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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
261. ぼくらの七日間戦争(1988) 学校への不満、教師への反抗、立入禁止の廃工場、自分たちだけの生活。誰もが共感できて、誰もがワクワクする。私も同級生と、当時こんな事がしたかった。かつて少年少女だった全ての人のロマン。 でも初めて観た時は、私はもう15~6歳だったから、面倒くさいお年頃だったと思う。 外国のデモ隊と警官隊の衝突のニュース映像なんかを見た経験から『機動隊のやられ方、嘘くさ!戦車が出てきた時点で、警察も本気でツブしにくるだろ』学校祭の出し物、展示物を何日も掛けて制作した経験から『最後の罠とか花火とか、嘘ばっかり!』なんて。特に映画の後半部分の嘘くささが鼻について、気持ちが冷めていったっけ…あぁ、もう少し子供だった頃に観たかった。 いい大人になった今は、TMネットワークの歌とともに懐かしさも感じながら、当時よりずっと楽しめたかな。 何より宮沢りえの“時の人オーラ”が凄い。彼女の白い肌と透明感。他の女の子と並んだとき、腰の位置が違う。このあと芸能界で色んな仕事をさせられるけど、このときは宮沢りえの存在全てが絶対領域だった。 体育教師にジーンズの裾を引っ張られて破れる。中山役の宮沢りえをホットパンツ姿にする見事な演出。 中山「エレーナをそんなにぶたないで(棒)」カッキーが戦車を見上げると、あらら大胆な改造ホットパンツに。 ここのシーン、しゃがんだ中山が立ち上がるまでを、もっとネチッこく撮りたかったハズだし、その意図で入れたシーンだと思うけど、意外なほどアッサリしたカメラワーク。“宮沢りえをそんな目で見てはいけない”という意識が働いたのかもしれない。なんて思ってしまうほどの彼女の存在感だった。 菊池と中山の仲を見て急に機嫌が悪くなる安永。かといってこの三角関係が発展するとか無く、淡いままで終わらせるとか、いかにも当時の中学生らしい。 エース菊池と補欠の相原が仲が良かったり、絵の得意な久美子が、鉄の扉の外側でなく内側に大きな絵を書くとか、彼女の才能と内向的な性格が出ていてすごく良い。このくらいの歳まで、みんな才能も明るい希望や夢もあるけど、画一的な教育社会では、みんなの才能が世間に認められるわけじゃない。 61式戦車も重要。なんであんなところに居たのかは謎だけど、それが却って不思議で面白い。 何年も放置されたであろう古い鉄の塊。子どもたちの修理なんかで動くシロモノじゃない。それが動くなんてファンタジーだ。 まるでアイアン・ジャイアントやラピュタのロボット兵並みに、子どもたちのピンチに「・・・どれ、助けてやるか」と動き出すエレーナ。 61式は戦後初の国産戦車で、一度も戦闘で血を流すこと無く、今では全車退役しているそうな。そんな平和な時代の、動くはずのない戦車が、子どもたちを助け、みんなを載せて敷地内を楽しそうに駆け回り、元の位置の戻り、エンジンが焼けて寿命を迎える。 人に向けて撃つことのなかった大砲は、子どもたちの七日間戦争の終わりを告げる花火を打ち上げる。 今見ても最後の大暴れ、完成度の高すぎるトラップの数々が、11人の子供が頑張った感=リアリティが無くやりすぎで残念。 小規模にするか、せめて他の生徒も応援に来てみんなで…とかなら、多少説得力も増しただろうか? 最後どうなったのか。子どもたちはあれだけのことをして『楽しい思い出が出来たなぁ』くらいな感じで学校に通う。 バラバラに転校もさせられず、ワンポイント・ソックスも勝ち取れず、校長先生に殺されもせず。何もなかったかのような登校風景。 子供も大人もお互いに理解し合えず。って結末。最後が惜しい。[地上波(邦画)] 6点(2021-08-25 14:23:49)(良:1票) 《改行有》 262. ハチ公物語(1987) 《ネタバレ》 “キング・オブ・銅像になった実在の動物”忠犬ハチ公。 死んだ主人を迎えに駅に通い続けたというエピソードを、わかり易く映画化した作品。 東宝が南極物語のヒット以降、子象、子猫と“○○物語”という動物モノ映画が乱発された中、松竹が作った動物映画がこのハチ公物語。 当時は動物の扱いが雑で、ハチが夢の中で上野先生に飛び込むシーンとか、明らかに犬を放り投げてるのは、今ではまず撮れない映像。 そんな時代、終盤のハチの弱々しい姿が、どうやって撮られたのか考えると、ちょっと怖くなる。 実話を極力忠実に再現したのではなく、かなり創作の部分が多いようで、あくまでフィクションとして観たほうが良いみたい。 最初の、秋田から渋谷駅についた時、犬は死んでたってのは、実話ならともかく、創作なら意図のよく解らない演出。 「犬がほしい」って言い出した娘の千鶴子が、犬の世話は父任せ。アッサリ出来婚で家を出て、父の死後もハチを引き取りもしない。動物を飼うには最後まで世話をする意志が必要。って教訓だろうか? 親戚がハチを持て余し、渋々飼うことになった菊さん。史実ではハチを最後まで大事に面倒を見てくれたのに、どうしてアッサリ死ぬことにしたんだろう? 焼き鳥屋や駅員とハチのエピソードを、心温まるものに変えたのは、子供にも観せたい映画だから解らないでもないけど… 仲代達矢演じる上野先生の、溢れんばかりの本気の犬愛。