壇を持ち込み、肘掛け椅子の玉座を置く。「あらねばならぬ」家庭を外側にがっちり作り上げようとしたときに、内側では最も「反家庭」的なことが起きてしまう。外でふしだらをしないための「おしおき」。こういう屈折は日本家庭の病理としていいところを突いているのだが、もっとリアリズムで押したほうが効果が出たテーマかも知れない、難しいところ。荒戸源次郎だから清順の影響が濃く見え、水槽が割れて金魚が流れ出し屋台崩しに至るあたりは『陽炎座』を思い出す。いくつかのシーンは幻想として美しいが、それがテーマとうまく噛みあってこないように、私には感じられた。ケーキのおうちに雪が降る。やがて切り刻まれてしまうごちそう。廊下をゆく市電てのは、よく私も夢に見るので嬉しかった。[映画館(邦画)] 6点(2010-04-01 11:57:01)

17.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 ポイントがラストに詰まっているので、途中ずっと楽しめるわけではない。ラストの全員がつながっていく場はたしかに楽しいが、それで十分借りを返してもらったかというと、微妙なところ。でもこれらの登場人物たちが、みなちゃんと「立ち向かった人たち」の系譜にもなっていて、それが終末願望の人との対比になってるのが、いたって健全だった。終末願望者のセリフ「あきらめちゃダメだ、世界の終わりは必ずやってくる」って、現代人にはけっこう身近にある気分で、そもそもこういう「正義の味方」のホラ話を求める気持ちがあるってところに、自分のやってることに無力感を持ちがちな現代のつらさがうかがえる。社会が複雑になりすぎていることによる埋没感、あとは未来に価値が出るかもしれないという希望しかないわけだ。うっかりすると無差別大量殺人で存在感を確認したくなったりする者も出てくるわけで。そのなかで嫌みなく「立ち向かう人たち」を描いたところに意味がある。車でカセットの無音部分を聴くところ、あそこはワンカットで長回しで緊張させたいな、だってあとの録音一発どりのところはけっこう長く回してたじゃない、あそこで出来るんならこっちでも出来たろうに。[DVD(邦画)] 6点(2010-02-03 12:05:01)

18.  無頼漢(1970) 『心中天網島』の次の作品で、ATGから東宝になって資金は潤沢、白黒がカラーになった。浮世絵や残酷絵が壁面を飾る美術も、繊細な粟津潔から重厚な戸田重昌で、より金をかけられた分、見応え十分、というか、セットが一番の見どころになった。音楽が武満徹から佐藤勝に変わり、ダン、ダダンという桶屋のリズムが反復される(この桶屋が浜村純で、前作の黒子の通奏低音的イメージを継いでいるよう)。70年という時代を背景にすると反抗と挫折のドラマとして分かるし、その時代と幕末期を重ねる意図も悪くはないが、70年を離れて見ると、いささか反抗の気分だけが浮き足立ってる印象(ついでに言っとくと、この原作は幕末ではなく明治の歌舞伎。もう侍をバカにしても大丈夫な時代になっている)。かえって直次郎の母親を登場させたあたりに、脚本の寺山修司らしさがうかがえた。そのベターッとまといつくような母親像(新派の市川翠扇が怪演、この人は山中貞雄の『河内山宗俊』で直次郎演じた市川扇升とは関係ないんだろうな?)。河内山は松江邸で長ゼリフは吐くが、「バーカめ」の決めゼリフは言わず、あとで水野忠邦に逆に「バカめ」と言われるという趣向がある。金子市を米倉斉加年が不気味に演じ、あの異相はこういう役でもっと使われてもいいな、と思った。山中貞雄版の中村翫右衛門で金子市のイメージを持ってる人は驚くかも知れないが、あの金子市はほとんどパロディなんです。さらについでに言うと、だいぶ昔にマキノの『天保六花撰 地獄の花道』ってのをテレビで見てるが、この頃は河内山宗俊の話に無知で、ストーリーがよく分からなかったと日記に書いている。それでは市川右太衛門の河内山に東千代之介の金子市、中村賀津雄の直次郎。けっこうスクリーンではいろんな河内山が活躍していて、河内山映画祭なんてのを企画しても面白いんじゃないか。[DVD(邦画)] 6点(2009-10-10 12:26:53)

19.  深い河 松村禎三の映画音楽って好きだった。黒木和雄と熊井啓の専属みたいな感じだったが、とりわけこの映画の場合、同じ遠藤周作原作によるオペラ「沈黙」を作った後の仕事だったので、気合いも入っていたのではないか。この人の映画音楽にはいくつかの似たパターンがあり、ずっと変奏をやってるみたいなところがある。熊井監督の『朝やけの詩』あたりで確認でき、黒木監督の『TOMORROW 明日』で一つの達成に至る、ゆったりとうねる感じの6拍子もの。本作では秋吉久美子がガンジス川で沐浴するヤマ場で、やはり6拍子の曲想がうねり、宗教的な気分を盛り立てるのに役立っていた。映像の記憶は薄く、秋吉久美子はまだ大学生役をやるのか、と思ったことと、三船敏郎体調悪そうだなあ、と思ったことを覚えている。たしかこれが三船の遺作。[映画館(邦画)] 6点(2008-03-31 12:21:57)

20.  フラガール 「スウィングガールズ」や「がんばっていきまっしょい」といった「シコふんじゃった」型の話だが、単なる部活とは違い事態ははるかに切迫している。選択の余地が少ない。ここを抜け出して夕張へ行くか、ここを変えるか。「馬鹿みたいに笑って踊る」のは“やればできる”の青春の1ページの話ではなく、“やらねばおしまい”の地域存亡の話なのだ。フラダンスってのどかなだけでなくけっこうハードで、事態の切迫と堂々と切り結ぶだけの力があった。ただ反対派が、頑固な守旧派といった類型なのが物足りない。新しいものに反対するのは、閉鎖的村社会の臆病さだけではなく、日本近代史でいつも新しいものに騙され続けてきた庶民の警戒感てのもあると思う。村おこしをしようとして失敗する事例はこの時代以後ゴマンと出てくるわけで、反対派をただの背景にとどめず対等に扱えたらば、映画はもっと広がっただろう。[DVD(邦画)] 6点(2007-12-02 12:27:19)

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