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1. 聯合艦隊司令長官 山本五十六―太平洋戦争70年目の真実―
《ネタバレ》 史実そのものがもう十分劇的な展開の太平洋戦争、真珠湾攻撃と山本五十六の葛藤、それを主軸に「静」を置いて描いた五十六像にまず好感を持った。
部下を失っては悔しさに泣き、真珠湾攻撃の通達が遅れたことに激怒し、というシーンさえ極力抑えて、「やらねばならぬ」という状況に押し流されるリーダーの無念を裏から描く。それはとりもなおさず、現実を見ずに〝こうあるべきだ、あってほしい″という姿を追い求めた挙句、理想の残骸に誰一人責任を取ろうとしない国民一人一人の罪を背負わされたリーダーの姿でもある。
理性的に見て勝てるわけもない戦に、勝機はないと言いたてることが許されなかった空気と時代。それは今の日本に置き換えて考える価値のあるテーマではないかと思う。
近代史に疎い向きにもわかるよう最小限の説明を新聞記者にかぶせたのは苦肉の策としてまああり。「どれだけ史実に忠実か」という点よりも、あくまで映画としてドラマとして山本五十六という「流れの中で最善の策を探し続けた」男の在り方を、ひとつのかたちとしてクリエイトして観客に見せたその切り口は、寡黙にして誠実という印象を受けた。
今の日本において、改めて見直してみたい映画だと思う。
役所広司の五十六のテイストそのものがこの映画の魅力ともいえる、名演。でもラストの歌はいただけない。[映画館(邦画)] 8点(2011-12-25 03:30:12)(良:1票) 《改行有》
2. 恋愛小説(2004)
いやこれ大好きだ。久しぶりに映画見て、ああいい時間過ごしたと思えた。
登場人物が少ない分、画面とか時間の動きがゆるい。そのゆるい中に込められた叙情がなんというかすべて絵画的。会話も、モノローグも、風景も。その絵画が、うつくしい。主要キャスト含めて。
その中で、からみあう感情と思いだけで話が進むので「だからどうなるんだよ」的な見方するとたるいかもしれない。だが、異常な運命を前提として、愛する事の意味と限界とその先を静かに突きつけてくる主題を、玉木と小西はよく演じている。この2人の演技が兎に角いい。終わり方も自分的には文句ない。ほどよい珠玉といった感じの上品な作品。[DVD(邦画)] 8点(2007-02-17 14:08:39)《改行有》
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