演技の枠を超えて素晴らしかった。 秋田や渋谷駅、上野先生がハチと歩いた商店街の、大正~昭和初期の再現が美しい。 店のお婆ちゃんとか、クリーニング屋?の店主とか、2匹の飼い犬とか、温かい雰囲気含めて綺麗。 一方で最後のシーン、ハチが雪を被って死んでいる早朝の渋谷駅。 年々軍国化が進むような描写もあって、誰もハチが死んでるのに関心を持たないのが、リアルにも見えるけど、一方でやりすぎにも見えた。[CS・衛星(邦画)] 4点(2021-08-22 18:37:24)《改行有》 263. シコふんじゃった。 《ネタバレ》 チャラっ!軽っ!薄っぺら! 今ほどドライでなく、昭和期ほど汗臭くもなく、平成バブル末期の大学生の空気が懐かしい。良くも悪くも楽な時代だなぁ。 貴乃花がまだ貴花田だった頃、若い人にも相撲が大人気だったけど、当然自分で取るより観るものだった。宮沢りえの“ふんどしカレンダー”が話題になったあと、ジャニーズのモックンがフンドシを締めて相撲を取るって、すごい時代だなって思ったわ。…はいマワシね。 「潰れるー…」『辛抱~。辛抱~。』昔から変わらない印象の竹中直人が、この映画では見るからに若くてツヤツヤしてた。オーバーすぎる下痢芸は見事。 完敗しての打ち上げの空気…穴山先生に変わって川村くんがOBに言い返したのも、青木の涙を見て秋平がブチギレるのもカッコイイ。 弱いから当然負ける→悔しくて練習頑張る→善戦。という大会もの映画の黄金パターン。解っちゃいるんだけど、観ていて熱くなるね。 ただ序盤の取り組み結果が4連続で3勝2敗、同じ人だけ勝つパターンなのは、もうひと工夫欲しかった。 3部リーグ優勝の打ち上げの、楽しそうなことと言ったら。青木の初勝利に嬉しそうなOBが良い。こっちまで嬉しくなる。 TVで見る本物の相撲取りに比べたら全然細いんだけど、モックンも竹中直人も良い身体しているし、みんなきちんと相撲を取っている。 日本のコメディ映画も、真面目に作ればここまで面白く出来るんだ!って、当時生意気にも感心したっけ。[地上波(邦画)] 7点(2021-08-20 19:44:02)《改行有》 264. グッドナイト&グッドラック 《ネタバレ》 ~Good Night, and Good Luck.~「おやすみなさい。そして幸運を」エドワード・R・マローがTV番組の最後に言う締めの挨拶。 現代の魔女狩りと言えるほど加熱したマッカーシズムとジャーナリストの闘いを取り上げた作品。 モノクロの渋い映像。1953年のアメリカが舞台で、序盤からたくさん人名が飛び交うので、正直置いてけぼり状態になってしまった。 番組の構成を打ち合わせ、番組を流し、出来具合を話し合い、新聞の評価で判断する。美味そうなウイスキーとダイアン・リーヴスの挿入歌がホッとさせてくれる激シブい構成。 予備知識無しで観たから、どれだけ理解できたか疑問だけど、余分な説明、私たちでもついていけるくらいの時代背景を一切省いて、ロケもなく当時のニュース映像もほぼ無く、当然娯楽性は排除して、ほぼ全編スタジオの中だけで、90分台に収めたことは、なんとも凄いバランス取りだ。 今の日本の報道番組は、何でも娯楽に結びつけてしまったり、内容よりインパクトの強さでトップニュースにしてしまうような報道が多い気がする。でも深夜のドキュメント番組とか、興味深い番組も多い。ジャーナリズム、報道番組の存在意義は、視聴率ばかりでは無いことを、忘れてはいけないね。 娯楽として楽しめる作りではないけど、駄作でもない。マッカーシズム、マローについて予備知識を入れてから観るべし。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-17 22:17:41)《改行有》 265. パンダ・コパンダ 雨ふりサーカスの巻 《ネタバレ》 前作の数カ月後に上映された続編。こちらもあくまで児童向け作品。このシリーズに比べたら、トトロなんてアダルト向け映画だ。 …長崎に行ったお婆ちゃん、まだ帰らないんだ。って気になるけど、もう歯ブラシも食器もベッドも3人生活仕様になってる。 パンダの次は虎の子が逃げてきた。珍しい動物がいる場所として、動物園の次に思いつくのって、やっぱりサーカスかな? ベッドを舟にするとか、やっぱり子供らしい発想の解決策。小さい頃レゴブロックで遊んだことを思い出した。板状のパーツに小さい三角くっつけて飛行機とか、それに近いベッドの活用法。 トラちゃんのお母さんとか、他の動物は人語を話さない。そう言えば前作の犬も話さない。前作は中国のパンダ外交・パンダブームで作られたそうだから、もしかしてこの当時、パンダに続いて赤ちゃんトラが話題になったとか、あったのかな?世間で話題の動物だけ話せるようにしたとか。 トラ、ゴリラ、ライオン、象と強い動物がわんさと出てくるけど、活躍するのはパパンダ。暴走列車の途中からゴリラとライオンが見えなくなった。ちゃんと居るから探してみよう。 ミミちゃんの開脚倒立、真似する子多かったろうな。 というか、ミミちゃんの真似するほど、この作品当時ヒットしたのかな?ハイジやルパンと違って、この作品はナウシカやラピュタの本で存在を知ったくらいで、周りから聞いたこと無かったなぁ。 調べたら「東宝チャンピオンまつり」ってワクで公開されてた。…知らない。 ヒットしてたら、今度は水族館辺りを舞台に出来たと思う。いや今からでもどうだろう? 今はこの作品もジブリ・ブランドに組み込まれて、ぬいぐるみとかグッズとか売ってるのにビックリした。この作品からもお金の匂いがするなんて。 …って言っちゃいけないか、おかげで私もこの作品を観られたんだから。[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-08-17 11:41:39)《改行有》 266. パンダ・コパンダ 《ネタバレ》 完全児童向け作品だけど、作画、動画のクオリティは高く、子供だまし作品ではない。 序盤で町の住民から、ミミちゃんがお婆ちゃんと二人暮らしな理由を手短に状況説明されるので、かろうじて大人も付いていける。 お巡りさんがルパンの声で泥棒を心配するとか、今だったらもっと、これ見よがしなネタにしそうなところをグッと抑えてる感じが良い。 この世界のパンダはしゃべる。パパンダは人間の大人として、パンちゃんは幼児として。はい大人はここまで。ってところだけど、竹やぶに執着を見せるパパンダとか、会社に行くのに困るパパンダと空気読むミミちゃんとか、まだ楽しめるんだよね。 犬との喧嘩で見せるパンちゃんの強さ。「パンちゃん犬に噛まれます、どうしますか?」『パンちゃん、カタイからかまれない』パンダが硬い、強いなんて突飛な設定、大人向け作品で言うところの“反則”だけど、子供が考えた解決策としてアリで、それを説得力のある(あるか?)映像にした技術力の高さ。 同様に動物園に帰る事になったパンダたちと、ママになったミミちゃんの解決策『ウチからかよえば、いいんだよ』も、大人では思いつかない発想。檻の付いたトラックで運ばれるのでなく、タイムカード押して電車で通うユーモラスさ。 大人も最後まで楽しめる作品とかじゃ決してないんだけど、幼稚園くらいまでに観ていたら、ハマったろうなぁ。 OPの声優の名前の隣に、演じたキャラクターの絵が並ぶの。すごく解りやすくて良い。[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-08-17 11:02:11)《改行有》 267. 若おかみは小学生! 《ネタバレ》 千と千尋を観て、そう言えば去年録画したこの作品、シチュエーションが似てるかもな?と、改めて観ることにした。 結構グッと詰め込まれた感。絵は丁寧で綺麗だし、アングルも工夫されていて人物も活き活きと描かれている。 もう何と言ってもピンふりの魅力に尽きる。衣装や存在の面白さが目を引くけど、同級生たちが煙たがりつつも認めざるをえない才能と、ひたむきな努力。彼女は小学生ながら、自分の高級ホテルだけでなく、花の湯温泉郷全体の今後を考えている。 ついついトゲのある言い方をするけど、それは自分の真剣さの裏返し。 花の湯に来て数ヶ月のおっこと春の屋旅館が、旅行通が好みそうな雑誌に取り上げられたけど、嫌味や妬みの一つも言わない大人なピンふり。 ピンふりはおっこよりもっと先に、じゃらん的な浮いた雑誌に取り上げられるべき名物女将になっても不思議じゃないと思う。でもきっと、派手な見た目に反して、裏方的な控えめな努力をしてきたんだろうな。最後の客のエスコートの仕方に、客と春の屋、そしておっこに対する最大級の気配りが感じられた。 両親を亡くしたおっこが、ピンふりやグローリーさんと触れ合いながら、小さな旅館の女将として成長していくドラマか。巻数の多い児童文学が原作だそうだから、きっと私のイメージ通りの作品なんだろう。 原作とかTV短編とか、きっと面白いんだと思う。ただこの映画の構成がどうも引っ掛かってしまう。 出だし、ほのぼのしたお祭りとおっこの家族団らん。神楽の最後、不気味さを見せる狐面…神様の舞なのになぜ不気味に?その直後、全てを奪い去る交通事故…予想外過ぎて心臓がパクパクしたわ。 グローリーさんとのドライブで急に事故のフラッシュバック。それもかなり細かい描写で…えぇ~このタイミングで入れてくるの? そして最後の客が事故の当事者。これは、小学生の女の子には、というか遺族には残酷すぎる。 最初と最後と中間に両親の死を挟む。これが万が一にも実話なら納得だけど、あくまで人が作った物語。長い作品(原作)の1エピソードだったら解らなくもないけど、90分くらいの短編映画の主題としてこのエピソードを選んだ訳で…なんか水曜日のダウンタウンのドッキリ企画並みに悪趣味に思えた。 事故から1年も経ってないのに、峰子女将は息子夫婦を死なせた相手の名前を忘れて予約を受けたのか。事故の加害者の妻は被害者の葬儀に行くだろうし、そのときの喪主はお父さんの母である関峰子になると思うけど、加害者のこと気にしてなかったのか? 加害者夫婦も、唯一の生き残り、小学生の女の子が、その後どこに行ったのか気にしなかったのか。花の湯温泉方面から家に帰る高速で事故が起きたのに、なぜ加害者夫婦は花の湯温泉を選んだのか? 雑誌にはフルネームでなく“おっこ”って出たとか、女将が宿帳で気がつくとかあったけど、もうこの映画のメインが“おっこを容赦ないトラウマに向き合わせてみた。”に思えて、他のほのぼのした魅力的なエピソードが吹っ飛んでしまった。 そうなるとまた、余計なものまでが色々目に付いて、例えばおっこが1人で、誰もいない家を出ていくシーン。親族とか近所の人とか誰も手伝わないの?友達は見送らないの?小学生が独りで花の湯温泉まで行くの? うり坊とかみよちゃんとか鈴鬼とか、精神的にショックを受けた子が創り出した、いわゆるイマジナリーフレンドなの?とか。 そうなっちゃうともう、子供向けにしてはグローリーさんの入浴セクシー・ショットが多すぎない?とかまで… う~ん…皆さんの高得点も納得なんだけど、この作品を好きな私と、この構成を嫌いな私が出てしまう。[CS・衛星(邦画)] 4点(2021-08-12 02:40:22)《改行有》 268. 千と千尋の神隠し 《ネタバレ》 大好きで何度も観てしまう映画。 公開当時は月に何度か映画館に通っていて、その際に千と千尋のCM(オープニングから両親が豚になるまでの冒頭映像)を観て、『宮崎監督、今度はオカルト映画を作ったのかな?』と、その世界観と、今までとは違う“美少女じゃない”主人公に引き込まれた。この時点でもうこの映画が好きになってた。 過去の経験から宮崎映画は子供連れが多い。今回レイトショーを選んで正解だった、静かに鑑賞できた。 日常の風景から早々に知らない世界に放り投げられる感。ナウシカもラピュタもそうだけど、架空の世界を作らせたら宮崎監督の右に出る者がいないと思う。 日本が舞台なだけに、初めて見るけどどこか懐かしい飲食店街。現実にありそうでない油屋の建物。山形の銀山温泉、群馬の四万温泉、愛媛の道後温泉、台湾の九份…ズバリここです!って場所がないぶん、却ってあっちこっち温泉地や繁華街から、良い意味での既視感が感じられ、日本の文化って、良いなぁって再認識させてくれた。※油屋の湯は沸かしの薬湯っぽいから、温泉じゃないと思うけど、ちょうどこの頃温泉ブームだったね。 八百万の神ってのも良い。見た目が怖かったりするけど、大根やひよこが神様っていう日本古来の神に対する考え方は、最強だったり奇跡を起こしたりの海外の神様と全く違って、発想がほのぼのしてて、穏やかだなぁ。たぶん私の根っこの部分がすごく共感したんだな。 「ここで働かせてください!」「私のことはハク様と呼べ」「おめぇ良くやったなぁ!」建前と本音、上司という存在、職場の友人…遊ぶための小遣い稼ぎのバイトではなく、生きていくために働くこと。私自身が社会に出て間もない頃だってのもあって、温々した学生生活から、突然社会に自分を合わせなければいけなくなった千尋の気持ちがよく伝わった。 初日震えながら知らない部屋の布団に入る千。後日その部屋で肉まん?を食べる千。自分の家じゃないけどホッと出来る部屋になってるのが良かった。そう、休憩室とか食堂とか、会社でホッと出来る居場所って大事なんだよ。 千の気持ちになって物語を楽しんだけど、失敗しながらも自分の力で努力する千と、何も積み重ねてないカオナシ。こういう中身のない大人いるよな…一歩間違えると私もカオナシだ。それと同時に自分の居るべき場所って大事だなって思った。カオナシはひとまず銭婆のもとに行けてよかった。 最後に湯婆婆を「お婆ちゃん」と呼ぶ千尋。退職した怖い上司が、ただのお爺ちゃんになっていたのを思い出した。社会の仕組みはどこも似たようなものでも、会社の関係は所属中だけのもの。あんな怖い湯婆婆も、外から見ればただのお婆ちゃんなんだな。 なんかすっごく話が反れてしまってるけど、仕事で辛い時、ここで頑張ってる意味を再確認したい時とかに観たくなる映画。 で、観た後は温泉行きたくなるんだよなぁ。[映画館(邦画)] 10点(2021-08-09 22:23:50)(良:1票) 《改行有》 269. ピンポン 《ネタバレ》 もう何回観たか解らないくらい。 だけど漫画もアニメもまだ観てない。きっと面白いんだろうな。でも、大好きな映画の印象を変えたくないんだよな… 毎年、暑い夏の金曜日の夜中に観る映画。私の中では花火大会やお盆の帰省なんかと同じように夏の風物詩の一つになってる。 卓球にそれぞれの自分の思いをぶつける高校生たちを観ていると、高校当時運動部でもなかったくせに、私も何かを頑張ろうと、熱くなれるのだ。 主要メンバーが生涯ベストと言っても良いくらいの演技を見せてくれる。窪塚には不釣り合いと思えるペコのオカッパ頭が妙にハマっていたし、ARATAは内向的で繊細なスマイルというキャラクターのイメージそのまま。 中村獅童の坊主&眉なしドラゴンは恐ろしいくらい威圧感と迫力があった。チャイナの相手を見下した演技と、負けそうなときの焦燥感の落差。 内股の小泉先生とガニ股のおばばの対比も良い。 アクマはペコと話す時、海王の先輩と話す時、退学後の本来の自分。努力したけど実らなかった凡人の表現がとても良く出来ていたと思う。 今年はスマイル中心に観てみた。ポンポコピーが孔に飛ばされたことを気遣う優しさがあるのに、アクマにはズバッと才能がないと言い放つ。 ペコに「なんか疲れる。卓球も人間関係も」なんて本音を言っていたスマイル。最後、一番不似合いな外回りの営業マンになったのか?(※教師なん?) ルービック・キューブを常に弄ってたけど、最後の試合前に6面完成したみたいだ。あれだけ弄くり倒してたのに、6面完成したら興味がなくなって、階段に置いていくのがスマイルという人物なんだろう。だからあれだけの才能があっても、卓球を続けなかったんだな。 スマイルがひたすら走るシーンが好き。夜になって知らない街でふと我に返るシーン。 復活したペコがタムラでひたすら汗だくになって玉を返すシーン。風間が1人ゴム縄でトレーニングするシーンも好き。 シーンにマッチした選曲も素晴らしい。映画で高揚したテンションを維持しつつ、サントラ聞きながら今年もダイエット頑張るぞってなれる。[映画館(邦画)] 9点(2021-07-28 00:10:07)《改行有》 270. 笑の大学 《ネタバレ》 面白かった。心から笑ったことがない人が、自分が理解できていない笑いを説明されて、それを理解して、実際自分が人を笑わせる手伝いをする(結果になる)。そこには検閲を通すためのヨイショもあるんだろうけど、向坂のダメ出しを見事に笑いに組み込む椿のセンスは、強引ながら大したものだと思えて、5日目の向坂が警官役をやらされる辺りまで、テンポも良く、作家と検閲官のお互いの距離が近づくようで、とても楽しかった。 6日目、向坂が坊主の格好している辺りから、若干クドさが出てしまったように思えた。好みの問題かもしれないけど、5日目までの距離感が一番絶妙だったような気がして、それ以上距離が縮まるのは、やりすぎなような… 向坂が上演許可を出さないために嫌がらせを告白は、それはそれとして黙って飲み込んで良いと思うんだけど、その後の椿の本音が、観ている私も聞きたくなかった。これは戦地帰りの兵隊に『人殺しは間違いだよね、あなた人殺したことある?』ってのと同じくらい、言っちゃいけないことのような。向坂がちゃんと「聞きたくなかった!!」と言ってくれてよかった。でもここまで積み上げたものがぶち壊しになり、修復は無理と思われた翌日の、赤紙。ある意味反則だけど、すべて持っていく上手な結び方。 あぁ、でも向坂に廊下で叫んでほしくなかったかな。もっと、あの部屋の中だけで、二人の中だけで認め合うような結末が相応しい関係だったように思う。 舞台版だとそういう所も含めて、完成度高いのかな?でも充分楽しめたよ。[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-06 23:45:07)《改行有》 271. アンダー・ユア・ベッド 《ネタバレ》 大学の授業中、千尋に名前を呼ばれたときから、期間を開けて交番で千尋に名前を呼ばれるときまでが、三井が存在できた期間。 それ以前もそれ以降も三井は忘れられた存在になる。 大学時代、彼女のアパートに水槽を置く時、腕に胸が当たって驚く(シチュエーションそのまんま)。千尋を暴力的な彼氏から守るため、サーモスタットで電気ショックを充てる(スタンガンを旦那に充てる)。夕焼けの部屋で千尋を抱く(風呂場から救出して温めた事がモトだろうか?)…これら思い出は、自首して以降、千尋との接触をモトに三井が創り出した妄想なんだけど、千尋と(例えば出所後の)自分の未来を想像するとかでなく、あくまで幸せだった過去の瞬間を徐々に盛って美化していく作業しか出来ないのが、この主人公の闇の深さ。 ベッドの下に潜り込む変態なんだけど、ドン引きするような突き抜けた変態さより、香水の香りとか引き伸ばした千尋の顔写真のコピーの美しさとか、哀愁と純愛も感じさせるところで、この主人公の行く末を最後まで見守る価値のあるものにしている。 風呂上りの千尋の裸はけっこう綺麗で、ここ最近、痣が出来るほどの身体的なDVが激しくなっていったんじゃないかな?って思う。 突然リビングに置かれたグッピー水槽に文句を言わないDV旦那の謎。ああ言うのは許せる人なのか? ちょっと残念なのは最初の盗聴の、アレしてる時の生々しい音。喘ぎ声は構わないけど、何というか、アダルトビデオじゃないんだから。これは映画なんだから、安直に生々しい音を垂れ流すのではなく、何かもっと別の表現方法を思いつかなかったものだろうか。[CS・衛星(邦画)] 4点(2021-06-22 22:47:46)《改行有》 272. Wの悲劇 《ネタバレ》 ダブリューの悲劇。アメリカの推理作家の『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』のオマージュとして、日本の作家が作った推理小説『Wの悲劇』を劇中劇とした、舞台女優の悲劇を描いた映画…へえぇ~~。 薬師丸ひろ子の脱アイドル、本格的な映画女優を意識してか、処女喪失というショッキングなオープニングから始まる。彼女が感情の微妙な変化を、声と表情の演技で出そうと頑張っているのが伝わる。…良く言えば今の薬師丸ひろ子の演技は、この時ほぼ完成されている。 オーディション後に落ちたと知らず、静香に花束を渡す昭夫。その花束でバシバシ叩かれたあとの、キラッキラの笑顔と優しい言葉が印象的。なにか思っていた世良公則のイメージと違って違和感を感じなくもない。脱いだパンツ挟んでの昭夫と静香の電気のひもバトル。何とも青春していて良いね。 こんな過去のアイドル映画の集大成っぽい内容が1時間弱続き、いきなり物語が動き出す展開は見事。 羽鳥翔の自分を語りつつ、静香に頼んでいるようで、逃げ道を作らせない有無を言わせぬ圧。演技の勉強を頑張りすぎたせいで、役と事件を天秤にかけ、事の重大さを故意に鈍らせる静香。記者会見で女優として現実の自分を演じ通す静香の姿は痛々しくもリアル。一方、翔がかおりを摩子役から下ろすためのいびり方は演技とは思えないくらい、本当にありそうで怖かった。 昭夫が刺されてからが駆け足で、主要メンバーのその後が気になって仕方ない。特にかおりは、あんな事件を起こさなかったら実力から再起は確実だったろうし、可愛そうでならない。 でもそういう、蛇足になりそうなところを敢えて描かないで、静香と昭夫の別れでアッサリした終わりも悪くないと思えるようになった。[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-06-20 21:48:46)《改行有》 273. 聖の青春 《ネタバレ》 将棋素人の私が村山聖という人物を何となく知っていたのは、羽生の効果だろう超有名・大人気だったもんな。 村山は少女漫画が好きで、爪や髪を切らない。少女漫画の主人公のようなサラサラヘアになりたかったのかな? 上京の時、女子向きマンションを選ぶけど、似合わないと言われムッとする。内面は女性的で繊細なのかもしれない。 羽生と村山の食堂のエピソード。店主の反応がまさに私のような一般人のそれだろう。 この食堂は竜王戦の会場から歩いていける距離にあるから、将棋関係者もよく来ると思う。 “よしのや”。牛丼の前フリもあるから、村山は前日、適当に店の名前で選んでたんだな。 全然趣味の話が合わない二人。会話が積んだとき、食堂のおばちゃんのお尻をぼんやり見てから結婚の話に流れるくだりはとても上手いな。 畠田理恵との結婚が話題になった羽生に、その話ではなく『結婚して死ぬまでに一度で良いから女を抱いてみたい。』と自分の本音を話す村山。 お金はあるんだろうが、風俗とかでなく大好きな少女漫画のような恋愛をしたかったんだろう。そしてゴールは結婚。 古本屋の店員さんとのエピソード。金はあるだろう彼が、ちょくちょく古本屋に通った理由。残念ながらもう一歩先には進めなかった奥手の村山。 いや現実はもっと、それ以前の関係でしか無かったかもしれない。 手術を拒んで(ゴネて?)いたのも、彼の気持ちを表していたように思う。 将棋は出来ても男性機能は失う怖さ。結婚したいから手術は嫌だって言えない繊細さ。 食堂で本音を話す村山に「あなたに負けて死ぬほど悔しい」と本音で応える羽生。…羽生さんこんな事、人に言うんだな。 手術を受け、結婚・女を抱く事を諦める。二つの夢の一つ、彼の青春への思いを捨て、爪と髪を切り、名人を目指す決心。 羽生との対局。破れてからの最後の5局。どれほど凄かったことだろうか。 丁寧に作られた映画だから、対局の優劣が将棋盤を見て分かる人と、当時の棋士に明るい人なら、より楽しめる映画だと思う。[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-06-11 09:53:30)《改行有》 274. 時をかける少女(1983) 《ネタバレ》 初見、淡々と映画を見て「ふぅぅん。大林監督の、当時の角川アイドル映画だね」と、それ以上広がらない感想を持った。 角川春樹が原田知世に“この映画をプレゼントして芸能界を引退させたい”という想い。大林宣彦の“プライベート・フィルムとして好きにやりたい”という想いが、筒井康隆の原作(未読だからどれだけ弄ったか解らないけど)と、上手い具合にマリアージュしていた…って事は、後から調べて解ったこと。 …こういう話がパンフレットを買わなくても、検索すれば誰でも見られるんだから、便利な世の中だわ。 そのへんを踏まえて再視聴。土曜日の実験室。深町くんが芳山和子の記憶を消して、未来に帰る話をしている。 引退するアイドルのプライベートフィルムとしてみると、芳山くんを角川春樹(&原田知世のファン)。深町くんを引退する原田知世。そこには出てこない吾郎ちゃんを渡辺典子辺り(本来、事務所としてプッシュしなきゃいけないアイドル)として観ると、二人の会話からして、まぁ面白い。 芳山(角川)と吾郎(角川アイドル)が積み重ねてきた記憶(映画の主演ワク)を、訳あって深町(原田)がちょっとお借りして、お互いに好きになってしまった。 時をかける少女は、原田知世主演だから出来た映画。彼女でなければ、このワクは他のアイドルの違う原作の映画になっていただろう。 数年後のある日、偶然に再会する二人。深町(原田=一般人)は相手が芳山(角川=業界人)だと気づくが、芳山は気が付かない。あれ?どこかで…ってなるけど、別々の方向に歩き出す。引退から数年後、角川は原田とこんな再会が出来れば幸せかな?と思ったんだろう。 そこからあの楽しいエンディング。 「あなた わたしのもとから♪」主題歌(の歌詞)もベストマッチ。この映画と原田知世への愛が溢れた素晴らしいエンディング。 こんな映画が撮れるのは、大林監督だけだと思う。 モノクロとカラーの合成、アニメーションと実写の融合、コマ撮り、興味がある斬新な技術はどんどん入れてくる姿勢。大学の映研が楽しんで作った、とても出来の良い自主制作映画みたい。 ハリウッドのSF大作なんてお金無いから作れないけど、大林監督の技法なら頑張れば出来そうだ。 「あれシクラメンぽいけど、ラベンダーって言えばラベンダーに見えるんだ!(※調べたら造花でした)」 どう撮るかは工夫次第。そう思って映画制作を諦めなかった、未来の映画監督のタマゴも多かったんじゃないかな? でも数年後の老夫婦の会話に、そこそこの時間を割いているところとかが、やっぱり素人とプロの違い、本物の監督のハードルの高さを魅せてくれている。素晴らしい監督だ。[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-06-05 12:33:08)(良:1票) 《改行有》 275. 岸辺の旅 《ネタバレ》 ピアノ講師として生活していた瑞希。突然3年前に失踪した夫が死人となって現れる。 失踪中、優介が世話になった思い出の地に旅立つ瑞希。 死後も新聞配達を続ける島影。廃墟となった彼の事務所に、瑞希はどう思ったのか。…この辺で“瑞希も実は死人なのでは?”と思った人もいるのでは? 教え子の母親にダメ出しされ、孤独な死を迎えた彼女に、死んだ優介が会いに来る。旅の途中、優介が話しかける駅員も、電車の親子も死人。 死を受け入れていない瑞希は、島影の事務所が廃墟になっているのが見えて驚く。だけどそれを優介に問いただしたりしない。 …それだと、何となく辻褄が合うかな?と思ったら、次の中華料理屋は「俺と違って瑞希と同じだ」という。生きている人? 死者と生者が共に暮らす世界だとしたら、どうして優介は3年も戻らなかったのか? 瑞希の寝起きから始まる帰宅、どれだけ家を留守にしたのか、貯まった手紙に枯れた植物。なぜ、手紙も見ずに寝たのか? 朋子に「優介は生きている」と嘘を言う瑞希。「想像通りの奥さんで拍子抜け」朋子の憎たらしさ。 農村で突然、光だビッグバンだの科学の話。…面白いかもしれないけど、あんな多くの老若男女が興味を持つ話題だろうか? 滝で父親が言う「アイツがお前にしたことと言ったら…」「あの男の事は忘れろ」???? これは、やはり瑞希も死んでいるんじゃないだろうか?死者と生者の話ではなく、すべて死者なのでは? 死を受け入れていない地縛霊と、優介のように受け入れても成仏できていない霊たちの話だとしたら… そして行き先が、簡単に言えば天国と地獄があって、中華料理屋の夫婦は、瑞希と一緒で天国に行ける地縛霊。 優介や朋子、農家の息子はきっと、地獄に行く地縛霊。中華料理屋の妹や瑞希の父は、もう成仏した霊。 瑞希が死なないと優介は現れる事ができなかった。瑞希の帰宅が寝起きから始まる=霊の移動はバスとかでなくても出来る。 優介は、農家の息子が妻にしたように、瑞希を自分の行く地獄(?)に連れて行こうとした。 だけど心変わりをする。あれ程拒んでいた性行為は、別れの儀式的なものとか。 …と考えれば、このモヤモヤした話はストンと落ちないだろうか?生と死の別れの話でなく、死後の天国と地獄の別れの話。 …こんな時間にお酒飲みながら書いてるから、自信は無いけど、“岸辺の旅”の岸辺って、三途の川の川岸の事とか。[CS・衛星(邦画)] 5点(2021-05-30 02:36:48)《改行有》 276. 飢餓海峡 《ネタバレ》 W106方式という撮影技法のためか、映像が荒く製作年よりも古い作品に見える。 この方式の影響か解らないけど、軽快で躍動感があるカメラワークが面白い。 トラックが到着して、そこから警官隊がワラワラ降りてきて、そのまま舟に乗り込んで出港までを勢いよく撮り流す。 東京の下町の人混み。そこで客引きをして働く八重。警官が捕物を始め、逃げるタチンボ達。柱に隠れてやり過ごす八重。飲み屋街に逃げる頃にはカメラは屋根の上。後ろを振り返りながら逃げる八重、ゴミゴミした飲み屋街…ここまでワンカット。 こんななめらかに動きのある映像、当時どうやって撮ったんだろう? イタコの話は訛りが強くてよく解らないけど「(三途の川を渡ってしまえば)我が戻る道は一筋もござらい」のように言っている。八重のマネ「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」。イタコを知らない多吉は、その言葉を自分の運命と重ねたんだろう。多吉にとって津軽海峡が三途の川。 共犯の二人は多吉が殺したんだと思う。 帰り際「今度いつ来るの?」と言う八重、戻る道がない多吉。お代の50円とは別に渡した34,000円は、殺した二人への供養の意味もあったと思う。犯した罪を善行で償おうとしたんだろう。その後も善行を重ね続ける。臆病だから罪を認める勇気もない。 樽見と名を変え、自分なりに罪を償って、余生を過ごしていたところに八重が来る。この時の樽見の落ち着き具合は、見ていて多吉とは別人じゃないかと錯覚させる。忘れたい過去の自分を10年も探していた女。衝動的な殺人。 10年前の自供は、もしものときのために前々から用意していた筋書きだろう。 何とか助かる道を模索する樽見に弓坂が見せる舟の灰。善行で罪を償ったつもりでいた自分を、10年も追ってきた人間がここにもいた。 「戻る道無いぞ~、帰る道無いぞ~」 八重殺しを自供することも、隠し通すこともしない、出来ない。 現世でも地獄でもない三途の川、津軽海峡に身を投げる多吉。臆病な善人らしい最後かもしれない。[CS・衛星(邦画)] 9点(2021-05-28 11:13:29)(良:1票) 《改行有》 277. 続名探偵ホームズ2/ドーバーの白い崖 《ネタバレ》 ~『ミセス・ハドソン人質事件』のつづき~ こちらもハドソン夫人が主役。これはちょっと評価落ちます。 名探偵ホームズはイタリア国営放送との契約で、まず6話分が作られたそうです。 『青い紅玉』『海底の財宝』『小さな依頼人』『ソベリン金貨の行方』『ミセス・ハドソン人質事件』『ドーバーの白い崖』だったと思います。順不同ですが全部TV版で放送されてます。 今回はハドソン夫人特集という意味で2作品が選ばれたと思いますが、劇場未公開の『小さな~』や『ソベリン~』の方が、原作のイメージが強く、ホームズの推理が事件解決の糸口になっていて、面白かった記憶があります。(…といっても小学生当時の感想、うろ覚えですが) 本作はアクション面が強く、動きの大きさは面白いんだけど、今ひとつホームズである必要性が感じられない。 過去3作の“犬なんだけど大人で人間臭い登場人物”感が若干薄れ、“擬人化動物の当時の流行りモノのアニメ”臭が出てる。 最後の方のマリーが拳銃を回すところとか、モリアーティたちが爆発して飛んでいくところとか、今までとちょっと異なる感じ。 ウィキを見ると、この回には近藤喜文が関わっていません。 『海底の財宝』も近藤さん抜きですが、あちらは宮崎監督の個性が存分に発揮された印象が強く、他作品では宮崎&近藤の強力タッグで面白く出来たんじゃないかなぁ?と。勝手に思ってます。[映画館(邦画)] 5点(2021-05-27 11:56:05)《改行有》 278. 続名探偵ホームズ1/ミセス・ハドソン人質事件 《ネタバレ》 ラピュタの同時上映で鑑賞。TV版はそれより前に放送していたんだな。忘れてる。 こちらのレビューも併映された『ドーバーの白い崖』とは別作品扱い。今回はモリアーティ教授一味とハドソン夫人が主役。 モリアーティが空気穴を気にする台詞を入れるとか「私の殺人は成功したことがないんだ」とか、銀行襲撃の妄想とか、キャラクターの魅力を引き出すのが上手いなぁ。 レストレード警部、犬らしく手紙の匂いから犯人を割り出すけど、美術館でホームズやモリアーティの雑な変装を見破れないとか、「原作読んでないのか!」なんてセリフも優秀なんだか無能なんだか、上手にいい加減で笑える。 前2作に続いて高いクオリティなので、出来ればエリソン夫人、モロアッチ教授バージョンで観たかった。 ~『ドーバーの白い崖』につづく~[映画館(邦画)] 7点(2021-05-27 11:55:23)《改行有》 279. 時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 ルールも勝敗もないから、永遠に終わりのない3人野球。 真琴の、いつまでも3人で、ずっとこのままが良いって気持ちが凄く伝わる。 それがいつまでも続くとは思っていない功介。続かないことが解っている千昭。 真琴が同じ時間を何度も繰り返すことによって、徐々に3人の気持ちが先に進み出す描き方が上手い。 過去に行けるというトンデモナイ能力を、あんなどうでも良いことに使えてしまう真琴がとても良かった。 バカなことばっかりの真琴が、意を決して友梨に、千昭が好きなことを告白するシーン。好きな人の突飛な話を信じられる真剣さ。行動力。アニメの声優は初のようだけど、ドラマで目にする仲里依紗がビックリするくらい上手に演じていた。 可愛い絵柄でドギツイ内容のアニメ、心を抉り取られるような鬱展開のアニメが増えた中、パンツも見えない、キスシーンすらない、カラッと真っ直ぐな高校生たちの物語は、逆に新鮮だった。 後輩3人もまた、毎日が楽しそうで、悩み多くて大変そうで良いね。功介に告白するとき、メガネしてないのは何でだろう?コンタクトにした?功介がクッキリ見えるのが怖いから? 魔女おばさん。単に超常現象に理解がある人だと思っていたけど、芳山和子だったんだな。1983年版をもう一度観なくては。[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-05-26 23:18:05)(良:1票) 《改行有》 280. 翔んだカップル オリジナル版 《ネタバレ》 昨年夏以来、二度目の鑑賞…だけどストーリーの起伏が少なく、この映画の盛り上がりドコロが掴めなかった。 勇介と圭が喧嘩して、仲良くなって、また喧嘩する。その間の、例えば勇介が反省して謝るとか、穴埋めをして許されるとか、仲直りと言うか二人が距離を縮める努力的なものが見えず、単にほとぼりが冷めた、時間が解決したかのように思えてしまう。 原作はきっと、この辺も丁寧に描かれているのかもしれないが、映画だとダイジェスト的にしか伝わってこなかった。 二人の同棲(学校的には単に同居じゃないか?)について、かなり後半に親友のハズの中山に同棲していることを伝えたが、序盤に先輩が圭を覗きに来たり、一緒に住んだりしてたので、中山や杉村さんには、とっくに同棲を伝えてるものだと思って観てしまったから… 杉村のマンションに圭が乗り込んできて、クシャクシャにした紙(試合までの注意)を渡すシーンとか、かなりの修羅場で緊張感が出ていた。勇介と圭とは対象的に、杉村のオトナな対応も凄くイイ。 坂を下る自転車、勢いそのままに激突。交差点で突然落語を始める中山。クジラのアドバルーン。序盤の薬師丸ひろ子の幼いパジャマ姿と、最後の方の「私、きれい?」の大人びた(背伸びした)スリップ姿のギャップ。最後の延々続くもぐら叩き。杉村から圭に受け継がれる集中のポーズ。印象的なシーンが結構あるが、一番グッと来たのはスナックで勇介と絵里(かな?)が酔っ払って“ケンポン”するところ。[CS・衛星(邦画)] 4点(2021-05-26 22:30:26)《改行有》
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